電子表示システムおよび電子表示システム用のサーバ
【課題】電子表示装置を駆動する電池の残存寿命を正確に予測可能とする技術を提供する。
【解決手段】電池で駆動される電子棚札に対して情報を提供するESLサーバにおいて、通信実績取得部91と残存寿命予測部92とが実現される。通信実績取得部91は、ESLサーバと電子棚札との間の通信実績情報を取得する。残存寿命予測部92は、通信実績情報に基づいて電子棚札の電池の残存寿命を予測する。通信実績情報を用いると電子棚札が通信により消費した電力を正確に特定することができるので、電池の残存寿命の予測値として信頼性の高い値を得ることができる。
【解決手段】電池で駆動される電子棚札に対して情報を提供するESLサーバにおいて、通信実績取得部91と残存寿命予測部92とが実現される。通信実績取得部91は、ESLサーバと電子棚札との間の通信実績情報を取得する。残存寿命予測部92は、通信実績情報に基づいて電子棚札の電池の残存寿命を予測する。通信実績情報を用いると電子棚札が通信により消費した電力を正確に特定することができるので、電池の残存寿命の予測値として信頼性の高い値を得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動される電子表示装置と当該電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムおよび電子表示システム用のサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電子表示システムは、従来から様々な分野で利用されている。例えば、近年実用化されている「電子棚札システム(ESLシステム/Electronic Shelf Label System)」においても、この電子表示システムが用いられている。
【0003】
電子棚札システムについて簡単に説明する。一般に、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗では、POSシステム等に記憶される商品マスタによって、店舗内の商品の売価が一元的に管理されている。その一方で、顧客(消費者)への売価の伝達は、商品の位置に配置される紙媒体の棚札によりなされることが多い。このような紙媒体の棚札を採用した場合においては、棚札の管理は人手に頼らざるを得ないことから、売価の間違いなどの人為的ミスが生じやすい。このため、POSシステムのレジスタによる精算時の売価とは異なる誤った売価が、顧客に対して伝達されるおそれがある。
【0004】
電子棚札システムはこのような問題を解決するために実用化されたシステムである。電子棚札システムは、電子表示装置の一種である「電子棚札」と、電子棚札のそれぞれに対して情報を提供するサーバである「情報配信装置」とを備える。情報配信装置は、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号を各電子棚札に送信(例えば、赤外線送信)する。電子棚札は、店舗内において各商品に対応して配置され、情報配信装置から受信した通信信号に基づいて、対応する商品の売価などの商品情報を表示する。この電子棚札システムを用いると、電子棚札において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子棚札システムに用いられる電子棚札は、商品の配置変更に対応できるように可搬性をもたせる必要があるため、その駆動源は電池とされることが多い。
【0006】
図21は、電子棚札が消費する電気量を模式的に示す図である。通信を行っていない状態においては、電子棚札は、消費する電気量を抑えるべく、ごく僅かな電流(例えば6μA程度)しか必要としないスリープ状態となっており、周期的に(例えば、単位秒あたりに約1/128秒間程度)、スリープ状態からウェイクアップに遷移している(間欠動作)。そして、ウェイクアップ状態において情報配信装置からの赤外線信号を検知すると、電子棚札はその時点から情報配信装置との通信を開始し、通信が完了するまでウェイクアップ状態を維持し続ける。情報配信装置との間で通信を行っている間は、電子棚札は相当量の電流(例えば50μA程度)を必要とする。ここからわかるように、電子棚札5が消費する電気量は、情報配信装置との間で通信を行った時間に依存し、情報配信装置との間で通信を行った時間が長くなればなるほど、電子棚札が消費する電気量は増加する。すなわち、電子棚札を駆動する電池が激しく消耗する。
【0007】
例えば、特売が頻繁に行われる店舗においては、電子棚札の表示内容(すなわち、商品の売価)を書き換える頻度が高くなるため、情報配信装置から電子棚札へ頻繁に赤外線信号が送られる。すなわち、電子棚札と情報配信装置との間での総通信時間が長くなる。したがって、このような店舗においては、電子棚札を駆動する電池の消耗が激しい。
【0008】
このように、電子棚札を駆動する電池の消耗速度は、電子棚札システムが導入されている店舗の運用状況によって変わってくるため、この電池の残存寿命は、画一的な計算では正確に予測することができない。また、電子棚札システムが導入されている店舗の運用状況までを考慮して事前に電池の残存寿命を予測しようとすると、予測に要する計算処理が非常に煩雑になってしまう。また、店舗の運用状況を考慮して電池の残存寿命の予測値を計算したとしても、店舗の運用状況は時間とともに変化していく可能性があるので、算出された予測値が将来的にも信頼できる値であるとはいえない。
【0009】
このような事情は、電子棚札システムに用いられる電子表示システムに限ったことではなく、電池により駆動される電子表示装置を備える電子表示システム全般において同様に当てはまる。
【0010】
電池の残存寿命が正確に予測できていなかったために、予測したよりも早く電池が消耗してしまうと、電池交換などの対応措置が間に合わず、システムの運用に支障が出てしまう可能性がある。一方、このような事態に備えて、あらゆる使用条件に耐えうるように電池容量の大きな電池を電子表示装置に搭載しようとすると、過剰設計となってしまい、コスト面からみて好ましくない。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、電子表示装置を駆動する電池の残存寿命を正確に予測可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、電池で駆動される電子表示装置と、前記電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムであって、前記サーバが、前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、を備える。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、現時点で前記電池に残存している電池容量である残存電池容量を特定する残存電池容量特定手段と、前記通信実績情報に基づいて、現時点までの所定期間において前記電子表示装置が電気を消費した速度である近傍消費速度を算出する消費速度算出手段と、前記電子表示装置が前記近傍消費速度で電気を消費し続けた場合に、前記残存電池容量を消費してしまうまでの期間を算出し、算出された期間を前記電池の残存寿命の予測値として取得する残存寿命予測値算出手段と、を備える。