説明

電子機器及び操作検知方法

【課題】タッチセンサ上での位置検出及び押圧力の双方の検出を精度良く行うことが可能な電子機器及び操作検知方法を提供する。
【解決手段】複数の導電層208が島状に形成され、ユーザによる押圧操作を受けた際に弾性変形可能な入力面部材202と、入力面部材202と対向して配置され、入力面部材202が変形した際に導電層208と接触する島状の導電層210が形成された基材204と、複数の導電層208間、及び複数の導電層210間の静電容量を検出する静電容量検出部304と、入力面部材202の変形により導電層208と導電層210が接触した際に、導電層208と導電層210間の抵抗値を検出する抵抗値検出部308と、導電層208及び導電層210と、静電容量検出部304又は抵抗値検出部308との電気接続を制御するスイッチ部320と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び操作検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時においては、携帯電話などのモバイル機器、ノート型パーソナルコンピュータ等において、表示画面と一体にタッチパネル式のセンサを設けた装置が知られている。例えば、特許文献1には、静電結合式タッチパネルのスイッチ動作において、安定したオン/オフ動作を確保するとともに、擬似的な押圧判断をすることを想定した技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−18669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザの指、またはユーザーによって操られるスタイラス等の入力面上の2次元位置を検出する装置としては、抵抗膜式のタッチパネルや、静電容量式のタッチパネルが知られている。抵抗膜式のタッチパネルによっては、専ら2次元位置が検出され、静電容量式のタッチパネルによっては、通常は2次元位置だけが検出される。
【0005】
しかしながら、静電結合式タッチパネルでは、静電容量に基づいて処理を行うため、特に押圧力の判定を正確に行うことは困難である。一方で、抵抗膜式のタッチパネルでは、対向して配置された導電層同士が接触するために所定値以上の押圧力がユーザから与えられる必要があり、導電層同士が接触しない程度の押圧力の場合は出力が得られず、ユーザによる操作の初期(接触開始)から位置検出を精度良く行うことは困難である。
【0006】
更に、ユーザやスタイラスが入力面に加える(操作)力を検出しようとする場合は、上記抵抗膜式タッチパネルや静電容量式タッチパネルの他に、操作力を検出するための操作力センサーを別途設ける必要があった。
【0007】
しかしながら、操作力センサー別途を設けることは、以下の問題点がある。電子機器へのアプリケーションにおいて、別途設ける操作力センサーは、通常、2次元位置を検出するタッチパネル等と、電子機器の筐体等の間に挿入されるように配置されるため、操作力センサーの性能は電子機器の筐体等の、例えば平坦度などに左右されてしまう。このため、操作力センサー単体としての性能保証が困難である。
【0008】
また、タッチパネルのように入力面がLCDなどの表示装置の上に配置される場合、操作力センサーは、画像の妨げにならぬように、周辺部に複数個配置されることになる。この場合、各センサーに分配される力は、センサーの取り付け精度に大きく依存する。一方で、各センサーに与えられる操作力と出力信号の関係はリニアでない場合が多く、そのために入力面に加えられる力を正確に検出することは極めて困難である。更に、別途に操作力センサーを設けるため、製造コストが増大する問題がある。
【0009】
また、上記特許文献1には、静電容量式のタッチパネルでありながら、タッチパネルに接触する面積を検出し、擬似的に押圧判断する技術が開示されている。