説明

電子欠乏窒素複素環で置換したフルオレセイン色素

【課題】大きな波長を有するレーザー光によって励起可能な、蛍光色素化合物の提供。
【解決手段】キサンテン環構造並びに電子欠乏窒素複素環式置換基を有するフルオレセイン色素化合物。例えば、下式で表される化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(I.発明の分野)
本発明は、概して、分子プローブを調製するための標識試薬として有用な蛍光色素化合物に関する。より詳細には、本発明は、キサンテン環構造および電子欠乏窒素複素環式置換基を有するフルオレセインに関する。
【背景技術】
【0002】
(II.背景)
蛍光標識を使用する生物学的検体の非放射性検出は、現代の分析バイオテクノロジーにおいて重要な技術である。放射性標識の必要性を除くことによって、安 全性が高められ、そして試薬の処分に伴う環境への影響およびコストは大いに減少する。このような蛍光検出法を使用する例としては、自動DNA配列決定法、オリゴヌクレオチドプローブ法、ポリメラーゼ連鎖反応産物の検出、免疫アッセイなどが挙げられる。
【0003】
多くの重要な用途において、空間的にオーバーラップした複数の検体の独立した検出(すなわち、多重蛍光検出)を達成するために、スペクトル的に識別可能 な多数の蛍光標識を使用することは好都合である。多重蛍光検出を使用する方法の例としては、単一チューブ多重DNAプローブアッセイ、PCR、単一ヌクレオチド多形性、免疫アッセイ、および多色自動DNA配列決定法が挙げられる。反応容器の数は、実験プロトコルを単純化することによって、そして用途に特異 的な試薬キットの生成を容易化することによって、減少され得る。多色自動DNA配列決定法の場合、多重蛍光検出は、単一の電気泳動レーンにおいて多数のヌクレオチドの分析を可能にし、それによって単色法による処理量を増加し、そしてレーン内での電気泳動度の変化に伴う不確定性を減少する。自動4色 Sanger型DNA配列決定法は、ゲノム全体の分子レベルでの特徴付けを可能にした。
【0004】
多重蛍光検出に有用でスペクトル的に識別可能な多数の蛍光標識のセットを組み立てることは、問題を含む。多重蛍光検出は、特に、単一励起光源、電気泳動 分離、および/または酵素での処理(例えば、自動DNA配列決定)を必要とする用途のための、蛍光色素標識成分の選択に対して少なくとも6つの制約を課す。第1に、発光スペクトルがスペクトル的に分解される、構造的に類似した色素のセットを見出すことは困難である。なぜなら、有機蛍光色素の代表的な発光 バンドの半値幅は40〜80ナノメーター(nm)だからである。第2に、たとえオーバーラップしない発光スペクトルが同定されたとしても、それぞれの蛍光量子効率が低すぎる場合、このセットは、なお適切ではないかもしれない。第3に、いくつかの蛍光色素が同時に使用される場合、同時励起は困難となる。なぜ なら色素の吸収バンドは、通常、広く分離しているからである。第4に、電荷、分子サイズ、および色素の構造は、検体の電気泳動度に悪影響を与えてはならない。第5に、蛍光色素は、検体を作製または操作するために使用される化学物質(例えば、DNA合成の溶媒および試薬、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、リガーゼ 酵素など)と的合成でなければならない。第6に、色素は、レーザー励起に耐えるに充分な光安定性を有さなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
4色自動DNA配列決定の用途における使用に適切な、現在利用可能な複数の色素セットは、セットを構成する全ての色素からの蛍光発光を十分に励起するた めに、青色または青緑色のレーザー光(例えば、アルゴンイオンレーザー)を必要とする。より低コストな赤色レーザーが入手可能になるにつれて、上記制約を満たし、そして約500nmより大きな波長を有するレーザー光によって励起可能な、蛍光色素化合物およびそれらの結合体
の必要性が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(項目1) 以下の式を有する化合物であって:
【0007】
【化1】

【0008】
ここで:
1、R2、R3、R4、R5、またはR7の少なくとも1つが、電子欠乏窒素複素環であり;
1は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり、またはR1はR7と一緒になって、ベンゾまたは複素環であり;
2は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり;
3は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり;
4は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり、またはR4はR5と一緒になって、ベンゾまたは複素環であり;
5は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり、またはR5はR4と一緒になって、ベンゾまたは複素環であり;
7は単独の場合、H、F、Cl、(C1〜C6)アルキル、(C1〜C6)置換アルキル
、(C1〜C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、もしくは複素環であり、またはR7はR1と一緒になって、ベンゾまたは複素環であり;そして
6は、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケン、(C2〜C6)アルキン、シア
ノ、複素環式芳香族、フェニル、および以下:
【0009】
【化2】

【0010】
の構造を有する置換フェニルからなる群から選択され、
ここで、X1、X2、X3、X4およびX5は、独立して、H、Cl、F、(C1〜C6)アル
キル、(C2〜C6)アルケン、(C2〜C6)アルキン、CO2H、SO3H、CH2OH、
または反応性連結基である、化合物。
(項目2) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、前記電子欠乏複素環が、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、3−キノリ ル、4−キノリル、2−イミダゾール、4−イミダゾール、3−ピラゾール、4−ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン、3−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−テトラゾリル、4−(1−O,3−N)− オキサゾール、5−(1−O,3−N)−オキサゾール、4−(1−S,3−N)−チアゾール、5−(1−S,3−N)−チアゾール、2−ベンゾキサゾール、2−ベンゾチアゾール、4−(1,2,3−N)−ベンゾトリアゾール、およびベンズイミダゾールからなる群から選択される、フルオレセイン色素。
(項目3) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R4がR5と一緒になってベンゾである、フルオレセイン色素。
(項目4) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R1がR7と一緒になってベンゾである、フルオレセイン色素。
(項目5) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R6が以下:
【0011】
【化3】

【0012】
の構造を有する置換フェニルである、フルオレセイン色素。
(項目6) 項目5に記載のフルオレセイン色素であって、X3およびX4の一方がカルボキシルであり、他方が水素である、フルオレセイン色素。
(項目7) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R1、R2、R3およびR4が各々独立して、フェニルまたは置換フェニルである、フルオレセイン色素。
(項目8) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R1、R2、R3およびR4が各々独立して、ナフチルまたは置換ナフチルである、フルオレセイン色素。
(項目9) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R2およびR3がそれぞれ独立して、フルオロまたはクロロである、フルオレセイン色素。
(項目10) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R2およびR3がそれぞれ独立して、2−ピリジルまたは3−ピリジルである、フルオレセイン色素。
(項目11) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R2およびR3がそれぞれ独立して、2−キノリルまたは3−キノリルである、フルオレセイン色素。
(項目12) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、R5およびR7が水素である、フルオレセイン色素。
(項目13) 項目1に記載のフルオレセイン色素であって、前記反応性連結基が、スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、塩化スルホニル、2,6 −ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、ホスホルアミダイト、マレイミド、ハロアセチル、およびヨードアセトアミドからなる群から選択される、フルオレセイン色素。
(項目14) 以下:
【0013】
【化4】

【0014】

【0015】

【0016】

【0017】
の構造を有する、フルオレセイン色素。
(項目15) 項目1に記載のフルオレセイン色素で基質を標識する方法であって、該方法が、該基質を該フルオレセイン色素の反応性連結基と反応させ、基質−色素結合体が形成される工程を包含する、方法。
(項目16) 前記反応性連結基が、N−ヒドロキシスクシンイミドである、項目15に記載の方法。
(項目17) 前記反応性連結基が、ホスホルアミダイトである、項目15に記載の方法。
(項目18) 前記基質が、ポリヌクレオチド、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチド、タンパク質、炭水化物、リガンド、粒子、および表面からなる群から選択される、項目15に記載の方法。
(項目19) 前記粒子が、ナノ粒子、ミクロスフィア、ビーズ、およびリポソームである、項目18に記載の方法。
(項目20) 前記表面が、ガラスである、項目18に記載の方法。
(項目21) エネルギー移動色素化合物であって、以下:
第1波長で光を吸収し得、そしてドナー色素によって発せられる励起エネルギーを吸収し得るアクセプター色素にリンカーによって連結され、応答の際に励起エネルギーを発し、そして応答の際に第2波長で蛍光発光する、ドナー色素、
を含み、
ここで、該ドナー色素およびアクセプター色素の少なくとも1つが、項目1に記載のフルオレセイン色素である、エネルギー移動色素化合物。
(項目22) 前記リンカーが、以下:
【0018】
【化5】

【0019】
の構造を有する、項目21に記載のエネルギー移動色素。
(項目23) 前記リンカーが、以下:
【0020】
【化6】

【0021】
の構造を有する、項目21に記載のエネルギー移動色素。
(項目24) 前記リンカーが、以下:
【0022】
【化7】

【0023】
の構造を有し、ここで、nが1または2である、項目21に記載のエネルギー移動色素。(項目25) 以下の式を有する、標識したヌクレオシドまたはヌクレオチドであって:
【0024】
【化8】

【0025】
ここで、DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素であるか、または項目23に記載のエネルギー移動色素であり;
Bが核酸塩基であり;
8がH、モノホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、チオフォスフェー
ト、またはホスフェートアナログであり;
9およびR10が単独の場合、各々独立して、H、HO、F、およびポリメラーゼ媒介
標的指向重合を阻止する部分であるか、またはR9およびR10が一緒になって、2’−3
’−ジデヒドロリボースを形成し;そして
Lがリンカーである、標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目26) 項目25に記載の標識したヌクレオシドまたはヌクレオチドであって、Bが、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7−デアザアデニン、グアニン、および8−デアザグアノシンからなる群から選択される、標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目27) 項目25に記載の標識したヌクレオシドまたはヌクレオチドであって、Lが以下:
【0026】
【化9】

【0027】
であり、ここで、nが0、1、または2である、標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目28) 酵素的に組み込み可能である、項目25に記載の標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目29) ターミネーターである、項目25に記載の標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目30) 以下の構造を有する、項目29に記載のターミネーターヌクレオチドであって:
【0028】
【化10】

【0029】
ここで、DYEがフルオレセイン色素であり;
Bが核酸塩基であり;
8がトリホスフェート、α−チオトリホスフェート、またはトリホスフェートアナロ
グであり;
9およびR10が単独の場合、各々独立して、H、F、およびポリメラーゼ媒介標的指
向重合を阻止する部分であるか、またはR9およびR10が一緒になって、2’−3’−ジ
デヒドロリボースを形成し;そして
Lがリンカーである、ターミネーターヌクレオチド。
(項目31) 酵素的に伸長可能である、項目25に記載の標識したヌクレオシドまたはヌクレオチド。
(項目32) 以下の式を有する、標識したオリゴヌクレオチドあって:
【0030】
【化11】

【0031】
ここで、該オリゴヌクレオチドが2〜100個のヌクレオチドを含み;
DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素であるか、または項目21に記載のエネルギー移動色素であり;
Bが核酸塩基であり;
Lがリンカーであり;
10がH、OH、ハライド、アジド、アミン、アルキルアミン、アルキル(C1〜C6)、アリル、アルコキシ(C1〜C6)、OCH3、またはOCH2CH=CH2であり;
15がH、ホスフェート、ヌクレオチド間ホスホジエステル、またはヌクレオチド間アナログであり;そして
16がH、ホスフェート、ヌクレオチド間ホスホジエステル、またはヌクレオチド間ア
ナログである、標識したオリゴヌクレオチド。
(項目33) 以下の式を有する、標識したオリゴヌクレオチドあって:
【0032】
【化12】

【0033】
ここで、該オリゴヌクレオチドが2〜100個のヌクレオチドを含み;
DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素であり;
XがO、NH、またはSであり;
Bが核酸塩基であり;
Lがリンカーであり;
10がH、OH、ハライド、アジド、アミン、アルキルアミン、アルキル(C1〜C6)、アリル、アルコキシ(C1〜C6)、OCH3、またはOCH2CH=CH2であり;そし

15がヌクレオチド間ホスホジエステルまたはヌクレオチド間アナログである、標識したオリゴヌクレオチド。
(項目34) 項目33に記載の標識したオリゴヌクレオチドであって、Lがアルキルジイル(C1〜C12)である、標識したオリゴヌクレオチド。
(項目35) 項目33に記載の標識したオリゴヌクレオチドであって、Lが−(CH2
CH2O)n−を含む易動度改変因子であり、ここでnが1〜100である、標識したオリゴヌクレオチド。
(項目36) 以下の式を有する、ホスホルアミダイト化合物であって:
【0034】
【化13】

【0035】
ここで、DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素であるか、または項目21に記載のエネルギー移動色素であり;
Lがリンカーであり;
11およびR12が独立して、アルキル(C1〜C12)、アルケン、アリール、および1
0個までの炭素原子を含むシクロアルキルからなる群から選択され;またはR11およびR12が窒素原子と一緒になって、飽和した窒素複素環を形成し;そして
13が亜リン酸エステル保護基である、ホスホルアミダイト化合物。
(項目37) R13が、メチル、2−シアノエチル、および2−(4−ニトロフェニル)エチルからなる群から選択される、項目36に記載のホスホルアミダイト化合物。
(項目38) R11およびR12が、それぞれイソプロピルである、項目36に記載のホス
ホルアミダイト化合物。
(項目39) R11およびR12が、一緒になってモルホリノである、項目36に記載のホスホルアミダイト化合物。
(項目40) Lが、アルキルジイル(C1〜C12)である、項目36に記載のホスホル
アミダイト化合物。
(項目41) 前記フルオレセイン色素が、R6でリンカーによって結合される、項目3
6に記載のホスホルアミダイト化合物。
(項目42) 以下の構造のホスホルアミダイト化合物であって:
【0036】
【化14】

