説明

電子機器

【課題】筺体に配線を設ける部分を脱着可能とし、保守性を向上させた電子機器を得ることができる。
【解決手段】ポータブルコンピュータ1は、電気絶縁性を有する筺体4と、筺体4に収容された回路基板26と、周辺機器と接続するためのコネクタ10とを備える。筺体4は、2つの部分から構成されており、脱着可能なユニット構造4dを有する。ユニット構造4dの内面には、コネクタ1と、回路基板26とを電気的に接続する信号配線20が設けられている。信号配線20は、導電性接着剤23をユニット構造4dの底壁4aに塗布することで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、筺体に配線を設けた部分が脱着可能な電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばポータブルコンピュータのような携帯性を重視する電子機器では、その外郭となる筐体を薄くコンパクトに形成したいという要求がある。
この筐体の薄型化を実現するため、例えば特許文献1に開示された電子機器では、筐体の内面に導電性接着剤を印刷することで配線パターンを一体に形成し、この配線パターンのランド部にコネクタのような回路部品を接着することが行われている。
【0003】
この構成によれば、配線パターンを形成する導電性接着剤を利用して、配線パターンと回路部品との間を電気的に接続することができる。よって、接続用の配線ケーブル等が削減でき、筐体の小型化および省スペース化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−268521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、回路部品が筐体の内面に直に接着されている。この構成によると、例えば筐体に何らかの外力が作用して筐体が撓んだ時に、回路部品と配線パターンとの接着部分に応力が生じ、接着部分が破壊されたり損傷することがあり得る。
【0006】
しかしながら、回路部品を筺体内面に直接接着している構造では、接着部分に不具合が生じた場合には筺体全体を交換する必要があり、修理に手間がかかっていた。即ち、破損や破壊が生じうる部分のみを交換可能にすれば、当該部分のみの交換で不具合を解消することが実現する。
【0007】
本発明の目的は、配線を設ける筺体部分を脱着可能とし、保守性を向上させた電子機器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、電子機器は、電気絶縁性であって、第1の部分と前記第1の部分から脱着可能な第2の部分とから構成される筐体と、前記筐体に収容された回路基板と、
【0009】
前記第2の部分の内面に設けられた信号配線と、前記信号配線と前記回路基板の端子部との間を電気的に接続するコネクタと、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係るポータブルコンピュータの斜視図。
【図2】実施形態において、複数の信号配線および複数の接着剤充填部が設けられた筐体のユニット構造と、接続端子を有するコネクタとの位置関係を分解して示す斜視図。
【図3】実施形態において、筐体のコネクタ実装領域に導電性接着剤を介してコネクタを接着した状態を示す断面図。
【図4】実施形態において、信号配線および接着剤充填部が設けられた筐体とコネクタとの位置関係を示す断面図。
【図5】実施形態において、筐体に設けられた信号配線とプリント回路板との間をゴムコネクタで電気的に接続した状態を示す断面図。
【図6】図5のF6-F6線に沿う断面図。
【図7】実施形態において、ゴムコネクタをプリント回路板と筐体の底壁との間で加圧する以前の状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を図1ないし図7に基づいて説明する。
図1は、電子機器の一例であるポータブルコンピュータ1を開示している。ポータブルコンピュータ1は、コンピュータ本体2とディスプレイモジュール3とで構成されている。
【0012】
コンピュータ本体2は、筐体4を備えている。筐体4は、例えば合成樹脂材料により成形されて、電気絶縁性を有している。筐体4は、底壁4A、上壁4Bおよび側壁4Cを有する偏平な箱状をなしている。筐体4の上壁4Bは、キーボード5を支持している。側壁4Cは、底壁4Aの側縁から起立している。四角い開口部6が筐体4の側壁4Cに設けられている。
【0013】
底壁4Aは、2つの部分から成り、分離可能に構成されている。即ち、底壁4Aの一部分(底壁4a)は、底壁4Aから脱着可能な別体として形成されている。また、側壁4Cも2つの部分から成り、分離可能に構成されている。即ち、側壁4Cの一部分(側壁4c)は、側壁4Cから脱着可能な別体として形成されている。