しかしながら、静電容量を利用した面積の検出においては、ユーザの指の状態(発汗など)や湿度など環境要因が大きく影響し、実用的な測定が困難であるという問題点がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、タッチセンサ上での位置検出及び押圧力の双方の検出を精度良く行うことが可能な、新規かつ改良された電子機器及び操作検知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、複数の第1の導電層が島状に形成され、ユーザによる押圧操作を受けた際に弾性変形可能な入力面部材と、前記入力面部材と対向して配置され、前記入力面部材が変形した際に前記第1の導電層と接触する島状の第2の導電層が形成された基材と、前記複数の第1の導電層間、及び前記複数の第2の導電層間の静電容量を検出する静電容量検出部と、前記入力面部材の変形により前記第1の導電層と前記第2の導電層が接触した際に、前記第1の導電層と前記第2の導電層間の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、前記第1の導電層及び前記第2の導電層と、前記静電容量検出部又は前記抵抗値検出部との電気接続を制御するスイッチ部と、を備える、電子機器が提供される。
【0012】
また、前記第1の導電層と前記第2の導電層は共にストライプ状に形成され、互いに直交する方向に延在するものであってもよい。
【0013】
また、情報を表示する表示画面を備え、前記入力面部材及び前記基材は、透明な材質から構成され、前記表示画面上に設けられるものであってもよい。
【0014】
また、前記静電容量の変化に基づいて、前記ユーザによる押圧操作の前記入力面部材上での2次元位置、又は、前記入力面部材に対する前記ユーザによる操作が接近する程度を演算する静電演算部を備えるものであってもよい。
【0015】
また、前記抵抗値に基づいて、少なくとも前記入力面部材に加えられる押圧力を演算する抵抗値演算部を備えるものであってもよい。
【0016】
前記ユーザの押圧操作により前記第1の導電層と第2の導電層が接触した際の接点数に基づいて、前記入力面部材に加えられる押圧力を演算するものであってもよい。
【0017】
また、前記抵抗値演算部は、前記抵抗値に基づいて、前記ユーザによる押圧操作の前記入力面部材上の2次元位置を演算するものであってもよい。
【0018】
また、前記ユーザの操作による前記入力面部材上の2次元位置に基づいて、当該2次元位置における前記第1の導電層及び前記第2の導電層の理論抵抗値を計算する抵抗値逆算部と、を備え、前記抵抗値演算部は、前記ユーザの押圧操作により前記第1の導電層と第2の導電層が接触した際の接点数を求め、前記理論抵抗値と検出された前記抵抗値とを比較して前記接点数から求まる押圧力を補正する補正部を備えるものであってもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、複数の第1の導電層がストライプ状に形成された入力面部材と、前記入力面部材と対向し、前記第1の導電層と直交する第2の導電層がストライプ状に形成された基材とを備えるタッチセンサにおいて、前記複数の第1の導電層間、及び前記複数の第2の導電層間の静電容量を検出するステップと、ユーザの押圧操作により前記入力面部材が変形して前記第1の導電層と前記第2の導電層が接触した際に、前記第1の導電層と前記第2の導電層間の抵抗値を検出するステップと、を備える、操作検出方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、タッチセンサ上での位置検出及び押圧力の双方の検出を精度良く行うことが可能な電子機器及び操作検知方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の外観を示す斜視図である。
【図2】センシングヘッド部の構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る情報処理装置の機能ブロック図である。
【図4】指によりセンシングヘッド部の入力面部材が押された場合に、静電容量検出部と抵抗値検出部で出力が得られる様子を模式的に示す図である。
【図5】本実施形態に係る情報処理装置の動作を示す模式図である。
【図6】指が入力面部材に接近した場合に、導電層と指との間にコンデンサが生じる様子を示す模式図である。
【図7】複数の導電層のうちの1つの導電層(Yc)と、複数の導電層のうちの1つの導電層(Xc)とが接点Vcで接した状態を示す模式図である。
【図8】特性データ収納部に記憶されている、押圧力fと接触抵抗Rの関係を示す特性図である。
【図9】接点数から求まる押圧力を接触抵抗から求まる押圧力で補間する処理を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0023】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.情報処理装置の外観例