【0037】
ここで、DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素である、ホスホルアミダイト化合物。
(項目43) 以下の式を有する、ホスホルアミダイト化合物であって:
【0038】
【化15】

【0039】
ここで、DYEが項目1に記載のフルオレセイン色素であるか、または項目21に記載のエネルギー移動色素であり;
Bが核酸塩基であり;
Lがリンカーであり;
11およびR12が独立して、アルキル(C1〜C6)、アルケン、アリール、および10個までの炭素原子を含むシクロアルキルからなる群から選択され;またはR11およびR12が窒素原子と一緒になって、飽和した窒素複素環を形成し;
13が亜リン酸エステル保護基であり;そして
14が酸−切断可能なヒドロキシ保護基である、ホスホルアミダイト化合物。
(項目44) 項目43に記載のホスホルアミダイト化合物であって、ここで、R13が、メチル、2−シアノエチル、および2−(4−ニトロフェニル)エチルからなる群から選択される、ホスホルアミダイト化合物。
(項目45) 項目43に記載のホスホルアミダイト化合物であって、ここで、R11およびR12が、それぞれイソプロピルである、ホスホルアミダイト化合物。
(項目46) 項目43に記載のホスホルアミダイト化合物であって、R11およびR12
一緒になって、モルホリノである、ホスホルアミダイト化合物。
(項目47) 項目43に記載の化合物であって、ここで、Lが以下:
【0040】
【化16】

【0041】
であり、そしてnが2〜10の範囲である、化合物。
(項目48) 項目43に記載の化合物であって、ここで、Lが以下:
【0042】
【化17】

【0043】
であり、そしてnが0、1、または2である、化合物。
(項目49) 項目43に記載の化合物であって、ここで、Lが以下:
【0044】
【化18】

【0045】
であり、そしてnが1〜10の範囲である、化合物。
(項目50) 項目43に記載の化合物であって、Bが、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7−デアザアデニン、グアニン、および8−デアザグアノシンからなる群から選択される、化合物。
(項目51) 標識したオリゴヌクレオチドを合成する方法であって、項目36のホスホルアミダイト化合物を固体支持体上のオリゴヌクレオチドにカップリングする工程を包含する、方法。
(項目52) 標識したオリゴヌクレオチドを合成する方法であって、ヌクレオシドホスホルアミダイト試薬を固体支持体にカップリングする工程を包含し、ここで、該固体支持体が、項目1に記載の色素または項目21に記載のエネルギー移動化合物で標識される、方法。
(項目53) 標識したプライマー伸長産物を産生する方法であって、連続プライマー伸長を支持し得る酵素的に伸長可能なヌクレオチドおよびターミネーター の混合物の存在下で、プライマー−標的ハイブリッドを酵素的に伸長する工程を包含し、ここで、該プライマーまたは該ターミネーターが、項目1に記載の色素または項目21に記載のエネルギー移動化合物で標識される、方法。
(項目54) オリゴヌクレオチド連結の方法であって、該方法は以下:
2つのプローブを標的配列にアニーリングする工程;および
一方のプローブの5’末端と他方のプローブの3’末端との間のホスホジエステル結合を形成する工程;
を包含し、
ここで、1つまたは両方のプローブが、項目1に記載の色素または項目21に記載のエネルギー移動化合物で標識される、方法。
(項目55) フラグメント分析の方法であって、該方法は以下:
ポリヌクレオチドフラグメントをサイズ依存分離プロセスに供する工程であって、該フラグメントが項目1に記載のフルオレセイン色素または項目21に記載のエネルギー移動化合物で標識される、工程;および
該分離プロセスの後に、該標識したポリヌクレオチドフラグメントを検出する工程、
を包含する、方法。
(項目56) 前記フラグメントが、易動度改変標識で標識される、項目55に記載の方法。
(項目57) 前記フラグメントが、連結によって形成される、項目55に記載の方法。(項目58) 項目55に記載の方法であって、前記サイズ依存分離プロセスが電気泳動であり、そして該標識したポリヌクレオチドフラグメントが蛍光によって検出される、方法。
(項目59) 増幅の方法であって、該方法が以下:
2つ以上のプライマーを標的DNA配列にアニーリングする工程;および
ポリメラーゼ、および酵素的に伸長可能なヌクレオチドの混合物によって該プライマーを伸長する工程;
を包含し、ここで、該プライマーまたはヌクレオチドが項目1に記載の色素で標識される、方法。
(項目60) 増幅の方法であって、該方法が以下:
2つ以上のプライマーおよび蛍光色素−クエンチャープローブを標的DNA配列にアニーリングする工程;および
ポリメラーゼ、および酵素的に伸長可能なヌクレオチドの混合物によって該プライマーを伸長する工程;
を包含し、ここで、該プローブが項目1に記載の色素で標識される、方法。
(項目61) オリゴヌクレオチドを標識するためのキットであって、項目1に記載の反応性連結基を含む色素およびオリゴヌクレオチドを含む、キット。
(項目62) オリゴヌクレオチドを標識するためのキットであって、項目36に記載のホスホルアミダイト化合物およびオリゴヌクレオチドを含む、キット。
(項目63) 標識したプライマー伸長産物を産生するためのキットであって、該キットは、連続プライマー伸長を支持し得る酵素的に伸長可能なヌクレオチ ド、ターミネーターおよびプライマーを含み、ここで、該プライマーまたは該ターミネーターが項目1に記載の色素で標識される、キット。
(項目64) 標識したプライマー伸長産物を産生するためのキットであって、該キットは、連続プライマー伸長を支持し得る酵素的に伸長可能なヌクレオチ ド、ターミネーターおよびプライマーを含み、ここで、該プライマーまたは該ターミネーターが項目21に記載のエネルギー移動色素で標識される、キット。
(項目65) 標識したプライマー伸長産物を産生するためのキットであって、該キットは、連続プライマー伸長を支持し得る酵素的に伸長可能なヌクレオチ ド、ターミネーターおよびプライマーを含み、ここで、該プライマーまたは該ターミネーターが項目14に記載の色素で標識される、キット。
(項目66) 項目65に記載のキットであって、前記ターミネーターが一組の4つの異なるターミネーターであって、該ターミネーターの1つは標的Aで終結 し、該ターミネーターの1つは標的Gで終結し、該ターミネーターの1つは標的Cで終結し、そして該ターミネーターの1つは標的TまたはUで終結する、キット。
(項目67) 項目66に記載のキットであって、前記一組の4つの異なるターミネーターが、一組の、易動度が一致したターミネーターである、キット。
【0046】
(III.要旨)
本発明は、多色蛍光検出に有用なスペクトル的に分解可能な蛍光標識のセットの作製に適切な、色素化合物に関する。
【0047】
概して本発明の色素は、以下のフルオレセイン型キサンテン環構造I:
【0048】
【化19】

【0049】
を含み、ここで、この構造は、R1、R2、R3、R5、またはR7で、フルオレセイン環系
に連結した少なくとも1つの電子欠乏窒素複素環で置換されている。
【0050】
1は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム(imminium)、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR7一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0051】
2は、単独の場合、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アルキ
ル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環である。
【0052】
3は、単独の場合、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アルキ
ル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環である。
【0053】
4は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR5一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0054】
5は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR4一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0055】
7は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR1一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0056】
6は、以下の式IIを有する、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケン、(C2−C6)アルキン、シアノ、複素環式芳香族、フェニル、および置換フェニルであり得:
【0057】
【化20】

