説明

電子機器を納めた簡易形の建造物

【課題】電子機器を収容する建造物において、密閉性を高めて電子機器を保護しながら室内の熱を効率的に外部に放出し、さらに、建造物の増設や移設を容易とする。
【解決手段】建造物の4隅に配置した柱状部材1F、1Rの上部及び下部に、緊締具の係合可能な締結金具2を固着し、建造物の屋根3を締結金具2よりも低い位置に設定するとともに、屋根3の下方には中間天井板9を設ける。電子機器を収納したラック6を中間天井板9の下側室CR内に収め、中間天井板を挟むように、下側室CRに空気を冷却する熱交換器と空気循環用ファンとを設置し、上側に排熱用の室外熱交換器を設置する。電子機器の増加に対処するときは、建造物自体を直接積み重ね、締結金具2に緊締具の係合して建造物を増設することが可能である。電子機器から発生する熱は、下側室CR内の熱交換器と室外熱交換器とにより外気へ放熱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ラックに収納した多数のサーバを集中して設置するデータセンターなど、コンピュータ等の電子機器を室内に集中管理する建造物、特に、移設や増設が簡易にできるよう構成された建造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インターネットの普及に代表されるコンピュータネットワークの発展に伴い、サーバと呼ばれる業務用の比較的大型で信頼性を重視したコンピュータ、あるいは主に記憶装置を収めたストレージなどのコンピュータの需要が、ネットワークのサービス提供業者を中心に近年急速に拡大している。サーバ等のコンピュータは、収納用の筐体であるラックに多数のものを収め、一個所で集中管理されることが多く、サーバ等を内部に集中して管理する建造物は、データセンターと呼ばれている。
【0003】
データセンターには、通常の建築物として構築されるもの以外に、輸送用の大型容器であるコンテナを改造して構築するコンテナ型データセンター(モジュール型データセンターともいわれる)が存在する。輸送用のコンテナは、周囲を強度の大きい壁面で取り囲まれた堅牢な構造であって、データセンターのセキュリティを確保するのが容易であるとともに、気密性が高く、塵埃の侵入や塩害(海岸付近に設置される場合)を防止してコンピュータを保護するのも容易である。また、コンテナ型データセンターは、輸送用のコンテナを基礎とする、通常の建築物と比較すると小型の建造物であるので、その増設や移設が簡単であり、無人運転に適しているという利点もある。
【0004】
コンテナ型データセンターの増設に容易に対応できるよう、棚状のコンテナ格納部を上下方向及び横方向に複数形成した、鉄骨構造の大規模な建築物が、特開2011−18220号公報に開示されている。この建築物は、図7に示すとおり、複数の鋼材の柱PLと梁BMとを組み合わせた格子構造を備え、格子構造の各区画に、データセンターとしてのコンテナCTが収められる。コンテナCTの前方には、保守管理のための通路WYが設けられるとともに、後方側には、移動可能なエレベータ(図示せず)が設けられており、コンテナCTは、エレベータによって収納場所に容易に設置される。
【0005】
ところで、多数のコンピュータを備えたデータセンター等の建造物においては、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防止し、併せて室内の空調を行う必要がある。コンピュータの冷却や室内の空調を行うには、冷凍サイクルを実行する空調機を設置してコンピュータ等いわば強制的に冷却してもよいが、冷媒の相変化を利用するヒートパイプと同様な熱伝達促進装置を用いて、室内の熱を外部の大気に積極的に排熱することによりコンピュータの熱障害を防止する冷却装置も知られており、例えば、特開2011−38734号公報に開示されている。
【0006】
上記公報に記載の冷却装置は、携帯電話等の電話基地局に収容された情報通信機器を冷却(温度上昇を抑制)するためのものであり、図8に示されるように、電話基地局の屋外に室外熱交換器LE(低温熱交換器)を設置するとともに、情報通信機器が設置された室内Rの上方に室内熱交換器HE(高温熱交換器)を設置する。両方の熱交換器は連通されて内部に冷媒が封入されており、情報通信機器から発生した熱によって室内熱交換器HEの冷媒が沸騰して室外熱交換器LEに移送され、ここで、大気に熱を放出して冷媒が凝縮し、重力で室内熱交換器HEに還流する。室内の空気は、室内側ファンRFにより循環され、温度の下降した室内熱交換器HEを通過して冷却される。
外気冷却によるこの装置は、温度差に基づく対流を利用する自然循環式の冷却装置であって、冷凍サイクルを行うものではないから、基本的に外部電力等が不要である。したがって、この冷却装置をデータセンターに採用したときは、サーバ等のコンピュータで使用する電力以外のものは殆ど必要なく、消費電力の大幅な削減が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−18220号公報
