説明

電子機器

【課題】筐体が取っ手を有する構成でありながら、機器の外形寸法に悪影響が生じることはなく、機器の設置に要するスペースを最小限に止めることができる電子機器を得ることにある。
【解決手段】電子機器は、設置面に据え付けられる筐体と、前記筐体に固定された複数の取っ手と、を備えている。取っ手は、前記筐体から前記設置面に向けて突出されるとともに、前記設置面に保持されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、運搬用の取っ手を有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
外形寸法や質量が大きな筐体を有する重量級の電子機器は、例えば運搬時および据え付け時の作業性を向上させるために、複数の取っ手を装備している。取っ手は、筐体に固定されているとともに、作業者が手で容易に握れるように筐体の外周面から張り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−94876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子機器によると、取っ手そのものが筐体の周囲に飛び出ている。そのため、取っ手の分だけ電子機器の外形寸法が大きくなり、電子機器の大型化を招く一つの要因となるのを否めない。
【0005】
加えて、電子機器の大型化に伴って、電子機器を設置するための広いスペースを確保しなくてはならない。よって、電子機器の設置場所が自ずと制限されたり、電子機器の設置に苦慮することがあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、電子機器は、設置面に据え付けられる筐体と、前記筐体に固定された複数の取っ手と、を備えている。取っ手は、前記筐体から前記設置面に向けて突出されているとともに、前記設置面に保持されるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】起立した設置面に電子機器を据え付けた状態を示す平面図。
【図2】起立した設置面に据え付けられた電子機器の断面図。
【図3】一対の取っ手を有する電子機器の斜視図。
【図4】起立した設置面に電子機器を据え付けた状態を示す側面図。
【図5】図4の矢印F5の方向から見た電子機器の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
【0009】
図1ないし図3は、例えば屋外で使用する通信機器1を示している。通信機器1は、電子機器の一例であって、本実施形態では、建物の外壁のような起立した設置面2に据え付けられている。
【0010】
通信機器1は、通信機器1の外郭となる筐体3を備えている。筐体3は、例えばアルミニウム合金のような熱伝導性に優れた金属材料で構成されている。筐体3は、第1のケース4と第2のケース5とを組み合わせることで、四角い箱形に形成されている。
【0011】
第1のケース4は、四角い前板6と、前板6の外周縁から立ち上がる四つの側板7とを備えている。前板6は、第1のケース4の外に露出された外面6aを有している。前板6の外面6aは、通信機器1を設置面2に据え付けた時に、設置面2と向かい合う。側板7の先端縁部は、互いに協働して四角い第1の開口8を規定している。第1の開口8は、前板6と向かい合っている。
【0012】
第1のフランジ部9が側板7の先端縁部に一体に形成されている。第1のフランジ部9は、側板7の先端縁部から第1のケース4の外側に直角に折り曲げられて、第1の開口8を周方向に連続して取り囲んでいる。
【0013】
第2のケース5は、四角い背板11と、背板11の外周縁から立ち上がる四つの側板12とを備えている。背板11は、第2のケース5の外に露出された外面11aを有している。外面11aは、通信機器1を設置面2に据え付けた時に、設置面2の反対側に位置される。側板12の先端縁部は、互いに協働して四角い第2の開口13を規定している。第2の開口13は、背板11と向かい合っている。
【0014】
第2のフランジ部14が側板12の先端縁部に一体に形成されている。第2のフランジ部14は、側板12の先端縁部から第2のケース5の外側に直角に折り曲げられて、第2の開口13を周方向に連続して取り囲んでいる。
【0015】
第1のケース4の第1のフランジ部9は、第2のケース5の第2のフランジ部14に突き合わされている。第1のフランジ部9および第2のフランジ部14は、複数のねじ15を介して互いに連結されている。ねじ15は、第2のフランジ部14を貫通して第1のフランジ部9にねじ込まれている。
【0016】
このねじ込みにより、第1の開口8および第2の開口13が合致するように第1のケース4と第2のケース5とが一体的に結合されている。第1のケース4および第2のケース5は、互いに協働して筐体3の内部に機器収容室16を構成している。
【0017】