【0058】
ここで、X1、X2、X3、X4、またはX5は、別々に、H、Cl、F、(C1−C6)ア
ルキル、(C2−C6)アルケン、(C2−C6)アルキン、CO2H、SO3H、CH2OH
、または反応性連結基である。
【0059】
1つの局面において、本発明は、構造Iのフルオレセイン色素を有する基質を標識する方法を提供し、ここでこの基質は、色素の反応性連結基と反応し、そし て基質−色素結合体が形成する。適切な色素標識化結合体は、Iに従った電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素、および基質(すなわち、別の分子または基質)を含む。この基質は、本発明の1つ以上の色素(同じであっても良いし、異なっていても良い)で標識され得る。色素からの蛍光は、スペクトル 範囲にわたって検出可能なシグナルを提供し、これは、単一のサンプルまたは混合物において別々に標識された基質の識別を可能にする。
【0060】
1つの実施形態において、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素は、別の色素化合物に共有結合されて、エネルギー移動色素化合物を形成する。
【0061】
別の実施形態において、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよびヌクレオチドのアナログ、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのアナログに共有結合されて、それらとの標識化結合体を形成する。
【0062】
さらに別の実施形態において、本発明は、本発明の電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素を含む、ホスホラミダイト試薬を提供する。
【0063】
別の局面において、本発明は、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素で標識されたオリゴヌクレオチドを合成する種々の方法、および蛍光標識化ポリヌクレオチドの検出のために色素を使用する種々の方法を提供する。
【0064】
別の局面において、本発明は、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素、および分子を標識するために有用かつ/またはDNA配列決定およびDNA増幅(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応)のようなアッセイを行うために有用な試薬を含むキットを提供する。
【0065】
本発明の、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素は、現在公知なフルオレセイン色素全般に対して有意な利点を提供する。
【0066】
(V.好ましい実施形態の詳細な説明)
ここで、本発明の好ましい実施形態への言及が詳細になされ、これらの例は、付随する図面に示される。本発明は好ましい実施形態と組み合わせて記載されるが、本発明をこれ
らの実施形態に限定することは意図されないことが理解される。逆に、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれ得る、あらゆる変更、改変、および等価物を包含することを意図する。
【0067】
(V.1 定義)
他で述べられない限り、以下の用語および語句は、本明細書中で使用される場合、以下の意味を有することが意図される:
「核酸塩基」は、相補的な核酸塩基または核酸塩基アナログとワトソンクリック水素結合を形成し得る、窒素含有複素環部分(例えば、プリン、7−デアザプ リン、またはピリミジン)を意味する。代表的な核酸塩基は、天然に存在する拡散塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、およびこれらの天然に存在する核酸塩基のアナログ(例えば、7−デアザアデニン、7−デアザグアニン、イノシン、ネブラリン、ニトロピロール、ニトロインドール、2− アミノ−プリン、2,6−ジアミノ−プリン、ヒポキサンチン、プソイドウリジン、プソイドシチジン、プソイドイソシチジン、5−プロピニル−シチジン、イソシチジン、イソグアニン、7−デアザ−グアニン、2−チオ−ピリミジン、
6−チオ−グアニン、4−チオ−チミン、4−チオ−ウラシル、O6−メチル−グアニン
、N6−メチル−アデニン、O4− メチル−チミン、5,6−ジヒドロチミン、5,6−ジヒドロウラシル、4−メチル−インドール、およびエテノアデニン(Fasman、Practical Handbook of Biochemistry and Molecular Biology、385〜394頁、CRC Press、Boca Raton、Fl(1989)))である。
【0068】
「ヌクレオシド」は、リボース糖のC−1’炭素に連結した核酸塩基を含む化合物を意味する。リボースは、置換されていても置換されていなくても良い。置 換リボース糖は、1つ以上の炭素原子、好ましくは3’炭素が1つ以上の同じかまたは異なる−R基、−OR基、−NRR基、またはハロゲン基(ここで各Rは、独立して、−H、(C1−C6)アルキル、または(C5−C14)アリールである)で置換された、リボースを含むがこれら
に限定されない。特定の好ましいリボースは、リボース、2’−デオキシリボース、2’,3’−デオキシリボース、3’−ハロリボース、3’−フルオロリ ボース、3’−クロロリボース、および3’−アルキルリボースである。核酸塩基がAまたはGである場合、リボース糖は核酸塩基のN9位置に結合している。核酸塩基がC、T、またはUである場
合、ペントース糖は、核酸塩基のN1位置に結合している(KornbergおよびBa
ker、DNA Replication、第2版、Freeman、San Francisco、CA、(1992))。
【0069】
「ヌクレオチド」は、モノマー単位としてか、またはポリヌクレオチド内の、ヌクレオシドのリン酸エステルを意味する。ヌクレオチドは、時々、リボース糖 の構造上の特徴を特に示すために「NTP」、または「dNTP」および「ddNTP」と記される。「ヌクレオチド5’−トリホスフェート」とは、5’位置に三リン酸エステル基を有するヌクレオチドをいう。三リン酸エステル基は、種々の酸素の硫黄置換(例えば、α−チオヌクレオチド5’−トリホスフェート) を含み得る。
【0070】
本明細書中で使用される場合、「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオシドまたはそのアナログを含む、任意のポリマー化合物を包 含する。交換可能に使用される「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」は、2’−デオキシリボヌクレオチド(DNA)およびリボヌクレオチド(RNA)を含む、ヌクレオチドモノマーの単鎖ポリマーおよび二重鎖ポリマーを意味する。オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチド間リン酸ジエステル結合また はヌクレオチド間アナログおよび関連する対イオン(例えば、H+、NH4+、トリアルキルアンモニウム、Mg2+、Na+など)によって連結され
た、デオキシリボヌクレオチドのみからなるか、リボヌクレオチドのみからなるか、またはそのキメラ混合物からなり得る。オリゴヌクレオチドは、核酸塩基アナログおよび糖アナログからなり得る。ポリヌクレオチドの大きさの範囲は、代表的に2〜3個のモノマー単位からであり、それらが一般にオリゴヌクレオチド といわれる場合は、例えば5〜40個から数千個のモノマーヌクレオチド単位である。他に示されない限りオリゴヌクレオチド配列が示されるときはいつでもヌクレオチドは左から右へ5’〜3’の順序であること、および他に示されない限り「A」はデオキシアデノシンを示し、「C」はデオキシシチジンを示し、 「G」はデオキシグアノシンを示し、「T」はチミジンを示すことが理解される。
【0071】
用語「ワトソン/クリック塩基対」とは、一般に二重鎖DNAに見られる水素結合した塩基対をいう。
【0072】
「結合部位」とは、リンカーが共有結合する部分(例えば、フルオレセイン色素、ヌクレオチド、またはオリゴヌクレオチド)での部位をいう。
【0073】
「リンカー」とは、色素を基質(例えば、オリゴヌクレオチド)に連結するか、または例えばエネルギー移動色素対において一方の色素を他方の色素に連結する、部分をいう。
【0074】
「アルキル」とは、親であるアルカン、アルケン、またはアルキンの1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、飽和もしくは不 飽和な、直鎖状、分枝状、または環状の炭化水素ラジカルをいう。代表的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル、ブチルなどを含むがこれらに限定されない。代表的なアルキル基は、以下を含むがこれらに限定されない:メチル(−CH3);エタニル(−CH2−CH3)、エテ
ニル(−CH=CH2)、エチニル(−C≡CH)のようなエチル;プロパン−1−イル
(−CH2−CH2−CH3)、プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ
−1−エン−1−イル(−CH=CH−CH2)、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ
−2−エン−1−イル(−CH2−CH=CH2)、プロパ−2−エン−2−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イル;シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル(−C≡C−CH3)、プロパ−2−イン−1−イル(−CH2−C≡CH)な
どのようなプロピル;ブタン−1−イル(−CH2−CH2−CH2−CH3)、ブタン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル(−CH=CH2−CH2−CH3)、ブタ−1−エン−2−イル、ブタ−2−エン−1−イル(−CH2−CH=CH2−CH3)、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル(−CH=CH−CH=CH2)、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イ
ル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル(−C≡C−CH2−CH3)、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イル(−CH2−CH2−C≡CH)などのようなブチル;など。好ましい実施形態において、アルキル基は(C1−C6)アルキルであり、(C1−C3)が特に好ましい。
【0075】
「アルコキシ」は、−ORを意味し、ここでRは(C1−C6)アルキルである。
【0076】
「アルキルジイル」とは、1〜12個の炭素原子の飽和もしくは不飽和な、分枝状、直鎖状、または環状の炭化水素ラジカルをいい、そして親であるアルカ ン、アルケン、またはアルキンの2つの同じかまたは異なる炭素原子の除去によって誘導される、2つの一価ラジカル中心を有する。代表的なアルキルジイルラジカルとしては、メタノ(−CH2
);1,2−エチルジイル;1,3−プロピルジイル;1,4−ブチルジイル;などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0077】
「アリール」とは、親である芳香環系の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって誘導される、6〜20個の炭素原子の一価芳香族炭化水素ラジカルをいう。代表的なアリール基としては、ベンゼン、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどから誘導されるラジカルが挙げられる が、これらに限定されない。
【0078】
「アリールジイル」とは、6〜20個の炭素原子の不飽和な環式または多環式の炭化水素ラジカルをいい、共役共鳴電子系、および親であるアリール化合物の2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去することによって誘導される少なくとも2つの一価ラジカル中心を有する。
【0079】
「置換アルキル」、「置換アルキルジイル」、「置換アリール」、および「置換アリールジイル」とは、それぞれ、1つ以上の水素原子が各々独立して別の置 換基で置換されている、アルキルラジカル、アルキルジイルラジカル、アリール、およびアリールジイルをいう。代表的な置換基としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:−X、−R、−O-、−OR、−SR、−S-、−NRR、=NR、−CX3、−CN、−OCN、−
SCN、−NCO、−NCS、−NO、−NO2=N2、−N3、−S(O)2-、−S(
O)2OH、−S(O)2R、−P(O)(O-2、−P(O)(OH)2、−C(O)R
、−C(O)X、−C(S)R、−C(O)OR、−C(O)O-、−C(S)OR、−
C(O)SR、−C(S)SR、−C(O)NRR、−C(S)NRR、および−C(NR)NRR、ここで、各Xは、独立してハロゲンであり、そして各Rは、独立して−H、アルキル、アリール、または複素環である。特に好ましい置換基は、以下である:ハロゲン、−OS(O)2OR、−S(O)2OR、−S(O)2R、−S(O)2NR、−S(O)R、−OP(O)O2RR、−P(O)O2RR、−C(O)OR、−NRR、−NRRR、−NC(O)R、−C(O)R、−C(O)NRR、−CN、−O、および−OR、ここでRは、−H、アルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、および連結基からなる群より独立して選択される。
【0080】
「反応性連結基」とは、別の分子と反応して共有結合または連結(linkage)を形成し得る、化学的に反応性な部分(例えば、求核剤または求電子剤)をいう。
【0081】
「複素環」とは、1つ以上の環原子がヘテロ原子(例えば、窒素、酸素、および硫黄)で置換されている、環系を有する分子をいう。
【0082】
「電子欠乏窒素複素環式置換基」とは、環系の1つの原子から1つの水素原子を除去して、複素環を本発明のフルオレセイン色素に結合させることによって誘 導される、一価の電子欠乏窒素複素環をいう(Jouleら、Heterocyclic Chemistry、第3版、Stanley Thornes Publisher、Ltd.、Cheltenham、U.K.(1998);Acheson、R.、An Introduction to the Chemistry of Heterocyclic Compounds、第2版。Interscience Publishers、John Wiley
& Sonsの部、New York(1967))。いくつかの例示的な電子欠乏窒素複素環が図11に示される。
【0083】
「基質」は、本発明の色素化合物が結合される実体である。基質としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:(i)ポリヌクレオチド、(ii)ヌ クレオシドおよびヌクレオチド、(iii)ペプチドおよびタンパク質、(iv)炭水化物、(v)リガンド、および(vi)上記(i)〜(v)の任意のアナログ。
【0084】
「酵素的に組み込み可能な」とは、新生ポリヌクレオチド鎖の末端(例えば、3’)上
にポリメラーゼ酵素の作用を介して酵素的に組み込まれ得る、ヌクレオチドの性質をいう。
【0085】
「ターミネーター」は、得られたポリヌクレオチド鎖に対するヌクレオチドの引き続く組み込みを妨げ、それによってポリメラーゼ伸長を停止する、酵素的に 組み込み可能なヌクレオチドを意味する。代表的なターミネーターには、3’ヒドロキシル置換基がなく、そして2’,3’−ジデオキシリボース、2’,3’−ジヒドロキシリボース、および2’,3’−ジデオキシ,3’−ハロリボース(例えば、3’−フルオロ)が挙げられる。あるいは、リボフラノースアナログ (例えば、アラリボース)が使用され得る。例示的なヌクレオチドターミネーターとしては、2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、β−D−アラビノフラノシル、3’−デオキシ−β−D−アラビノフラノシル、3’−アミノ−2’,3’−ジデオキシ−β−D−リボフラノシル、および2’,3’−ジデ オキシ− 3’−フルオロ−β−D−リボフラノシル(Chidgeavadzeら(1
984)Nucleic Acids Res.、12:1671−1686;およびChidgeavadzeら、(1985)FEB.Lett.、 183:275−278)。ヌクレオチドターミネーターはまた、可逆ヌクレオチドターミネーターを含む(Metzkerら(1994)Nucleic
Acids Res.、22(20):4259)。
【0086】
「酵素的に伸長可能な」は、ヌクレオチドがポリヌクレオチドの末端で酵素的に組み込み可能であり、そして得られた伸長ポリヌクレオチドが、ヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの引き続く組み込みを行い得る、ヌクレオチドの性質を意味する。
【0087】
「ヌクレオチド間アナログ」は、オリゴヌクレオチドのリン酸エステルアナログを意味し、これには以下が挙げられるがこれらに限定されない:アルキルホス ホネート、メチルホスホネート、ホスホルアミデート、ホスホトリエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミデート。ヌクレオチド間アナログはまた、糖/リン酸基が、アミド結合(例えば、2−アミノエチルグリシン単位)によって置換されている非リン酸アナログ(PNAといわれる)を 含む(Nielsenら、(1991)“Sequence−selective recognition of DNA by strand displacement with a thymidine−substituted
polyamide”Science 254:1497−1500)。
【0088】
「標的配列」は、プライマーもしくはプローブとのハイブリダイゼーション、酵素的活性、または検出の対象である、一本鎖または二本鎖のポリヌクレオチド(DNAもしくはRNA)を意味する。
【0089】
「スペクトル的に分解可能」は、蛍光色素のセットに関して、それぞれの色素の蛍光発光バンドが十分に明瞭であり(すなわち、十分に非オーバーラップであ り)、色素が、単独かまたは他の化合物に結合体化された(標識された)場合のいずれかで、一連の帯域通過フィルターおよび光電子倍増管、荷電結合デバイス(CCD)、分光写真器などを用いる標準的な光検出システム(例えば、光検出器)を使用して、蛍光シグナルに基づいて、互いに識別可能であることを意味す る(Wheelessら、(1985)Flow Cytometry:Instrumentation and Data Analysis、21−76頁、Academic Press、New York)。おそらく、スペクトル的に分解可能な色素のセットを含む全ての色素は、単一光源によって励起可能 である。
【0090】
「易動度一致」とは、等しい長さのポリヌクレオチドを標識するために使用される場合
に、実質的に類似の電気泳動易動度を有する、別個に標識されたポリヌクレオチドを生じる、蛍光色素のセットをいう。代表的に、易動度一致色素のセットで標識されたポリヌクレオチドの相対的な電気泳動易動度は、ヌクレオチドの約1/2未満だけ異なる。好ましくは、易動度一致色素は、上記で定義されたようにス ペクトル的に分解可能である。
【0091】
「相対的光安定性」は、吸収極大における残存色素のサンプリング測定を用いて、強度の白色光への曝露によって測定される場合の、標準(5−カルボキシフ ルオレセイン)に対する蛍光色素の化学的安定性を意味する。自動DNA配列決定およびフラグメント分析用途に共通のレーザー誘導性蛍光の下での安定性の相関性試験として、等しい光密度単位の試験色素および基準が同時に光に供される。
【0092】
(V.2 色素)
第1の局面において、本発明は、以下の構造Iに従う新しいクラスのフルオレセイン型キサンテン環化合物:
【0093】
【化21】

【0094】
を含み、ここで、この構造は、R1、R2、R3、R4、R5、またはR7で、フルオレセイン環系に連結した少なくとも1つの電子欠乏窒素複素環で置換されている。電子欠乏窒素複素環は、炭素−炭素結合または炭素−窒素結合を介して フルオレセイン環系に結合され得る。本開示の全体にわたって提供される全ての分子構造は、提示されるそのままの電子構造を含むだけでなく、その共鳴構造、互変異体、鏡像異性体、ジアステレオマー、およびプロトン化状態の全てを含むことが意図される。
【0095】
1は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR7と一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0096】
2は、単独の場合、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アルキ
ル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環である。
【0097】
3は、単独の場合、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アルキ
ル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環である。
【0098】
4は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド
、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR5と一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0099】
5は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR4と一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0100】
7は、単独の場合に、H、F、Cl、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)置換アル
キル、(C1−C6)アルコキシ、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、反応性連結基、フェニル、置換フェニル、アリール、置換アリール、または複素環であるか、あるいはR1と一緒の場合に、ベンゾまたは複素環である。
【0101】
6は、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケン、(C2−C6)アルキン、シア
ノ、複素環式芳香族、フェニル、および以下の式IIを有する置換フェニルからなる群より選択され:
【0102】
【化22】

【0103】
ここで、X1、X2、X3、X4、およびX5は、別々に、H、Cl、F、(C1−C6)ア
ルキル、(C2−C6)アルケン、(C2−C6)アルキン、CO2H、SO3H、CH2OH
、または反応性連結基である。
【0104】
Iに従った特に好ましい色素は、R4がR5と一緒に融合環(例えば、ベンゾ)を形成する色素を含む。R1がR7と一緒に融合環(例えば、ベンゾ)を形成する色素も同様に好ましい。
【0105】
好ましい色素は、R1、R2、R3、およびR4が、各々別々に、フェニルおよび置換フェニル、ナフチル、置換ナフチル、フルオロ、クロロ、2−ピリジル、3−ピリジル、2−キノリル、または3−キノリルである、色素を含む。R5およびR7は、好ましくは水素である。
【0106】
IIに従った特に好ましい色素の別のクラスは、置換フェニルが以下の構造IIa:
【0107】
【化23】

