説明

電子機器

【課題】筐体内に設置される部材の組み立て工程を容易に行うことができるようにする。
【解決手段】筐体110の底面には、基板120を固定するための基板固定台112A乃至基板固定台112Hと、組み立て時に、基板120の筐体110側に固定される補強板130が載置される補強板載置台113が設けられている。補強板載置台113の上面には、補強板載置台113に載置された補強板130を所定の位置に位置させるように、それぞれ、補強板130に設けられた補強板位置決め孔131A乃至補強板位置決め孔131Dに嵌合可能な突起形状をなす、補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dが設けられている。本発明は、例えば、電子機器に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関し、特に、筐体内に設置される部材の組み立てを容易に行うことができるようにする電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器等のように筐体内に基板等の板状の部材を設置する場合、様々な基板の固定方法が考えられている(例えば、特許文献1および特許文献3参照)。
【0003】
例えば、特許文献1には、装置本体の底板に直接凸部を設け、この凸部に配線基板のほぼ中央の孔を嵌合させることにより、配線基板の位置決めと支持を行う方法が記載されている。また、特許文献2には、ジャック基板が、リアパネルと突起部とによって位置決めされるように構成する方法が記載されている。
【0004】
ところで、このように筐体内に板状の部材を設置する装置において、その板状の第1の部材の、筐体に設置する際に作業者から見て裏側となる面(以下、背面と称する)に、第2の部材を固定する場合がある。
【0005】
図1は、この様な内部構造を有する電子機器の構成例を示す断面図である。
【0006】
図1において、電子機器10の筐体20の内部には基板11が設置されている。基板11の図中上側の面には、IC(Integrated Circuit)12が設置されている。筐体20が振動したり、衝撃が与えられたりした時に、基板11が撓んでIC12の接点(端子)に負荷がかからないように、基板11の図中下側の面の、IC12と重なる位置に補強板13が取り付けられている。補強板13の基板11側の面には、基板11を傷つけないようにモールド部14(モールド部14A乃至モールド部14D)が設けられている。
【0007】
IC12において発生する熱を放熱するために、IC12の図中上側の面にはヒートシンク15が取り付けられている。ヒートシンク15は、ヒートシンク止めネジ16Aおよび16Bにより、基板11に固定される。ヒートシンク止めネジ16Aおよび16Bは、基板11を貫通して補強板13も同時に固定している。このようにヒートシンク15および補強板13が固定された基板11は、筐体20の基板取り付け支柱21Aおよび21Bに、それぞれ基板止めネジ22Aおよび基板止めネジ22Bにより固定されている。
【0008】
このように第2の部材を筐体に固定するのではなく、第1の部材の背面の所定の位置に固定する場合、第1の部材と第2の部材を互いに位置合わせする必要があるが、上述した第1の特許文献や第2の特許文献に記載の方法は、基板と筐体との位置合わせの方法であるので使用することができない。
【0009】
特に、第2の部材が第1の部材より小さく、第2の部材の上に第1の部材を重ねたときに第1の部材によって第2の部材が隠れて見えなくなってしまうような場合、第1の部材と第2の部材の相対位置を正確に制御することが困難になるので、第2の部材を、第1の部材の背面の予め定められた所定の位置に正確に固定することがより困難になる。
【0010】
このような場合、第1の部材を筐体に設置する前に、第1の部材を裏返して背面を表にし、第2の部材を取り付ける方法が考えられるが、このように第1の部材を裏返して作業面を例えば正面から背面に変えることは、作業が煩雑になるだけでなく、第2の部材の取り付け忘れや、作業面変更時における第1の部材の破損を招く恐れがあり望ましくない。
【0011】
そこで、従来、このような場合の組み立ては、例えば、図2のように、所定の冶具30を用いて行われる。図2Aに示されるように、冶具30には、補強板13を所定の位置に載置させるための補強板位置決めピン31Aおよび31Bと、基板11を所定の位置に載置させるための基板位置決めピン32Aおよび32Bが設けられている。
【0012】
作業者は、図2Aに示されるように、補強板13に設けられている補強板位置決め孔41Aおよび41Bに、それぞれ、補強板位置決めピン31Aおよび31Bが挿入されるような位置に、補強板13を冶具30に載置する。次に、作業者は、図2Bに示されるように、基板11に設けられている基板位置決め孔42Aおよび42Bに、それぞれ、基板位置決めピン32Aおよび32Bが挿入されるような位置に、基板11を冶具30に載置する。さらに、作業者は、基板11に設けられたIC12上にヒートシンク15を載置し、ヒートシンク止めネジ16Aおよび16Bを用いてヒートシンク15を基板11に固定する。このとき、図2Cに示されるように、基板11の裏側のIC12の下に置かれた補強板13も、基板11を貫通したヒートシンク止めネジ16Aおよび16Bにより固定される。
【0013】
図2Cに示されるように基板11を組み立てると、作業者は、冶具30を基板11より外し、筐体20を冶具30の代わりに作業台に置いたり、組み立てた基板11を筐体組み立てラインに移動させたりして、基板11を、基板止めネジ22Aおよび22Bを用いて筐体20の所定の位置に設置する。つまり、作業者は、基板11に設けられている基板位置決め孔42Aおよび42Bが、それぞれ、基板位置決めピン32Aおよび32B上に位置するように、基板11を筐体20に載置し、基板止めネジ22Aを基板11の上面から基板位置決め孔42Aを貫通させ、基板11を基板位置決めピン32Aに固定し、さらに、基板止めネジ22Bを基板11の上面から基板位置決め孔42Bを貫通させ、基板11を基板位置決めピン32Bに固定する。
【0014】
また、図1の構成と類似する構成として、特許文献3には、ICの下面に配置された放熱シートの下側に放熱板が設置され、ボトムシャーシには下面から放熱板に向けて複数本の長ねじが挿通され、この複数本の長ねじの先端が放熱板の下面に当接されており、放熱板の下面には長ねじの先端が入り込む位置決め用の凹部が形成されるような構成が記載されている。
【0015】
具体的に組み立て方法の記載は無いが、例えば、作業台の上に放熱板を、引用文献3の図1とは上下逆向きに載置し、その上からボトムシャーシを引用文献3の図1とは上下逆向きにして被せ、長ねじによりボトムシャーシの図中下面(つまり上面となっている面)から放熱板をボトムシャーシに固定した後、裏返して、引用文献3の図1のように基板をボトムシャーシに固定するか、放熱板を先にボトムシャーシの上に載置し、さらにその上に基板を固定した後、裏返して、ボトムシャーシの図中下面(つまり上面となっている面)から放熱板をボトムシャーシに固定する方法が考えられる。
