説明

電子機器

【課題】圧電素子などによりタッチパネルを湾曲振動させる電子機器において、振動の減衰を低減させつつ防塵対策を施した電子機器を提供する。
【解決手段】電子機器は、矩形状のタッチパネル20と、タッチパネル20を振動させる振動部50と、タッチパネル20が配置されるとともにタッチパネル20の表面周縁部を覆う支持部材10a,10bと、を備え、タッチパネル20の表面において対向する2つの縁辺部分と支持部材10a,10bとの間にそれぞれ弾性部材70を介在させ、タッチパネル20の裏面において残りの対向する2つの縁辺部分と支持部材10a,10bとの間にそれぞれ柔軟性シール部材を圧入させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関するものである。より詳細には、本発明は、タッチパネルに対する操作入力を検出して、操作感をフィードバックする電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電子機器の入力装置として、タッチパネルやタッチパッドなどが広く採用されている。そのような入力装置において、操作者がタッチパネルやタッチパッドなどを操作した際に、タッチパネルやタッチパッドを湾曲振動させることにより、操作者の指先などに操作感をフィードバックするものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図8は、特許文献1に記載の電子機器を分解した外観斜視図である。図8に示すように、特許文献1に記載の電子機器(ディスプレイ装置)は、ディスプレイモニタ100、パネル固定用フレーム210、タッチパネル400、およびカバー500を備えている。この電子機器は、タッチパネル400等の各部品が、上記ディスプレイモニタ100に対して組付けられることにより構成されている。
【0004】
特許文献1に記載の電子機器において、ディスプレイモニタ100は、液晶ディスプレイ(LCD)からなり、全体が矩形かつ扁平な形状を有している。ディスプレイモニタ100は、図示しない制御装置による制御に従って、例えばキーやボタン等のオブジェクトまたは各種の情報などを、その表示面に表示する。このディスプレイモニタ100の表示面上には、当該モニタ100とほぼ同じ大きさのタッチパネル400が位置するように組付けられる。
【0005】
タッチパネル400は、例えば透明な樹脂板にマトリクス状のスイッチ回路が形成され、パネル表面が操作者の指先などにより接触されると、その接触位置に応じた検出信号を前記制御装置に出力するように構成されている。つまり、操作者は、タッチパネル400を通して映し出されるディスプレイモニタ100の表示に従って当該パネル400に対して操作を行うことにより、前記電子機器に対して当該表示に応じた各種情報を入力することができる。
【0006】
この電子機器においては、図8に示すように、タッチパネル400の裏面側の上辺(図の奥側)および下辺(図の手前側)に沿って、一対の圧電素子(ピエゾ素子)420が貼り付けられている。タッチパネル400が操作者による接触を検出すると、この電子機器は、前記制御装置から圧電素子420に駆動信号(電圧)を付与する。この駆動信号を受信すると、圧電素子420は伸縮してタッチパネル400を変形(湾曲)させるため、この電子機器は、タッチパネル400の操作面に対して振動を発生させることができる。すなわち、上記操作に伴って、タッチパネル400が振動することにより、操作者は操作感を得ることができるようになっている。
【0007】
なお、この電子機器において、タッチパネル400は、パネル固定用フレーム210を介して前記ディスプレイモニタ100に組付けられている。パネル固定用フレーム210は、ABS等の硬質の樹脂材料から形成されることにより全体が剛性を有した構成となっている。
【0008】
図8に示すように、パネル固定用フレーム210には、前記タッチパネル400をその四隅において保持するホルダ220が組付けられる。図9は、4つのホルダ220のうち1つが、タッチパネル400の隅に取り付けられる様子を示す拡大図である。各ホルダ220には、タッチパネル400の角部を差込み可能なスリット状の差込み部360がそれぞれ形成されている。また、図8に示すように、パネル固定用フレーム210の周囲側面には、各側面それぞれの端部付近に、ホルダ220を固定するための固定孔320が設けられている。そして、図9に示すホルダ220に形成されたフック340aが、図8に示す各固定孔320に差し込まれることにより、各ホルダ220は、タッチパネル400をパネル固定用フレーム210に固定する。
【0009】
このように、各ホルダ220にタッチパネル400の四隅がそれぞれ差込まれると、各ホルダ220は、タッチパネル400を四隅で外側から拘束するとともに、厚み方向の両側からも拘束した状態で保持する。したがって、特許文献1に記載の電子機器は、タッチパネル400が固定されるように配置することができる。
