電子血圧計および演算プログラム
【課題】循環器系の調節機構による動態に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出することのできる電子血圧計を提供する。
【解決手段】血圧計は、測定部位に装着された空気袋の圧力変化に基づいて第1の血圧値が算出されると(S5)、その第1の血圧値から5分以内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に(S11でYES)、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する(S13)。
【解決手段】血圧計は、測定部位に装着された空気袋の圧力変化に基づいて第1の血圧値が算出されると(S5)、その第1の血圧値から5分以内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に(S11でYES)、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する(S13)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は電子血圧計および演算プログラムに関し、特に、血圧値に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する電子血圧計および演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器疾患を解析する指標の1つであり、血圧に基づいて循環器系疾患のリスク解析を行なうことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの循環器系疾患の予防に有効である。特に、早朝に血圧が上昇する早朝高血圧は心臓病や脳卒中などに関係している。さらに、早朝高血圧の中でも、モーニングサージと呼ばれる起床後1時間から1時間半ぐらいの間に急激に血圧が上昇する症状は、脳卒中との因果関係があることが判明している。つまり、時間(生活習慣)と血圧変化との相互関係を把握することが、循環器系疾患のリスク解析に有用であると言える。
【0003】
このことに着目して、心血管系の疾患のリスク解析に血圧計が様々提案されている。たとえば特開2004−261452号公報(以下、特許文献1)は、朝や夜などの特定の時間帯に測定された血圧値の差や平均により循環器系疾患のリスクを算出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法は1日の中での血圧変動に基づきリスクを算出する方法であった。しかしながら血圧は、1日の中での変動することはもとより、10分以下の短期間の間でも変動することが知られている。これは、循環器系の調節機構に依存していると考えられる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、循環器系の調節機構による動態に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出することのできる電子血圧計および演算プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、流体袋の内圧を調整するための調整手段と、流体袋の内圧を検出するためのセンサと、測定部位に装着された流体袋の圧力変化に基づいて被測定者の血圧値を算出し、血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備える。演算手段は、算出された第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出する。
【0008】
好ましくは、指標値は、第1の血圧値の測定時と第2の血圧値の測定時との間の時間経過に対する、第1の血圧値と第2の血圧値との変化度合いである。
【0009】
好ましくは、演算手段は、測定部位に装着された流体袋が調整手段によって加圧される過程における圧力変化に基づいて算出された血圧値を第1の血圧値とし、加圧された過程の後に調整手段によって減圧される過程における圧力変化に基づいて算出された血圧値を第2の血圧値とし、その第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出する。
【0010】
本発明の他の局面に従うと、電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、流体袋の内圧を調整するための調整手段と、流体袋の内圧を検出するためのセンサと、測定部位に装着された流体袋の圧力変化に基づいて被測定者の血圧値を算出し、血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備える。演算手段は、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、その複数の血圧値を用いて指標値を算出する。
【0011】
より好ましくは、演算手段は、上記所定期間内に順に測定された第1の血圧値、第2の血圧値、および第3の血圧値のうちの第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて第1の指標値を算出し、第2の血圧値と第3の血圧値とを用いて第2の前記指標値を算出し、第1の指標値と第2の指標値とに基づいて最終的な指標値を算出する。
【0012】
本発明のさらに他の局面に従うと、演算プログラムはコンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、血圧値の入力を受け付けるステップと、入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【0013】
本発明のさらに他の局面に従うと、演算プログラムはコンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、血圧値の入力を受け付けるステップと、入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、その複数の血圧値を用いて指標値を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、循環器系の調節機構による動態に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高血圧患者と正常の血圧値である患者との血圧測定結果の変動を表わした図である。
【図2】循環器系疾患のリスクの指標値の一例を説明するための図である。
【図3】本実施の形態にかかる電子血圧計(以下、血圧計と略する)の概観の具体例を示す図である。
【図4】血圧計の構成の具体例を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる血圧計の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【図6】メモリの所定領域に記憶される測定結果の具体例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態にかかる血圧計における動作を表わしたフローチャートである。
【図8】画面例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態にかかる血圧計での循環器系疾患のリスクの指標値の算出方法を説明するための図である。
【図10】第2の実施の形態にかかる血圧計における動作を表わしたフローチャートである。
【図11】画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0017】
<課題について>
血圧の変動はその発生要因によってその変動が発生する間隔や変動の量が異なることが知られている。このことは、たとえば、栃久保修著の「血圧の測定法と臨床評価」(メディカルトリビューン出版)にも開示されている。
【0018】
詳しくは、最も短期の血圧変動は1拍1拍の変動(第1級血圧動揺)で通常0〜4mmHgの変動であるが、心筋障害のある患者では数mmHgから10mmHg以上も低下する現象が見られる。
【0019】
次の短い血圧変動は呼吸性血圧変動(第2級血圧動揺)で、通常は吸気時にわずかに高くなり、呼気時にわずかに低くなる変動であるが、やはり疾患によってはこの変動が著明なものとなる。
【0020】
さらに、10〜60秒の周期で発生する血圧変動がある(第3級血圧動揺)。特に立位時や運動負荷時、薬物投与などの条件下で見られることが多い。
【0021】
これらの血圧変動に加え、ストレスなどの環境要因によっても血圧は大きく変動する。これらの血圧変動は循環器系の調節機構によるものである。
【0022】
特に高血圧患者は、正常の血圧値である患者と比較して短期間での血圧値の変動が大きいことが本願発明者らの測定でわかった。図1は、高血圧患者と正常の血圧値である患者との血圧測定結果の変動を表わした図であって、本願発明者らが1分間隔で高血圧患者と正常の血圧値である患者と血圧を測定して得られた結果を表わしている。図1からも明らかなように、高血圧患者は、正常の血圧値である患者と比較して短期間での血圧値の変動が大きいことがわかる。
