説明

電子筆記装置

【課題】装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つ。
【解決手段】磁界を生成して送信する電子ペン2と、電子ペン2の磁界を受信してX座標位置を検出する複数のXセンスコイルX1〜X17と、他の部分と比べてコイル断面形状が異なる大幅部120を備え、電子ペン2の磁界を受信してY座標位置を検出する複数のYセンスコイルY1〜Y9とを有し、Xセンスコイル1〜X17の受信結果から電子ペン2のX座標位置を取得し、YセンスコイルY1〜Y9の受信結果から電子ペン2のY座標位置を取得し、X座標位置を用いて、電子ペン2が大幅部120に位置しているか否かを判定し、電子ペン2が大幅部120に位置している場合と位置していない場合とで、ステップSS30におけるY座標位置取得のための演算態様を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の手書きによる筆記内容に対応したデータを入力可能な電子筆記装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者の手書きによる筆記内容に対応したデータを入力可能な電子筆記装置が開発され、普及している。この電子筆記装置には、互いに直交するX方向とY方向のそれぞれに平行に配置されたループコイル群が設けられ、このループコイル群により電子筆記具の位置検出エリアが構成されている。電子筆記具は、電子筆記装置上の位置検出エリア内に置かれた際に、その先端から交番磁力線を発生させる。電子筆記装置は、電子筆記具が置かれている近傍の複数本のループコイルにおいて上記交番磁力線により発生した信号レベルを検出し、検出されたこれらの信号レベルの分布により、電子筆記具の位置情報であるXY座標値を求める。
【0003】
一方、電気回路を備えた基板において、回路配線の耐久性向上に配慮した従来技術として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この従来技術では、折り曲げ部において導体回路の配線が屈曲して断線するのを防ぐために、当該折り曲げ部と直交する部分だけ配線の線幅を太くし、これによって屈曲に対する耐久性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−353827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、略ノート形状の被筆記体を覆う1枚のシート体に、上記ループコイル群全体が収納されている電子筆記装置がある。このような電子筆記装置は、上記被筆記体のノート形状に対応して、シート体を折り曲げ部で折り曲げ可能とすることにより見開き可能に構成されている。
【0006】
上記のような、ノート形状の被筆記体、及び、これに対応した折曲げ可能なシート体を備える構成においては、筆記体及びシート体は、ユーザによって折り曲げ部において折り曲げられたり広げられたりを反復される。したがって、前述の電子筆記装置の一般的構成において、上記折り曲げられたり広げられたりの反復に耐えうる耐久性を得るために上記従来技術の構成を適用し、折り曲げ部におけるループコイルの幅を広くすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、この場合、以下の新たな課題が生じる。すなわち、一般に、ループコイルの特性として、配線幅を太くすると交番磁力線の検出感度が下がってしまう。したがって、上述したように一つのループコイルにおいて部分的に配線幅を異ならせると、局所的に検出感度が変化してしまい、電子筆記装置全体としての位置検出性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0008】
なお、上記のような繰り返し動作に対する耐久性の確保以外にも、単なる強度補強や配線の引き回しの便宜等の種々の観点から、上記のように一部のループコイルにおいて部分的に配線幅を太くしたり、逆に細くしたりする場合もあり得る。この場合も、上記同様に局所的に検出感度が変化するので、全体の位置検出性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、コイル断面形状が局所的に異なるループコイルを備える場合であっても、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つことができる電子筆記装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1の発明は、被筆記体を覆うように構成されたシート体と、前記シート体に設けられ、所定の第1方向に沿った第1延設部の長さが当該第1方向と直交する第2方向に沿った第2延設部の長さよりも短く構成され、前記被筆記体への筆記内容に対応したデータ入力を行うための位置検出用の筆記信号を生成して送信する電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信して主として前記第1方向における前記電子筆記具の位置検出を行う、複数の第1コイルと、前記シート体に設けられ、前記第2方向に沿った前記第2延設部の長さが前記第1方向に沿った前記第1延設部の長さよりも短く構成されるとともに、他の部分と比べてコイル断面形状が異なる異形コイル領域を備え、前記電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信して主として前記第2方向における前記電子筆記具の位置検出を行う、複数の第2コイルと、前記筆記信号の前記複数の第1コイルの受信結果に基づき前記電子筆記具の前記第1方向における第1位置情報を取得する第1位置取得手段と、前記筆記信号の前記複数の第2コイルの受信結果に基づき、前記電子筆記具の第2位置情報を取得する第2位置取得手段と、前記第1位置取得手段により取得された前記第1位置情報を用いて、前記電子筆記具が、前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、前記第2位置取得手段における前記第2位置情報取得のための演算態様を切り替える、演算制御手段と、を有することを特徴とする。
【0011】
本願第1発明の電子筆記装置は、シート体を備えている。ユーザが電子筆記具を用いて被筆記体へ筆記を行うと、電子筆記具から送信される筆記信号に基づき、当該筆記動作に対応した移動軌跡が検出される。すなわち、シート体には、第1方向に沿った第1延設部が第2方向に沿った第2延設部よりも短い、複数の第1コイルが設けられている。これら複数の第1コイルにおける電子筆記具からの筆記信号の受信結果に基づき、第1位置取得手段が電子筆記具の第1方向における第1位置情報を取得する。一方、シート体にはまた、第2方向に沿った第2延設部が第1方向に沿った第1延設部よりも短い、複数の第2コイルが設けられている。これら複数の第2コイルにおける電子筆記具からの筆記信号の受信結果に基づき、第2位置取得手段が電子筆記具の第2方向における第1位置情報を取得する。このようにして、第1位置取得手段及び第2位置取得手段により、電子筆記具の第1位置情報及び第2位置情報が取得される。この結果、電子筆記具の筆記動作に対応した移動軌跡が検出されるので、筆記動作に対応した文字列等を電子筆記装置内に電子的に記録することが可能となる。
【0012】
ここで、上記のようにシート体内においてコイルが配置されるとき、耐久性向上や強度補強への配慮、あるいは配線の引き回し等の便宜等の状況により、第2コイルの一部が、他の部分とコイル断面形状が異なる異形コイル領域となる場合がある。一般に、コイルの幅が異なると、電波信号に対する感度が変化する。したがって、電子筆記具の位置検出信号が異形コイル領域で受信されるときの感度と異形コイル領域以外で受信される場合とでは、上記感度が異なることとなる。この結果、そのままでは、電子筆記具が異形コイル領域近傍に位置するときの位置検出精度と異形コイル領域から離れた位置にあるときの位置検出精度とに違いが生じ、装置全体としての位置検出性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0013】
そこで、本願第1発明では、判定手段と演算制御手段とが設けられている。判定手段は、第1位置取得手段が取得した第1位置情報を用い、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているか否かを判定する。そして、この判定が満たされた場合、演算制御手段が、第2位置取得手段における演算態様を、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していない場合の態様とは別の態様に、切り替える。これにより、電子筆記具が異形コイル領域の近傍に位置している場合に、上記異形コイル領域の第2コイルが他の部分よりも感度が変化するのを補正するような態様で演算を行うことができる。この結果、電子筆記具が異形コイル領域近傍に位置するときの位置検出精度と異形コイル領域から離れた位置にあるときの位置検出精度とに違いが生じないようにし、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つことができる。