【0016】
【特許文献1】特開平09−260871号公報
【特許文献2】特開2004−349297号公報
【特許文献3】特開2007−48914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した図2の方法では、基板の組み立て作業に、製品には不要な冶具30が必要になるので、基板組み立ての工程が、基板を筐体に設置する工程とは別に必要になるだけでなく、治具の管理や保管場所、作業場所の確保、および準備や片付け等の段取り等も必要になり、作業に必要な時間やスペースが増大し、結果として製造コストが増大する恐れがあった。
【0018】
また、上述した引用文献3に記載の方法では、ボトムシャーシを裏返す必要があり、作業が煩雑化し、作業忘れや破損の恐れがあった。また、ボトムシャーシを裏返す際に、放熱板の位置がずれてしまう恐れもあった。
【0019】
本発明はこのような問題を解決するためのものであり、筐体内に設置される部材の組み立てを容易にし、コストや工数を低減させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一側面は、筐体内部に、前記筐体に固定される第1の部材、および、前記第1の部材に固定される第2の部材を有する電子機器であって、前記電子機器の組み立て工程において前記第2の部材が前記第1の部材に固定される際に、前記第1の部材に固定される前の第2の部材を前記第1の部材に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする位置合わせ手段を備える電子機器である。
【0021】
前記位置合わせ手段は、前記第1の部材を、前記筐体に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする第1の位置合わせ手段と、前記第1の部材に固定される前の第2の部材を、前記第1の位置合わせ手段により前記筐体に対して前記所定の位置に位置合わせされた前記第1の部材に対して、予め定められた所定の位置に位置合わせする第2の位置合わせ手段とを備えることができる。
【0022】
前記第1の位置合わせ手段は、前記第1の部材が固定されることにより、前記第1の部材の位置合わせを行う固定台を有し、前記第2の位置合わせ手段は、前記第2の部材が載置されることにより前記第2の部材の第1の方向の位置合わせを行う載置台と、前記第2の部材に形成される孔に嵌合されることにより前記第2の部材の、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向の位置合わせを行う突起物とを有することができる。
【0023】
前記位置合わせ手段は、前記筐体を加工して形成されることができる。
【0024】
前記位置合わせ手段は、前記筐体と別体として形成され、前記筐体内部に設置されることができる。
【0025】
本発明の一側面においては、電子機器の組み立て工程において第2の部材が第1の部材に固定される際に、第1の部材に固定される前の第2の部材が、第1の部材に対して予め定められた所定の位置に位置合わせされる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、装置を組み立てることができる。特に、筐体内に設置される部材の組み立てを容易にし、コストや工数を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図3は、本発明を適用した電気機器の主な構成例を示す斜視図である。図3に示される電気機器においては、IC等を含む電子部品等が取り付けられて所定の電子回路が構成される、板状の部材である基板120が、筐体110の内側の、図3において点線で示される基板取付位置111に設置される。
【0028】
その基板取付位置111には、基板120が載置される、基板120を筐体110に固定するための基板固定台112A乃至基板固定台112Hと、組み立て時に、基板120の図中下面(筐体110側)に固定される補強板130が載置される補強板載置台113が設けられている。
【0029】
基板固定台112A乃至基板固定台112Hは、基板120を筐体110の内側の、所定の水平位置の、底面より所定の高さ(垂直位置)に設置するための台である。つまり、基板固定台112A乃至基板固定台112Hは、基板120を固定することにより、基板120を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(基板120の垂直方向および水平方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、基板固定台112A乃至基板固定台112Hは、基板120の筐体110に対する垂直方向および水平方向の位置合わせを行う。
【0030】
なお、例えば図6に示されるように、実際には、基板固定台112A乃至基板固定台112Hは、基板120の位置だけでなく、筐体110に対する相対的な姿勢(向きや角度等)も制御する。つまり、上述した「位置」には、このような「姿勢(向きや角度)」も含まれる。したがって例えば「位置合わせ」とは、単に位置を合わせるだけでなく、向きや角度等の姿勢の調整も含まれる。以下のその他の説明においても同様である。
【0031】
基板固定台112A乃至基板固定台112Hは、基板120が基板取付位置111の所定の高さに設置された(固定された)状態において、それぞれの上面が、一点鎖線で示されるように、基板120に設けられた基板固定孔121A乃至基板固定孔121Hと重畳するような位置に設けられている。以下において、基板固定台112A乃至基板固定台112Hを互いに区別して説明する必要が無い場合、基板固定台112と称する。同様に、基板固定孔121A乃至基板固定孔121Hを互いに区別して説明する必要が無い場合、基板固定孔121と称する。
【0032】
補強板載置台113は、基板120が基板取付位置111に設置された状態において、基板120に固定された補強板130が重畳するような位置に設けられており、組み立て工程において、基板120に固定される前の補強板130が載置される台である。つまり、補強板載置台113は、補強板130が載置されることにより、その補強板130を筐体110の予め定められた所定の高さに位置させる(補強板130の垂直方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、補強板載置台113は、補強板130の基板120に対する垂直方向の位置合わせを行う。
【0033】