【0014】
開口部6は、側壁4Cから脱着可能な側壁4cに設けられる。この開口部6を有する側壁4cと、底壁4Aから脱着可能な側壁4aとは一体化している。以降、この側壁4cと側壁4aとが一体化した構造をユニット構造4dと呼ぶ。
【0015】
図1に示すように、ディスプレイモジュール3は、ディスプレイ筐体7と、このディスプレイ筐体7に収容された液晶ディスプレイパネル8とを備えている。ディスプレイ筐体7は、コンピュータ本体2と略同じ大きさを有する偏平な箱状をなしている。液晶ディスプレイパネル8は、画像情報や文字情報を表示するスクリーン8aを有している。スクリーン8aは、ディスプレイ筐体7の前面からディスプレイ筐体7の外に露出されている。
【0016】
ディスプレイモジュール3は、コンピュータ本体2の後端部に図示しないヒンジを介して支持されている。そのため、ディスプレイモジュール3は、キーボード5を覆うようにコンピュータ本体2の上に横たわると閉じ位置と、キーボード5およびスクリーン8aを露出させるようにコンピュータ本体2の後端部から起立する開き位置との間で回動可能となっている。
【0017】
図1および図2に示すように、側壁4cの開口部6にコネクタ10が配置されている。コネクタ10は、例えば外部モニタのような周辺機器(図示せず)を接続するためのものである。コネクタ10は、複数の接続端子12を有している。接続端子12は、コネクタ10のフラットな下面13にマトリクス状に配列されている。
【0018】
コネクタ10は、ユニット構造4dの底壁4aの内面14の上に支持されている。ユニット構造4dの内面14は、コネクタ実装領域15を有している。コネクタ実装領域15は、前記コネクタ10をユニット構造4dの底壁4aに固定するための領域であって、前記開口部6に隣接されている。
【0019】
図2に示すように、側壁4Cの一部分である側壁4c及び底壁4Aの一部分である底壁4aは、側壁4C及び底壁4Aから脱着可能なユニット構造4dを形成している。例えば、とユニット構造4dは、側壁4C及び底壁4Aとラッチ構造(図示しない)等で脱着することができる。
【0020】
図2ないし図4に示すように、複数の接着剤充填部16がコネクタ実装領域15に設けられている。接着剤充填部16は、コネクタ10の接続端子12に対応するように隔壁17によって格子状に区画されている。隔壁17は、底壁4aの内面14から筐体4の内側に向かって突出するリブ状をなしており、各接着剤充填部16を取り囲んでいる。各接着剤充填部16は、底壁4aの上方に向けて開放されているとともに、コネクタ10の各接続端子12よりも大きな形状を有している。
【0021】
隔壁17は、複数の配線導入部19を備えている。配線導入部19は、夫々接着剤充填部16に開口するスリット状をなしている。配線導入部19に対応する位置では、底壁4aの内面14が露出されている。
【0022】
図2に示すように、底壁4aの内面14に複数の信号配線20が一体的に設けられている。信号配線20は、底壁4aの内面14に導電性接着剤をライン状に塗布することにより構成されている。信号配線20は、筐体4の幅方向に延びているとともに、互いに間隔を存して平行に配置されている。底壁4aの内面14に導電性接着剤を塗布する方法としては、例えばスクリーン印刷法又はディスペンス法を用いることができる。
【0023】
信号配線20の一端は、個々に隔壁17の配線導入部19から接着剤充填部16に入り込んでいる。信号配線20の一端に図3に示すようなランド21が設けられている。ランド21は、接着剤充填部16の底に位置されている。
【0024】
図3および図4に示すように、コネクタ10は、隔壁17の上に重ね合わされている。コネクタ10の下面13は、接着剤充填部16の開放端を上方から塞いでいる。これにより、コネクタ10の接続端子12が接着剤充填部16に入り込んで、ランド21の上に積層されている。
【0025】
導電性接着剤23が接着剤充填部16に充填されている。導電性接着剤23は、接続端子12およびランド21を一体的に覆った状態で硬化されている。隣り合う接着剤充填部16に充填された導電性接着剤23は、隔壁17によって電気的に絶縁された状態に保たれている。
【0026】
そのため、コネクタ10は、導電性接着剤23を介してユニット構造4dのコネクタ実装領域15に固定されて、コネクタ10の接続端子12が信号配線20のランド21に電気的に接続された状態に保たれている。
【0027】
図2に示すように、信号配線20のランド21とは反対側の他端は、コネクタ実装領域15から遠ざかる方向に導かれるとともに、底壁4aの内面14の上で互いに間隔を存して一列に並んでいる。
【0028】