【特許文献2】特開2011−38734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
データセンターあるいは電話基地局など、コンピュータ等の電子機器を多数収容する建造物においては、コンピュータの十分なセキュリティの確保が要請されるとともに、塵埃や塩害等からのコンピュータの保護が要請される。こうした要請に応じるには、建造物の密閉性を高めて室内を外部から遮断することが可能でなければならないが、一方では、コンピュータの発熱に起因する熱障害を防ぐため、室内の熱を外部に放出しながらコンピュータを確実に冷却する必要がある。このとき、最近のデータセンターでは、コンピュータ作動の電力以外の、室内冷却用の電力等は極力抑制するよう求められている。また、コンテナ型データセンターのような小型の設備では、作業員等の常駐しない無人運転が可能であることが望ましく、これは、作業員用の空調の必要性を省いて消費電力の削減にも繋がることとなる。
【0009】
そして、コンテナ型データセンターは、サーバ等の需要の増減に対応して、データセンターの建造物自体も容易に増設や撤去が可能であることが望ましい。特許文献1に開示される建築物は、コンテナ型データセンターの増設等の容易化を図ったものではあるが、鉄骨構造を基本とする非常に大規模な建築物であって、構築のために多大なコストを要し、極めて大量のサーバ等を必要とする場合以外には、不向きである。
本発明の課題は、データセンター等の建造物において、収容された多数のコンピュータ等を効率的に冷却し、かつ、建造物の構造を改良して増設や移設を容易化し、このような問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題に鑑み、本発明は、建造物の4隅に配置した柱状部材の上部及び下部に緊締具の係合可能な締結金具を固着し、建造物の屋根の下方には中間天井板を設け、電子機器を中間天井板の下側室内に収め、かつ、中間天井板を挟むように電子機器の冷却装置を配置するものである。すなわち、本発明は、
「電子機器を室内に収めた建造物であって、
前記建造物は、平面視で長方形の形状を有し、その長方形の4隅には柱状部材が配置されるとともに、各々の前記柱状部材の上部及び下部には、緊締具の係合可能な締結金具が固着され、
前記建造物の屋根は、上部に固着された前記締結金具よりも低くなる位置に設置されており、さらに、
前記建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられ、前記電子機器が前記中間天井板の下側に形成される室内に収められており、
前記中間天井板の下側に形成される室内には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられ、かつ、前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記熱交換器が吸収した熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置される」
ことを特徴とする建造物となっている。
【0011】
請求項2に記載のように、前記中間天井板を、前記建造物の屋根の一部分において、その下方に設けることができる。
【0012】
請求項3に記載のように、複数の前記電子機器をラックに収納するとともに、前記ラックの上方には、前記熱交換器を収めた熱交換器外箱を取り付け、前記熱交換器外箱を前記中間天井板に固定することが好ましい。
【0013】
請求項4に記載のように、前記熱交換器と前記室外熱交換器とを連通し、その内部に、対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱されるよう構成することができる。
【0014】
請求項5に記載のように、前記建造物の底部に、長方形の枠体を備えた底部フレームを設置し、前記底部フレームには、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットを、長方形の長手方向と直角に延びるように固定することが好ましい。
【0015】
また、請求項6に記載のように、前記建造物の端面の一方には、観音開き式のドアを設置するとともに、前記ドアを閉鎖するロックロッドを設け、かつ、前記ロックロッドの上端のカムと係合するカムキーパーを、前記建造物の屋根の下方において前記柱状部材を連結するように設けられた梁部材に固定することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
