説明

電子機器

【課題】1つのアンテナで水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第一スロットアンテナS1と、前記2辺と直交する辺を有し、前記角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナS2と、前記第一スロットアンテナS1と前記第二スロットアンテナS2とに接続された無線通信回路と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用のスロットアンテナを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、複写機、プリンタ装置等の電子機器に無線通信機能を持たせ、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を無線化した無線LANなどがオフィスや家庭などで普及している。
【0003】
また、医療機器の分野においても、電子カルテシステムへの対応のためと、病院内の機器の移動のために、無線LAN対応が望まれている。
例えば、特許文献1には、アンテナ素子を構成し、そのアンテナ素子をノート型パソコンに設ける技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2においても、アンテナ素子を構成し、そのアンテナ素子をノート型パソコンの蓋部の端面に配置し、無指向性を実現するアンテナを設ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−104333号公報
【特許文献2】特開2003−318622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンテナから送受信される電波は、そのアンテナの設置状況に応じて垂直偏波であるか水平偏波であるかが変わってくる。そこで、偏波によらず電波の送受信を行うために、電子機器に設置するアンテナは垂直偏波及び水平偏波の両方に対応したものであることが好ましい。
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明では、アンテナの構造上、垂直偏波又は水平偏波のどちらか一方にのみ対応したアンテナであるため、1つのアンテナでは垂直偏波及び水平偏波の両方に対応することができず、垂直偏波及び水平偏波の両方に対応するためには、複数個のアンテナを設ける必要があるという問題がある。
【0008】
また、アンテナ素子を別部品として製造し、電子機器の筐体に配置する必要があり、部品点数の増加、部品(アンテナ)取り付けの製造工数の増加が発生し、製造コストや信頼性に問題を発生している。
【0009】
また、アンテナの無指向性を実現する場合、一般的にはXY平面(水平面)内だけを想定しているが、機器の配置、アンテナが設置された箇所の向きなどにより、XY平面内だけの無指向性であると、実際の電子機器の使用状態において無指向性を実現することができない問題がある。
【0010】
本発明の第一の目的は、1つのアンテナで水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することである。
【0011】
本発明の第二の目的は、最低限の素子で水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ無指向性を実現可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、前記した課題は、以下に列記する各発明によって解決される。
(1)この発明は、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成されるスロットアンテナと、前記スロットアンテナに接続された無線通信回路と、を有することを特徴とする電子機器である。
【0013】
(2)この発明は、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第一スロットアンテナと、前記2辺と直交する辺を有し、前記角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナと、前記第一スロットアンテナと前記第二スロットアンテナとに接続された無線通信回路と、を有することを特徴とする電子機器である。
【0014】
(3)以上の(2)の発明において、前記電子機器の使用状態において、前記第二スロットアンテナが設けられる前記角部は、少なくとも、前記第一スロットアンテナが設けられた前記角部における前記2辺と直交する辺を有する、ことを特徴とする。
【0015】
(4)以上の(1)〜(3)の発明において、前記電子機器は、医療機器であり、該医療機器のいずれかの角部に、前記スロットアンテナが配置されている、ことを特徴とする。
【0016】
(5)以上の(1)〜(3)の発明において、前記電子機器は、事務用電子機器であり、該事務用電子機器の開閉可能な可動部の自由端の角部に、前記スロットアンテナが配置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
(1)この発明では、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部で直交する水平辺と垂直辺との2辺に、L字状に設けられたスロットで構成されるスロットアンテナを備えるため、水平辺部分のスロットでは垂直偏波に対応でき、垂直辺部分のスロットでは水平偏波に対応できる。
【0018】
また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0019】
