説明

電子機器収納ラック群の冷却装置及び方法

【課題】 電算室等全体に対する空気調和システムへの負荷を最小限にし、ラック群に収納された電子機器に対して効率的な冷却を行う装置及び方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、暖気通路3の両端に位置し暖気通路3を遮蔽する壁体11と、暖気通路3の上方に位置し暖気通路3を遮蔽する天井体12と、空気を冷却する熱交換器14とを備え、熱交換器14は、暖気通路3に排出され、側面を2つの列及び壁体11と上面を天井体12とにそれぞれ囲まれて形成される暖気空間10内に隔絶された暖気を冷却し、暖気空間外に冷気を排出することを特徴とする電子機器収納ラック群の冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータやネットワーク機器等の電子機器を収納する電子機器収納ラック群の冷却装置に関し、特に、電子機器収納ラックの列の間に形成される通路が冷気通路と暖気通路とに交互に形成するように配置された電子機器収納ラック群の冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンター等の電算機室に収容されるコンピュータまたはネットワーク機器等の電子機器においては、その高密度化や設置スペースの縮小による小型化が進められ、電子機器の温度上昇はシステムトラブルに直結するため、これら電子機器の発熱問題に対処することがますます重要になってきている。このような対策として、一般的には、電子機器を冷却するために、電算機室等の全体の温度を制御する空気調和システムが用いられる。
【0003】
このような先行技術として、特許文献1と特許文献2がある。
特許文献1には、床下に内部空間を有する通路と、該通路を挟んで両側に設置され、前面から給気して上面または背面に排熱を排気する機器収容用ラック群と、空気調和装置とを備え、前記空気調和装置から吹き出された冷却用空気が、前記通路床下の内部空間を流動するとともに、前記通路の床面に設けられた孔から前記通路の床上に吹き出され、この冷却用空気が前記ラックに収容された機器を冷却した後、前記ラックの上方の空間を流動して前記空気調和装置に再び吸引され、前記ラック群の中の少なくとも一つのラックには、筐体の上部前面側の縁部近傍に該筐体の外方向に突き出る回り込み防止壁(板材)が設けられている構成が開示されている。
また、特許文献2には、情報処理機器を収容する機器収容ラックであって、情報処理機器を支持するラック本体と、冷気の風圧を保って、冷気をラック本体に導入する冷気導入部と、冷気導入部に配され、冷気導入部内の風圧を排気側に開放する風圧調整部とを備える機器収容ラックの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−184070号公報
【特許文献2】特開2007−316989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のいずれの構成も、電算機室全体を冷却するための空気調和システムにより冷却された空気を前提とし、電子機器を収納したラック群に効率的にその冷気を供給することを目的としている。
しかし、近年、これら電子機器の使用時における発熱量はますます大きくなってきており、電子機器を冷却するために電算機室全体を冷却することは効率的ではないため、特に最近環境意識の高まりから、より効率的な電子機器の冷却手法が求められている。また、ますます電子機器が高密度化していることから、電子機器を増強しようとすると、既存の空気調和システムの空調能力を超えてしまうことがあり、これに対応することは容易ではない。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、電算機室等全体に対する空気調和システムへの負荷を最小限にし、ラック群に収納された電子機器に対して効率的な冷却を行う装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内部に電子機器を有する複数の電子機器収納ラックが複数の列をなすように設置され、対向する前記電子機器収納ラックの前記列の間に形成される通路が冷気通路と暖気通路とに交互に形成するように配置された電子機器収納ラック群の冷却装置であって、前記暖気通路の両端に位置し前記暖気通路を遮蔽する壁体と、前記暖気通路の上方に位置し前記暖気通路を遮蔽する天井体と、空気を冷却する熱交換器と、を備え、前記熱交換器は、前記暖気通路に排出され、側面を2つの前記列及び前記壁体と上面を前記天井体とにそれぞれ囲まれて形成される暖気空間内に隔絶された暖気を冷却し、前記暖気空間外に冷気を排出することを特徴とする電子機器収納ラック群の冷却装置が提供される。