【0023】
従来の技術として、たとえば特開2005−218492号公報において、本願出願人は、1週間や1ヶ月などの長期間にわたる血圧値の変動に基づいて循環器系疾患のリスクを判定する技術を開示している。このような長期間における血圧変動もまた循環器系疾患のリスクと非常に密接な関係にあることが判明しており、学会のガイドラインなどでもその有用性が明らかにされているためである。
【0024】
しかしながら、循環器系疾患のリスクが高い患者では、たとえば10分以下程度の短期間でも10mmHg以上の血圧変動が発生することがある。
【0025】
従って、本願発明者らは、10分以内、たとえば5分程度の短期間での血圧変動をとらえることにより循環器系の調節機構による動態を把握することが可能であると考察した。そこで、本願発明では、短い期間内で得られた測定結果で表わされる血圧値の変動に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する。
【0026】
短期間での血圧値の変動は、第1のタイミングにおける血圧値と所定期間tの後の第2のタイミングにおける血圧値との変化度合いの、経過時間tに対する割合で表わされる。この変化度合いとしては、たとえば第1のタイミングにおける最高血圧値SBP1と第2のタイミングにおける最高血圧値SBP2との差分や、最高血圧値SBP1と最高血圧値SBP2との比率が該当する。そして、本願発明では、このようにして得られる血圧値の変動を表わす値を循環器系疾患のリスクの指標値として用いる。
【0027】
図2は、循環器系疾患のリスクの指標値の一例を説明するための図である。図2を参照して、一例として、循環器系疾患のリスクの指標値は、最高血圧値SBP1と最高血圧値SBP2との差分Diff_SBPを経過時間tで除して得られる値を用いることができる。以降の説明においては、図2に示された値を循環器系疾患のリスクの指標値とするものとする。なお、以降の説明では、測定で得られた血圧値として最高血圧値を用いるものとしているが、用いられる値は最高血圧値に限定されず、最低血圧値であってもよいし、平均血圧や、脈圧や、これらの組み合わせであってもよい。
【0028】
さらに、血圧と同時に測定された脈拍数との組み合わせでもよい。血圧は心臓が拍出する血液量(心拍出量)によって決定される。すなわち、血圧を上昇させるには、1心拍あたりの心拍出量を増加させるか、心拍数を上昇させて単位時間当たりの心拍出量を増加させるかのどちらかになる。脈拍数が低い状態で血圧が上昇した場合、1心拍あたりの心拍出量が増加していることになり、心臓への負荷が大きくなる。
【0029】
<装置構成>
図3は、本実施の形態にかかる電子血圧計(以下、血圧計と略する)1の概観の具体例を示す図である。
【0030】
図3を参照して、血圧計1は、基体2と、基体2にエアチューブ8で接続された、測定部位である上腕に装着するための腕帯9とを含む。
【0031】
基体2の正面には、測定結果を含む各種の情報を表示するための表示部4および血圧計1に対して各種の指示を与えるために操作される操作部3が配される。操作部3は、電源をON/OFFするために操作されるスイッチ31、測定の開始を指示するために操作されるスイッチ32、測定動作を停止するための操作されるスイッチ33、および記録されている情報を呼び出すために操作されるスイッチ34を含む。
【0032】
図4は、血圧計1の構成の具体例を示すブロック図である。
図4を参照して、腕帯9には空気袋13が含まれる。血圧計1の基体2には、空気袋13にエアチューブ8で連結される圧力センサ23、ポンプ21、および弁22が含まれる。
【0033】
圧力センサ23は発振回路28に接続される。ポンプ21は駆動回路26に接続され、弁22は駆動回路27に接続される。
【0034】
駆動回路26、駆動回路27、および発振回路28は、血圧計1全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)40に接続される。CPU40には、さらに、時計6と、表示部4と、操作部3と、処理用のメモリ5Aと、データ記憶用のメモリ5Bと、電力供給のための電源7とが接続される。
【0035】
メモリ5Aは、CPU40がプログラムを実行する際の作業領域となる。メモリ5Bは、CPU40で実行される制御プログラムや後述するように測定値などを記憶する。
【0036】
CPU40は、操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ5Bに記憶されている所定のプログラムを実行し、駆動回路26および駆動回路27に制御信号を出力する。駆動回路26および駆動回路27は、それぞれ制御信号に従ってポンプ21および弁22を駆動させる。
【0037】
ポンプ21は、CPU40からの制御信号に従った駆動回路26によって駆動が制御されて、空気袋13内に空気を注入する。弁22は、CPU40からの制御信号に従った駆動回路27によって開閉が制御されて、空気袋13内の空気を排出する。
【0038】
圧力センサ23は静電容量形の圧力センサであり、空気袋13の内圧変化により容量値が変化する。発振回路28は圧力センサ23の容量値に応じた発振周波数信号を出力し、CPU40に入力される。
【0039】
CPU40は、圧力センサ23から得られた空気袋13の内圧変化に基づいて所定の処理を実行し、その結果に応じて駆動回路26および駆動回路27に上記制御信号を出力する。また、CPU40は、圧力センサ23から得られた空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出し、測定結果を表示部4に表示させるための処理を行なって表示させるためのデータと制御信号とを表示部4に出力する。また、CPU40は、測定結果をメモリ5Bに記憶させるための処理を行なう。
【0040】
腕帯9は測定時において測定部位である上腕に巻き回すために用いられる。その状態でスイッチ32が押下されることで測定動作が開始される。
【0041】
[第1の実施の形態]
<機能構成>
図5は、第1の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成の具体例を示すブロック図である。図5の各機能は、CPU40が操作部3からの操作信号に従ってメモリ5Bに記憶されるプログラムを読み出して実行することで、主に、CPU40に形成されるものであるが、少なくとも一部が図4に示されたハードウェア構成で形成されるものであってもよい。
【0042】
図5を参照して、CPU40は、圧力センサ23からのセンサ信号の入力および時計6からの日時情報を受付けるための入力部401と、センサ信号の示す圧力値に基づいて被測定者の血圧値を算出するための血圧算出部402と、算出された血圧値を測定日時を特定する情報と共に測定結果としてメモリ5Bの所定領域に書き込むための書込部403と、メモリ5Bの所定領域から測定結果を読み出すための読出部404と、算出することで得られた測定結果と読み出された測定結果とを比較することで循環器系疾患のリスクの指標値を算出するか否かを判断するための判断部405と、判断部405での判断結果に応じてこれら測定結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための指標算出部406と、算出された指標値または判断部405で算出しないと判断されたことに応じた出力を表示部4で出力する処理を実行するための出力部407とを含む。
【0043】
図6は、メモリ5Bの所定領域に記憶される測定結果の具体例を示す図である。
図6を参照して、メモリ5Bの所定領域には、血圧算出部402で算出された血圧値が測定日時を特定する情報と共に記憶される。好ましくは、操作部3には図示しない被測定者を特定するためのボタンが含まれ、測定時に被測定者を特定するための指示を受付けて、測定結果が被測定者を識別する情報(ユーザ情報)と共に記憶される。このようにすることで、複数の被測定者で血圧計1を利用する際に、被測定者ごとに測定結果を管理でき、被測定者ごとに循環器系疾患のリスクの指標値を算出することができる。
【0044】
さらに、測定結果として、当該測定結果を用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値(循環器系リスク)が記憶されていてもよい。
【0045】
上述のように、血圧計1は、ある程度の短い期間内で複数回の測定を行ない、その結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するものである。なお、ここでの、複数回の測定は、複数回の測定が、それぞれ、短い期間である所定の期間内で直前の測定からなされる場合と、短い期間である所定の期間内で複数回の測定がなされる場合との両方の概念を含む。そこで、CPU40は、入力部401で受付けたセンサ信号に基づいて血圧算出部402で血圧値が算出されると、その血圧値の測定時から上記ある程度短い期間内に測定された血圧値がメモリ5Bに記憶されている場合には、その血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出し、そのような血圧値がメモリ5Bに記憶されていない場合には、指標値を算出しない。
【0046】
