説明

電子機器ケース

【課題】部品点数を少なくでき、部品管理が容易になると共に組立工程を減少して安価に製作でき、且つ薄型化が容易な電子機器ケースを提供する。
【解決手段】プリント基板取付フレーム30は、押し出し加工により成形し、平板状の中仕切板31の左右両側に沿って上方及び下方に所定高さ突出した側壁32、33を設ける。中仕切板31には、中央及び側壁32、33の内側に沿って上下両面に所定高さの基板取付部34〜36を平行して設ける。側壁32、33には、上下両側部に長手方向に沿ってケース本体に固定するためのネジ穴37を設ける。プリント基板取付フレーム30は、押し出し成形後に穴空け加工を施し、基板取付部34〜36の上側及び下側の同じ位置に複数のプリント基板取付穴41を設けると共に、側壁32、33の上側面及び下側面にカバー取付穴42を複数設け、上面及び左右両側部が開口した本体ケース44内に収納し、上面開口部に上カバー47を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプリント基板を収納する電子機器ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば複数チャンネルの周波数変換機能を備えたコンバータ等の電子機器においては、同じ回路を持つ同形状のプリント基板をケース内に電磁的にシールドした状態で配置している。従来では、図8(a)に示すように電子機器ケースの上下中間に中仕切板11を設け、この中仕切板11の上下にスタット12、13を取付け、このスタット12、13に対して同形状のプリント基板14、15をネジ16、17により固定している。この場合、中仕切板11の上下に配置するプリント基板14、15は同じものであるために取付穴の位置も同じであり、中仕切板11の上下にプリント基板14、15の取付穴と同じ位置にスタット12、13を配置する必要がある。スタットの取付けには、図9の(a)に示すネジ式のものと、(b)に示す圧入式のものがある。ネジ式のスタットは、先端に形成されたネジ部を取付穴に螺合して固定し、圧入式のスタットは先端に形成した円筒状の突部を取付穴に圧入し、かしめることにより固定する。
【0003】
中仕切板11の同じ取付穴には、上側と下側で同じ型式のスタットを取付けることができないので、例えば中仕切板11の上側にネジ式のスタット12を取付け、下側に圧入式のスタット13を取付けている。この場合、中仕切板11の取付穴内に下側から圧入式のスタット13の上端部を圧入して固定し、中仕切板11の上側からスタット12のネジ部をスタット13に螺合して固定する。圧入式のスタット13は、スタット12のネジ部とプリント基板15を固定するネジ17が螺着されるので、ある程度の高さを必要とする。図8(b)に示すように高さの低いスタット13を使用した場合には、ネジ17を締め付ける際にその上端がネジ式スタット12のネジ部に当接し、プリント基板15を固定することができない。
【0004】
電子機器としては、益々薄型化が要求されるため、上記のようにネジ式のスタット12と圧入式のスタット13とを組み合わせて使用することは好ましくない。
【0005】
このため従来では、図10に示すように中仕切板11の上部に板金で例えば略Z字状に製作したプリント基板取付板18を溶接にて取付け、このプリント基板取付板18にプリント基板14をネジ16で固定する。中仕切板11の下側には、図8の場合と同様に圧入式のスタット13を取付け、ネジ17によりプリント基板15を固定する。
【0006】
上記のようにプリント基板取付板18を使用することにより、圧入式のスタット13の高さを特に高くすることなく、プリント基板15を固定することが可能になる。
【0007】
次に、上記プリント基板取付板18を使用した従来のケース全体の構造について図11を参照して説明する。図11は、従来の電子機器ケースを分解して示す分解斜視図である。
【0008】
図11に示すように中仕切板11の上面中央に沿って略Z字状のプリント基板取付板18を溶接にて取付ける。上記中仕切板11及びプリント基板取付板18には、プリント基板取付穴が設けられている。そして、上記中仕切板11の下側には、各プリント基板取付穴に圧入式のスタット13をそれぞれ取付ける。
【0009】
次に、上記中仕切板11を一方の側部を開口して略コの字形に形成したケース枠20に溶接して取付ける。更に、中仕切板11の上面両側に略L字状のプリント基板取付板21a、21bを上記プリント基板取付板18と平行するように配置し、溶接にてケース枠20に取付ける。上記プリント基板取付板21a、21bには、中央に位置するプリント基板取付板18と同様にプリント基板取付穴が設けられている。
【0010】
そして、上記ケース枠20の側部開口部にケース側板20aを溶接して取付けてケース本体を完成し、このケース本体の上下開口部に上カバー22a、下カバー22bをネジ23、24により固定してケース全体を完成させる。