この構成によれば、電算機室全体に対する空気調和システムへの負荷を最小限にし、ラック群に収納された電子機器に対して効率的な冷却を行うことが可能となる。
【0007】
また、前記熱交換器は、前記天井体の開口部を通して前記暖気を取り入れることを特徴としてもよい。
この構成によれば、効率よく暖気を回収することができる。
【0008】
また、前記熱交換器は、前記暖気通路の上方に配置されることを特徴としてもよい。
この構成によれば、暖気の近くで冷却することができ、暖気を暖気空間から熱交換器まで運ぶためのパイプなどの設備が不要となる。
【0009】
また、前記熱交換器は、前記列の上方に配置されることを特徴としてもよい。
この構成によれば、暖気の近くで冷却することができるとともに、熱交換器が冷却した空気を暖気空間外へ運ぶためのパイプなどの設備が短くなる。
【0010】
また、前記熱交換器は、前記冷気を前記冷気通路へ排出することを特徴としてもよい。
この構成によれば、熱交換器が冷却した空気を直接冷気通路に供給することができる。
【0011】
また、前記冷気通路への排出は、前記冷気通路の上方から下方に向けて行われることを特徴としてもよい。
この構成によれば、熱交換器が冷却した空気を直接電子機器収納ラック群に供給することができる。
【0012】
また、前記暖気の取り入れは、ファンにより行われることを特徴としてもよい。
この構成によれば、暖気空間内の暖気を熱交換器へ強力に供給することができる。
【0013】
また、前記冷気の排出は、ファンにより行われることを特徴としてもよい。
この構成によれば、熱交換器が冷却した冷気を冷気通路などに強力に供給することができる。
【0014】
また、前記熱交換器は、水冷式熱交換器であることを特徴としてもよい。
【0015】
また、前記熱交換器は、冷媒式熱交換器であることを特徴としてもよい。
【0016】
また、本発明の別の観点によれば、内部に電子機器を有する複数の電子機器収納ラックが複数の列をなすように設置され、対向する前記電子機器収納ラックの前記列の間に形成される通路が冷気通路と暖気通路とに交互に形成するように配置された電子機器収納ラック群の冷却方法であって、前記暖気通路に排出され、側面を2つの前記列及び前記暖気通路の両端に位置し前記暖気通路を遮蔽する壁体に、上面を前記暖気通路の上方に位置し前記暖気通路を遮蔽する天井体に、それぞれ囲まれて形成される暖気空間内に隔絶した暖気を冷却した後、前記暖気空間外に冷気を排出することを特徴とする電子機器収納ラック群の冷却方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、電子機器によって暖められ暖気通路に排出された暖気を隔絶し、この暖気を冷却した後、電算機室に冷気を放出することにより、電算機室全体に対する空気調和システムへの負荷を最小限にし、ラック群に収納された電子機器に対して効率的な冷却を行う装置及び方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態における断面図と空気の流れを示した図。
【図2】本発明の第1実施形態を適用した電算機室における空気の流れを説明した説明図。
【図3】本発明の第1実施形態における側面図。
【図4】本発明の第1実施形態における正面図。
【図5】本発明の第1実施形態における平面図。
【図6】本発明の第1実施形態における斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態における断面図と空気の流れを示した図。
【図8】本発明の第3実施形態における断面図と空気の流れを示した図。
【図9】本発明の第3実施形態における側面図。
【図10】本発明の第3実施形態における正面図。
【図11】本発明の第3実施形態における平面図。
【図12】本発明の第3実施形態における斜視図。
【図13】本発明の第4実施形態における断面図と空気の流れを示した図。
【図14】本発明の一実施形態における熱交換器を表した図。
【図15】従来技術を適用した電算機室における空気の流れを説明した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係る装置等について説明する。
まず、図15に基づき、従来の技術を用いた電算機室における空気の流れを説明する。図15(a)は電算機室の平面図、図15(b)は電算機室の立面の断面図である。
電算機室30には、空気調和システム34が備えられ、電算機室30全体を冷却している。特に、空気調和システム34で冷却された冷気は、電子機器や電子機器収納ラックを設置する床31の下の床下空間33に噴き出され、この床下空間33に冷気が正圧をもって充満する。したがって、冷気は床開口部32から上方に噴き出すことになる。
【0020】