電子機器を室内に収めた本発明の建造物は、平面視で長方形の形状を有し、その長方形の4隅には柱状部材が配置されるとともに、各々の前記柱状部材の上部及び下部には、緊締具の係合可能な締結金具が固着されている。つまり、本発明の建造物は、全体としては直方体の形状であって、船舶に積み重ねて積載される海上コンテナと同様に、直方体の8個の隅部に緊締具の係合可能な締結金具が固着されている。こうした締結金具は、コンテナの分野ではコーナーキャスティングと呼ばれ、一般的に使用される締結金具であり、コンテナ同士を連結するときには、ツイストコーン等の緊締具をこの締結金具に係合して積み重ね等が行われる。コンテナを陸上輸送するときは車輪付きのコンテナシャシに積載するが、これには、締結金具に係合するツイストロックがコンテナの寸法に合わせて装着されている。
本発明の建造物は、その屋根が上部に固着された締結金具よりも低くなる位置に設置されているので、建造物同士を直接積み重ねて連結することが可能である。そのため、電子機器の需要の増加に合わせて建造物を増設するときは、既存の建造物上に別のものを積載するだけで増設することができる。建造物を移設するときは、通常のコンテナシャシに積載して締結金具をツイストロックに緊締し、移動することができる。
【0017】
そして、本発明の建造物では、屋根の下方に中間天井板が設けてあり、電子機器がこの中間天井板の下側に形成される室内に収められる。電子機器を収めた室内には、空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられ、かつ、建造物の屋根と中間天井板との間には、室内の熱交換器が吸収した熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置される。これにより、電子機器の効率的な冷却が可能であって、温度上昇による熱障害が防止される。また、室外熱交換器が屋根の下方に収容されるので、建造物同士を積み重ねるときの障害となることはない。
中間天井板は、屋根の下方の全面に亘り設置することもできるが、請求項2の発明のように、例えば室外熱交換器が存在する部分等、建造物の屋根の一部分においてその下方に設置してもよい。
【0018】
請求項3の発明は、複数の電子機器をラックに収納するとともに、ラックの上方には室内用の熱交換器を収めた熱交換器外箱を取り付け、この熱交換器外箱を中間天井板に固定するものである。この構成によれば、電子機器を収納したラックと電子機器の冷却装置とがユニット化されて、ラックが独立した冷却装置を備えることとなり、電子機器が稼動中のラックの冷却装置だけを作動させ、電力をその分削減することができる。また、ユニット化されたラック−熱交換器組立体の上部が中間天井板に固定されるため、電子機器収納体の耐震性を向上することができる。
【0019】
本発明においては、電子機器を収めた室内の空気を冷却するため、圧縮機等を用いた冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよいが、請求項4の発明は、室内の空気を冷却する熱交換器の上方に、その熱交換器と連通し室外に置かれた室外熱交換器を設け、両方の熱交換器の内部に対流により循環する冷媒を封入して、室内の熱を室外熱交換器から排熱するものである。これによれば、基本的に電力を使用することなく、自然対流を利用してコンピュータ等電子機器の冷却を行うことができる。
【0020】
請求項5の発明のように、建造物の底部に底部フレームを設置し、これに、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットを設けたときは、フォークリフトを使用して建造物の積み重ねや移動を行うことができる。つまり、建造物の積み重ねのために大規模なクレーン等の設備が必要なく、また、コンテナシャシへの積載も、フォークリフトを使用して簡単に行うことが可能となる。
【0021】
請求項6の発明は、建造物の端面の一方に、観音開き式のドアを設置するとともにドアを閉鎖するロックロッドを設け、かつ、ロックロッドの上端のカムと係合するカムキーパーを、建造物の屋根の下方において柱状部材を連結するように設けられた梁部材に固定するものである。ロックロッドは、強度及び剛性の大きい棒材であって、これで閉鎖される観音開き式のドアは、建造物の出入口のセキュリティを高めることとなる。さらに、観音開き式のドアの両側に配置された、上下に締結金具を固着した柱状部材には、建造物の屋根の下方において梁部材が掛け渡されており、ロックロッドの上端のカムと係合するカムキーパーが、この梁部材に固定される。そのため、建造物を上下に積み重ねたときには、梁部材とロックロッドとが下側の建造物の補強材として作用し、また、柱状部材等の多少の変形があったとしても、カムとカムキーパーとを係合させロックロッドを強力に回転操作すると変形が回復し、ドアの閉鎖が可能となる。建造物の屋根と梁部材との間隙は、室外熱交換器のための外気流入口又は流出口として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の建造物の一実施例を示す全体図である。
