説明

電子機器

【課題】本願発明は、バックアップを開始させるためのトリガーを、電子機器の電源オンといった操作ではなく、ユーザが実際に電子機器を使用する際に行うユーザ登録操作とする。ユーザ登録操作は、ユーザ登録項目について登録する操作である。ユーザ登録操作が行われることで、二次電池と負荷とが導通し、バックアップが開始される電子機器の提供を目的とする。
【解決手段】主電源と、前記主電源を充電電源とするバックアップ用の二次電池と、前記二次電池をバックアップ電源とした負荷と、前記二次電池と前記負荷とを接続する電源ラインと、前記電源ラインを遮断、導通する切替回路と、ユーザ登録操作を行うための操作部と、前記主電源がONされても、前記電源ラインを導通させず、操作部においてユーザ登録操作が行われた場合、前記電源ラインを導通させるように前記切替回路を制御する制御部と、を備えたことを特徴とした電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックアップ用の電池を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合機等の電子機器では、停電に備えて受信した画像データなどを格納する画像メモリを二次電池によってバックアップしている。この二次電池によるバックアップが工場出荷時に開始され、バックアップされた状態のまま輸送または倉庫での保管期間が長くなると、二次電池が過放電になり劣化してしまう問題があった。
【0003】
そのような二次電池の消耗を防止する技術として、引用文献1には、電源のオン、オフまたはモードの変更により、電池と負荷との間の接続、遮断の切り替えを容易に行うことができる電子機器を提供する技術が記載されている。
【0004】
また、二次電池の過放電を防止するための技術として、引用文献2には、放電制御用スイッチ素子に過大な電流を流すことなく、またIC内で設定された過電流検出用の基準電圧を変更することなしに過電流を確実に検出して過電流保護を行うことができる二次電池の保護回路装置を提供する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−269290号公報
【特許文献2】特開平11−127543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の技術では、電子機器の電源投入または輸送モードの解除に伴い、電池と負荷とが接続し、バックアップが自動的に開始される。一方、電子機器のメモリクリア処理または輸送モードの設定に伴い、切替回路の制御により電池と負荷とが自動的に切り離される。このため、工場出荷の際電子機器作動テスト後に、誤って電子機器の電源投入または輸送モードの解除を行ってしまった場合、電子機器のメモリクリア処理または輸送モードの設定を行わなければ、電池と負荷とを切り離すことができない。
【0007】
また、特許文献2に記載の技術では、二次電池の過放電が起こりそうになれば、過放電を防止するために、終止電圧を検出し能動素子をオフにして、二次電池の負荷回路への接続を遮断できる。しかし、二次電池と負荷回路との間を遮断する際に、バックアップ用の電池回路に、過放電検出回路と遮断用の能動素子の設置が必要となる。さらに、遮断用の能動素子をオフに保つための電力を消費するので、長く放置されると過放電が起き電池が劣化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本願発明は、バックアップを開始させるためのトリガーを、電子機器の電源オンといった操作ではなく、ユーザが実際に電子機器を使用する際に行うユーザ登録操作とする。ユーザ登録操作は、ユーザ登録項目について登録する操作である。ユーザ登録操作が行われることで、二次電池と負荷とが導通し、バックアップが開始される電子機器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子機器は、主電源と、前記主電源を充電電源とするバックアップ用の二次電池と、前記二次電池をバックアップ電源とした負荷と、前記二次電池と前記負荷とを接続する電源ラインと、前記電源ラインを遮断、導通する切替回路と、ユーザ登録操作を行うための操作部と、前記主電源がONされても、前記電源ラインを導通させず、操作部においてユーザ登録操作が行われた場合、前記電源ラインを導通させるように前記切替回路を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の電子機器において、前記制御部は、複数あるユーザ登録項目のうち、少なくとも1つの前記ユーザ登録項目について登録が行われた場合、前記電源ラインを導通させるように前記切替回路を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の電子機器において、前記電源ラインが導通した場合、前記二次電池のバックアップが開始されたことを報知する報知部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本願発明の電子機器によれば、二次電池と負荷との間を導通、遮断できる、切り替え可能な切替回路がある。