説明

電子機器

【課題】比較的容易な操作で、筐体に対するタッチパネル付き表示装置の連結力を調整できる電子機器を提供する。
【解決手段】実施形態の電子機器は、筐体にタッチパネル付き表示装置を連結した連結機構と、抵抗部と、調整機構と、を備えている。前記抵抗部は、前記筐体に設けられた第1の当接部と前記タッチパネル付き表示装置に設けられた第2の当接部とを付勢部材の付勢力によって圧接させて前記タッチパネル付き表示装置の回動に抵抗を与える。前記調整機構は、前記タッチパネル付き表示装置の一方向または他方向への回動に連動して前記付勢部材の付勢力を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体と、この筐体に収納されて筐体の開口部から露出するプリンタ機構と、筐体の開口部を開閉するプリンタカバーと、連結機構によって筐体に回動可能に連結されたタッチパネル付き表示装置と、を備えた電子キャッシュレジスタが知られている。
【0003】
この電子キャッシュレジスタの使用時は、タッチパネル付き表示装置がプリンカバーの上方の使用位置に位置付けられてタッチ操作を受け付ける。そして、タッチパネル付き表示装置を、プリンタカバーの上方から待避した待避位置に回動させることで、プリンタカバーを開いて、プリンタ機構への用紙の補充等を行うことができるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電子キャッシュレジスタでは、タッチパネル付き表示装置に対するタッチ操作を受ける場合は、タッチパネル付き表示装置がそのタッチ操作で動くことがないように連結機構によって筐体に強固に連結されていることが要求される。一方、使用位置から待避位置へタッチパネル付き表示装置を回動させる場合には、小さな力でタッチパネル付き表示装置を回動させることができることが要求される。このような上記従来の電子キャッシュレジスタに対しては、比較的容易な操作で、筐体に対してタッチパネル付き表示装置の連結力を調整できることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の電子機器は、筐体と、プリンタカバーと、タッチパネル付き表示装置と、連結機構と、抵抗部と、調整機構と、を備えている。前記筐体は、プリンタ機構を収容している。前記筐体には、前記プリンタ機構の上方に開口部が形成されている。前記プリンタカバーは、前記筐体に連結され、前記開口部を開閉する。前記連結機構は、前記タッチパネル付き表示装置を、前記プリンタカバーの上方に位置して前記タッチパネル付き表示装置へのタッチ操作を受け付ける位置と前記プリンタカバーの上方から待避した位置とを含む範囲で回動可能に、前記筐体に連結している。前記抵抗部は、前記筐体に設けられた第1の当接部と前記タッチパネル付き表示装置に設けられた第2の当接部とを付勢部材の付勢力によって圧接させて前記タッチパネル付き表示装置の回動に抵抗を与える。前記調整機構は、前記タッチパネル付き表示装置の一方向への回動に連動して前記付勢部材の付勢力を増大させ、前記タッチパネル付き表示装置の他方向への回動では前記付勢部材の付勢力を増大させずに前記付勢力を保持する第1の態様と、前記タッチパネル付き表示装置の他方向への回動に連動して前記付勢部材の付勢力を減少させ、前記タッチパネル付き表示装置の一方向への回動では前記付勢部材の付勢力を減少させずに前記付勢力を保持する第2の態様と、に切り替え可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタを示す図であって、タッチパネル付き表示装置が開かれた状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタを示す図であって、タッチパネル付き表示装置が閉じられた状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタの一部を示す図であって、タッチパネル付き表示装置が開かれた状態を示す側面図である。
【図4】図4は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタの一部を示す図であって、タッチパネル付き表示装置が閉じられた状態を示す側面図である。
【図5】図5は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタを概略的に示す側面図である。
【図6】図6は、実施形態にかかる連結機構を示す縦断正面図である。
【図7】図7は、実施形態にかかるラチェット機構を示す図であって、カム部材が第3の位置に位置した状態を示す縦断側面図である。
【図8】図8は、実施形態にかかるラチェット機構のカム部材を示す側面図である。
