説明

電子組立手順書管理装置

【課題】電子手順書から印刷される紙手順書に、電子的に確実に読み取り可能なID情報を付加することで、紙手順書の入れ替え情報を電子手順書に自動的に反映させることができる電子組立手順書管理装置を提供する。
【解決手段】工場での組立作業を指示する組立手順を編集して組立手順書として出力するための電子組立手順書管理装置であって、組立作業の各手順の内容を表現する手順書データを作成する手順書編集手段と、前記手順書データでの手順を同定するためのID情報が記載された作業者工程データを作成する工程設定手段と、前記手順書データおよび作業者工程データを手順書として出力する出力手段と、組立現場において変更された前記手順書を読み取って、その手順書のID情報に基づいて同定する手順書情報読み取り手段と、を具備する構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工場生産のIT化にともなって、機械などの組み立て工場での組立作業を指示する電子組立手順書管理装置に関し、特に、電子手順書から印刷される紙手順書に、電子的に確実に読み取り可能なID情報を付加することで、紙手順書の入れ替え情報を電子手順書に自動的に反映させることができる電子組立手順書管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、工場生産のIT化にともなって、機械などの組み立て工場においても組み立て手順書も電子化が行われている。
なお、これについての従来の発明としては、特許文献1として、機器の製造工程においてオペレータの行う作業を管理する製造作業支援システムにおいて、生産計画に基づいて各機種毎にグループを作成して作業計画を作成する作業計画作成手段と、この作業計画作成手段により作成される作業計画に基づき、オペレータに対して作業指示を行う作業指示手段と、この作業指示手段により指示される作業に対し、作業の進捗状況に係る作業実績情報を入力する作業実績入力手段と、および前記作業計画作成手段、作業指示手段および作業実績入力手段を相互に接続して情報の授受を音声により行う通信手段とを備える技術が開示されている。
【0003】
特許文献2として、予め過去の生産実績、結果の解析に基づいて抽出された諸注意事項がカテゴリー分類されて登録されている諸注意データベースと、生産指示データに基づく検索キーによって諸注意データベースを検索して諸注意事項を抽出するデータベース検索部と、生産指示データに対し、当該データベース検索部の抽出した諸注意事項を添付して諸注意事項付き生産指示データとして出力する生産指示出力部とを備えた技術が開示されている。
【0004】
特許文献3として、物品の一部または全部が組み立てられた状態を示す2次元図面に関する図面データ、および物品の一部または全部が2次元図面の状態に組み立てられるまでの過程を示すアニメーションに関するアニメーションデータを記録する記録手段と、図面データに基づく所定の2次元図面を表示すると共に、この2次元図面に対応するアニメーションを特定するアニメーションアイコンを2次元図面上の所定の位置に表示する画面イメージと、表示されたアニメーションアイコンに対してクリック等の操作が行なわれるとアニメーションデータに基づいてアニメーションを再生する再生手段とを備える技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−251041公報
【特許文献2】特開2005−18475公報
【特許文献3】特開2003−223094公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、工場の実際の組立ラインでの各作業者へのPCの導入は、スペース、経費、盗難の可能性などの問題により困難な場合が多く、実際には電子化された手順書情報から印刷した紙手順書を利用している場合が多い。
また、工場においては同一製品でも生産量の変更がしばしばなされる。生産量の変更に応じて、各作業者への工程分割も変更が必要となる。その際、電子手順書ではなく紙手順書の入れ替えを現場で行うのがもっとも簡単である。
しかし、電子手順書と紙手順書とで情報が一致していないと、今後に不都合を生じるので、紙手順書の入れ替えに応じて電子手順書に変更を反映する必要があった。
また、特許文献のように、従来の電子マニュアルと紙との併用の発明においては、いずれも紙マニュアルは出力先であり、その内容を電子情報にフィードバックすることはできない問題点があった。
【0006】
本発明は、従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、電子手順書から印刷される紙手順書に、電子的に確実に読み取り可能なID情報を付加することで、紙手順書の入れ替え情報を電子手順書に自動的に反映させることができる電子組立手順書管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、工場での組立作業を指示する組立手順を編集して組立手順書として出力するための電子組立手順書管理装置であって、組立作業の各手順の内容を表現する手順書データを作成する手順書編集手段と、前記手順書データでの手順を同定するためのID情報が記載された作業者工程データを作成する工程設定手段と、前記手順書データおよび作業者工程データを手順書として出力する出力手段と、組立現場において変更された前記手順書を読み取って、その手順書のID情報に基づいて同定する手順書情報読み取り手段と、を具備することを特徴とする。
また、請求項2記載の発明は、前記手順書情報読み取り手段が、前記同定された変更手順書を反映した新たな手順書データおよび作業者工程データを作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、作業者工程を入れ替える作業で、紙マニュアルでの柔軟性を損なわず、電子マニュアル情報の更新が可能になる。さらに、工程組み換えの履歴も自動的に保存される。また、手順書への情報修正追加も、紙マニュアルでの簡便性を損なわず、電子マニュアル情報の更新が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に添付の図を参照してこの発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明による電子組立手順書システムの一実施形態の概略図である。
図1に示すように、この電子組立手順書システムは、各種編集部を持つコンピュータ1と、コンピュータ1に接続されたプリンタ3およびスキャナー5よりなる。
図2は、ソフトウエアに基づいてコンピュータ1において果たされる機能ブロック図である。図2に示すように、コンピュータ1は、機能構成として、手順書編集部7、工程設定部9、手順書表示部11、手順書印刷部13、手順書情報読み取り部15よりなる電子組立手順書管理装置となっている。
