電子機器用ラックおよびデータセンタ
【課題】排気部の局所的な熱集中による冷却能力の低下を防止する電子機器用ラックを提供する。
【解決手段】電子機器を収納した電子機器用ラック101において、電子機器用ラック101のリアドア102に内蔵されたラジエータ200と、ラジエータ200の排気側に設置された複数のファンと、ラジエータ200の入気側に設置された複数のヒートパイプ602とを備えた。
【解決手段】電子機器を収納した電子機器用ラック101において、電子機器用ラック101のリアドア102に内蔵されたラジエータ200と、ラジエータ200の排気側に設置された複数のファンと、ラジエータ200の入気側に設置された複数のヒートパイプ602とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用ラックに関し、特に、電子機器用ラック内に設置されたサーバの排気の温度分布が大きい場合における冷却性能の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやサーバ等の電子機器に搭載される中央処理装置(CPU)等の半導体デバイスは小型化・高集積化により発熱量が益々増大している。それにあわせて、サーバを搭載するラック、そのラックを一括管理するデータセンタの空調機の能力も増加させる必要性が大きくなってきている。
【0003】
このような傾向に対応するために、近年は、例えば、特開2010−041007号公報(特許文献1)に記載されたような、ラックの排気部に設置されたドアに熱交換器(ラジエータ)を内蔵させ、そのラジエータに冷媒を流すことによって、排気部の熱を室外に排出する方式が提案されている。
【0004】
この方式の利点はサーバラックの直後にラジエータが設置されているため、部屋全体に熱が拡散する前に熱交換できるので、効率のよい冷却が可能になることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−041007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述のような従来型の冷却システムの例を、図8および図9に示す。図8は従来の冷却システムを説明する概略構成図、図9は従来の冷却構造を説明するリアドア部分だけを抽出した概略構成図である。
【0007】
図8はサーバを搭載した電子機器用ラック101、および電子機器用ラック101に取り付けられたラジエータ内蔵のリアドア102を斜視図にしたものである。リアドア102にはファン103が複数個付けられており、矢印104の方向に風を流し、サーバのファンから見て、ラジエータの流体抵抗をなくす役割を担っている。
【0008】
図9はリアドア102を風上側から見た斜視図になっている。ドアには吸熱後の冷媒配管201、吸熱前の冷媒配管202が設置されている。ドア内部で配管は枝分かれし、配管には多数のフィン203が接続されており、熱交換されるようになっている。
【0009】
この熱交換により、吸熱された熱は冷媒配管201を通じて接続された外部の熱交換器で室外に排出されるシステムになっている。
【0010】
しかし、このシステムでは次の2点について課題があった。
【0011】
ここで、図10および図11により、この2点の課題について説明する。図10は従来技術におけるサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図、図11は従来技術におけるサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【0012】
1つ目の課題は、サーバ排気部直後に設置されているため、大きな温度分布をもった排気がラジエータ部にあたることによる局所的な冷却性能の低下である。
【0013】
図10は、ラックサーバを側面から見ており、1つ目の課題となる状況を模式的に示している。
【0014】
電子機器用ラック101に搭載されたサーバ301は、高い負荷のかかるプログラムによってリアドアの許容最大発熱量Qmaxにほぼ等しい電力を消費している。それにより、点線302で示された排気温度は、図の横方向(風の流れ方向)を温度の高さとすると、サーバの搭載部だけが温度が極端に高くなる山なりの形状になる。
【0015】
エリア毎にラック上部、ラック中央部、ラック下部に3分割して、Qu、Qm、Qlと呼ぶことにすると、ほとんどの熱量はQmに集中しているためである。そしてこのような熱集中による温度差は、温度の高い特定箇所(中央部だけ)での熱交換を発生させることになる。
【0016】
ここで、一般に熱交換量Qは以下の式で表すことができる。
Q=(T2−T1)×h×A
なお、T1はフィンの温度、T2はドアの入気部(ラジエータ部直前)の温度、hは熱伝達率、Aはフィンの面積としている。
【0017】
Aはラジエータの物理寸法によって決まり一定値である。hはフィンに流れる風量、流れる流体の種別などから決まる。また、温度T2は状態量だがサーバの発熱量と風量から一義的に決まり、懸念される熱集中とはT2の値が大きくなることを意味している。
【0018】
一方、フィン温度T1は一定の冷媒温度と十分な冷媒量が確保できれば一定値にすることが可能だが、熱集中が発生した分だけ冷媒量が増加していくわけではない。これは冷媒量が増加すると一般に2乗則で冷媒の流体抵抗が増加するためである。
【0019】
そのため、局所的な熱集中により、該当箇所の冷却能力を超える箇所が出てきてしまう。すると、本来は所定温度にまで冷却されるはずのところが、本来より高い温度の風が排出されることになり、許容発熱量を遵守しているにもかかわらず、結果として、冷却性能が低下していることになる。