【0010】
また、ホルダ220は、それぞれ、パネル固定用フレーム210よりも弾性係数の小さい材料から形成されており、例えばシリコン系の樹脂またはゴムにより一体成型されている。このように、ホルダ220は、タッチパネル400を安定的に保持する一方で、タッチパネル400が振動できるように弾性変形可能に構成されている。なお、タッチパネル400とディスプレイモニタ100との間には、タッチパネル400の厚み方向の変位を可能とする隙間が確保される。このため、圧電素子420が振動する際に、当該振動に伴うタッチパネル400の厚み方向の変位が可能となっている。
【0011】
したがって、特許文献1に記載の電子機器は、タッチパネル400を振動させる際に、その振動を大きく妨げることがないようになっているため、タッチパネル400の振動による操作感を良好に確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2010−44497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、特許文献1に記載の電子機器は、タッチパネルの振動による操作感を良好に確保することができるとともに、タッチパネルが固定されるように配置することができる。
【0014】
ところで、特許文献1に記載の電子機器は、例えば車載用ナビゲーションシステムのディスプレイ装置などを想定しており、電子機器そのものの防塵対策などは特に施されていない。例えば、図8に示す電子機器を組み立てると、タッチパネル400は、弾性材料のホルダ220の差込み部360に差し込まれた状態で、つまりホルダ220を介して、パネル固定用フレーム210に取り付けられる。これは、タッチパネル400をパネル固定用フレーム210に強固に固定してしまうと、圧電素子420が振動する際に、タッチパネル400が厚み方向に変位せず、タッチパネル400を良好に振動させることができなくなるためである。したがって、タッチパネル400とパネル固定用フレーム210との間には、隙間ができることになり、当該隙間から埃などが浸入することが多分に想定される。
【0015】
そこで、特許文献1に記載の電子機器において、防塵対策として、例えば、タッチパネル400とパネル固定用フレーム210との間に防塵用クッションなどの部材を挿入することも考えられる。しかしながら、このような防塵用クッションは、ある程度圧縮可能な材質を用いたとしても、圧縮後の厚さのぶんだけタッチパネルが湾曲する物理的なスペースを奪ってしまうことになる。したがって、このような構造においては、タッチパネルが振動する際の振幅を稼ぐことができないという問題が生じる。
【0016】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、圧電素子などによりタッチパネルを湾曲振動させる電子機器において、振動の減衰を低減させつつ防塵対策を施した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成する第1の観点に係る電子機器の発明は、
矩形状のタッチパネルと、
前記タッチパネルを振動させる振動部と、
前記タッチパネルが配置されるとともに当該タッチパネルの表面周縁部を覆う支持部材と、を備えた電子機器であって、
前記タッチパネルの表面における対向する2つの縁辺部分と前記支持部材との間に第1の弾性部材を介在させ、
前記タッチパネルの裏面における前記対向する2つの縁辺部分と直角となる対向する2つの縁辺部分と前記支持部材との間に第2の弾性部材を介在させたことを特徴とするものである。
【0018】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る電子機器において、
前記タッチパネルの裏面における四隅に支柱を形成し、前記第2の弾性部材は前記支柱以外の部分に介在させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧電素子などによりタッチパネルを湾曲振動させる電子機器において、振動の減衰を低減させつつ防塵性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る電子機器の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電子機器を分解した外観斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るタッチパネルおよび周辺要素を説明する外観斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る電子機器を線A−Aに沿って切断した端面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電子機器を線B−Bに沿って切断した端面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電子機器を線C−Cに沿って切断した端面図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電子機器を線D−Dに沿って切断した端面図である。