そのため、読出部404は血圧算出部402で血圧値が算出されたことを受けてメモリ5Bから最新の測定結果を読み出し、判断部405に入力する。判断部405は、メモリ5Bから入力された血圧値の測定日時が血圧算出部402で算出された血圧値の測定日時から上記ある程度短い期間内であるか否かを判断することで、これらの血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するかしないかを判断する。
【0047】
なお、上記ある程度短い期間は特定の期間に限定されないが、好ましくは、5分程度が挙げられる。そこで、以降の説明では、5分以内の測定値を用いるものとする。
【0048】
<動作フロー>
図7は、第1の実施の形態にかかる血圧計1における動作を表わしたフローチャートである。図7のフローチャートに示される動作は、操作部3に含まれるスイッチ32が押下されることによって開始される。この動作は、CPU40がメモリ5Bに記憶される制御プログラムを読み出して図5に示される各部を制御することによって実現される。
【0049】
図7を参照して、測定動作が開始するとCPU40はステップS1で各部を初期化した後、ステップS3で駆動回路26および駆動回路27に対して制御信号を出力して弁22を閉じポンプ21を作動させ、空気袋13を加圧させる。
【0050】
加圧の過程においてステップS5でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。ここでの血圧値の算出方法は、通常の電子血圧計で採用されているオシロメトリック法での算出方法であってよい。
【0051】
なお、この例では、加圧過程の空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するものとしているが、これに替えて、減圧過程の空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するようにしてもよい。
【0052】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS7でYES)、ステップS9でCPU40は、駆動回路26に制御信号を出力して加圧を停止させ、さらに、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を開放させる。これにより、空気袋13が急速に減圧する。
【0053】
ここで、メモリ5Bの所定領域にこの測定から5分以内に測定された測定結果である血圧値が記憶されている場合(ステップS11でYES)、ステップS13でCPU40は、上記ステップS5で算出された血圧値とメモリ5Bに記憶されている上記血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値rを算出する。ここでは、たとえば先に測定された最高血圧値SBP1、後に測定された最高血圧値SBP2、およびその測定時間間隔tを用いて、以下の式(1)のようにして算出される、
r=(SBP1−SBP2)/t …式(1)。
【0054】
または、血圧値の差分に限定されず、その比率を用いて、以下の式(2)のようにして算出されてもよい、
r=(SBP1/SBP2)/t …式(2)。
【0055】
なお、上記式(1)(2)は、1回目の測定で得られた最高血圧値SBP1と2回目の測定で得られた最高血圧値SBP2との差または比より指標値を算出するものである。しかしながら、この方法は一例であって、他の方法が採用されてもよい。たとえば、さらに2回目の測定で得られた最高血圧値SBP2と3回目の測定で得られた最高血圧値SBP3との差または比で指標値を算出し、複数の指標値の代表値(平均値、最大値、最小値、中央値など)を最終の指標値と特定して出力してもよい。または、複数の指標値の差または比を算出し、その値を最終の指標値と特定して出力してもよい。
【0056】
そして、ステップS15でCPU40は、測定結果としてステップS5で測定された血圧値と共に、ステップS13で算出された循環器系疾患のリスクの指標値rを表示部4に表示させるための処理を実行し、一連の測定動作を終了する。
【0057】
図8は、上記ステップS15での処理により表示部4に表示される画面例を示す図である。図8に示されるように、測定が完了すると、その測定によって得られた血圧値と共に、直前に測定された血圧値も用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値が表示される。さらに、指標値についてのしきい値を予め記憶しておき、当該しきい値と算出された指標値とを比較することでその比較結果を血圧値と併せて表示するようにしてもよい。また、図8の例では、算出された指標値が上記しきい値よりも大きいとして、その比較結果に応じて予め記憶されているメッセージ「循環器系リスクが高いです」が血圧値と併せて表示されている。
【0058】
なお、図7に示されたフローチャートでは、メモリ5Bの所定領域に当該測定から5分以内に測定された測定結果である血圧値が記憶されていない場合には上記ステップS13の指標値の算出を行なわないものとしている。この場合、上記ステップS15では、上記ステップS5で測定された血圧値のみ表示されてもよい。または、指標値の算出を可能とするため、たとえば、「5分以内にもう一度測定して下さい」などのメッセージを予め記憶しておき、上記ステップS5で測定された血圧値と共に表示するようにしてもよい。このようにすることで、その測定時に、今回の測定結果を用いて指標値を算出することができる。
【0059】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態にかかる血圧計1において上のような動作が行なわれることで、簡易な測定で循環器系の調節機構による動態を把握することが可能となる。そして、それに基づいた循環器系疾患のリスクの指標値を知ることができ、容易に循環器系疾患のリスクを把握することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
<動作概要>
第1の実施の形態では、加圧過程または減圧過程のいずれか一方の過程で血圧が測定されるものとしている。そのため、所定期間内の複数回の測定結果を得るためには、ユーザは、複数回、測定開始の指示を行なってそれに伴う測定動作を実行させる必要がある。
【0061】
そこで、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、1回の測定開始の指示に応じた加圧過程と減圧過程との両過程でそれぞれ血圧を測定し、それらを用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する。
【0062】
図9は、第2の実施の形態にかかる血圧計1での循環器系疾患のリスクの指標値の算出方法を説明するための図である。図9を参照して、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、加圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPinfと、減圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPdefとの差分(またはその比率)を算出し、その値を循環器系疾患のリスクの指標値として用いる。
【0063】
<機能構成>
第2の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成は、図5に示された第1の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成と概ね同様である。
【0064】
第2の実施の形態にかかる血圧計1の場合、判断部405は血圧算出部402において減圧過程でのセンサ信号に基づいて血圧値が算出されたことを受けて、加圧過程でのセンサ信号に基づいて血圧値が算出されたか否かに応じて指標値の算出が可能か否かを判断する。
【0065】
<動作フロー>
図10は、第2の実施の形態にかかる血圧計1における動作を表わしたフローチャートである。図10のフローチャートに示される動作もまた、操作部3に含まれるスイッチ32が押下されることによって開始される。この動作は、CPU40がメモリ5Bに記憶される制御プログラムを読み出して図5に示される各部を制御することによって実現される。
【0066】
図10を参照して、測定動作が開始するとCPU40はステップS31で各部を初期化した後、ステップS33で駆動回路26および駆動回路27に対して制御信号を出力して弁22を閉じポンプ21を作動させ、空気袋13を加圧させる。
【0067】
加圧の過程においてステップS35でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。
【0068】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS37でYES)、ステップS39でCPU40は、駆動回路26に制御信号を出力して加圧を停止させ、さらに、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を所定量開放させる。これにより、空気袋13の減圧が開始する。第1の実施の形態にかかる血圧計1では加圧過程で血圧値が算出された後は測定終了として急速に空気袋13を減圧しているが、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、減圧過程でも血圧を測定するために、測定に適した変化速度となるように徐々に減圧する。