【0020】
また、2つ目の課題は、上記のような不均一な温度分布により、冷却能力の精度の高い測定が困難になることである。図11に示すように、従来技術を用いた製品ではラジエータの入気および排気部に温度センサを搭載しており、入気、排気の平均温度差からラジエータの冷却能力(熱交換量)を測定、顧客に提示できるようになっている。
【0021】
しかし、上記のような局所的な熱集中が発生すると、入気センサの検出値が入気の平均値を示さなくなる(事例、図11では、入気センサ401、402は平均より低い値を示す)。このような状況の解決策のひとつとして、センサを多数取り付け、分布を正確に把握することがある。
【0022】
しかし、この方法はコスト、保守性に問題が多く、現実的ではない。
【0023】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を考慮し、排気部の局所的な熱集中による冷却能力の低下を防止する電子機器用ラックを提供することにある。
【0024】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0026】
すなわち、代表的なものの概要は、電子機器用ラックのリアドアに内蔵されたラジエータと、ラジエータの排気側に設置された複数のファンと、ラジエータの入気側に設置された複数のヒートパイプとを備えたものである。
【0027】
また、電子機器用ラックのリアドア側に設置された複数のファンと、電子機器用ラックのフロントドア側に設置された複数のヒートパイプとを備えたものである。
【発明の効果】
【0028】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0029】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、ラジエータの入気について均一な温度分布を得ることが可能になる。結果、温度分布の不均一による限界冷却能力の超過を防止し、安定して所定の冷却能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックにおける流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係を示す相関グラフである。
【図6】本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換を説明する構成図である。
【図8】従来の冷却システムを説明する概略構成図である。
【図9】従来の冷却構造を説明するリアドア部分だけを抽出した概略構成図である。
【図10】従来技術におけるサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図である。
【図11】従来技術におけるサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0032】
(実施の形態1)
図1〜図3により、本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、前方から電子機器用ラックを含めた全体図を表しており、サーバを1台搭載した電子機器用ラックの排気側にラジエータ内蔵のドアが設置されているものを示している。図2は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図、図3は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【0033】
図1において、電子機器用ラック101の排気側には、リアドア102が設置されており、リアドア102にはラジエータ200が内蔵されている。ラジエータ200には、冷媒配管201、202が設置され、この冷媒配管201、202はリアドア102内部で枝分かれし、ラジエータを構成する多数のフィン203と接続されており、熱交換できるようになっている。この熱交換により、吸熱された熱が冷媒配管201を通じて室外に排出される仕組みとなっている。
【0034】
また、このフィン203の風上側には、複数個のヒートパイプ602から構成されたユニット501が実装されている。このヒートパイプ602は、例えば、中央部分に設置されたサーバ301からの排気による中央部分の熱を毛細管現象により上下方向に移動させることができる構成となっている。
【0035】
また、図2に示すように、リアドア102には、ファン103が複数個搭載され、リアドア102内部のラジエータの圧力損失を相殺する役目を担っている。
【0036】
次に、サーバ搭載時のサーバ排気の温度分布について説明する。
【0037】
図2に示すように、電子機器用ラック101内にサーバ301が1台のみで、その1台には高負荷がかかっているため、サーバ301の直後では温度分布線603に示すような山形の温度分布となる。
【0038】
つまり、大きな温度分布(熱集中)ができていることになる。この温度分布は、ヒートパイプ602を通過する際に、ヒートパイプ602の低温部と高温部間での凝縮、蒸発作用による熱移動を引き起こし、その結果、ヒートパイプ602の通過後、温度分布線601は平滑化されることになる。
【0039】
次に、温度センサが設置された場合の設置位置について説明する。図3に示すように、リアドア102のラジエータ入排気部に温度センサが設置された場合では、入気部には、入気センサ401、402が設置され、排気部には、排気センサ403、404の2ヶ所ずつ設置されており、それぞれ入気の平均値、排気の平均値の差分から熱交換量を計算している。