この結果、1つのアンテナで水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0020】
(2)この発明では、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第一スロットアンテナと、前記第一スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナとを備えるため、Z軸方向のスロットではXY平面の無指向性の水平偏波に対応でき、X軸方向のスロットではZY平面の垂直偏波に対応でき、Y軸方向のスロットではXZ平面の垂直偏波に対応できる。
【0021】
また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0022】
この結果、最低限の素子で水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ、各方向の無指向性を実現可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0023】
(3)なお、以上の(2)の電子機器では、該電子機器の使用状態において、第二スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、機器使用状態において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ各方向の無指向性を実現可能である。
【0024】
(4)なお、以上の(1)〜(3)の電子機器は、医療機器であり、該医療機器において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能になり、安定した通信を実現することが可能になる。
【0025】
(5)なお、以上の(1)〜(3)の電子機器は、事務用電子機器であり、該事務用電子機器の使用時、すなわち、蓋やディスプレイなどが使用状態にされた際において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能になり、使用時において安定した通信を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態に係る電子機器の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態におけるスロットアンテナを示す拡大図である。
【図3】第1実施形態におけるスロットアンテナの特性を示す特性図である。
【図4】第2実施形態に係る電子機器の概略構成を示す斜視図である。
【図5】第2実施形態におけるスロットアンテナを示す拡大図である。
【図6】第2実施形態におけるスロットアンテナの特性を示す特性図である。
【図7】第3実施形態に係る電子機器の概略構成を示す斜視図である。
【図8】第3実施形態におけるスロットアンテナの特性を示す特性図である。
【図9】第4実施形態に係る電子機器の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明に係るスロットアンテナを備えた電子機器の実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
〔第1実施形態〕
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態としての電子機器について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態では、電子機器の具体例として事務用電子機器、すなわちノート型パソコンを例示して説明する。
【0028】
図1は、本実施形態に係る電子機器としてのノート型パソコン10を背面側からみた斜視図である。この図において、大地に垂直な方向をZ方向、大地に水平な方向をXY方向とする。また、ノート型パソコン10の利用者の使用時における左右方向をX方向、ノート型パソコン10の利用者の使用時における奥行き方向をY方向としている。
【0029】
ノート型パソコン10は、電子回路やキーボードなどを有する装置本体部11と、ディスプレイを有する蓋部12とがヒンジ部13により連結され、該ヒンジ部13を介して2つに折りたたみできるように構成されている。
【0030】
装置本体部11の上面には、文字や記号などの入力を行うためのキーボード14が備えられている。また、装置本体部11の内部には、無線通信回路、及び、ノート型パソコン10の各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)等が内蔵されている。
【0031】
また、折りたたんだ際に蓋部12のキーボード14と対向する面には、LCD(Liquid Crystal Display)などのディスプレイが備えられており、CPUにより処理されたデータはディスプレイに出力表示される。
【0032】
なお、この実施形態では、ノート型パソコン10の蓋部12は、導電性の筐体で構成されているものとする。あるいは、筐体表面が樹脂などの非導電性の部材である場合には、その内部に導電性のフレームが存在するものとする。
【0033】
ここで、蓋部12の自由端の角部は、導電性筐体の側面の角部で直交する水平辺と垂直辺との2辺であるものとし、該2辺に設けられたスロットで構成されるL字状のスロットアンテナS1が形成されている。なお、図2は、以上のスロットアンテナS1を拡大して示す拡大図である。
【0034】