切替回路は、主電源がONされても二次電池と負荷とを導通させない。しかし、ユーザ登録操作が行われることにより二次電池と負荷とを導通させる。つまり、ユーザが実際に電子機器を使用する際に、必ず行われるユーザ登録操作を、バックアップ開始のトリガーとすることで、ユーザが実際に電子機器を使用する前に誤った操作を行うことでバックアップが開始されることがない。従って、輸送時及び保管時などといったバックアップ不必要時にバックアップされることがなく、電子機器が本当に使用された際、バックアップが開始される。
【0013】
本願発明の電子機器によれば、ユーザが実際に電子機器を使用する際、ユーザ登録操作が必ず行われる。ユーザ登録操作では、複数のユーザ登録項目を登録する。複数存在するユーザ登録項目のうち、少なくとも1つのユーザ登録項目を登録することにより、バックアップが開始される。つまり、ユーザ登録項目を1つ登録することが、バックアップ開始のトリガーとなる。従って、電子機器が本当に使用された際、少なくとも1つのユーザ登録項目を登録することにより、バックアップが開始される。
【0014】
本願発明の電子機器によれば、工場出荷時、輸送時または保管時に、誤ってバックアップが開始された場合でも、バックアップを開始したことが報知されるので、バックアップを中止できる。また、バックアップの開始が報知されることで、本当にバックアップされていることを確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電子機器1の一実施例を示す回路図である。
【図2】図1の電子機器に備えられるDフリップフロップ回路12の機能表である。
【図3】第一及び第二の制御信号及びスイッチング素子10の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】図1の電子機器1に備えられる二次電池2による負荷3へのバックアップ開始を報知する報知動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明する。尚、以下に説明する実施形態は説明する上で好ましい具体例であるため種々の限定がなされているが、本発明を特に限定する旨を明記しない限り、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
図1は、本発明の電子機器1の一実施例を示す回路図である。電子機器1は、バックアップ用の二次電池2と、バックアップ対象の負荷3と、二次電池2と負荷3とを接続する電源ライン4と、電源ライン4に挿入され、入力される制御信号に応答して電源ライン4を導通、遮断する切替回路5と、充電回路6と、切替回路5及び充電回路6を制御する制御部7と、制御部7に接続される電源スイッチ8、操作部9及び報知部10と、を備える。
【0018】
二次電池2は、例えば出力電圧が3Vの二次電池が用いられる。切替回路5は、スイッチング素子11と、状態保持回路としてのDフリップフロップ回路12と、論理反転回路13〜15と、を備える。
【0019】
スイッチング素子11は、電源ライン4に挿入され、入力されるスイッチング信号の状態に応じて、電源ライン4を導通、遮断する。本実施形態では、スイッチング素子11は、例えばPNP型トランジスタが用いられており、入力されるスイッチング信号がハイレベルのときにオフ状態となり電源ライン4を遮断させる。一方、スイッチング信号がローレベルのときにオン状態となり電源ライン4を導通させる。
【0020】
Dフリップフロップ回路12は、ダイレクトプリセット入力端子(DPbar)、ダイレクトクリア入力端子(CLRbar)、及びコンプリメンタリ出力端子(Q,Qbar)を有しており、図2の機能表に従って動作する。
【0021】
図2は、図1の電子機器に備えられるDフリップフロップ回路12の機能表である。ダイレクトプリセット及びダイレクトクリアの入力の組合せによりQ出力及びQbar出力が決定する。ダイレクトプリセット入力がローレベルで、ダイレクトクリア入力がハイレベルのときに、Q出力はハイレベルとなり、Qbar出力はローレベルとなる。ダイレクトプリセット入力及びダイレクトクリア入力が共にローレベルのときは、Q出力及びQbar出力は共にハイレベルとなる。但し、この状態からダイレクトプリセット入力及びダイレクトクリア入力が共にハイレベルになると、Q出力及びQbar出力は不定となる。また、ダイレクトプリセット入力及びダイレクトクリア入力が共にハイレベルのときには、Q出力及びQbar出力が直前の状態を維持する。
