説明

電子機器

【課題】 機器を大型化することなく冷却効果の高い電子機器を提供する。
【解決手段】 第1の面に第1の発熱性素子(30a)が実装され、前記第1の面の裏面となる第2の面に第2の発熱性素子(30a)が実装される回路基板(30)と、前記第1の発熱性素子と熱結合され、ダクト(28)の一部となる第1の放熱部(23a、25a)が形成される第1の放熱板(23、25)と、前記第2の発熱性素子(30a)と熱結合され、前記ダクト(28)の一部となる第2の放熱部(24a、26a)が形成される第2の放熱板(24、26)と、前記第1の放熱板(23、25)と前記第2の放熱板(24、26)と前記回路基板(30)を収容し、前記ダクトの吸気口および排気口を形成する基板ケースと前記ダクト内の空気を排出するファン(29)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子機器に関し、特に電子機器の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、デジタルビデオカメラなどの電子機器は、内部の回路基板に多数の回路素子が実装されている。回路素子は画像処理等の高負荷動作時に発熱し、素子自身や他の回路の温度を上昇させる。特に近年では、撮像素子の高画素化、高フレームレート化、撮影補助機能の拡充が進んでおり、回路素子の発熱量は増大する傾向にある。電子機器内部の温度上昇は、誤動作や故障の原因となり得るため、回路素子および回路基板を冷却することが必要となる。
【0003】
電子機器内部を効果的に冷却する方法として、カメラ内部に空気流路を形成し、強制空冷によって冷却することが提案されている。具体的には、カメラ筐体に吸気口および排気口を設置し、排気口側のファンで換気することで回路基板および回路素子上に空気流を発生させて強制空冷を行うものがある。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−33718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される構成は、回路基板を直接空冷するため、回路基板の形状や周辺構成によって冷却効果が大きな差がでる。空冷効果を得るために充分な空気流路を確保しようとすると、基板周囲に相当容積分の空間が必要となり、機器全体が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、機器を大型化することなく冷却効果の高い電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の電子機器は、第1の面に第1の発熱性素子が実装され、前記第1の面の裏面となる第2の面に第2の発熱性素子が実装される回路基板と、前記第1の発熱性素子と熱結合され、ダクトの一部となる第1の放熱部が形成される第1の放熱板と、前記第2の発熱性素子と熱結合され、前記ダクトの一部となる第2の放熱部が形成される第2の放熱板と、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板と前記回路基板を収容し、前記ダクトの吸気口および排気口を形成する基板ケースと前記ダクト内の空気を排出するファンとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
機器を大型化することなく冷却効果の高い電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態のデジタルカメラの外観を説明する斜視図。
【図2】本実施形態のデジタルカメラを光軸を含む水平面で切断して上面側から見た断面図。
【図3】本実施形態のデジタルカメラを光軸に直交する垂直面で切断して背面側から見た断面図。
【図4】図2に図示するA部を拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施した電子機器としてのデジタルカメラについて、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は、本実施形態のデジタルカメラの外観を説明する斜視図である。図1(a)は本実施形態のデジタルカメラを前面から見た斜視図であり、図1(b)は本実施形態のデジタルカメラを背面から見た斜視図である。
図1(a)および(b)に図示するように、本実施形態のデジタルカメラは、カメラ本体10、レンズ鏡筒部11、グリップ部12から構成される。カメラ本体10は、上面に開閉可能な液晶モニタ10a、背面にビューファインダー10b、操作スイッチ10c、10d、背面側から見て左側面に、後述する送風ダクトの吸気口20、排気口21を有する。レンズ鏡筒部11は、カメラ本体10の前面側に配置され、フォーカスリング11a、ズームリング11bを有する。グリップ部12は、カメラ本体10の背面側から見て右側に配置され、撮影者が右手で把持するのに好適な突出形状を有する。グリップ部12の天面部には、撮影者が右手人指し指で操作可能な位置に、レリーズボタン12aおよびズームレバー12bが設けられる。本実施形態のデジタルカメラは、右手でグリップ部12を把持し、左手をレンズ鏡筒部11に添えて、フォーカスリング11a、ズームリング11bを操作する。
