説明

電子機器

【課題】 回路モジュールに振動が伝わり難くなり、回路モジュールの誤作動を解消できる電子機器を得ることにある。
【解決手段】 電子機器は、回路モジュール(3)が実装された第1の部品(2)と、前記第1の部品(2)に連結された第2の部品(13)と、を備えている。第1の部品(2)は、第1の金属材料で構成され、第2の部品(13)は、前記第1の金属材料とは材質が異なる第2の金属材料で構成されている。導電性を有する弾性体(20, 31)が前記第1の部品(2)と前記第2の部品(13)との間に介在されている。前記弾性体(20, 31)は、前記第1の部品(2)および前記第2の部品(13)に電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、線膨張率が異なる第1の金属部品と第2の金属部品とを互いに連結した構造を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
無線回線装置のような電子機器は、複数の金属部品を組み合わせたフレームと、このフレームに実装された回路モジュールと、を備えている。回路モジュールは、フレームを介して接地されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−356073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の無線回線装置では、例えば保守点検時にフレームが外気に触れる等して、フレームの雰囲気温度が急激に変化することがあり得る。
【0005】
この際、フレームのうち材質が異なる金属部品が直に接している箇所においては、金属部品の線膨張率の相違に伴い、金属部品の接触箇所に歪みが生じる。歪みは、金属部品を振動させる一つの要因となる。
【0006】
金属部品の振動がフレームを通じて回路モジュールに伝わった場合、回路モジュールが規定よりも大きな波形の信号を発することがある。すなわち、回路モジュールに伝わる振動が回路モジュールの動作に悪影響を及ぼし、通信エラーを引き起こすといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、電子機器は、回路モジュールが実装された第1の部品と、前記第1の部品に連結された第2の部品と、を備えている。第1の部品は、第1の金属材料で構成され、第2の部品は、前記第1の金属材料とは材質が異なる第2の金属材料で構成されている。導電性を有する弾性体が前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在されている。前記弾性体は、前記第1の部品および前記第2の部品に電気的に接続されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係る電子機器の断面図。
【図2】図1の矢印F2の方向から見た電子機器の側面図。
【図3】第1の実施形態において、放熱フィンを有するベース、複数のガスケットおよびブラケットを有する外装カバーの位置関係を示す斜視図。
【図4】図1のF3部を拡大して示す断面図。
【図5】第2の実施形態において、外装カバーのブラケットにベースを連結した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図4を参照して説明する。
【0010】
図1は、電子機器の一例である無線回線装置1を開示している。無線回線装置1は、例えばキャビネットラックと称する箱形の架台に収容されている。架台は、無線回線装置1を据え付ける棚板と、無線回線装置1を出し入れする開口部と、開口部を開閉する扉と、を備えている。
【0011】
このため、架台の扉を開けることで、棚板の上に置かれた無線回線装置1を開口部から架台の外に露出させて、例えば無線回線装置1の保守点検あるいは交換作業を行うことができる。
【0012】
図1に示すように、無線回線装置1は、ベース2、回路モジュール3および外装カバー4を備えている。
【0013】
ベース2は、第1の金属部品の一例である。ベース2は、第1の金属材料としてのアルミニウム合金で構成されている。ベース2は、図2および図3に示すような長方形の板であり、フラットな第1の面2aと、第1の面2aの反対側に位置された第2の面2bとを有している。
【0014】
複数の放熱フィン5がベース2の第2の面2bに一体に形成されている。放熱フィン5は、ベース2の長手方向に延びているとともに、ベース2の長手方向と直交する方向に間隔を存して並んでいる。
【0015】
回路モジュール3は、ベース2の第1の面2aに実装されている。回路モジュール3は、金属製のシールドケース6を有している。シールドケース6は、複数の回路部品7が実装されたプリント配線板8を収容している。回路部品7は、動作中に発熱を伴う。回路部品7が発する熱は、プリント配線板8を通じてシールドケース6に伝えられる。
【0016】
シールドケース6は、複数のねじを介してベース2の第1の面2aに固定されている。第1の実施形態によると、シールドケース6の底とベース2の第1の面2aとの間に熱伝導シート9が介在されている。熱伝導シート9は、シールドケース6の底とベース2の第1の面2aとの間で挟み込まれて、シールドケース6とベース2との間を熱的に接続している。そのため、回路部品7の熱は、シールドケース6から熱伝導シート9を介してベース2に伝えられるとともに、ベース2の放熱フィン5から放出されるようになっている。
【0017】
よって、第1の実施形態のベース2は、回路モジュール3の放熱を促進させるヒートシンクとしての機能を兼ねている。
【0018】
外装カバー4は、例えばステンレスで構成されている。外装カバー4は、第1ないし第3の壁10,11,12を有している。第1の壁10は、ベース2の第2の面2bおよび放熱フィン5と向かい合うとともに、ベース2の長手方向に沿う一対の側縁10a,10bを有している。
【0019】
