説明

電子機器

【課題】電子機器において簡易な構成により複数本の信号ケーブルの識別を可能とする。
【解決手段】本発明に係る電子機器においては、複数の電子部品が複数本の信号ケーブル32、42を経て複数の端子台6、7にそれぞれ繋がっており、各信号ケーブル32、42の一端が各電子部品の端子31、41に接続されると共に、各信号ケーブル32、42の他端に取り付けられたコネクター33、43が各端子台6、7に連結されている。複数本の信号ケーブル32、42は、複数の電子部品の端子31、41からの距離が異なる偏寄位置Pで互いに束ねられ、更に対応する端子台6、7へ向けて延びており、偏寄位置Pの通過点からコネクター33、43までの信号ケーブル32、42の長さの差に応じて、複数の端子台6、7の位置がずれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子部品が複数本の信号ケーブルを経て複数の端子にそれぞれ接続されている電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばビデオカメラにおいては、図5に示す如く対物レンズ(11)を具えた筐体(1)の側部に、ヒンジ機構(20)を介して表示装置(2)が開閉可能に配備されている。
筐体(1)の内部には、左右一対のマイクロフォン(3)(4)が配備され、両マイクロフォン(3)(4)は、それぞれ信号ケーブル(図示省略)を経て、回路基板(5)上の左右一対の端子台(6)(7)に接続されおり、これによって音声のステレオ記録が行なわれる。
【0003】
具体的には、図3に示す如く、右チャンネルマイクロフォン(3)の端子(31)から信号ケーブル(32)が引き出されると共に、左チャンネルマイクロフォン(4)の端子(41)から信号ケーブル(42)が引き出され、両信号ケーブル(32)(42)の先端部にはそれぞれ、コネクター(33)(43)が取り付けられている。
尚、両信号ケーブル(32)(42)はそれぞれ、2本のリード線を1本に束ねて構成されている。
【0004】
そして、図4に示す如く、右チャンネルマイクロフォン(3)から引き出された信号ケーブル(32)は、両マイクロフォン(3)(4)の間を通過して、回路基板(5)側へ延びており、その先端部のコネクター(33)が、回路基板(5)上の右チャンネル用端子台(6)に連結されている。
又、左チャンネルマイクロフォン(4)から引き出された信号ケーブル(42)は、両マイクロフォン(3)(4)の間を通過して、回路基板(5)側へ延びており、その先端部のコネクター(43)が、回路基板(5)上の左チャンネル用端子台(7)に連結されている。
【0005】
ところで、上述の如きカメラの組立工程においては、図4の如く2つのコネクター(33)(43)を対応する端子台(6)(7)に連結する作業で、右チャンネルマイクロフォン(3)に繋がっているコネクター(33)は右チャンネル用端子台(6)に、左チャンネルマイクロフォン(4)に繋がっているコネクター(43)は左チャンネル用端子台(7)に連結する必要がある。
【0006】
しかしながら、部品標準化のために、図3に示す様に、右チャンネルマイクロフォン(3)から引き出された信号ケーブル(32)と左チャンネルマイクロフォン(4)から引き出された信号ケーブル(42)とは互いに同一の長さを有しており、然も両コネクター(33)(43)は互いに同じ仕様及び外形を有しているので、右チャンネルマイクロフォン(3)に繋がっているコネクター(33)を左チャンネル用端子台(7)に、左チャンネルマイクロフォン(4)に繋がっているコネクター(43)を右チャンネル用端子台(6)に連結するというミスが生じる虞があった。
【0007】
そこで、信号ケーブルとしてフラットハーネスを用いる場合に、同じ長さを有する2本のフラットハーネスの内、1本のフラットハーネスを長さ方向の一部で折り曲げて長さを短縮し、2本のフラットハーネスの長さに差を設けることによって、2つのコネクターの識別を可能とする技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−78167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の技術においては、組立工程の前段階として、特定の1本のフラットハーネスを折り曲げる作業が必要であるため、工数が増加するばかりでなく、フラットハーネス以外のハーネスには採用することが出来ない問題があった。
そこで本発明の目的は、簡易な構成によって複数本の信号ケーブルの識別を可能とした電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る電子機器においては、複数の第1端子がフレキシブルな複数本の信号ケーブルを経て複数の第2端子にそれぞれ繋がっており、各信号ケーブルの基端が各第1端子に接続されると共に、各信号ケーブルの先端が各第2端子に接続されている。
ここで、前記複数本の信号ケーブルは、前記各第1端子からの距離が異なる偏寄位置を経て、対応する第2端子へ向けて延びており、前記偏寄位置の通過点から先端までの信号ケーブルの長さの差に応じて、前記複数の第2端子の位置が互いにずれている。
【0011】
上記本発明の電子機器においては、前記複数本の信号ケーブルが互いに同一の長さを有する場合であっても、これら複数本の信号ケーブルが第1端子から偏寄位置を経て第2端子へ向けて延びているので、これら複数本の信号ケーブルには、前記偏寄位置の通過点から先端までの長さに差が設けられることになる。