【図8】従来の電子機器の構造を説明する図である。
【図9】従来の電子機器の構造を説明する他の図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
まず、本発明の実施の形態に係る電子機器の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る電子機器の外観を示す斜視図である。
【0023】
図1に示すように、本実施の形態に係る電子機器1は、外観上、上部筐体10aと、下部筐体10bと、タッチパネル20と、を備えている。
【0024】
上部筐体10aおよび下部筐体10bは、両者が一体に組み合わさることにより、筐体10を構成する。この上部筐体10aは、両面テープまたは接着剤などを用いて、下部筐体10bに接着する。これら上部筐体10aと下部筐体10bとの間は、これらが一体に組み合わされた状態において、ある程度密閉される構造にしても良い。上部筐体10aおよび下部筐体10bは、例えば樹脂製のケースなどとして、ある程度の衝撃に耐えうる素材により構成するのが好適である。なお、上部筐体10aを下部筐体10bと一体化させた構成にできる場合、上部筐体10aは、下部筐体10bと別部材として設ける必要はない。
【0025】
なお、上部筐体10aは、例えばベゼル等の各種の部材とすることができるが、本明細書においては「上部筐体」と総称する。上部筐体10aをベゼルとする場合、当該上部筐体10aは、例えば金属製、プラスチック製、ABS等の樹脂製などとすることができ、ある程度の強度を有する素材で構成するのが好適である。
【0026】
タッチパネル20は、通常、後述する表示部80の前面に配置して、表示部80に表示したオブジェクトに対する操作者の指やスタイラスペン等(以下、単に「接触物」と総称する)による接触を、対応するタッチパネル20のタッチ面において検出する。したがって、本実施の形態において、「タッチパネル」とは、例えばLCD等とすることができる表示部80の前面に配置する部材、即ち当該表示部80とは別に設けられる部材を想定して説明する。また、タッチパネル20は、タッチ面に対する接触物の接触の位置を検出し、当該検出した接触の位置を制御部(図示せず)に通知する。
【0027】
このタッチパネル20は、例えば抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の方式により構成されたタッチパネルを用いることができる。なお、タッチパネル20が接触物による接触を検出する上で、接触物がタッチパネル20に物理的に触れることは必須ではない。例えば、タッチパネル20が光学式である場合は、タッチパネル20は当該タッチパネル20上の赤外線が接触物で遮られた位置を検出するため、接触物がタッチパネル20に触れることは不要である。
【0028】
上述した表示部80は、例えばキーのような押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)等のオブジェクトを画像で表示する。このオブジェクトは、タッチパネル20のタッチ面上において接触すべき領域を操作者に示唆する画像である。また、押しボタンスイッチとは、操作者が入力の操作に用いるボタンやキー等(以下、単に「キー等」と総称する)である。この表示部80は、例えば、液晶表示パネル(LCD)や有機EL表示パネル等を用いて構成する。すなわち、図1に示すタッチパネル20の背面側には、後述のように、LCDなどの表示部80を配置することができる。
【0029】
図2は、図1に示した電子機器1において、上部筐体10aを下部筐体10bと分離させた状態、すなわち筐体を分解した状態にしてから、さらにタッチパネル20に係る周辺要素を取り外した状態を示す斜視図である。
【0030】
図2に示すように、上部筐体10aは、枠状の部材とし、前面(上面)から見て窓(開口部)が形成されるようにする。この窓により、電子機器1を組み立てた状態において、操作者は後述の表示部80の表示を外部から視認することができ、さらに操作者がタッチパネル20に接触することができる。なお、下部筐体10b内側の底部には、後述するように、例えばLCDなどの表示部やLCDホルダ、また各種の基板などの種々の部品を設置することができるが、図2においては、そのような部品の図示は省略してある。
【0031】
図2から分かるように、下部筐体10bと上部筐体10aとを組み合わせた状態においては、タッチパネル20は、図に示す各種の部材に支持されながら、下部筐体10bと上部筐体10aとの間に配置される。これら各種の部材について、以下説明する。
【0032】