【0108】
を有する色素を含む。
【0109】
IIaの好ましい実施形態では、X3およびX4の1つが反応性連結基であり、そしてその他が水素である。IIaの特に好ましい実施形態では、X3およびX4の1つがカルボキシルであり、そしてその他が水素である。
【0110】
上記発明の種々の局面は、多重蛍光検出に有用な公知の蛍光色素化合物についての以下の重要な利点のうち1つ以上を可能にする:(1)対象色素化合物の発 光スペクトルは、電子欠乏窒素複素環および/またはアリール置換基の型およびに位置における小さな変化によって調節され得、このことは、類似の吸収特性であるがスペクトル的に分解可能な蛍光発光スペクトルを有する色素セットの作製を可能にする;(2)対象色素化合物は、その好ましい蛍光特性を損なうことな く、容易に基質に結合し得る;(3)対象色素化合物は、狭い発光バンド幅を有する、すなわち発光バンド幅は、約45nmより低い半値全幅(FWHM)発光強度を有する;(4)対象色素化合物は、高い量子収量を維持しながら緩衝水溶液に非常に溶解性である;(5)対象色素化合物は、比較的光安定性である;そ して(6)対象色素化合物は、比較的大きな(すなわち、約50,000より大きい)吸光率を有する(Bensonら“Aromatic−substituted xanthene dyes”、1999年12月28日発行の米国特許第6,008,379号)。FWHMによって例示されるよ うな狭い発光バンド幅は、1つ(1セット)以上の蛍光色素で標識された基質の混合物中でのスペクトル分解を容易にするものとして望ましい。光安定性は、本発明の色素で標識された基質(例えば、ポリヌクレオチド)が強いレーザー光に供されて検出のための蛍光を誘導し得るという点で、重要な特性である。光退色 または他の化学的分解機構は、最適より低い光安定性の色素で標識された基質の検出を減少または阻害する。
【0111】
図11は、本発明のフルオレセイン色素上の置換基として使用され得る電子欠乏窒素複素環の代表的なサンプルを示す。これらの複素環置換基は、蛍光色素の 重要なスペクトル特性に対して直接的な影響を有する。これらの影響は、以下のような本発明のフルオレセイン色素のスペクトル特性によって例示される:(i)励起、発光、ならびに吸収極大および吸収スペクトル、(ii)光安定性、(iii)量子効率、ならびに(iv)エネルギー移動効率。
【0112】
電子欠乏窒素複素環は、環に1つ以上の窒素原子を保持する5員環または6員環を有し得る(図11)。5員環または6員環は、第2の芳香族環(例えば、ベ ンゾ環、または置換ベンゾ環)または飽和環(例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシル)に融合され得る。複素環は、環系に他のヘテロ原子(例えば、酸素または硫黄)を有し得る。
【0113】
好ましい電子欠乏窒素複素環としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:図11中の複素環、ならびに2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノリル、
3−キノリル、4−キノリル、2−イミダゾール、4−イミダゾール、3−ピラゾール、4−ピラゾール、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、シノリン、フタラジン(pthalazine)、キナゾリン、キノキサリン、3−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−(1,2,4−N)−トリアゾリル、5−テトラ ゾリル、4−(1−O,3−N)−オキサゾール、5−(1−O,3−N)−オキサゾール、4−(1−S,3−N)−チアゾール、5−(1−S,3−N)−チアゾール、2−ベンゾキサゾール、2−ベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール、4−(1,2,3−N)−ベンゾトリアゾール、およびベンズイミダゾー ル。複素環は、複素環式環の炭素原子との結合によって直接的に、キサンテン環系に結合され得る。あるいは複素環は、複素環とキサンテン環系との間の芳香族性の非局在化を広げる不飽和リンカーを介して、キサンテン環系に結合され得る。広範な電子の非局在化を可能にするリンカーとしては、以下が挙げられるがこ れらに限定されない:(i)オレフィン型;−CR=CR−、(ii)ポリオレフィン型;−(CR=CR)n−、ここで、nは2〜10である(iii)アセチレン型;−C≡C−、(iv)ポリ
アセチレン型;−(C≡C)n−、ここで、nは2〜10である(v)スクアリン(sq
uarine)および(vi)他の結合体型リンカー。Rは、水素、(C1−C6)アルキル、ハロゲン、フッ素、塩素、CN、CF3、アリール、および置換アリールからなる群
より選択される。オレフィン結合の形状は、シスまたはトランス、EまたはZであり得る。
【0114】
(V.2A エネルギー移動色素)
別の局面において本発明は、電子欠乏窒素複素環で置換された構造Iのフルオレセイン色素化合物を組み込んでいるエネルギー移動色素化合物を含む。一般 に、本発明のエネルギー移動色素は、ドナー色素(第1波長で光を吸収し、そしてそれに応じて励起エネルギーを発する)、アクセプター色素(ドナー色素によって発せられた励起エネルギーを吸収し得、そしてそれに応じて第2波長で蛍光を発し得る)およびリンカー(ドナー色素をアクセプター色素に結合する。こ のリンカーは、ドナー色素とアクセプター色素との間の効果的なエネルギー移動を容易にするために有効であり、そしてアクセプター色素の高い発光量子収量を維持する)を含む。(Leeら“Energy transfer dyes with enhanced fluorescence”、1998年9月1 日発行の米国特許第5,800,996号;Leeら“Energy transfer dyes with enhanced fluorescence”、1999年8月31日発行の米国特許第5,945,526号;Mathiesら“Fluorescent labels and their use in separations”1997年8月5日発行の米国特許第5,654,419号)。本発明のエネルギー移動色素において、少なくとも1つのドナーアクセプター色素は、電子欠乏窒素複素環で置換されたフルオレセイン色素である。
【0115】
エネルギー移動色素は、混合物中の多重標識された基質の同時検出(例えば、DNA配列決定)での使用のための利点を有する。1つのドナー色素が、エネル ギー移動色素のセットにおいて使用され得、その結果、各色素対は共通の波長での強い吸収を有する。次いで、エネルギー移動セット中のアクセプター色素を変化させることによって、アクセプター色素は、それぞれの発光極大によってスペクトル的に分解され得る。エネルギー移動色素はまた、非エネルギー移動色素よ りも大きな有効ストークスシフトを与える。ストークスシフトは、励起極大(ドナー色素が最大に光を吸収する波長)と発光極大(アクセプターが最大に光を発光する波長)との間の差異である。
【0116】
好ましい実施形態において、ドナー色素とアクセプター色素との間のリンカーは、リンカーに、ある程度の構造的剛性を与える官能基(例えば、アルケン、ジ エン、アルキン、少なくとも1つの不飽和結合または融合環構造を有する5員環および6員環)を含む。エネルギー移動色素のドナー色素およびアクセプター色素は、以下の構造を有するリンカー
によって結合され得:
【0117】
【化24】

【0118】
ここで、nは1または2である。
【0119】
エネルギー移動色素のドナー色素とアクセプター色素との間のリンカーの結合部位は、任意の位置R1−R7であり得、ここでドナー色素およびアクセプター色素の1つまたは両方は本発明の色素である。好ましい結合部位としては、R2、R3、X3、およびX4が挙げられる。
【0120】
エネルギー移動色素化合物は、リンカーを介して基質に共有結合される。このリンカーは、アルキルジイル(C1〜C12)またはアリールジイル(C6〜C20)であり得、そして受容官能基としては、アミド、カルバメート、尿素、チオ尿素、ホスフェート、ホスホロチオエートなどが挙げられる。好ましいリンカーとし ては、1,2−エチルジイルおよび1,6−ヘキシルジイルが挙げられる。ドナー色素およびアクセプター色素の片方または両方が、本発明の色素である場合、エネルギー移動色素と基質との間のリンカーの結合部位は、そのエネルギー移動色素における任意のR1〜R7位で有り得る。好ましい結合部位としては、R2、R3、X3およびX4が挙げられる。この基質が、ヌクレオシドまたはヌクレオチドである場合、好ましい結合部位は、核酸塩基上にある。基質がオリゴヌクレオチドである場合、好ま しい結合部位としては、3’および5’末端が挙げられる。基質が、ペプチドまたはタンパク質である場合、好ましい結合部位としては、アミノ末端またはカルボキシ末端が挙げられる。
【0121】
(V.3 合成方法)
いくつかの合成方法が、本発明の蛍光色素の合成のために利用可能である。中間体の合成の好ましい方法は、白金触媒Suzukiボロネートカップリング反 応を介し、これにより、アリールボロン酸がハロゲン化アリールとカップリングされ、位置選択性を伴ってビアリール生成物が得られる(Zhangら(1998)「Base and cation effects on the Suzuki cross−coupling of bulky artlboronic acid with halopyridines:systhesis of pyridylphenols」,L.Org.Chem.63:6886−90;Martinら(1993)「Palladium−catalyzed cross−coupling reactions of organoboronic acids with organic electrophiles」,Acta Chemica Scan.47:221−30;Alipra
ntisら(1994)「Observation of catalytic intermediates in the Suzuki
reaction by electrospray mass spectrometry」,J.Am.Chem.Soc.116:6985−86; Thompsonら(1984)「A general synthesis of 5−arylnicotinates」,J.Org.Chem.49:5237−43)。
【0122】
環化基質5は、図1において合成される。Suzuki反応は、繰り返され、初めに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金触媒を用いて1,3−ジメ トキシフェン−2−イルボロン酸と2−臭化トルエンをカップリングすることによりビフェニル化合物1が得られる。1の位置選択的な臭素化により、2が得られ、続く白金触媒下のピリジン−3−ボロン酸とのSuzuki反応は、3を生成した。臭化水素および酢酸での3の脱メチルにより、4が得られ、続く無水 2,5−ジクロロトリメリト酸とフリーデル‐クラフツアシル化は5を生成した。
【0123】
臭素化したナフチル化合物8は、図2に例示すように、環化中間体11および12の合成のための共通の中間体として機能する。ピリジン−3−ボロン酸およ びトル−2−イルボロン酸のSuzukiカップリングにより、各々9および10が得られ、これらを、脱メチルし、11および12にした。
【0124】
100℃でのメタンスルホン酸中での中間体5および11の等モル混合物の環化により、クロマトグラフィー後に、色素13(図3)の30%収率を得た(実 施例13)。同様に、14を12との5の環化により形成した(実施例14)。色素15(図4)を、5および2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレンの環化により形成した(1998年11月24日に発行された、Bensonら「Asymmetric benzoxanthene dyes」、米国特許 第5,840,999号)。対称色素16(図4)を、2モル等量の4および1モル等量の無水2,5−ジクロロトリメリト酸の二重環化により合成した(実施例16)。
【0125】
同じ方法により、電子欠乏窒素複素環式置換フルオレセイン色素19、22(図5)、25(図6)、28(図7)、33(図8)、36(図9)および41(図10)を合成した(実施例17〜41)。
【0126】
(V.4 本色素の標識試薬)
本発明は、標識試薬を含み、ここで、電子欠乏窒素複素環置換フルオレセイン色素は、基質と反応するための反応性形態である。別の局面において、本発明 は、本発明(すなわち、構造I)のフルオレセイン色素で標識または結合体化された基質を含む。基質は、実質的に、本発明の色素が結合体化され得る任意の分子または物質であり得、例えば、タンパク質、ポリペプチド、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、脂質、固体支持体、有機および無機ポリ マー、ならびにその組み合わせおよびアセンブリ(例えば、染色体、核、生細胞(例えば、細菌または他の微生物、哺乳動物細胞、組織など)などが挙げられるがこれらに限定されない。この色素は、種々の手段によって任意のリンカー(疎水性引力、イオン性引力、および共有結合が挙げられる)を介して基質と結合体 化される。好ましくは、この色素は、共有結合を介して基質に結合体化される。
【0127】
標識化は、代表的に、当該分野で周知の方法(Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press, San Diego,CA.40〜55頁、643〜71頁、(1996))を用いて、両方が可溶である適切な溶媒中で結合される適切な反応性フルオレセイン色素と基質とを混合し、続いて、任意の結合体化されてない出発物質または不要な副生成物からこの結合体を分離することに
よって得られる。この色素結合体は、後の使用のために乾燥保存され得るかまたは溶液中で保存され得る。
【0128】
本発明のフルオレセイン色素は、置換基の位置(R1〜R5、R7、X1〜X5)の1つに
おいて反応性結合基を含むか、または別の分子(すなわち、基質)への色素の共有結合を含み得る。反応性結合基は、色素および共有結合を形成し得る基質上の 部分である。代表的に、この色素は、基質上の求核性官能基と反応し得る求電子性官能基を有する。基質求核試薬の例としては、アルコール、アルコキシド、アミン、ヒドロキシルアミン、およびチオールが挙げられる。色素を基質に結合体化させるために使用される反応性結合基の選択は、代表的に、結合される基質上 の相補的な官能性に依存する。求電子反応性結合基の例としては、スクシンイミジルエステル、イソチオシアネート、塩化スルホニル、スルホネートエステル、ハロゲン化シリル、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、ホスホルアミダイト、マレイミド、ハロアセチル、エポキシド、アルキ ルハライド、ハロゲン化アリル、アルデヒド、ケトン、アシルアジド、無水物およびヨウ化アセトアミドが挙げられる。単一の型の反応性結合基は、基質(代表的に多糖)に関して利用可能であり得、または、種々の基(例えば、アミン、チオール、アルコール、フェノール)は、タンパク質について代表的であるよう に、利用可能であり得る。結合される基質は、1より多い色素(この色素は、同一であっても異なってもよい)、またはハプテンによってさらに修飾される基質に結合化され得る。いくらかの選択性は、反応条件の注意深い制御によって得られるが、標識の選択性は、適切な反応色素の選択によって最も良好に得られる。
【0129】
好ましい反応性結合基は、フルオレセイン色素のカルボキシル基置換基のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)である。この色素のNHSエス テル形態は、好ましい標識試薬である。この色素のNHSエステルは、予め形成され、単離され、精製され、そして/または特徴付けされ得るか、あるいはインサイチュで形成され得、そして基質
の求核性基(例えば、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、ペプチド、など)と反応し得る。代表的に、本発明の色素のカルボキシル形態(例えば、表1の色素 化合物)は、カルボジイミド試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド)、またはウロニウム試薬(例えば、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)またはHATU(O−(7−アザベンゾ トリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)、および活性化剤(例えば、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、ならびにN−ヒドロキシスクシンイミドと反応して、この色素のNHSエステルが生じる。
【0130】
本発明のフルオレセイン色素上のNHSエステルについての好ましい置換基の位置は、X3およびX4(Ia)である。NHSエステルの代表的な例は、構造Ib:
【0131】
【化25】

【0132】
である。
【0133】
別の好ましい反応性結合基は、本発明の色素のホスホルアミダイト形態である。ホスホルアミダイト色素試薬は、本発明の色素で標識されたオリゴヌクレオチ ドの自動合成のために特に有用である。オリゴヌクレオチドは、通常ホスホルアミダイトヌクレオシド試薬を用いるホスホルアミダイト方法(Caruthers,M.およびBeaucage,S.「Phosphoramidite compounds and processes」、米国特 許第4,415,732号、1983年、11月15日発行;Caruthers,M.およびMatteucci,M.「Process for preparing polynucleotides」、米国特許第4,458,066号、1984年、7月3日発行;Beaucage,S.および Iyer,R.(1992)「Advances in the synthesis of oligonucleotides by the phosphoramidite approach」,Tetrahedron 48:2223−2311)によって固体支持体上でに合成される。このホ スホルアミダイト色素試薬は、ヌクレオシドまたは非ヌクレオシドであり得、そしてそれらの3’末端、5’末端および/または1以上の内部位置で合成的ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドアナログを標識するために都合よく使用され得る。ホスホルアミダイト色素試薬の非ヌクレオシド形態は、一般構造 III:
【0134】
【化26】