図2に示すように、スロットアンテナS1は、ノート型パソコン10の使用状態(蓋部2が開かれた状態)において、導電性筐体の角部で直交する水平辺と垂直辺との2辺に設けられたスロットで構成されるL字状のスロットアンテナであり、該スロットの中間部付近の2点に無線通信回路からの給電がなされるように構成されている。なお、この図2では、給電は筐体内側からなされるため、図示されていない。
【0035】
なお、ノート型パソコン10の蓋部12の筐体表面が樹脂などの非導電性の部材である場合には、その内部に存在する導電性のフレームに、図1や図2と同様なスロットアンテナS1配置されているとする。このように、機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0036】
なお、この図2のスロットアンテナS1では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S1z)は水平偏波のアンテナとして作用するものである。そして、スロットアンテナS1の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図3(a)に示すごとく略無指向性となっている。
【0037】
また、この図2のスロットアンテナS1では、水平辺に配置されたX方向スロット(S1x)は垂直偏波のアンテナとして作用するものである。そして、スロットアンテナS1の垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、図3(b)に示すごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0038】
そして、また、スロットアンテナS1は、装置本体部11に内蔵された無線通信回路と接続されており、無線通信回路は、RF(Radio Frequency:高周波)回路、ROM(Read Only Memory) 、RAM(Random Access Memory)、及びこれらを制御するCPU等を備えて構成されている。そして、スロットアンテナS1は、無線LANやワイヤレスUSBなどの用途に使用される。
【0039】
スロットアンテナS1から例えばプリンタ等の外部機器に対して電波を送信する場合、装置本体部11の制御部より供給されたデータは無線通信回路で変換され、スロットアンテナS1に供給される。一方、スロットアンテナS1が外部機器より電波を受信する場合、スロットアンテナS1により受信した電波は無線通信回路により変換され、装置本体部11の制御部に供給される。
【0040】
次に、本実施形態の電子機器としてのノート型パソコン10の通信動作について説明する。 所定の周波数の電波が外部機器より送信されると、この外部機器から送信された電波の偏波(垂直偏波/水平偏波)に応じて、水平偏波であればZ方向スロットに高周波信号が誘起され、垂直偏波であればX方向スロットに高周波信号が誘起される。そして、この高周波信号は給電部から同軸ケーブルなどにより無線通信回路内の受信回路で処理され、復調されたデータがCPU等で処理される。
【0041】
一方、スロットアンテナS1が電波を送信する場合、CPU等の制御により無線通信回路内の送信回路で高周波信号が生成され、この高周波信号は同軸ケーブルなどを介して給電部からスロットアンテナS1に供給される。そして、スロットアンテナS1から外部機器に対して電波が送信される。この場合、X方向スロットからは垂直偏波の送信がなされ、Z方向スロットからは水平偏波の送信がなされる。
【0042】
この実施形態のノート型パソコン10では、機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部で直交する水平辺と垂直辺との2辺に、L字状に設けられたスロットで構成されるスロットアンテナS1を備えるため、水平辺部分のスロットでは垂直偏波に対応でき、垂直辺部分のスロットでは水平偏波に対応できる。また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。この結果、1つのアンテナで水平偏波及び垂直偏波の両方に対応可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0043】
なお、以上の実施形態の説明では、電子機器として、事務用電子機器のノート型パソコン10を具体例にしてきたが、これに限定されるものではない。たとえば、事務用電子機器として、据え置き型パソコン、据え置き型パソコンのディスプレイ、複写機、医療用機器(医療用コンソールや医療用診断(治療)機器)など、各種の機器に、以上の実施形態を適用して良好な結果を得ることが可能になる。
【0044】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係る電子機器としてのノート型パソコン20を正面側からみた斜視図である。この第2実施形態のノート型パソコン20では、蓋部22の自由端と本体部21の2つの角部に、それぞれスロットアンテナS1,S2が設けられている。
【0045】
2つのスロットアンテナS1,S2のぞれぞれの基本的な構成は、第1実施形態のスロットアンテナS1と同様である。また、2つのスロットアンテナS1,S2が設けられている以外の構成の説明は、第1実施形態と同様なので省略する。
【0046】
図5は2つのスロットアンテナS1,S2の配置を例示した図であり、図5(a)はスロットアンテナS1の配置を拡大して示した図であり、図5(b)はスロットアンテナS2の配置を拡大して示した図である。
【0047】
ここで、この図4,図5(a)のスロットアンテナS1では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S1z)は水平偏波のアンテナとして作用するものである。そして、スロットアンテナS1の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図6(a)に示すごとく略無指向性となっている。