第2の壁11は、第1の壁10の一方の側縁10aからベース2に向けて直角に折り曲げられている。第3の壁12は、第1の壁10の他方の側縁10bからベース2に向けて直角に折り曲げられている。第2の壁11および第3の壁12は、夫々ベース2の長手方向に沿って真っ直ぐに延びている。したがって、第2の壁11および第3の壁12は、ベース2を間に挟んで互いに向かい合っている。
【0020】
第2の壁11の内面および第3の壁12の内面に、夫々ブラケット13が固定されている。ブラケット13は、第2の金属部品の一例であって、第2の金属材料としてのステンレスで構成されている。このため、ベース2とブラケット13とでは、材質の相違に伴って線膨張率が互いに異なっている。
【0021】
ブラケット13は、互いに同一の構成を有するため、第2の壁11に固定されたブラケット13を代表して説明する。
【0022】
図4に示すように、ブラケット13は、固定部14とフランジ部15とを有している。固定部14は、第2の壁11の長手方向に沿うように帯状に延びているとともに、第2の壁11の内面に例えばスポット溶接等の手段により固定されている。フランジ部15は、固定部14の一端から直角に折り曲げられて、第2の壁11の長手方向に沿うように帯状に延びている。フランジ部15は、第2の壁11の内面から第3の壁12に向けて張り出している。
【0023】
このため、第3の壁12に固定されたブラケット13にあっては、そのフランジ部15が第3の壁12の内面から第2の壁11に向けて張り出している。
【0024】
図3に示すように、複数のねじ孔16がブラケット13のフランジ部15に形成されている。ねじ孔16は、フランジ部15の長手方向に間隔を存して一列に並んでいる。
【0025】
一方、前記ベース2は、外装カバー4のブラケット13に連結されている。図1および図3に示すように、ベース2は、第2の壁11に固定されたブラケット13に対応する第1の端部18aと、第3の壁12に固定されたブラケット13に対応する第2の端部18bとを有している。第1の端部18aおよび第2の端部18bは、夫々ブラケット13のフランジ部15と向かい合っている。
【0026】
複数の挿通孔19がベース2の第1の端部18aおよび第2の端部18bに夫々形成されている。挿通孔19は、ベース2の第1の面2aおよび第2の面2bに開口されているとともに、フランジ部15のねじ孔16に対応するようにベース2の長手方向に間隔を存して一列に並んでいる。したがって、ベース2の第2の面2bのうち、ベース2の第1の端部18aおよび第2の端部18bに対応する箇所は、フランジ部15と向かい合っている。
【0027】
ベース2の第2の面2bとブラケット13のフランジ部15との間に、複数のゴム状ガスケット20が介在されている。ガスケット20は、導電性を有する弾性体の一例であって、ベース2の長手方向に延びる帯状に形成されている。ガスケット20は、ブラケット13のねじ孔16およびベース2の挿通孔19を避けるように、ベース2の長手方向に並べて配置されている。
【0028】
図3および図4に示すように、ベース2は、複数のねじ22を介してブラケット13に連結されている。ねじ22は、ベース2の第1の面2aの方向から挿通孔19を貫通するとともに、その貫通端がフランジ部15のねじ孔16にねじ込まれている。このねじ込みにより、弾性を有するガスケット20がベース2とブラケット13のフランジ部15との間で挟み込まれている。
【0029】
この結果、ガスケット20がベース2の第2の面2bおよびブラケット13のフランジ部15に密に面接触されて、ベース2とブラケット13との間を電気的に接続している。よって、無線回線装置1を架台の棚板の上に載置した状態では、ベース2に実装された回路モジュール3がベース2および外装カバー4を介して架台に接地されている。
【0030】
図1に示すように、ベース2を外装カバー4のブラケット13に固定した状態では、ベース2と外装カバー4との間に冷却風通路23が形成されている。ベース2の第2の面2bから突出された放熱フィン5は、冷却風通路23に露出されて、この冷却風通路23を流れる冷却風により強制的に冷やされるようになっている。このため、ベース2の放熱フィン5に伝えられた回路モジュール3の熱は、冷却風との熱交換により大気中に放出される。
【0031】
第1の実施形態において、例えば無線回線装置1を保守点検するに際して、架台の扉を開いて無線回線装置1を架台の外に露出させると、架台の内部に外気が流れ込んで無線回線装置1の雰囲気温度が急激に変化する。
【0032】
この際、回路モジュール3が固定されたベース2と、ベース2を支えるブラケット13とでは、材質の相違に伴って線膨張率が互いに異なっている。そのため、温度変化に対してベース2およびブラケット13の長さが変化する割合が違ったものとなり、ベース2とブラケット13とを連結する箇所に歪みが発生する。
【0033】
第1の実施形態によると、弾性を有する導電性ガスケット13がベース2とブラケット13との間に介在され、線膨張率が異なるベース2とブラケット13とが直に接触することなく切り離された状態に保たれている。このため、ベース2およびブラケット13に温度変化が生じた場合でも、ベース2とブラケット13との連結箇所に生じる歪みをガスケット13が弾性的に変形することにより吸収・緩和する。
【0034】
この結果、ベース2とブラケット13との連結箇所に生じる振動をガスケット13で吸収することができ、ベース2に実装された回路モジュール3にベース2およびブラケット13の温度変化に伴う振動が伝わり難くなる。
【0035】
よって、例えば回路モジュール3が規定よりも大きな信号を発するといった動作不良を回避でき、通信エラーの発生を解消することができる。
【0036】
さらに、ガスケット20は導電性を有するので、ベース2と外装カバー4との間の電気的接続が損なわれずに済む。このため、無線回線装置1の各部の導通性能を確保でき、無線回線装置1を架台に接地させることができる。
【0037】