【0012】
そして、前記偏寄位置の通過点から先端までの信号ケーブルの長さの差に応じて、前記複数の第2端子の位置が互いにずれているので、前記偏寄位置の通過点から先端までの長さが最も短い信号ケーブルの先端を、最も位置の近い第2端子に接続し、次いで長さの短い信号ケーブルの先端を、次いで位置の近い第2端子に接続する作業を、最も長さの長い信号ケーブルまで繰り返すことによって、特定の第1端子から引き出された信号ケーブルの先端が特定の第2端子に接続されることになる。
【0013】
従って、前記複数の第1端子と複数の第2端子の配置を予め対応づけておくことにより、端子間の接続ミスを防止することが出来る。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電子機器によれば、複数本の信号ケーブルの経路を変更するだけの簡易な構成で、複数本の信号ケーブルの識別が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電子機器の一実施態様においてコネクターを端子台に接続する前の状態を示す平面図である。
【図2】本発明に係る電子機器の一実施態様においてコネクターを端子台に接続した状態を示す平面図である。
【図3】従来の電子機器においてコネクターを端子台に接続する前の状態を示す平面図である。
【図4】従来の電子機器においてコネクターを端子台に接続した状態を示す一部破断平面図である。
【図5】本発明を実施すべき電子機器の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図5に示すビデオカメラに実施した形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明の一実施態様であるビデオカメラにおいては、図2に示す如く、筐体(1)の内部に、左右一対のマイクロフォン(3)(4)が配備され、両マイクロフォン(3)(4)は、フレキシブルな2本の信号ケーブル(32)(42)を経て、回路基板(5)上の左右一対の端子台(6)(7)にそれぞれ接続されおり、これによって音声のステレオ記録が行なわれる。
【0017】
具体的には、図1に示す如く、右チャンネルマイクロフォン(3)の端子(31)から信号ケーブル(32)が引き出されると共に、左チャンネルマイクロフォン(4)の端子(41)から信号ケーブル(42)が引き出され、両信号ケーブル(32)(42)の先端部にはそれぞれ、共通の仕様と外形を有するコネクター(33)(43)が取り付けられている。
尚、両信号ケーブル(32)(42)はそれぞれ、2本のリード線を1本に束ねて構成されており、両信号ケーブル(32)(42)は互いに同一の長さを有している。
【0018】
一方、筐体(1)の内部に設置された回路基板(5)には、両マイクロフォン(3)(4)から近い位置に右チャンネル用端子台(6)が搭載されると共に、両マイクロフォン(3)(4)から遠い位置に左チャンネル用端子台(7)が搭載されている。
【0019】
そして、図2に示す如く、右チャンネルマイクロフォン(3)から引き出された信号ケーブル(32)は、両マイクロフォン(3)(4)の外側を通過して、回路基板(5)側へ延びており、その先端部のコネクター(33)が、回路基板(5)上の右チャンネル用端子台(6)に連結されている。
又、左チャンネルマイクロフォン(4)から引き出された信号ケーブル(42)は、両マイクロフォン(3)(4)の外側を通過して、回路基板(5)側へ延びており、その先端部のコネクター(43)が、回路基板(5)上の左チャンネル用端子台(7)に連結されている。
【0020】
ここで、2本の信号ケーブル(32)(42)は、図2に示す様に、右チャンネルマイクロフォン(3)の端子(31)と左チャンネルマイクロフォン(4)の端子(41)からの距離が異なる偏寄位置Pにて1本に束ねられ、更に偏寄位置Pから左チャンネルマイクロフォン(4)の外側を経て係止片(50)を貫通し、更に端子台(6)(7)側へ向けて延びている。
【0021】
この結果、偏寄位置Pの通過点からコネクター(33)(43)までの信号ケーブルの長さに差が設けられている。即ち、右チャンネルマイクロフォン(3)から引き出された信号ケーブル(32)の偏寄位置Pからコネクター(33)までの長さは、左チャンネルマイクロフォン(4)から引き出された信号ケーブル(42)の偏寄位置Pからコネクター(43)までの長さよりも短くなっている。
従って、上記カメラの組立工程において、右チャンネルマイクロフォン(3)から引き出された信号ケーブル(32)のコネクター(33)は、右チャンネル用端子台(6)に連結することは可能であるが、左チャンネル用端子台(7)に連結することは出来ない。
これに対し、左チャンネルマイクロフォン(4)から引き出された信号ケーブル(42)のコネクター(43)は、右チャンネル用端子台(6)と左チャンネル用端子台(7)の両方に連結することが可能である。
【0022】
そこで、上記カメラの組立工程においては、先ず、両信号ケーブル(32)(42)を偏寄位置Pで束ねた後、先端までの長さがより短い信号ケーブル(32)のコネクター(33)を、より近い右チャンネル用端子台(6)に連結し、その後、先端までの長さがより長い信号ケーブル(42)のコネクター(43)を、より遠い左チャンネル用端子台(7)に連結する。