その補強板載置台113の上面には、補強板載置台113に載置された補強板130を予め定められた所定の位置に位置させるように、補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dが設けられている。補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dは、それぞれ、補強板130に設けられた補強板位置決め孔131A乃至補強板位置決め孔131Dに嵌合可能な突起形状をなす突起物である。補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dは、一点鎖線で示されるように、それらがそれぞれ補強板位置決め孔131A乃至補強板位置決め孔131Dに嵌合された状態において、補強板載置台113に載置された補強板130を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(補強板130の水平方向の位置を制御する)ように配置されている。つまり、補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dは、補強板130の基板120に対する水平方向の位置合わせを行う。
【0034】
以下において、補強板位置決めダボ114A乃至補強板位置決めダボ114Dを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板位置決めダボ114と称する。同様に、補強板位置決め孔131A乃至補強板位置決め孔131Dを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板位置決め孔131と称する。
【0035】
以上のように、筐体110は、基板固定台112により、基板120を、予め定められた所定の位置である基板取付位置111に固定するだけでなく、補強板載置台113の補強板位置決めダボ114により、基板120の背面(下面)に取り付けられる補強板130を、予め定められた所定の位置に位置させることができる。つまり、筐体110は、補強板130と基板120の相対的な位置関係を、予め定められた所定の状態にすることができる。この状態において、補強板130を基板120に固定することにより、作業者は、冶具を用いることなく、容易に、補強板130を基板120の予め定められた所定の位置に固定することができる。
【0036】
図4Aは、図3の基板固定台112の拡大図である。図4Aに示されるように、基板固定台112は、両矢印152に示される高さの立体形状をなしている。この基板固定台112は、筐体110の底面を板金加工することにより形成される。基板固定台112の上面は、基板120が載置されてネジ止めされるように為されている。
【0037】
なお、図5に示されるように、基板120を固定するためのネジ孔である基板固定孔151を予め形成するようにしてもよい。その場合、基板120が筐体110に固定されるとき、基板固定台112上に載置された基板120の基板固定孔121は、その基板固定孔121に対応する基板固定台112の基板固定孔151上に重畳される。つまり、この状態において、基板固定孔121と基板固定孔151は1つのネジ孔を形成する。そして、1本のネジがそのネジ孔(基板固定孔121と基板固定孔151)に螺合される。各基板固定台112において同様にネジが基板固定孔121と基板固定孔151に螺合され、基板120が基板120に固定される。つまり、基板120は、両矢印152で示されるように、筐体110の底面から所定の高さの位置に固定される。
【0038】
なお、基板固定台112の形状、大きさ、数、基板を固定する高さ、および位置等は、基板120を安定的に固定することができるのであれば任意である。また、各基板固定台112の形状や大きさが互いに異なるようにしてもよい。基板120の固定方法は任意であり、ネジ止め以外の方法で基板120を固定するようにしてもよい。その固定方法によっては、基板固定孔151を省略することができる。
【0039】
図4Bは、図3の補強板載置台113の拡大図である。図4Bに示されるように、補強板載置台113は、両矢印161に示される高さの立体形状をなしており、電子機器組み立ての際に、上面に補強板130が載置されるようになされている。その上面には、上述したように、補強板位置決めダボ114が形成されている。これらの補強板載置台113および補強板位置決めダボ114は、筐体110の底面を板金加工することにより形成される。
【0040】
補強板載置台113に載置された補強板130を所定の位置に位置させることができる構造であり、かつ、補強板位置決め孔131に嵌合可能なものであれば、この補強板位置決めダボ114の形状、大きさ、数、および位置等は任意である。例えば、図4Bにおいては、補強板位置決めダボ114は円柱状の突起形状を為しているように示されるが、例えば、上面が球形など曲面であってもよいし、三角柱や四角柱等であってもよいし、円錐や三角錐等であってもよい。また、各補強板位置決めダボ114が互いに異なる形状や大きさであってもよい。例えば、図4Aにおいて円柱状の各補強板位置決めダボ114の太さや高さが互いに異なるようにしてもよい。
【0041】
補強板130は、補強板載置台113に載置された状態において筐体110の底面から両矢印161により示される高さに位置する。後述するように、基板120は、その補強板130の上に重畳する状態で筐体110に固定される。したがって、両矢印162により示される、筐体110の底面からの補強板位置決めダボ114の上面の高さは、基板120を筐体110に固定する際に邪魔にならないように、図4Aにおいて両矢印152に示される基板固定台112の高さより低くなるように制限される。
【0042】
次に、図5および図6を参照して、このような電子機器の組み立ての様子を説明する。図5は、以下において組み立ての様子を説明する電子機器の部材の構成を説明する図であり、図3の2点鎖線141における断面図である。
【0043】
以下においては、図5に示されるように、筐体110、基板120、および補強板130を組み立てる。より具体的には、作業者は、補強板130を、基板120の背面(図中下面)の、基板120の正面(図中上面)に設置されたIC171に対向する位置に、正面からのネジ止めにより固定し、その基板120を筐体110の基板固定台112に固定する。この補強板130は、基板120を補強する部材であり、基板120の撓みを抑制し、IC171の接点にかかる負荷を軽減させるための部材である。
【0044】
基板120の底面には、基板固定台112Cおよび基板固定台112D、並びに、補強板載置台113および補強板位置決めダボ114Aおよび補強板位置決めダボ114Bが形成される。
【0045】
補強板130の、補強板位置決めダボ114Aおよび補強板位置決めダボ114Bのそれぞれに対応する位置には、補強板位置決め孔131Aおよび補強板位置決め孔131Bが形成されており、補強板130の基板120に対向する面には、補強板130を基板120に固定する際に基板120を傷つけないようにするためのモールド172A乃至モールド172Dが形成される。なお、以下においてモールド172A乃至モールド172Dを互いに区別して説明する必要が無い場合、モールド172と称する。