【図9】図9は、実施形態にかかるラチェット機構を示す図であって、カム部材が第1の位置に位置した状態を示す縦断側面図である。
【図10】図10は、実施形態にかかるラチェット機構を示す図であって、カム部材が第2の位置に位置した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる電子機器としての電子キャッシュレジスタについて詳細に説明する。なお、図中の矢印Xは、電子キャッシュレジスタ10の前後方向の前方を示し、図中の矢印Yは、電子キャッシュレジスタ10の左右方向(幅方向)を示し、図中の矢印Zは、電子キャッシュレジスタ10の上下方向の上方を示している。
【0008】
図1は、本実施形態にかかる電子キャッシュレジスタ10を示す図であって、タッチパネル付き表示装置16が開かれた状態を示す斜視図である。電子キャッシュレジスタ10は、後端部から前端部にかけて徐々に高さが低くなる基本姿態を有する筐体11を有している。筐体11の上面11aには、その前部に位置させてキーボード12が配置され、このキーボード12の左後方に位置させてプリンタカバー13が開閉可能に配置されている。
【0009】
プリンタカバー13は、筐体11に収納されたレシート印字用のプリンタ機構14(図3参照)を覆い、その前端部が、キーボード12後方の筐体11部分との間にレシート発行口15を形成している。詳しくは、筐体11には、プリンタ機構14の上方に開口部11bが形成されており、プリンタカバー13は、その後端部が筐体11に支軸38(図示せず)によって回動可能に連結されて、開口部11bを開閉する。ここで、プリンタ機構14は、例えば、用紙収納部に収納したロール状のレシート用紙を搬送部によって引き出し搬送し、この搬送過程でレシート用紙にサーマルヘッドにより印字し、印字したレシート用紙をカッタ装置で切断してレシートとしてレシート発行口15から発行する構成である。
【0010】
また、筐体11の上面11aには、タッチパネル付き表示装置16が取り付けられている。タッチパネル付き表示装置16は、略扁平板状の外観形状に形成された回動体である。タッチパネル付き表示装置16は、液晶表示パネル16aと、この液晶表示パネル16a上に積層配置されたタッチパネル16bと、これらの液晶表示パネル16aとタッチパネル16bとを支持した表示筐体16cと、を有する。表示筐体16cの正面壁の中央部には表示孔16dが設けられており、この表示孔16dから、タッチパネル16bが積層された液晶表示パネル16aが露出している。このタッチパネル付き表示装置16は、筐体11の上面11aでキーボード12の右後方に位置させて回動支点となる連結機構20によって筐体11に回動可能に連結されている。プリンタカバー13と連結機構20とは、キーボード12の後方で左右方向に並んで配置されている。
【0011】
図2は、本施形態にかかる電子キャッシュレジスタ10を示す図であって、タッチパネル付き表示装置16が閉じられた状態を示す斜視図である。タッチパネル付き表示装置16は、開かれた使用時の図1に示す開状態から閉じられると、図2に示すように、筐体11の上面11aを覆う。そして、タッチパネル付き表示装置16は、閉状態では液晶表示パネル16aおよびタッチパネル16bがキーボード12と対向して、キーボード12を覆う位置に位置付けられる。タッチパネル付き表示装置16がキーボード12を覆う位置に位置した状態では、プリンタカバー13の上方が露出する。
【0012】
図3は、本実施形態にかかる電子キャッシュレジスタ10の一部を示す図であって、タッチパネル付き表示装置16が開かれた状態を示す側面図、図4は、実施形態にかかる電子キャッシュレジスタ10の一部を示す図であって、タッチパネル付き表示装置16が閉じられた状態を示す側面図である。連結機構20は、詳しくは、タッチパネル付き表示装置16を、プリンタカバー13の上方に位置してタッチパネル付き表示装置16(タッチパネル16b)へのタッチ操作を受け付ける位置である使用位置(図3)とプリンタカバー13の上方から待避した位置である待避位置(図4)とを含む範囲で回動可能に、筐体11に連結している。図3では、使用位置に位置したタッチパネル付き表示装置16を実線や一点鎖線で例示している。タッチパネル付き表示装置16が使用位置に位置した場合には(図3)、タッチパネル付き表示装置16がプリンタカバー13の上方に位置している。このような配置にすることで電子キャッシュレジスタ10の小型化が図られている。このとき、プリンタカバー13を全開にはできない。一方、タッチパネル付き表示装置16が待避位置に位置した場合には(図4)、タッチパネル付き表示装置16がプリンタカバー13の上方から待避しているので、プリンタカバー13を全開させることができ(図2参照)、プリンタカバー13を開いてプリンタ機構14への用紙の補充やメンテナンスが可能となっている。