これによって、右チャンネルマイクロフォン(3)を信号ケーブル(32)によって右チャンネル用端子台(6)に接続し、左チャンネルマイクロフォン(4)を信号ケーブル(42)によって左チャンネル用端子台(7)に接続することが出来る。
【0023】
上記カメラの組立工程において、先ず、先端までの長さが短い信号ケーブル(32)のコネクター(33)を左チャンネル用端子台(7)に連結せんとしても、信号ケーブル(32)の長さが足りないため、連結は不可能である。
従って、右チャンネルマイクロフォン(3)を左チャンネル用端子台(7)に接続し、左チャンネルマイクロフォン(4)を右チャンネル用端子台(6)に接続するミスは確実に防止される。
【0024】
上記カメラによれば、例えばフラットハーネスを途中で折り曲げる等の構成を採用することなく、信号ケーブル(32)(42)の経路を変更するだけの簡易な構成で、同じ長さの信号ケーブル(32)(42)の識別が可能であり、これによってコネクター(33)(43)の連結作業を正しく行なうことが出来る。
【0025】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、接続の対象となる電子部品は、左右一対のマイクロフォンに限らず、左右一対のスピーカ、複数の受光素子、複数の発光素子等、単体として同一の機能を有するが、端子台と接続されることによって異なる機能を発揮する一群の電子部品であってもよい。更に、本発明は、単なる端子どうしの接続に応用することも可能である。
【0026】
又、信号ケーブルの本数は2本に限らず、3以上の複数本であってもよい。更に、各信号ケーブルは2本のリード線を束ねたものに限らず、1本のリード線によって構成し、若しくは3以上の複数本のリード線を束ねたものであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
(1) 筐体
(3) 右チャンネルマイクロフォン
(31) 端子
(32) 信号ケーブル
(33) コネクター
(4) 左チャンネルマイクロフォン
(41) 端子
(42) 信号ケーブル
(43) コネクター
(5) 回路基板
(6) 右チャンネル用端子台
(7) 左チャンネル用端子台
P 偏寄位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1端子が複数本の信号ケーブルを経て複数の第2端子にそれぞれ繋がっており、各信号ケーブルの基端が各第1端子に接続されると共に、各信号ケーブルの先端が各第2端子に接続されている電子機器において、
前記複数本の信号ケーブルは、前記各第1端子からの距離が異なる偏寄位置を経て、対応する第2端子へ向けて延びており、前記偏寄位置の通過点から先端までの信号ケーブルの長さの差に応じて、前記複数の第2端子の位置が互いにずれていることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記複数の第1端子は複数の電子部品に配備されると共に、前記複数の第2端子は、回路基板上の複数の端子台によって構成され、各信号ケーブルの基端が各電子部品の第1端子に接続されると共に、各信号ケーブルの先端に取り付けられたコネクターが各端子台に連結されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
複数の電子部品が複数本の信号ケーブルを経て複数の端子台にそれぞれ繋がっており、各信号ケーブルの一端が各電子部品の端子に接続されると共に、各信号ケーブルの他端に取り付けられたコネクターが各端子台に連結されている電子機器において、
前記複数本の信号ケーブルは、前記複数の電子部品の端子からの距離が異なる偏寄位置で互いに束ねられ、更に前記偏寄位置から対応する端子台へ向けて延びており、前記偏寄位置の通過点からコネクターまでの信号ケーブルの長さの差に応じて、前記複数の端子台の位置が互いにずれていることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
前記複数本の信号ケーブルは互いに同一の長さを有し、これらの信号ケーブルの他端に取り付けられているコネクターは、共通の仕様及び外形を有している請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記複数本の信号ケーブルはそれぞれ、1又は複数本のリード線を1本に束ねたものである請求項3又は請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記複数の電子部品はそれぞれ単体として同一の機能を有するものであって、各電子部品が対応する端子台に接続されることによって、異なる機能を発揮する請求項3乃至請求項5の何れかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記複数の電子部品はそれぞれ、マイクロフォン、スピーカ、発光素子、若しくは受光素子である請求項6に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−232599(P2010−232599A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81172(P2009−81172)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】