【0011】
なお、上記中仕切板11には、上カバー22a及び下カバー22bを外した状態で、図10に示した上側のプリント基板14をプリント基板取付板18、21a、21bにネジ止めにより取付けると共に、下側のプリント基板15をスタット13にネジ止めにより取付ける。
【0012】
上記のようにプリント基板取付板18、21a、21bを使用することにより、中仕切板11に対して上側のプリント基板14を取付けるための機構と、下側のプリント基板15を取付けるための機構とを分離した構成にでき、高さの低いスタット13の使用が可能となり、ケースの薄型化を図ることができる。
【0013】
また、本発明に関連する公知技術として、金属製シャーシの板面をコの字型に打ち抜いて4つの長方形の舌片を形成し、各舌片に設けた取付穴にスタッドを取付け、これらスタッド上に基板をネジにより取付け、基板に対する、衝撃、振動、ストレスを防止するようにした基板の取付構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−266388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のように中仕切板11の上側にプリント基板取付板18、21a、21bを取付け、これらプリント基板取付板18、21a、21bにプリント基板14をネジ止めして固定することにより、中仕切板11に下側に高さの低いスタット13を使用することが可能となり、ケースの薄型化を図ることができる。
【0015】
しかし、プリント基板取付板18、21a、21bを使用することにより、部品点数が多くなり、部品管理が面倒になると共に組立工程が増加し、コスト高になるという問題がある。
【0016】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、部品点数を少なくでき、部品管理が容易になると共に組立工程を減少して安価に製作でき、且つ薄型化が容易な電子機器ケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係る電子機器ケースは、金属材により方形状に成形された中仕切板と、前記中仕切板の左右両側に沿って上方及び下方に所定高さ突出して設けられる側壁と、前記中仕切板の上下両面の中央及び前記各側壁の内側に沿って平行して設けられる所定高さの基板取付部と、前記基板取付部の上側及び下側に設けられるプリント基板取付穴とを備えたプリント基板取付フレームと、前記プリント基板取付フレームを収納する本体ケースとを具備し、前記プリント基板取付フレームは、前記中仕切板と各側壁及び基板取付部を一体に形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、中仕切板と側壁及び基板取付部を一体に形成したプリント基板取付フレームを構成することにより、プリント基板を取付けるための部材を別個に設ける必要がなく、部品点数を少なくして部品管理が容易になると共にケースの組立工程を減少して安価に製作でき、且つ加工精度が高く品質を向上することができる。また、同じ回路を有する同形状のプリント基板であっても、中仕切板の上側及び下側に設けた基板取付部に取付けて電磁的にシールドした状態で配置でき、且つケースの薄型化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係る電子機器ケースの基本的な構成を示す分解斜視図、図2は同実施形態におけるプリント基板取付フレームの構成を示す斜視図、図3は上記プリント基板取付フレームの正面図である。
【0021】
図1〜図3において、30は金属材例えばアルミニウム等を押し出し加工して成形したプリント基板取付フレームである。このプリント基板取付フレーム30は、方形状の中仕切板31を備え、この中仕切板31の左右両側に沿って側壁32、33が設けられる。この側壁32、33は、中仕切板31を中心として上方及び下方に所定長さ突出して設けられる。また、中仕切板31には、中央に沿って上下両面に所定高さの基板取付部34が設けられると共に、上記側壁32、33の内側に沿って上下両面に所定高さの基板取付部35、36が設けられる。上記中央の基板取付部34及び側部の基板取付部35、36は、平行して設けられると共に同じ高さに設けられる。
【0022】
更に上記側壁32、33は、上下両側部が内側方向に少し突出して形成され、この各突出部に長手方向に沿って、すなわち基板取付部34〜36と平行するように、ケース本体に固定するためのネジ穴37が設けられる。上記各ネジ穴37は、押し出し加工によって形成できるように一部例えば角部内側に間隙が設けられる。
【0023】