【0013】
図5は、本実施形態にかかる電子キャッシュレジスタ10を概略的に示す側面図である。連結機構20は、筐体11の側面11cから筐体11の外部に突出した操作部21を有している。操作部21の一端部は、筐体11の内部で連結機構20に接続され、他端部は、筐体の外部に突出しており操作を受け付ける。この操作部21の操作によって、連結機構20による筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力が調整可能となっている。操作部21は、筐体11の側面11cに設けられた操作開口部11dを貫通して設けられており、後述する支軸38(図6参照)を中心として回動可能となっている。操作部21は、回動位置として「強」、「中」、「弱」の位置を含む範囲で回動可能となっており、筐体11の側面11cには、それら「強」、「中」、「弱」の位置を示す表示11eが設けられている。
【0014】
図6は、本実施形態にかかる連結機構20を示す縦断正面図である。連結機構20は、抵抗部23と、調整機構24と、を有している。抵抗部23は、筐体11に設けられた第1の当接部11jとタッチパネル付き表示装置16に設けられた第2の当接部16gとを付勢部材であるばね25の付勢力によって圧接させてタッチパネル付き表示装置16の回動に抵抗を与えるものである。調整機構24は、第1の態様と、第2の態様と、第3の態様と、に切り替え可能である。第1の態様は、タッチパネル付き表示装置16の一方向(後方、図5中等の矢印Aの方向)への回動に連動してばね25の付勢力を増大させ、タッチパネル付き表示装置16の他方向へ(前方、図5中等の矢印Bの方向)の回動ではばね25の付勢力を増大させずにばね25の付勢力を保持する態様である。第2の態様は、タッチパネル付き表示装置16の他方向への回動に連動してばね25の付勢力を減少させ、タッチパネル付き表示装置16の一方向への回動ではばね25の付勢力を減少させずにばね25の付勢力を保持する態様である。第3の態様は、タッチパネル付き表示装置16の一方向と他方向とのどちらの回動においてもばね25の付勢力を変更せずにばね25の付勢力を保持する態様である。以下に、抵抗部23と調整機構24とを含む連結機構20について詳細に説明する。
【0015】
連結機構20は、タッチパネル付き表示装置16の表示筐体16cに設けられた左右一対の壁である第1の基壁16eおよび第2の基壁16fを、第1の軸部材(軸部材)26および第2の軸部材27を介して、筐体11の左右一対の壁である第1の支持壁11fおよび第2の支持壁11gにそれぞれ回動可能に連結している。
【0016】
第1および第2の軸部材26,27は、一直線上に配置されており、その軸方向は、電子キャッシュレジスタ10(筐体11)の左右方向と平行となっている。第1および第2の基壁16e,16fは、第1および第2の軸部材26,27の軸方向で間隔をかけて相対向している。第1および第2の支持壁11f,11gは、第1および第2の軸部材26,27の軸方向で間隔をかけて相対向している。これらの第1および第2の支持壁11f,11gを含む取付部11hは、第1および第2の基壁16e,16fの間に配置され、第1および第2の基壁16e,16fに摺回動可能に嵌合している。第1の基壁16eは、第1の軸部材26を介して第1の支持壁11fに回動可能に連結されており、第2の基壁16fは、第2の軸部材27を介して第2の支持壁11gに回動可能に連結されている。以下、第2の基壁16fと第2の支持壁11gとの連結構造を説明した後、第1の基壁16eと第1の支持壁11fとの連結構造を説明する。
【0017】
第2の軸部材27は、外周に雄ねじが形成された雄ねじ部材であり、タッチパネル付き表示装置16の回動中心となっている。第2の軸部材27の軸方向の一端部には、円板形状の一体部材28が一体に設けられている。そして、第1の軸部材26には、一体部材28から他端部に向けて、板ばね等のばね29と、第2の支持壁11gと、第2の基壁16fと、ナット30と、が外挿されている。ナット30は、第2の軸部材27に螺合している。かかる構成によって、第2の基壁16fが第2の支持壁11gにばね29の付勢力によって圧接されており、第2の基壁16fは、第2の支持壁11gに所定の回動抵抗を有して回動可能に連結されている。
【0018】