【0135】
を有し、ここで、DYEは、色素Iの保護形態または非保護形態であり、エネルギー移動色素を含む。Lは、リンカーである。別々であるR11およびR12は、アルキル(C1〜C12)、アルケン、アリール、および10炭素原子までを含むシクロアルキルであるか、ま
たはR11およびR12は、窒素原子形態と共に一緒になって飽和窒素複素環を形成する。R
13は、亜リン酸エステル保護基であり、オリゴヌクレオチドの不要な伸長を妨げる。一般的に、R13は、オ リゴヌクレオチド合成条件に対して安定であるが、このオリゴヌクレオチドまたは色素の完全性に不利に影響を与えない試薬を用いて合成的オリゴヌクレオチド生成物から取り除かれ得る。これらの特徴を有する種々の亜リン酸エステル基は、当該分野で周知である。好ましくは、R13は、メチル;2−シアノエチル、−CH2CH2CN;および2−(4−ニトロフェニル)エチル、−CH2CH2(p−NO2Ph)である。ホ
スホルアミダイト色素試薬の好ましい実施形態は、以下である:(i)R11およびR12が各々イソプロピルであり、(ii)一緒になったR11およびR12がモルホリノであり、(iii)Lが、アルキル(C1〜C12)であり、(iv)R13が、2−シアノエチルであ
り、そして(v)DYEがリンカーによってR6で結合される。ホスホルアミダイト色素
試薬IIIは、本発明の単一のフルオレセイン色素による基質の標識を行う。基質がオリゴヌクレオチドである場合、この色素は、オリゴヌクレオチドの5’末 端で結合され、結果として、3’から5’の方向で合成される。他のホスホルアミダイト色素試薬(ヌクレシドおよび非ヌクレオシド)は、オリゴヌクレオチドの他の部位(例えば、3’末端、核酸塩基、ヌクレオチド間結合、糖)で標識可能にする。核酸塩基、ヌクレオチド間結合、および糖部位での標識は、フルオレ セイン色素を用いて内部標識および複数の標識を可能にする。
【0136】
ヒドロキシル基(例えば、固体支持体に結合されたオリゴヌクレオチドの5’末端OH)と穏やかな酸活性化で反応する場合、ホスホルアミダイト色素試薬 IIIは、反応してヌクレオチド間ホスファイト基を形成し、次いでこのホスファイトは、ヌクレオチド間ホスフェート基に酸化される。幾らかの例において、この色素は、官能基(例えば、構造Iにおけるようなフェノール酸素)を含み得、これは、ホスホルアミダイト色素試薬の合成の間かまたはオリゴヌクレオチド のような分子を標識するためのその後の使用の間のいずれかの間で、保護を必要とする。使用される保護基(単数または複数)は、官能基の性質に依存し、そして当業者に明らかである(Green,TおよびWuts,P.Protective Groups in Organic Synthesis,第2版、 John WileyおよびSons,New York,1991)。一般的に、使用される保護基は、5’−ヒドロキシル保護基(例えば、ジメトキシトリチル)を取り除くために、オリゴヌクレオチド合成において通常使用される酸性条件下(例えば、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸)で安定であるべきであり、そ して固体支持体から合成的オリゴヌクレオチドを脱保護および/または切断するために使用される塩基性条件下(水酸化アンモニウム、メチルアミン水溶液)で不安定であるべきである。
【0137】
安定なホスホルアミダイト色素試薬は、構造Iのキサンテン環酸素の最初の保護(代表的に、エステル化(例えば、ピバレート(R=tBu)またはベンゾ エート(R=Ph)エステルのようなアシル化))によって形成され得る。エステル化は、構造Iaのラクトン化を引き起こし、ラクトン化は、非蛍光性の保護状態(例えば、以下:
【0138】
【化27】

【0139】
構造Ic)の試薬を所与し、ここで、X3およびX4の 1つは、水素であり、そしてその他は、カルボキシルであり、この色素は、公知の反応(例えば、カルボキシルの活性化、6−アミノ、1−ヘキサノールを用いるアミド化およびビス(ジイソプロピルアミノ)シアノエチルホスファイトを用いるヒドロキシルのホスファイト化(Theisen,etal(1992)) 「Fluorescent
dye phosphoramidite labelling of oligonucleotides」,Nucleic Acid Symposium Series No.27,Oxford University Press,Oxford,99〜100頁)により、非ヌクレオシドのホスホルアミダイト色素標識試薬(例えば、以下:
【0140】
【化28】

【0141】
Id)に転換される。
【0142】
本発明の色素はまた、オリゴヌクレオチドの自動合成のために、固体支持体に共有結合され得る(Mullah,B.およびAndrus,A.「Solid
support reagents for the direct synthesis of 3’−labelled polynucleotides」、米国特許第5,736,626号(1998年4月7日発行);Caruthers,M.およびMatteucci,M.「Process for preparing polynu
cleotides」、米国特許第4,458,066号(1984年7月3日発行)。1つの実施形態において、この色素は、固体支持体(例えば、制御された細孔ガラス(Nelson,etal(1992)「Oligonucleotide labeling methods 3. Direct labeling of oligonucleotides employing a novel,non−nucleosidic,2−aminobutyl−1,3−propanediol backbone」,Nucl.Acid Res.20:6253−59;Nelson,P. 「Muitifunctional controlled pore
glass reagent for solid phase oligonucleotide synthesis」、米国特許第5,141,813 号(1992年8月25日発行))またはポリスチレン(Andrus,etal「Automated system for polynucleotide synthesis and purification」、米国特許第5,047,524(1991年9月10日発行)お よび米国特許第5,262,530号(1993年11月16日発行))への結合、およびホスホルアミダイトヌクレオシド試薬を用いる伸長について酸に不安定な官能性を有するリンカーに結合される。切断および脱保護の後、標識されたオリゴヌクレオチドは、3’末端において本発明の色素を有し得る。
【0143】
(V.4A ヌクレオチド標識)
好ましいクラスの標識された基質は、本発明のフルオレセイン色素を用いて標識されるヌクレオシドおよびヌクレオチドの結合体を含む。このような標識され たヌクレオシドおよびヌクレオチドは、酵素合成(例えば、PCR増幅の状況において使用される標識されたヌクレオチド5’−トリホスフェート、Sanger型ポリヌクレオチド配列決定、およびnick翻訳反応)によって形成されるポリヌクレオチドを標識するために特に有用である。
【0144】
この色素は、糖または核酸塩基のいずれかに結合体化され得る。好ましい実施形態において、この化合物は、末端リボヌクレオシド−5’−トリホスフェート (「ターミネーター」)であり、ここで、この色素は、核酸塩基部分に共有結合される。2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−トリホスフェート(「dNTP」)またはリボヌクレオシド−5’−トリホスフェート(「NTP」)、適切なポリメラーゼ酵素および初回刺激をうけた標的ポリヌクレオチドと の結合において使用される場合、このようなターミネーターは、DNA配列決定のような適用のために標的媒介酵素合成を介して、一連の末端化電子欠乏窒素複素環置換フルオレセイン色素を標識したポリヌクレオチドフラグメントを生成するために使用され得る。ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖または核酸塩基 部分上の部位で標識され得る。好ましい核酸塩基標識部位は、プリン核酸塩基の8−C、7−デアザプリン核酸塩基の7−Cまたは8−C、およびピリミジン核酸塩基の5位置を含む。ヌクレオシドまたはヌクレオチドと色素との間でリンカーは位置R1〜R7の任意の1つで色素に結合し得る。
【0145】
標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、酵素的に組み込み可能でありかつ酵素的に伸長可能であり得る。本発明の色素で標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、構造IV:
【0146】
【化29】

【0147】
を有し得、ここで、DYEは、色素I(エネルギー移動色素を含む)の保護形態または脱保護形態である。Bは、核酸塩基(例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7−デアザアデニン、グアニン、および8−デアザグアノシン)である。R8は、H、モノ
ホスフェート、ジホスフェート、トリホスフェート、チオホスフェート、またはホスフェートアナログである。R9およびR10は、単独の場合、各々の独立してH、HO、Fであ
る。標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドが、ターミネーターである場合、R9
よびR10は、ポリメラーゼ媒介標的指向重合をブロックするように選択される。ターミネーターのヌクレオチドにおいて、R9およびR10は、単独の場合、各々独立してH、Fお
よびポリメラーゼ媒介標的指向重合をブロックする部分であるか、または一緒になる場合、2’−3’−ジデヒドロリボースを形成する。
【0148】
リンカーLは、
【0149】
【化30】

【0150】
であり得、ここで、nは、0、1、または2である。
【0151】
(V.4B オリゴヌクレオチド標識)
別の好ましいクラスの標識された基質は、本発明のフルオレセイン色素で標識されるオリゴヌクレオチドの結合体を含む。このような標識されたポリヌクレオ チドまたはアナログは、多くの重要な状況において有用であり、DNA配列決定プライマーとして、PCRプライマー、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ、オリゴヌクレオチド連結プローブ、二重標識された5’−エキソヌクレアーゼ(TaqManTM) プローブなどを含む(Fung,etal.「Amino−derivatized phosphite and phosphate linking agents,phosphoramidites precursors,and useful conjugates thereof」,米国特許第 4,757,141号(1998年7月12日発行);Andrus,A.「Chemical methods for 5’non−isotopic labelling of PCR probes and primers」(1995)PCR2:A Practical Approach, Oxford University Press,Oxford,39〜54頁;Hermanson,(1996)Bioconjugate Techniques,Academic Press,San Diego,CA.40〜55頁、643〜71頁)。標識されたオリゴヌクレオチドは、構 造V:
【0152】
【化31】

【0153】
を有し得、ここで、このオリゴヌクレオチドは、2〜100個のヌクレオチドを含む。DYEは、フルオレセイン色素Iであり、エネルギー移動色素を含む。B は、核酸塩基(例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、7−デアザアデニン、グアニン、および8−デアザグアノシン)である。Lは、リンカーである。R10は、H、OH、ハロゲン化物、アジド、アミン、アルキルアミン、アルキル(C1〜C6)、アリル、アルコキシ(C1〜C6)、OCH3、またはOCH2CH=CH2である。R15は、H、ホスフェート、ヌ
クレオチド間ホスホジエステル、またはヌクレオチド間アナログである。R16は、H、ホスフェート、ヌクレオチド間ホスホジエステルまたはヌクレオチド間アナログである。本実施形態において、構造Vの核酸塩基標識オリゴヌクレオチドは、核酸塩基を通して結合された本発明の複数の色素を有し得る。
【0154】
核酸塩基標識オリゴヌクレオチドVは、(i)DNAポリメラーゼまたはリガーゼによる酵素的に組み込み可能なヌクレオチド試薬IV(R8は、トリホスフェートである)の
酵素学的組み込み、および(ii)自動合成によるホスホルアミダイト色素ヌクレオシド試薬VIのカップリング、によって形成され得る。
【0155】
一般的に、標識されたヌクレオチドが、酵素的合成によって作製される場合、以下の手順が使用され得る。標的DNAは、変性され、そしてオリゴヌクレオチ ドプライマーは、標的DNAにアニールされる。初回刺激を受けた標的の連続した標的指向酵素的伸長を支持し得る、酵素的に組み込み可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの混合物(例えば、dGTP、dATP、dCTP、およびdTTPまたはdUTPを含む混合物)は、初回刺激を受けた標的に添加さ れる。少なくともヌクレオチドのフラクションは、色素Iで標識されるか、または上記のように標識されたターミネーターである。次に、ポリメラーゼ酵素は、ポリメラーゼ酵素が活性である条件下で混合物に添加される。標識されたオリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼ媒介鎖合成の間に標識されたヌクレオチドまたは ターミネーターの組み込みによって形成される。
【0156】
代替の酵素的合成方法において、2つのプライマー:標的配列の(+)鎖に相補的な1つのプライマーおよび標的配列の(−)鎖に相補的な別のプライマー は、1つの代わりに使用され、ポリメラーゼは、熱安定性のポリメラーゼであり、そして反応温度は、変性温度と伸長温度との間で循環され、それによってPCRによって標的配列に対する標識された相補体を急激に増幅する(Innis,etal(1990)PCR Protocols,Eds., Academic
Press)。1つまたは両方のプライマーは、本発明の色素で標識され得る。あるいは、1以上のヌクレオチドの5’−トリホスフェートは、本発明の色素で標識され得る。各標識スキームは、本発明の1以上の色素を有するDNA増幅産物を生じる。
【0157】
本発明のフルオレセイン色素でのオリゴヌクレオチドの内部標識は、一般構造VI:
【0158】
【化32】