【0069】
減圧の過程でもまた、ステップS41でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。
【0070】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS43でYES)、ステップS45でCPU40は、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を開放させる。これにより、空気袋13が急速に減圧する。
【0071】
ここで、加圧過程と減圧過程との両過程において血圧測定が成功し、メモリ5Bの所定領域に両測定結果が記憶されている場合(ステップS47でYES)、ステップS49でCPU40は、上記ステップS35で算出された加圧過程で得られた血圧値と上記ステップS41で算出された減圧過程で得られた血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値rを算出する。ここでは、加圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPinfと、減圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPdefとを用いて、以下の式(3)のようにして算出される、
r=SBPinf−SBPdef …式(3)。
【0072】
または、血圧値の差分に限定されず、その比率を用いて、以下の式(4)のようにして算出されてもよい、
r=SBPinf/SBPdef …式(4)。
【0073】
または、式(1)もしくは式(2)と同様に、加圧過程での血圧測定と減圧過程での血圧測定の時間差tを用いて、以下の式(5)、(6)のようにして算出されてもよい、
r=(SBPinf−SBPdef)/t …式(5)、
r=(SBPinf/SBPdef)/t …式(6)。
【0074】
そして、ステップS51でCPU40は、測定結果としてステップS35,S41で測定された血圧値と共に、ステップS49で算出された循環器系疾患のリスクの指標値rを表示部4に表示させるための処理を実行し、一連の測定動作を終了する。
【0075】
図11は、上記ステップS51での処理により表示部4に表示される画面例を示す図である。図11に示されるように、測定が完了すると、加圧過程および減圧過程で得られた両血圧値と共に、これらを用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値rが表示される。なお、両血圧値に替えていずれか一方の血圧値のみ表示してもよいし、または、図11に示されるように、これらの平均値も併せて表示するようにしてもよい。
【0076】
なお、図10に示されたフローチャートでは、加圧過程での測定でも減圧過程での測定でも、血圧値が算出されるまで加圧または減圧を行なうものとされているが、測定が失敗のまま空気袋13の内圧が所定圧に達した時点でエラーとして動作を先に進めるようにしてもよい。いずれか一方の測定が失敗だった場合、指標値の算出を行なわず、測定された血圧値のみ表示するようにしてもよい。または、指標値の算出を可能とするため、たとえば、「もう一度測定して下さい」などのメッセージを予め記憶しておき、血圧値と共に表示するようにしてもよい。
【0077】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態にかかる血圧計1がこのように動作することで、1回の測定開始の指示に伴った測定動作によって2つの測定結果を得ることができ、それに基づいて指標値を得ることができる。
【0078】
[変形例]
なお、以上の説明では、血圧計1本体において所定期間内の複数回の測定結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するものとしているが、血圧計1にたとえばパーソナルコンピュータ(PC)などの他の演算装置に測定日時を特定する情報と共に血圧値を直接またはインターネット等を介して出力する機能が搭載されている場合、当該演算装置において該測定結果を用いて指標値を算出するようにしてもよい。
【0079】
この場合、演算装置に上記動作を実行させるためのプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0080】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼び出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0081】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0082】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 血圧計、2 基体、3 操作部、4 表示部、5A,5B メモリ、6 時計、7 電源、8 エアチューブ、9 腕帯、13 空気袋、21 ポンプ、22 弁、23 圧力センサ、26,27 駆動回路、28 発振回路、31,32,33,34 スイッチ、40 CPU、401 入力部、402 血圧算出部、403 書込部、404 読出部、405 判断部、406 指標算出部、407 出力部。
【技術分野】
【0001】
この発明は電子血圧計および演算プログラムに関し、特に、血圧値に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する電子血圧計および演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血圧は循環器疾患を解析する指標の1つであり、血圧に基づいて循環器系疾患のリスク解析を行なうことは、たとえば脳卒中や心不全や心筋梗塞などの循環器系疾患の予防に有効である。特に、早朝に血圧が上昇する早朝高血圧は心臓病や脳卒中などに関係している。さらに、早朝高血圧の中でも、モーニングサージと呼ばれる起床後1時間から1時間半ぐらいの間に急激に血圧が上昇する症状は、脳卒中との因果関係があることが判明している。つまり、時間(生活習慣)と血圧変化との相互関係を把握することが、循環器系疾患のリスク解析に有用であると言える。
【0003】
このことに着目して、心血管系の疾患のリスク解析に血圧計が様々提案されている。たとえば特開2004−261452号公報(以下、特許文献1)は、朝や夜などの特定の時間帯に測定された血圧値の差や平均により循環器系疾患のリスクを算出する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−261452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法は1日の中での血圧変動に基づきリスクを算出する方法であった。しかしながら血圧は、1日の中での変動することはもとより、10分以下の短期間の間でも変動することが知られている。これは、循環器系の調節機構に依存していると考えられる。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、循環器系の調節機構による動態に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出することのできる電子血圧計および演算プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、流体袋の内圧を調整するための調整手段と、流体袋の内圧を検出するためのセンサと、測定部位に装着された流体袋の圧力変化に基づいて被測定者の血圧値を算出し、血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備える。演算手段は、算出された第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出する。
【0008】
好ましくは、指標値は、第1の血圧値の測定時と第2の血圧値の測定時との間の時間経過に対する、第1の血圧値と第2の血圧値との変化度合いである。
【0009】
好ましくは、演算手段は、測定部位に装着された流体袋が調整手段によって加圧される過程における圧力変化に基づいて算出された血圧値を第1の血圧値とし、加圧された過程の後に調整手段によって減圧される過程における圧力変化に基づいて算出された血圧値を第2の血圧値とし、その第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出する。
【0010】
本発明の他の局面に従うと、電子血圧計は、被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、流体袋の内圧を調整するための調整手段と、流体袋の内圧を検出するためのセンサと、測定部位に装着された流体袋の圧力変化に基づいて被測定者の血圧値を算出し、血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備える。演算手段は、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、その複数の血圧値を用いて指標値を算出する。