【0014】
第2発明は、上記第1発明において、前記シート体は、前記第1方向の中央部に位置し前記第2方向に沿った折り曲げ中心線を有する折り曲げ部を備え、かつ、略ノート形状の前記被筆記体を覆うように前記第1方向に見開き可能な形状に構成されており、前記異形コイル領域は、前記折曲げ中心線の近傍に位置しており、前記第2コイルの前記第1延設部は、前記折曲げ中心線に略直交して配置されており、かつ、当該第1延設部は、前記異形コイル領域外に位置する小幅部と、前記異形コイル領域内に位置し前記小幅部よりもコイル幅が大きい大幅部と、を備えていることを特徴とする。
【0015】
本願第2発明においては、筆記体が略ノート形状に構成されており、シート体は、その筆記体を覆うような形状となっている。このシート体は、第2方向に沿った折曲げ中心線の折り曲げ部を有し、この折り曲げ部によって第1方向への見開き可能に構成されている。そして、このようなシート体において、第2コイルは、第1延設部が折曲げ中心線に略直交するように配置されている。この場合、筆記体及びシート体は、ユーザによって、折り曲げ部の折曲げ中心線に沿って折り曲げられたり広げられたりを反復される。
【0016】
これに対応して、本願第2発明では、折曲げ中心線の近傍が異形コイル領域となっており、この異形コイル領域内の第2コイルは、他の領域に位置する小幅部よりもコイル幅が大きい、大幅部となっている。この結果、上記のようにして折曲げられたり広げられたりが繰り返されても、十分な耐久性を得ることができる。そして、前述のようにして演算態様を切り替えることにより、そのような異形コイル領域の近傍の所定領域に電子筆記具が位置するときの位置検出精度を、電子筆記具が異形コイル領域から離れた位置にあるときの位置検出精度と、差が出ないようにすることができる。すなわち、本願第3発明においては、見開き形状によってユーザにより反復される折曲げ・広げ動作への耐久性を確保しつつ、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つことができる。
【0017】
第3発明は、上記第2発明において、前記第2コイルの前記第1延設部は、前記小幅部と前記大幅部との間を接続するように設けられ、前記小幅部側から前記大幅部側へ向かって拡幅形状の接続部を備えており、前記判定手段は、前記第1位置取得手段により取得された前記第1位置情報を用いて、前記電子筆記具が、前記接続部の近傍の所定領域に位置しているか否かを判定可能であり、前記演算制御手段は、前記判定手段により前記電子筆記具が前記接続部の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合の演算態様による演算結果と、前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合の演算態様による演算結果との、加重平均を算出して用いるように、前記第2位置取得手段における前記第2位置情報取得のための演算態様を制御することを特徴とする。
【0018】
前述のように、第2コイルの第1延設部は、小幅部と大幅部とを備えている。これら小幅部と大幅部との境界近傍では、前記電子筆記具の磁界が前記小幅部と前記大幅部との両方を交差し影響を受ける。これに対応して、本願第4発明においては、小幅部と大幅部との間を、それら小幅部及び大幅部の幅の差を考慮した接続部によって接続する。すなわち、接続部は、小幅部側から大幅部側へと拡幅形状になっていることにより、それら小幅部と大幅部との間を、滑らかに連続的に接続することができる。
【0019】
そして、このような小幅部と大幅部との間に位置する接続部が電子筆記具から筆記信号を受信したときの感度特性は、当該接続部が上記のような影響を受ける範囲に位置していることから、比較的感度の高い小幅部と、比較的感度が低い大幅部との中間的な特性となる。また、その中間的な特性の接続部において、大幅部に近くなるほど大幅部と同様に感度が低くなり、小幅部に近くなるほど小幅部と同様に感度が高くなる。本願第3発明はこれに対応して、演算制御手段の制御に基づき、第2位置取得手段は、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているときの演算結果と、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないときの演算結果との、加重平均を算出して最終的な演算結果として用いる。これにより、電子筆記具が接続部の近傍に位置するときの位置検出精度についても、異形コイル領域近傍や異形コイル領域から離れた位置にあるときの位置検出精度と違いが生じないようにし、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を確実に良好に保つことができる。
【0020】
第4発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記複数の第2コイルを介して検出された電圧値と前記第2位置情報との相関を複数種類記憶した相関記憶手段を有し、前記演算制御手段は、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、互いに異なる種類の前記相関を用いて前記第2位置情報を取得するように、前記第2位置取得手段の演算態様を制御することを特徴とする。
【0021】
本願第4発明においては、予め、相関記憶手段が、第2コイルで検出された電圧値と第2位置情報との相関を、複数種類記憶している。そして、第2位置取得手段は、第2コイルが電子筆記具からの筆記信号を受信したとき、その受信時の電圧に対し上記相関を適用して、対応する第2位置情報を取得する。その際、演算制御手段の制御に基づき、第2位置取得手段は、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているときに参照する相関の種類と、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないときに参照する相関の種類とを、切り替える。これにより、電子筆記具が異形コイル領域の近傍に位置している場合における感度の変化を補正する態様での演算を、確実に行うことができる。
【0022】
第5発明は、上記第1乃至第4発明のいずれかにおいて、前記相関は、前記複数の第2コイルそれぞれごとに求められた、前記電圧値と前記第2位置情報との相関を表す複数の特性曲線を含み、前記演算制御手段は、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記複数の第2コイルに係わる複数の特性曲線のうち前記筆記信号の受信により最大電圧を得た1つの第2コイルに係わる特性曲線を異なる特性曲線に置き換えるとともに、当該1つの第2コイルの前記第2方向両側にそれぞれ隣接する2つの第2コイルに係わる特性曲線を異なる特性曲線に置き換え、それら置き換えられた特性曲線を用いて前記第2位置情報を取得するように、前記第2位置取得手段の演算態様を制御することを特徴とする。
【0023】
本願第5発明においては、相関記憶手段が記憶した相関は、複数の第2コイルそれぞれごとの特性曲線を含んでいる。第2位置取得手段は、第2コイルでの筆記信号の受信時の電圧に対し、各コイルごとに上記特性曲線を適用して、対応する第2位置情報を取得することができる。その際、電子筆記具の最も近くに位置する第2コイルで得られる電圧が最も大きく、電子筆記具から離れた第2コイルほど得られる電圧が小さくなる。また、正確な位置検出を行うためには、最大電圧を得られる第2コイルに加え、少なくともその両側の2つの第2コイルに係わる特性曲線も、異なる特性曲線に置き換える必要がある。そこで本願第6発明では、演算制御手段の制御に基づき、第2位置取得手段は、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているとき、最大電圧を得た1つの第2コイル及びその両側の2つの第2コイル、合計3つのコイルに係わる特性曲線を異なる特性曲線に置き換えて、第2位置情報を取得する。これにより、前述した感度の変化を補正する態様での演算を少ない演算量でさらに確実に行うことができる。
【0024】
第6発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記第2コイルを介して検出された電圧値と前記第2位置情報との相関を記憶した相関記憶手段を有し、前記演算制御手段は、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合には前記相関を用いて演算を行い、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記相関を補正した補正後相関を用いて演算を行うように、前記第2位置取得手段における演算態様を切り替えることを特徴とする。