上部筐体10aとタッチパネル20との間には、図2に示すように、細長状の弾性部材70が配置される。図2において、弾性部材70は、タッチパネル20の表面(前面)において、タッチパネル20の縁辺部分のうち2つの長辺に沿って配置されている。ここで、タッチパネル20の長辺とは、タッチパネル20において図2に示すY軸方向に平行な方向の辺を意味する。
【0033】
タッチパネル20の前面側に配置される細長状の弾性部材70は、例えばスポンジ等の伸縮性の材料、またはウレタンフォームやポロン(商品名)などの弾性および伸縮性を有する柔軟な材料とするのが好適である。また、この弾性部材70は、上部筐体10aおよびタッチパネル20に対して、例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが好適である。このように、本実施の形態においては、タッチパネル20の表面(前面)において、対向する2つの縁辺部分と上部筐体10aとの間に、それぞれ弾性部材70を介在させる。
【0034】
また、図2から分かるように、下部筐体10bの内部には、支柱30および柔軟性シール部材40が配置される。タッチパネル20は、これらの支柱30および柔軟性シール部材40によって支持される。なお、本発明の弾性部材には、弾性部材70および柔軟性シール材料40のいずれも含まれるものとする。
【0035】
タッチパネル20を支持する支柱30は、下部筐体10bの内部の四隅にそれぞれ配置される。この支柱30は、例えばシリコンゴムなどの弾性材料製として、例えばJIS−A硬度50〜60度程度とする。このように、弾性材料製の支柱30を用いることにより、タッチパネル20を振動させる際に、当該振動の減衰を低減するようにする。
【0036】
また、タッチパネル20を支持する柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面(背面)において、タッチパネル20の縁辺部分のうち2つの短辺に沿って配置される。ここで、タッチパネル20の短辺とは、タッチパネル20において図2に示すX軸方向に平行な方向の辺を意味する。この柔軟性シール部材40は、例えば支柱30よりも硬度の低い、即ち柔らかいシリコンゴムまたは防水ゲルなどを用いるのが好適である。いずれの場合も、柔軟性シール部材40は、伸縮性に富み、圧縮した状態においては復元力が作用する材料を用いるようにする。また、柔軟性シール部材40は、例えば発泡性材料のように気泡を含む材料などとすることもできるが、少なくともダストや塵などを通過させることのない材料、つまり防塵に好適な材料を用いるようにする。
【0037】
図2に示す柔軟性シール部材40は、両側の支柱30の間に挟み込まれる前の状態を表している。このように、柔軟性シール部材40の長手方向の長さは、支柱30の間に挟み込まれる前の状態においては、支柱30同士の間の寸法よりも若干大きめにする。そして、柔軟性シール部材40を支柱30同士の間に挿入する際には、柔軟性シール部材40が横方向に若干圧縮された状態で、各支柱30に挟み込まれるようにする。さらに、柔軟性シール部材40の高さも、タッチパネル20を取り付ける前の状態においては、支柱30の高さよりも若干大きめにする。そして、タッチパネル20が各支柱30に取り付けられる際には、柔軟性シール部材40が縦方向に若干圧縮された状態で、タッチパネル20と下部筐体10bの凸部12bとの間に挟み込まれるようにする。このように、本実施の形態においては、タッチパネル20の裏面(背面)において、対向する2つの縁辺部分と下部筐体10bとの間に、それぞれ柔軟性シール部材40を圧入させる。
【0038】
なお、図2に示すように、下部筐体10bの内部には、支柱30および柔軟性シール部材40を配置するための凸部12bが形成されている。この凸部12bの高さは、支柱30および柔軟性シール部材40の寸法に応じて、タッチパネル20が適切な高さの位置に保たれるように設計する。さらに、例えば支柱30の下側(すなわち支柱30と下部筐体10bの凸部12bとの間)に所定の高さのスペーサを挿入すれば、さらにタッチパネル20の高さを微調整することができる。また、柔軟性シール部材40は、タッチパネル20の裏面または下部筐体10b(の凸部12b)のうち少なくとも一方と、例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが望ましい。
【0039】
図3は、図2に示したタッチパネル20および当該タッチパネル20の周辺要素をさらに説明する図である。上述したように、タッチパネル20の表面(前面)側において、細長の弾性部材70が、タッチパネル20の縁辺部分のうち対抗する2つ長辺に沿って配置される。なお、図3に示すように、本実施の形態において、タッチパネル20は矩形状のものとするのが好適である。
【0040】
図3に示すように、タッチパネル20の裏面には、その上下の縁辺(図の奥側および手前側の辺)付近に、振動部50が取り付けられる。振動部50は、タッチパネル20の裏面に例えば両面テープまたは接着剤などにより接着するのが好適である。この振動部50は、例えば圧電素子で構成し、タッチパネル20を湾曲させることにより振動させる。