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間で前記電子表示装置が消費した電気量である消費電気量を算出し、前記電池の使用前の電池容量と前記消費電気量とを差分して得られる値を前記残存電池容量として取得する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記サーバと前記電子表示装置との間で行われた通信の総時間を特定し、特定された前記総時間の値に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量を算出する通信電気量算出手段、を備え、前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更を行った回数を特定し、特定された回数に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量を算出する表示変更電気量算出手段、を備え、前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記サーバが、前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記サーバと前記電子表示装置との間での通信頻度を所定値まで低下させる通信頻度調整手段、を備える。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記サーバが、前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記電池が消耗する時期が近いことを報知する報知手段、を備える。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、定期的に、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する。
【0020】
請求項9の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、外部からの指示に応じて、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する。
【0021】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記電子表示装置が、前記電池の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する記憶手段と、所定のカウンタクリアコマンドに応じて前記カウンタ値をクリアするカウンタ値クリア手段と、を備え、前記サーバが、前記電子表示装置に前記カウンタクリアコマンドを送信する送信手段、を備える。
【0022】
請求項11の発明は、請求項10に記載の電子表示システムであって、前記送信手段が、前記カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信する。
【0023】
請求項12の発明は、電池で駆動される電子表示装置に対して情報を提供する電子表示システム用のサーバであって、前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
請求項1〜12の発明によると、電子表示システムにおいて、サーバが電子表示装置との間での通信実績情報に基づいて電子表示装置を駆動する電池の残存寿命を予測する。この構成によると、電子表示装置の使用実態に即して電池の残存寿命を予測するので、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0025】
特に、請求項2の発明によると、電子表示装置が最近と同じ速度で今後も電気を消費し続けた場合に、現時点で前記電池に残存している電池容量を消費してしまうまでの期間を算出して、電池の残存寿命の予測値として取得する。この構成によると、電子表示装置が電気を消費する速度が経年変化している場合であっても、その変化を反映させた正確な予測値を得ることができる。
【0026】
特に、請求項3の発明によると、通信実績情報に基づいて現時点で電池に残存している電池容量を特定するので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することができる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0027】
特に、請求項4の発明によると、消費電気量に、電池が使用開始されてから現時点までの期間において電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれるところ、この電気量を、通信実績情報に基づいて特定した通信の総時間に基づいて算出する。この構成によると、通信により消費した電気量を正確に算出できるので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することが可能となる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0028】
特に、請求項5の発明によると、消費電気量に、電池が使用開始されてから現時点までの期間において電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれるところ、この電気量を、通信実績情報に基づいて特定した表示変更の回数に基づいて算出する。この構成によると、表示変更のために消費した電気量を正確に算出できるので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することが可能となる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0029】
特に、請求項6の発明によると、残存寿命予測手段が予測した電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、サーバと電子表示装置との間の通信頻度を所定値まで低下させるので、電池が消耗してしまうまでの時間を延長することができる。
【0030】
特に、請求項7の発明によると、残存寿命予測手段が予測した電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、電池が消耗する時期が近いことを報知するので、電子表示システムのオペレータは電池が消耗してしまうまでに電池交換などの措置をとることができる。
【0031】
特に、請求項10の発明によると、電子表示装置の電池の消費電気量を示すカウンタ値をクリアさせるカウンタクリアコマンドを、サーバから電子表示装置に送信する。この構成によると、サーバが電子表示装置のカウンタ値の状態を把握することができる。
【0032】
特に、請求項11の発明によると、カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信するので、電池の交換を行っていない電子表示装置に対してカウンタクリアコマンドが送信されてしまい、カウンタ値をクリアすべきでない電子表示装置のカウンタ値が誤ってクリアされてしまうといった事態が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電子棚札システムが備える電子棚札が配置された様子を示す図である。
【図2】電子棚札システムを含む商品管理システムの構成例を示す図である。
【図3】発注処理端末の構成を示す斜視図である。
【図4】ESLサーバの構成を示す図である。
【図5】商品ファイルの例を示す図である。
【図6】電子棚札の構成を示す図である。
【図7】残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】残存寿命予測処理部が行う処理の原理を説明するための図である。
【図9】残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図10】残存寿命予測処理部が行う処理の原理を説明するための図である。
【図11】第1の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図12】店舗内に規定されたサブセルの様子を模式的に示す図である。
【図13】第2の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図14】第4の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図15】第4の変形例に係る残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図16】第5の変形例に係る残存寿命予測処理部等の構成を示すブロック図である。