【0159】
のヌクレオシドホスホルアミダイト色素試薬で実施され得、ここで、DYEは、色素Iの保護形態または非保護形態である。環外のアミンおよび核酸塩基Bの他 の官能性は、ヌクレオシドホスホルアミダイト色素試薬の合成の間および/または標識されたオリゴヌクレオチドを合成するためのその後の使用の間、保護を必要とし得る。選択される特定の保護基は、核酸塩基または核酸塩基アナログの同一性に依存し、そして当業者に明らかである。例えば、アデニンおよびシトシン の環外アミンは、ベンゾイル(bz)で保護され得、そしてグアニンの環外アミンは、従来の手順を用いてジメチルホルムアミド(dmf)またはイソブチリル(ibu)で保護され得る。好ましくは、核酸塩基は、穏やかな塩基性条件下で容易に取り除かれる基で保護される。例えば、dAbz、dCbz、dGdmfおよび
Tホスホルアミダイトヌクレオシドを用いて合成されたオリゴヌクレオチド(ならびにそれらの対応する3’ヌクレオシド固体支持体)は、65℃にて濃縮され た水酸化アンモニウム中で60分にわたって切断および脱保護され得る(Baucage,S.およびIyer,R.(1992)「Advances in the synthesis of
oligonucleotides by
the phosphoramidite approach」,Tetrahedron 48:2223−2311)。
【0160】
別々にとられるR11およびR12は、アルキル(C1〜C6)、アルケン、アリール、およびシクロアルキル(10個までの炭素原子を含む)、からなる群から選択される(例えば、イソプロピル)か、または、窒素原子と一緒になってR11およびR12が、飽和窒素複素環(例えば、モルホリノ)を形成する。R13は、亜リン酸エステル保護基(例えば、メチル、2−シアノメチル、および2−(4−ニトロフェニル)エチル)である。R14は、酸切断可能ヒドロキシル保護基(例えば、ジメトキシトリチル)であり、これは、引き続くモノマーカップリングを可能にする。
【0161】
VIのリンカーLは、
【0162】
【化33】

【0163】
(ここで、nは、2〜10の範囲である);
【0164】
【化34】

【0165】
(ここで、nは、0、1または2である);および
【0166】
【化35】

【0167】
(ここで、nは、1〜10の範囲である)であり得る。
【0168】
試薬IVおよびVIは、本発明Iの色素を用いて標識されるオリゴヌクレオチドVを調製する際に効果的である。標識されたオリゴヌクレオチドの別の実施形態は、構造VII
【0169】
【化36】

【0170】
に従って標識された5’末端であり、ここで、Xは、O、NH、またはSであり、Lは、アルキルジイル(C1〜C12)または易動度改変因子であり、そして標識されたオリゴヌ
クレオチドは、1つのDYEのみを保有する。易動度改変因子リンカーは、オリゴヌクレオチドの電気泳動易動度または疎水的性質に影響する。易動度改変因子リンカーの例としては、エチレンオキシユニット、−(CH2CH2O)n−が挙げられ、ここで、nは、1
〜100であり得る(Grossmanら、「Method of DNA sequencing employing a mixed DNA− polymer chain probe」、米国特許第5,624,800号、1997年4月29日発行)。好ましくは、nは、2〜20である。標識されたオリゴヌクレオチドVIIは、ホスホラミダイト試薬III(特に例えばId)を用いて自動化合成によって形成され得る。あるいは、標識されたオリゴヌク レオチドVIIは、本発明の色素の反応性連結基形態(例えば、Ib)を、5’−アミノアルキルオリゴヌクレオチドと反応させることによって形成され得る。
【0171】
1つの好ましい合成後化学標識方法において、オリゴヌクレオチドは、以下のように標識される。構造Ibに従う色素は、DMSO中に溶解されるかまたは懸 濁され、約pH9の0.25M重炭酸塩/炭酸塩緩衝液中の5’−アミノヘキシルオリゴヌクレオチドに、過剰(10〜20倍)で加えられ、6時間反応させられる(例えば、米国特許第4,757,141号)。色素標識オリゴヌクレオチドVIIは、緩衝液(例えば、0.1モル濃
度のトリエチルアミンアセテート(TEAA))を用いて溶出するサイズ排除クロマトグラフィーカラムを通過させることによって未反応の色素から分離され得る。粗製の標識オリゴヌクレオチドVIIを含む画分(ここで、Lは、−(CH26−である)は、勾配溶出を使用する逆相HPLCによってさらに精製される。
【0172】
(V.5 キット)
本発明は、本発明の電子欠乏性窒素複素環置換蛍光色素および/またはそれらの標識された結合体を含むキットを包含する。1つの実施形態において、キット は、本発明の色素を他の分子(すなわち基質)に結合するのに有用である。このようなキットは、一般的に最適な連結部分を含む本発明の色素および別の分子または基質に対して色素を結合するのに適切な試薬、酵素、緩衝液、溶媒などを含む。
【0173】
1つの実施形態において、キットは、酵素的に合成されたオリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを、本発明の色素を用いて標識するのに有用である。こ のようなキットは、一般的に、連続プライマー伸長およびポリメラーゼ酵素を支持し得る、本発明に従う標識された酵素的に組み込み可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログ、酵素的に組込み可能なヌクレオチドまたはヌクレオチドアナログの混合物を含む。好ましくは、標識された酵素的に組込み可能なヌクレ オチドまたはヌクレオチドアナログは、構造IVに記載の化合物、最も好ましくは、標識されたターミネーターである。好ましいポリメラーゼは、AMPLITAQ(登録商標)DNAポリメラーゼFA(PE Biosystems、Foster City、CA)のように、熱安定である。
【0174】
別の実施形態において、キットは、本発明のホスホラミダイト試薬を用いて合成オリゴヌクレオチドを標識するのに有用である。このようなキットは、一般的 に、オリゴヌクレオチド合成を行うために任意にホスホラミダイト色素試薬、他の合成試薬、および/または支持体を含む(Andrusら、「Automated system for polynucleotide synthesis and purification」米国特許第5, 262,530号、1993年11月16日発行)。
【0175】
(V.6 標識された試薬を用いる方法)
本発明の色素および試薬は、蛍光検出を利用する任意の方法、特に、複数の空間的に重なる分析物の同時検出を必要とする方法によく適する(Menchen ら、「4,7−dichlorofluorescein dyes as molecular probes」、米国特許第5,188,934号、1993年2月23日発行)。本発明の色素および試薬は、生化学分離手順(例えば、電気泳動)に供されるポリヌクレオチドのクラス、または空間的にアドレ ス可能なハイブリダイゼーションアレイにおける位置の中に分布しているポリヌクレオチドのクラスを同定するために特によく適する。
【0176】
これらの用途には、5’標識配列決定プライマー、5’標識ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー、ハイブリダイゼーションプローブ、およびライゲー ションアッセイプローブのような標識オリゴヌクレオチドの使用が挙げられる。PCR用途には、可変数(variable number)タンデムリピート(VNTR)、ショートタンデムリピート(STR)および特定の配列の隣接複数コピーを含む二重鎖DNAの反復領域の増幅のマイクロサテライト方法による 遺伝型決定のための標識されたオリゴヌクレオチドの使用が挙げられ、繰り返しユニットの数が可変である。好ましくは、このようなPCR遺伝型決定方法において、PCRプライマーは、本発明の色素を用いて標識される。
【0177】
特に好ましい実施形態において、本発明のフルオレセイン色素は、PCRの間の増幅産物のリアルタイムまたは終点測定を提供する定量的方法および試薬において使用され得る(Gelfandら、「Homogeneous assay
system using the nuclease activity of a
nucleic acid polymerase」、米国特許第5,210,015号、1993年5月9日発行);Livakら、「Method for Detecting Nucleic Acid Amplification Using Self−Quenching Fluorescence Probe」、米国特許第5,538,848号、1996年7月23日発行)。蛍光色素−クエンチャープローブを使用するエキ ソヌクレアーゼアッセイ(Taqman(登録商標))(Livakら、「Self−quenching fluorescence probe」、米国特許第5,723,591号、1998年3月3日発行;Mullahら、(1998)「Efficient systhesis of double dye−labelled oligodeoxyribonucleotide probes and their
application in a real time PCR assay」、Nucl.Acids Res.26:1026〜1031)は、閉鎖 チューブシステムにおけるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)生成物の直接検出を与え、これには、PCRを行うために必要とされるサンプルプロセシングを超えるサンプルプロセシングはない。Taqmanアッセイにおいて、プライマー伸長を行いそしてポリヌクレオチドを増幅するポリメラーゼはまた、5’〜3’エ キソヌクレアーゼ活性によって標的配列にアニールされるプローブを置換および切断する。Taqman型アッセイにおいて、プローブは、自己クエンチし、蛍光色素およびクエンチャー部分(これらのいずれもが本発明の色素であり得る)を用いて標識される。スペクトルの重なりは、プローブがインタクトである場 合、効率的なエネルギー移動(FRET)を可能にする(Clegg,R(1992)「Fluorescence resonance energy transfer and
nucleic acids」、Meth.Enzymol.211:353〜388)。標的配列にハイブリダイズされる場合、プローブは、PCRの間 に、標的−プローブハイブリッドの存在する量に比例した蛍光シグナルを放出するために切断される(Livakら、「Method for Detecting Nucleic Acid Amplification Using Self−Quenching Fluorescence Probe」、米国特許第5,538,848号、1996年7月23日発行;Livakら、「Self−quenching fluorescence probe」、米国特許第5,723,591号、1998年3月3日発行)。
【0178】
なお別の局面において、本発明は、標的ポリヌクレオチドを配列決定するために、本発明の電子欠乏性窒素複素環置換フルオレセイン色素を使用する方法を提 供する。この方法は、一般的に、本発明の色素を用いて標識された一連の異なるサイズのポリヌクレオチドを形成する工程、サイズに基づいて一連の異なるサイズの標識されたポリヌクレオチドを分離する工程、および色素の蛍光に基づいて分離された標識されたポリヌクレオチドを検出する工程を包含する。
【0179】
一連の異なるサイズの標識されたポリヌクレオチドは、周知の方法(Sangerら、(1977)「DNA sequencing with chain −teminating inhibitors」、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 74:5463〜5467;Hunkapillerら、「Real time scanninig electrophoresis apparatatus for DNA sequencing」米国 特許第4,811,218号、1989年3月7日発行;PE Corp.、January 1995、ABI PRISMTM 377 DNA Sequencer User’s Manual、Rev.A、Chapter 2(P/N 903433、PE Corporation、Foster City、CA)に従って、プライムされた標的配列を酵素的に伸長することによって、便利に生成され得る。例えば、一連の標識されたポリヌクレオチドは、標識されたプライマーを使用し、そしてポリメラーゼ、dNTP、および少なくとも1つのターミネーター(例え ば、
2’,3’−ジデオキシリボヌクレオシド−5’−トリホスフェート)の存在下において標識された標的を用いてプライムされた標的配列を酵素的に伸長して得られ得る。あるいは、一連の標識されたポリヌクレオチドは、ポリメラーゼ、dNTP、および少なくとも1つの標識されたターミネーターの存在下で標識され ていないプライムされた標的を酵素的に伸長することによって得られ得る(Bergotら、「Spectrally resolvable rhodamine dyes for nucleic acid
sequence determination」、米国特許第5,366,860号、1994年11月22日発行)。いずれの実施形態においても、この ポリメラーゼは、ターミネーターが組み込まれる(これは、伸長反応を終了させる)までdNTPを用いてプライマーを伸長するのに役立つ。いったん終結すると、一連の標識されたポリヌクレオチドは、サイズに基づいて分離され、そして分離されたポリヌクレオチドが色素標識の蛍光に基づいて検出される。
【0180】
この方法の特に有利な実施形態において、4つの異なる蛍光的に標識されたターミネーターが使用され、ここで、それぞれのヌクレオシドが異なるスペクトル 的に分解され得るフルオロホアを用いて標識され、そして少なくとも1つのフルオロホアが本発明に従う電子欠乏性窒素複素環置換フルオレセイン色素であり、その結果、フルオロホアのセットが「易動度一致」される。この実施形態に従って、プライムされた標的配列が、ポリメラーゼ、dNTPおよび4つの異なる蛍 光的に標識されたターミネーターの存在下で酵素的に伸長される。サイズに基づいた分離に続いて、一連の分離され標識されたポリヌクレオチドが得られ、ここで、蛍光色素の発光性質は、3’−末端ヌクレオチドの同一性を明らかにする。特に好ましい実施形態において、易動度一致されたセットの蛍光色素のすべて が、単一光源を使用して励起され得る。
【0181】
本明細書中において、「フラグメント分析」または「遺伝子分析」方法として呼ばれる方法の好ましいカテゴリーにおいて、標識されるポリヌクレオチド配 列、または「フラグメント」は、例えば、ライゲーションまたはポリメラーゼ指向プライマー伸長によって、標識されたプライマーまたはヌクレオチドを使用して標的指向酵素合成によって生成され;フラグメントが、サイズ依存分離プロセス(例えば、電気泳動またはクロマトグラフィー)に供され;そして分離された フラグメントは、例えば、レーザー誘導蛍光によって分離に続いて検出される(Hunkapillerら、「Real time scanning electrophoresis apparatus for DNA sequencing」、米国特許第4,811,218号、1989年3月7日発 行)。特に好ましい実施形態において、複数のクラスのポリヌクレオチドが、同時に分離され、異なるクラスがスペクトル分解され得る標識によって区別される。
【0182】
特に好ましいフラグメント分析方法において、本発明の色素を用いて標識されるフラグメントが、相対的サイズによって同定される。フラグメントサイズと配 列との間の対応は、4つの可能な終結塩基(「ターミネーター」)およびスペクトル的に分解され得る色素のセットのメンバーの組み込みによって確立される。このようなセットは、市販の分光光度計を用いて発光および吸収バンド幅を測定することによって本発明の色素から容易に組み立てられる。好ましくは、DNA 配列決定(すなわち、ジデオキシDNA配列決定またはSanger型配列決定)の連鎖終結方法およびフラグメント分析が使用される。ターミネーターのそれぞれが異なる蛍光色素を有し、そして集合的に実験のターミネーターが、本発明の色素から1つ以上を含む色素のセットを有する。
【0183】
本発明のスペクトル的に分解可能な蛍光色素はまた、標的のPCR増幅の後に、遺伝子型決定実験に有用である。詳細には、それぞれ異なる色素で5’末端で 標識されるプライマーのオリゴヌクレオチドのセットが、複数の座を増幅し得、そして単一ヌクレオチド多形成(SNP)を識別する。サイズ基準での、色素標識増幅生成物の電気泳動分離は、プ
ライマー配列のセットに依存する特定の遺伝型を示すプロフィールまたは特徴的データセットを確立する。
【0184】
リガーゼ酵素によるポリヌクレオチドプローブの共有結合は、分子生物学者に利用可能な最も有用なツールの1つである。2つのプローブが標的配列にアニー ルされ、ここで、2つのプローブが、隣接しそして介在するギャップなしである場合、ホスホジエステル結合が1つのプローブの5’末端と他のプローブの3’末端との間に、リガーゼ酵素によって形成され得る(Whiteleyら、「Detection of specific
sequences in nucleic acids」、米国特許第4,883,750号、1989年発行;Landegrenら、(1988)「A ligase mediated
gene detection technique」、Science241:1077〜80;Nickersonら(1990)「Automated
DNA diagnostics using an ELISA−based oligonucleotide assay」Proc.Natl. Acid.Sci USA87:8923〜27)。オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイは、標的サンプル中の特定の配列の存在を検出する。1つまたは両方のプローブが、本発明の色素を用いて標識される場合、ライゲーション産物は、蛍光によって検出され得る(Grossmanら、(1994) 「High−density multiplex detection of nucleic acid sequences:oligonucleotide ligation assay and seqence−coded separation」、Nucl.Acids Res.22:4527〜34)。
【0185】
Sanger型配列決定は、配列が決定されるべき一本鎖DNA標的または二本鎖DNA標的を使用して、インビトロでのDNAポリメラーゼによるDNA鎖 の合成を含む。合成は、オリゴヌクレオチドプライマーが標的にアニールする場所に基づいて規定された部位において開始される。合成反応は、継続したDNA伸長を支持しないヌクレオチドアナログの組み込みによって終結される。例示的な連鎖終結ヌクレオチドアナログには、3’〜5’DNA連鎖伸長に必要な3’ −OH基を欠く2’,3’−ジデオキシヌクレオシド
5’トリホスフェート(ddNTP)を含む。適切な比率のdNTP(2’−デオキシヌクレオシド 5’−トリホスフェート)および4つのddNTPの1 つが使用される場合、酵素触媒重合が、ddNTPが組み込まれる各部位において連鎖の集団の画分において終結される。蛍光色素標識プライマーまたは標識ddNTPが各反応に使用される場合、配列情報が高分解能電気泳動による分離の後に蛍光によって検出され得る。連鎖終結方法において、本発明の色素が、配 列決定プライマーまたはジデオキシヌクレオチドのいずれかに接続し得る。色素は、プライマーの核酸塩基上の、プライマーの5’末端上の相補的な官能性に連結され得る(Fungら、「Amino−derivatized phosphite and phosphate linking agents、 phosphoramidite
precursors、and useful conjguates thereof」、米国特許第4,757,141号、1988年7月12日発行) か;あるいは、例えば、アルキニルアミノ連結基を介してジデオキシヌクレオチドの核酸塩基上に連結され得る(Khanら、「Substituted propargylethoxyamido nucleosides、oligonucleotide and methods for using same」米国特許第5,770,716号、1998年6月23日発行、および米国特許第5,821,356号、1998年10月13日発行;Hobbs,FおよびTrainor,G.「Alkynylamino−nucleotide」、米国特許第5,151,507号、1992年9月29日 発行)。
【0186】
代表的な配列決定試験は、図16に示され、ここで、3’−フルオロターミネーターは
、色素化合物13を用いて、プロパルギルエトキシアミドリンカー(EO):3’FddGTP−EO−13を介して標識される:
【0187】
【化37】