また、電算機室30の中では、電子機器収納ラック21は、室内で当ラックを効率よく配置するために、列をなし配置される。電子機器収納ラック21は、通常その前面から冷気を吸入し、背面から電子機器などにより温められた暖気を排出する。したがって、列をなし配置された電子機器収納ラック21からなる電子機器収納ラック群20は、互いが平行になるように配置される際、各電子機器収納ラック21の冷却効果を高めるため、冷気が噴き出す床開口部32がある通路に対して前面を向けて両側に配置される。そうすると、暖気を排出する電子機器収納ラック21の背面側も、隣の電子機器収納ラック群20の電子機器収納ラック21の背面側と向き合うように配置されることとなる。その結果、電算機室30では、冷気が噴き出す床開口部32がある通路、すなわち、冷気通路2と、両側の電子機器収納ラック群20が暖気を排出する暖気通路3とが交互に現れることになる。
【0021】
暖気通路3に排出された暖気は上昇し、電算機室30の天井付近に到達した後、空気調和システム34が、壁面の上部辺りや天井の開口部(図示せず)などから暖気を吸入し、冷却することにより、再度冷気となって電算機室30内を循環させる。
このように、冷気通路と暖気通路を明確に分けると冷気と暖気が混合されることが少なくなるので、空気調和システムを使って冷却した空気を効率よく電子機器に供給できる。
【0022】
しかし、電子機器の高密度化により発熱量が大きくなった場合、電算機室30を冷却する空気調和システム34の空調能力を増強することは容易なことではない。また、暖気通路3と冷気通路2を分けたといえ、暖気が冷却通路2に侵入したり、冷気が電子機器収納ラック20を冷却せず空気調和システム34に吸入されたりし、冷却効率を低下させることがある。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態における断面図と空気の流れを示した図である。空気調和システム34が冷却した冷気を床下空間33に噴き出す結果、冷気は床開口部32から上方に噴き出し、冷気通路2を形成するところは、図15と同じである。また、そのような冷気通路2と暖気通路3が交互に現れるところも同じである。
【0024】
しかし、本実施形態では、暖気通路3は、暖気通路3の上面を覆う天井体12と、暖気通路3の長辺で側面をなす電子機器収納ラック群20の背面(図においては、断面なので、電子機器収納ラック21の背面)と、暖気通路3の短辺で側面をなす壁体11とにより、他の空間とは遮断され、閉鎖空間である暖気空間10が形成される。(言うまでもなく、暖気空間10の底面は、床31により遮蔽されている。)
床開口部32から噴き出した冷気は冷気通路2を形成する。その冷気は、電気機器収納ラック21の前面から、内部の電子機器を冷却するため吸い込まれる。電子機器を冷却し熱せられた暖気は、電子機器収納ラック21の背面から排出され、排出された暖気は、閉鎖空間である暖気空間10に閉じ込められる。
【0025】
天井体12に設けられた天井体開口部121は、ファンユニット13に対応してあり、ファンユニット13が吸い出す暖気の通り道となる。本実施形態においては、ファンユニット13はプロペラ型の軸流ファンからなる。1つの暖気空間10に対して設置されるファンユニット13の総風量は、その暖気空間10を構成する電子機器収納ラックが暖気空間10へ排出する総風量とほぼ同じであるか、大きいことが好ましい。
【0026】
ファンユニット13が暖気空間3から吸い出した暖気は、熱交換器14に向かい、この熱交換器14を通りすぎる間に冷却される。すなわち、電算機室30には、電子機器により熱せられた暖気がそのまま排出されるのではなく、必ず熱交換器14により冷却された空気のみが排出されることとなる。
その結果、電子機器の高密度化により発熱量が大きくなった場合や電子機器を増強しようとする場合であっても、電算機室30を冷却する空気調和システム34の空調能力を増強することなく、係る状況に対応することができる。また、暖気通路3は暖気空間10により他の空間と遮蔽されているので、暖気が冷却通路2に侵入することがなく、冷却効率を低下させることがない。
なお、熱交換器14は、暖気を冷気通路2の冷気となるべく近い温度に冷却することが好ましい。そうすると、電算機室30の冷却する空気調和システム34への負荷が少なくなる。
【0027】
熱交換器14により冷却された空気は、天井方向である上方に排出される。そして、再度空気調和システム34により吸引され冷却され、電算機室30の中で循環する。
【0028】
なお、本発明の実施形態では、暖気を遮蔽し暖気空間10を形成している。一方、冷気を冷気通路に遮蔽し、空気調和システムで冷却される冷気を暖気と混合することなく、電子機器収納ラックに供給することも考えられる。このやり方は、暖気が冷気と混合され、冷却効率を落とすことは避けることができる。しかし、一旦暖気が電算機室内に拡散すると、それを冷却するのは空気調和システム34であり、電子機器の発熱量の増加、電子機器の増強の際対応が難しいのは上述のとおりである。