次に、第1の基壁16eと第1の支持壁11fとの連結構造について説明する。第1の軸部材26は、外周に雄ねじ26aが形成された雄ねじ部材であり、第2の軸部材27と同じく、タッチパネル付き表示装置16の回動中心となっている。この第1の軸部材26は、調整機構24を構成している。第1の軸部材26の軸方向の一端部には、円板形状の一体部材31が一体に設けられている。そして、第1の軸部材26には、一体部材31から他端部に向けて、ばね25と、第1の支持壁11fと、第1の基壁16eと、ワッシャー32と、ラチェット歯車33と、が外挿されている。
【0019】
ラチェット歯車33は、後述するラチェット機構34を構成するものである。ラチェット歯車33は、外周にラチェット歯33aを有するとともに、内周に第1の軸部材26が挿通されたねじ孔33bが形成されている。このねじ孔の周面には、雄ねじ26aと螺合した雌ねじ33cが形成されている。
【0020】
第1の支持壁11fと一体部材31との相互の対向面には、一対のばね支持部11i,31aが形成されている。これらの一対のばね支持部11i,31aは、相互の接離方向(左右方向)への相対移動が可能であり、相互の間でばね25を挟持して、相互の間隔の変更によってばね25を伸縮させる。ばね25は、例えば、板ばねである。これらの一対のばね支持部11i,31aとばね25とは、抵抗部23を構成している。また、一対のばね支持部11i,31aは、調整機構24を構成している。
【0021】
また、第1の支持壁11fと第1の基壁16eとの相互の対向面には、第1および第2の当接部11j,16gが形成されており、これらの第1および第2の当接部11j,16gは摺動可能となっている。
【0022】
また、第1の支持壁11fには、第1の軸部材26が回動可能に挿入された挿通孔11kが形成され、第1の基壁16eには、第1の軸部材26が回動可能に挿入されたねじ孔16hが形成されている。ねじ孔16hの周面には、雄ねじ26aと螺合した雌ねじ16iが形成されている。
【0023】
以上のとおり、第1の支持壁11fは、一面に設けられた第1の当接部11jと一面の裏面に設けられた一方のばね支持部11iとを有するとともに、一面および裏面を貫通した挿通孔11kが設けられており、この第1の支持壁11fは、筐体11に設けられた支持部に相当する。また、第1の支持壁11fは、調整機構24を構成している。
【0024】
また、第1の基壁16eは、第2の当接部16gを有して第1の支持壁11fにおける第1の当接部11j側に配置され、雄ねじ26aに螺合している。この第1の基壁16eは、係合部に相当する。この第1の基壁16eは、調整機構24を構成している。
【0025】
また、一体部材31は、他方のばね支持部31aを有して第1の支持壁11fにおける一方のばね支持部11i側に配置され、第1の軸部材26に一体に設けられている。この一体部材31は、調整機構24を構成している。
【0026】
このような構成によって、第1の基壁16eが第1の支持壁11fにばね25の付勢力によって圧接されており、第1の基壁16eは、第1の支持壁11fに所定の回動抵抗を有して回動可能に連結されている。
【0027】
ここで、第1の軸部材26および第1の基壁16eは、変換機構35を構成している。変換機構35は、第1の軸部材26の雄ねじ26aと第1の基壁16eの雌ねじ16iとの相対移動運動によって、タッチパネル付き表示装置16の回動運動を一対のばね支持部11i,31aの対向方向の相対移動運動に変換するものである。
【0028】
図7は、実施形態にかかるラチェット機構34を示す図であって、カム部材36が第3の位置に位置した状態を示す縦断側面図である。調整機構24は、ラチェット機構34を有している。ラチェット機構34は、ラチェット歯車33と、第1および第2のラチェット爪36a,36bを有したカム部材36と、第1および第2のラチェット爪36a,36bをラチェット歯車33に係脱させる係脱機構37と、を有する。
【0029】
ラチェット歯車33は、外周にラチェット歯33aを有して係合部である第1の基壁16eにおける第2の当接部16g側の反対側に配置されて、第1の軸部材26に螺合している。
【0030】
図8は、実施形態にかかるラチェット機構34のカム部材36を示す側面図である。カム部材36は、ラチェット歯33aに対して係合可能な第1および第2のラチェット爪36a,36bと、第1および第2のラチェット爪36a,36bを選択的にラチェット歯33aに係合させる選択部36cと、を有する。カム部材36は、支軸38によって、筐体11の第1の支持壁11fに連結されている。カム部材36は、支軸38に対して回動可能に遊嵌されているとともに、図示しない抜け止め部材によって支軸38からの抜け止めがされている。選択部36cは、支軸38を挟んで第1および第2のラチェット爪36a,36bとは反対側に設けられている。選択部36cは、一対の係合部である第1および第2の係合部36d,36eと、これら第1および第2の係合部36d,36eの間に位置した第3の係合部36fと、を有している。また、このカム部材36には、操作部21が固定されている。ここで、操作部21は、カム部材36の一面から突出した棒部21aと、この棒部21aの突出端部に設けられた円板部21bとを有しており、円板部21bが筐体11の外部に位置している。