【0188】
上記フラグメント分析方法において、標識されたポリヌクレオチドは、クロマトグラフィー、アフィニティー、または電気泳動手順によって分離される。好ま しくは、この分離は、電気泳動である(RickwoodおよびHames編、Gel Electrophoresis of Nucleic Acids:A Practical Approach、IRL Press Limited、London、1981)。好ましいタイプの電気泳動マト リクスは、架橋ポリアクリルアミドまたは非架橋ポリアクリルアミド、あるいは他のアミド含有ポリマーであり、これは、約2〜20重量パーセントの濃度(体積に対する重量)を有する(Madabhushiら、「Polymers for separation of biomolecules by capillary electrophoesis」米国特許第5,552,028号、1996年9月3日発行)。電気泳動マトリクスは、スラブ(slab)ゲルまたはキャピラリー形式で構成され得る(Mathiesら、「Capillary array confocal fluorescence scanner and method」、米国特許第5,274,240号、1993年12月28日発行)。より好ましくは、ポリアクリルアミドの濃度は、約4〜8%の間である。好ましくは、特にDNA配列決定において、電気泳動マトリクスは、変性剤(例えば、尿素、ホルムアミ ドなど)を含む(Maniatisら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、New York、179〜185頁(1982);PE Corp.、ABI PRISMTM 377DNA Sequencer User’s Manual、Rev.A,Chapter
2(P/N 903433、PE Corporation、Foster City、CA)January 1995)。最適電気泳動条件(例えば、特定の分離に使用さ
れる、ポリマー、ポリマー濃度、pH、温度、変性剤の濃度)は、分離されるべきポリヌクレオチドのサイズ範囲、それらの塩基組成(それらは一本鎖または二本鎖であるか否かにかかわらない)、および情報が電気泳動によって探索される分類の性質を含む多くの因子に依存する(Grossman,P.「High resolution DNA sequencing method using low viscosity medium」、米国特許第5,374,527号、1994年12月20日発行)。従って、本発明の用途は、特定の分離のために条件を最適化するために標準的な予備的試験を必要とし得る。
【0189】
本発明の色素を用いて標識されるポリヌクレオチドはまた、電気泳動易動の割合を影響する部分(すなわち、易動度改変標識)を用いて標識され得る。易動度改変標識には、エチレンオキシ単位、−(CH2CH2O)n−のポリマー(ここで、nは、1〜100であ
り得る)が挙げられる(Grossmannら、「Method of DNA sequencing employing a mixed DNA− polymer chain probe」、米国特許第5,624,800号、1997年4月29日発行)。好ましくは、nは、2〜20である。具体的には、フルオレセイン色素標識ポリヌクレオチドを、別個の既知のサイズのポリエチレンオキシのさらなる標識を用いて標識することによって、ポリヌクレオチド におけるヌクレオチドの数に独立して、電気泳動および検出による別次元の分離を可能にする。すなわち、同じ長さのポリヌクレオチドが、スペクトル的に分解可能な色素標識および易動度改変標識に基づいて識別され得る。色素標識と易動度改変標識の両方を有するポリヌクレオチドは、単一標識ポリヌクレオチドまた はヌクレオチド組成のライゲーションまたはポリメラーゼ伸長によって酵素的に形成され得る。あるいは、合成オリゴヌクレオチドは、本発明の色素の標識および易動度改変因子を有し得、これらは、自動化合成の間に(例えば、ホスホラミダイト試薬)、またはアミノ−またはチオール−オリゴヌクレオチドに合成後 カップリング(例えば、NHS標識カップリング)によって組み込まれる。
【0190】
電気泳動分離に続いて、色素ポリヌクレオチド結合体は、色素標識ポリヌクレオチドからの蛍光発光を測定することによって検出される。このような検出を実 施するために、標識ポリヌクレオチドは、標準的手段(例えば、高強度水銀蒸気ランプ、レーザーなど)によって照射される。好ましくは、照射手段は、約450nmより上の波長での照射ビームを有するレーザーである。より好ましくは、色素−ポリヌクレオチドは、アルゴンイオンまたはHe−Neガスレーザー あるいは固体状態ダイオードレーザーによって生成されるレーザー光によって照射される。次いで、蛍光は、光感受性検出器(例えば、光電子増倍管、電荷結合デバイスなど)によって検出される。例示的な電気泳動検出システムは、別に記載される(Hoffら、「Real−time scanning fluorescence electrophoresis apparatus for the analysis of polynucleotide fragments」、米国特許第5,543,026号、1996年8月6日発行;Mathiesら、 「Capillary array confocal fluorescence scanner and method」、米国特許第5,274,240号、1993年12月28日発行;Hunkapillerら、「Real time scanning electrophoresis
apparatus for DNA sequencing」、米国特許第4,811,218号、1989年3月7日発行)。
【0191】
(VI.7 実施例)
本発明は、以下の実施例によってさらに実施され得る。これは、本発明の純粋な例示であり、いずれの方法においても本発明の範囲を限定しないことを意図する。
【0192】
(実施例1)
(1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−ベンゼン1の合成)
1,3−ジメトキシフェン−2−イルボロン酸:
【0193】
【化38】

【0194】
(10g、54.95mmol、Frontier Scientific,Inc.)、2−ブロモトルエン(18.81g、110mmol)、グリム(glyme)(200ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Ph3P)4Pd0
(4g、3.46mmol)を、15分間攪拌し、次いで、8gの炭酸カリウム(35ml、水(ref)中)を添加した。6時間還流後、この反応混合物を、 水と酢酸エチルの1:1混合物800ml中に注いだ。有機層を水(300ml×2)、およびブライン(200×1)によって洗浄し、溶媒を除去し、そして粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン、酢酸エチル0%〜10%)によって精製し、1を10.5g(84%)で得た(図1)。
【0195】
(実施例2)
(1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−ブロモベンゼン2の合成)
1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−ベンゼン1(10g、43.86mmol)、N−ブロモスクシンイミド(8.26g、46. 4mmol)、および過塩素酸(70%、0.5ml)を、ジクロロメタン(200ml)中で混合し、そして室温で4時間攪拌させた。この反応混合物を、重炭酸ナトリウム溶液(5%、100ml)でクエンチし、ジクロロメタン層を、水(100ml)、ブライン(100ml)で洗浄し、そしてこの溶媒を除去し た。この粗生成物を、ヘキサンおよび酢酸エチル(0%〜10%の酢酸エチル)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、2を10.8g(80%)で得た。
【0196】
(実施例3)
(1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−(ピリド−3−イル)−ベンゼン3の合成)
ピリジン−3−ボロン酸(5.81g、47.27mmol、Frontier Scientific,Inc.)、1,3−ジメトキシ−2−(トール− 2−イル)−4−ブロモベンゼン(2)(10.7g、34.8mmol)、グリム(200ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Ph3P)4Pd0(4g、3.4
6mmol)を、15分間攪拌し、次いで、炭酸カリウム(16g、70mlの水中)を添加した。10時間還流後、この反応混合物を、水と酢酸エチルの1: 1混合物800ml中に注いだ。有機層を水(300ml×2)、およびブライン(200ml)によって洗浄し、溶媒を除去し、そして粗生成物を、ヘキサンおよび酢酸エチル(10%〜25%の酢酸エチル)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、3を8.8g(83%)で得た。
【0197】
(実施例4)
(2−(トール−2−イル)−4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシベン
ゼン4の合成)
1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−(ピリド−3−イル)−ベンゼン3(3.5g、11.46mmol)、酢酸(30ml)、および臭 化水素酸(48%)(15ml)を、24時間還流した。この反応混合物を冷却後、この試薬のほとんどを減圧下で除去し、この残留の酸を、重炭酸ナトリウム溶液(5%)(100ml)とこの濃縮物を混合することによって除去した。この生成物を、酢酸エチル(100ml)で抽出し、水(100ml×2)および ブライン(100ml)で洗浄し、そしてこの酢酸エチルをエバポレートした。この粗生成物を、ジクロロメタンおよびアセトン(0%〜10%のアセトン)で溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、4を2.8g(90%)で得た。
【0198】
(実施例5)
(ケトン5の合成)
(2−(トール−2−イル)−4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン4(630mg、2.25mmol)、2,5−ジクロロトリメリト酸無水物:
【0199】
【化39】

