説明

電子機器及び電子機器への入力方法

【課題】指タッチ入力が可能な静電容量結合方式のタッチパネルにスタイラス入力が可能なタッチパネルを重ねた電子機器にスタイラス入力をしたときに両タッチパネルが動作し、電子機器が誤作動を起こす可能性がある。
【解決手段】電子機器は、静電容量結合方式であって、複数の電極を有する第1のタッチパネルと、第1のタッチパネル上に設けられ、スタイラスにより入力可能な第2のタッチパネルと、第2のタッチパネル上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、第1のタッチパネル上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極の電気的特性を制御する制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器及び電子機器への入力方法に関し、特に静電容量結合方式のタッチパネルを有する電子機器及び電子機器への入力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の普及において、「人にやさしい」グラフィカルユーザインターフェースを実現可能とするタッチパネル技術が重要となってきている。 このタッチパネル技術として、静電容量結合方式のタッチパネルが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の静電容量結合方式のタッチパネルは、第1の方向(例えばY方向)に延在し、前記第1の方向と交差する第2の方向(例えばX方向)に並設される複数のX電極と、このX電極と交差して第2の方向に延在し、第1の方向に並設される複数のY電極とを有する。 複数のX電極と複数のY電極は、基板上に層間絶縁膜を介して積層されている。また、X電極及びY電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明性導電材料で形成されている。タッチパネルは、観察者がタッチパネルをタッチしたときに変化するX方向の電極とY方向の電極の結合容量を計算することにより、タッチされた位置の座標を検出している。
【0004】
静電容量結合方式のタッチパネルを利用した入力方法には、タッチパネルの表面を、観察者が指でタッチすることでタッチされた位置の座標が入力される方法(以下、指タッチ入力方法)と、タッチパネルの表面をスタイラスペン等でタッチすることでタッチされた位置の座標が入力される方法(以下、スタイラス入力方法)とがある。いずれの方法を用いた場合においても、タッチ位置座標を検出するにはX電極上及びY電極上を同時に触れる必要がある。
【0005】
指タッチ入力方法の場合、タッチパネルの表面と観察者の指との接触面積が比較的大きいため、X電極上及びY電極上を同時に触れることができる。一方、スタイラス入力方法の場合、タッチパネルの表面とスタイラスとの接触面積が指タッチ入力方式と比較して小さくなる。このため、スタイラス入力方法では、X電極上及びY電極上のタッチパネル表面の領域を同時に触れることが難しく、X電極とY電極との結合容量の容量差を検出するのが困難となる。この結果、スタイラス入力が失敗する恐れがある。
【0006】
特許文献2には、指タッチ入力とスタイラス入力の両方を行うことが可能な電子機器が開示されている。この電子機器は、静電結合方式タブレットと、静電結合方式タブレットに重ねられた超音波方式タッチパネルを有する。この電子機器は、静電結合方式タブレットで専用の指示具によるスタイラス入力を識別し、スタイラス制限のある超音波方式タッチパネルで指によるタッチ入力を識別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−16307号公報(図1、段落「0006」)
【特許文献2】特開平8−179872号公報(図1、段落「0010」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
指入力方式を採る静電容量結合方式のタッチパネルにスタイラス入力する場合、上述したようにスタイラス入力が失敗する恐れがある。そこで、この問題を解決するために、特許文献2に記載の電子機器のように、指入力方式を採る静電容量結合方式のタッチパネル上に、スタイラス入力を可能とするタッチパネルを重ねて配置し、後者のタッチパネルを利用してスタイラス入力を行う電子機器の形態が考えられる。しかしながら、上述のように、静電結合方式のタッチパネルの中には、スタイラス入力方法、指タッチ入力方法の両方を可能とするものがある。このため、特許文献2の技術を適用して、既存の製品の指タッチ入力の静電結合方式タブレットに、単純にスタイラス入力方法を可能とするタッチパネルを重ねた電子機器の場合、スタイラス入力したときに、静電結合方式タブレットが反応してしまう恐れがある。スタイラス入力したときに静電結合方式タブレットが反応すると、スタイラス入力方法を可能とするタッチパネルと静電結合方式タブレットの両方から同一の入力がなされることとなるため、電子機器が誤作動を起こす可能性がある。
【0009】