【0046】
基板120の、基板固定台112Cおよび基板固定台112Dのそれぞれに対応する位置には、基板固定孔121Cおよび基板固定孔121Dが設けられている。
【0047】
このような構成の部材の組み立ての様子を図6に示す。
【0048】
最初に、作業者は、図6Aに示されるように、筐体110を作業台に載せ、補強板130を、その筐体110の補強板載置台113上に、補強板位置決めダボ114Aが補強板位置決め孔131Aに、補強板位置決めダボ114Bが補強板位置決め孔131Bに、それぞれ嵌合するように載置する。
【0049】
次に、作業者は、図6Bに示されるように、基板120を補強板130の上から基板取付位置111に置き、基板止めネジ181Aを、基板固定孔121Cに螺合させ、さらに基板固定台112Cの上面を貫通させるように螺合させ、基板120を筐体110に固定する。同様に、作業者は、基板止めネジ181Bを、基板固定孔121Dに螺合させ、さらに基板固定台112Dの上面を貫通させるように螺合させ、基板120を筐体110に固定する。
【0050】
この状態において、基板120と補強板130は、筐体110により、互いの位置関係が決定される。つまり、補強板130は、基板120の予め定められた位置である、IC171に対向する位置に保持される。
【0051】
したがって、図6Cに示されるように、作業者が、IC171の上にヒートシンク182を載置し、ヒートシンク止めネジ183Aおよびヒートシンク止めネジ183Bでネジ止めすると、ヒートシンク止めネジ183Aおよびヒートシンク止めネジ183Bは、基板120およびモールド172を貫通し、補強板130に螺号される。つまり、ヒートシンク止めネジ183Aおよびヒートシンク止めネジ183Bにより、ヒートシンク182および補強板130は、IC171を挟み込むように、基板120に固定される。
【0052】
以上のように、筐体110は、基板120を、筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる基板固定台112と、基板120に固定される前の補強板130を、筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる補強板載置台113および補強板位置決めダボ114を有する。換言すれば、筐体110は、それらによって、電子機器の組み立て工程において補強板130が基板120に固定される際に、基板120に固定される前の補強板130を基板120に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする。
【0053】
作業者は、このような筐体110を用いることにより、冶具を用いることなく、かつ、基板120を裏返しにする等、作業面の変更を必要とせずに、容易に、補強板130を基板120の背面の、予め定められた所定の位置に固定させることができる。つまり、筐体110が、基板固定台112および補強板載置台113を有し、第1の部材と第2の部材の相対的な位置関係を決めることができるので、作業者は、その筐体110を用いることにより、例えば、第2の部材を、第1の部材の、予め定められた、作業者から見えない所定の位置に容易に固定することができる。
【0054】
したがって、治具の管理や保管場所、作業場所の確保、および準備や片付け等の段取り等が不要になり、電子機器の組み立て工程の作業に必要な時間やスペースも低減させることができ、結果として電子機器の製造コストを低減させることができる。
【0055】
なお、補強板130を基板120に固定する方法は任意であり、ネジ止め以外の方法であってもよい。また、ヒートシンク182はIC171により発生する熱を放熱するための部材であり、IC171において発生する熱が十分に低ければヒートシンク182は省略可能である。
【0056】
さらに、補強板130を基板120にネジ止めすることにより、補強板130が補強板載置台113より浮き上がるようにしてもよい。つまり、補強板130が基板120に固定された状態において、補強板130と基板120がモールド172を介して密着し、さらに、補強板130と補強板載置台113(筐体110)が離れるようにしてもよい。このように補強板130と筐体110の間に隙間を設けることにより、筐体110の撓みによって補強板130に負荷がかかるのを抑制することができ、IC171の端子にかかる負荷を軽減することができる。
【0057】
なお、以上においては、第1の部材である基板120に固定する第2の部材として補強板130を用いるように説明したが、基板120に取り付ける第2の部材はどのようなものであってもよく、例えば、ヒートシンクやその他電子部品等であってもよい。つまり、IC171も省略可能である。また、第2の部材を固定する第1の部材もどのようなものであってもよく、配線基板でなくてももちろんよい。
【0058】
また、以上においては、1つの第2の部材(補強板130)を1つの第1の部材(基板120)に固定する場合について説明したが、第1の部材および第2の部材の数は任意である。つまり、補強板載置台113の数も任意である。もちろん、1つの補強板載置台113に複数の補強板130を載置するようにしてもよいし、補強板載置台113を複数設け、その複数の補強板載置台113の一部又は全部により補強板130の位置を保持するようにしてもよい。
【0059】
さらに、例えば、補強板載置台113を複数設けたり、補強板載置台113に補強板130の補強板位置決め孔131の数より多くの補強板位置決めダボ114を設けたりして、1つの補強板130を基板120に対して複数の位置に位置させることができるようにし、作業者が、1つの補強板130をその複数の位置の中から選択的に決定された位置に設置することができるようにしてもよい。筐体110の構造をこのようにすることにより、複数種類の基板120に対して、上述したように容易に補強板130を固定して設置することができる筐体110を実現することができる。つまり、複数の電子機器に利用可能な筐体110において、上述したように組み立て工程を容易にすることができる。
【0060】
また、以上においては、補強板載置台113により補強板130の基板120に対する垂直方向の位置合わせを行い、補強板位置決めダボ114により補強板130の基板120に対する水平方向の位置合わせを行うように説明したが、補強板130の垂直方向および水平方向の位置合わせはどのような構成により行うようにしてもよい。例えば、補強板載置台113上面に溝等の所定の凹凸を設け、その凹凸により、補強板130を所定の水平位置でしか安定的に載置できない(つまり、補強板載置台113上面の溝によって補強板130の基板120に対する水平方向の位置合わせを行う)ようにしてもよい。もちろん、これ以外の方法であってもよい。
【0061】