図1ないし図3に示すように、第1のケース4の前板6の外面6aおよび第2のケース5の背板11の外面11aに夫々放熱フィン17が一体に形成されている。放熱フィン17は、外面6a,11aから起立されて、設置面2の高さ方向に一直線状に延びている。さらに、放熱フィン17は、互いに間隔を存して平行に配置されている。
【0018】
図2に示すように、電源ユニット20および通信用の回路モジュール21が筐体3の機器収容室16に収容されている。電源ユニット20は、第1のケース4の前板6の内面に固定されて、前板6に熱的に接続されている。
【0019】
回路モジュール21は、回路基板22およびCPUのような複数の回路部品23を備えている。回路基板22は、第2のケース5の背板11の内面から突出された複数のボス部24の先端にねじ止めされて、背板11と平行に配置されている。そのため、回路基板22は、背板11の内面と向かい合う第1の面22aと、第1の面22aの裏側に位置された第2の面22bとを有している。
【0020】
回路部品23は、回路基板22の第1の面22aに実装されている。回路部品23は、背板11の内面に熱的に接続されている。本実施形態によると、電源ユニット20および回路モジュール21は、共に動作中に発熱を伴うために、筐体3に熱的に接続された発熱体の一例となっている。
【0021】
したがって、電源ユニット20が発する熱は、第1のケース4に直に伝えられるとともに、主に第1のケース4の前板6の外面6aおよび放熱フィン17から筐体3の外に放出される。同様に、回路モジュール21が発する熱は、第2のケース5に直に伝えられるとともに、主に第2のケース5の背板11の外面11aおよび放熱フィン17から筐体3の外に放出される。
【0022】
さらに、本実施形態では、回路基板22の第2の面22bの上に、その他の回路素子を覆うシールドケース25が取り付けられている。
【0023】
図2および図3に最もよく示されるように、一対の取っ手28が第1のケース4の前板6に取り付けられている。取っ手28は、例えば通信機器1を運搬したり、設置面2に据え付ける際に手の指で把持する要素であって、例えば帯状の金属板を一体的に折り曲げることで構成されている。
【0024】
取っ手28は、前板6の放熱フィン17を間に挟むように筐体3の幅方向に互いに離れている。言い換えると、取っ手28は、前板6の外面6aの上で筐体3の幅方向に間隔を存して隣り合っている。
【0025】
取っ手28は、一対のアーム部29とグリップ部30とで構成されている。アーム部29は、夫々前板6の外面6aに沿う第1の部分31aと、第1の部分31aの一端から直角に折り曲げられた第2の部分31bとを備えている。
【0026】
第1の部分31aは、前板6の外面6aの端部にねじ32を介して固定されている。第2の部分31bは、前板6の外面6aに対し起立するように外面6aから突出されている。図1および図4に示すように、アーム部29の突出高さH1は、前板6の上の放熱フィン17の突出高さH2よりも大きく設定されている。
【0027】
グリップ部30は、アーム部29の第2の部分31bの突出端の間に跨っている。グリップ部30は、設置面2に沿うように第1のケース4の前板6から離れた位置で前板6と平行に一直線状に延びている。
【0028】
一対の通孔34a,34bがグリップ部30に形成されている。通孔34a,34bは、固定具の一例である複数の固定ボルト35を通すためのものであり、グリップ部30の長手方向に互いに離れている。
【0029】
このような構成の通信機器1は、起立した設置面2に沿うような縦置きの姿勢で設置面2の上に保持される。具体的には、筐体3から突出された一対の取っ手28のグリップ部30を設置面2の所定の位置に突き当てる。この状態で、グリップ部30の通孔34a,34bに固定ボルト35を挿入するとともに、固定ボルト35を設置面2に開けたねじ孔にねじ込む。
【0030】
このねじ込みにより、通信機器1の筐体3が設置面2に固定され、運搬用の取っ手28を設置面2に通信機器1を据え付けるためのブラケットとして活用できる。この際、取っ手28のアーム部29の突出高さH1は、放熱フィン17の突出高さH2よりも大きいので、図1、図2および図4に示すように、通信機器1が設置面2に保持された状態では、第1のケース4から突出された放熱フィン17の先端が設置面2から離れている。そのため、第1のケース4の放熱フィン17と設置面2との間に、放熱に必要な空間36が確保されている。
【0031】
それとともに、取っ手28のグリップ部30と、この取っ手28と隣り合う放熱フィン17との間に手の指を差し入れるスペースを十分に確保できる。したがって、取っ手28のグリップ部30を手で握る時に放熱フィン17が邪魔とならずに済む。
【0032】
本実施形態によると、通信機器1の取っ手28は、筐体3の第1のケース4の前板6から通信機器1を据え付けるべき設置面2に向けて突出されている。このため、取っ手28を利用して通信機器1を設置面2に据え付けた状態では、取っ手28が筐体3の前板6と設置面2との間に収まっている。
【0033】
したがって、取っ手28が第1および第2のケース4,5の側板7,12の周囲に張り出したり、第2のケース5の背板11から突出することはない。この結果、取っ手28が通信機器1の外形寸法に悪影響を及ぼすことはなく、通信機器1の大型化を防止できる。