【0025】
本願第6発明においては、予め、相関記憶手段が、第2コイルで検出された電圧値と第2位置情報との相関を記憶している。そして、第2位置取得手段は、第2コイルが電子筆記具からの筆記信号を受信したとき、その受信時の電圧に対し上記相関を適用して、対応する第2位置情報を取得する。その際、演算制御手段の制御に基づき、第2位置取得手段は、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているときには、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないときに参照する相関を補正し、その補正した後の相関を適用して第2位置情報を取得する。これにより、電子筆記具が異形コイル領域の近傍に位置している場合における感度の変化を補正する態様での演算を、確実に行うことができる。
【0026】
第7発明は、上記第1乃至第3発明のいずれかにおいて、前記演算制御手段は、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、互いに異なる個数の第2コイルの受信結果を用いるように、前記第2位置取得手段における演算態様を切り替えることを特徴とする。
【0027】
複数の第2コイルにおいて電子筆記具からの筆記信号が受信される際には、前述したように電子筆記具の最も近くに位置する第2コイルで得られる電圧が最も大きく、電子筆記具から離れた第2コイルほど得られる電圧が小さくなる。したがって、各第2コイルの位置によって検出結果が位置検出精度に及ぼす影響がそれぞれ異なる。本願第7発明においては、第2位置取得手段は、複数の第2コイルが電子筆記具からの筆記信号を受信したとき、その受信結果に基づいて対応する第2位置情報を取得する。その際、演算制御手段の制御に基づき、第2位置取得手段は、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているときと、電子筆記具が異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないときとで、第2位置情報を取得するために受信結果を用いる第2コイルの数を異なるようにする。これにより、電子筆記具が異形コイル領域の近傍に位置している場合には、そうではない場合に比べて受信結果を用いる第2コイルの数を増加させ、検出精度をより向上するように図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、コイル断面形状が局所的に異なるループコイルを備える場合であっても、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態の手書き入力装置の使用時の様子を表す、外観斜視図、概念的平面図、及び概念的側面図である。
【図2】手書き入力装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図3】コイルシートの内部構成を表す概念的平面図である。
【図4】見開き状態のコイルシートにおける大幅部の屈曲状態を示す図である。
【図5】小幅部と大幅部の間の境界部を示す図である。
【図6】コイル特性曲線と、そのセンスコイルとの位置関係を示す図である。
【図7】コイルシートを用いて電子ペンの座標を検出する原理を説明する説明図及びグラフである。
【図8】電子ペンの座標を検出する原理を説明するためのグラフ及びテーブルである。
【図9】センスコイルの線幅と検出感度との関係を説明する図である。
【図10】最大電圧を検出した1つのセンスコイルとその両隣のセンスコイルでコイル特性曲線を置き換える例を示す図である。
【図11】コイル特性曲線の置き換えについて説明する図である。
【図12】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図13】座標検出装置のCPUで行われる制御処理の内容を表すフローチャートである。
【図14】大幅部とそれ以外で受信結果を用いるYセンスコイルの数を異ならせる場合の例を示す図である。
【図15】Xセンスコイルの第1延設部に大幅部を設けた構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0031】
本実施形態の電子筆記装置である手書き入力装置1は、図1(a)に示すように、座標検出装置3とシート体10を有する。手書き入力装置1を用いる際は、使用者は、電子筆記具である電子ペン2を持つ。電子ペン2は、筆記具としての機能に加え、入力される位置情報、すなわち座標データの入力手段として機能する。
【0032】
図1(a)、図1(b)、及び図1(c)に示すように、座標検出装置3は、被筆記体であるノート30を略覆うように所定の方向(図1(b)中左右方向)に見開き可能な形状に構成されたシート体10を有している。なお、以下の説明においては、上記の見開き形状にシート体10が設置された状態(図1(b)の状態)を基準として、見開き可能な方向をX軸方向(図1(b)中の左側から右側へ向かう方向)とし、このX軸方向と直交する方向をY軸方向(図1(b)中の上側から下側へ向かう方向)として、X−Y座標系を定義する。なお、X軸方向が各請求項記載の第1方向に相当し、Y軸方向が各請求項記載の第2方向に相当する。
【0033】
シート体10は、上記X軸方向の中央部で上記Y軸方向に沿った配置の折り曲げ部10Tを備えている。シート体10は、この折り曲げ部10Tを挟んで一方側(図1(b)中左側)に位置する左側シート部10Lと、他方側(図1(b)中右側)に位置する右側シート部10Rとに区分けされている。シート体10の内部には、当該シート体10とほぼ同じ大きさの1枚のコイルシート100が収納されている。折り曲げ部10Tは、使用者により折り曲げ可能な部分である。図1(b)に示すように、コイルシート100にも折り曲げ部10Tと重なる位置、つまりX軸方向の中央部に、Y軸方向に沿って折り曲げ可能な折り曲げ中心線Tを有している。
【0034】
そして、略ノート形状の被筆記体である上記X軸方向に見開き可能な形状のノート30が、上記シート体10に重なるように配置されている。なお、上記左側シート部10L及び右側シート部10Rに、図1(a)に示すようなノート保持部11をそれぞれ設けてもよい。これにより、座標検出装置3を容易かつ確実にノート30と一体化することができ、使用者による取り扱い性を向上することができる。
【0035】
使用者は、電子ペン2を用いてノート30の左筆記面31Lや右筆記面31Rに手書きの所望の文字列等を筆記する。この筆記動作に対応した電子ペン2の移動により、筆記された文字列等に対応したストロークデータが電子ファイルに保存される。その際、電子ペン2に備えられたインクを用いて、ノート30の左筆記面31Lや右筆記面31Rにおいても実際の筆記が行われる。
【0036】
使用者が手書き入力装置1を使用する際には、電子ペン2に備えられた図示しない電源スイッチがオンされる。電子ペン2は、筆記面31への筆記内容に対応したデータ入力を行うための、位置検出用の筆記信号として、この例では所定の周波数の交番磁界を発生して送信する。この電子ペン2は、図2に示すように、先端スイッチ42と、LC発振回路41と、電池43とを有する。
【0037】
先端スイッチ42は、使用者が、電子ペン2を用いて、文字等を筆記するために電子ペン2の先端2aを筆記面31に押しつけたときにオンとなり、LC発振回路41に対して指令信号S0を出力する。一方、先端スイッチ42は、使用者が、文字等の筆記を止め、電子ペン2の先端2aを筆記面31から離したときにオフとなる。この場合には、上記指令信号S0は出力されない。
【0038】
LC発振回路41は、先端スイッチ42から上記指令信号S0が入力されることによって、上記所定の周波数の交番磁界(以下適宜、単に「磁界」と称する)を発生する回路である。このLC発振回路41は、図示しないコンデンサ及びコイルを含む。
【0039】
電池43は、電子ペン2の先端スイッチ42がオンにされることで、LC発振回路41に電力を供給する。
【0040】
座標検出装置3は、図2に示すように、上記コイルシート100と、マイコン80と、マルチプレクサ62(以下適宜、「MUX62」と称する)と、増幅回路64と、整流回路66と、フラッシュメモリ72と、通信インターフェース74と、電池21とを有する。
【0041】
コイルシート100は、X軸方向とY軸方向のそれぞれに対して複数のセンスコイルを配置している(後述の図3参照)。各センスコイルは、上記電子ペン2が発生する磁界を受信可能なループコイルであり、電子ペン2との相対位置に応じた電圧レベルの信号S1を出力する。
【0042】
マイコン80は、CPU80aと、ROM80bと、RAM80cと、その他のA/D変換機能部や割り込み機能部等とを、一つの集積回路として構成している。マイコン80は、座標検出装置3で実行される各種の処理を制御する。