【0031】
図7に示すように、係脱機構37は、選択部36cと、この選択部36cに係合するカム部材36と、このカム部材36を選択部36cに向けて付勢している付勢機構39と、を有する。
【0032】
付勢機構39は、付勢部材であるコイルばね40と、コイルばね40に支持された係合片41と、コイルばね40を支持したばね支持部材42と、を有する。ばね支持部材42は、筐体11に設けられている。係合片41は、コイルばね40に挿入された棒部41aと、この棒部41aの先端に形成された球状の頭部41bと、を有している。係合片41は、頭部41bがコイルばね40に係合した状態で、コイルばね40に支持されている。この係合片41の頭部41bが、カム部材36の回動に伴い、選択部36cの縁部を相対的に摺動して第1ないし第3の係合部36d〜36fに選択的に係合する。
【0033】
ラチェット機構34の動作を図7、図9及び図10を参照して説明する。ここで、図9は、本実施形態にかかるラチェット機構34を示す図であって、カム部材36が第1の位置に位置した状態を示す縦断側面図、図10は、本実施形態にかかるラチェット機構34を示す図であって、カム部材36が第2の位置に位置した状態を示す縦断側面図である。
【0034】
ラチェット機構34は、操作部21が「中」の位置に位置している場合には、図7に示すように、係合片41の頭部41bがカム部材36の第3の係合部36fに係合した状態となっており、カム部材36が第3の位置に位置付けられている。この状態が第3の態様である。この場合、第1および第2のラチェット爪36a,36bがラチェット歯車33のラチェット歯33aから離間した状態(非係合状態)となっている。この状態では、ラチェット歯車33は、一方向および他方向(正逆方向)のどちらにも回動可能である。この状態から、操作部21が「強」の位置に位置付けられると、図9に示すように、カム部材36が他方向(図中の矢印Bの方向)へ回動されて係合片41の頭部41bがカム部材36の第1の係合部36dに係合し、カム部材36が第1の位置に位置付けられる。この状態が第1の態様である。この場合には、第1のラチェット爪36aが、ラチェット歯車33のラチェット歯33aに係合しているため、ラチェット歯車33は、他方向(図中矢印Bの方向)への回動は許容されるが、一方向(図中矢印Aの方向)への回動は規制(阻止)される。そして、この状態から操作部21が「弱」の位置に位置付けられると、図10に示すように、係合片41が一方向へ回動されて係合片41の頭部41bがカム部材36の第2の係合部36eに係合し、カム部材36が第2の位置に位置付けられる。この状態が第2の態様である。この場合には、第2の係合部36eが、ラチェット歯車33のラチェット歯33aに係合しているため、ラチェット歯車33は、一方向(図中矢印Aの方向)への回動は許容されるが、他方向(図中矢印Bの方向)への回動は規制(阻止)される。
【0035】
次に、筐体11へのタッチパネル付き表示装置16の連結力の調整方法を説明する。筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を高くする場合には、使用者は、まず、操作部21を「強」の位置に位置させる(第1の態様)。これにより、ラチェット機構34が、ラチェット歯車33の一方向(図中矢印Aの方向)への回動を規制する。そして、使用者は、タッチパネル付き表示装置16を一方向(図中矢印Aの方向)に回動させる。この際、ラチェット歯車33の一方向への回動が規制されているので、表示筐体16cの第1の基壁16eの雌ねじ16iが第1の軸部材26の雄ねじ26aに対して相対移動して、これにより、第1の軸部材26が回動しながらその軸方向のうちの一方向(図6における右方向)へ移動される。これにより、一対のばね支持部11i,31aの間隔が狭まり、ばね25が圧縮され、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力がタッチパネル付き表示装置16の回動前に比べて大きくなる。更に、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を大きくしたい場合には、使用者は、タッチパネル付き表示装置16を他方向(図中矢印Bの方向)に回動させる。