【0012】
図2は、本実施形態のデジタルカメラを光軸を含む水平面で切断して上面側から見た断面図である。図3は、本実施形態のデジタルカメラを光軸に直交する垂直面で切断して背面側から見た断面図である。
【0013】
基板ケース22は、カメラ本体10の内部に配置される回路基板30および31、放熱板23および24を収容する。基板ケース22は、デジタルカメラの背面方向に開口した略直方体形状を成し、カメラ本体10およびグリップ部12を連通した空間に配置される。回路基板30および31、放熱板23および24は、基板ケース22の内側に積層して固定される。基板ケース22は、導電性を有する素材で形成されており、外部から回路基板30および31へ侵入するノイズの遮断、あるいは回路基板30および31の動作に伴って周囲に発せられる不要輻射を抑制する効果を有する。
【0014】
回路基板30および31は、横長の略長方形形状を成し、基板ケース22によって形成された空間に、レンズ鏡筒部11の光軸と直交する向きで配置されている。図2に図示するように、回路基板30および31には、それぞれ、デジタルカメラを駆動、制御するための回路素子30aおよび31aが実装される。回路基板30および31は、デジタルカメラの動作に伴って多数の処理を実行する。回路素子30aおよび31aは、高負荷処理の実行によって発熱し、カメラ本体10の内部で発熱体として作用する。回路素子30aは回路基板30の第1の面および第2の面にそれぞれ実装され、回路素子31aは回路基板31の第1の面および第1の面の裏面となる第2の面にそれぞれ実装されている。したがって、回路素子30aは第1の発熱性素子または第2の発熱性素子に相当し、回路素子31aは第1の発熱性素子または第2の発熱性素子に相当する。
【0015】
図2に図示するように、回路基板30の第1の面に向かい合うように放熱板23が配置され、回路基板30の第2の面に向かい合うように放熱板24が配置される。
【0016】
放熱板23および24は、アルミや銅などの高い熱伝導性を有する素材で形成されている。放熱板23および24は、回路基板30に対して略平行に配置され、後述する伝熱構造によって回路素子30aの放熱を行うとともに、回路基板30を位置決めした上で固定する機能を備えている。同様に、回路基板31の第1の面に向かい合うように放熱板25が配置され、回路基板31の第2の面に向かい合うように放熱板26が配置される。放熱板25および26は高い熱伝導性を有する素材で形成され、回路基板31に対して略平行に配置される。放熱板25および26は、後述する伝熱構造によって回路素子31aの放熱を行うとともに、回路基板31を位置決めした上で固定する機能を備えている。すなわち、放熱板23および25が第1の放熱板に相当し、放熱板24および26が第2の放熱板に相当する。
【0017】
放熱板23ないし26には、グリップ部12の反対側となる部分に、それぞれ、フィン形状の放熱部23a、24a、25a、26aが形成されている。すなわち、放熱部23aおよび25aが第1の放熱部に相当し、放熱部24aおよび26aが第2の放熱部に相当する。
【0018】
放熱部23aないし26aは、基板ケース22内において、回路基板30および31が配置される空間の外側に位置し、基板ケース22の一部とともにダクト28となる空間を形成する。放熱部23aないし26aがそれぞれ当接することで、ダクト28となる空間は回路基板30および31が配置される空間とは分離された空間となる。図3に図示するように、ダクト28は、カメラ本体10に設けられた吸気口20と排気口21を鉛直方向に直結する形状となり、ダクト28の上端部には送風ファン29が配置される。送風ファン29は、空気の吐出方向を排気口21に向けた姿勢で基板ケース22に固定されており、送風ファン29による空気流は図3に図示するように、ダクト28内の空気流路Fを流れる。すなわち、吸気口20より吸入され、ダクト28内を上方に流動し、排気口21より排出される。各放熱フィンは、空気流路Fを流れる空気流による強制空冷効果を妨げないように、ダクト28の内壁から空気流路Fを流れる空気流の方向と直交する方向に延出して形成されている。
【0019】
本実施形態では、送風ファン29を大風量特性を有する軸流ファンとすることで、送風ダクト28の換気能力を高めている。また、送風ファン29を送風ダクト28の排気側に配置することで、ダクト28内を一様に吸引し、吹き溜まりや淀みのない均一化した風速分布を形成している。
【0020】
図4は、図2に図示するA部を拡大した図である。放熱板23には、回路基板30の実装面に向けて突出形成される突起23bが形成される。突起23bは、回路基板30に実装された回路素子30aの直上に位置しており、回路素子30aの天面を略投影した形状を成している。突起23bと回路素子30aの間に設けられた僅かな空隙には、放熱ゴム27が挟み込まれており、突起23bと回路素子30aによって放熱ゴム27が圧縮されることで、放熱板23と回路素子30aとは熱結合される。放熱板24と回路素子30aとの間、放熱板25と回路素子31aとの間、放熱板26と回路素子31aとの間も同様の構成でそれぞれ熱結合される。