【0048】
また、この図4,図5(b)のスロットアンテナS2では、水平辺に配置されたX方向スロット(S1x)は垂直偏波のアンテナとして作用するものであり、水平辺に配置されたY方向スロット(S1y)は垂直偏波のアンテナとして作用するものである。
【0049】
そして、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0050】
また、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0051】
一方、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yによる垂直偏波はXZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示した指向性と90度ずれた状態であり、X方向に指向性を有し、Y方向には感度を有しない状態になっている。
【0052】
よって、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xと、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xと、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yと、による垂直偏波のXY平面における合成指向性は、図6(b)のようになっている。すなわち、S1x,S2x,S2yが互いに指向性を補い合って、大きな感度低下が生じない指向性になっている。
【0053】
すなわち、2つのL字状のスロットアンテナS1,S2が互いに直交するスロットを有するように、すなわち、XYZ各方向にスロットを有するように配置することにより、互いの指向性のヌルを補いあうため、極端に大きなヌルが無くなり、ほぼ全方向に対して均一な指向性を示すようになる。また、2つの角部に2つのスロットアンテナS1,S2が配置されているため、設置状況に応じて発生する障害物等の影響を低減し高感度な特性を得ることができる。
【0054】
従って、この第2実施形態のノート型パソコン20では、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第一スロットアンテナS1と、前記第一スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナS2とを備えるため、Z軸方向のスロットではXY平面の無指向性の水平偏波に対応でき、X軸方向のスロットではZY平面の垂直偏波に対応でき、Y軸方向のスロットではXZ平面の垂直偏波に対応できる。
【0055】
また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0056】
この結果、最低限の素子で水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ、各方向の無指向性を実現可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0057】
また、該電子機器の使用状態において、第二スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、機器使用状態において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ各方向の無指向性を実現可能である。
【0058】
なお、以上の第2実施形態の説明では、電子機器として、事務用電子機器のノート型パソコン20を具体例にしてきたが、これに限定されるものではない。たとえば、事務用電子機器として、据え置き型パソコン、据え置き型パソコンのディスプレイ、複写機、医療用機器(医療用コンソールや医療用診断(治療)機器)など、各種の機器に、以上の実施形態を適用して良好な結果を得ることが可能になる。
【0059】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態では、電子機器として事務用電子機器の複写機30を例示して説明する。図7は、本実施形態に係る電子機器としての複写機30を示す全体図である。
【0060】
この図7に示すように、複写機30は、内部に画像形成部を備えた装置本体部31を有している。装置本体部31の上面には、画像読取部32及び操作部33が備えられており、装置本体部31の上方には、原稿給送部(ADF:Auto Document Feeder)34が設置されている。また、装置本体部31の下方には、給紙部35が設置されている。
【0061】
画像読取部32は、CCD(Charge Coupled Device)センサ、露光ランプ等を備えたスキャナを有しており、原稿給送部34より搬送された原稿を光走査し、CCDセンサにより光電変換することで原稿画像を読み取る。
【0062】
画像読取部32により読み取られた原稿画像データには、各種画像処理が施され、プリント用画像データとして装置本体部31内部の画像形成部に出力される。画像形成部は、電子写真方式の画像形成を行うものであり、給紙部から給紙された記録媒体である記録用紙に画像形成を行う。
【0063】
また、操作部33は、各種操作画面や設定内容等を表示する表示部36、及び各種キーやプリント開始を指示するためのスタートボタン等を備えている。