【0043】
MUX62は、マイコン80からのコイル選択信号S3に基づき、上記コイルシート100に備えられた複数のセンスコイルのうちの一つを順番に選択する。そして、MUX62は、選択されたセンスコイルにおいて、電子ペン2のLC発振回路41から発生される磁界との磁気誘導によって発生した上記信号S1を入力し、対応する信号S11を増幅回路64へ出力する。なお、電子ペン2から発生された磁界と磁気誘導を行うことが、実質的には、磁界を受信することに相当する。
【0044】
増幅回路64は、MUX62から入力される信号S11を増幅する。増幅回路64で増幅された信号S13は、整流回路66に入力される。
【0045】
整流回路66は、増幅回路64から入力された信号S13を振幅検波した後、平滑化して直流信号に変換する。整流回路66で振幅検波された信号S14は、マイコン80に入力される。
【0046】
マイコン80は、前述したようにA/D変換機能を備えており、上記入力された振幅検波後の信号S14をデジタル信号に変換する。このとき、マイコン80の上記ROM80bには、後述の位置座標テーブルが記憶されている。すなわち、ROM80bは各請求項記載の相関記憶手段に相当している。マイコン80は、上記デジタル信号に対し、位置座標テーブルを適用することにより、電子ペン2の座標データ、すなわち、第1位置情報であるX軸方向のX座標と、第2位置情報であるY軸方向のY座標を算出する。なお、算出された座標データはフラッシュメモリ72に記憶される。この座標データの算出手法の詳細は、後述する。
【0047】
フラッシュメモリ72には、電子ファイルが予め用意されており、マイコン80で算出された座標データ等が、上記電子ファイルに書き込まれ、保存される。
【0048】
電池21は、座標検出装置3に備えられた図示しない電源スイッチがオンにされることで、マイコン80等に電力を供給する。
【0049】
<コイルシートの構成>
ここで、コイルシート100の構成について詳しく説明する。上記コイルシート100は、全体が長方形の薄板状に形成された樹脂シートである。上述したように、コイルシート100の表面には、図3に示す配置で複数のセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9が設けられている(符号図示を一部省略)。これらセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9は、例えば表面に絶縁被膜層が形成された銅線によって形成されている。
【0050】
センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9は、配設方向の違いにより、第1コイルとしてのXセンスコイルX1〜X17と、第2コイルとしてのYセンスコイルY1〜Y9の2種類に大別される。XセンスコイルX1〜X17では、X軸方向に沿った第1延設部Xaの長さL1が、Y軸方向に沿った第2延設部Xbの長さL2よりも短く構成されている。このXセンスコイルX1〜X17は、電子ペン2から送信された磁界を受信して、主としてX軸方向における電子ペン2の位置検出を行う。YセンスコイルY1〜Y9では、Y軸方向に沿った第2延設部Ybの長さL3が、X軸方向に沿った第1延設部Yaの長さL4よりも短く構成されている。このYセンスコイルY1〜Y9は、電子ペン2から送信された磁界を受信して、主としてY軸方向における電子ペン2の位置検出を行う。なお、図示する例では、XセンスコイルX1〜X17の第1延設部XaとYセンスコイルY1〜Y9の第2延設部Ybとは、それぞれX軸方向とY軸方向に沿って途中で屈曲する形状に形成されている。これにより、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9は、全体が長い略六角形状に形成されている。
【0051】
図示する例では、17個のXセンスコイルX1〜X17がX軸方向に並設されており、9個のYセンスコイルY1〜Y9がY軸方向に並設されている。各XセンスコイルX1〜X17は、X軸方向で隣接する他のXセンスコイルX1〜X17と、その第1延設部Xaの長さL1より短い一定のピッチ間隔(後に詳述する)でそれぞれ重ねられるよう、配列されている。各YセンスコイルY1〜Y9は、Y軸方向で隣接する他のYセンスコイルY1〜Y9と、その第2延設部Ybの長さL3より短い一定のピッチ間隔(後に詳述する)でそれぞれ重ねられるよう、配列されている。
【0052】
各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9は、個別に接続された信号細線101と、共通バス110に接続された信号細線102とを介して上記MUX62に信号S1を出力可能となっている(上記図2参照)。なお、図3に示す例では、図示の煩雑を避けるために、YセンスコイルY1〜Y9に接続する信号細線101,102だけを図示し、XセンスコイルX1〜X17に接続する信号細線は省略している。
【0053】
<大幅部>
本実施形態においては、見開き形状の1枚のコイルシート100の全領域において位置検出を行えるように、コイルシート100の折曲げ中心線T付近にもYセンスコイルが配置されている。そして、YセンスコイルY1〜Y9の配線のうち、コイルシート100の折り曲げ中心線Tと直交して重なる配線部分には、他の配線部分よりもコイル幅が大きい、異形コイル領域としての大幅部120が形成されている。これにより、図4に示すように、コイルシート100が折り曲げ中心線Tに沿って折り曲げられたり広げられたりを繰り返されても、YセンスコイルY1〜Y9は上記大幅部120において十分な屈曲耐性を得て断線を防ぐができる。なお、図4中にはコイルシート100のみを示し、他のシート体10、ノート30、及び保持部11の図示は省略している。
【0054】
また、図5に示すように、上記大幅部120の両端と、他の配線部分である小幅部130との間においては、小幅部130側から大幅部120側へ連続的に幅が拡大するよう形成されている。つまり、小幅部130側から大幅部120側へ向かって拡幅形状に形成された境界部140が備えられている。この境界部140は、各請求項記載の接続部に相当する。なお、図中の距離A,B,Cについては後述する。
【0055】
<座標データ算出方法>
次に、本実施形態において各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の検出結果に基づき座標データを算出する方法を、以下、順を追って詳細に説明する。
【0056】
まず、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9における検出電圧の変化特性について説明する。上述したように全体が長い六角形状に形成されたセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9に対し、その幅方向に沿って電子ペン2を移動させた場合には、図6(a)に示すように上記信号S1としての検出電圧eが変化する。この検出電圧eは、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の幅方向の中心位置で最大となり、その中心位置から離間するにしたがって急速に減少する。ただし、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の配線上に電子ペン2が位置した際には磁気誘導が作用しない。この結果、対応する位置は、局所的に検出電圧eが0となるヌル点Nとなる。そしてそのヌル点Nから外側、つまりセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の外側では、比較的弱い検出電圧eが発生し、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9から離間するにしたがって緩やかに上昇した後、緩やかに減少する。
【0057】
なお、特に図示しないが、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の内側においてその長手方向に沿って電子ペン2を移動させた場合には、その時の幅方向位置に対応する検出電圧eを維持するだけとなる。図6(b)は、特に電子ペン2が大幅部120を通過するよう移動した場合を示しているが、これについては後に詳述する。このようにして得られる検出電圧を利用して、以下のように座標データを算出する。
【0058】
<位置座標テーブル>
前述したように、座標データの算出には、マイコン80のROM80bに記憶された位置座標テーブルを用いる。この位置座標テーブルについて、図7(a)、図7(b)、図7(c)、図8(a)、及び図8(b)を参照して説明する。なお、図示する例では、XセンスコイルX1〜X17の検出結果からX軸方向に沿ったX座標データを算出する場合の例を示している。また、図7(a)では、各XセンスコイルX1〜X17の配置を分かり易くするために、各XセンスコイルX1〜X17をそれぞれ略矩形形状で示し、またそれぞれの下辺をずらした配置で図示している。