加えて、第1の実施形態によると、複数のガスケット20は、ベース2およびブラケット13のフランジ部15に対し、夫々ベース2の長手方向に沿って面接触されている。このため、ガスケット20とベース2およびガスケット20とフランジ部15との接触面積を十分に確保できるとともに、安定した接触状態を得ることができる。
【0038】
よって、ベース2の接地電位が均等となって、無線回線装置1を確実に接地させることが可能となる。
【0039】
導電性を有する弾性体は、第1の実施形態に記載したゴム状ガスケットに限定されるものではない。例えば、ゴム状ガスケットの代わりに多孔質のスポンジ状ガスケット、スチールウール、金網たわし、あるいはステンレスたわしを用いることができる。
【0040】
さらに、ベースおよびブラケットの材質についても第1の実施形態に特定されるものではなく、例えばステンレス製のベースと鉄製のブラケットとの組み合わせでもよい。
【0041】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態を開示している。
【0042】
第2の実施形態は、弾性体として金属製のコイルスプリング31を用いた点が前記第1の実施形態と相違している。コイルスプリング31を除いた無線回線装置の構成は、前記第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0043】
図5に示すように、コイルスプリング31は、ねじ22に対応する位置でベース2とブラケット13のフランジ部15との間に介在されている。言い換えると、ねじ22は、コイルスプリング31の内側を貫通している。
【0044】
コイルスプリング31は、ねじ22をフランジ部15のねじ孔16にねじ込むことで、ベース2とフランジ部15との間で圧縮されている。そのため、コイルスプリング31の一端は、ベース2に弾性的に押し付けられているとともに、コイルスプリング31の他端は、フランジ部15に弾性的に押し付けられている。
【0045】
したがって、コイルスプリング31は、ベース2とブラケット13のフランジ部15との間で挟み込まれて、ベース2とブラケット13との間を電気的に接続している。
【0046】
このような第2の実施形態によると、金属製のコイルスプリング31がベース2とブラケット13との間に介在されているので、線膨張率が異なるベース2とブラケット13とが直に接触することなく切り離された状態に保たれている。このため、ベース2およびブラケット13に温度変化が生じた場合でも、ベース2とブラケット13との連結箇所に生じる歪みをコイルスプリング31が弾性的に変形することにより吸収・緩和する。
【0047】
よって、ベース2とブラケット13との連結箇所に生じる振動を抑制することができ、前記第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
2…第1の部品、第1の金属部品(ベース)、3…回路モジュール、13…第2の部品、第2の金属部品(ブラケット)、20,31…弾性体(ガスケット、コイルスプリング)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属材料で構成され、回路モジュールが実装された第1の部品と、
前記第1の金属材料とは材質が異なる第2の金属材料で構成され、前記第1の部品に連結された第2の部品と、
前記第1の部品と前記第2の部品との間に介在され、前記第1の部品および前記第2の部品に電気的に接続された導電性を有する弾性体と、
を具備した電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記弾性体は、前記第1の部品および前記第2の部品に面接触されたゴム状又はスポンジ状のガスケットである電子機器。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記弾性体は、前記第1の部品と前記第2の部品との間で圧縮された電子機器。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記回路モジュールは、前記第1の部品および前記第2の部品を介して接地された電子機器。
【請求項5】
第1の金属部品と、
前記第1の金属部品に実装された回路モジュールと、
前記第1の金属部品に連結された第2の金属部品と、
前記第1の金属部品と前記第2の金属部品との間に介在され、前記第1の金属部品および前記第2の金属部品に電気的に接続された導電性を有する弾性体と、
を具備した電子機器。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記弾性体は、前記第1の金属部品および前記第2の金属部品に面接触されたゴム状又はスポンジ状のガスケットである電子機器。
【請求項7】
請求項6の記載において、前記第1の金軸部品と前記第2の金属部品とを互いに結合する複数の締め付け具をさらに備えており、前記弾性体は、前記第1の金属部品と前記第2の金属部品との間で圧縮された電子機器。
【請求項8】
回路モジュールが実装された第1の金属部品と、
前記第1の金属部品に連結され、線膨張率が前記第1の金属部品と異なる第2の金属部品と、
前記第1の金属部品に伝播する振動を吸収するとともに、前記第1の金属部品と前記第2の金属部品との間を電気的に導通させる手段と、
を具備した電子機器。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記手段は、前記第1の金属部品と前記第2の金属部品との間に介在された導電性を有する弾性体である電子機器。
【請求項10】
請求項9の記載において、前記回路モジュールは、前記第1の金属部品および前記第2の金属部品を介して接地された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156293(P2012−156293A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13775(P2011−13775)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】