【図2】図1の建造物の前後部における骨組み構造を示す図である。
【図3】本発明の建造物に用いる締結金具と緊締具の一例を示す図である。
【図4】本発明の建造物の、連結した状態を示す図である。
【図5】図1の建造物の横断面図及び空気の循環を説明する図である。
【図6】図1の建造物の床構造を示す図である。
【図7】コンテナ格納部を有する、従来の大規模な建築物を示す図である。
【図8】熱を外気に排熱して室内を冷却する、従来の冷却装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に基づいて、データセンター等として用いられる本発明の建造物について説明する。
図1の全体図から分かるように、本発明の建造物は、輸送用のコンテナを基本とするコンテナ型データセンターとして構築されたものであって、全体としては6面体の直方体である箱型構造をなし、平面視では長方形の形状となっている。その長方形の4隅には、上下方向に延びる柱状部材1として、前部側の柱状部材1F及び後部側の柱状部材1Rが配置されるとともに(側面図では箱型構造の側壁を除いて示し、便宜上、左側を前部、右側を後部とする)、各々の柱状部材の上部及び下部には締結金具2が固着される。締結金具2は、建造物の最外方の部分に位置するよう、各々の柱状部材に固着されるもので、建造物の屋根3は、上部に固着された締結金具よりも低くなる位置に設置されている。建造物の内部は、サーバ、ストレージ等のコンピュータを室内に収めたコンピュータ室CRと、コンピュータ等に電力を供給する電源ユニットEUや予備空調用室外機CDなどを据え付けた機械室MRとに分割され、その間には仕切り壁が設置される。
【0024】
図2(a)は、前部側の柱状部材1Fを備えた前側フレーム枠体を、図2(b)は、後部側の柱状部材1Rを備えた後側フレーム枠体を示すものである。この実施例では、前部側の柱状部材1Fは扁平な角形の一様断面を有し、その上部及び下部に締結金具2が溶接により固着される。後部側の柱状部材1Rも、扁平な角形の一様断面を有し、上部及び下部に締結金具2の溶接されたものであるが、観音開きドアのヒンジを取り付ける4個の切り欠き部が途中に形成されている。図2(b)に示す後部側の柱状部材1Rには、建造物の屋根3の下方において、2本の柱状部材1Rを連結する梁部材4が掛け渡されている。この梁部材4には、観音開きドアを閉鎖するロックロッドLR(図1)のためのカムキーパーCKが固着される。
【0025】
よく知られているように、ロックロッドは、上端及び下端にカム部材が一体的に固着された強度及び剛性の大きい棒材であり、カム部材は、フレームに固定されたカムキーパーと係合してドアを閉鎖する。カム部材は両側に二股部を備え、ロックロッドを回転させることによって、カムキーパーに形成された2個の突起に二股部がそれぞれ嵌め込まれるように構成されている(例えば、特開2000−129980号公報参照)。本発明の建造物では、出入口となる観音開きドアのロックロッドLRが、梁部材4と建造物の底部に置かれた底部フレーム5との間に、いわば補強用柱材として存在することになる。そのため、建造物の強度が増大し、積み重ねた場合でも変形が少なくなる。
【0026】
本発明の建造物で使用される締結金具2は、海上コンテナの隅部に置かれるコーナーキャスティングと同様な金具であり、この締結金具について図3により説明する。締結金具2は、6枚の厚板を組み合わせた直方体の強固な部品であって、柱状部材に溶接可能なように、通常は鋳鋼で製造される。建造物の外方となる面の厚板には、ツイストコーンTC等の緊締具を係合するための貫通孔が形成されている。建造物を積み重ねるときは、海上コンテナの積載と同じように、上側の締結金具2の貫通孔にツイストコーンTCの上側突起を嵌め込み、ツイストコーンTCを所定角度回転させて、下側突起を下方の締結金具2に嵌め込んで両者を連結する。ちなみに、陸上輸送用のコンテナシャシに装着されるツイストロックも、その上側突起をコンテナの下側のコーナーキャスティングに嵌め込み、所定角度回転させて固定するものである。
本発明の建造物は、締結金具2にツイストコーン等の緊締具を係合することにより、図4(a)に示されるように、直接積み重ねることが可能であり、サーバ等の需要の増大に対応して容易に増設することができる。場合によっては、図4(b)に示されるように、横方向に連結する緊締具を用いて並列的な増設も可能である。
【0027】
建造物の積み重ねやコンテナシャシへの積載にあたり、フォークリフトの使用を可能とするため、建造物の底部に置かれた底部フレーム5(図1)には、その長手方向の2個所に、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットFPが設けられている。フォークポケットFPは、断面4角形の強度の大きい角パイプであって、平面視で長方形をなす底部フレーム5の長手方向と直角(横方向)に延び、底部フレーム5に溶接あるいはリベット等で取り付けられる(図6も参照)。