電子組立手順書管理装置におけるデータとしては、各ユニットの手順書データ17および各作業者工程データ19よりなる。
【0010】
図3は、手順書データ17の一例を示す図である。手順書データ17は、図3に示すように、組立作業の各手順の内容を表現する情報が、設計時の組立順で記述されている。
一方、作業者工程データ19は、図4に示すように手順書データでの手順を同定するためのID情報が、作業者ごとに実際に行う作業順序ごとに並べられているデータである。図4は、作業者工程データ19の一例を示す図である。
手順書データ17での各手順には、紙マニュアルをスキャンした画像情報も付加できる。手順書印刷部13から、紙に印刷されたものには、手順書データのどの手順にあたるかを示すデータが機械読み込み可能なID情報の形で付加されている。例えば図5に示すように、数字列で、製品ID、ユニットID、手順番号を付加する。あるいは数字列の替わりにバーコードにしてもよい。図5は、手順書データのどの手順にあたるかを示すデータが機械読み込み可能な形で付加された印刷紙を示す図である。
【0011】
以下に、図6を参照して、作業者工程を作成、変更する場合の運用方法について説明する。
図6は、作業者工程を作成、変更する場合の運用方法のフローチャートである。
まず、ステップ101において、手順書作成者が、手順書編集部7で、各ユニットの手順書データを作成する。次に、ステップ103において、工程設定者が、工程設定部9で、工場の各組立作業者の作業を設定し、作業者工程データ19を作成する。次に、ステップ105において、手順書印刷部13で、各作業者への手順書を印刷する。この作業者工程ごとの手順書が、組立現場で実際に利用される。この手順書には、手順書データでの手順を同定するためのID情報が含まれている。
この後、生産量の変更などにより、各作業者の工程が変化したとする。例えば、図7に示すような割り当て変更されたとする。図7は、各作業者の工程が変化し、割り当て変更された状態を示す説明図である。
【0012】
ここで、ステップ107において、組立現場では、紙手順書工程を入れ替えるため、紙マニュアルの紙を入れ替えて対応する。紙による入れ替え対応を行った後で、工場が稼動していない時間帯に、ステップ109において、各作業者工程の紙マニュアルの画像をスキャナーにより読み込み、ステップ111において、コンピュータ1上の手順書情報読み取り部15によって、作業者工程データ19による各紙の手順の同定が行なわれ、順序を紙の順にすることで、作業者工程データ19を新規に作成して、紙手順書の入れ替え情報を電子手順書に自動的に反映させる新手順書として出力する。その際、古い工程データは、変更前のデータとして、保存される。
【0013】
図8は、手順書情報読み取り部15による読取動作のフローチャートである。
この手順書情報読み取り部の読取動作としては、まず、ステップ201において、スキャンされた紙手順書を内部に読み込み、次に、ステップ203において、画像1枚ごとに、手順同定情報を読み込み、次に、ステップ205において、画像の順に手順同定情報を並べ、次に、ステップ207において、工程情報として出力する。
なお、工程設定部9を利用せずに、作業者工程設定前に、全手順書を印刷して、紙手順書で工程を設定して、運用することも可能である。
【0014】
次に、手順を現場で変更する際の運用方法について説明する。
図9は、手順を現場で変更する際の運用方法のフローチャートである。
前記の作業者工程を変更する場合と同様に、紙手順書を作成し、組立現場で実際に利用する。
まず、ステップ301において、現場での手順書の修正が行なわれ、この修正は、紙手順書への記入で行う。次に、ステップ303において、修正が記入された手順は、画像をスキャナーで読み込み、ステップ305において、コンピュータ1上の手順書情報読み取り部15によって、その手順を同定し、その画像を手順書データに付加情報として追加する。
【0015】
次に、ステップ307において、追加された画像は、手順書印刷部13や手順書表示部11によって参照され、画像データが追加された手順については、印刷や表示時には元のデータではなく、新しい手順データが印刷、表示される。
紙によって修正された手順が、設計変更などによって設計側から変更される場合は、画像データを参照することができるので、紙での修正情報を反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による電子組立手順書システムの一実施形態の概略図である。
【図2】ソフトウエアに基づいてコンピュータ1において果たされる機能ブロック図である。
【図3】手順書データ17の一例を示す図である。
【図4】作業者工程データ19の一例を示す図である。
【図5】手順書データのどの手順にあたるかを示すデータが機械読み込み可能な形で付加された印刷紙を示す図である。
【図6】作業者工程を作成、変更する場合の運用方法のフローチャートである。
【図7】各作業者の工程が変化し、割り当て変更された状態を示す説明図である。
【図8】手順書情報読み取り部15による読取動作のフローチャートである。
【図9】手順を現場で変更する際の運用方法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0017】
1…コンピュータ、3…プリンタ、5…スキャナー、7…手順書編集部、9…工程設定部、11…手順書表示部、13…手順書印刷部、15…手順書情報読み取り部、17…手順書データ、19…作業者工程データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場での組立作業を指示する組立手順を編集して組立手順書として出力するための電子組立手順書管理装置であって、
組立作業の各手順の内容を表現する手順書データを作成する手順書編集手段と、
前記手順書データでの手順を同定するためのID情報が記載された作業者工程データを作成する工程設定手段と、
前記手順書データおよび作業者工程データを手順書として出力する出力手段と、
組立現場において変更された前記手順書を読み取って、その手順書のID情報に基づいて同定する手順書情報読み取り手段と、を具備することを特徴とする電子組立手順書管理装置。
【請求項2】
前記手順書情報読み取り手段が、前記同定された変更手順書を反映した新たな手順書データおよび作業者工程データを作成することを特徴とする請求項1に記載の電子組立手順書管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−249871(P2007−249871A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75668(P2006−75668)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】