本発明の電子機器は、指タッチ入力が可能な静電容量結合方式のタッチパネルにスタイラス入力が可能なタッチパネルを重ねた電子機器にスタイラス入力をしたときに両タッチパネルが動作し、電子機器が誤作動を起こす可能性があるという課題を解決する電子機器への電子機器及び入力方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子機器は、静電容量結合方式であって、複数の電極を有する第1のタッチパネルと、第1のタッチパネル上に設けられ、スタイラスにより入力可能な第2のタッチパネルと、第2のタッチパネル上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、第1のタッチパネル上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極の電気的特性を制御する制御部とを有する。
【0011】
また、本発明の電子機器への入力方法は、静電容量結合方式であって、複数の電極を有する第1のタッチパネルと、第1のタッチパネル上に設けられ、スタイラスにより入力可能な第2のタッチパネルと、を有する電子機器に入力する入力方法であって、第2のタッチパネル上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、第1のタッチパネル上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極の電気的特性を制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子機器及び電子機器への入力方法によれば、指タッチ入力が可能な静電容量結合方式のタッチパネルにスタイラス入力が可能なタッチパネルを重ねた電子機器にスタイラス入力をしたときに両タッチパネルが動作し、電子機器が誤作動を起こすのを防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の電子機器を示す(a)平面図と(b)平面図(a)の1b−1b線断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の電子機器を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の電子機器を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の別の電子機器を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の電子機器を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の電子機器を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の電子機器の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
〔第1の実施形態〕
図1(a)に本発明の第1の実施形態の電子機器100の平面図、図1(b)に平面図1(a)の1b−1b線断面図を示す。
【0016】
電子機器100は、第1のタッチパネル101と、第2のタッチパネル102と、制御部103とを有する。第1のタッチパネル101は、静電容量結合方式であって、複数の電極を有する。第2のタッチパネル102は、第1のタッチパネル101上に設けられ、スタイラスにより入力可能である。制御部103は、第2のタッチパネル102上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、第1のタッチパネル101上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極の電気的特性を制御する。
【0017】
第2のタッチパネル102には、一般的な抵抗膜方式のものを用いることができる。抵抗膜方式のタッチパネルは、僅かな隙間で対向して配置された複数の電極を有する。電極は透明電極であるのが望ましい。抵抗膜方式のタッチパネルは、スタイラスに押下されたときの電極の抵抗値をX、Y座標毎に測定し、抵抗値の変化に基づいて、電極同士が接した電極の位置を求めるものである。なお、抵抗膜方式に限らず、スタイラスが反応するタッチセンサ−であれば第2のタッチパネル102に光方式、表面波方式、電波方式などを用いても良い。
【0018】
電子機器100が有する各構成同士の接続関係について図2を用いて以下に説明する。第2のタッチパネル102と制御部103とは信号接続線104で接続されている。また、第1のタッチパネル101と制御部103とは信号接続線105で接続されている。信号接続線104、105としては、フレキシブルプリント基板(FPC)を用いても良い。FPCは、制御部103と電気的に安価な接続を図る為に一般的に使われている。また、信号接続線104、105には、FPCに限らず、ディクリ−ト線、細線同軸線などを用いても良い。
【0019】
図3を用いて、第1のタッチパネル101の詳細について説明する。第1のタッチパネル101は、複数の電極110を有する。電極110には、例えば、透明な電極を用いる。各々の電極110は制御部103と接続されている。
【0020】