【0029】
図2は、本発明の一実施形態を適用した電算機室における空気の流れを説明した説明図であり、(a)は電算機室の平面図、(b)は電算機室の立面の断面図である。
図15と比べると、電子機器収納ラック群20が平行に列をなし、冷気通路2と暖気通路3が電子機器収納ラック群20の間に、交互に現れるのは同じである。異なるのは、暖気通路3が、電子機器収納ラック群の冷却装置1などにより遮蔽され、暖気空間10が形成されていることである。この暖気空間10の中に電子機器収納ラック群20により熱せられた暖気を閉じ込め、電子機器収納ラック群の冷却装置1がこの暖気を冷却した後、電算機室30に排出される。したがって、電算機室30の空気調和システム34に対する負荷は低減できる。
【0030】
図3は、本発明の一実施形態における側面図である。
それぞれの電子機器収納ラック群20の端に位置する電子機器収納ラック21の側面を繋げるように壁体11が存在し、この壁体11は、電子機器収納ラック21の側面体24と隙間が無いように設置されることが好ましい。その結果、壁体11は、暖気通路3の短辺側面において、暖気を遮蔽する。また、両側の電子機器収納ラック群20を跨ぐように天井体12が設置され、この天井体12は、暖気通路3の上面において、暖気を遮蔽する。また、電子機器収納ラック群の冷却装置1が、天井体11の上に設置される。その結果、電子機器収納ラック群の冷却装置1およびその内部に備えられる熱交換器14は、暖気通路3の上方に配置される。
なお、電子機器収納ラック群の冷却装置1の重量を考慮すると、電子機器収納ラック群の冷却装置1の下部の両端は、電子機器収納ラック群20の上部にかかっていることが好ましい。
【0031】
図4は、本発明の一実施形態における正面図である。
電子機器収納ラック21の正面は、通常ラック正面ドア23を備える。このラック正面ドア23は、冷気通路2からの冷気の吸い込みのために、通常スリット状、網目状などの開口部(図示せず)を備えるが、冷気を床下から吸い込み、内部の電子機器の前面に冷気を供給する場合には備えなくてもよい。上記のように、暖気通路3の端に位置する壁体11が電子機器収納ラック21の側面体24に隙間がないように設置されている。また、電子機器収納ラック群20のすべてにわたり天井体12が設置され、この天井体12は、暖気通路3の上面において、暖気を遮蔽する。また、電子機器収納ラック群の冷却装置1が、天井体11の上に、電子機器収納ラック21の台数に対応して設置される。これにより、電子機器収納ラック群20内の電子機器収納ラック21の台数が増加すれば、その分電子機器収納ラック群の冷却装置1の台数を増加させればよい。
なお、この図では、1つの電子機器収納ラック群20には、5台の電子機器収納ラック21が含まれているが、もちろんこれに限定されない。また、1つの電子機器収納ラック群の冷却装置1の台数は、同一電子機器収納ラック群内の電子機器収納ラック21の台数と同じである必要はない。
【0032】
図5は、本発明の一実施形態における平面図である。
電子機器収納ラック群の冷却装置1は、2列の電子機器収納ラック群20を跨ぐように設置される。また、上記のように、電子機器収納ラック群の冷却装置1は、電子機器収納ラック21の台数に対応して設置される。電子機器収納ラック群の冷却装置1の上部には熱交換器14があり、好ましくはその上面にカバーが備えられる。
【0033】
図6は、本発明の一実施形態における斜視図である。
電子機器収納ラック群20の前面には冷却通路2があり、電子機器収納ラック21は、冷気をラック正面ドア23などから取り入れ、内部の電子機器を冷却する。電子機器収納ラック群20の背面は、2つの電子機器収納ラック群20と、壁体11と、天井体12とで遮蔽された暖気空間を形成する。電子機器収納ラック群の冷却装置1は、天井体12の上に設置され、天井体の開口部(図示せず)から暖気を取り入れ、内部の熱交換器14で冷却し、電子機器収納ラック群の冷却装置1の上方に排出する。
【0034】
<第2実施形態>
図7は、本発明の一実施形態における断面図と空気の流れを示した図である。
図1の第1実施形態と比べると、本実施形態に係る電子機器収納ラック群の冷却装置1Aなど天井体より上部の構造が異なっている。
天井体12Aに設けられた天井体開口部121Aは、ファンユニット13Aに対応してあり、ファンユニット13Aが暖気を吸い出す暖気の通り道となる。本実施形態においては、ファンユニット13Aはシロッコファンからなる。静圧が高く確実に暖気を暖気空間10から熱交換器14Aに運ぶことができる。なお、本実施例ではシロッコファンを用いたが、これに限定されるものではなく、遠心ファン、斜流ファンなどの他の構造を持つファンであってもよい。1つの暖気空間10に対して設置されるファンユニット13Aの総風量は、その暖気空間10を構成する電子機器収納ラックが暖気空間10へ排出する総風量とほぼ同じであるか、大きいことが好ましい。