2.センシングヘッド部の構成
3.情報処理装置の機能ブロック構成
4.本実施形態に係る情報処理装置の動作
5.押圧力の検出について
【0024】
[1.情報処理装置の外観例]
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態に係る情報処理装置100の概略構成について説明する。図1は、情報処理装置100の外観を示す斜視図である。情報処理装置100は、例えばPDA(Personal Digital Assistants)、またはスマートフォンなどの携帯電話機能を備えたモバイル機器等の装置である。
【0025】
図1に示すように、情報処理装置100は、各種情報を表示するための表示部102を備えている。表示部102の表面には、センシングヘッド部200が設けられている。センシングヘッド部200は、タッチパネルやタッチパッドのようなセンサから構成される。センシングヘッド部200は、ユーザの指、またはスタイラス150等が表示部102の表面に触れると、これを検出して、ユーザの操作に応じた機能を実現させる。ここで、ユーザの操作に応じた機能には、アプリケーションの起動、画面のスクロール、画面の更新など様々な機能が含まれる。
【0026】
本実施形態では、タッチパネルやタッチパッドのような、概平面状のセンシングヘッド部200(入力装置)において、ユーザーの指やスタイラス150がセンシングヘッド部200の表面に接したときの2次元位置(平面上の位置)に加え、その平面と直交する方向の位置をも検出する。また、本実施形態では、指又はスタイラス150がセンシングヘッド部200の上空にある状態を検出し、更に、センシングヘッド部200の表面に接した後の押圧力をも検出する。
【0027】
[2.センシングヘッド部の構成]
図2は、センシングヘッド部200の構成を示す模式図である。センシングヘッド部200は、ユーザが指やスタイラス150を用いて入力を行なう入力面側に設けられた入力面部材202と、入力面部材202に対向した位置に設けられた基材204を含む。入力面部材202と基材204とは、いずれも平板状に設けられている。入力面部材202と基材204との間隔は、図2中の断面図に示すように、スペーサ206によって数μmから数十μmに保たれている。入力面部材202は、厚さ0.2mm程度の透明なPET(polyethylene terephthalate)材で、基材204に対向する面側には透明電極(ITO膜)など所定の抵抗値をもったストライプ状の導電層208が均一な厚さで形成されている。ここで、導電層208は、Y1〜Ynのn本が形成されているものとする。
【0028】
基材204も透明なPET材から構成される。基材204の入力面部材202と対向する面側にも、やはりITO膜など所定の抵抗値をもったストライプ状の導電層210が均一な厚さで形成されており、入力面部材202のストライプ状の導電層208と基材204のストライプ状の導電層210は直交している。ここで、導電層210は、X1〜Xnのn本が形成されているものとする。それぞれの導電層208,210の端部と、後述するコントロールユニット300とは 引き出し線によって電気的に接続されている。
【0029】
[3.情報処理装置の機能ブロック構成]
図3は、本実施形態に係る情報処理装置100の機能ブロック図である。図2に示すように、情報処理装置100は、センシングヘッド部200、コントロールユニット300、CPU400を有して構成される。
【0030】
コントロールユニット300は、センシングヘッド部200の各導電層208,210のそれぞれに印加する電圧をコントロールする。また、コントロールユニット300は、ユーザの指やスタイラス150の接近、その2次元位置、ユーザの指やスタイラス150の押圧力により変化する信号を処理して所望のデータを算出し、情報処理装置100のCPU400に送る。コントロールユニット300は、センシングヘッド部200とCPU400の間に設けられる。
【0031】
コントロールユニット300は、スイッチ部302、静電容量検出部304、静電演算部306、抵抗値検出部308、抵抗値演算部310、抵抗値逆算部312、力データ比較補正部314、特性データ収納部316、を備える。
【0032】