【0040】
この場合サーバ301の直後では、温度分布線603に示されるように排気温度が高くなっている。しかし、本実施の形態では、入気センサ401、402および排気センサ403、404の設置部分での温度は温度分布線601に示されるように排気温度の不均一が緩和され、入気センサ401、402および排気センサ403、404が平均値に近い適正な値を示すことになる。
【0041】
したがって、平滑化効果により多数の温度センサは必要なく、センサの数を減らすことができる。なお、本実施の形態は、図1に示すような構成にこだわることなく、種々変形して実施しうる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、ヒートパイプの形状を平板型にしたものである。
【0043】
図4により、本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図4は本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、リアドアの部分のみを示している。
【0044】
図4に示すように、ユニット501のヒートパイプの形状を一般的な丸型ではなく平板型にし、かつ、平板型ヒートパイプ801に銅あるいはアルミのフィン802を半田などで接続した形状にしている。
【0045】
これによって、熱集中の緩和効果をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
次に、図5により、本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係について説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係を示す相関グラフである。
【0047】
図5に示すように、平板型ヒートパイプ801の数を増やすと熱集中の緩和効果は向上する一方で、排気がリアドア102を通過する際の圧力損失は増大し、風量が減少することになる。風量の減少度合いは、ラジエータの寸法、圧力損失特性によっても変動するが、ここではリアドア102の熱交換能力を10kW程度したとき条件での適正なヒートパイプ割合を求めている。
【0048】
平板型ヒートパイプ801の割合が70%を超えると風量が急激に低下していくことから、平板型ヒートパイプ801の割合は70%以下にすることが好ましいことが分かる。
【0049】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態2において、フィン付ヒートパイプから構成されているユニット501を電子機器用ラックのリアドア側ではなく、フロントドア側に設置したものである。
【0050】
図6により、本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図6は本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、フロントドアの部分のみを示している。
【0051】
図6において、電子機器用ラック101内にサーバ301が複数台搭載され、フロントドア1101側にフィン1103が接続された平板型ヒートパイプ1102から構成されたユニット501が配置されている。なお、リアドア側には、ファンが複数個付けられている。
【0052】
このように本実施の形態では、フロントドア1101側に平板型ヒートパイプ1102が配置しているので、平板型ヒートパイプ1102によりフロントドア1101側からの入気温度を均一化することができ、電子機器用ラック101内のサーバ301への冷却を効率よく行うことができる。
【0053】
これは、通常の空調機を使用したデータセンタ内においても、電子機器用ラック101やその他のサーバなどの設置レイアウト、動作状況によって、熱集中が発生し、電子機器用ラック101の入気の温度分布ができてしまうことがあるが、その対策には有効となる。
【0054】
(実施の形態4)
図7により、本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換について説明する。図7は本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換を説明する構成図である。
【0055】
図7において、データセンタ1002内には、複数の電子機器用ラック101が配置され、電子機器用ラック101のリアドア102には、実施の形態1、2に示したようなユニット501が配置されている。
【0056】
図7に示す例では、データセンタ1002内に2台の電子機器用ラック101があり、それぞれにラジエータ内蔵のリアドア102が設置されている。このリアドア102には冷媒配管が接続されており、この冷媒配管を通じて、リアドア102に内蔵されたラジエータで吸熱された熱が外部の熱交換器1001で室外に排出される仕組みになっている。
【0057】
また、本実施の形態では、この外部の熱交換器1001は必ずリアドア102より一定距離の高さを確保し、かつ、適正な冷媒量を充填して流すことにより冷媒が自然循環する仕組みになっている。
【0058】