【0059】
図7(a)において、3つのXセンスコイルX1〜X3の中心線をそれぞれC1,C2,C3とする。これらXセンスコイルX1〜X3にそれぞれ発生する電圧値ex1,ex2,ex3は、図7(b)に示すように、各XセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3においてそれぞれ最大になる。このとき、各XセンスコイルX1〜X3は、自己のヌル点Nが隣接するセンスコイルX1〜X3の中心の外側となるように設定されたピッチ間隔Pで、X軸方向に重なるよう配列されている。つまり、仮にXセンスコイルX1〜X17の幅L1が50mmであるとすれば、ピッチ間隔Pは50mm/2である25mm未満となる。
【0060】
このとき、図7(c)に示すように、相互に隣接するXセンスコイル間の電圧差は、XセンスコイルX1〜X3の中心C1〜C3上においてそれぞれ最大値となる。また、当該電圧差は、相互に隣接するXセンスコイルX1〜X3のそれぞれの中心の間の中間点において最小値となる。例えば、図7(c)において、(ex1−ex2)のグラフの右半分つまり実線で示す部分は、XセンスコイルX1の中心C1から、XセンスコイルX1とXセンスコイルX2のそれぞれの中心間の中間点Q1までの範囲、すなわち重ねピッチ間隔Pの2分の1の距離範囲Mにおける、(ex1−ex2)の挙動を示している。
【0061】
仮に電子ペン2が中心C1と中間点Q1の間の位置Q2に存在したとすると、その位置に対応する(ex1−ex2)を検出すれば、中心C1から位置Q2までの距離△Xを検出でき、その結果位置Q2のX座標が求められる。したがって、例えば、図7(c)における上記(ex1−ex2)の特性を示す実線部分を8bitのデジタルデータに変換すると、図8(a)に示すグラフが得られる。なお、この図8(a)に示すグラフは、単なる直線的な変化を示すグラフではなく、上記図6に示したような緩急のある電圧値の増減変化を反映したグラフである。そして、このグラフをテーブル形式に変換することにより、図8(b)に示す位置座標テーブルが得られる。
【0062】
<コイル電圧値を用いた座標決定>
前述したように、電子ペン2から発生された磁界とセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9との磁気誘導によって発生した信号S1は、増幅回路64で増幅され、整流回路66で振幅検波され、信号S14(図2参照)となってマイコン80に入力される。マイコン80は、入力された信号S14を、振幅つまり電圧値に対応したデジタル信号に変換する。CPU80aは、このデジタル信号の表す電圧値を用いて、前述の位置座標テーブルを用いて電子ペン2の座標を決定する。以下、XセンスコイルX1〜X17を例にとって上記座標決定の詳細手順の一例を説明する。
【0063】
まず、CPU80aは、上記信号S14から変換されたデジタル信号によって示される電圧値e1〜e17を、XセンスコイルX1〜X17のコイル番号と対応付けて、RAM80cの電圧値記憶エリアに順次記憶する。
【0064】
その後、CPU80aは、XセンスコイルX1〜X17のコイル番号に対応付けて、電圧値記憶エリアに記憶されている電圧値e1〜e17の中で最大の電圧値emaxを選択する。そして、CPU80aは、電圧値emaxを発生したXセンスコイルX1〜X17のコイル番号XmaxをRAM80cに記憶する。なお、コイル番号は1から始まる整数であって、X−Y座標の原点Oに近い側のセンスコイルから順に対応して割り当てられる番号である。
【0065】
次に、CPU80aは、電圧値emaxを発生したXセンスコイルX1〜X17の両隣のXセンスコイルの電圧値e1〜e17のうちいずれか大きい方を決定する。そして、CPU80aは、決定された電圧値e1〜e17を発生したXセンスコイルX1〜X17のコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。例えば、図7(b)に示すように、電圧値emaxがXセンスコイルX2によって発生されていた場合、CPU80aは、その両隣のXセンスコイルX1の電圧値e1及びXセンスコイルX3の電圧値e3を比較し、大きい方の電圧値e1又は電圧値e3を決定する。そして、CPU80aは、大きい方に決定された電圧値を発生したXセンスコイルのコイル番号を、コイル番号Xmax2としてRAM80cに記憶する。なお、図7(b)に示す例では、XセンスコイルX3のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶される。
【0066】
その後、CPU80aは、RAM80cに記憶されたコイル番号Xmax及びコイル番号Xmax2を比較して、コイル番号Xmax2はコイル番号XmaxからX軸の+方向又は−方向のどちらに存在しているかを判定する。なお、X軸の+方向とは、図1(b)及び図3中において右側へ向かう方向であり、X軸の−方向とはその逆の方向である。判定の結果、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して+方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、コイル番号Xmax2がコイル番号Xmaxに対して−方向である場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。例えば、電圧値emaxがXセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてXセンスコイルX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、XセンスコイルX3のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを1に設定する。一方、電圧値emaxがXセンスコイルX2で発生され、コイル番号XmaxとしてXセンスコイルX2を示すコイル番号がRAM80cに記憶され、XセンスコイルX1のコイル番号がコイル番号Xmax2として記憶されていた場合、CPU80aは、変数SIDEを−1に設定する。
【0067】
そして、変数SIDEを設定したCPU80aは、下記(式1)により、変数DIFFを算出する。
DIFF=(emax)−(emax2)・・・(式1)
CPU80aは、算出されたDIFFに最も近い位置座標を、予め求めた位置座標テーブル(図8(b)参照)から読み出す。そして、CPU80aは、位置座標テーブルから読み出した位置座標(図中のΔX)を、変数OFFSETとする。
【0068】
その後、CPU80aは、上記のようにして算出された変数SIDE及び変数OFFSETを用いて、下記(式2)により、電子ペン2のX軸方向の位置を示すX座標を求める。
X=(L1/2)×max+OFFSET×SIDE・・・(式2)
ここで、(L1/2)×maxは、コイル番号maxの中心のX座標を示す。なお、このX座標の原点Oは、上記図3中に示したように最も左側に配置されているXコイルの左側の配線上に位置する。
【0069】
なお、以上は、X軸方向のXセンスコイルX1〜X17での磁気誘導に基づく信号S14による電子ペン2のX座標の算出を例に説明した。電子ペン2のY座標についても、Y軸方向のYセンスコイルY1〜Y9での磁気誘導に基づく信号S14により、同様の手法により算出される。
【0070】
以上説明したように、CPU80aは、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9での磁界の受信結果に基づき、上記した手法により電子ペン2の座標データ(X,Y)を算出する。
【0071】
<検出電圧に対する太幅部の影響>
ここで、図6に戻り、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9における検出電圧の変化特性について再度説明する。上記図6(a)では、電子ペン2が小幅部130を通過するよう移動した場合の検出電圧の変化を示した。これに対して、本実施形態のコイルシート100が備えるYセンスコイルY1〜Y9には、上述したように部分的にコイル幅が大きい大幅部120が形成されている。電子ペン2がこの大幅部120を通過するよう移動した場合には、図6(b)に示すような検出電圧の変化を示す。図6(a)と図6(b)とを比較して分かるように、電子ペン2が小幅部130を通過する場合よりも、大幅部120を通過する場合の方が全体的に検出電圧が低くなる。
【0072】