このような構成をとることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0035】
<第3実施形態>
図8は、本発明の一実施形態における断面図と空気の流れを示した図である。
図1の第1実施形態および図7の第2実施形態と比べると、本実施形態に係る電子機器収納ラック群の冷却装置1Bや天井体12Bなどの構造が異なっている。
本実施形態における電気機器収納ラック群の冷却装置1Bは、暖気通路3にある暖気を冷却しながら冷気通路2の方へ導く構成となっている。その結果、冷却された空気が直接冷気通路2にもたらされることにより、電算機室30を冷却するための空気調和システム34への負荷を低減させることができる。
【0036】
暖気は、電子機器22の排気による正圧とファンユニット13Bの吸気による負圧とにより、暖気空間10の上部に設けられた天井体12Bの天井体開口部121Bから、電気機器収納ラック群の冷却装置1Bの両端に設けられたファンユニット13Bの方へ、導かれる。その天井体開口部121Bからファンユニット13Bへの途中において、熱交換器14Bが備えられ、暖気はこの熱交換器14Bを通過することにより冷却される。図8では、熱交換器14Bは天井体開口部121Bの左右に1つずつ設けられているが、これに限るものではなく、天井体開口部121Bからファンユニット13Bへ至る途中に複数の熱交換器14Bが備えられてもよく、そうすると熱交換器14は、電子機器収納ラック群20の上方に配置される。また、本実施形態では、1つのファンユニットが備えられているが、より強力に暖気を排出したい場合には、複数のファンユニット13Bを備えてもよい。
その結果、電子機器22が高密度化し発熱量が大きくなったとしても、その熱交換器14Bの数をその途中経路内で増加せることにより、冷却能力も増大させることが可能となる。そうすると、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bの両端から排出される冷気の温度は、空気調和システム34が排出する冷気の温度とほぼ同じにすることも可能となるので、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bが冷却した冷気を直接冷気通路2に排出したとしても、電子機器収納ラック21の上部にある電気機器10が吸い込む冷気の温度と、下部にある電子機器10が吸い込む冷気の温度とがほぼ同じにすることができる。
【0037】
図9は、本発明の一実施形態における側面図である。
それぞれの電子機器収納ラック群20の端に位置する電子機器収納ラック21の側面を繋げるように、壁体の代わりに、通路側面ドア11Bが存在し、この通路側面ドア11Bは、電子機器収納ラック21の側面体24と隙間が無いように設置されることが好ましい。その結果、通路側面ドア11Bは、暖気通路3の短辺側面において、暖気を遮蔽する。また、この通路側面ドア11Bは、通路の中央で分離する2枚の引き戸で構成され、この引き戸を左右に開くことにより、電子機器22の保守などで要員が容易に暖気通路3に入ることができる。通常運転時には引き戸を閉めておくことで、暖気を遮断することができる。なお、本実施例では引き戸を用いたが、開き戸などの他の扉構造を有するであってもよい。
【0038】
また、暖気通路3および両側の電子機器収納ラック群20を覆うように天井体12Bが設置され、この天井体12Bは、暖気通路3の上面において、暖気を遮蔽する。また、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bが、両側の電子機器収納ラック群20および天井体11Bの上に設置される。
電子機器収納ラック群の冷却装置1Bの冷気通路2側の端部には、冷気を冷気通路2に排出するためのファンユニット13Bが備えられ、その端部は、効率よく冷気を冷気通路2に供給するために下方に傾いた形態としている。
【0039】
図10は、本発明の一実施形態における正面図である。
電子機器収納ラック21の正面は、通常ラック正面ドア23を備える点は、他の実施形態と同様である。上記のように、暖気通路3の端に位置する通路側面ドア11Bが電子機器収納ラック21の側面体24に隙間がないように設置されている。
【0040】