【0041】
図3に示した実施の形態においては、振動部50をタッチパネル20の裏面から貼り付けるようにしたが、本発明において、振動部50はタッチパネル20に振動を伝達させるものである。したがって、振動部50は、圧電素子などをタッチパネル20または当該タッチパネル20を保持するパネルホルダ(図示せず)などの任意の位置に接着するなどして固定し、タッチパネル20を振動させるものとすることもできる。しかしながら、タッチパネル20を良好に振動させることができるように、振動部50は、タッチパネル20の裏面に貼り付けられた圧電素子などとするのが好適である。
【0042】
この振動部50は、所定の振動パターンによる振動を発生させることにより、タッチパネル20のタッチ面に接触している接触物に対して触感を呈示する。本実施の形態において、振動部50は、例えば図示しない制御部から供給される駆動信号に基づいて振動を発生する。
【0043】
次に、本発明の実施の形態に係る電子機器の内部構成の詳細について説明する。図4〜7は、上部筐体10aと下部筐体10bとを組み合わせた後の電子機器1を、各種の位置において切断した端面の様子を示す図である。以下、電子機器1の端面について説明することにより、電子機器1の内部構成の詳細について言及する。
【0044】
図4は、本実施の形態による電子機器1を、図1に示したA−A線に沿って切断した端面を示す図である。すなわち、図4は、図1において電子機器1の手前側の端部付近を横方向(図1のX軸方向)に切断した端面を示す図である。なお、電子機器1の奥側の端部付近を横方向(図1のX軸方向)に切断した端面を示す図も同様となる。以下の説明においても、タッチパネル20の長辺とは、タッチパネル20において図2に示すY軸方向に平行な方向の辺を意味し、タッチパネル20の短辺とは、タッチパネル20において図2に示すX軸方向に平行な方向の辺を意味する。
【0045】
図4に示すように、本実施の形態において、上部筐体10aとタッチパネル20との間には、弾性部材70を介在させてある。この弾性部材70は、防塵に適した材料であり、上部筐体10aおよびタッチパネル20と接着されている。したがって、この弾性部材70によって、タッチパネル20の長辺側において、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することは阻止される。
【0046】
また、図4に示すように、本実施の形態において、タッチパネル20と下部筐体10b(の凸部12b)との間には、支柱30および柔軟性シール部材40を介在させてある。この柔軟性シール部材40は、支柱30同士の間、およびタッチパネル20の裏面と下部筐体10b(の凸部12b)との間に圧縮された状態で圧入されている。したがって、タッチパネル20の表面側に弾性部材70が設けられていない縁辺側(短辺側)においては、この柔軟性シール部材40によって、下部筐体10bの内部すなわちタッチパネル20の背面側に、ダストや埃が侵入することは阻止される。
【0047】
一方、図4に示すように、タッチパネル20に直接接触しているのは、弾性部材70、弾性材料製の支柱30、および柔軟性シール部材40である。したがって、タッチパネル20が振動していない状態においては、弾性材料製の支柱30および圧縮された状態の柔軟性シール部材40によって、タッチパネル20は安定的に支持される。しかしながら、振動部50がタッチパネル20を振動させる際に、弾性部材70、弾性材料製の支柱30、および柔軟性シール部材40のいずれも、当該振動を大きく減衰させることはないため、振動の減衰を低減させることができる。
【0048】
特に、本実施の形態では、タッチパネル20において、その表面に弾性部材70が配置される箇所の裏面側には、柔軟性シール部材40を配置しないようにするのが好適である。また、同様に、タッチパネル20において、その裏面に柔軟性シール部材40が配置される箇所の表面側には、弾性部材70を配置しないようにするのが好適である。すなわち、弾性部材70および柔軟性シール部材40を配置するに際し、弾性部材70が配置される2つの縁辺部分の方向と、柔軟性シール部材40が配置される2つの縁辺部分の方向とが異なるようにするのが好適である。このようにすれば、タッチパネル20の表面および裏面の双方においてタッチパネル20の周縁部全体を弾性部材などで挟み込むのではなく、常に表面または裏面の一方においてのみタッチパネル20が弾性部材などで支持されるようになる。
【0049】
例えば、図4に示す端面の位置においては、タッチパネル20の長辺側は、弾性部材70によって上側からのみ支持され、後述するように下側からは支持されない。また、図4に示す端面の位置においては、タッチパネル20の短辺側は、柔軟性シール部材40によって下側からのみ支持され、上側からは支持されない様子が明らかである。したがって、この場合、タッチパネル20をより自由に振動させることができるため、振動の減衰が一層低減されることが期待できる。