【図17】ESLサーバから電子棚札へ送信される赤外線信号を模式的に示す図である。
【図18】第5の変形例に係る残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図19】第6の変形例に係る残存寿命予測処理部等の構成を示すブロック図である。
【図20】DMSシステムの構成例を示す図である。
【図21】電子棚札が消費する電気量を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。以下においては、この発明に係る電子表示システムを、電子棚札システムに用いた場合を例にとって説明する。
【0035】
〈1.電子棚札システム〉
〈1−1.電子棚札システムの概要〉
図1は、電子棚札システム1が備える電子棚札5が、店舗の商品棚60に配置された様子を示す図である。本電子棚札システム1においては、売価などの商品6に係る商品情報を表示する可搬性の電子棚札5が、各商品6に対応して配置される。そして、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号が情報配信装置から各電子棚札5に送信され、その売価が各電子棚札5に表示される。これにより、電子棚札5において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達されるようになっている。
【0036】
図1に示されるように、商品棚60はフェース61と呼ばれる空間に区分され、各フェース61には同一種の商品6が集約されて載置される。商品棚60のフレーム62には、各フェース61に対応する位置にそれぞれ電子棚札5が取り付けられている。すなわち、電子棚札5はそれぞれ一の商品6(正確には、一の商品の種類)に対応づけられ、その対応する商品6の近傍(一般的には、商品6の下側)のフレーム62に配置される。各電子棚札5はそれぞれディスプレイを備えており、ディスプレイには対応する商品6の売価が表示される。店舗の顧客(消費者)は、このような電子棚札5の表示により商品6の売価を認識する。
【0037】
電子棚札5は可搬性の装置であり、商品6の配置変更に対応できるように、フレーム62から取り外して別の位置に再配置することも可能とされている。本実施の形態においては、図1に示すような商品棚60が店舗内の販売スペースに複数配置されている。
【0038】
〈1−2.商品管理システムの構成〉
図2は、店舗に適用される、電子棚札システム1を含む商品管理システム100の構成例を示す図である。図2に示されるように、商品管理システム100は、電子棚札システム1とともに、ストアコントローラ2及びPOSシステム3を備えている。POSシステム3が備えるPOSサーバ31、及び電子棚札システム1が備えるESLサーバ10は、LAN21を介してストアコントローラ2に接続されている。これにより、ストアコントローラ2、POSシステム3及び電子棚札システム1の相互間でデータ通信が可能とされている。
【0039】
〈ストアコントローラ〉
ストアコントローラ2は一般的なコンピュータで構成され、商品管理システム100を統括的に管理する装置として機能する。また、ストアコントローラ2はインターネットなどの外部ネットワークに接続されており、外部ネットワークを介して、店舗を統括管理する本部センターに配置されたサーバ装置等のコンピュータと通信可能とされている。
【0040】
〈POSシステム〉
POSシステム3は、商品6の販売に係る情報をその販売時点において収集して分析するシステムであり、POSシステム3を統括的に管理するPOSサーバ31とともに、商品6の精算を行う複数のレジスタ32を備えている。POSサーバ31とレジスタ32とは専用の通信ケーブルで接続されている。
【0041】
POSサーバ31は一般的なコンピュータで構成され、そのハードディスクには、売価などの商品6に係る各種の情報を示す商品マスタ301が記憶されている。複数のレジスタ32のそれぞれにおいては、商品マスタ301に記載される売価に基づいて商品6の精算がなされる。
【0042】
店舗内の全商品6に係る情報は、この商品マスタ301により一元的に管理されている。商品マスタ301に記載される情報には、商品6を識別するための商品コード、商品6の名称である商品名、通常の売価である通常価格、特売における売価である特売価格、特売を実施する期間である特売期間、販売数、在庫数、1回の発注で納品される数である発注数などが含まれている。
【0043】
〈発注処理端末〉
LAN21には、無線LAN用の電波中継器たるアクセスポイント(AP)170が接続されている。商品6を発注する際に使用される可搬性の発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じてLAN21に接続することが可能であり、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。発注処理端末180は、店舗スタッフにより所定の操作が実行されると、商品6の発注を指示する発注指示情報を、無線LANを利用してストアコントローラ2に出力する。発注指示情報には、例えば、発注対象の商品6を識別するための商品コードや、当該商品6の発注数などが含まれている。ストアコントローラ2は、発注処理端末180からの発注指示を受け付ける発注サーバとしても機能し、入力された発注指示情報を本部センターに通知する。本部センターは、各店舗からの発注指示情報に基づいて、発注先の業者のサーバに対して商品6の発注を行う。
【0044】
図3は発注処理端末180の詳細な構成を示す斜視図である。図3に示されるように、発注処理端末180は、「ハンディーターミナル」と呼ばれる可搬性の業務端末であって、各種情報を表示するディスプレイ181と、バーコードを読み取るバーコードリーダ182と、店舗スタッフの各種操作を受け付ける操作部183とを備えている。また、発注処理端末180は、アクセスポイント170と無線通信を行う通信部184を備えている。この通信部184の機能により、発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じて、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。そして、発注処理端末180には、その動作を統括的に管理する制御部185が設けられている。制御部185はCPUやメモリなどで構成されている。
【0045】
〈1−3.電子棚札システム〉
電子棚札システム1は、上述した複数の電子棚札5と、電子棚札5に表示すべき商品6の売価などを配信する情報配信装置40と、電子棚札5の表示画面を切り換える際に使用される可搬性のリモコン160とを備えている。
【0046】
〈情報配信装置〉
情報配信装置40は、電子棚札システム1を統括的に管理するサーバ装置であるESLサーバ10と、複数の通信装置4と、ESLサーバ10と複数の通信装置4との間の信号の中継器として機能するベースステーション41とを備えている。ESLサーバ10と複数の通信装置4とは、ベースステーション41を通じて相互にデータ通信が可能とされている。各通信装置4は電子棚札5と赤外線通信を行う。複数の通信装置4は、販売スペース90内に配置された全ての電子棚札5と通信可能なように、販売スペース90の天井などに略一定距離ごとに配置される。
【0047】
ESLサーバ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。図4はESLサーバ10の構成を示す図である。ESLサーバ10は、各種演算処理を行うCPU11、ブートプログラム等を記憶するROM12、演算処理の作業領域となるRAM13、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク14、各種表示を行うディスプレイ15、キーボード及びマウスなどで構成される入力部16、LAN21を介したデータ通信機能を有するデータ通信部17、並びに、ベースステーション41と通信するためのインターフェイス18を備えている。電子棚札5に送信すべき売価を示す信号はインターフェイス18及びベースステーション41を通じて通信装置4に伝達される。