【0021】
本実施形態のデジタルカメラにおける冷却作用について説明する。回路基板30および31に実装された回路素子30aおよび31aは、高負荷処理を実行することで発熱する。回路素子30aおよび31aにて発生した熱は、熱伝導によって、放熱板23ないし26に伝えられ、放熱板23ないし26にそれぞれ形成された放熱フィン23aないし26aまで伝達される。放熱フィン23aないし26aまで伝達された熱は、ダクト28内の空気を温める。送風ファン29による空気流が空気流路Fを流れることで、温められた空気は排気口21よりカメラ外部に排出され、吸気口20から冷たい空気がダクト28内に流入する。この繰り返しによって、回路素子30aおよび31aの熱はカメラ外部に効率よく排出される。
【0022】
本実施形態のデジタルカメラでは、放熱板23ないし26によって、回路基板30および31が配置される空間と、ダクト28となる空間とをそれぞれ分離して形成している。これによって、回路基板の形状や周辺空間の有無に拘らず、冷却効果の高い空冷を行うことができると同時に、配置の自由度が高いので、小型でありながら高い冷却性能を実現できる。また、空気流路Fが形成されるダクト28の空間を他の空間と分離することができるので、吸気口20から粉塵を吸い込んだとしても、ダクト28以外の空間に入り込むことがなく、デジタルカメラは高い防塵性を持つことができる。
【0023】
本実施形態のデジタルカメラを撮影者が使用する際は、右手でグリップ部12を把持し、左手をレンズ鏡筒部11に添えて、フォーカスリング11a、ズームリング11bを操作する。デジタルカメラが動作状態となるときには、上述の空冷動作を行っているので、吸気口20および排気口21より吸排気が行われる。吸気口20および排気口21は、グリップ部12とは反対側となる部分に配置されているので、吸排気が撮影者の手や腕などで阻害されることがない。また、液晶モニタ10a、ビューファインダー10bに画像が表示される方向と異なる向きに排気が行われるので、撮影者の顔を液晶モニタ10a、ビューファインダー10bに近づけたとしても、撮影者の顔に排気が当ることがない。
【0024】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。例えば、本実施形態はデジタルカメラへの適用例として説明したが、これに限らず、例えばデジタルビデオカメラの場合であっても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 カメラ本体
12 グリップ部
20 吸気口
21 排気口
22 基板ケース
23 放熱板
23a 放熱フィン
24 放熱板
24a 放熱フィン
25 放熱板
25a 放熱フィン
26 放熱板
26a 放熱フィン
27 放熱ゴム
28 ダクト
29 送風ファン
30 回路基板
30a 回路素子
31 回路基板
31a 回路素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面に第1の発熱性素子が実装され、前記第1の面の裏面となる第2の面に第2の発熱性素子が実装される回路基板と、
前記第1の発熱性素子と熱結合され、ダクトの一部となる第1の放熱部が形成される第1の放熱板と、
前記第2の発熱性素子と熱結合され、前記ダクトの一部となる第2の放熱部が形成される第2の放熱板と、
前記第1の放熱板と前記第2の放熱板と前記回路基板を収容し、前記ダクトの吸気口および排気口を形成する基板ケースと
前記ダクト内の空気を排出するファンとを有することを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1の放熱部と前記第2の放熱部とが互いに当接するように、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板とを配置することで、前記第1の放熱板と前記第2の放熱板との間で前記回路基板が配置される空間と前記ダクトとなる空間とを分離することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の放熱部および前記第2の放熱部は、それぞれ前記ダクト内の空気の流れを妨げないフィン形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記電子機器は、撮影者が把持するグリップ部が形成されるものであって、前記ダクトは前記グリップ部の反対側となる部分に形成されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−47798(P2012−47798A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187129(P2010−187129)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】