さらに、以上のような第1の部材と第2の部材との相対位置を決定する構成は、筐体110と別体として構成するようにしてもよい。図7は、その場合の構成例を示す断面図である。図7に示される電子機器は、基本的に、図3に示される電子機器と同様の構成を有する。また、図7は、図5や図6の場合と同様に、電子機器の、図3における2点鎖線141の位置における断面を示している。
【0062】
図7の例の場合、上述した例と異なり、基板固定台や補強板載置台は、筐体底面ではなく、筐体底面に設けられた筐体とは別体の部材(載置台)に形成される。図7Aにおいては、筐体210の底面に、基板固定台221Cと補強板載置台222Aを有する載置台220A、並びに、基板固定台221Dと補強板載置台222Bを有する載置台220Bが設置されている。図3の場合と同様に、補強板載置台222Aの上面には、補強板位置決めダボ223Aが形成され、補強板載置台222Bの上面には、補強板位置決めダボ223Bが形成される。
【0063】
なお、実際には、補強板載置台の中央付近が開口しているだけであり、図7Aにおいて2つに分けて示されている補強板載置台222Aおよび補強板載置台222Bは、1つの補強板載置台222の一部を示している。
【0064】
同様に、載置台220Aおよび載置台220Bも同様に、実際には1つの載置台220として形成され、図7Aに示される載置台220Aおよび載置台220Bは、その載置台220の一部を示している。
【0065】
また、図7Aにおいては、2点鎖線141上に存在する構成のみ示されている。載置台220全体には、図3に示される例と同様に、基板固定台221A乃至基板固定台221H(基板固定台221Cおよび基板固定台221D以外は図示せず)が形成される。同様に、補強板載置台222全体には、補強板位置決めダボ223A乃至補強板位置決めダボ223D(補強板位置決めダボ223Cおよび補強板位置決めダボ223Dは図示せず)が形成される。
【0066】
以下において、基板固定台221A乃至基板固定台221Hを互いに区別して説明する必要の無い場合、基板固定台221と称する。同様に、補強板位置決めダボ223A乃至補強板位置決めダボ223Dを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板位置決めダボ223と称する。
【0067】
基板固定台221は、図3乃至図6を参照して上述した例の基板固定台112と同様の固定台であり、基板120を固定することにより、基板120を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(基板120の垂直方向および水平方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、基板固定台221は、基板120の筐体110に対する垂直方向および水平方向の位置合わせを行う。
【0068】
また、補強板載置台222は、図3乃至図6を参照して上述した例の補強板載置台113と同様の載置台であり、補強板130が載置されることにより、その補強板130を筐体110の予め定められた所定の高さに位置させる(補強板130の垂直方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、補強板載置台222は、補強板130の基板120に対する垂直方向の位置合わせを行う。
【0069】
さらに、補強板位置決めダボ223は、図3乃至図6を参照して上述した例の補強板位置決めダボ114と同様のダボであり、各補強板位置決めダボ223が各補強板位置決め孔131に嵌合された状態において、補強板載置台222に載置された補強板130を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(補強板130の水平方向の位置を制御する)ように配置されている。つまり、補強板位置決めダボ223は、補強板130の基板120に対する水平方向の位置合わせを行う。
【0070】
この場合の組み立ても、基本的に図5や図6を参照して説明した場合と同様に行われる。つまり、作業者は、補強板130を、補強板載置台222上に、補強板位置決めダボ223を補強板位置決め孔131に嵌合させるように載置し、その上から基板120を基板固定台221の上に載置し、基板止めネジ181Aおよび基板止めネジ181Bにより固定する。さらにその上からヒートシンク182をIC171上に載置し、ヒートシンク止めネジ183Aおよびヒートシンク止めネジ183Bを用いて、ヒートシンク182と補強板130とでIC171を挟み込むように、ヒートシンク182および補強板130を基板120に固定する。その状態を図7Bに示す。
【0071】
図7Bに示されるように、基板120および補強板130等の固定方法は、上述した例と基本的に同様である(図6C)。
【0072】
ただし、図7の例の場合、筐体210の底面と載置台220が別体として構成される。図3乃至図6を参照して説明したように筐体の底面を変形させて基板固定台や補強板載置台等を形成する場合、筐体を変形させることにより筐体(の底面)の強度が低減する場合がある。これに対して、図7の例の場合、筐体210の底面を変形させないので、強度の低減を抑制することができる。むしろ、筐体210と載置台220の2重構造となるので、強度を向上させることができる。
【0073】
さらに、図7の例の場合、補強板載置台222の中央付近を大きく開口させることにより、補強板載置台222が筐体210の底面よりも柔らかく変形しやすい構造とされている。これにより、図7Cに示されるように、筐体210の底面に、矢印241に示されるように図中下側から圧力が印加されても、補強板載置台222は、変形することによりその負荷を吸収し、補強板130、すなわちIC171の端子にかかる負荷を軽減させることができる。
【0074】
このように、載置台220の、少なくとも補強板載置台222の部分の一部または全体を、筐体210の底面よりも柔らかく変形しやすい構造とするようにしてもよい。もちろん、これ以外の構造であってもよく、例えば、載置台220の、少なくとも補強板載置台222の部分の一部または全体の厚さを、筐体210の底面の厚さよりも薄くすることにより、補強板載置台222を、筐体210の底面よりも柔らかく変形しやすい構造とするようにしてもよい。さらにその他の方法を適用しても良い。
【0075】
また、構造ではなく使用する素材により、補強板載置台222を、筐体210の底面よりも柔らかく変形しやすくするようにしてもよい。例えば、筐体210の底面がステンレス等の硬い金属で構成されるのに対して、載置台220の、少なくとも補強板載置台222の部分の一部または全体を、アルミ、プラスチック、又はゴム等の柔らかい素材を用いて実現するようにしてもよい。
【0076】