具体的には、図9に示すように、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の線幅が大きくなるほど、磁気誘導における検出電圧のピーク強度及び変化曲線の急峻度が下がる傾向となる。この結果、電子ペン2が通常の線幅の小幅部130を通過する場合には検出感度が高く、それと比較して線幅の大きい大幅部120を通過する場合には検出感度が低くなる。つまり、同一のYセンスコイルY1〜Y9であっても、電子ペン2が通過する部分における線幅も含めた断面形状が異なると検出感度も相違する。この結果、検出感度が異なる2つの部分に対して、それぞれ上述した座標データの算出手法をそのまま同じ態様で適用しても、それぞれの算出結果が相違してしまう。
【0073】
そこで、本実施形態の手書き入力装置1では、まず最初に大幅部120を有していないXセンスコイルX1〜X17で電子ペン2の位置のX座標を求める。そして、算出したX座標がYセンスコイルY1〜Y9における大幅部120の形成領域の近傍の所定領域にある場合とない場合とでY座標の演算態様を切り替える。本実施形態では、この具体的な演算態様の切り替えとして、センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の検出電圧の変化特性を示すコイル特性曲線の置き換えを行う。
【0074】
まず、上記図6(a)に示した小幅部130、及び、上記図6(b)に示した大幅部120、について、それぞれのコイルの特性曲線を、YセンスコイルY1〜Y9におけるY座標位置と検出電圧値の相関として、予めテーブル形式などでROM80bに記憶しておく。そして、大幅部120の形成領域の近傍の所定領域で位置検出する場合には、図10に示すように、最大の電圧値emax(図中のe2)を検出したコイル番号XmaxのYセンスコイルY2とその両側の2つのYセンスコイルY1,Y3の3つだけ、大幅部のコイル特性曲線ex2から小幅部のコイル特性曲線ex2′へ置き換えを行う。
【0075】
このコイル特性曲線の置き換えとは、具体的に、図11に示すように、大幅部120のコイル特性曲線と小幅部130のコイル特性曲線とを対応付けて検出電圧値の変換を行うことである。つまり、コイル特性曲線の置き換えとは、大幅部120で実際に検出した電圧値e2に対応して、小幅部130の場合にはどのような電圧値e2′が得られるかを、2つのコイル特性曲線の対応付けから求めることである。このようにして得た電圧値e2′を用いて、上記した手法により電子ペン2のY座標データを算出すれば、大幅部120における検出感度の変化を補正する形で良好な位置検出を行える。
【0076】
また、小幅部130と大幅部120の間の境界部140においては、また別に、上記大幅部コイル特性曲線と上記小幅部コイル特性曲線の両方を用いた加重平均算出処理により新たなコイル特性曲線を生成し、これを用いてY座標データを算出する。この加重平均算出処理については、後に詳述する。このような機能を実現するために、座標検出装置3のCPU80aで行われる制御処理の内容を、図12、図13により順を追って説明する。
【0077】
図12、図13において、この処理は、使用者が座標検出装置3の電源をオンした場合に開始される。まず、図12に示すように、CPU80aは、ステップSS5で、MUX62に選択信号S3を順次送信して、電子ペン2から発生する磁界を各XセンスコイルX1〜X17と各YセンスコイルY1〜Y9とで受信する。
【0078】
そして、ステップSS10に移り、CPU80aは、上記ステップSS5で各XセンスコイルX1〜X17が検出した電圧を用いて、上述した手法により電子ペン2のX座標データを算出する。
【0079】
その後、ステップSS15に移り、CPU80aは、上記ステップSS10で算出したX座標位置が、小幅部130と大幅部120との間の境界部140の範囲内であるか否かを判定する。X座標位置が境界部140の範囲内にある場合、判定が満たされ、ステップSS100へ移る。
【0080】
ステップSS100では、CPU80aは、上記大幅部コイル特性曲線と上記小幅部コイル特性曲線との両方を用いて、境界部140の範囲内にあるX座標位置に適したコイル特性曲線を新たに生成して置き換える加重平均算出処理を行う(後述の図13参照)。そして、ステップSS30へ移る。
【0081】
一方、上記ステップSS15の判定において、X座標位置が境界部140の範囲外にある場合、判定は満たされず、ステップSS20へ移る。
【0082】
ステップSS20では、CPU80aは、上記ステップSS10で算出したX座標位置が、大幅部120の範囲内であるか否かを判定する。X座標位置が大幅部120の範囲内にある場合、判定が満たされ、ステップSS25へ移る。
【0083】
ステップSS25では、CPU80aは、大幅部120用のコイル特性曲線から小幅部130用のコイル特性曲線への置き換えを行う。つまり、図11に示したような大幅部用コイル特性曲線と小幅部用コイル特性曲線との対応付けにより、上記ステップSS5でYセンスコイルY1〜Y9の大幅部120が実際に検出した電圧値を、小幅部130の場合に得られるべき電圧値に変換する。そして、ステップSS30へ移る。
【0084】
一方、上記ステップSS20の判定において、X座標位置が大幅部120の範囲外にある場合、判定は満たされず、ステップSS30へ移る。
【0085】
ステップSS30では、CPU80aは、その時点でのYセンスコイルY1〜Y9の検出電圧値を用いて、上述した手法により電子ペン2のY座標データを算出する。なお、ここで用いるYセンスコイルY1〜Y9の電圧値は、上記ステップSS100の加重平均算出処理におけるコイル特性曲線の置き換え(後述の図13中のステップSS120参照)で変換した電圧値か、上記ステップSS25におけるコイル特性曲線の置き換えで変換した電圧値か、YセンスコイルY1〜Y9から検出したままの電圧値のいずれかである。しかし、いずれの電圧値の場合でも、小幅部130で検出した電圧値と同等に扱うことができるので、上述した手法により電子ペン2のY座標データを正しく算出できる。そして、このフローを終了する。
【0086】
上記図12中のステップSS100においてCPU80aにより実行される加重平均算出処理を、図13を用いて説明する。
【0087】
まず、ステップS105において、CPU80aは、近接比率B/A、C/Aを算出する。ここで用いる距離A,B,Cは、上記図5中の拡大部に示している距離である。つまり、図示するように、距離Aは境界部140全体の長さであり、距離Bは境界部140の範囲内に電子ペン2が位置した際の当該電子ペン2から小幅部130までの長さであり、距離Cは電子ペン2から大幅部120までの長さである。
【0088】
その後、ステップSS110に移り、CPU80aは、大幅部用コイル特性曲線の全体にB/Aを乗じ、小幅部用コイル特性曲線の全体にC/Aを乗じてそれぞれコイル特性曲線を修正する。
【0089】
そして、ステップSS115へ移り、CPU80aは、上記ステップSS110で修正した2つのコイル特性曲線の全体を合算してコイル特性曲線を修正する。この新たに生成したコイル特性曲線は、この時点で電子ペン2が位置している境界部140範囲内の位置に対応したコイル特性曲線として適用できる。
【0090】
その後、ステップSS120へ移り、CPU80aは、上記ステップSS115で修正したコイル特性曲線から小幅部用の特性曲線コイルへの置き換えを行う。つまり、修正したコイル特性曲線と小幅部用コイル特性曲線との対応付けにより、上記ステップSS5でYセンスコイルY1〜Y9の境界部140が実際に検出した電圧値を、小幅部130の場合に得られるべき電圧値に変換する。そして、このフローを終了する。
【0091】
以上において、上記図12のフローにおけるステップSS10が、各請求項記載の第1位置取得手段として機能し、ステップSS30が、第2位置取得手段として機能する。また、ステップSS15及びステップSS20が、判定手段として機能し、ステップSS100及びステップSS25が、演算制御手段として機能する。
【0092】
以上説明したように、本実施形態では、折曲げ中心線の近傍が大幅部120となっており、この大幅部120におけるYセンスコイルY1〜Y9の配線は、他の部分に位置する小幅部130よりもコイル幅が大きい。この結果、上記のようにして折曲げられたり広げられたりが繰り返されても、十分な耐久性を得ることができる。そして、本実施形態においては、ステップSS20において、ステップSS10で取得したX座標位置を用い、電子ペン2が大幅部120に位置しているか否かを判定する。そして、この判定が満たされた場合、ステップSS25で、ステップSS30で実行される演算態様を、電子ペン2が大幅部120に位置していない場合の態様とは別の態様に、切り替える。これにより、電子ペン2が大幅部120に位置している場合には、上記大幅部120のYセンスコイルY1〜Y9が他の部分よりも感度が変化するのを補正するように演算を行うことができる。
【0093】