【0048】
ESLサーバ10のハードディスク14には、動作プログラムが予め記憶されており、この動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより、ESLサーバ10としての各種機能が実現される。また、ESLサーバ10のハードディスク14には、商品6に係る各種の情報を示すデータファイルである商品ファイル101が記憶されている。
【0049】
図5は商品ファイル101の例を示す図である。図5に示されるように、商品ファイル101はテーブル形式となっており、レコード102のそれぞれが一の商品6に係る情報を示している。具体的には、レコード102ごとに、商品コード、商品名、通常価格、特売価格、特売期間、販売数及び在庫数などが登録されている。これらの情報は、上述したPOSシステム3に記憶された商品マスタ301と同様の情報であり、ESLサーバ10とPOSシステム3との通信により商品マスタ301の情報に基づいて登録される。このため、商品ファイル101の情報と商品マスタ301の情報とは内容が一致する。
【0050】
商品ファイル101の各レコード102には、さらに、電子棚札システム1が備える複数の電子棚札5のそれぞれに固有のハードウェアIDである一の「装置コード」が登録される。これにより、商品6と電子棚札5とが一対一の関係でデータ的に対応づけられる(リンク付けされる)。この装置コードが利用されることにより、ある商品6の売価が、その商品6に対応する電子棚札5に対して送信されるようになっている。
【0051】
以上の構成を有するESLサーバ10は、各電子棚札5に送信する送信データをCPU11で生成し、当該送信データをインターフェイス18及びベースステーション41を通じて各通信装置4に出力する。各通信装置4は、入力された送信データを含む通信信号を、自身が通信可能な各電子棚札5に出力する。これにより、販売スペース90に配置された各電子棚札5に対して同一の送信データが情報配信装置40から入力される。ESLサーバ10から送信される送信データには、商品ファイル101中の通常価格や特売価格などの商品情報や、装置コードなどが含まれている。
【0052】
また、ESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能を備えている。これについては後に説明する。
【0053】
〈電子棚札〉
次に電子棚札5の構成について詳細に説明する。図6は電子棚札5の構成を示す図である。図6に示されるように、電子棚札5の前面には、商品情報を表示するディスプレイ51と、情報配信装置40との通信を担う通信部54とが配置されている。また、電子棚札5の裏面には、自装置の装置コードを示す文字列とバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
【0054】
通信部54は、赤外線信号を出力する発光部52と、通信装置4からの赤外線信号及びリモコン160からの赤外線信号を受信し、それを電気信号に変換して後述の制御部57に出力する受光部53とを備えている。データを送信する送信部として機能する発光部52は例えばLEDで構成されており、データを受信する受信部として機能する受光部53は、例えばフォトダイオード及びアンプで構成されている。
【0055】
ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、例えば電子ペーパで構成されている。電子ペーパ等の不揮発性表示部では、駆動電力を与えることなく表示内容を保持することができる。ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、商品6の売価などを示す数値のみならず、文字、記号、図形などを表示することができる。また、本実施の形態に係るディスプレイ51は、複数の表示画面を切り換えて表示することが可能である。例えば、ディスプレイ51は、商品の売価など、商品を購入する顧客が利用する情報が主に表示される表示画面(表画面)と、商品の販売数など、店舗の店員が利用する情報(販売数、発注数、特売期間などの商品情報や、自身に割り当てられた装置コード等)が表示される表示画面(裏画面)とを切り換えて表示することができる。
【0056】
表画面には、例えば図6に示されるように、自装置が対応付けられた商品の売価51aとともに、その商品を特定可能な情報である商品名51b及び商品コード51d(具体的には、商品コードを示すバーコード)が表示される。ディスプレイ51に商品特定情報が表示されずに売価51aのみが表示される場合には、電子棚札5がいずれの商品に対応付けられているかの把握は困難であるが、このような商品特定情報の表示により、電子棚札5と商品とが視覚的に対応付けられる。また、自装置が対応付けられた商品6の商品コードを数字で表す文字列51cと、当該商品コードを示すバーコード51dとが、当該バーコード51dが延びる方向に並んで表示されてもよい。
【0057】
電子棚札5の内部には、当該電子棚札5の電源を供給する小型の56と、当該電子棚札5の動作を統括的に制御する制御部57とが設けられている。制御部57は、CPUやメモリなどで構成されている。このメモリには、ディスプレイ51に表示すべき売価や商品名などの各種情報や、自装置の装置コードが記憶される。通信装置4から出力された赤外線信号に含まれる売価などの情報は、通信部54で受信されて、その後、制御部57に入力される。制御部57は、入力された当該情報を一旦メモリに記憶する。そして、制御部57は、ディスプレイ51を制御して、メモリ内の各種情報をディスプレイ51に表示させる。このように、制御部57は、ディスプレイ51の表示を制御する表示制御部として機能する。
【0058】
制御部57は、ディスプレイ51の表示をリモコン160から出力される赤外線信号に応じて切り換える。後述するように、リモコン160は、操作ボタン(図示省略)を有しており、操作ボタンに対する外部からの操作に応じて赤外線信号を送信することが可能である。リモコン160の操作ボタンが押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、例えば表画面から裏画面に変更する。この状態で、リモコン160の操作ボタンが再度押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、裏画面から表画面に変更する。
【0059】
〈リモコン〉
リモコン160は、電子棚札5の表示画面を切り換えるための信号を発信する遠隔操作機器である。リモコン160は、赤外線信号を出力する発光部と、発光部を制御する制御部と、赤外線信号の送信指示を受け付ける操作ボタンとを備えている(いずれも図示省略)。操作ボタンが押下されると、制御部は発光部を制御して、当該発光部から所定の赤外線信号を出力させる。リモコン160からの赤外線信号を受信した電子棚札5では、上述したとおり、そのディスプレイ51の表示が切り換わることになる。
【0060】
〈1−4.電子棚札システムの基本動作〉
次に、電子棚札5に売価が表示されるまでの電子棚札システム1の動作について説明する。本電子棚札システム1において、情報配信装置40から電子棚札5への売価の配信は、システム起動時、及び電子棚札5に表示させる売価を更新する際などに行われる。ここで売価を更新する際とは、商品マスタ301の通常価格が変更されたときや、特売の実施にあたって売価を通常価格から特売価格に変更するときなどが該当する。システム起動時には、店舗内の全ての商品6に関して売価の配信がなされる。一方、売価を更新する際には、対象となる商品6のみに関して売価の配信がなされる。これにより、電子棚札5に表示される売価と、レジスタ32による精算時の売価とが常時に一致されることになる。以下では、一の商品6に関しての売価の配信に係る動作について説明する。以下の説明において、売価の配信の対象となる商品6を「対象商品6」という。