【0011】
より好ましくは、演算手段は、上記所定期間内に順に測定された第1の血圧値、第2の血圧値、および第3の血圧値のうちの第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて第1の指標値を算出し、第2の血圧値と第3の血圧値とを用いて第2の前記指標値を算出し、第1の指標値と第2の指標値とに基づいて最終的な指標値を算出する。
【0012】
本発明のさらに他の局面に従うと、演算プログラムはコンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、血圧値の入力を受け付けるステップと、入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて指標値を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【0013】
本発明のさらに他の局面に従うと、演算プログラムはコンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、血圧値の入力を受け付けるステップと、入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、その複数の血圧値を用いて指標値を算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によると、循環器系の調節機構による動態に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を容易に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高血圧患者と正常の血圧値である患者との血圧測定結果の変動を表わした図である。
【図2】循環器系疾患のリスクの指標値の一例を説明するための図である。
【図3】本実施の形態にかかる電子血圧計(以下、血圧計と略する)の概観の具体例を示す図である。
【図4】血圧計の構成の具体例を示すブロック図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる血圧計の機能構成の具体例を示すブロック図である。
【図6】メモリの所定領域に記憶される測定結果の具体例を示す図である。
【図7】第1の実施の形態にかかる血圧計における動作を表わしたフローチャートである。
【図8】画面例を示す図である。
【図9】第2の実施の形態にかかる血圧計での循環器系疾患のリスクの指標値の算出方法を説明するための図である。
【図10】第2の実施の形態にかかる血圧計における動作を表わしたフローチャートである。
【図11】画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。
【0017】
<課題について>
血圧の変動はその発生要因によってその変動が発生する間隔や変動の量が異なることが知られている。このことは、たとえば、栃久保修著の「血圧の測定法と臨床評価」(メディカルトリビューン出版)にも開示されている。
【0018】
詳しくは、最も短期の血圧変動は1拍1拍の変動(第1級血圧動揺)で通常0〜4mmHgの変動であるが、心筋障害のある患者では数mmHgから10mmHg以上も低下する現象が見られる。
【0019】
次の短い血圧変動は呼吸性血圧変動(第2級血圧動揺)で、通常は吸気時にわずかに高くなり、呼気時にわずかに低くなる変動であるが、やはり疾患によってはこの変動が著明なものとなる。
【0020】
さらに、10〜60秒の周期で発生する血圧変動がある(第3級血圧動揺)。特に立位時や運動負荷時、薬物投与などの条件下で見られることが多い。
【0021】
これらの血圧変動に加え、ストレスなどの環境要因によっても血圧は大きく変動する。これらの血圧変動は循環器系の調節機構によるものである。
【0022】
特に高血圧患者は、正常の血圧値である患者と比較して短期間での血圧値の変動が大きいことが本願発明者らの測定でわかった。図1は、高血圧患者と正常の血圧値である患者との血圧測定結果の変動を表わした図であって、本願発明者らが1分間隔で高血圧患者と正常の血圧値である患者と血圧を測定して得られた結果を表わしている。図1からも明らかなように、高血圧患者は、正常の血圧値である患者と比較して短期間での血圧値の変動が大きいことがわかる。
【0023】
従来の技術として、たとえば特開2005−218492号公報において、本願出願人は、1週間や1ヶ月などの長期間にわたる血圧値の変動に基づいて循環器系疾患のリスクを判定する技術を開示している。このような長期間における血圧変動もまた循環器系疾患のリスクと非常に密接な関係にあることが判明しており、学会のガイドラインなどでもその有用性が明らかにされているためである。
【0024】
しかしながら、循環器系疾患のリスクが高い患者では、たとえば10分以下程度の短期間でも10mmHg以上の血圧変動が発生することがある。
【0025】
従って、本願発明者らは、10分以内、たとえば5分程度の短期間での血圧変動をとらえることにより循環器系の調節機構による動態を把握することが可能であると考察した。そこで、本願発明では、短い期間内で得られた測定結果で表わされる血圧値の変動に基づいて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する。
【0026】
短期間での血圧値の変動は、第1のタイミングにおける血圧値と所定期間tの後の第2のタイミングにおける血圧値との変化度合いの、経過時間tに対する割合で表わされる。この変化度合いとしては、たとえば第1のタイミングにおける最高血圧値SBP1と第2のタイミングにおける最高血圧値SBP2との差分や、最高血圧値SBP1と最高血圧値SBP2との比率が該当する。そして、本願発明では、このようにして得られる血圧値の変動を表わす値を循環器系疾患のリスクの指標値として用いる。
【0027】
図2は、循環器系疾患のリスクの指標値の一例を説明するための図である。図2を参照して、一例として、循環器系疾患のリスクの指標値は、最高血圧値SBP1と最高血圧値SBP2との差分Diff_SBPを経過時間tで除して得られる値を用いることができる。以降の説明においては、図2に示された値を循環器系疾患のリスクの指標値とするものとする。なお、以降の説明では、測定で得られた血圧値として最高血圧値を用いるものとしているが、用いられる値は最高血圧値に限定されず、最低血圧値であってもよいし、平均血圧や、脈圧や、これらの組み合わせであってもよい。
【0028】
さらに、血圧と同時に測定された脈拍数との組み合わせでもよい。血圧は心臓が拍出する血液量(心拍出量)によって決定される。すなわち、血圧を上昇させるには、1心拍あたりの心拍出量を増加させるか、心拍数を上昇させて単位時間当たりの心拍出量を増加させるかのどちらかになる。脈拍数が低い状態で血圧が上昇した場合、1心拍あたりの心拍出量が増加していることになり、心臓への負荷が大きくなる。
【0029】
<装置構成>
図3は、本実施の形態にかかる電子血圧計(以下、血圧計と略する)1の概観の具体例を示す図である。
【0030】
図3を参照して、血圧計1は、基体2と、基体2にエアチューブ8で接続された、測定部位である上腕に装着するための腕帯9とを含む。
【0031】
基体2の正面には、測定結果を含む各種の情報を表示するための表示部4および血圧計1に対して各種の指示を与えるために操作される操作部3が配される。操作部3は、電源をON/OFFするために操作されるスイッチ31、測定の開始を指示するために操作されるスイッチ32、測定動作を停止するための操作されるスイッチ33、および記録されている情報を呼び出すために操作されるスイッチ34を含む。
【0032】
図4は、血圧計1の構成の具体例を示すブロック図である。
図4を参照して、腕帯9には空気袋13が含まれる。血圧計1の基体2には、空気袋13にエアチューブ8で連結される圧力センサ23、ポンプ21、および弁22が含まれる。
【0033】
圧力センサ23は発振回路28に接続される。ポンプ21は駆動回路26に接続され、弁22は駆動回路27に接続される。
【0034】
駆動回路26、駆動回路27、および発振回路28は、血圧計1全体を制御するためのCPU(Central Processing Unit)40に接続される。CPU40には、さらに、時計6と、表示部4と、操作部3と、処理用のメモリ5Aと、データ記憶用のメモリ5Bと、電力供給のための電源7とが接続される。
【0035】
メモリ5Aは、CPU40がプログラムを実行する際の作業領域となる。メモリ5Bは、CPU40で実行される制御プログラムや後述するように測定値などを記憶する。
【0036】
CPU40は、操作部3から入力される操作信号に基づいてメモリ5Bに記憶されている所定のプログラムを実行し、駆動回路26および駆動回路27に制御信号を出力する。駆動回路26および駆動回路27は、それぞれ制御信号に従ってポンプ21および弁22を駆動させる。
【0037】
ポンプ21は、CPU40からの制御信号に従った駆動回路26によって駆動が制御されて、空気袋13内に空気を注入する。弁22は、CPU40からの制御信号に従った駆動回路27によって開閉が制御されて、空気袋13内の空気を排出する。