また、電子機器収納ラック群20のすべてにわたり天井体12Bが設置され、この天井体12Bは、暖気通路3の上面においても、暖気を遮蔽する。また、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bが、電子機器収納ラック群20および天井体11Bの上に、電子機器収納ラック21の台数に対応して設置される。これにより、電子機器収納ラック群20内の電子機器収納ラック21の台数が増加すれば、その分電子機器収納ラック群の冷却装置1Bの台数を増加させればよい。
なお、図10では、1つの電子機器収納ラック群20には、5台の電子機器収納ラック21が含まれているが、もちろんこれに限定されない。また、1つの電子機器収納ラック群の冷却装置1Bの台数は、同一電子機器収納ラック群内の電子機器収納ラック21の台数と同じである必要はない。
【0041】
電子機器収納ラック群20の上には、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bの冷気通路2側の端部があり、その端部には冷気を冷気通路2に排出するためのファンユニット13Bが備えられる。このファンユニット13Bは、冷気を下方に向けて排出することにより、ラック正面ドア23に備えられるスリット状、網目状などの開口部(図示せず)に冷気を供給できる。
【0042】
図11は、本発明の一実施形態における平面図である。
電子機器収納ラック群の冷却装置1Bは、暖気通路3および2列の電子機器収納ラック群20全体を覆うように設置される。また、上記のように、電子機器収納ラック群の冷却装置1Bは、電子機器収納ラック21の台数に対応して設置される。
【0043】
図12は、本発明の一実施形態における斜視図である。
電子機器収納ラック群20の前面には冷却通路2があり、電子機器収納ラック21は、冷気をラック正面ドア23などから取り入れ、内部の電子機器を冷却する。電子機器収納ラック群20の背面は、2つの電子機器収納ラック群20と、通路側面ドア11Bと、天井体12Bとで遮蔽された暖気空間を形成する。電子機器収納ラック群の冷却装置1Bは、天井体12Bの上に設置され、天井体の開口部(図示せず)から暖気を取り入れ、内部の熱交換器14Bで冷却し、冷気通路2側の端部に備えられたファンユニット13Bから冷気通路2の下方に向けて冷気を排出する。
【0044】
<第4実施形態>
図13は、本発明の一実施形態における断面図と空気の流れを示した図である。
図8の第3実施形態と比べると、本実施形態に係る電子機器収納ラック群の冷却装置1Cの冷気通路2側の端部における、冷気を冷気通路2へ排出するための形態が異なっており、より効率良く冷気を冷気通路2に供給するために真下に排出する形態となっている。なお、本実施形態に係る電子機器収納ラック群の冷却装置1Cの冷気通路2側の端部に備えられたファンユニット13Cは、シロッコファンである。空気の流れる方向を直角に曲げることができる。なお、本実施例ではシロッコファンを用いたが、これに限定されるものではなく、遠心ファン、斜流ファンなどの他の構造を持つファンであってもよい。このファンユニット13Cは、冷気を冷気通路2に向かって真下に向けて排出することにより、通常電子機器収納ラック21の冷気通路2に向けて設けられるラック正面ドアの、特に上部にあるスリット状、網目状などの開口部(図示せず)に冷気を直接供給できる。
【0045】
第3実施形態と同様に、天井体開口部121Cからファンユニット13Cへの途中において、熱交換器14Cが備えられ、暖気はこの熱交換器14Cを通過することにより冷却される。図13では、熱交換器14Cは天井体開口部121Cの左右に1つずつ設けられているが、これに限るものではなく、天井体開口部121Cからファンユニット13Cへ至る途中に複数の熱交換器14Cが備えられてもよく、そうすると熱交換器14Cは電子機器収納ラック群20の上に配置される。
その結果、電子機器22が高密度化し発熱量が大きくなったとしても、その熱交換器14Cの数をその途中経路内で増加させることにより、冷却能力も増大させることが可能となる。そうすると、電子機器収納ラック群の冷却装置1Cの両端から排出される冷気の温度は、空気調和システム34が排出する冷気の温度とほぼ同じにすることも可能となるので、電子機器収納ラック群の冷却装置1Cが冷却した冷気を直接電子機器収納ラック21内の電子機器22に供給したとしても、電子機器収納ラック21の上部にある電気機器10が吸い込む冷気の温度と、下部にある電子機器10が吸い込む冷気の温度とがほぼ同じにすることができる。
【0046】
図14は、本発明の一実施形態における熱交換器を表した図である。
一実施形態における熱交換器14Cを表した図である。フィン型の放熱板から構成されているが、これに限定されるものではない。それぞれの熱交換器14Cには、熱交換器供給管142と熱交換器排出管141が備えられ、それぞれ電算機室30に設けられる冷却機(図示せず)に繋がる供給管と排出管(図示せず)とに接続される。この供給管と排出管は通常床下空間33や床開口部32を通して配設される。なお、この供給管により供給されるものは、水や冷媒などの熱交換の媒体になりうる液体または気体である。