【0200】
(Menchenら、S.”4,7−dichlorofluorescein
dyes as molecular probes”、米国特許第5,885,778号、1999年3月23日発行)(590mg、2. 25mmol)、ニトロベンゼン(20ml)、および塩化アルミニウム(ニトロベンゼン中)(12ml、1M)を、室温で24時間攪拌した。この反応混合物を、氷水(50ml)、酢酸エチル(100ml)、およびn−ブタノール(20ml)の混合物中に注ぎ、次いで、10%のHCl(50ml)を添加し て、このアルミニウム塩を溶解させた。有機層を、水(50ml×2)およびブライン(50ml)で洗浄し、そしてこの溶媒をエバポレートして、異性体5aおよび5bの混合物として生成物を得た。ジクロロメタン中のメタノール(10%〜30%のメタノール)、および酢酸(1%)を用いるシリカゲルカラムクロ マトグラフィーによる分離によって、所望の遅く移動する異性体5b(380mg、31%)を得た。これは、図1に示される構造を有すると考えられる。
【0201】
(実施例6)
(1,3−ジメトキシナフタレン6)
1,3−ジヒドロキシナフタレン(15g、93.6mmol)および炭酸カリウム(20g、144.7mmol)(アセトン(200ml)中)に、ジメ チルスルフェート(21ml、222mmol)を添加した。一晩攪拌後、この反応混合物を、10%の水酸化ナトリウム(100ml)と混合し、酢酸エチル(200ml×2)で抽出した。有機層を、水(100ml×2)で洗浄し、エバポレートし、そして任意の未反応ジメチルスルフェートをクエンチするため に、この残渣を、水酸化アンモニウム(50ml)で2時間攪拌させた。生成物を、酢酸エチル(200ml)で抽出し、そして水(100ml×2)およびブライン(100ml)で洗浄した。この溶媒をエバポレートして、6を15g(85%)で得た。
【0202】
(実施例7)
(Bis−(1,3−ジメトキシナフト−2−イル)−ジメチルスズ7)
1,3−ジメトキシナフタレン(6)(7.1g、37.73mmol)を、無水THF(60ml)に溶解させ、−70℃まで冷却させ、テトラメチルエチ レンジアミン(0.2ml)を添加し、次いで、n−ブチルリチウム(26ml、1.6M(ヘキサン中))を添加した。この溶液を、冷却状態で30分間、そして周囲温度で1時間攪拌した後、この溶液を再び−20℃まで冷却させ、そして2塩化ジメチルスズ、SnMe2Cl2(5.05g(20ml THF中))を添加した。この反応混合物を、周囲温度で2時間攪拌させ、水(100ml)に注ぎ、そして酢酸エチル(100ml)で抽 出させた。有機層を、水(50ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、そしてエバポレートした。残渣を、ヘキサン(50ml)より再結晶し、7を6.8g(69%)で得た。
【0203】
(実施例8)
(1,3−ジメトキシ−2−ブロモナフタレン8)
Bis−(1,3−ジメトキシナフト−2−イル)−ジメチルスズ7(11g、21mmol)(THF(500ml)中)を、−30℃まで冷却し、そして N−ブロモスクシンイミド(8g、45mmol)を添加した。−30℃で2時間攪拌させた後、この反応混合物を、水(200ml)および酢酸エチル(200ml)でクエンチした。有機層を、10%塩化水素酸(100ml)、水(100ml×2)、ブライン(100ml)で洗浄し、そしてエバポレート した。この粗生成物を、ヘキサン−酢酸エチル(0%〜10%の酢酸エチル)で溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、8を9g(80%)で得た。
【0204】
(実施例9)
(2−(ピリド−3−イル)−1,3−ジメトキシナフタレン9)
ピリジン−3−ボロン酸(3.94g、32mmol、Frontier Scientific,Inc.)、1,3−ジメトキシ−2−ブロモナフタレン
8(6.6g、24.7mmol)、グリム(200ml)、およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Ph3P)4Pd(3g、2.7mmol)を、15分間攪拌し、次いで、炭酸カリウム(11.4g、水(50mL)中)を添加した。一晩還流後、この反応混合物を、水と酢 酸エチルの1:1(800ml)中に注いだ。有機層を水(300ml×2)、およびブライン(200ml)によって洗浄し、溶媒を除去し、そして粗生成物を、ジクロロメタンおよびアセトン(0%〜5%のアセトン)を用いて溶出するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、9を5.1g(84%)で得 た。
【0205】
(実施例10)
(2−(トール−2−イル)−1,3−ジメトキシナフタレン10)
この化合物を、8およびトール−2−イルボロン酸(Frontier Scientific,Inc.)を使用して、本質的に実施例9と同じ手順によって調製した。
【0206】
(実施例11)
(2−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシナフタレン11の合成)
この化合物を、2−(ピリド−3−イル)−1,3−ジメトキシナフタレン9を使用して、実施例4に使用したのと同じ手順によって調製し、11を得た。
【0207】
(実施例12)
(2−(トール−2−イル)−1,3−ジヒドロキシナフタレン12の合成)
この化合物を、2−(トール−2−イル)−1,3−ジメトキシナフタレン10を使用して、実施例4に使用したのと同じ手順によって調製し、12を得た。
【0208】
(実施例13)
(色素13の合成)
ケトン5b(250mg、0.45mmol)および2−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシナフタレン11(109mg、0.45mmol) を、メタンスルホン酸(7ml)と混合し、そして100℃で1時間攪拌した。この溶液を、室温まで冷却し、次いで氷水(50ml)に注いだ。色素を、n−ブタノール(50ml×2)で抽出し、そして水(20ml×2)で洗浄した。この溶媒を、減圧下でエバポレートし、そして色素を逆相シリカゲルクロマトグ ラフィー(50%のメタノール)により精製し、13を103mg(30%)で得た(図3)。
【0209】
(実施例14)
(色素14の合成)
この色素を、2−(トール−2−イル)−1,3−ジヒドロキシナフタレン 12および5を使用して、実施例13に使用したのと同じ手順によって調製した。
【0210】
(実施例15)
(色素15の合成)
この色素を、2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン(Bensonら、”Asymmetric benzoxanthene dyes”、米国 特許第5,840,999号(1998年11月24日発行))および5を使用して、実施例13に使用したのと同じ手順によって調製した。
【0211】
(実施例16)
(色素16の合成)
2−(トール−2−イル)−4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロベンゼン4(52mg、0.28mmol)、2,5−ジクロロトリメリト酸無水 物(Menchenら、”4,7−dichlorofluorescein dyes as molecular probes”、米国特許第5,885,778号、1999年3月23日発行))(36.5mg、14mmol)、およびメタンスルホン酸(1ml)を加熱し、そして130〜135℃で 2時間攪拌した。この溶液を室温まで冷却し、次いで氷水(50ml)に注いだ。この粗色素を、n−ブタノール(50mg×2)で抽出し、そいてこの抽出物を水(20ml×2)で洗浄した。溶媒を、減圧下でエバポレートし、2つの異性体の混合物として粗色素を得た。この異性体を、分取薄層クロマトグラフィー (シリカゲル;ジクロロメタン:メタノール;酢酸/100:10:2(v:v:v)移動相)によって分離し、所望の遅く移動する異性体16を24mg(30%)で得た。
【0212】
(実施例17)
(2,3−ジメトキシ−4−(ピリド−3−イル)ベンジル17の合成)
2,4−ジメトキシフェニル−4−イルボロン酸(0.9g、4.97mmol、Frontier Scientific,Inc.)、3−ブロモピリジン(0.82g、5mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(Ph3P)4Pd0
0.65g、0.56mmol)、N,N−ジメチルホルムアミド(20ml)、およびトリエチルアミン(2.1ml)を混合し、110〜120℃で16時 間攪拌した。この反応混合物を、水および酢酸エチルの混合物1:1(100ml)に注ぎ、そして有機層を、水(50ml×2)およびブライン(50ml)で洗浄した。溶媒を取り除いた後、粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(0%〜10%のアセトン(ジクロロメタン中))によって精製し、17を0. 45g(42.5%)で得た。
【0213】
(実施例18)
(4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン18の合成)
この化合物を、2,3−ジメトキシ−4−(ピリド−3−イル)ベンジル17を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、18を得た。
【0214】
(実施例19)
(色素19の合成)
この色素を、4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン18および2,5−ジクロロトリメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0215】
(実施例20)
(2,3−ジメトキシ−4−(ピリド−2−イル)ベンゼン20の合成)
この化合物を、2,4−ジメトキシフェニル−4−イルボロン酸および2−ブロモピリジンを使用して、実施例17で使用されるのと同じ手順によって調製し、20を得た。
【0216】
(実施例21)
(2,3−ジヒドロキシ−4−(ピリド−2−イル)ベンゼン21の合成)
この化合物を、2,3−ジメトキシ−4−(ピリド−2−イル)ベンゼン20を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、21を得た。
【0217】
(実施例22)
(色素22の合成)
この化合物を、4−(ピリド−3−イル)−1,3−ジヒドロベンゼン21および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0218】
(実施例23)
(1,3−ジメトキシ−4−(キノン−3−イル)ベンゼン23の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシフェン−4−イルボロン酸および3−ブロモキノリンを使用して、実施例17で使用されるのと同じ手順を使用して調製し、23を得た。
【0219】
(実施例24)
(1,3−ジヒドロキシ−4−(キノン−3−イル)ベンゼン24の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−4−(キノン−3−イル)ベンゼン23を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、24を得た。
【0220】
(実施例25)
(色素25の合成)
この色素を、1,3−ジヒドロキシ−4−(キノン−3−イル)ベンゼン24および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0221】
(実施例26)
(1,3−ジメトキシ−4−(キノン−2−イル)ベンゼン26の合成)
この化合物を、1,3−ジヒドロキシフェン−4−ボロン酸および2−ブロモキノリンを使用して、実施例17で使用されるのと同じ手順を使用して調製し、26を得た。
【0222】
(実施例27)
(1,3−ジヒドロキシ−4−(キノン−2−イル)ベンゼン27の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−4−(キノン−2−イル)ベンゼン26を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、27を得た。
【0223】
(実施例28)
(色素28の合成)
この色素を、1,3−ジヒドロキシ−4−(キノン−2−イル)ベンゼン27および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0224】
(実施例29)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)ベンゼン29の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシフェン−2−イルボロン酸および3−ブロモピリジンを使用して、実施例1で使用されるのと同じ手順によって調製し、29を得た。
【0225】
(実施例30)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−ブロモベンゼン30の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)ベンゼン29およびN−ブロモスクシンイミドを使用して、実施例2で使用されるのと同じ手順によって調製し、30を得た。
【0226】
(実施例31)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−フェニルベンゼン 31の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−ブロモベンゼン30およびフェニルボロン酸を使用して、実施例3で使用されるのと同じ手順によって調製し、31を得た。
【0227】
(実施例32)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−フェニルベンゼン32の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−フェニルベンゼン31を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、32を得た。
【0228】
(実施例33)
(色素33の合成)
この色素を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−3−イル)−4−フェニルベンゼン32および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0229】
(実施例34)
(1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−フェニルベンゼン34の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−ブロモベンゼン2およびフェニルボロン酸を使用して、実施例3で使用されるのと同じ手順によって調製し、34を得た。
【0230】
(実施例35)
(1,3−ジヒドロキシ−2−(トール−2−イル)−4−フェニルベンゼン35の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(トール−2−イル)−4−フェニルベンゼン34を使用して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製して、35を得た。
【0231】
(実施例36)
(色素36の合成)
この色素を、1,3−ジヒドロキシ−2−(トール−2−イル)−4−フェニルベンゼン35および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0232】
(実施例37)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)ベンゼン37の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシフェン−2−イルボロン酸および2−ブロモピリジンを使用して、実施例1で使用されるのと同じ手順によって調製し、37を得た。
【0233】
(実施例38)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−ブロモベンゼン38の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)ベンゼン37およびN−ブロモスクシンイミドを使用して、実施例2で使用されるのと同じ手順によって調製し、38を得た。
【0234】
(実施例39)
(1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−(ナフト−2−イル)ベンゼン39の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−ブロモベンゼン38およびナフト−2−イルボロン酸を使用して、実施例3で使用されるのと同じ手順によって調製し、39を得た。
【0235】
(実施例40)
(1,3−ジヒドロキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−(ナフト−2−イル)ベンゼン40の合成)
この化合物を、1,3−ジメトキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−(ナフト−2−イル)ベンゼン39を脱メチル化して、実施例4で使用されるのと同じ手順によって調製し、40を得た。
【0236】
(実施例41)
(色素41の合成)
この色素を、1,3−ジヒドロキシ−2−(ピリド−2−イル)−4−(ナフト−2−イル)ベンゼン40および2,5−ジクロロメリト酸無水物を使用して、実施例16で使用されるのと同じ手順によって調製した。
【0237】
(実施例42)
(色素の性質)
本発明のフルオレセイン色素のいくつかの特定の性質を、測定した(表1)。
【0238】
【表1】

【0239】
表1.色素の性質
a色素の酸形態の発光最大
b半波高全幅値
c5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)との比較
各個々の刊行物または特許出願が、特異的および個々に参考として援用されると示される場合と同程度まで、全刊行物および特許出願は、本明細書中において参考として援用される。
【0240】
特定の実施形態が上に詳細に記載されるが、当業者は、多くの改変がその技術から逸脱することなく好ましい実施形態において可能であることを明瞭に理解する。このような改変の全ては、以下の発明の詳細な説明内に含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】図1は、化合物1〜5の構造を示す。
【図2】図2は、化合物6〜12の構造を示す。
【図3】図3は、化合物13および14の構造を示す。
【図4】図4は、化合物15および16の構造を示す。
【図5】図5は、化合物17〜22の構造を示す。
【図6】図6は、化合物23〜25の構造を示す。
【図7】図7は、化合物26〜28の構造を示す。
【図8】図8は、化合物29〜33の構造を示す。
【図9】図9は、化合物34〜36の構造を示す。
【図10】図10は、化合物37〜41の構造を示す。
【図11】図11は、電子欠乏窒素複素環の代表的な収集を示す。
【図12】図12は、化合物19の蛍光定量走査を示す;1X TBE中、室温で、励起最大値530nm、発光最大値554nm。
【図13】図13は、化合物22の蛍光定量走査を示す;1X TBE中、室温で、励起最大値531.5nm、発光最大値556nm。
【図14】図14は、化合物25の蛍光定量走査を示す;1X TBE中、室温で、発光最大値562.5nm。
【図15】図15は、化合物33の蛍光定量走査を示す;1X TBE中、室温で、励起最大値545.5nm、発光最大値571.5nm。
【図16】図16は、ABI PRISM 310由来の標識化連鎖フラグメントの蛍光検出を示す。pGEM標的のG末端配列からの塩基183〜塩基 176の領域、−21M13前方プライマーを使用。試薬:POP6電気泳動培地、Taq FSポリメラーゼ、dNTP混合物 各25pmolのdATP、dCTP、dITP、dTTP。トップパネル:dNTP混合物およびターミネーター3’FddGTP−EO−13。ボトムパネル:dNTP混合物およびエ ネルギー移動色素ターミネーター3’FddGTP−EO−6FAM−Bn−dR110。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−277565(P2007−277565A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124005(P2007−124005)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【分割の表示】特願2005−255770(P2005−255770)の分割
【原出願日】平成13年2月5日(2001.2.5)
【出願人】(500069057)アプレラ コーポレイション (120)
【住所又は居所原語表記】850 Lincoln Centre Drive Foster City CALIFORNIA 94404 U.S.A.
【Fターム(参考)】