静電容量検出部304は、センシングヘッド部200の、それぞれの導電層208、導電層210の間の静電容量を検出する。抵抗値検出部308は、導電層208,210の端部間の抵抗値を検出する。静電演算部306は、静電容量検出部304で検出された静電容量の変化から、指やスタイラス150が入力面部材202へ接近している様子を算出する。また、静電演算部306は、静電容量検出部304で検出された静電容量の値から、指やスタイラス150の入力面部材202上での2次元位置を算出する。
【0033】
抵抗値演算部310は、指やスタイラス150の押圧により入力面部材202が基材204と接したときに、それぞれの導電層208,210が接触する接点数をカウントする。また、抵抗値演算部310は、指やスタイラス150の押圧により入力面部材202が基材204と接したときに、抵抗値の変化に基づいて、押圧力と接点の2次元位置を算出する。
【0034】
特性データ収納部316は、導電層208,210の抵抗率、サイズの情報を収納したメモリである。また、特性データ収納部316には、導電層208と導電層210が接触した場合に、押圧力と接触抵抗の関係を示すデータが格納されている。抵抗値逆算部312は、特性データ収納部316に収納された特性データと、得られた2次元データから導電層208,210の端部間の理論抵抗値を逆算する。力データ比較補正部314は、逆算された抵抗値と実際に検出された抵抗値を比較することにより指やスタイラス150が入力面部材202に及ぼす押圧力を補正する。
【0035】
図4は、指(またはスタイラス150)によりセンシングヘッド部200の入力面部材202が押された場合に、静電容量検出部304と抵抗値検出部308で出力が得られる様子を模式的に示す図である。図4に示すように、静電容量検出部304では、押圧力が微小値であっても、静電容量の変化を検出することができる。一方、抵抗値検出部308では、導電層208と導電層210が接触するまでは抵抗値の変化が検出されないため、押圧力が所定値(20gf程度)に達するまでの間は、検出を行うことができない。
【0036】
本実施形態では、図4に示す特性を考慮して、静電演算部306による演算結果からセンシングヘッド部200における指の位置、指の接近状態を算出し、抵抗値演算部310による演算結果から指による押圧力を算出する。これにより、押圧力が非常に小さい場合、または、指が入力面部材202に接触しておらず、指が入力面部材202に接近する過程においても、静電容量に基づいて指の位置を高精度に検出することができる。また、抵抗値演算部310による演算結果から押圧力を算出することにより、導電層208と導電層210が接触した後においては、導電層208と導電層210との接点数、導電層208と導電層210との接触抵抗とから、押圧力を高精度に検出することができる。スイッチ部302では、センシングヘッド部200の出力を周期的に切り換えて静電容量検出部304及び抵抗値検出部308へ送る。
【0037】
[4.本実施形態に係る情報処理装置の動作]
図5(A)〜図5(C)は、本実施形態に係る情報処理装置100の動作を示す模式図である。以下では、図5(A)〜図5(C)に示すように、ユーザの指が入力面部材202に次第に近づいていく際に、それぞれの位置に分けて説明する。この際、スイッチ部302により、静電容量検出部304と抵抗値検出部308は、逐次センシングヘッド部200への接続が切り替えられている。
【0038】
図5(A)は、指が入力面部材202に接近している場合を示している。また、図6は、指が入力面部材202に接近した場合に、導電層208と指との間にコンデンサ220が生じる様子を示している。図6に示すように、隣接する導電層208間には静電容量が存在し、コンデンサ210が形成されている。指が入力面部材202に接近すると、隣接する導電層208間の静電容量は、指との間に生じるコンデンサ220が追加されたことで変化する。基材204の導電層210においても同様に、導電層210と指との間にコンデンサが生じることで、隣接する導電層210間の静電容量が変化する。静電容量検出部304では、それぞれの導電層208,210でこの静電容量の変化を検出する。そして、静電演算部306では、静電容量の変化を演算処理することで、指の2次元位置(X,Y)を計算する。具体的には、隣接する導電層208間の静電容量を求め、指が存在しない場合の静電容量の理論値に対して変化が生じている場合は、変化が生じている導電層208間に指が位置しているものと判定できる。隣接する導電層210間についても同様の計算を行い、最終的に指の2次元位置を計算する。