具体的には、本実施形態では、予め、ROM80bが、YセンスコイルY1〜Y9で検出された電圧値とY座標位置との相関を、複数種類記憶している。そして、ステップSS30においてYセンスコイルY1〜Y9が電子ペン2からの磁界を受信したとき、その受信時の電圧に対し上記相関を適用して、対応するY座標位置を取得する。その際、ステップSS25での制御に基づき、ステップSS30において、電子ペン2が大幅部120に位置しているときに参照する相関の種類と、電子ペン2が大幅部120の近傍の所定領域に位置していないときに参照する相関の種類とを、切り替える。これにより、電子ペン2が大幅部120に位置している場合における感度の変化の補正を、確実に行う。
【0094】
以上のようにして、本実施形態においては、電子ペン2が大幅部120に位置するときの位置検出精度と大幅部120から離れた位置にあるときの位置検出精度とに違いが生じないようにし、装置全体としての電子ペン2の位置検出性能を良好に保つことができる。すなわち、本実施形態においては、見開き形状によってユーザにより反復される折曲げや広げ動作への耐久性を確保しつつ、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を良好に保つことができる。
【0095】
また、上記実施形態では特に、ROM80bが記憶した相関は、複数のYセンスコイルY1〜Y9それぞれごとのコイル特性曲線を含んでいる。そして、ステップSS30においては、YセンスコイルY1〜Y9での磁界の受信時の電圧に対し、各コイルごとに上記コイル特性曲線を適用して、対応するY座標位置を取得する。その際、電子ペン2の最も近くに位置するYセンスコイルY1〜Y9で得られる電圧が最も大きく、電子ペン2から離れたYセンスコイルY1〜Y9ほど得られる電圧が小さくなる。また、正確な位置検出を行うためには、最大電圧を得られる1つのYセンスコイルに加え、少なくともその両側の2つのYセンスコイルに係わる大幅部120の特性曲線も、小幅部130の特性曲線に置き換える必要がある。そこで本実施形態では、ステップSS25における制御に基づき、ステップSS30で、電子ペン2が大幅部120に位置しているとき、最大電圧を得た1つのYセンスコイルY1〜Y9とその両側の、合計3つのYセンスコイルに係わるコイル特性曲線を異なるコイル特性曲線に置き換えて、Y座標位置を取得する。これにより、前述した感度の変化を補正する態様での演算を少ない演算量でさらに確実に行うことができる。
【0096】
なお、複数のYセンスコイルY1〜Y9において電子ペン2からの磁界が受信される際には、前述したように電子ペン2の最も近くに位置するYセンスコイルY1〜Y9で得られる電圧が最も大きく、電子ペン2から離れたYセンスコイルY1〜Y9ほど得られる電圧が小さくなる。したがって、各YセンスコイルY1〜Y9の位置によって検出結果が位置検出精度に及ぼす影響がそれぞれ異なる。前述したように、ステップSS30において、複数のYセンスコイルY1〜Y9が電子ペン2からの磁界を受信したとき、その受信結果に基づいて対応するY座標位置が取得される。その際、ステップSS25の制御に基づき、ステップSS30は、電子ペン2が大幅部120に位置しているときと、電子ペン2が大幅部120に位置していないときとで、Y座標位置を取得するために受信結果を用いるYセンスコイルY1〜Y9の数を異なるようにしてもよい。すなわち、電子ペン2が大幅部120に位置している場合には、例えば図14(b)に示すように、そうではない場合(図14(a)参照)に比べ、受信結果を用いるYセンスコイルY1〜Y9の数を増加させる。これにより、検出精度をより向上することができる。
【0097】
また、この実施形態では特に、小幅部130と大幅部120との間を、それら小幅部130及び大幅部120の幅の差を考慮した境界部140によって接続する。すなわち、境界部140は、小幅部130側から大幅部120側へと拡幅形状になっていることにより、それら小幅部130と大幅部120との間を、滑らかに連続的に接続することができる。
【0098】
そして、このような小幅部130と大幅部120との間に位置する境界部140が電子ペン2から磁界を受信したときの感度特性は、比較的感度の高い小幅部130と、比較的感度が低い大幅部120との中間的な特性となる。また、その中間的な特性の境界部140において、大幅部120に近くなるほど大幅部120と同様に感度が低くなり、小幅部130に近くなるほど小幅部130と同様に感度が高くなる。本実施形態はこれに対応して、ステップSS100の制御に基づき、ステップSS30において、電子ペン2が大幅部120に位置しているときの相関と、電子ペン2が大幅部120に位置していないときの相関との、加重平均を算出して最終的な相関として用いる。これにより、電子ペン2が境界部140の近傍に位置するときの位置検出精度についても、大幅部120近傍や大幅部120から離れた位置にあるときの位置検出精度と違いが生じないようにし、装置全体としての電子筆記具の位置検出性能を確実に良好に保つことができる。
【0099】
なお、本発明は上記実施形態に限られず、趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0100】
例えば、上記実施形態では、演算態様の切り換えとして、上述したYセンスコイルY1〜Y9における検出電圧値とY座標位置の相関を示すコイル特性曲線の置き換えを行った。しかし、本発明はこれに限られず、例えば先に説明した位置座標テーブルの切り換えを行ってもよい。この場合には、小幅部130用の位置座標テーブルと大幅部120用の位置座標テーブルを予めそれぞれ作成してROM80bに記憶させておく(特に図示せず)。そして、X座標位置を検出した際に、小幅部130の範囲内にある場合と大幅部120の範囲内にある場合とで、それぞれ対応する位置座標テーブルを切り換えて用いればよい。この場合、YセンスコイルY1〜Y9から検出した電圧をそのまま利用してすぐにY座標位置を算出することができる。
【0101】
また、上記のようなコイル特性曲線の置き換えやテーブルの切り替えだけにも限られない。例えば、ROM80bに記憶されている電圧値とY座標位置との相関としてのコイル特性曲線に対し、必要に応じた補正を行った後、その補正後の特性曲線を適用してもよい。具体的には、ステップSS30において、YセンスコイルY1〜Y9が電子ペン2からの磁界を受信したとき、その受信時の電圧に対し上記相関を適用して、対応するY座標位置を取得する。その際、ステップSS25での制御に基づき、ステップSS30において、電子ペン2が大幅部120に位置しているときには、電子ペン2が大幅部120に位置していないときに参照する相関を補正し、その補正した後の相関を適用してY座標位置を取得する。これにより、電子ペン2が大幅部120に位置している場合における感度の変化を補正する態様での演算を、確実に行うことができる。なお、この補正としては、例えば所定の倍率でコイル特性曲線全体を拡大又は縮小する補正などがある。
【0102】
また、上記実施形態では、大幅部120をYセンスコイルY1〜Y9の第1延設部Yaのみに設けていたが、本発明はこれに限られない。例えば、図15に示すように、折り曲げ中心線Tと重なるXセンスコイルY1〜Y9の第1延設部Yaにも大幅部120Aを設けてもよい。この場合、電子ペン2が大幅部120に位置しているときには、ステップSS30によるY座標位置の取得のための演算のみならず、ステップSS10によるX座標位置取得のための演算も、その態様を切り替えられる。これにより、装置全体としての電子筆記具の位置検出精度をさらに向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態では、大幅部120をYセンスコイルY1〜Y9の第1延設部Yaの中央位置に設けていたが、これに限られない。例えば、特に図示しないが、コイルシート100の縁部の強度を増加させるために、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の長手方向両端部などに大幅部120を設ける構成としてもよい。本発明は、この場合に対しても同様に、大幅部120が存在する領域に対して相関の切り換えや補正などを行い、演算態様を切り換えてもよい。この場合でも、同様の効果が得られる。
【0104】
さらに、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9に接続する信号細線は、一般的にセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の小幅部130より幅が小さい。これにより、信号細線の配置によっては、接続するセンスコイルX1〜X17,Y1〜Y9の検出感度を局所的に増大させてしまう場合がある。本発明は、他の部分と断面形状が異なる異形として、このような小幅や小径の場合に対しても、上記同様に、検出感度が異なる領域に対して上記同様の手法による相関の切り換えや補正などを行い、演算態様を切り換えてもよい。この場合でも、上記同様の効果が得られる。
【0105】
また、各センスコイルX1〜X17,Y1〜Y9における座標位置と検出電圧値の相関としては、上述したようにテーブル形式で記憶する以外にも、例えば近似された多項式などで記憶してもよい。