【0038】
圧力センサ23は静電容量形の圧力センサであり、空気袋13の内圧変化により容量値が変化する。発振回路28は圧力センサ23の容量値に応じた発振周波数信号を出力し、CPU40に入力される。
【0039】
CPU40は、圧力センサ23から得られた空気袋13の内圧変化に基づいて所定の処理を実行し、その結果に応じて駆動回路26および駆動回路27に上記制御信号を出力する。また、CPU40は、圧力センサ23から得られた空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出し、測定結果を表示部4に表示させるための処理を行なって表示させるためのデータと制御信号とを表示部4に出力する。また、CPU40は、測定結果をメモリ5Bに記憶させるための処理を行なう。
【0040】
腕帯9は測定時において測定部位である上腕に巻き回すために用いられる。その状態でスイッチ32が押下されることで測定動作が開始される。
【0041】
[第1の実施の形態]
<機能構成>
図5は、第1の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成の具体例を示すブロック図である。図5の各機能は、CPU40が操作部3からの操作信号に従ってメモリ5Bに記憶されるプログラムを読み出して実行することで、主に、CPU40に形成されるものであるが、少なくとも一部が図4に示されたハードウェア構成で形成されるものであってもよい。
【0042】
図5を参照して、CPU40は、圧力センサ23からのセンサ信号の入力および時計6からの日時情報を受付けるための入力部401と、センサ信号の示す圧力値に基づいて被測定者の血圧値を算出するための血圧算出部402と、算出された血圧値を測定日時を特定する情報と共に測定結果としてメモリ5Bの所定領域に書き込むための書込部403と、メモリ5Bの所定領域から測定結果を読み出すための読出部404と、算出することで得られた測定結果と読み出された測定結果とを比較することで循環器系疾患のリスクの指標値を算出するか否かを判断するための判断部405と、判断部405での判断結果に応じてこれら測定結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための指標算出部406と、算出された指標値または判断部405で算出しないと判断されたことに応じた出力を表示部4で出力する処理を実行するための出力部407とを含む。
【0043】
図6は、メモリ5Bの所定領域に記憶される測定結果の具体例を示す図である。
図6を参照して、メモリ5Bの所定領域には、血圧算出部402で算出された血圧値が測定日時を特定する情報と共に記憶される。好ましくは、操作部3には図示しない被測定者を特定するためのボタンが含まれ、測定時に被測定者を特定するための指示を受付けて、測定結果が被測定者を識別する情報(ユーザ情報)と共に記憶される。このようにすることで、複数の被測定者で血圧計1を利用する際に、被測定者ごとに測定結果を管理でき、被測定者ごとに循環器系疾患のリスクの指標値を算出することができる。
【0044】
さらに、測定結果として、当該測定結果を用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値(循環器系リスク)が記憶されていてもよい。
【0045】
上述のように、血圧計1は、ある程度の短い期間内で複数回の測定を行ない、その結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するものである。なお、ここでの、複数回の測定は、複数回の測定が、それぞれ、短い期間である所定の期間内で直前の測定からなされる場合と、短い期間である所定の期間内で複数回の測定がなされる場合との両方の概念を含む。そこで、CPU40は、入力部401で受付けたセンサ信号に基づいて血圧算出部402で血圧値が算出されると、その血圧値の測定時から上記ある程度短い期間内に測定された血圧値がメモリ5Bに記憶されている場合には、その血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出し、そのような血圧値がメモリ5Bに記憶されていない場合には、指標値を算出しない。
【0046】
そのため、読出部404は血圧算出部402で血圧値が算出されたことを受けてメモリ5Bから最新の測定結果を読み出し、判断部405に入力する。判断部405は、メモリ5Bから入力された血圧値の測定日時が血圧算出部402で算出された血圧値の測定日時から上記ある程度短い期間内であるか否かを判断することで、これらの血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するかしないかを判断する。
【0047】
なお、上記ある程度短い期間は特定の期間に限定されないが、好ましくは、5分程度が挙げられる。そこで、以降の説明では、5分以内の測定値を用いるものとする。
【0048】
<動作フロー>
図7は、第1の実施の形態にかかる血圧計1における動作を表わしたフローチャートである。図7のフローチャートに示される動作は、操作部3に含まれるスイッチ32が押下されることによって開始される。この動作は、CPU40がメモリ5Bに記憶される制御プログラムを読み出して図5に示される各部を制御することによって実現される。
【0049】
図7を参照して、測定動作が開始するとCPU40はステップS1で各部を初期化した後、ステップS3で駆動回路26および駆動回路27に対して制御信号を出力して弁22を閉じポンプ21を作動させ、空気袋13を加圧させる。
【0050】
加圧の過程においてステップS5でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。ここでの血圧値の算出方法は、通常の電子血圧計で採用されているオシロメトリック法での算出方法であってよい。
【0051】
なお、この例では、加圧過程の空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するものとしているが、これに替えて、減圧過程の空気袋13の内圧変化に基づいて血圧値を算出するようにしてもよい。
【0052】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS7でYES)、ステップS9でCPU40は、駆動回路26に制御信号を出力して加圧を停止させ、さらに、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を開放させる。これにより、空気袋13が急速に減圧する。
【0053】
ここで、メモリ5Bの所定領域にこの測定から5分以内に測定された測定結果である血圧値が記憶されている場合(ステップS11でYES)、ステップS13でCPU40は、上記ステップS5で算出された血圧値とメモリ5Bに記憶されている上記血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値rを算出する。ここでは、たとえば先に測定された最高血圧値SBP1、後に測定された最高血圧値SBP2、およびその測定時間間隔tを用いて、以下の式(1)のようにして算出される、
r=(SBP1−SBP2)/t …式(1)。
【0054】
または、血圧値の差分に限定されず、その比率を用いて、以下の式(2)のようにして算出されてもよい、
r=(SBP1/SBP2)/t …式(2)。
【0055】
なお、上記式(1)(2)は、1回目の測定で得られた最高血圧値SBP1と2回目の測定で得られた最高血圧値SBP2との差または比より指標値を算出するものである。しかしながら、この方法は一例であって、他の方法が採用されてもよい。たとえば、さらに2回目の測定で得られた最高血圧値SBP2と3回目の測定で得られた最高血圧値SBP3との差または比で指標値を算出し、複数の指標値の代表値(平均値、最大値、最小値、中央値など)を最終の指標値と特定して出力してもよい。または、複数の指標値の差または比を算出し、その値を最終の指標値と特定して出力してもよい。
【0056】
そして、ステップS15でCPU40は、測定結果としてステップS5で測定された血圧値と共に、ステップS13で算出された循環器系疾患のリスクの指標値rを表示部4に表示させるための処理を実行し、一連の測定動作を終了する。
【0057】
図8は、上記ステップS15での処理により表示部4に表示される画面例を示す図である。図8に示されるように、測定が完了すると、その測定によって得られた血圧値と共に、直前に測定された血圧値も用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値が表示される。さらに、指標値についてのしきい値を予め記憶しておき、当該しきい値と算出された指標値とを比較することでその比較結果を血圧値と併せて表示するようにしてもよい。また、図8の例では、算出された指標値が上記しきい値よりも大きいとして、その比較結果に応じて予め記憶されているメッセージ「循環器系リスクが高いです」が血圧値と併せて表示されている。
【0058】