【0028】
そして、本発明では、建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられ、電子機器が中間天井板の下側の室内に収められるとともに、室内の空気を冷却する熱交換器と排熱用の室外熱交換器とが、それぞれ中間天井板の下方と上方とに設置される。この構造について、図5(a)(b)により説明する。
コンピュータ等の電子機器は、多数のものがラック6に収納される形で建造物の室内に収められ、ラック6は、床面に敷設されたT形板材7上に固定されて(詳細な構造については後述)、コンピュータ室CRの横断面においてほぼ中央部に設置される。各々のラック6の上方には、コンピュータ室CRの室内の空気を冷却する熱交換器8を収めた熱交換器外箱81が取り付けられており、ラック6と熱交換器8とは、ユニット化されたラック−熱交換器組立体を構成している。この実施例では、コンピュータ室CR内には8個のラック−熱交換器組立体が設置され(図1)、ラックの上方の熱交換器は、主に組み合わされた下方のラックを独立して冷却するための熱交換器となっている。
【0029】
ラック−熱交換器組立体と建造物の屋根との間には中間天井板9が設けてあり、この部分では、建造物は2重天井を形成している。この実施例では、中間天井板9は、断熱材の積層された断熱パネルであって、その端部は、建造物の長手方向の全長に亘って延びるセンタービーム10に結合される。センタービーム10は、建造物の屋根3と中間天井板9とを連結しており、これによって、建造物の上部の強度並びに剛性を高めている。また、ラック6の強度及び耐震性を増大させるため、ラック−熱交換器組立体の上部は中間天井板9に固定される。
【0030】
コンピュータ室CRの空気を冷却するための、ラック6と組み合わされた熱交換器8の上方には、室外熱交換器11が置かれ、これは、コンピュータ室CRの室外となる中間天井板9の上部に載置される。両方の熱交換器は、特許文献2に記載された熱交換装置のように、互いに連通され、内部には気体−液体の相変化を行う冷媒が封入されている。室内側の熱交換器8の端部には、コンピュータ室CR内の空気を循環するファン12が装着されるとともに、室外熱交換器11の端部には、外気を導入するファン13が装着される。ファン13により導入された外気は、室外熱交換器11を冷却した後、直角に曲げられて建造物の長手方向に延びる共通排気ダクト14を通過し、建造物の前端上部又は後端上部の流出口から排出される。外気の流れを逆向きとして、ファン13から排出するようにしてもよい。
図5(b)に示されるとおり、ラック6に収納されたコンピュータの発熱に伴い、温度の上昇した室内の空気は、図の左側矢印のように、コンピュータ室CR内を上昇して熱交換器8に導入され、内部に封入された液体の冷媒を沸騰させる。気体となった冷媒は、対流によって室外熱交換器11に入り、ここで熱を外気に放熱して凝縮し、温度が低下した状態で室内の熱交換器8に還流する。一方、熱交換器8で冷却された室内の空気は、冷却空気を循環するファン12によって図の右側矢印のように送り出され、ラック6に収納されたコンピュータを冷却することとなる。
【0031】
上述のとおり、この実施例における室内空気の冷却装置は、対流により循環する冷媒を封入した2個の熱交換器を設け、密閉した室内の熱を排熱する自然冷却式のものであり、基本的に電力を使用することなく冷却を行うことができる。ただし、室内の空気を冷却するため、圧縮機等を装備して冷凍サイクルを実行させ、冷凍サイクルのエバポレータ(蒸発器)を、熱交換器として室内に設置してもよい。この実施例においても、外気温が上昇して自然冷却式の冷却装置の冷却能力が不足するなどの事態に備えて、冷凍サイクルを実行する予備の空調機が設置されており、そのエバポレータEV(図5(a))が天井面に装着されるとともに、圧縮機やコンデンサ(凝縮器)を収めた室外機CD(図1)が機械室の上部に据え付けられている。
【0032】
次いで、ラック6が設置される、本発明の建造物の床構造について、図6に基づき説明を加える。建造物の底部は、輸送用のコンテナと同様に、長方形をなす枠体に、長手方向と直角(横方向)に延びる複数のクロスメンバ51を適宜の間隔で掛け渡した底部フレーム5を備えており、底部フレーム5を横断するフォークポケットFPが2個所に取り付けられる。クロスメンバ51の上方には、発泡合成樹脂等の断熱材の両面にアルミニウム等の金属板を積層したサンドイッチパネル15が、建造物の床のほぼ全面に設置され、さらにその上方に、連続して延びるT形断面形状の突起161を、底板上に複数並列して形成したT形板材16が敷設される。
【0033】