原稿給送部34は、原稿載置台37に載置された原稿を自動的に画像読取部32に搬送し、画像読取部32により読取られた原稿を排出部38へ搬送するものである。また、原稿給送部34は、装置本体部31の背面側を支点として、装置本体部31の上面(画像読取部32)に対して起倒可能に構成されている。原稿給送部34の3箇所の角部には3つのスロットアンテナS1,S2,S3が設けられている。
【0064】
また、装置本体部31には、無線通信回路が内蔵されており、無線通信回路には3つのスロットアンテナS1,S2,S3が接続されている。
3つのスロットアンテナS1,S2,S3のぞれぞれの基本的な構成は、第1実施形態のスロットアンテナS1、第2実施形態のスロットアンテナS1,S2と同様である。
【0065】
また、3つのスロットアンテナS1,S2,S3が設けられている以外の構成の説明は、第1実施形態、第2実施形態と同様なので省略する。
ここで、この図7のスロットアンテナS1では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S1z)は水平偏波のアンテナとして作用するものである。そして、スロットアンテナS1の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図8(a)に示したごとく略無指向性となっている。
【0066】
また、この図7のスロットアンテナS2では、水平辺に配置されたX方向スロット(S1x)は垂直偏波のアンテナとして作用するものであり、水平辺に配置されたY方向スロット(S1y)は垂直偏波のアンテナとして作用するものである。
【0067】
そして、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0068】
また、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0069】
一方、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yによる垂直偏波はXZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示した指向性と90度ずれた状態であり、X方向に指向性を有し、Y方向には感度を有しない状態になっている。
【0070】
さらに、この図7のスロットアンテナS3では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S3z)は水平偏波のアンテナとして作用するものであり、スロットアンテナS3の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図6(a)に示したごとく略無指向性となっている。
【0071】
また、水平辺に配置されたY方向スロット(S1y)は垂直偏波のアンテナとして作用するものであり、スロットアンテナS3のY方向スロットS1yによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示した指向性と90度ずれた状態であり、X方向に指向性を有し、Y方向には感度を有しない状態になっている。
【0072】
よって、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xと、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xと、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yと、スロットアンテナS3のY方向スロットS3yと、による垂直偏波のXY平面における合成指向性は、図8(b)のようになっている。
【0073】
すなわち、S1x,S2x,S2y,S3yが互いに指向性を補い合って、第2実施形態の場合よりも感度低下が少なくなり、略全方位に渡って大きな感度低下が生じない指向性になっている。
【0074】
すなわち、2つのL字状のスロットアンテナS1,S2,S3が互いに直交するスロットを有するように、すなわち、XYZ各方向にスロットを有するように配置することにより、互いの指向性のヌルを補いあうため、極端に大きなヌルが無くなり、ほぼ全方向に対して均一な指向性を示すようになる。また、3つの角部に3つのスロットアンテナS1,S2,S3が配置されているため、設置状況に応じて発生する障害物等の影響を低減し高感度な特性を得ることができる。
【0075】
また、図7に示す原稿給送部34は自動給送を行うために閉じた状態であるが、原稿手動配置のために原稿給送部34を自由端を引き上げて開いた状態としても、以上のスロットアンテナS1,S2,S3は、それぞれのスロットがXYZの各方向に配置された状態であり、指向性は図8に示した通りの、略全方位無指向性を保った状態であり続ける。
【0076】
従って、この第3実施形態の複写機30では、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成され、互いに直交するスロットを有する第一スロットアンテナS1と、前記第一スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナS2と、前記第一・第二スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一・第二スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第三スロットアンテナS3と、を備えるため、Z軸方向のスロットではXY平面の無指向性の水平偏波に対応でき、X軸方向のスロットではZY平面の垂直偏波に対応でき、Y軸方向のスロットではXZ平面の垂直偏波に対応できる。
【0077】
また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0078】