【0061】
まず、情報配信装置40のESLサーバ10において、商品ファイル101のうちの対象商品6に係るレコード102が参照され、通常価格及び特売価格のうちの配信すべき売価、及び装置コードが取得される。ここで取得された装置コードは、対象商品6に対応する電子棚札5の装置コードであり、また、取得された売価はその電子棚札5が表示すべき売価となる。これらの売価及び装置コードは、電気的な信号としてベースステーション41を通じて各通信装置4に送信される。そして、通信装置4は、売価及び装置コードの情報を含む赤外線信号を出力する。
【0062】
通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信されて電気信号に変換される。制御部57は、通信部54で得られた電気信号から、売価及び装置コードを取得する。
【0063】
次に、制御部57は、得られた装置コードが、制御部57のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致しない場合は、受信した赤外線信号は他の電子棚札5のための信号と判断し、処理を終了する。一方で、制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合は、受信した赤外線信号は自装置のための信号と判断し、得られた売価をディスプレイ51に表示させて、ディスプレイ51に表示されている売価を更新する。
【0064】
以上のような動作によって、情報配信装置40から電子棚札5へ売価の配信がなされることになる。
【0065】
制御部57は、ディスプレイ51の表示を更新すると、売価を正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号を発光部52に出力させる。この赤外線信号は通信装置4で受信されて、当該赤外線信号に含まれる情報がESLサーバ10に伝達される。ESLサーバ10は、電子棚札5からの赤外線信号を受信しない場合は、配信した売価が電子棚札5で正常に受信されなかったと判断して、電子棚札5からの赤外線信号を受信するまで売価を繰り返し配信する処理を行う(リカバリー通信)。これにより、電子棚札5の表示を確実に更新でき、システムの信頼性を大幅に向上できる。
【0066】
〈1−5.電子棚札を駆動する電池の残存寿命の予測〉
〈1−5−1.機能構成〉
上述したとおり、ESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部(残存寿命予測処理部90)を備えている。残存寿命予測処理部90は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0067】
残存寿命予測処理部90の構成について図7を参照しながら説明する。図7は、残存寿命予測処理部90の構成を示すブロック図である。なお、以下においては、適宜図8を参照する。図8は、残存寿命予測処理部90が行う処理の原理を説明するための図である。
【0068】
残存寿命予測処理部90は、通信実績取得部91と残存寿命予測部92とを備える。
【0069】
〈通信実績取得部〉
ESLサーバ10は電子棚札5との間で行った通信の履歴をハードディスク14に蓄積しており、通信実績取得部91は、この通信履歴からESLサーバ10と電子棚札5との間の通信実績に関する情報である「通信実績情報」を取得する。「通信実績情報」には、ESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信(ただし、ここでいう「通信」には、正常な通信だけでなく、上述したリカバリー通信も含まれる)のそれぞれについて、当該通信を実行した時刻と、当該通信に要した時間とを示す情報が含まれる。したがって、通信実績情報に基づいて、特定の期間に行われた通信の回数を特定することができる。また、特定の期間内で行われた通信の総通信時間を算出することができる。
【0070】
なお、上述したとおり、ESLサーバ10は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して一斉送信を行う。したがって、通信実績情報に含まれる通信を実行した時刻や通信に要した時間は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれの間で共通する情報である。したがって、これらの情報に基づいて後述する残存寿命予測部92が算出した「電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命」は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうちの任意の電子棚札5について当てはまる値となる。
【0071】
〈残存寿命予測部〉
残存寿命予測部92は、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921と、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。
【0072】
〈残存電池容量算出部〉
残存電池容量算出部921は、現時点t(電池56の残存寿命の算出処理を実行する時点)で電池56に残存している電池容量(残存電池容量)Q2を算出する。具体的には、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、電池56が使用開始されてから現時点tまでの間の期間(使用期間)Tで、電子棚札5が消費した総電気量(消費電気量)Q1を算出する。そして、電池56の使用前の電池容量(初期電気量)Q0から消費電気量Q1を差分して得られた値を、残存電池容量Q2として取得する(すなわち、「残存電池容量Q2=初期電気量Q0−消費電気量Q1」)。
【0073】
ここで、消費電気量Q1の算出方法について説明する。図21に示されるように、電子棚札5は、スリープ状態とウェイクアップ状態との間を遷移しており、ウェイクアップ状態においてESLサーバ10からの赤外線信号を検知すると、ESLサーバ10との通信が完了するまでウェイクアップ状態を維持し続ける。つまり、電子棚札5は、ESLサーバ10と通信を行っている時間帯においては比較的大きな電流(通信電流)A1を消費し、ESLサーバ10と通信を行っていない時間帯においては比較的小さな電流(スタンバイ電流)A2を消費する。
【0074】
そこで、残存電池容量算出部921は、使用期間Tの間で電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、使用期間Tの間で電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得する(すなわち、「消費電気量Q1=通信電気量Q11+スタンバイ電気量Q12」)。
【0075】
残存電池容量算出部921は、通信電気量Q11を算出する機能部である通信電気量算出部9211と、スタンバイ電気量Q12を算出する機能部であるスタンバイ電気量算出部9212とを備える。
【0076】
通信電気量算出部9211は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のトータルの時間(総通信時間)T1を算出する。そして、得られた総通信時間T1の値に、電子棚札5がESLサーバ10と通信する時に必要とする電流(通信電流)A1の値を乗じて得られた値を、通信電気量Q11として取得する(すなわち、「通信電気量Q11=通信電流A1×総通信時間T1」)。
【0077】