電極110の平面状の大きさは、通常の使用にて人の指がパネルに触れる面積(直径約6mm〜10mm相当の円の面積)が適当といわれているが、これより小さくても良い。電極110の平面状の大きさがこれより小さい場合は、複数の電極110を同時に制御することで、人の指がタッチした時の面積分の電極110を仮想的に作り出すことができる。
【0021】
図4を用いて、電子機器100の一例について説明する。制御部103は、複数のスイッチと各スイッチに接続された静電容量を有する。各スイッチは、第1のタッチパネル101に設けられた電極110a、110b、110nに個別に接続される。各電極110はそれぞれに接続されたスイッチにより約1〜数百pF程度の静電容量で接地されるか、又はこれと同等の回路構成になっていれば良い。なお、電子機器100が図1(a)に示すような形態の場合、スイッチは制御部103の中に集められ、そこから各電極110に配線などを用いて接続されることとなる。
【0022】
制御部103は、第1のタッチパネル101と第2のタッチパネル102に接続される。第2のタッチパネル102は、CPU(Central Processing Unit)に接続される。すなわち、第2のタッチパネル102へ入力された信号は、制御部103を介して第1のタッチパネル101へ伝えられ、第1のタッチパネル101からCPUへ入力される。CPUは、第1のタッチパネル101からの信号に基づいて電子機器100全体を制御する。
【0023】
電子機器100は、図4に示すように、記憶部112、外部インターフェース113、電池114を有していても良い。記憶部112は、第2のタッチパネル102で検出した信号を保存することができる。外部インタフェ−ス113は、電子機器100をネットワークに接続させて、別のインタフェ−スと接続させることを可能とする。電池114は、電子機器100に含まれる各構成に電源を供給する。
【0024】
次に、電子機器100の動作について説明する。以下、図3と図5を参照して本実施の形態の電子機器の動作について詳細に説明する。なお、第2のタッチパネル102は抵抗膜方式であることとする。
【0025】
はじめに、第2のタッチパネル102の任意の位置をスタイラスでタッチする。するとタッチされた位置に応じた信号(抵抗値)が第2のタッチパネル102から制御部103に伝達される。制御部103は、伝達された信号に基づいて第2のタッチパネル102のどの位置がタッチされたのかを求める。
【0026】
次に、制御部103は、第1のタッチパネル上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極110の電気的特性を制御して、静電容量結合方式の第1のタッチパネルが反応する値に変化させる。具体的には、電極110の静電容量を、人の指が第1のタッチパネルに触れたときの静電容量と同等の静電容量(約1pFから数百pF)に制御すれば良い。例えば図4に示す電子機器100の場合、制御部103が有するスイッチのうち、制御対象の電極110に接続されたスイッチのみを切り替えれば、制御対象の電極110のみの静電容量を変化させることができる。
【0027】
本実施形態の電子機器および入力方法は、前述したとおり、制御部103が、第2のタッチパネル102上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、第1のタッチパネル101上のタッチ位置に相当する領域に配置された電極の電気的特性を制御する。第2のタッチパネル102から入力された入力信号は、直接、電子機器100全体を制御するCPUに入力されるのではなく、第1のタッチパネル101を介して入力される。このため、本実施形態の電子機器及び電子機器への入力方法では、指タッチ入力が可能な静電容量結合方式の第1のタッチパネル101にスタイラス入力が可能な第2のタッチパネル102を重ねた電子機器にスタイラス入力をしたときに、第1及び第2のタッチパネルの両方が動作し、電子機器が誤作動を起こすのを防ぐことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態の電子機器および電子機器への入力方法により、第2のタッチパネル102にスタイラス入力された信号を静電容量結合方式の第1のタッチパネル101に伝えるために、この信号を静電容量変化に変換することができる。このため、図7(a)に示すように、既存の電子機器が有する指タッチ入力が可能な静電容量結合方式の第1のタッチパネル101aの面に本電子機器を後付けで重ねるだけで、図7(b)に示すようにスタイラス入力が可能になる。これにより、ユ−ザは先端の細いペン型スタイラス106を用いて電子機器へ細かな入力をすることができるようになり、電子機器の操作性が向上する。
【0029】
さらに、スタイラス入力された信号を記憶部に保存することで、記憶された信号に基づいた操作が可能となる。このため、同じ操作を繰り返し行う場合、初回にスタイラス入力された信号を記憶部に保存させ、2回目以降は記憶部に記憶された信号に基づいて操作を実行することができる。これにより、ユーザは2回目以降のスタイラス入力を省略することができる。
【0030】
また、別の電子機器のタッチパネルを用いてスタイラス入力された信号を記憶部に保存し、この信号に基づいて操作を実行しても良い。これにより、ユーザは別の電子機器のタッチパネルを用いて本実施形態に係る電子機器にスタイラス入力をすることができる。