これにより、本実施の形態では、熱交換をポンプレスで行うことが可能である。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子機器用ラックに関し、複数のサーバの排気の温度分布が大きい場合のサーバラックなどの冷却に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
101…電子機器用ラック、102…リアドア、103…ファン、200…ラジエータ、201…吸熱後の冷媒配管、202…吸熱前の冷媒配管、203…フィン、301…サーバ、302…点線、401、402…入気センサ、403、404…排気センサ、501…ユニット、602…ヒートパイプ、801…平板型ヒートパイプ、802…フィン、1001…外部の熱交換器、1002…データセンタ、1101…フロントドア、1102…平板型ヒートパイプ、1103…フィン。
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器用ラックに関し、特に、電子機器用ラック内に設置されたサーバの排気の温度分布が大きい場合における冷却性能の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータやサーバ等の電子機器に搭載される中央処理装置(CPU)等の半導体デバイスは小型化・高集積化により発熱量が益々増大している。それにあわせて、サーバを搭載するラック、そのラックを一括管理するデータセンタの空調機の能力も増加させる必要性が大きくなってきている。
【0003】
このような傾向に対応するために、近年は、例えば、特開2010−041007号公報(特許文献1)に記載されたような、ラックの排気部に設置されたドアに熱交換器(ラジエータ)を内蔵させ、そのラジエータに冷媒を流すことによって、排気部の熱を室外に排出する方式が提案されている。
【0004】
この方式の利点はサーバラックの直後にラジエータが設置されているため、部屋全体に熱が拡散する前に熱交換できるので、効率のよい冷却が可能になることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−041007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述のような従来型の冷却システムの例を、図8および図9に示す。図8は従来の冷却システムを説明する概略構成図、図9は従来の冷却構造を説明するリアドア部分だけを抽出した概略構成図である。
【0007】
図8はサーバを搭載した電子機器用ラック101、および電子機器用ラック101に取り付けられたラジエータ内蔵のリアドア102を斜視図にしたものである。リアドア102にはファン103が複数個付けられており、矢印104の方向に風を流し、サーバのファンから見て、ラジエータの流体抵抗をなくす役割を担っている。
【0008】
図9はリアドア102を風上側から見た斜視図になっている。ドアには吸熱後の冷媒配管201、吸熱前の冷媒配管202が設置されている。ドア内部で配管は枝分かれし、配管には多数のフィン203が接続されており、熱交換されるようになっている。
【0009】
この熱交換により、吸熱された熱は冷媒配管201を通じて接続された外部の熱交換器で室外に排出されるシステムになっている。
【0010】
しかし、このシステムでは次の2点について課題があった。
【0011】
ここで、図10および図11により、この2点の課題について説明する。図10は従来技術におけるサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図、図11は従来技術におけるサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【0012】
1つ目の課題は、サーバ排気部直後に設置されているため、大きな温度分布をもった排気がラジエータ部にあたることによる局所的な冷却性能の低下である。
【0013】
図10は、ラックサーバを側面から見ており、1つ目の課題となる状況を模式的に示している。
【0014】
電子機器用ラック101に搭載されたサーバ301は、高い負荷のかかるプログラムによってリアドアの許容最大発熱量Qmaxにほぼ等しい電力を消費している。それにより、点線302で示された排気温度は、図の横方向(風の流れ方向)を温度の高さとすると、サーバの搭載部だけが温度が極端に高くなる山なりの形状になる。
【0015】
エリア毎にラック上部、ラック中央部、ラック下部に3分割して、Qu、Qm、Qlと呼ぶことにすると、ほとんどの熱量はQmに集中しているためである。そしてこのような熱集中による温度差は、温度の高い特定箇所(中央部だけ)での熱交換を発生させることになる。
【0016】
ここで、一般に熱交換量Qは以下の式で表すことができる。
Q=(T2−T1)×h×A
なお、T1はフィンの温度、T2はドアの入気部(ラジエータ部直前)の温度、hは熱伝達率、Aはフィンの面積としている。
【0017】
Aはラジエータの物理寸法によって決まり一定値である。hはフィンに流れる風量、流れる流体の種別などから決まる。また、温度T2は状態量だがサーバの発熱量と風量から一義的に決まり、懸念される熱集中とはT2の値が大きくなることを意味している。
【0018】
一方、フィン温度T1は一定の冷媒温度と十分な冷媒量が確保できれば一定値にすることが可能だが、熱集中が発生した分だけ冷媒量が増加していくわけではない。これは冷媒量が増加すると一般に2乗則で冷媒の流体抵抗が増加するためである。
【0019】
そのため、局所的な熱集中により、該当箇所の冷却能力を超える箇所が出てきてしまう。すると、本来は所定温度にまで冷却されるはずのところが、本来より高い温度の風が排出されることになり、許容発熱量を遵守しているにもかかわらず、結果として、冷却性能が低下していることになる。