以上のように、筐体210に設置される載置台220は、基板120を、筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる基板固定台221と、基板120に固定される前の補強板130を、筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる補強板載置台222および補強板位置決めダボ223を有する。換言すれば、載置台220は、それらによって、電子機器の組み立て工程において補強板130が基板120に固定される際に、基板120に固定される前の補強板130を基板120に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする。
【0077】
作業者は、このような筐体210および載置台220を用いることにより、冶具を用いることなく、かつ、基板120を裏返しにする等、作業面の変更を必要とせずに、容易に、補強板130を基板120の背面の、予め定められた所定の位置に固定させることができる。
【0078】
つまり、載置台220が、基板固定台112および補強板載置台113を有し、第1の部材と第2の部材の相対的な位置関係を決めることができるので、作業者は、その載置台220が設置された筐体210を用いることにより、例えば、第2の部材を、第1の部材の、予め定められた、作業者から見えない所定の位置に容易に固定することができる。
【0079】
したがって、治具の管理や保管場所、作業場所の確保、および準備や片付け等の段取り等が不要になり、電子機器の組み立て工程の作業に必要な時間やスペースも低減させることができ、結果として電子機器の製造コストを低減させることができる。
【0080】
また、筐体210と載置台220とを互いに別体として構成することにより、第1の部材、第2の部材、および載置台220の組み立て作業を、筐体210の外で行うようにすることができるので、作業者は、組み立て作業をより容易に行うことができる。
【0081】
なお、図3乃至図6を参照して上述した例と同様に、補強板130を基板120に固定する方法は任意であり、ネジ止め以外の方法であってもよい。また、ヒートシンク182やIC171は省略可能である。さらに、補強板130を基板120にネジ止めすることにより、補強板130が補強板載置台222より浮き上がるようにしてもよい。
【0082】
また、第1の部材および第2の部材はどのようなものであってもよく、それぞれの数も任意である。補強板載置台222の数も、図3乃至図6を参照して上述した例と同様に任意である。
【0083】
さらに、筐体210と載置台220の固定方法は任意である。また、図3乃至図6を参照して上述した例の場合と同様に、基板固定台221の形状、大きさ、数、基板を固定する高さ、および位置等は、基板120を安定的に固定することができるのであれば任意である。また、各基板固定台221の形状や大きさが互いに異なるようにしてもよい。さらに、基板120の基板固定台221への固定方法は任意である。
【0084】
また、補強板載置台222に載置された補強板130を所定の位置に位置させることができる構造であり、かつ、補強板位置決め孔131に嵌合可能なものであれば、この補強板位置決めダボ223の形状、大きさ、数、および位置等は任意である。さらに、各補強板位置決めダボ223が互いに異なる形状や大きさであってもよい。
【0085】
以上においては、筐体または載置台に、第2の部材の位置を決定する構成(補強板載置台)が設けられるように説明したが、組み立て後の電子機器において、この構成は不要になる。したがって、電子機器とは別の冶具を用いて、補強板(第2の部材)を、筐体内において、基板(第1の部材)に対して所定の位置に位置させるようにしてもよい。
【0086】
図8は、その場合の電子機器の一部の構成例を示す、図5や図7Aに対応する図である。つまり、図8に示される電子機器も、基本的に、図3に示される電子機器と同様の構成を有し、図8は、その電子機器の、図3における2点鎖線141の位置における断面を示している。
【0087】
図8の例の場合、図3乃至図6を参照して説明した例の筐体110や、図7を参照して説明した例の載置台220と同様に、筐体310の底面には、基板120が載置される基板固定台311Cおよび基板固定台311Dが設けられている。ただし、図3乃至図6を参照して説明した例の筐体110や、図7を参照して説明した例の載置台220と異なり、第2の部材である補強板130の位置を決める補強板載置台が設けられる代わりに、筐体310の底面の所定の位置に、補強板水平方向位置決め孔312Aおよび補強板水平方向位置決め孔312B、並びに、補強板垂直方向位置決め孔313Aおよび補強板垂直方向位置決め孔313Bが設けられている。
【0088】
また、図8の例の場合、組み立て作業に、冶具320が使用される。冶具320の上面には、補強板水平方向位置決め孔312Aに嵌合される補強板水平方向位置決めピン322A、補強板水平方向位置決め孔312Bに嵌合される補強板水平方向位置決めピン322B、補強板垂直方向位置決め孔313Aに嵌合される補強板垂直方向位置決めピン323A、並びに、補強板垂直方向位置決め孔313Bに嵌合される補強板垂直方向位置決めピン323Bが、それぞれの孔に対応する位置に設けられている。
【0089】
補強板水平方向位置決めピン322Aおよび補強板水平方向位置決めピン322Bは、補強板130を載置する際に、補強板130の水平方向の位置を決定するためのピンであり、補強板130の補強板位置決め孔131Aおよび補強板位置決め孔131Bにそれぞれ嵌合される。
【0090】
補強板垂直方向位置決めピン323Aおよび補強板垂直方向位置決めピン323Bは、補強板130を載置する際に、補強板130の垂直方向の位置を決定するためのピンであり、補強板130が載置された状態において、各ピンの上面が、補強板130の下面を支える。
【0091】
つまり、詳細については後述するが、この冶具320は、筐体310が載置された状態において、補強板130の位置を各ピンにより決定する。
【0092】
なお、図8においては、2点鎖線141上に存在する構成のみ示されている。筐体310の底面には、図3に示される例における補強板位置決めダボと同様に、補強板水平方向位置決め孔312A乃至補強板水平方向位置決め孔312D(補強板水平方向位置決め孔312Cおよび補強板水平方向位置決め孔312Dは図示せず)が形成される。同様に、冶具320には、補強板水平方向位置決めピン322A乃至補強板水平方向位置決めピン322D(補強板水平方向位置決めピン322Cおよび補強板水平方向位置決めピン322Dは図示せず)が形成される。
【0093】
また、筐体310の底面全体には、図3に示される例と同様に、基板固定台311A乃至基板固定台311H(基板固定台311Cおよび基板固定台311D以外は図示せず)が形成される。
【0094】