【0031】
制御部により電気的特性が制御される電極とは、第2のタッチパネル上のタッチされた領域であるタッチ位置に相当する第1のタッチパネル上の位置から近い順に選択された所定数の電極である。例えば、この数が1の場合は図5に示すように、第2のタッチパネル102上のタッチ位置(図中、星印で示す)に相当する第1のタッチパネル101上の位置から最も近い電極110pが制御されることとなる。一方、例えば、この数が4の場合は、図6に示すように、第2のタッチパネル102上のタッチ位置(図中、星印で示す)に相当する第1のタッチパネル上の位置から近い4つの電極110q、110r、110s、110tが制御されることとなる。
【0032】
制御部が複数の電極を制御する場合、各電極の電気的特性の変化量に基づいて、これら電極が囲む領域の重心を求めるのが望ましい。このようにして求められた重心を高精度なタッチ位置として扱うことができるためである。通常、静電容量結合方式のタッチパネルに指タッチ入力を行った場合、タッチ位置の最小単位は指がパネルに触れる面積となる。一方、スタイラス入力を行った場合のタッチ位置の最小単位は、スタイラスの先端がパネルに触れる面積となり、指タッチ入力によるタッチ位置よりも精度が高い。前述のように求められた重心は、スタイラス入力によるタッチ位置に相当する。従って、このように重心を求めれば、第1のタッチパネルで、指タッチ入力によるタッチ位置よりも精度が高いスタイラス入力によるタッチ位置を扱うことが可能となる。
【0033】
また、制御部が複数の電極を制御する場合、一つ一つの電極の面積を人の指に相当する面積よりも小さくすることができる。電極の面積を小さくした場合、操作対象の電子機器の静電容量結合方式のタッチパネルが反応する容量を確保するために、複数の電極を組合せた総面積を直径約6mm〜10mm相当の円の面積にすれば良い。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100 電子機器
101、101a 第1のタッチパネル
102 第2のタッチパネル
103 制御部
104、105 信号接続線
106 ペン型スタイラス
110、110a、110b、110n、110p、110q、110r、110s、110t 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量結合方式であって、複数の電極を有する第1のタッチパネルと、
前記第1のタッチパネル上に設けられ、スタイラスにより入力可能な第2のタッチパネルと、
前記第2のタッチパネル上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、前記第1のタッチパネル上の前記タッチ位置に相当する領域に配置された前記電極の電気的特性を制御する制御部とを有する電子機器。
【請求項2】
前記タッチ位置に相当する領域に配置された前記電極とは、前記第1のタッチパネル上の前記タッチ位置に相当する位置から近い順に選択された所定数の前記電極である請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記制御部は複数のスイッチ及び前記スイッチに接続された静電容量を有し、
それぞれの前記スイッチは、前記第1のタッチパネルが有する前記電極に個別に接続されている請求項1又は2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記タッチ位置がタッチされたときに、前記タッチ位置に相当する領域に配置された前記電極に接続された前記スイッチを切り替えて、前記タッチ位置に相当する領域に配置された前記電極の静電容量を変化させる請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記第2のタッチパネルに入力された情報を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記情報に基づいて前記電極を制御する請求項1から4のいずれかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記第2のタッチパネルは、抵抗膜方式のタッチパネルである請求項1から5のいずれかに記載の電子機器。
【請求項7】
静電容量結合方式であって、複数の電極を有する第1のタッチパネルと、前記第1のタッチパネル上に設けられ、スタイラスにより入力可能な第2のタッチパネルと、を有する電子機器に入力する入力方法であって、
前記第2のタッチパネル上の所定の領域であるタッチ位置がタッチされたときに、前記第1のタッチパネル上の前記タッチ位置に相当する領域に配置された前記電極の電気的特性を制御する電子機器への入力方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−160055(P2012−160055A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19727(P2011−19727)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】