【0039】
また、追加されたコンデンサ220の容量は、指と入力面部材202の距離によっても変化するので、指(またはスタイラス150)の2次元位置(X,Y)位置を特定した後で、静電演算部306では、このコンデンサ220の容量の絶対値から指が入力面部材202に対してどの程度接近しているかを表すデータを得ることができる。なお、隣接する導電層208間の静電容量を検出しているが、入力面部材202と基材204に形成されている直交した導電層210間においても同じ原理で、指の(X,Y)
位置と入力面部材202に対する近接の程度を検知することが可能である。
【0040】
図5(B) は、指が入力面部材202上に接している場合を示している。この場合は、未だ入力面部材202の形状変化は起きておらず、入力面部材202と基材204間には、スペーサ206によるスペース(空間)が存在している。指が入力面部材202に接することで、図5(A)で見られた静電容量は急激に大きくなるが、同じ原理で2次元位置(X,Y)を得ることができる。
【0041】
なお、図5(B)に示す状態までは、入力面部材202と基材204の間には空隙があるため、抵抗値検出部308で検出される抵抗値は無限大(∞)である。
【0042】
図5(C)は、図5(B)の状態から更に入力面部材202が指(またはスタイラス150)によって押された状態を示している。図5(C)に示す状態では、指の押圧により入力面部材202が変形し、その一部が基材204に接し、それぞれの内面に形成されている導電層208,210が電気的に接続される。
【0043】
[5.押圧力の検出について]
図7は、複数の導電層208のうちの1つの導電層208(Yc)と、複数の導電層210のうちの1つの導電層210(Xc)とが接点CPで接した状態を示す模式図である。この際、図7に示すように、先ず入力面部材202の全ての導電層208(Y1〜Yn)の両端に一定の電圧が印加されており、上述の接点CPにおける電圧をVcとする。また、導電層210の、接点CPから左端部までの長さをXL、右端部までの長さをXRし、上記左端部と右端部に流れる電流をそれぞれ、iL、iRとする。ここで、導電層210の単位長さ当たりの抵抗値(抵抗率)をrとすると、XL,XRにおける抵抗値はそれぞれ rXL,rXRとなるので、上記iL,iRはそれぞれ、
iL=Vc/rXL
iR=Vc/rXR
と表すことが出来るので、以下の関係が導かれる。
iL/iR=XR/XL
即ち、iLとiRの値の比を求めれば、XRとXLの比も求まる。XR+XL(=導電層210の長さ)は、特性データ収納部316に収納されているので、接点CPのX座標を算出することが出来る。
抵抗値検出部308により、上記電流値 iL と電流値iR が読み取られ、上記の関係を用いて抵抗値演算部310にて接点CPのX座標が算出される。Y座標の算出は、これと反対に、基材204の導電層210(X1〜Xn)に一定電圧を印加して、接点CPを通して入力面部材202側に流れる電流を読み取ることにより行なわれる。
【0044】
さらに指が入力面部材202を押すと、図5(D)に示すように、入力面部材202は大きく変形し、入力面部材202の導電層208と基材204の導電層210は複数の接点を持つようになる。接点の数は、指による押圧力が大きくなるほど増加するため、接点の数を検出することにより、接点の数(整数)に応じた、大まかな押圧力を得ることができる。接点数は、各導電層208に個別に電圧を印加し、各導電層210の電位を個別に検出することにより、検出することができる。また、押圧力が変化すると、接点の数だけでなく、個々の接点における入力面部材202の導電層208と基材204の導電層210間の接触抵抗も変化する。従って、接点の数と導電層208,210間の接触抵抗とから詳細な押圧力を求め、接点数から求まる大まかな押圧力を補うことが可能である。
【0045】