【0050】
図5は、本実施の形態による電子機器1を、図1に示したB−B線に沿って切断した端面を示す図である。すなわち、図5は、図1において電子機器1の中央付近を横方向(図1のX軸方向)に切断した端面を示す図である。なお、図5においては、図1に示したB−B線に沿って切断した端面を示してあるため、当該端面よりも奥側に存在する支柱30、柔軟性シール部材40、および凸部12bなどは図示していない。
【0051】
図5に示すように、電子機器1を切断する位置によっては、タッチパネル20の裏面に振動部50が接着されている。なお、図5においては、下部筐体10bの内部に、LCD等の表示部80、および各種の基板90を示してある。これらの表示部80および基板90は種々の部材を例示したものであり、例えば表示部80を、当該表示部を支持する表示部ホルダにしたり、または基板90を他の支持部材にするなど、各種の部材とすることができる。本実施の形態においては、一般的なタッチパネルを備えた装置の場合と同様に、図5に示すように、タッチパネル20の背面側(すなわち振動部50が配置された面の側)に表示部80を配置するのが好適である。
【0052】
図5に示す端面の位置においても、図4の場合と同様に、タッチパネル20の表面において、対向する長辺に沿ってそれぞれ弾性部材70が配置されている。また、図5に示す端面の位置においては、タッチパネル20の長辺側は、弾性部材70によって上側からのみ支持され、下側からは支持されない様子が明らかである。このように、本実施の形態によれば、タッチパネル20を自由に振動させることができ、振動の減衰が低減される。
【0053】
図6は、本実施の形態による電子機器1を、図1に示したC−C線に沿って切断した端面を示す図である。すなわち、図6は、図1において電子機器1の左側の端部付近を縦方向(図1のY軸方向)に切断した端面を示す図である。なお、電子機器1の右側の端部付近を縦方向(図1のY軸方向)に切断した端面を示す図も同様となる。
【0054】
図6に示すように、タッチパネル20の裏面側において、タッチパネル20の周縁部のうち短辺側に配置された支柱30の近くに、振動部50が配置されている。図6においても、タッチパネル20の表面において、長辺に沿って弾性部材70が配置されているのがわかる。また、図6に示す端面の位置においても、タッチパネル20の長辺側は、弾性部材70によって上側からのみ支持され、下側からは支持されない様子がわかる。
【0055】
図7は、本実施の形態による電子機器1を、図1に示したD−D線に沿って切断した端面を示す図である。すなわち、図7は、図1において電子機器1の中央付近を縦方向(図1のY軸方向)に切断した端面を示す図である。なお、図7においては、図1に示したD−D線に沿って切断した端面を示してあるため、当該端面よりも奥側に存在する弾性部材70などは図示していない。
【0056】
図7に示す端面の位置においては、タッチパネル20の短辺側は、柔軟性シール部材40によって下側からのみ支持され、上側からは支持されない様子がわかる。
【0057】
上述した実施の形態において、上部筐体10aおよび下部筐体10bは、タッチパネル20が配置されるとともに、タッチパネル20の表面周縁部を覆う部材である。したがって、本実施の形態においては、上部筐体10aおよび下部筐体10bを含めて、支持部材を構成している。
【0058】
このように、本実施の形態によれば、タッチパネルを湾曲振動させる電子機器において、振動の減衰を低減させつつ防塵対策を施すことができる。また、本実施の形態によれば、柔軟性シール部材40および弾性部材70に用いる素材によっては、ある程度の防水効果も期待できる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、幾多の変形または変更が可能である。本発明は、タッチパネルを支持部材に配置する際に、振動を減衰させずに、タッチパネルの表面および裏面のそれぞれにおいて特徴的な防塵対策を施すことを主な特徴とするものである。したがって、本発明の構成要素および構成態様については、本明細書において説明した以外にも、種々の構成を採用することができる。
【0060】
例えば、上述した実施の形態においては、タッチパネル20の表面(上面)側に弾性部材70を配置し、またタッチパネル20の裏面(背面)側に柔軟性シール部材40を配置した。しかしながら、本発明は、このような配置に限定されるものではなく、例えば上下を逆にした構成、すなわち、タッチパネル20の表面(上面)側に柔軟性シール部材40を配置し、またタッチパネル20の裏面(背面)側に弾性部材70を配置してもよい。
【0061】
また、上述した上部筐体10aおよび下部筐体10b、柔軟性シール部材40および弾性部材70などの部材は、本発明による効果が得られる限りにおいて、種々の形状とすることができる。例えば、柔軟性シール部材40および弾性部材70は、適当な防塵が図られるのであれば、例えば中空構造にするなど各種の構成とすることができる。