【0020】
また、2つ目の課題は、上記のような不均一な温度分布により、冷却能力の精度の高い測定が困難になることである。図11に示すように、従来技術を用いた製品ではラジエータの入気および排気部に温度センサを搭載しており、入気、排気の平均温度差からラジエータの冷却能力(熱交換量)を測定、顧客に提示できるようになっている。
【0021】
しかし、上記のような局所的な熱集中が発生すると、入気センサの検出値が入気の平均値を示さなくなる(事例、図11では、入気センサ401、402は平均より低い値を示す)。このような状況の解決策のひとつとして、センサを多数取り付け、分布を正確に把握することがある。
【0022】
しかし、この方法はコスト、保守性に問題が多く、現実的ではない。
【0023】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術の問題点を考慮し、排気部の局所的な熱集中による冷却能力の低下を防止する電子機器用ラックを提供することにある。
【0024】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次の通りである。
【0026】
すなわち、代表的なものの概要は、電子機器用ラックのリアドアに内蔵されたラジエータと、ラジエータの排気側に設置された複数のファンと、ラジエータの入気側に設置された複数のヒートパイプとを備えたものである。
【0027】
また、電子機器用ラックのリアドア側に設置された複数のファンと、電子機器用ラックのフロントドア側に設置された複数のヒートパイプとを備えたものである。
【発明の効果】
【0028】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
【0029】
すなわち、代表的なものによって得られる効果は、ラジエータの入気について均一な温度分布を得ることが可能になる。結果、温度分布の不均一による限界冷却能力の超過を防止し、安定して所定の冷却能力を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【図4】本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックにおける流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係を示す相関グラフである。
【図6】本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図である。
【図7】本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換を説明する構成図である。
【図8】従来の冷却システムを説明する概略構成図である。
【図9】従来の冷却構造を説明するリアドア部分だけを抽出した概略構成図である。
【図10】従来技術におけるサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図である。
【図11】従来技術におけるサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0032】
(実施の形態1)
図1〜図3により、本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図1は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、前方から電子機器用ラックを含めた全体図を表しており、サーバを1台搭載した電子機器用ラックの排気側にラジエータ内蔵のドアが設置されているものを示している。図2は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時のサーバ排気の温度分布を説明する断面図、図3は本発明の実施の形態1に係る電子機器用ラックのサーバ搭載時の温度センサの搭載位置を説明する断面図である。
【0033】
図1において、電子機器用ラック101の排気側には、リアドア102が設置されており、リアドア102にはラジエータ200が内蔵されている。ラジエータ200には、冷媒配管201、202が設置され、この冷媒配管201、202はリアドア102内部で枝分かれし、ラジエータを構成する多数のフィン203と接続されており、熱交換できるようになっている。この熱交換により、吸熱された熱が冷媒配管201を通じて室外に排出される仕組みとなっている。
【0034】
また、このフィン203の風上側には、複数個のヒートパイプ602から構成されたユニット501が実装されている。このヒートパイプ602は、例えば、中央部分に設置されたサーバ301からの排気による中央部分の熱を毛細管現象により上下方向に移動させることができる構成となっている。
【0035】
また、図2に示すように、リアドア102には、ファン103が複数個搭載され、リアドア102内部のラジエータの圧力損失を相殺する役目を担っている。
【0036】
次に、サーバ搭載時のサーバ排気の温度分布について説明する。
【0037】
図2に示すように、電子機器用ラック101内にサーバ301が1台のみで、その1台には高負荷がかかっているため、サーバ301の直後では温度分布線603に示すような山形の温度分布となる。
【0038】