以下において、基板固定台311A乃至基板固定台311Hを互いに区別して説明する必要の無い場合、基板固定台311と称する。同様に、補強板水平方向位置決め孔312A乃至補強板水平方向位置決め孔312Dを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板水平方向位置決め孔312と称し、補強板垂直方向位置決め孔313Aおよび補強板垂直方向位置決め孔313Bを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板垂直方向位置決め孔313と称する。同様に、補強板水平方向位置決めピン322A乃至補強板水平方向位置決めピン322Dを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板水平方向位置決めピン322と称し、補強板垂直方向位置決めピン323Aおよび補強板垂直方向位置決めピン323Bを互いに区別して説明する必要の無い場合、補強板垂直方向位置決めピン323と称する。
【0095】
基板固定台311は、図3乃至図6を参照して上述した例の基板固定台112と同様の固定台であり、基板120を固定することにより、基板120を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(基板120の垂直方向および水平方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、基板固定台311は、筐体110に対する基板120の垂直方向および水平方向の位置合わせを行う。
【0096】
また、補強板垂直方向位置決めピン323(補強板垂直方向位置決め孔313)は、図3乃至図6を参照して上述した例の補強板載置台113と同様の機能を有し、補強板130が載置されることにより、その補強板130を筐体110の予め定められた所定の高さに位置させる(補強板130の垂直方向の位置を制御する)部材である。換言すれば、補強板垂直方向位置決めピン323(補強板垂直方向位置決め孔313)は、基板120に対する補強板130の垂直方向の位置合わせを行う。
【0097】
さらに、補強板水平方向位置決めピン322(補強板水平方向位置決め孔312)は、図3乃至図6を参照して上述した例の補強板位置決めダボ114と同様の機能を有し、各補強板水平方向位置決めピン322が各補強板位置決め孔131に嵌合された状態において、補強板垂直方向位置決めピン323に載置された補強板130を筐体110の予め定められた所定の位置に位置させる(補強板130の水平方向の位置を制御する)ように配置されている。つまり、補強板水平方向位置決めピン322(補強板水平方向位置決め孔312)は、補強板130の基板120に対する水平方向の位置合わせを行う。
【0098】
この場合の組み立て方法を図9および図10を参照して説明する。最初に、作業者は、冶具320を作業台の上に設置し、図9Aに示されるように、筐体310をその冶具320に設置する。このとき、筐体310は、筐体310の補強板水平方向位置決め孔312と冶具320の補強板水平方向位置決めピン322、筐体310の補強板垂直方向位置決め孔313と冶具320の補強板垂直方向位置決めピン323とがそれぞれ嵌合するように設置されるので、冶具320に対して所定の位置に設置される。
【0099】
この状態において、冶具320の補強板水平方向位置決めピン322および補強板垂直方向位置決めピン323は、筐体310の底面を貫通し、筐体310の内側に突出する。次に、作業者は、図9Bに示されるように、補強板130を載置する。このとき、補強板130は、補強板130の補強板位置決め孔131と冶具320の補強板水平方向位置決めピン322とが嵌合するように、冶具320の補強板垂直方向位置決めピン323上に載置される。つまり、補強板130は、補強板垂直方向位置決めピン323により垂直方向の位置(高さ)が決定され、補強板水平方向位置決めピン322により水平方向の位置が決定される。したがって補強板130は、冶具320、すなわち、筐体310に対して予め定められた所定の位置に保持される。
【0100】
次に、作業者は、その補強板130の上から、基板120を、筐体310の基板固定台311に載置し、基板止めネジ181(基板止めネジ181Aおよび基板止めネジ181B)により基板120を筐体310(基板固定台311)に固定する。
【0101】
つまり、補強板水平方向位置決めピン322の、筐体310の底面からの高さは、基板固定台311の高さより低く設定される。また、補強板垂直方向位置決めピン323の、筐体310の底面からの高さは、その上に載置された補強板130の最も高い部分が、基板固定台311の高さより低くなるように設定される。
【0102】
以上のように、基板120は、筐体310に対して予め定められた所定の位置に固定される。つまり、基板120と補強板130の相対位置が予め定められた関係に決定される。したがって、補強板130は、基板120のIC171と対向する位置に保持される。
【0103】
作業者は、その基板120の上からヒートシンク182をIC171上に載置し、ヒートシンク止めネジ183Aおよびヒートシンク止めネジ183Bを用いて、ヒートシンク182と補強板130とでIC171を挟み込むように、ヒートシンク182および補強板130を基板120に固定する。その状態を図10Aに示す。
【0104】
このように基板120を筐体310に固定する組み立て工程が完了すると、作業者は、図10Bに示されるように、筐体310を、電子機器として不要な冶具320から外し、作業を終了する。
【0105】
つまり、筐体310は、第1の部材(基板120)の位置を決定する構造(基板固定台311)、および、第2の部材(補強板130)の位置を決定する構造の一部(補強板水平方向位置決め孔312および補強板垂直方向位置決め孔313)を有し、冶具320は、第2の部材の位置を決定する構造の一部(補強板水平方向位置決めピン322および補強板垂直方向位置決めピン323)を有する。つまり、筐体310と冶具320の両方の組み合わせにより第1の部材と第2の部材の相対位置が決定される(位置合わせが行われる)。
【0106】
このように一部の構造を冶具320に設けることにより、補強板130の位置を決定する構造(図3の例における補強板位置決めピンや補強板載置台等)を完成品から除去することができる。これにより、例えば、補強板載置台の高さを確保する必要がなくなるので、電子機器の筐体をより薄く(小さく)設計することができる。また、補強板位置決め孔を設けるだけでよいので筐体310の底面の加工が容易になり、作業時間の短縮や製造コストの低減を実現することができるとともに、加工による強度の低下を抑制することができる。さらに、完成品において、補強板位置決め孔を、放熱用の通気口として利用することもできる。
【0107】
なお、この場合、作業者は、組み立て作業に冶具を用いるが、組み立ての作業は筐体310内において行うことができるので、図2を参照して説明した従来のように、作業場所を変えたり、組み立て作業中に冶具を外したりする必要がなく、かつ、基板120を裏返しにする等、作業面を変えることなく、容易に、第1の部材と第2の部材の相対的な位置関係を決めることができ、補強板130を基板120の背面の、予め定められた、作業者から見えない所定の位置に固定させることができる。