【0062】
また、上述した実施の形態において、支柱30は必須の構成要素ではなく、柔軟性シール部材40がある程度の形状を保つことによりタッチパネル20の高さが保たれるのであれば、本発明において支柱30を用いない構成とすることもできる。
【0063】
さらに、上述した実施の形態においては、振動部50が固定された近傍であるタッチパネル20の短辺側に柔軟性シール部材40が配置され、タッチパネル20の長辺側に弾性部材70が配置されるようにした。しかしながら、本発明は、このような配置に限定されるものではなく、タッチパネル20の短辺側に弾性部材70が配置され、タッチパネル20の長辺側に柔軟性シール部材40が配置されるようにしてもよい。また、上述したように、タッチパネル20を振動させる振動部50の配置および構成も種々変更する(例えば、長辺側近傍に振動部50を固定する)ことができる。
【0064】
また、上部筐体10aおよび下部筐体10bは、電子機器の本体を構成する筐体を想定して説明した。しかしながら、本発明の筐体は上述した部材に限定されるものではなく、種々の部材とすることができる。
【0065】
上記実施の形態においては、上部筐体10aおよび下部筐体10bが支持部材を構成する態様について説明した。しかしながら、本発明による支持部材は、タッチパネル20が配置されるとともにタッチパネル20の表面周縁部を覆う部材であれば任意のものとすることができる。したがって、例えばLCDユニットや各種の基板またはベゼルなど、あるいは上部筐体10aまたは下部筐体10bに形成された他の支持部材など、各種の部材が支持部材を構成する態様も想定することができる。
【0066】
また、上述した実施の形態においては、タッチパネル20の裏側に配置した表示部80にオブジェクトを表示して、タッチパネル20が操作者の指などによる接触を検出する態様について説明した。しかしながら、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば表示部80を有さずに、タッチパネル20のタッチ面上にオブジェクトがインクなどにより直接印刷されているような態様を想定することもできる。このような変形例においては、上述したような構成の表示部80は必須の構成要素ではない。
【0067】
また、上記実施の形態では、タッチパネル20を用いて、当該タッチパネル20のタッチ面に対する接触を検出した。すなわち、上記実施の形態において、「タッチパネル20」は、いわゆるタッチセンサのような部材を想定して説明した。しかしながら、本発明による電子機器に用いるタッチパネルは、操作者の指やスタイラスペンなどの接触物により接触されるものであれば任意のものとすることができる。
【0068】
例えば、本発明による電子機器に用いるタッチパネルは、タッチ面に対する接触物の接触の位置を検出しない(つまりセンシング機能を有さない)、単なる「パネル」のような部材とすることもできる。このような構成の電子機器においては、例えば、タッチパネルに対する押圧を検出する押圧検出部をさらに設けることにより、押圧検出部が検出する押圧に基づいて、タッチパネルに対する接触がなされたものと判定することができる。
【0069】
また、上記実施の形態では、タッチパネル20を用いて、当該タッチパネル20のタッチ面に対する接触を検出した。しかしながら、押圧検出部がタッチパネルに対する押圧を検出して、当該押圧に基づいて、タッチパネルに対する接触がなされたものと判定することもできる。
【0070】
上述のような押圧検出部は、タッチパネルのタッチ面に対する押圧を検出するもので、例えば、押圧に応じて物理的または電気的な特性(歪み、抵抗、電圧等)が変化する歪みゲージセンサや圧電素子等を任意の個数用いて構成することができる。また、振動部を圧電素子とした場合には、当該圧電素子を押圧検出部としても用いることができる。このような構成を採用して、押圧によるタッチパネルの歪みを検出することにより、当該歪みからタッチパネルに対する押圧を算出するなどの構成を想定することができる。
【0071】
例えば、押圧検出部が圧電素子等を用いて構成された場合、押圧検出部の圧電素子は、タッチパネルのタッチ面に対する押圧に係る荷重(力)の大きさ(または、荷重(力)の大きさが変化する速さ(加速度))に応じて、電気的な特性である電圧の大きさ(電圧値)が変化する。この場合、押圧検出部は、この電圧の大きさ(電圧値(以下、単にデータと称する))を制御部に通知することができる。制御部は、押圧検出部がデータを制御部に通知することにより、または、制御部が押圧検出部の圧電素子に係るデータを検出することにより、当該データを取得する。つまり、制御部は、タッチパネルのタッチ面に対する押圧に基づくデータを取得する。すなわち、制御部は、押圧検出部から押圧に基づくデータを取得する。そして、制御部は、押圧に基づくデータが所定の基準を満たした場合に、接触がなされたものと判定し、所定の振動を発生することができる。ここで、上記所定の基準は、表現したい押しボタンスイッチの押圧時の荷重特性に応じて適宜設定することができる。