接触抵抗の値は以下の様に求めることができる。特性データ収納部316に収納されている、導電層208,210の、抵抗率や形状のデータと、上記のように算出される2次元位置(X,Y)から、導電層208,210間の接触抵抗がない場合の各2次元位置における位置に応じた理論抵抗値を算出する。例えば図7において、導電層208の両端に印加されている電圧Eによる電流が、矢印Iに示すように、導電層208の下端部から接点CPを通り、導電層210の左端部に流れる場合を想定する。導電層210、208の抵抗値は特性データ収納部316に収納されているそれぞれの導電層の抵抗率と、先に求められているそれぞれの経路の長さ(接点のX,Y座標)から、この電流経路上の理論抵抗値Rが計算される。
実際上は、接点CPにおける押圧の大きさにより、接触抵抗値Rcが発生するため、それをも考慮した場合の抵抗値の合計値は、(R+Rc)となる。
抵抗検出部308によって導電層210左端部の電流値iLは、上記接触抵抗値Rcをも含んだ値として検出されるので、
iL=E/(R+Rc)である。
ここで、R,E,iLの各値は既知であるので、接触抵抗値Rcが算出される。
【0046】
図8は、特性データ収納部316に記憶されている、押圧力fと接触抵抗Rの関係を示す特性図である。
指が押圧を増していき、図5(C)の状態になったとき、入力面部材202に設けられた導電層208が、初めて基材204に設けられた導電層210に接する。この状態が図8における「接合開始点」であり、接触抵抗の値としては最も大きなRc0となる。押圧力を増加させていくと抵抗値Rは減少していくが、やがて減少は飽和する。その際の抵抗値がRcsで、実際の値としてはゼロに近い。
ここに示すf-Rc特性図は、導電層208と導電層210の、ある1つの接点について、実測によって得られたものであるが、互いに接する導電層の材料や幅の値が同じであれば、全ての接点について同一の関係を適用することができる。またもちろん、全ての接点に関しての特性データを実測し、特性データ収納部316に収納しておいても良い。
【0047】
図9は、接点数から求まる押圧力を接触抵抗から求まる押圧力で補間する処理を示す模式図である。上述したように、導電層208と導電層210の接点数から、ユーザの指による大まかな押圧力が求められる。図9に示す実線の特性は、接点数から求まる押圧力を示している。接点数が1の場合、押圧力がF1からF2までの値であることが示されている。同様に、接点数が2の場合は押圧力がF2からF3までの値であることが示され、接点数が3の場合は押圧力がF3からF4までの値であることが示されている。このように、接点数から求まる押圧力は比較的大まかな値として検出され、階段状に遷移する。接点数から求まる階段状の押圧力を補間するため、図8の特性を用いることが出来る。例えば接点数が1のとき、当該接点が初めて接合を開始する時、(図8における「接合開始点」)押圧力fはF1であるが、押圧力を増して行くと共に、接触抵抗値は図8の特性のように減少していき、やがてゼロに近いところで飽和する。この際の押圧力は図9に示したF1s である。この間の押圧力の推移は、特性データ収納部に収納されている図8のようなf−Rc特性と、先に示したように算出可能な接触抵抗値Rcによって決定することが可能である。接点数が2、3、4、と増加した場合も、同様に、接点数から検出される階段状の押圧力の間が補間され、より精細な押圧力の測定が可能となる。
【0048】
以上説明したように本実施形態によれば、ユーザーの指が入力面部材202に接近し、やがて入力面部材202を押圧する際に、入力面部材202上の指の2次元位置を静電容量の演算から求めることができる。この際、指が入力面部材202に接触している場合のみならず、指が入力面部材202の上空にある時の近接の程度をも静電容量から検出することができる。更に、導電層208と導電層210との接触状態から、指が入力面を押す際の押圧力を求めることができる。従って、指の位置検出と、押圧力の検出とを、導電層208,210を備える1つのシステムで実現することができる。
【0049】
そして、本実施形態では、センシングヘッド部200と、コントロールユニット300及びCPU400からなる構成により、既存のタッチパネルのように2次元のXY位置を検知することに加え、ユーザやスタイラス150の入力面部材202に対する接近と、押圧力を検出してCPU400に送ることができる。従って、位置検出と押圧力検出をそれぞれ行う別デバイスを組み合わせて同様な機能を実現する場合に比較して、センシングヘッド部200の機構(メカ)設計が容易になり、また情報処理装置100の筐体自体には高度な精度が必要ないため、量産に適し、かつ筐体のコスト削減が可能となる。また、使用するデバイスの数も減るので、デバイス自体の総コストや管理コストの削減が可能となる。