T形板材16は、いわゆるT形ボードと呼ばれる長尺のアルミニウム押出し形材が使用され、図6(a)に示されるように、機械室の床面まで建造物のほぼ全長に亘って敷設されている。T形板材16を敷設しない部分には、図6(b)に示されるとおり、ハット形断面形状のハット形板材17が敷設されており、ここに浅皿形の空間が形成される。ハット形板材17の上部を含め、ラック6が載置される個所以外の部分は、図示しない薄板のカバーによって覆われる。
この床構造においては、T形板材16の突起161の間の空間、ハット形板材17の空間を利用して、ラック6に収納されたコンピュータへの自由なケーブルの配線が可能である。また、ファン12により室内を循環する冷却空気は、これらの空間を通過してラック6の周囲や下部へ流れ込む。そのため、コンピュータ等から発生する熱が効率的に除去され、温度上昇による熱障害が防止される。
【0034】
以上詳述したように、本発明は、電子機器を収めた建造物において、その4隅に配置した柱状部材の上部及び下部に緊締具の係合可能な締結金具を固着し、建造物の屋根の下方には中間天井板を設け、電子機器を中間天井板の下側室内に収め、かつ、中間天井板を挟むように電子機器の冷却装置を配置するものである。上記の実施例では、電子機器の冷却のため、自然対流循環型の熱交換器を用いた外気冷却方式を利用しているが、これに代えて、冷凍サイクルを実行する空調機を採用し、その室外機を中間天井板の上部に設置してもよい。また、実施例では、夫々のラックの上方に独立した冷却装置を設置しているが、室内を集中して冷却する1個の冷却装置を設けるなど、実施例に対し種々の変形が可能であるのは明らかである。
【符号の説明】
【0035】
1 柱状部材
1F 前部側柱状部材、 1R 後部側柱状部材
2 締結金具
3 屋根
4 梁部材
5 底部フレーム
6 ラック
8 熱交換器(室内空気冷却用)
9 中間天井板
11 室外熱交換器
12 ファン(室内空気循環用)
16 T形板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を室内に収めた建造物であって、
前記建造物は、平面視で長方形の形状を有し、その長方形の4隅には柱状部材が配置されるとともに、各々の前記柱状部材の上部及び下部には、緊締具の係合可能な締結金具が固着され、
前記建造物の屋根は、上部に固着された前記締結金具よりも低くなる位置に設置されており、さらに、
前記建造物の屋根の下方には中間天井板が設けられ、前記電子機器が前記中間天井板の下側に形成される室内に収められており、
前記中間天井板の下側に形成される室内には、室内の空気を冷却する熱交換器と冷却された空気を循環するファンとが設けられ、かつ、前記建造物の屋根と前記中間天井板との間には、前記熱交換器が吸収した熱を外気に排熱する室外熱交換器が設置されることを特徴とする建造物。
【請求項2】
前記中間天井板が、前記建造物の屋根の一部分において、その下方に設けられている請求項1に記載の建造物。
【請求項3】
前記電子機器は、複数のものがラックに収納されるとともに、前記ラックの上方には、前記熱交換器を収めた熱交換器外箱が取り付けられ、前記熱交換器外箱が前記中間天井板に固定される請求項1又は請求項2に記載の建造物。
【請求項4】
前記熱交換器と前記室外熱交換器とが連通され、その内部には対流により循環する冷媒が封入されており、室内の熱が前記室外熱交換器から排熱される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の建造物。
【請求項5】
前記建造物の底部には、長方形の枠体を備えた底部フレームが設置され、前記底部フレームには、フォークリフトのフォークを挿入するフォークポケットが、長方形の長手方向と直角に延びるように固定された請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の建造物。
【請求項6】
前記建造物の端面の一方には、観音開き式のドアが設置されるとともに、前記ドアを閉鎖するロックロッドが設けられており、前記ロックロッドの上端のカムと係合するカムキーパーが、前記建造物の屋根の下方において前記柱状部材を連結するように設けられた梁部材に固定される請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の建造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−252639(P2012−252639A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126424(P2011−126424)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000229900)日本フルハーフ株式会社 (93)
【Fターム(参考)】