以上のように構成されるユニット構造4dを、底壁4A及び側壁4Cに装着して筺体4を形成する。この筐体4の内部にプリント回路板25が収容される。図5に示すように、プリント回路板25は、回路基板26と、この回路基板26の下面の一端に形成された複数のパッド27とを有している。パッド27は、プリント回路板25の導体パターンに電気的に導通された端子部の一例であり、信号配線20の他端に対応するように間隔を存して一列に並んでいる。
【0029】
回路基板26の一端は、底壁4aの内面14から突出する一対のボス部28a,28bの上に固定具としてのねじ29を介して固定されている。そのため、回路基板26は、底壁4aの内面14と平行に配置されており、これら回路基板26と底壁4aの内面14との間にボス部28a,28bの高さに相当する隙間30が形成されている。
【0030】
回路基板26のパッド27は、信号配線20の他端と向かい合っている。パッド27と信号配線20の他端との間は、ゴムコネクタ31を介して電気的に接続されている。ゴムコネクタ31は、別名「エラスティックコネクタ」とも呼ばれており、ユニット構造4dの底壁4aと回路基板26の一端との間に介在されている。
【0031】
図5ないし図7に示すように、ゴムコネクタ31は、コネクタボディ32と複数の金属線33とを備えている。コネクタボディ32は、例えばシリコーンゴムのようなゴム状弾性体で構成されて、信号配線20の他端を横断する方向に延びる細長い形状を有している。そのため、コネクタボディ32は、第1の端部32aと、第1の端部32aの反対側32aに位置された第2の端部32bとを有している。第1の端部32aおよび第2の端部32bは、コネクタボディ32の長手方向に互いに離れている。
【0032】
金属線33は、導体の一例であって、コネクタボディ32を厚み方向に貫通するようにコネクタボディ32に一体的に埋設されている。さらに、金属線33は、コネクタボディ32の長手方向に間隔を存して一列に並んでいる。
【0033】
コネクタボディ32は、ユニット構造4dの底壁4aと回路基板26との間で厚み方向に圧縮されている。この圧縮により、金属線33の一端が信号配線20に接触するとともに、金属線33の他端がパッド27に接触する。よって、信号配線20の他端とパッド27との間は、金属線33を介して電気的に接続されている。
【0034】
図2および図5に示すように、ユニット構造4dの底壁4aの内面14に、ユニット構造4dに対するゴムコネクタ31の取り付け位置を定めるホルダ部35が一体に設けられている。本実施の形態のホルダ部35は、第1の係合部36および第2の係合部37を有している。
【0035】
第1の係合部36は、底壁4aの内面14から上向きに突出するリブ状をなしており、
コネクタボディ32の第1の端部32aを三方向から取り囲むことで、第1の端部32aを拘束している。同様に、第2の係合部37は、底壁4aの内面14から上向きに突出するリブ状をなしており、コネクタボディ32の第2の端部32bを三方向から取り囲むことで、第2の端部32bを拘束している。このため、第1および第2の係合部36,37は、コネクタボディ32の長手方向に互いに離れている。
【0036】
コネクタボディ32は、第1の係合部36と第2の係合部37との間に跨るようにホルダ部35に保持されている。これにより、筐体4の幅方向および奥行き方向に沿うコネクタボディ32の位置決めがなされている。
【0037】
さらに、第1および第2の係合部36,37は、回路基板26が固定されたボス部28a,28bの間に位置されている。第1および第2の係合部36,37の高さ寸法H1は、ボス部28a,28bの高さ寸法H2と同等となっている。これにより、回路基板26をボス部28a,28bに固定した状態では、第1および第2の係合部36,37の上端が回路基板26の下面に突き当たって、回路基板26を底壁4aの方向から受け止めている。
【0038】
図7に示すように、第1および第2の係合部36,37の高さ寸法H1は、コネクタボディ32が圧縮前の自由状態にある時の前記コネクタボディ32の厚み寸法H3よりも小さく設定されている。このため、図2に示すように、回路基板26をボス28a,28bに固定する以前の状態では、コネクタボディ32の上端部が第1および第2の係合部36,37の上端から上方に張り出している。
【0039】
次に、ユニット構造4dの底壁4aに印刷された信号配線20とプリント回路板25のパッド27との間を、ゴムコネクタ31を用いて接続する手順について説明する。
【0040】
まず、コネクタボディ32の第1の端部32aをホルダ部35の第1の係合部36に嵌め込むとともに、コネクタボディ32の第2の端部32bをホルダ部35の第2の係合部37に嵌め込む。これにより、ユニット構造4dの底壁4aに対するゴムコネクタ31の位置が定まる。ゴムコネクタ31の位置決めがなされた状態では、図2および図7に示すように、コネクタボディ32の上端部が第1および第2の係合部36,37から上方に張り出している。