上記プリント基板取付フレーム30は、中仕切板31、側壁32、33、基板取付部34〜36、ネジ穴37が押し出し加工によって形成され、中仕切板31を中心として上下対称に形成される。そして、上記プリント基板取付フレーム30は、押し出し成形した部材を必要な長さに切断し、その後、穴空け加工を施し、基板取付部34〜36の上側及び下側の同じ位置にプリント基板取付穴41を設けると共に、側壁32、33の上側面あるいは必要に応じて上側面及び下側面に複数個のカバー取付穴42を設ける。上記プリント基板取付穴41は、プリント基板に設けられている取付穴に対応する位置に設ける。
【0024】
上記プリント基板取付フレーム30は、図1に示すように金属板により形成された本体ケース44内に収納される。上記本体ケース44は、上面及び左右両側部が開口しており、ケース前面44a及びケース背面44bの両側部にネジ穴45が設けられている。このネジ穴45は、プリント基板取付フレーム30の側壁32、33に設けられたネジ穴37に対応している。上記プリント基板取付フレーム30を本体ケース44に収納する際、本体ケース44の両側開口部に側壁32、33を位置させ、上記ネジ穴45よりタッピングネジ46を挿入して側壁32、33のネジ穴37に螺着する。上記プリント基板取付フレーム30の側壁32、33は、上記のように本体ケース44の両側開口部に位置し、シールド壁として作用する。
【0025】
そして、上記本体ケース44の上面開口部より、上カバー47をタッピングネジ48によりプリント基板取付フレーム30に固定し、ケース全体を完成させる。この場合、上カバー47はプリント基板取付フレーム30の側壁32、33に設けられたカバー取付穴42に対応する位置にネジ穴49を設けており、このネジ穴49よりタッピングネジ48を挿入して側壁32、33のカバー取付穴42に螺着する。
【0026】
上記のようにプリント基板取付フレーム30を本体ケース44内に収納する際、プリント基板取付フレーム30には予め図4及び図5に示すようにプリント基板51、52を実装する。図4はプリント基板取付フレーム30にプリント基板51、52を実装した状態を示す斜視図、図5はプリント基板取付フレーム30にプリント基板51、52を実装してケースに収納した状態を示すケース断面図である。
【0027】
上記プリント基板51、52は、中仕切板31の上面及び下面において、基板取付部34〜36に対応して位置させ、プリント基板51、52の取付穴にネジ53を挿入して基板取付部34〜36に設けられているプリント基板取付穴41に螺着して固定する。上記基板取付部34〜36に取付けられたプリント基板51とプリント基板52との間は、中仕切板31によってシールドされる。
【0028】
上記実施形態で示したようにプリント基板取付フレーム30は、中仕切板31、側壁32、33及び基板取付部34〜36等を押し出し加工によって一体に成形しているので、ネジ式や圧入式のスタット、更には板金により加工したプリント基板取付板を使用する必要がなく、部品点数を少なくでき、部品管理が容易になると共にケースの組立工程を減少して安価に製作でき、且つ加工精度が高く品質を向上することができる。また、中仕切板31に設けた基板取付部34〜36によって同形状の複数のプリント基板を実装でき、薄型化を実現することができる。
【0029】
次に上記プリント基板取付フレーム30を実際のケースに実装する場合の使用形態例について説明する。図6は上記プリント基板取付フレーム30を実際のケースに組込む場合の分解斜視図、図7はプリント基板取付フレーム30を実際のケースに組込んだ状態を示す斜視図である。
【0030】
図6において、61は上面あるいは上下両面が開口した電子機器の本体ケースで、例えば中央部に上記プリント基板取付フレーム30を収納するフレーム収納部62が設けられる。上記本体ケース61には、フレーム収納部62において、ケース前面及びケース背面にそれぞれ4つのネジ穴45が設けられる。このネジ穴45は、プリント基板取付フレーム30の側壁32、33に設けられたネジ穴37に対応する位置に設けられる。なお、上記側壁32、33の高さは、本体ケース61の高さに合わせて設定される。
【0031】
そして、上記プリント基板取付フレーム30は、プリント基板51、52を実装した後、側壁32、33に設けたネジ穴37がケース前面及びケース背面に対向して位置するように本体ケース61のフレーム収納部62に収納し、本体ケース61に設けられたネジ穴45を介してプリント基板取付フレーム30の側壁32、33に設けられたネジ穴37にタッピングネジ46を螺着し、本体ケース61に固定する。
【0032】
また、上記本体ケース61には、例えばフレーム収納部62の両側部に複数のプリント基板収納部が設けられ、これらのプリント基板収納部に各種プリント基板63〜66がネジ止め等により実装される。
【0033】