【0034】
加えて、通信機器1の設置に必要なスペースを最小限に止めることができる。よって、通信機器1を設置面2に据え付ける上での自由度が増大するとともに、通信機器1の据え付け作業を容易に行うことができる。
【0035】
本実施形態では、取っ手28のグリップ部30に固定ボルト35を通す通孔34a,34bが形成されている。このため、取っ手28そのものに通信機器1の筐体3を設置面2に据え付けるためのブラケットとしての機能を付加することができる。よって、通信機器1を設置面2に据え付けるための専用の取付金具を省略することができ、部品点数の削減が可能となる。
【0036】
さらに、通信機器1を設置面2に据え付けた状態では、設置面2と放熱フィン17の先端との間に空間36が確保されている。これにより、空間36を流れる空気により放熱フィン17を効率よく冷却することができ、通信機器1の放熱性を高めることができる。
【0037】
本実施形態において、取っ手の数は一対に限らず、例えば第1のケースの前板の外周部の四箇所に取っ手を設けてもよい。
【0038】
通信機器のような電子機器は、起立した設置面に縦置きの姿勢で据え付けることに限定されるものではなく、例えば水平な床面上に横置きの姿勢で据え付けるようにしてもよい。
【0039】
さらに、本実施形態では、取っ手のグリップ部に固定ねじを通す通孔を設けたが、例えばグリップ部を専用の取付金具を用いて設置面に保持するようにしてもよい。
【0040】
加えて、電子機器は、通信機器に特定されるものではなく、例えば情報機器のようなその他の機器であっても同様に実施可能である。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
2…設置面、3…筐体、17…放熱フィン、20,21…発熱体(電源ユニット、回路モジュール)、28…取っ手。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に据え付けられる筐体と、
前記筐体に固定され、前記筐体から前記設置面に向けて突出されるとともに、前記設置面に保持されるように構成された複数の取っ手と、
を具備した電子機器。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記筐体は、前記設置面と向かい合う外面を有し、前記取っ手は、前記外面から突出するように前記外面に固定された電子機器。
【請求項3】
前記複数の取っ手は、前記外面の上で互いに離れている電子機器。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記取っ手は、夫々前記設置面に沿って延びるグリップ部を有するとともに、前記グリップ部が固定具を介して前記設置面に固定された電子機器。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記グリップ部は、前記固定具が通る通孔を有する電子機器。
【請求項6】
請求項1の記載において、前記筐体は、第1のケースと、前記第1のケースと組み合わされた第2のケースとを備え、前記取っ手は、前記第1のケースおよび前記第2のケースのいずれか一方に固定された電子機器。
【請求項7】
設置面に据え付けられる筐体と、
前記筐体内に収容され、前記筐体に熱的に接続された発熱体と、
前記筐体から突出された複数の放熱フィンと、
前記筐体に固定され、前記筐体から前記設置面に向けて突出されるとともに、前記設置面に保持されるように構成された複数の取っ手と、
を具備した電子機器。
【請求項8】
請求項7の記載において、前記取っ手を介して前記筐体を前記設置面に据え付けた状態では、前記放熱フィンと前記設置面との間に空間が形成された電子機器。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記筐体は、前記設置面と向かい合う外面を有し、前記取っ手は、前記外面から突出されて前記外面の上で互いに離れているとともに、前記取っ手のうち前記外面の上で隣り合う二つの取っ手の間に前記放熱フィンが位置された電子機器。
【請求項10】
請求項9の記載において、前記取っ手の突出高さが前記放熱フィンの突出高さよりも大きく設定された電子機器。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれか一項の記載において、前記取っ手は、夫々前記設置面に沿って延びるグリップ部を有するとともに、前記グリップ部が固定具を介して前記設置面に固定された電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−253096(P2012−253096A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122779(P2011−122779)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】