【0041】
次に、プリント回路板25を底壁4aから突出するボス部28a,28bの上端にねじ29を介して固定する。この固定により、プリント回路板25の回路基板26がコネクタボディ32の上端部に接触して、コネクタボディ32をユニット構造4dの底壁4aに向けて押圧する。
【0042】
この結果、コネクタボディ32が底壁4aと回路基板26との間で厚み方向に圧縮される。さらに、回路基板26の下面がホルダ部35の第1および第2の係合部36,37の上端に突き当たり、これら第1および第2の係合部36,37によって回路基板26が下方から受け止められる。
【0043】
これにより、回路基板26と底壁4aとの間の距離が定まり、コネクタボディ32の圧縮量が制御される。言い換えると、ホルダ部35の第1および第2の係合部36,37は、筐体4の底壁4aに対するコネクタボディ32の位置を決めると同時に、コネクタボディ32の過度の圧縮を制限する。
【0044】
コネクタボディ32が回路基板26と底壁4aとの間で圧縮されると、金属線33の一端が適切な圧力で信号配線20に接触する。同様に、金属線33の他端が適切な圧力でプリント回路板25のパッド27に接触する。よって、筐体4の信号配線20とプリント回路板25との間がゴムコネクタ31を介して電気的に接続された状態に維持される。
【0045】
このような第1の実施の形態によると、筺体4の一部分をユニット構造4dとして脱着可能に構成することにより、配線構造が設けられる部分のみを交換することができる。即ち、コネクタ10が実装される部分の配線に接続不良が生じた場合、ユニット構造4dを筺体4か取り外し交換することで修理が可能となり、電子機器の保守性が向上する。
【0046】
また、筺体4の一部分をユニット構造4dとして脱着可能にすることにより、筺体4に負荷される変形の伝播が低減される。更に、導電性接着剤23を塗布する部分をユニット構造4dとして小型化することにより、導電性接着剤23の熱硬化等のバッチ処理における生産性が向上する。即ち、導電性接着剤23を炉など加熱硬化する際に、ユニット化により小型化することで生産効率をアップすることができる。
【0047】
尚、上記実施の形態ではユニット構造4dを、底壁4aと側壁4cとから構成するとして説明したがこれに限定されることはない。例えば、ユニット構造4dを側壁4aから構成するとしてしても良い。つまり、側壁4Cは一体型で形成され、脱着可能な一部分を設けないとしても良い。
【0048】
尚、実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0049】
4…筐体、4d…ユニット構造、20…信号配線、26…回路基板、31…コネクタ(ゴムコネクタ)、32…コネクタボディ、33…導体(金属線)、35…ホルダ部、41a,41b…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性であって、第1の部分と前記第1の部分から脱着可能な第2の部分とから構成される筐体と、
前記筐体に収容された回路基板と、
前記第2の部分の内面に設けられた信号配線と、
前記信号配線と前記回路基板の端子部との間を電気的に接続するコネクタと、を具備する電子機器。
【請求項2】
前記第2の部分は、前記コネクタを設置するための開口部を有する請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第2の部分は、前記コネクタを設置するための開口部を有する側壁部と、前記信号配線が設けられる底壁部とから構成される請求項1に記載の電子機器。
【請求項4】
前記信号配線は、導電性接着剤を前記第2の部分の内面に印刷することで前記第2の部分に一体に形成されている請求項1に記載の電子機器。
【請求項5】
電気絶縁性を有する筐体と、
前記筐体に収容された回路基板と、
他の機器と接続するためのコネクタと、
前記コネクタの接続端子と前記回路基板の端子部とを電気的に接続する信号配線と、
を具備し、
前記筺体は、第1の部分と、前記第1の部分よりも小さい第2の部分とに分離可能であり、
前記第2の部分は、内面に前記信号配線が設けられている電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−33566(P2012−33566A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169633(P2010−169633)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】