スタンバイ電気量算出部9212は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で通信が行われていないトータルの時間(スタンバイ時間)T2を算出する。ただし、スタンバイ時間T2は、使用期間Tと総通信時間T1との差分によって取得することができる(すなわち、「スタンバイ時間T2=使用期間T−総通信時間T1」)。そして、得られたスタンバイ時間T2の値に、電子棚札5がESLサーバ10と通信していない時に必要とする電流(例えば、スリープ状態にある時に必要とする電流)(スタンバイ電流)A2の値を乗じて得られた値を、スタンバイ電気量Q12として取得する(すなわち、「スタンバイ電気量Q12=スタンバイ電流A2×スタンバイ時間T2」)。
【0078】
〈消費速度算出部〉
消費速度算出部922は、通信実績取得部91が取得した通信実績に基づいて、最近(現時点tまでの所定期間(例えば、過去1ヶ月間))において、電子棚札5が電気を消費する平均速度(近傍消費速度)Kを算出する。
【0079】
ここで、近傍消費速度Kの算出方法について具体的に説明する。消費速度算出部922は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、現時点tまでの所定期間(近傍期間)Tiにおいて、電子棚札5が消費した電気量(近傍消費電気量)Qiを算出する。近傍消費電気量Qiの算出方法は、消費電気量Q1の算出方法と同様である。すなわち、消費速度算出部922は、通信実績情報に基づいて、電子棚札5が、近傍期間Tiの間で通信により消費した電気量と、近傍期間Tiの間で通信を行っていない時間帯で消費した電気量とをそれぞれ算出し、算出された各値を加算して得られた値を近傍消費電気量Qiとして取得する。
【0080】
続いて、消費速度算出部922は、取得された近傍消費電気量Qiに基づいて近傍消費速度Kを算出する。具体的には、近傍消費電気量Qiを近傍期間Tiで割って得られた値を、近傍消費速度Kとして取得する(すなわち、「近傍消費速度K=近傍消費電気量Qi/近傍期間Ti」)。
【0081】
〈残存寿命予測値算出部〉
残存寿命予測値算出部923は、残存電池容量算出部921が算出した残存電池容量Q2と、消費速度算出部922が算出した近傍消費速度Kとに基づいて、現時点tから電池56の電池容量が「0」となるまでの期間(すなわち、電池56の残存寿命)として予測される値(残存寿命予測値)Rを算出する。具体的には、残存電池容量Q2を近傍消費速度Kで割った値を残存寿命予測値Rとして取得する(すなわち、「残存寿命予測値R=残存電池容量Q2/近傍消費速度K」)。つまり、電子棚札5が、最近(具体的には、現時点tまでの所定期間Ti)のペースと同じペースで電気を消費し続けた場合に(図8の仮想線)、電池56の残存電池容量が「0」となるまでの期間を算出して、残存寿命予測値Rとして取得するのである。
【0082】
〈1−5−2.処理の流れ〉
次に、残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9は、この処理の流れを示す図である。なお、以下の処理は、外部からの所定の指示が与えられた場合(例えば、ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが所定の指示を入力した場合、また例えば、ESLサーバ10と通信回線を介して接続されたメンテナンス装置からESLサーバ10へ所定の指示が送られてきた場合)に、当該指示に応じて実行開始される。
【0083】
まず、通信実績取得部91が、ハードディスク14に蓄積された通信履歴から、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信実績情報を取得する(ステップS11)。
【0084】
続いて、残存寿命予測部92が電池56の残存寿命を予測する。具体的には、まず、ステップS11で取得された通信実績情報に基づいて、残存電池容量算出部921が残存電池容量Q2を算出する(ステップS12)。また、ステップS11で取得された通信実績情報に基づいて、消費速度算出部922が近傍消費速度Kを算出する(ステップS13)。そして、取得された残存電池容量Q2および近傍消費速度Kに基づいて、残存寿命予測値算出部923が残存寿命予測値Rを算出する(ステップS14)。以上で電池56の残存寿命を予測する処理が終了する。
【0085】
なお、上記一連の処理によって算出された残存寿命予測値Rの値は、各種の方法でオペレータに知得される。例えば、ESLサーバ10の入力部16を介して入力された指示に応じて上記一連の処理が実行された場合、残存寿命予測値Rが算出されると、ESLサーバ10のCPU11は、算出された残存寿命予測値RをESLサーバ10のディスプレイ15に表示させる。また例えば、メンテナンス装置からESLサーバ10へ通信回線を介して送られた指示に応じて上記一連の処理が実行された場合、残存寿命予測値Rが算出されると、ESLサーバ10のCPU11は、算出された残存寿命予測値Rをメンテナンス装置に送信する。
【0086】
〈2.効果〉
上記の実施の形態に係る電子表示システム1が備えるESLサーバ10においては、残存寿命予測処理部90が、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する。通信実績情報に基づくと、電子棚札5が通信により消費した電力を正確に特定することができるので、電池56の残存寿命の予測値として信頼性の高い値を得ることができる。
【0087】
特に、消費電気量算出部92が、通信実績情報に基づいて、使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11を算出し、これに基づいて使用期間Tの間で電子棚札5が消費した総電気量(消費電気量)Q1を特定する。そして、得られた消費電気量Q1に基づいて、残存寿命予測値算出部94が残存寿命予測値Rを算出する。通信実績情報に基づくと、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のトータルの時間(総通信時間T1)を正確に算出することができるので、正確な通信電気量Q11を特定することが可能となり、結果として電池56の残存寿命を正確に予測することができる。
【0088】
また、消費速度算出部93が、最近において電子棚札5が電気を消費する平均速度(近傍消費速度K)を算出し、残存寿命予測値算出部94が、電子棚札5が、そのペースで電気を消費し続けた場合に電池56の残存電池容量が「0」となるまでの期間を残存寿命予測値Rとして取得する。したがって、例えば、図10に示されるように、電子棚札5が電気を消費するペースが早くなってきた場合、この変化に応じて近傍消費速度Kの値(すなわち、仮想線の傾き)は大きくなり、電池56の残存寿命はその分だけ短く算出される。すなわち、ある時刻t1において予測される残存寿命予測値R1と、時刻t1よりも後の時刻t2において予測される残存寿命予測値R2とがそれぞれ予測する電池56の消耗時刻は、互いに異なる値となり、当然の事ながら、後者の値の方がより正確な予測値となっている。このように、上記の実施の形態に係る残存寿命予測処理部90は、実際の電子棚札5の使用態様に変化があった場合でも、その変化を加味して電池56の残存寿命を正確に予測することができる。
【0089】
〈3.変形例〉
〈3−1.第1の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存電池容量算出部921は、電子棚札5が使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、電子棚札5が使用期間Tの間で通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得していたが、さらに、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して消費電気量Q1を算出する構成としてもよい。
【0090】