この結果、最低限の素子で水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ、各方向の無指向性を実現可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0079】
また、該電子機器の使用状態において、第二スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、第三スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一・第二スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、機器使用状態において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ各方向の無指向性を実現可能である。
【0080】
なお、以上の第3実施形態の説明では、電子機器として、事務用電子機器の複写機30を具体例にしてきたが、これに限定されるものではない。たとえば、事務用電子機器として、ノート型パソコン、据え置き型パソコン、据え置き型パソコンのディスプレイ、医療用機器(医療用コンソールや医療用診断(治療)機器)など、各種の機器に、以上の実施形態を適用して良好な結果を得ることが可能になる。
【0081】
〔第4実施形態〕
この第4実施形態では、電子機器として医療用電子機器40を例示して説明する。図9は、本実施形態に係る電子機器としての医療用電子機器40を示す全体図である。
【0082】
この図9に示すように、医療用電子機器40は、内部に各種処理部を備えた装置本体部41を有している。装置本体部41の上面には、操作部44と表示部42とが設置されている。
【0083】
ここでは、表示部42の3箇所の角部には3つのスロットアンテナS1,S2,S3が設けられている。
また、装置本体部41には、無線通信回路が内蔵されており、無線通信回路には3つのスロットアンテナS1,S2,S3が接続されている。
【0084】
3つのスロットアンテナS1,S2,S3のぞれぞれの基本的な構成は、第3実施形態のスロットアンテナS1,S2,S3と同様である。また、3つのスロットアンテナS1,S2,S3が設けられている以外の構成の説明は、第1実施形態、第2実施形態、第2実施形態と同様なので省略する。
【0085】
ここで、この図9のスロットアンテナS1では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S1z)は水平偏波のアンテナとして作用するものである。そして、スロットアンテナS1の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図8(a)に示したごとく略無指向性となっている。
【0086】
また、この図9のスロットアンテナS2では、水平辺に配置されたX方向スロット(S1x)は垂直偏波のアンテナとして作用するものであり、水平辺に配置されたY方向スロット(S1y)は垂直偏波のアンテナとして作用するものである。
【0087】
そして、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0088】
また、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示したごとく、Y方向に指向性を有し、X方向には感度を有しない状態になっている。
【0089】
一方、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yによる垂直偏波はXZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示した指向性と90度ずれた状態であり、X方向に指向性を有し、Y方向には感度を有しない状態になっている。
【0090】
また、この図9のスロットアンテナS3では、垂直辺に配置されたZ方向スロット(S3z)は水平偏波のアンテナとして作用するものであり、スロットアンテナS3の水平偏波のXY平面(水平面)における指向性は、図6(a)に示したごとく略無指向性となっている。
【0091】
また、水平辺に配置されたY方向スロット(S1y)は垂直偏波のアンテナとして作用するものであり、スロットアンテナS3のY方向スロットS1yによる垂直偏波はYZ平面には略無指向性であるが、他の機器と通信する際に有効なXY平面(水平面)における指向性は、第1実施形態で図3(b)に示した指向性と90度ずれた状態であり、X方向に指向性を有し、Y方向には感度を有しない状態になっている。
【0092】
よって、スロットアンテナS1のX方向スロットS1xと、スロットアンテナS2のX方向スロットS2xと、スロットアンテナS2のY方向スロットS2yと、スロットアンテナS3のY方向スロットS3yと、による垂直偏波のXY平面における合成指向性は、図8(b)のようになっている。
【0093】
すなわち、S1x,S2x,S2y,S3yが互いに指向性を補い合って、第2実施形態の場合よりも感度低下が少なくなり、第3実施形態と同様に、略全方位に渡って大きな感度低下が生じない指向性になっている。
【0094】
すなわち、2つのL字状のスロットアンテナS1,S2,S3が互いに直交するスロットを有するように、すなわち、XYZ各方向にスロットを有するように配置することにより、互いの指向性のヌルを補いあうため、極端に大きなヌルが無くなり、ほぼ全方向に対して均一な指向性を示すようになる。また、3つの角部に3つのスロットアンテナS1,S2,S3が配置されているため、設置状況に応じて発生する障害物等の影響を低減し高感度な特性を得ることができる。