また、上記本体ケース61の上面あるいは上下両面の開口部には、図示しないが上カバーあるいは下カバー及び上カバーがネジ止めにより装着される。そして、上記本体ケース61は、図示しないが電子機器筐体内に収納される。
【0034】
上記のように本体ケース61の中央部にプリント基板取付フレーム30を実装した場合、プリント基板取付フレーム30の側壁32、33がシールド壁として作用し、プリント基板取付フレーム30に実装されたプリント基板51、52と、隣接して設けられたプリント基板64、65との間をシールドする。
【0035】
上記プリント基板取付フレーム30は、本体ケース61内のフレーム収納部62の大きさに合わせてアルミニウム等の部材を押し出し成形して所定の長さに切断することで、その外形寸法をフレーム収納部62の大きさに高精度で且つ容易に一致させることができる。従って、プリント基板取付フレーム30は、本体ケース61内のフレーム収納部62にきわめて容易に組み込むことができる。
【0036】
上記実施形態によれば、プリント基板取付フレーム30は、押し出し加工によって中仕切板31、側壁32、33及び基板取付部34〜36等を一体に成形できるので、プリント基板を取付けるための部材を別個に設ける必要がなく、部品点数を少なくして部品管理が容易になると共にケースの組立工程を減少して安価に製作でき、且つ加工精度が高く品質を向上することができる。また、中仕切板31の上側及び下側に所定高さ突出させた基板取付部34〜36を設けることにより、同じ回路を有する同形状のプリント基板であっても中仕切板31の上側及び下側に実装でき、電磁的にシールドした状態で配置することができる。また、基板取付部34〜36はプリント基板51、52を取付けるネジ53の長さと同程度の高さがあればよいので、特に高く形成する必要はなくケースの薄型化を図ることができる。
【0037】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子機器ケースの基本的な構成を示す分解斜視図である。
【図2】同実施形態におけるプリント基板取付フレームの構成を示す斜視図である。
【図3】同実施形態におけるプリント基板取付フレームの正面図である。
【図4】同実施形態におけるプリント基板取付フレームにプリント基板を実装した状態を示す斜視図である。
【図5】同実施形態において、プリント基板を実装したプリント基板取付フレームをケースに収納した状態を示す断面図である。
【図6】同実施形態におけるプリント基板取付フレームを実際のケースに組込む場合の例を示す分解斜視図である。
【図7】同実施形態におけるプリント基板取付フレームを実際のケースに組込んだ状態を示す斜視図である。
【図8】電子機器ケース内に同形状のプリント基板を電磁的にシールドした状態で配置する場合の従来のケース構造例を示す図である。
【図9】電子機器ケースにプリント基板を実装する場合に使用されるネジ式スタット及び圧入式スタットの構成例を示す図である。
【図10】電子機器ケース内に同形状のプリント基板を電磁的にシールドした状態で配置する場合の従来の他のケース構造例を示す図である。
【図11】図10に示すプリント基板取付板を使用した場合の従来の電子機器ケースを示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
30…プリント基板取付フレーム、31…中仕切板、32、33…側壁、34〜36…基板取付部、37…ケース本体固定用のネジ穴、41…プリント基板取付穴、42…カバー取付穴、44…本体ケース、44a…ケース前面、44b…ケース背面、45…ネジ穴、46…タッピングネジ、47…上カバー、48…タッピングネジ、49…ネジ穴、51、52…プリント基板、53…ネジ、61…本体ケース、62…フレーム収納部、63〜66…プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材により方形状に成形された中仕切板と、前記中仕切板の左右両側に沿って上方及び下方に所定高さ突出して設けられる側壁と、前記中仕切板の上下両面の中央及び前記各側壁の内側に沿って平行して設けられる所定高さの基板取付部と、前記基板取付部の上側及び下側に設けられるプリント基板取付穴とを備えたプリント基板取付フレームと、
前記プリント基板取付フレームを収納する本体ケースとを具備し、
前記プリント基板取付フレームは、前記中仕切板と各側壁及び基板取付部を一体に形成したことを特徴とする電子機器ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−38108(P2009−38108A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199286(P2007−199286)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】