なお、図7に示されたフローチャートでは、メモリ5Bの所定領域に当該測定から5分以内に測定された測定結果である血圧値が記憶されていない場合には上記ステップS13の指標値の算出を行なわないものとしている。この場合、上記ステップS15では、上記ステップS5で測定された血圧値のみ表示されてもよい。または、指標値の算出を可能とするため、たとえば、「5分以内にもう一度測定して下さい」などのメッセージを予め記憶しておき、上記ステップS5で測定された血圧値と共に表示するようにしてもよい。このようにすることで、その測定時に、今回の測定結果を用いて指標値を算出することができる。
【0059】
<第1の実施の形態の効果>
第1の実施の形態にかかる血圧計1において上のような動作が行なわれることで、簡易な測定で循環器系の調節機構による動態を把握することが可能となる。そして、それに基づいた循環器系疾患のリスクの指標値を知ることができ、容易に循環器系疾患のリスクを把握することができる。
【0060】
[第2の実施の形態]
<動作概要>
第1の実施の形態では、加圧過程または減圧過程のいずれか一方の過程で血圧が測定されるものとしている。そのため、所定期間内の複数回の測定結果を得るためには、ユーザは、複数回、測定開始の指示を行なってそれに伴う測定動作を実行させる必要がある。
【0061】
そこで、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、1回の測定開始の指示に応じた加圧過程と減圧過程との両過程でそれぞれ血圧を測定し、それらを用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する。
【0062】
図9は、第2の実施の形態にかかる血圧計1での循環器系疾患のリスクの指標値の算出方法を説明するための図である。図9を参照して、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、加圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPinfと、減圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPdefとの差分(またはその比率)を算出し、その値を循環器系疾患のリスクの指標値として用いる。
【0063】
<機能構成>
第2の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成は、図5に示された第1の実施の形態にかかる血圧計1の機能構成と概ね同様である。
【0064】
第2の実施の形態にかかる血圧計1の場合、判断部405は血圧算出部402において減圧過程でのセンサ信号に基づいて血圧値が算出されたことを受けて、加圧過程でのセンサ信号に基づいて血圧値が算出されたか否かに応じて指標値の算出が可能か否かを判断する。
【0065】
<動作フロー>
図10は、第2の実施の形態にかかる血圧計1における動作を表わしたフローチャートである。図10のフローチャートに示される動作もまた、操作部3に含まれるスイッチ32が押下されることによって開始される。この動作は、CPU40がメモリ5Bに記憶される制御プログラムを読み出して図5に示される各部を制御することによって実現される。
【0066】
図10を参照して、測定動作が開始するとCPU40はステップS31で各部を初期化した後、ステップS33で駆動回路26および駆動回路27に対して制御信号を出力して弁22を閉じポンプ21を作動させ、空気袋13を加圧させる。
【0067】
加圧の過程においてステップS35でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。
【0068】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS37でYES)、ステップS39でCPU40は、駆動回路26に制御信号を出力して加圧を停止させ、さらに、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を所定量開放させる。これにより、空気袋13の減圧が開始する。第1の実施の形態にかかる血圧計1では加圧過程で血圧値が算出された後は測定終了として急速に空気袋13を減圧しているが、第2の実施の形態にかかる血圧計1では、減圧過程でも血圧を測定するために、測定に適した変化速度となるように徐々に減圧する。
【0069】
減圧の過程でもまた、ステップS41でCPU40は空気袋13の内圧に重畳した動脈の容積変化に伴う振動成分を抽出し、所定の演算により血圧値を算出する。
【0070】
血圧値の算出が完了し、血圧値が決定すると(ステップS43でYES)、ステップS45でCPU40は、駆動回路27に制御信号を出力して弁22を開放させる。これにより、空気袋13が急速に減圧する。
【0071】
ここで、加圧過程と減圧過程との両過程において血圧測定が成功し、メモリ5Bの所定領域に両測定結果が記憶されている場合(ステップS47でYES)、ステップS49でCPU40は、上記ステップS35で算出された加圧過程で得られた血圧値と上記ステップS41で算出された減圧過程で得られた血圧値とを用いて循環器系疾患のリスクの指標値rを算出する。ここでは、加圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPinfと、減圧過程で血圧値を算出して得られた最高血圧値SBPdefとを用いて、以下の式(3)のようにして算出される、
r=SBPinf−SBPdef …式(3)。
【0072】
または、血圧値の差分に限定されず、その比率を用いて、以下の式(4)のようにして算出されてもよい、
r=SBPinf/SBPdef …式(4)。
【0073】
または、式(1)もしくは式(2)と同様に、加圧過程での血圧測定と減圧過程での血圧測定の時間差tを用いて、以下の式(5)、(6)のようにして算出されてもよい、
r=(SBPinf−SBPdef)/t …式(5)、
r=(SBPinf/SBPdef)/t …式(6)。
【0074】
そして、ステップS51でCPU40は、測定結果としてステップS35,S41で測定された血圧値と共に、ステップS49で算出された循環器系疾患のリスクの指標値rを表示部4に表示させるための処理を実行し、一連の測定動作を終了する。
【0075】
図11は、上記ステップS51での処理により表示部4に表示される画面例を示す図である。図11に示されるように、測定が完了すると、加圧過程および減圧過程で得られた両血圧値と共に、これらを用いて算出された循環器系疾患のリスクの指標値rが表示される。なお、両血圧値に替えていずれか一方の血圧値のみ表示してもよいし、または、図11に示されるように、これらの平均値も併せて表示するようにしてもよい。
【0076】
なお、図10に示されたフローチャートでは、加圧過程での測定でも減圧過程での測定でも、血圧値が算出されるまで加圧または減圧を行なうものとされているが、測定が失敗のまま空気袋13の内圧が所定圧に達した時点でエラーとして動作を先に進めるようにしてもよい。いずれか一方の測定が失敗だった場合、指標値の算出を行なわず、測定された血圧値のみ表示するようにしてもよい。または、指標値の算出を可能とするため、たとえば、「もう一度測定して下さい」などのメッセージを予め記憶しておき、血圧値と共に表示するようにしてもよい。
【0077】
<第2の実施の形態の効果>
第2の実施の形態にかかる血圧計1がこのように動作することで、1回の測定開始の指示に伴った測定動作によって2つの測定結果を得ることができ、それに基づいて指標値を得ることができる。
【0078】
[変形例]
なお、以上の説明では、血圧計1本体において所定期間内の複数回の測定結果を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するものとしているが、血圧計1にたとえばパーソナルコンピュータ(PC)などの他の演算装置に測定日時を特定する情報と共に血圧値を直接またはインターネット等を介して出力する機能が搭載されている場合、当該演算装置において該測定結果を用いて指標値を算出するようにしてもよい。
【0079】
この場合、演算装置に上記動作を実行させるためのプログラムを提供することもできる。このようなプログラムは、コンピュータに付属するフレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)およびメモリカードなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体にて記録させて、プログラム製品として提供することもできる。あるいは、コンピュータに内蔵するハードディスクなどの記録媒体にて記録させて、プログラムを提供することもできる。また、ネットワークを介したダウンロードによって、プログラムを提供することもできる。
【0080】
なお、本発明にかかるプログラムは、コンピュータのオペレーティングシステム(OS)の一部として提供されるプログラムモジュールのうち、必要なモジュールを所定の配列で所定のタイミングで呼び出して処理を実行させるものであってもよい。その場合、プログラム自体には上記モジュールが含まれずOSと協働して処理が実行される。このようなモジュールを含まないプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0081】