〈3−1−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90aの構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、残存寿命予測処理部90aの構成を示すブロック図である。なお、図11においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0091】
残存寿命予測処理部90aは、通信実績取得部91aと残存寿命予測部92aとを備える。
【0092】
通信実績取得部91aは、上述した実施の形態に係る通信実績取得部91と同様の機能部であり、通信実績情報を取得する。ただし、通信実績取得部91aが取得する通信実績情報には、ESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のそれぞれについて、当該通信にて送信された送信データに含まれる装置コードを示す情報が含まれる。この情報を参照することによって、当該送信データに応じて表示を更新した電子棚札5が、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちのどれであるかを特定することができる。したがって、通信実績情報に基づいて、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のそれぞれについて、特定の期間内において当該電子棚札5が表示を更新した回数を特定することができる。
【0093】
残存寿命予測部92aは、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921aと、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。消費速度算出部922および残存寿命予測値算出部923の機能は上述した通りである。
【0094】
残存電池容量算出部921aは、現時点tで電池56に残存している電池容量(残存電池容量)Q2を算出する。具体的には、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて電池56の消費電気量Q1を算出し、初期電気量Q0から消費電気量Q1を差分して得られた値を、残存電池容量Q2として取得する。
【0095】
ここで、消費電気量Q1の算出方法について説明する。残存電池容量算出部921aは、使用期間Tの間で電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、使用期間Tの間で電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12と、使用期間Tの間で電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量(表示変更電気量)Q13とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得する(すなわち、「消費電気量Q1=通信電気量Q11+スタンバイ電気量Q12+表示変更電気量Q13」)。
【0096】
残存電池容量算出部921aは、通信電気量Q11を算出する機能部である通信電気量算出部9211と、スタンバイ電気量Q12を算出する機能部であるスタンバイ電気量算出部9212と、表示変更電気量Q13を算出する機能部である表示変更電気量算出部9213とを備える。通信電気量算出部9211およびスタンバイ電気量算出部9212の機能は上述した通りである。
【0097】
表示変更電気量算出部9213は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のそれぞれについて、使用期間Tにおいて当該電子棚札5が表示を更新した回数を特定する。そして、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、使用期間Tにおける更新の回数が最も多い電子棚札5を特定し、当該電子棚札5の更新の回数を「最大更新回数N」として取得する。さらに、得られた最大更新回数Nの値に、電子棚札5がディスプレイ51の表示を1回更新する際に消費する電気量(更新電気量C)の値を乗じて得られた値を、表示変更電気量Q13として取得する(すなわち、「表示変更電気量Q13=最大更新回数N×更新電気量C」)。
【0098】
〈3−1−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90aが実行する処理の流れは、上述した残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れと同様である(図9参照)。
【0099】
〈3−1−3.効果〉
この変形例によると、残存寿命予測処理部90aが、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して残存寿命を予測するので、残存寿命の予測値として正確な値を得ることができる。特に、電子ペーパを用いたドットマトリクス方式の表示デバイスで構成されるディスプレイ51においては、表示を更新する際に電気を大きく消費するので、この変形例が有効である。一方、ディスプレイが、表示を更新する際に消費する電気がほとんど変化しないタイプの表示装置(例えば、液晶を用いたセグメントタイプの表示デバイス)により構成される場合には、上述した実施の形態に係る算出方式で十分に正確な消費電気量Q1(ひいては、残存寿命予測値R)の値を得ることができる。
【0100】
なお、この変形例においては、残存電池容量算出部921aが算出する消費電気量Q1は、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで使用期間Tにおける更新の回数が最も多い電子棚札5(すなわち、電気の消耗が最も激しい電子棚札5)が、使用期間Tにおいて消費した総電気量である。したがって、残存寿命予測部92が算出する残存寿命予測値Rは、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、電池56が最も早く消耗すると予想される電子棚札5を駆動する電池56の残りの寿命として予測される値である。つまり、この構成によると、店舗内に配置された電子棚札5のどれかが電池切れを起こしてしまう最も早い時刻を正確に予測することができる。
【0101】
〈3−2.第2の変形例〉
電子表示システム1が比較的狭い店舗に導入される場合、ESLサーバ10は、店舗内の全領域に向けて赤外線信号を送信する。しかしながら、電子表示システム1が比較的広い店舗に導入される場合、図12に例示されるように、店舗内をサブセルと呼ばれる複数のエリアA,B,Cに区分し、ESLサーバ10が、各サブセルA,B,Cに向けて個別に赤外線の送信を行う構成とされる場合がある。つまり、サブセルA,B,Cは、赤外線信号を送信する単位であり、例えばサブセルAの領域内に配置された電子棚札5に対する赤外線信号を送信する場合、ESLサーバ10は、サブセルAに対してのみ当該赤外線信号を送信する。
【0102】
ESLサーバ10が、サブセル単位で赤外線信号を送信する場合、店舗内の位置によってESLサーバ10と電子棚札5との間で通信が行われる時間が変わってくる。したがって、電子棚札5の電池56が消費する電気量(消費電気量Q1)は、当該電子棚札5が配置されている位置によって変わってくる。そこで、ESLサーバ10がサブセル単位で赤外線信号を送信する場合には、下記の態様で残存寿命予測値Rを算出する構成としてもよい。
【0103】
〈3−2−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90bの構成について、図13を参照しながら説明する。図13は、残存寿命予測処理部90bの構成を示すブロック図である。なお、図13においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0104】
残存寿命予測処理部90bは、通信実績取得部91bと残存寿命予測部92bとを備える。
【0105】