【0106】
また、以上においては、電子ペン2が自己電源としての電池43を備え、この電池43の起電力によりLC発振回路41が発生した磁界をセンスコイルで受信し、電子ペン2とノート30との接触点の座標データの算出を行ったが、これに限られない。すなわち、電子ペン側に自己電源を設けず、装置側のコイルからの磁気誘導により電子ペンの共振回路に起電力を誘起して電子ペンのコンデンサに電荷を蓄積し、その蓄積した電荷を用いて電子ペンが発生した磁界を装置側のコイルで受信し、電子ペンとノート30との接触点の位置座標を取得してもよい。この場合も同様の効果を得る。
【0107】
また、例えば、上記実施形態や各変形例では、センスコイルの配線のうち他の配線部分よりもコイル幅が大きい大幅部を異形コイル領域として形成されていたが、本発明はこれに限られない。他にも、特に図示しないが、他の配線部分よりもコイルの厚み寸法が大きい大厚部を異形コイル領域として形成してもよい。このように、センスコイルの配線のうち局所的に屈曲耐性を増大できるようコイル断面形状が異なる部分を異形コイル領域として形成することができる。この場合にも、本発明を適用することで同様の効果を得ることができる。
【0108】
なお、以上において、図2等の各図中に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0109】
また、図12、図13等に示すフローチャートは本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0110】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0111】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0112】
1 手書き入力装置(電子筆記装置)
2 電子ペン(電子筆記具)
3 座標検出装置
10 シート体
30 ノート(被筆記体)
80a CPU
80b ROM(相関記憶手段)
100 コイルシート
120 大幅部(異形コイル領域)
130 小幅部
140 境界部(接続部)
N ヌル点
T 折り曲げ中心線
X1〜X17,Xm Xセンスコイル(第1コイル)
Xa 第1延設部
Xb 第2延設部
Y1〜Y9,Ym Yセンスコイル(第2コイル)
Ya 第1延設部
Yb 第2延設部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被筆記体を覆うように構成されたシート体と、
前記シート体に設けられ、所定の第1方向に沿った第1延設部の長さが当該第1方向と直交する第2方向に沿った第2延設部の長さよりも短く構成され、前記被筆記体への筆記内容に対応したデータ入力を行うための位置検出用の筆記信号を生成して送信する電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信して主として前記第1方向における前記電子筆記具の位置検出を行う、複数の第1コイルと、
前記シート体に設けられ、前記第2方向に沿った前記第2延設部の長さが前記第1方向に沿った前記第1延設部の長さよりも短く構成されるとともに、他の部分と比べてコイル断面形状が異なる異形コイル領域を備え、前記電子筆記具から送信された前記筆記信号を受信して主として前記第2方向における前記電子筆記具の位置検出を行う、複数の第2コイルと、
前記筆記信号の前記複数の第1コイルの受信結果に基づき前記電子筆記具の前記第1方向における第1位置情報を取得する第1位置取得手段と、
前記筆記信号の前記複数の第2コイルの受信結果に基づき、前記電子筆記具の第2位置情報を取得する第2位置取得手段と、
前記第1位置取得手段により取得された前記第1位置情報を用いて、前記電子筆記具が、前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、前記第2位置取得手段における前記第2位置情報取得のための演算態様を切り替える、演算制御手段と、
を有することを特徴とする電子筆記装置。
【請求項2】
前記シート体は、
前記第1方向の中央部に位置し前記第2方向に沿った折り曲げ中心線を有する折り曲げ部を備え、かつ、略ノート形状の前記被筆記体を覆うように前記第1方向に見開き可能な形状に構成されており、
前記異形コイル領域は、前記折曲げ中心線の近傍に位置しており、
前記第2コイルの前記第1延設部は、前記折曲げ中心線に略直交して配置されており、
かつ、当該第1延設部は、前記異形コイル領域外に位置する小幅部と、前記異形コイル領域内に位置し前記小幅部よりもコイル幅が大きい大幅部と、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の電子筆記装置。
【請求項3】
前記第2コイルの前記第1延設部は、
前記小幅部と前記大幅部との間を接続するように設けられ、前記小幅部側から前記大幅部側へ向かって拡幅形状の接続部を備えており、
前記判定手段は、
前記第1位置取得手段により取得された前記第1位置情報を用いて、前記電子筆記具が、前記接続部の近傍の所定領域に位置しているか否かを判定可能であり、
前記演算制御手段は、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記接続部の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合の演算態様による演算結果と、前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合の演算態様による演算結果との、加重平均を算出して用いるように、前記第2位置取得手段における前記第2位置情報取得のための演算態様を制御することを特徴とする請求項2記載の電子筆記装置。
【請求項4】
前記複数の第2コイルを介して検出された電圧値と前記第2位置情報との相関を複数種類記憶した相関記憶手段を有し、
前記演算制御手段は、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、互いに異なる種類の前記相関を用いて前記第2位置情報を取得するように、前記第2位置取得手段の演算態様を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電子筆記装置。
【請求項5】
前記相関は、
前記複数の第2コイルそれぞれごとに求められた、前記電圧値と前記第2位置情報との相関を表す複数の特性曲線を含み、
前記演算制御手段は、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記複数の第2コイルに係わる複数の特性曲線のうち前記筆記信号の受信により最大電圧を得た1つの第2コイルに係わる特性曲線を異なる特性曲線に置き換えるとともに、当該1つの第2コイルの前記第2方向両側にそれぞれ隣接する2つの第2コイルに係わる特性曲線を異なる特性曲線に置き換え、それら置き換えられた特性曲線を用いて前記第2位置情報を取得するように、前記第2位置取得手段の演算態様を制御する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子筆記装置。
【請求項6】
前記第2コイルを介して検出された電圧値と前記第2位置情報との相関を記憶した相関記憶手段を有し、
前記演算制御手段は、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合には前記相関を用いて演算を行い、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合には、前記相関を補正した補正後相関を用いて演算を行うように、前記第2位置取得手段における演算態様を切り替える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電子筆記装置。
【請求項7】
前記演算制御手段は、
前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していると判定された場合と、前記判定手段により前記電子筆記具が前記異形コイル領域の近傍の所定領域に位置していないと判定された場合とで、互いに異なる個数の第2コイルの受信結果を用いるように、前記第2位置取得手段における演算態様を切り替える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の電子筆記装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−98842(P2012−98842A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244765(P2010−244765)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】