【0072】
さらに、このような押圧検出部は、タッチパネルにおける接触検出方式に応じて構成することができる。例えば、抵抗膜方式の場合には、接触面積の大きさに応じた抵抗の大きさを、タッチパネルのタッチ面に対する押圧の荷重(力)に対応付けることにより、歪みゲージセンサや圧電素子等を用いることなく構成することができる。あるいは、静電容量方式の場合には、静電容量の大きさを、タッチパネルのタッチ面に対する押圧の荷重(力)に対応付けることにより、歪みゲージセンサや圧電素子等を用いることなく構成することができる。
【0073】
また、振動部50は、任意の個数の圧電振動子を用いて構成したり、タッチパネル20の全面に透明圧電素子を設けて構成したり、偏心モータを駆動信号の1周期で1回転させるようにして構成したり、することもできる。さらに、押圧検出部および振動部50は、圧電素子を用いて構成する場合は、圧電素子を共用して押圧検出部兼振動部を構成することもできる。圧電素子は、圧力が加わると電圧を発生し、電圧が加えられると変形するためである。
【0074】
また、上述したように、振動部50は、押圧検出部も兼ねる圧電素子の電圧の大きさ(電圧値(データ))が所定の基準を満たした際に、当該圧電素子を駆動することにより振動を発生するようにもできる。ここで、圧電素子の電圧の大きさ(電圧値(データ))が所定の基準を満たした際とは、電圧値(データ)が所定の基準値に達した際であってもよいし、電圧値(データ)が所定の基準値を超えた際でもよいし、所定の基準値と等しい電圧値(データ)が検出された際でもよい。
【0075】
上述した実施の形態においては、タッチパネル20を表示部80の上面に重ねて配置した構成を想定して説明した。本発明による電子機器は、このような構成にすることは必須ではなく、タッチパネル20と表示部80とを離間した構成にすることもできる。しかしながら、タッチパネル20を表示部80の上面に重ねて配置した構成とする方が、表示される画像と、操作入力が検出される領域および発生する振動との対応関係を、操作者に容易に認識させることができる。
【0076】
また、本実施の形態の説明における表示部80およびタッチパネル20は、表示部と接触検出部との両機能を共通の基板に持たせる等により、一体化した装置によって構成されるようにしてもよい。このように表示部と接触検出部との両機能を一体化した装置の構成の一例としては、液晶パネルが有するマトリクス状配列の画素電極群に、フォトダイオード等の複数の光電変換素子を規則的に混在させたものを挙げることができる。この装置は、液晶パネル構造によって画像を表示する一方で、パネル表面の所望位置をタッチ入力するペンの先端で液晶表示用のバックライトの光を反射し、この反射光を周辺の光電変換素子が受光することによって、タッチ位置を検出することができる。
【0077】
なお、振動部50は、振動モータ(偏心モータ)などに基づいて電子機器を振動させることにより、タッチパネル20を間接的に振動させるように構成してもよいし、タッチパネル20に圧電素子を配設することにより、タッチパネル20を直接的に振動させるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 電子機器
10a 上部筐体
10b 下部筐体
20 タッチパネル
30 支柱
40 柔軟性シール部材
50 振動部
70 弾性部材
80 表示部
90 基板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状のタッチパネルと、
前記タッチパネルを振動させる振動部と、
前記タッチパネルが配置されるとともに当該タッチパネルの表面周縁部を覆う支持部材と、を備えた電子機器であって、
前記タッチパネルの表面における対向する2つの縁辺部分と前記支持部材との間に第1の弾性部材を介在させ、
前記タッチパネルの裏面における前記対向する2つの縁辺部分と直角となる対向する2つの縁辺部分と前記支持部材との間に第2の弾性部材を介在させたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記タッチパネルの裏面における四隅に支柱を形成し、前記第2の弾性部材は前記支柱以外の部分に介在させることを特徴とする、請求項1に記載の電子機器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−216206(P2012−216206A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−75070(P2012−75070)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】