つまり、大きな温度分布(熱集中)ができていることになる。この温度分布は、ヒートパイプ602を通過する際に、ヒートパイプ602の低温部と高温部間での凝縮、蒸発作用による熱移動を引き起こし、その結果、ヒートパイプ602の通過後、温度分布線601は平滑化されることになる。
【0039】
次に、温度センサが設置された場合の設置位置について説明する。図3に示すように、リアドア102のラジエータ入排気部に温度センサが設置された場合では、入気部には、入気センサ401、402が設置され、排気部には、排気センサ403、404の2ヶ所ずつ設置されており、それぞれ入気の平均値、排気の平均値の差分から熱交換量を計算している。
【0040】
この場合サーバ301の直後では、温度分布線603に示されるように排気温度が高くなっている。しかし、本実施の形態では、入気センサ401、402および排気センサ403、404の設置部分での温度は温度分布線601に示されるように排気温度の不均一が緩和され、入気センサ401、402および排気センサ403、404が平均値に近い適正な値を示すことになる。
【0041】
したがって、平滑化効果により多数の温度センサは必要なく、センサの数を減らすことができる。なお、本実施の形態は、図1に示すような構成にこだわることなく、種々変形して実施しうる。
【0042】
(実施の形態2)
実施の形態2は、実施の形態1において、ヒートパイプの形状を平板型にしたものである。
【0043】
図4により、本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図4は本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、リアドアの部分のみを示している。
【0044】
図4に示すように、ユニット501のヒートパイプの形状を一般的な丸型ではなく平板型にし、かつ、平板型ヒートパイプ801に銅あるいはアルミのフィン802を半田などで接続した形状にしている。
【0045】
これによって、熱集中の緩和効果をさらに向上させることが可能となる。
【0046】
次に、図5により、本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係について説明する。図5は本発明の実施の形態2に係る電子機器用ラックの流路面積のうちヒートパイプの占める割合と風量の関係を示す相関グラフである。
【0047】
図5に示すように、平板型ヒートパイプ801の数を増やすと熱集中の緩和効果は向上する一方で、排気がリアドア102を通過する際の圧力損失は増大し、風量が減少することになる。風量の減少度合いは、ラジエータの寸法、圧力損失特性によっても変動するが、ここではリアドア102の熱交換能力を10kW程度したとき条件での適正なヒートパイプ割合を求めている。
【0048】
平板型ヒートパイプ801の割合が70%を超えると風量が急激に低下していくことから、平板型ヒートパイプ801の割合は70%以下にすることが好ましいことが分かる。
【0049】
(実施の形態3)
実施の形態3は、実施の形態2において、フィン付ヒートパイプから構成されているユニット501を電子機器用ラックのリアドア側ではなく、フロントドア側に設置したものである。
【0050】
図6により、本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造について説明する。図6は本発明の実施の形態3に係る電子機器用ラックの構造を示す構造図であり、フロントドアの部分のみを示している。
【0051】
図6において、電子機器用ラック101内にサーバ301が複数台搭載され、フロントドア1101側にフィン1103が接続された平板型ヒートパイプ1102から構成されたユニット501が配置されている。なお、リアドア側には、ファンが複数個付けられている。
【0052】
このように本実施の形態では、フロントドア1101側に平板型ヒートパイプ1102が配置しているので、平板型ヒートパイプ1102によりフロントドア1101側からの入気温度を均一化することができ、電子機器用ラック101内のサーバ301への冷却を効率よく行うことができる。
【0053】
これは、通常の空調機を使用したデータセンタ内においても、電子機器用ラック101やその他のサーバなどの設置レイアウト、動作状況によって、熱集中が発生し、電子機器用ラック101の入気の温度分布ができてしまうことがあるが、その対策には有効となる。
【0054】
(実施の形態4)
図7により、本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換について説明する。図7は本発明の実施の形態4に係る電子機器用ラックが複数配置されたデータセンタにおける熱交換を説明する構成図である。
【0055】
図7において、データセンタ1002内には、複数の電子機器用ラック101が配置され、電子機器用ラック101のリアドア102には、実施の形態1、2に示したようなユニット501が配置されている。
【0056】
図7に示す例では、データセンタ1002内に2台の電子機器用ラック101があり、それぞれにラジエータ内蔵のリアドア102が設置されている。このリアドア102には冷媒配管が接続されており、この冷媒配管を通じて、リアドア102に内蔵されたラジエータで吸熱された熱が外部の熱交換器1001で室外に排出される仕組みになっている。
【0057】
また、本実施の形態では、この外部の熱交換器1001は必ずリアドア102より一定距離の高さを確保し、かつ、適正な冷媒量を充填して流すことにより冷媒が自然循環する仕組みになっている。
【0058】