この際、ラチェット歯車33の他方向への回動は許容されているので、各部の摩擦によって、タッチパネル付き表示装置16の回動に伴って、その回動と同じく、第1の軸部材26およびラチェット歯車33が回動する。この際には、ばね25が変形しないので、ばね25の付勢力が変更されずに維持される。そして、使用者は、再度タッチパネル付き表示装置16を一方向に回動させる。これにより、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力が更に大きくなる。このようにして、使用者は、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を強くし、タッチパネル付き表示装置16を所望の位置に位置付けて、使用することができる。
【0036】
一方、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を弱くする場合には、使用者は、まず、操作部21を「弱」の位置に位置させる(第2の態様)。これにより、図10に示すように、ラチェット機構34が、ラチェット歯車33の他方向(図中の矢印Bの方向)への回動を規制する。そして、使用者は、タッチパネル付き表示装置16を他方向(図中の矢印Bの方向)に回動させる。この際、ラチェット歯車33の他方向への回動が規制されているので、表示筐体16cの第1の基壁16eの雌ねじ16iが第1の軸部材26の雄ねじ26aに対して相対移動して、これにより、第1の軸部材26が回動しながらその軸方向のうちの他方向(図6における左方向)へ移動される。これにより、一対のばね支持部11i,31aの間隔が広まり、ばね25が伸張し、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力がタッチパネル付き表示装置16の回動前に比べて小さくなる。更に、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を小さくしたい場合には、使用者は、タッチパネル付き表示装置16を一方向に回動させる。この際、ラチェット歯車33の一方向への回動は許容されているので、各部の摩擦によって、タッチパネル付き表示装置16の回動に伴って、その回動と同じく、第1の軸部材26およびラチェット歯車33が回動する。この際には、ばね25が変形しないので、ばね25の付勢力が変更されずに維持される。そして、使用者は、再度タッチパネル付き表示装置16を他方向に回動させる。これにより、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力が更に小さくなる。このようにして、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を弱くして、タッチパネル付き表示装置16を待避位置へ容易に回動させることができる。これにより、使用者は、プリンタカバー13を容易に開くことができる。
【0037】
以上説明したとおり、本実施形態の調整機構24は、タッチパネル付き表示装置16の一方向(矢印Aの方向)への回動に連動してばね25の付勢力を増大させ、タッチパネル付き表示装置16の他方向(矢印Bの方向)への回動ではばね25の付勢力を増大させずにその付勢力を保持する第1の態様と、タッチパネル付き表示装置16の他方向への回動に連動してばね25の付勢力を減少させ、タッチパネル付き表示装置16の一方向への回動ではばね25の付勢力を減少させずにその付勢力を保持する第2の態様と、に切り替え可能である。したがって、調整機構24を第1の態様や第2の態様にして、タッチパネル付き表示装置16を回動させるという比較的容易な操作で、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を調整することができる。このように、本実施形態では、特段の工具を用いることなく、筐体11に対するタッチパネル付き表示装置16の連結力を調整することができる。
【0038】
なお、本発明は、本実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができる。例えば、ばね25は、板ばねに限ることなく、コイルばね等であってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…電子キャッシュレジスタ(電子機器)
11…筐体
11b…開口部
11f…第1の支持壁(支持部)
11j…第1の当接部
11k…挿通孔
11i,31a…ばね支持部
12…キーボード
13…プリンタカバー
14…プリンタ機構
16…タッチパネル付き表示装置
16e…第1の基壁(係合部)
16g…第2の当接部
20…連結機構
21…操作部
23…抵抗部
24…調整機構
25…ばね(付勢部材)