【0095】
また、図9に示す表示部42は固定された状態であるが、向きを変えられる液晶ディスプレイである場合にも、以上のスロットアンテナS1,S2,S3は、それぞれのスロットがXYZの各方向に配置された状態であり、指向性は図8に示した通りの、略全方位無指向性を保った状態であり続ける。
【0096】
従って、この第4実施形態の医療用電子機器40では、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成され、互いに直交するスロットを有する第一スロットアンテナS1と、前記第一スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第二スロットアンテナS2と、前記第一・第二スロットアンテナの2辺と直交する辺を有し、前記第一・第二スロットアンテナの角部とは異なる導電性筐体もしくは前記導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成される第三スロットアンテナS3と、を備えるため、Z軸方向のスロットではXY平面の無指向性の水平偏波に対応でき、X軸方向のスロットではZY平面の垂直偏波に対応でき、Y軸方向のスロットではXZ平面の垂直偏波に対応できる。
【0097】
また、電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームそのものにスロットを設けることで、筐体そのものがアンテナとなるため、部品点数や取り付け工数の増加の発生させることがない。
【0098】
この結果、最低限の素子で水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ、各方向の無指向性を実現可能であり、部品点数や製造工数の増加を発生させることのないアンテナを備えた電子機器を提供することが可能になる。
【0099】
また、該電子機器の使用状態において、第二スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、第三スロットアンテナが設けられる角部は、少なくとも、第一・第二スロットアンテナが設けられた角部における2辺と直交する辺を有するように構成されているため、機器使用状態において水平偏波及び垂直偏波の両方に対応しつつ各方向の無指向性を実現可能である。
【0100】
なお、以上の第4実施形態の説明では、電子機器として、医療用コンソールなどの医療用電子機器40を具体例にしてきたが、これに限定されるものではない。たとえば、他の医療用機器(医療用診断(治療)機器)、コンピュータサーバなど、各種の機器に、以上の実施形態を適用して良好な結果を得ることが可能になる。
【0101】
〔その他の実施形態(1)〕
なお、電子機器の導電性の筐体に形成するスロットアンテナの数やその設置箇所は、必要に応じて設定されるものである。
【0102】
〔その他の実施形態(2)〕
なお、電子機器の導電性の筐体に形成するスロットアンテナの、同じ軸方向のエレメント、S1zとS3z、S1xとS2xなどについて、電子機器において離れた角部、本体部やディスプレイ部などの異なる部位の角部、などに配置するように各スロットアンテナS1〜S3を配置することで、空間ダイバシティ効果により、感度や指向性を補い合って、良好な結果を得ることができる。
【0103】
〔その他の実施形態(3)〕
また、S1zやS3zなど同じ垂直z方向のスロットであっても、電子機器の左右に分かれるように各スロットアンテナS1〜S3を配置することで、電子機器本体に隠れない(遮られない)自由空間が異なる方向に開けるようになるため、空間ダイバシティ効果により、感度や指向性を補い合って、良好な結果を得ることができる。
【符号の説明】
【0104】
S1〜S3 スロットアンテナ
10 ノート型パソコン
11 装置本体部
12 蓋部
13 ヒンジ部
14 キーボード
20 ノート型パソコン
30 複写機
40 医療用電子機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の導電性筐体の角部で直交する水平辺と垂直辺との2辺に設けられたスロットで構成されるスロットアンテナと、
電子機器の導電性筐体もしくは導電性フレームの角部の直交する2辺に設けられたスロットで構成されるスロットアンテナと、
前記スロットアンテナに接続された無線通信回路と、
を有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
電子機器。
【請求項3】
前記電子機器の使用状態において、
前記第二スロットアンテナが設けられる前記角部は、少なくとも、前記第一スロットアンテナが設けられた前記角部における前記2辺と直交する辺を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器は、医療機器であり、
該医療機器のいずれかの角部に、前記スロットアンテナが配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記電子機器は、事務用電子機器であり、
該事務用電子機器の開閉可能な可動部の自由端の角部に、前記スロットアンテナが配置されている、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−187107(P2010−187107A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28755(P2009−28755)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】