【0050】
更に、センシングヘッド部200は、静電容量式タッチパネルと、抵抗膜式タッチパネルの双方の特徴を有しているので、指と(専用でない)スタイラスの両方に対応した検出が可能である。また、静電容量式のため、2次元位置を読み込む際には押圧力は実質的に0gfで済み、かつ1本の指又はスタイラスのみならず複数を同時に検出可能である。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0052】
100 情報処理装置
202 入力面部材
204 基材
208,210 導電層
302 スイッチ部
304 静電容量検出部
308 抵抗値検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の導電層が島状に形成され、ユーザによる押圧操作を受けた際に弾性変形可能な入力面部材と、
前記入力面部材と対向して配置され、前記入力面部材が変形した際に前記第1の導電層と接触する島状の第2の導電層が形成された基材と、
前記複数の第1の導電層間、及び前記複数の第2の導電層間の静電容量を検出する静電容量検出部と、
前記入力面部材の変形により前記第1の導電層と前記第2の導電層が接触した際に、前記第1の導電層と前記第2の導電層間の抵抗値を検出する抵抗値検出部と、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層と、前記静電容量検出部又は前記抵抗値検出部との電気接続を制御するスイッチ部と、
を備える、電子機器。
【請求項2】
前記第1の導電層と前記第2の導電層は共にストライプ状に形成され、互いに直交する方向に延在する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
情報を表示する表示画面を備え、
前記入力面部材及び前記基材は、透明な材質から構成され、前記表示画面上に設けられる、請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記静電容量の変化に基づいて、前記ユーザによる押圧操作の前記入力面部材上での2次元位置、又は、前記入力面部材に対する前記ユーザによる操作が接近する程度を演算する静電演算部を備える、請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記抵抗値に基づいて、少なくとも前記入力面部材に加えられる押圧力を演算する抵抗値演算部を備える、請求項1に記載の電子機器。
【請求項6】
前記ユーザの押圧操作により前記第1の導電層と第2の導電層が接触した際の接点数に基づいて、前記入力面部材に加えられる押圧力を演算する、請求項1に記載の電子機器。
【請求項7】
前記抵抗値演算部は、前記抵抗値に基づいて、前記ユーザによる押圧操作の前記入力面部材上の2次元位置を演算する、請求項5に記載の電子機器。
【請求項8】
前記ユーザの操作による前記入力面部材上の2次元位置に基づいて、当該2次元位置における前記第1の導電層及び前記第2の導電層の理論抵抗値を計算する抵抗値逆算部を備え、
前記抵抗値演算部は、前記ユーザの押圧操作により前記第1の導電層と第2の導電層が接触した際の接点数を求め、
前記理論抵抗値と検出された前記抵抗値とを比較して前記接点数から求まる押圧力を補正する補正部を備える、請求項5に記載の電子機器。
【請求項9】
複数の第1の導電層がストライプ状に形成された入力面部材と、前記入力面部材と対向し、前記第1の導電層と直交する第2の導電層がストライプ状に形成された基材とを備えるタッチセンサにおいて、前記複数の第1の導電層間、及び前記複数の第2の導電層間の静電容量を検出するステップと、
ユーザの押圧操作により前記入力面部材が変形して前記第1の導電層と前記第2の導電層が接触した際に、前記第1の導電層と前記第2の導電層間の抵抗値を検出するステップと、
を備える、操作検出方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−221677(P2011−221677A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88283(P2010−88283)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】