26…第1の軸部材(軸部材)
26a…雄ねじ
31…一体部材
33…ラチェット歯車
33a…ラチェット歯
35…変換機構
36a…第1のラチェット爪
36b…第2のラチェット爪
37…係脱機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【特許文献1】特開2007−164331公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ機構を収容し、前記プリンタ機構の上方に開口部が形成された筐体と、
前記筐体に連結され、前記開口部を開閉するプリンタカバーと、
タッチパネル付き表示装置と、
前記タッチパネル付き表示装置を、前記プリンタカバーの上方に位置して前記タッチパネル付き表示装置へのタッチ操作を受け付ける位置と前記プリンタカバーの上方から待避した位置とを含む範囲で回動可能に、前記筐体に連結した連結機構と、
前記筐体に設けられた第1の当接部と前記タッチパネル付き表示装置に設けられた第2の当接部とを付勢部材の付勢力によって圧接させて前記タッチパネル付き表示装置の回動に抵抗を与える抵抗部と、
前記タッチパネル付き表示装置の一方向への回動に連動して前記付勢部材の付勢力を増大させ、前記タッチパネル付き表示装置の他方向への回動では前記付勢部材の付勢力を増大させずに前記付勢力を保持する第1の態様と、前記タッチパネル付き表示装置の他方向への回動に連動して前記付勢部材の付勢力を減少させ、前記タッチパネル付き表示装置の一方向への回動では前記付勢部材の付勢力を減少させずに前記付勢力を保持する第2の態様と、に切り替え可能な調整機構と、
を備えた電子機器。
【請求項2】
前記筐体の上面に配置されたキーボードを備え、
前記プリンタカバーと前記連結機構とは、前記キーボードの後方で左右方向に並んで配置されており、
前記タッチパネル付き表示装置がキーボードを覆う位置に位置した状態で前記プリンタカバーの上方が露出する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記調整機構は、前記第1の態様と、前記第2の態様と、前記タッチパネル付き表示装置の一方向と他方向とのどちらの回動においても前記付勢部材の付勢力を変更せずに前記付勢力を保持する第3の態様と、に切り替え可能である請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記付勢部材は、ばねであり、
前記調整機構は、
相互の接離方向への相対移動が可能であり、相互の間で前記ばねを挟持して、相互の間隔の変更によって前記ばねを伸縮させる一対のばね支持部と、
前記タッチパネル付き表示装置の回動運動を前記一対のばね支持部の相対移動運動に変換する変換機構と、
を備える請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電子機器。
【請求項5】
前記調整機構は、
一面に設けられた前記第1の当接部と前記一面の裏面に設けられた一方の前記ばね支持部とを有するとともに前記一面および前記裏面を貫通した挿通孔が設けられ、前記筐体に設けられた支持部と、
外周に雄ねじを有して前記挿通孔に回動可能に挿通されて前記変換機構を構成し、前記タッチパネル付き表示装置の回動中心である軸部材と、
前記タッチパネル付き表示装置に設けられ、前記第2の当接部を有して前記支持部における前記第1の当接部側に配置され、前記雄ねじに螺合して前記変換機構を構成した係合部と、
他方の前記ばね支持部を有して前記支持部における前記一方の前記ばね支持部側に配置され、前記軸部材に一体に設けられた一体部材と、
外周にラチェット歯を有して前記係合部における前記第2の当接部側の反対側に配置され、前記軸部材に螺合したラチェット歯車と、
前記ラチェット歯車に係合することで前記調整機構を第1の態様とする第1のラチェット爪と、
前記ラチェット歯車に係合することで前記調整機構を第2の態様とする第2のラチェット爪と、
前記第1および第2のラチェット爪を前記ラチェット歯車に係脱させる係脱機構と、
を有する請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記調整機構は、前記筐体の側面から前記筐体の外部に突出した操作部を有する請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−183711(P2012−183711A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48126(P2011−48126)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】