また、本発明にかかるプログラムは他のプログラムの一部に組込まれて提供されるものであってもよい。その場合にも、プログラム自体には上記他のプログラムに含まれるモジュールが含まれず、他のプログラムと協働して処理が実行される。このような他のプログラムに組込まれたプログラムも、本発明にかかるプログラムに含まれ得る。
【0082】
提供されるプログラム製品は、ハードディスクなどのプログラム格納部にインストールされて実行される。なお、プログラム製品は、プログラム自体と、プログラムが記録された記録媒体とを含む。
【0083】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 血圧計、2 基体、3 操作部、4 表示部、5A,5B メモリ、6 時計、7 電源、8 エアチューブ、9 腕帯、13 空気袋、21 ポンプ、22 弁、23 圧力センサ、26,27 駆動回路、28 発振回路、31,32,33,34 スイッチ、40 CPU、401 入力部、402 血圧算出部、403 書込部、404 読出部、405 判断部、406 指標算出部、407 出力部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、
前記流体袋の内圧を調整するための調整手段と、
前記流体袋の内圧を検出するためのセンサと、
前記測定部位に装着された前記流体袋の圧力変化に基づいて前記被測定者の血圧値を算出し、前記血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、
前記算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備え、
前記演算手段は、前記算出された第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出する、電子血圧計。
【請求項2】
前記指標値は、前記第1の血圧値の測定時と前記第2の血圧値の測定時との間の時間経過に対する、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値との変化度合いである、請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記演算手段は、前記測定部位に装着された前記流体袋が前記調整手段によって加圧される過程における前記圧力変化に基づいて算出された前記血圧値を前記第1の血圧値とし、前記加圧された過程の後に前記調整手段によって減圧される過程における前記圧力変化に基づいて算出された前記血圧値を前記第2の血圧値とし、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出する、請求項1または2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、
前記流体袋の内圧を調整するための調整手段と、
前記流体袋の内圧を検出するためのセンサと、
前記測定部位に装着された前記流体袋の圧力変化に基づいて前記被測定者の血圧値を算出し、前記血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、
前記算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備え、
前記演算手段は、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、前記複数の血圧値を用いて前記指標値を算出する、電子血圧計。
【請求項5】
前記演算手段は、前記所定期間内に順に測定された第1の血圧値、第2の血圧値、および第3の血圧値のうちの前記第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて第1の前記指標値を算出し、前記第2の血圧値と前記第3の血圧値とを用いて第2の前記指標値を算出し、前記第1の指標値と前記第2の指標値とに基づいて前記指標値を算出する、請求項4に記載の電子血圧計。
【請求項6】
コンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、
血圧値の入力を受け付けるステップと、
前記入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、
前記第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出するステップとを前記コンピュータに実行させる、演算プログラム。
【請求項7】
コンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、
血圧値の入力を受け付けるステップと、
前記入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、
所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、前記複数の血圧値を用いて前記指標値を算出するステップとを前記コンピュータに実行させる、演算プログラム。
【請求項1】
被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、
前記流体袋の内圧を調整するための調整手段と、
前記流体袋の内圧を検出するためのセンサと、
前記測定部位に装着された前記流体袋の圧力変化に基づいて前記被測定者の血圧値を算出し、前記血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、
前記算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備え、
前記演算手段は、前記算出された第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出する、電子血圧計。
【請求項2】
前記指標値は、前記第1の血圧値の測定時と前記第2の血圧値の測定時との間の時間経過に対する、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値との変化度合いである、請求項1に記載の電子血圧計。
【請求項3】
前記演算手段は、前記測定部位に装着された前記流体袋が前記調整手段によって加圧される過程における前記圧力変化に基づいて算出された前記血圧値を前記第1の血圧値とし、前記加圧された過程の後に前記調整手段によって減圧される過程における前記圧力変化に基づいて算出された前記血圧値を前記第2の血圧値とし、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出する、請求項1または2に記載の電子血圧計。
【請求項4】
被測定者の測定部位に装着するための流体袋と、
前記流体袋の内圧を調整するための調整手段と、
前記流体袋の内圧を検出するためのセンサと、
前記測定部位に装着された前記流体袋の圧力変化に基づいて前記被測定者の血圧値を算出し、前記血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出するための演算手段と、
前記算出された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するための記憶手段とを備え、
前記演算手段は、所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、前記複数の血圧値を用いて前記指標値を算出する、電子血圧計。
【請求項5】
前記演算手段は、前記所定期間内に順に測定された第1の血圧値、第2の血圧値、および第3の血圧値のうちの前記第1の血圧値と第2の血圧値とを用いて第1の前記指標値を算出し、前記第2の血圧値と前記第3の血圧値とを用いて第2の前記指標値を算出し、前記第1の指標値と前記第2の指標値とに基づいて前記指標値を算出する、請求項4に記載の電子血圧計。
【請求項6】
コンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、
血圧値の入力を受け付けるステップと、
前記入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、
前記第1の血圧値から所定期間内に測定されて算出された第2の血圧値が記憶されている場合に、前記第1の血圧値と前記第2の血圧値とを用いて前記指標値を算出するステップとを前記コンピュータに実行させる、演算プログラム。
【請求項7】
コンピュータに血圧値を用いて循環器系疾患のリスクの指標値を算出する演算を実行させるためのプログラムであって、
血圧値の入力を受け付けるステップと、
前記入力された血圧値を、測定時を特定するための情報と共に測定結果として記憶するステップと、
所定期間内に測定されて算出された複数の血圧値が記憶されている場合に、前記複数の血圧値を用いて前記指標値を算出するステップとを前記コンピュータに実行させる、演算プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−200507(P2012−200507A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69927(P2011−69927)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]