【0022】
このようなDフリップフロップ回路12のダイレクトプリセット入力端子及びダイレクトクリア入力端子には、制御部7が出力する制御信号が論理反転回路13,14を介してそれぞれ入力される。また、Q出力端子の出力信号は、論理反転回路15を介してスイッチング信号としてスイッチング素子11に与えられる。
【0023】
次に、図3は、第一及び第二の制御信号及びスイッチング素子11の動作を示すタイミングチャートである。制御部7によりハイレベルの第一の制御信号が出力されると、このとき第二の制御信号はローレベルで保持されており、第一及び第二の制御信号が論理反転回路13,14により反転されて、Dフリップフロップ回路12のダイレクトクリア入力がローレベルとなり、ダイレクトプリセット入力はハイレベルに保持される。
【0024】
これにより、Dフリップフロップ回路12のQ出力がローレベルとなる。そのローレベルのQ出力が論理反転回路15により反転されて、ハイレベル(第一の信号)のスイッチング信号としてスイッチング素子11に与えられ、これによってスイッチング素子11がオフ状態となり、電源ライン4が遮断され、二次電池2が負荷3から切り離される。よって二次電池2の消耗が回避される。この状態は、仮に第一の制御信号が解除されても、第一の制御信号がハイレベルからローレベルに切り替わっても、ハイレベルの第二の信号が入力されるまで保持される。
【0025】
制御部7によりハイレベルの第二の制御信号が出力されると、このとき第一の制御信号はローレベルに保持されており、第一及び第二の制御信号が論理反転回路13,14により反転されて、Dフリップフロップ回路12のダイレクトプリセット入力がローレベルとなり、ダイレクトクリア入力はハイレベルに保持される。
【0026】
これにより、Dフリップフロップ回路12のQ出力がハイレベルとなる。そのハイレベルのQ出力が論理反転回路15により反転されて、ローレベル(第二の信号)のスイッチング信号としてスイッチング素子11に与えられ、これによってスイッチング素子11がオン状態となり、電源ライン4が導通され、二次電池2が負荷3に接続される。よって二次電池2によるバックアップが行われる。この状態は、仮に第二の制御信号が解除されても、第二の制御信号がハイレベルからローレベルに切り替わっても、ハイレベルの第一の信号が入力されるまで保持される。
【0027】
次に、図1において、充電回路6は、主電源16と、二次電池2と、主電源16と二次電池2とを接続する充電電流供給ライン17と、充電電流供給ライン17に挿入され、入力される制御信号に応答して充電電流供給ライン17を導通、遮断する切替回路18と、を備えており、切替回路18は、スイッチング素子19と、論理反転回路20と、を備える。
【0028】
スイッチング素子19は、充電電流供給ライン17に挿入され、論理反転回路20を介して制御部により与えられる第三の制御信号に応じて充電電流供給ライン17を導通、遮断する。
【0029】
すなわち、スイッチング素子19がオンされ、充電電流供給ライン17が導通すれば、主電源16から二次電池2へ充電電流が与えられ、二次電池2が充電される。スイッチング素子19がオフされ、充電電流供給ライン17が遮断すれば、主電源16から二次電池2への充電電流の供給が停止される。本実施形態では、スイッチング素子19は、例えばPNP型トランジスタが用いられている。
【0030】
制御部7は、第一及び第二の制御信号により切替回路5を制御し、二次電池2と負荷3とを導通、遮断する。また、制御部7は第三の制御信号により充電回路6を制御することにより、二次電池2の充電を行うか否かを制御する。
【0031】
制御部7による切替回路5の制御動作について説明する。電源スイッチ8がオンされ電源が投入されても、二次電池2と負荷3とは導通せずバックアップは開始しない。このとき、制御部7は、ハイレベルで第一の制御信号を出力し、第二の制御信号はローレベルで保持される。これにより、Dフリップフロップ回路12のQ出力がローレベルとなる。そのローレベルのQ出力が論理反転回路15により反転されて、ハイレベル(第一の信号)のスイッチング信号としてスイッチング素子11に与えられ、これによってスイッチング素子11がオフ状態となり、電源ライン4が遮断され、二次電池2が負荷3から切り離される。従って、電源スイッチ8をオンしてもバックアップは開始されない。
【0032】