【0108】
したがって、電子機器の組み立て工程の作業に必要な時間やスペースを低減させることができ、結果として電子機器の製造コストを低減させることができる。
【0109】
なお、以上においては、冶具320に、補強板水平方向位置決めピン322と補強板垂直方向位置決めピン323の両方を設けるように説明したが、いずれか一方を筐体310の底面を板金加工したり、筐体310の底面に他の部材を設けたりすることにより形成するようにしてもよい。また、筐体310の補強板垂直方向位置決め孔313および冶具320の補強板垂直方向位置決めピン323を省略し、補強板130を筐体310の底面に載置するようにしてもよい。このとき、補強板130を基板120にネジで固定する際に、補強板130が筐体310の底面から浮き上がるようにしてももちろんよい。
【0110】
なお、図3乃至図6を参照して説明した例の場合と同様に、基板固定台311の形状、大きさ、数、基板を固定する高さ、および位置等は、基板120を安定的に固定することができるのであれば任意である。また、各基板固定台311の形状や大きさが互いに異なるようにしてもよい。さらに、基板120の基板固定台311への固定方法は任意である。
【0111】
また、補強板水平方向位置決め孔312および補強板垂直方向位置決め孔313とそれぞれ嵌合可能であり、補強板130を所定の位置に保持することができる構造であれば、補強板位置決めダボの場合と同様に、補強板水平方向位置決めピン322および補強板垂直方向位置決めピン323の形状、大きさ、数、および位置等は任意である。また、各ピンが互いに異なる形状や大きさであってもよい。
【0112】
さらに、図3乃至図6を参照して上述した例と同様に、補強板130を基板120に固定する方法は任意であり、ネジ止め以外の方法であってもよい。また、ヒートシンク182やIC171は省略可能である。さらに、第1の部材および第2の部材はどのようなものであってもよく、それぞれの数も任意である。
【0113】
なお、上述した各例において、基板120を筐体の底面(底面に設けられた基板固定台)に固定するように説明したが、基板120を固定する面(基板固定台を設ける面)は、底面以外のどの面であってももちろんよい。
【0114】
また、上述した各例において、基板120および補強板130の垂直方向および水平方向の位置合わせが行われるように説明したが、このような位置合わせの方向は、空間における基板120および補強板130の相対的な位置を制御することができる方向であれば任意である。つまり、例えば所定の第1の方向(例えば垂直方向)と、その第1の方向に垂直な平面状の第2の方向(例えば水平方向)の2方向において位置合わせが行われるようにすればよい。なお、制御方向の表現方法は任意であり、例えば、互いに垂直な関係にある第1の方向乃至第3の方向であってもよい。
【0115】
また、以上においては電子機器を例に説明したが、筐体内に第1の部材および第2の部材を有する、上述した電子機器と同様の構造を有するものであればどのようなものであってもよい。
【0116】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】従来の電子機器の内部構造の例を示す断面図である。
【図2】従来の電子機器の組み立ての様子を説明する図である。
【図3】本発明を適用した電子機器の内部の構成例を示す斜視図である。
【図4】図3の基板固定台および補強板載置台の例を示す斜視図である。
【図5】本発明を適用した電子機器の内部の構成例を示す断面図である。
【図6】図5の電子機器の組み立ての様子の例を説明する図である。
【図7】本発明を適用した電子機器の内部の、他の構成例を示す断面図である。
【図8】本発明を適用した電子機器の内部の、さらに他の構成例を示す断面図である。
【図9】図8の電子機器の組み立ての様子の例を説明する図である。
【図10】図8の電子機器の組み立ての様子の例を説明する、図9に続く図である。
【符号の説明】
【0118】
110 筐体, 112 基板固定台, 113 補強板載置台, 114 補強板位置決めダボ, 120 基板, 121 基板固定孔, 130 補強板, 131 補強板位置決め孔, 181 基板止めネジ, 182 ヒートシンク, 183 ヒートシンク止めネジ, 210 筐体, 220 載置台, 221 基板固定台, 222 補強板載置台, 223 補強板位置決めダボ, 310 筐体, 311 基板固定台, 312 補強板水平方向位置決め孔, 313 補強板垂直方向位置決め孔, 320 冶具, 322 補強板水平方向位置決めピン, 323 補強板垂直方向位置決めピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内部に、前記筐体に固定される第1の部材、および、前記第1の部材に固定される第2の部材を有する電子機器であって、
前記電子機器の組み立て工程において前記第2の部材が前記第1の部材に固定される際に、前記第1の部材に固定される前の第2の部材を前記第1の部材に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする位置合わせ手段を備える
電子機器。
【請求項2】
前記位置合わせ手段は、
前記第1の部材を、前記筐体に対して予め定められた所定の位置に位置合わせする第1の位置合わせ手段と、
前記第1の部材に固定される前の第2の部材を、前記第1の位置合わせ手段により前記筐体に対して前記所定の位置に位置合わせされた前記第1の部材に対して、予め定められた所定の位置に位置合わせする第2の位置合わせ手段と
を備える請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の位置合わせ手段は、前記第1の部材が固定されることにより、前記第1の部材の位置合わせを行う固定台を有し、
前記第2の位置合わせ手段は、前記第2の部材が載置されることにより前記第2の部材の第1の方向の位置合わせを行う載置台と、前記第2の部材に形成される孔に嵌合されることにより前記第2の部材の、前記第1の方向に対して垂直な第2の方向の位置合わせを行う突起物とを有する
請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記位置合わせ手段は、前記筐体を加工して形成される
請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
前記位置合わせ手段は、前記筐体と別体として形成され、前記筐体内部に設置される
請求項1に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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