好ましくは、この熱交換器14Cを設置した場合の冷気排出面側に温度測定部が設けられる(図示せず)。これにより、熱交換器14Cにより冷やされた冷気の温度が測定できる。
【符号の説明】
【0047】
1 電子機器収納ラック群の冷却装置
1A 電子機器収納ラック群の冷却装置
1B 電子機器収納ラック群の冷却装置
2 冷気通路
3 暖気通路
10 暖気空間
11 壁体
11B 通路側面ドア
11C 通路側面ドア
12 天井体
12A 天井体
12B 天井体
12C 天井体
121 天井体開口部
121A 天井体開口部
121B 天井体開口部
121C 天井体開口部
13 ファンユニット
13A ファンユニット
13B ファンユニット
13C ファンユニット
14 熱交換器
14A 熱交換器
14B 熱交換器
14C 熱交換器
141 熱交換器排出管
142 熱交換器供給管
20 電子機器収納ラック群
21 電子機器収納ラック
22 電子機器
23 ラック正面ドア
24 ラック側面体
30 電算機室
31 床
32 床開口部
33 床下空間
34 空気調和システム
40 空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に電子機器を有する複数の電子機器収納ラックが複数の列をなすように設置され、対向する前記電子機器収納ラックの前記列の間に形成される通路が冷気通路と暖気通路とに交互に形成するように配置された電子機器収納ラック群の冷却装置であって、
前記暖気通路の両端に位置し前記暖気通路を遮蔽する壁体と、
前記暖気通路の上方に位置し前記暖気通路を遮蔽する天井体と、
空気を冷却する熱交換器と、を備え、
前記熱交換器は、前記暖気通路に排出され、側面を2つの前記列及び前記壁体と上面を前記天井体とにそれぞれ囲まれて形成される暖気空間内に隔絶された暖気を冷却し、前記暖気空間外に冷気を排出することを特徴とする電子機器収納ラック群の冷却装置。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記天井体の開口部を通して前記暖気を取り入れることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記暖気通路の上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記列の上方に配置されることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記冷気を前記冷気通路へ排出することを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷気通路への排出は、前記冷気通路の上方から下方に向けて行われることを特徴とする請求項5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記暖気の取り入れは、ファンにより行われることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷気の排出は、ファンにより行われることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記熱交換器は、水冷式熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記熱交換器は、冷媒式熱交換器であることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
【請求項11】
内部に電子機器を有する複数の電子機器収納ラックが複数の列をなすように設置され、対向する前記電子機器収納ラックの前記列の間に形成される通路が冷気通路と暖気通路とに交互に形成するように配置された電子機器収納ラック群の冷却方法であって、
前記暖気通路に排出され、側面を2つの前記列及び前記暖気通路の両端に位置し前記暖気通路を遮蔽する壁体に、上面を前記暖気通路の上方に位置し前記暖気通路を遮蔽する天井体に、それぞれ囲まれて形成される暖気空間内に隔絶した暖気を冷却した後、前記暖気空間外に冷気を排出することを特徴とする電子機器収納ラック群の冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−134803(P2011−134803A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291282(P2009−291282)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】