しかし、ユーザが操作部9でユーザ登録操作を行うと、二次電池2と負荷3とが導通しバックアップが開始される。このとき、制御部7は、ハイレベルで第二の制御信号を出力し、第一の信号はローレベルで保持される。これにより、Dフリップフロップ回路12のQ出力がハイレベルとなる。そのハイレベルのQ出力が論理反転回路15により反転されて、ローレベル(第二の信号)のスイッチング信号としてスイッチング素子11に与えられ、これによってスイッチング素子11がオン状態となり、電源ライン4が導通され、二次電池2が負荷3に接続される。従って、操作部9においてユーザ登録操作が行われると、二次電池2によるバックアップが開始される。
【0033】
次にユーザが操作部9で行うユーザ登録操作について説明する。ユーザ登録操作とは、ユーザ登録項目を設定または選択することである。ユーザ登録項目は、日時の設定、言語の設定、ダイヤル種別の選択、ファックス受信モードの選択、ダイヤルトーン検出のオン、オフの選択、発信元名の設定、標準発信元名の選択、発信元番号の入力などがある。ユーザ登録項目の登録が行われると、二次電池2によるバックアップが開始される。ユーザ登録項目は複数あり、ユーザそれぞれにおいて使用形態は様々である。そのため、複数あるユーザ登録項目のうち、どの項目を登録すれば電源ライン4が導通するかについては、どのように構成してもよい。例えば、日時の設定、発信元名の設定及び発信元番号の入力が登録された場合、電源ライン4が導通するとしてもよい。また、複数あるユーザ登録項目のうち、少なくとも1つの登録が行われた場合、電源ライン4が導通するとしてもよい。この場合、登録が1つ行われるだけでバックアップが開始されるので便利である。
【0034】
図4は、図1の電子機器1に備えられる二次電池2による負荷3へのバックアップ開始を報知する報知動作を示すフローチャートである。なお、この処理は制御プログラムなどに基づいて制御部7が発行する命令に従って行われる。
【0035】
この処理において、主電源16がオンされて(ステップS1)、操作部9においてユーザ登録が行われない場合(ステップS2でNO)は、ステップS2に戻る。一方、操作部9においてユーザ登録が行われた場合(ステップS2でYES)は、バックアップ開始が開始される(ステップS3)。その後、バックアップが開始されたことを報知部10が報知し(ステップS4)、処理が終了する。
【0036】
また図1において、バックアップ開始を報知する報知部10は、制御部7に接続されており、制御部7により報知命令が発行された場合、バックアップが開始したことを報知する。報知部10は、確実に報知することができるのであれば、電子機器1のどの部分に設けられても構わない。また、確実に報知することができるのであれば、表示画面、ランプ、サイレンそして音声ガイダンスなど報知手段は問わない。
【符号の説明】
【0037】
1 電子機器
2 二次電池
3 負荷
4 電源ライン
5,18 切替回路
6 充電ライン
7 制御部
8 電源スイッチ
9 操作部
10 報知部
11,19 スイッチング素子
12 Dフリップフロップ回路
13,14,15,20 論理反転回路
16 主電源
17 充電電流供給ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電源と、
前記主電源を充電電源とするバックアップ用の二次電池と、
前記二次電池をバックアップ電源とした負荷と、
前記二次電池と前記負荷とを接続する電源ラインと、
前記電源ラインを遮断、導通する切替回路と、
ユーザ登録操作を行うための操作部と、
前記主電源がONされても、前記電源ラインを導通させず、操作部においてユーザ登録操作が行われた場合、前記電源ラインを導通させるように前記切替回路を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とした電子機器。
【請求項2】
前記制御部は、複数あるユーザ登録項目のうち、少なくとも1つの前記ユーザ登録項目について登録が行われた場合、前記電源ラインを導通させるように前記切替回路を制御することを特徴とした請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記電源ラインが導通した場合、前記二次電池のバックアップが開始されたことを報知する報知部を備えたことを特徴とした請求項1または2記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24302(P2011−24302A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165252(P2009−165252)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】