これにより、本実施の形態では、熱交換をポンプレスで行うことが可能である。
【0059】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子機器用ラックに関し、複数のサーバの排気の温度分布が大きい場合のサーバラックなどの冷却に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
101…電子機器用ラック、102…リアドア、103…ファン、200…ラジエータ、201…吸熱後の冷媒配管、202…吸熱前の冷媒配管、203…フィン、301…サーバ、302…点線、401、402…入気センサ、403、404…排気センサ、501…ユニット、602…ヒートパイプ、801…平板型ヒートパイプ、802…フィン、1001…外部の熱交換器、1002…データセンタ、1101…フロントドア、1102…平板型ヒートパイプ、1103…フィン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収納した電子機器用ラックであって、
前記電子機器用ラックのリアドアに内蔵されたラジエータと、
前記ラジエータの排気側に設置された複数のファンと、
前記ラジエータの入気側に設置された複数のヒートパイプとを備えたことを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記ラジエータに冷媒配管を介して接続された熱交換器を備え、
前記熱交換器は、前記リアドアよりも高い位置に設置され、
前記ラジエータの冷媒は、前記ラジエータと前記熱交換器との間で自然循環する冷媒量が充填されることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記複数のヒートパイプの実装面積が、前記ラジエータの面積の70%以下に設定されていることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記ラジエータと前記複数のヒートパイプとの間に設置された入気側の温度センサと、
前記ラジエータの排気側に設置された排気側の温度センサとを備え、
前記入気側の温度センサおよび前記排気側の温度センサの検出値に基づいて、前記複数のファンの回転数が設定されることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項5】
電子機器を収納した電子機器用ラックであって、
前記電子機器用ラックのリアドア側に設置された複数のファンと、
前記電子機器用ラックのフロントドア側に設置された複数のヒートパイプとを備えたことを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項6】
室内が空調制御されたデータセンタであって、
請求項2に記載の電子機器用ラックまたは請求項5に記載の電子機器用ラックが複数設置されたことを特徴とするデータセンタ。
【請求項1】
電子機器を収納した電子機器用ラックであって、
前記電子機器用ラックのリアドアに内蔵されたラジエータと、
前記ラジエータの排気側に設置された複数のファンと、
前記ラジエータの入気側に設置された複数のヒートパイプとを備えたことを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記ラジエータに冷媒配管を介して接続された熱交換器を備え、
前記熱交換器は、前記リアドアよりも高い位置に設置され、
前記ラジエータの冷媒は、前記ラジエータと前記熱交換器との間で自然循環する冷媒量が充填されることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項3】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記複数のヒートパイプの実装面積が、前記ラジエータの面積の70%以下に設定されていることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項4】
請求項1に記載の電子機器用ラックにおいて、
前記ラジエータと前記複数のヒートパイプとの間に設置された入気側の温度センサと、
前記ラジエータの排気側に設置された排気側の温度センサとを備え、
前記入気側の温度センサおよび前記排気側の温度センサの検出値に基づいて、前記複数のファンの回転数が設定されることを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項5】
電子機器を収納した電子機器用ラックであって、
前記電子機器用ラックのリアドア側に設置された複数のファンと、
前記電子機器用ラックのフロントドア側に設置された複数のヒートパイプとを備えたことを特徴とする電子機器用ラック。
【請求項6】
室内が空調制御されたデータセンタであって、
請求項2に記載の電子機器用ラックまたは請求項5に記載の電子機器用ラックが複数設置されたことを特徴とするデータセンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−118781(P2012−118781A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268211(P2010−268211)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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