通信実績取得部91bは、上述した実施の形態に係る通信実績取得部91と同様の機能部であり、通信実績情報を取得する。ただし、通信実績取得部91bが取得する通信実績情報には、ESLサーバ10と各電子棚札5との間で行われた通信のそれぞれについて、当該通信を実行した時刻および当該通信に要した時間とを示す情報の他に、通信対象となった電子棚札5がどのサブセルに配置されていたか(すなわち、どのサブセルに対して行われた通信であるか)を特定する情報が含まれる。したがって、通信実績情報に基づいて、各サブセルについて、特定の期間に行われた通信の回数を特定することができる。また、各サブセルについて、特定の期間内で行われた通信の総通信時間を算出することができる。
【0106】
残存寿命予測部92bは、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921bと、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。消費速度算出部922および残存寿命予測値算出部923の機能は上述した通りである。
【0107】
残存電池容量算出部921bは、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうち、電池の消耗が最も激しいと予想される電子棚札5の電池56に残存している残存電池容量(最小残存電池容量)Q2bを算出する。具体的には、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、電気の消耗が最も激しいと予想される電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量(最大消費電気量)Q1bを算出し、初期電気量Q0から最大消費電気量Q1bを差分して得られた値を、最小残存電池容量Q2bとして取得する。
【0108】
残存電池容量算出部921bが最大消費電気量Q1bを算出する方法について、図12に示されるサブセル配置を例にとって説明する。このようなサブセル配置の場合、2つのサブセルA,Bが重複する領域に配置された電子棚札5は、ESLサーバ10がサブセルAに配置された電子棚札5に対して行った送信と、ESLサーバ10がサブセルBに配置された電子棚札5に対して行った送信との両方を受信する。つまり、この重複領域に配置された電子棚札5とESLサーバ10との間の通信の総時間は、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と、サブセルBに係る総通信時間T1(B)とを加算した値となる。同様に、サブセルB,Cが重複する領域に配置された電子棚札5とESLサーバ10との間の通信の総時間は、サブセルBに係る総通信時間T1(B)と、サブセルCに係る総通信時間T1(C)とを加算した値となる。上述した通り、ESLサーバ10との間での通信時間が長くなるほど電子棚札5の消費電気量が大きくなる。したがって、サブセルの重複領域に配置された電子棚札5は、それ以外の領域に配置された電子棚札5よりも電池56の消耗が激しいと予想できる。そこで、残存電池容量算出部921bは、サブセルの重複領域(重複領域が多数ある場合は、総通信時間が最も長い重複領域)に配置された電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量を算出して、最大消費電気量Q1bとして取得する。
【0109】
具体的には、残存電池容量算出部921bは、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、サブセルの重複領域それぞれに係る総通信時間を特定する。そして、総通信時間が最も長い重複領域の総通信時間を、最大総通信時間T1bとして取得する。続いて、残存電池容量算出部921bは、当該重複領域に配置された電子棚札5が、使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11bと、使用期間Tの間で当該電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12bとを算出し、算出された各値を加算して得られた値を最大消費電気量Q1bとして取得する。ただし、通信電気量Q11bは、先に取得された最大総通信時間T1bの値に通信電流A1の値を乗じて得られる値である。また、スタンバイ電気量Q12bは、使用期間Tから最大総通信時間T1bを差分して得られる値に、スタンバイ電流A2の値を乗じて得られる値である。
【0110】
〈3−2−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90bが実行する処理の流れは、上述した残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れと同様である(図9参照)。
【0111】
〈3−2−3.効果〉
この変形例においては、残存電池容量算出部921bは、サブセルの重複領域(重複領域が多数ある場合は、総通信時間が最も長い重複領域)に配置された電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量を算出して、最大消費電気量Q1bとして取得する。したがって、残存寿命予測部92が算出する残存寿命予測値Rは、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、電池56が最も早く消耗すると予想される電子棚札5を駆動する電池56の残りの寿命として予測される値である。つまり、この構成によると、ESLサーバ10がサブセル単位で赤外線信号を送信する構成において、店舗内に配置された電子棚札5のどれかが電池切れを起こしてしまう最も早い時刻を正確に予測することができる。
【0112】
〈3−3.第3の変形例〉
第2の変形例において、最大消費電気量Q1bの算出にあたり、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味してもよい。
【0113】
〈3−3−1.機能構成〉
この変形例の場合、残存電池容量算出部921bは、まず、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれについて、当該電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量として予想される最大の値(予想最大消費電気量)Q100を算出する。そして、複数の電子棚札5のうち、予想最大消費電気量Q100が最も大きい電子棚札5の予想最大消費電気量Q100を、最大消費電気量Q1bとして取得する。
【0114】
残存電池容量算出部921bが、任意の電子棚札5(以下「対象電子棚札5」という)の予想最大消費電気量Q100を算出する方法について説明する。
【0115】
残存電池容量算出部921bは、使用期間Tの間で対象電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q111と、使用期間Tの間で対象電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q112と、使用期間Tの間で電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量(表示変更電気量)Q113とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を予想最大消費電気量Q100として取得する。
【0116】
通信電気量Q111およびスタンバイ電気量Q112を算出する方法について説明する。残存電池容量算出部921bは、まず、対象電子棚札5の総通信時間として考えられる最大の値(予想最大通信時間)T11を特定する。例えば、対象電子棚札5がサブセルA(図12参照)に配置されているとする。ここで、対象電子棚札5がサブセルA内におけるサブセルBとの非重複領域に配置されている場合、対象電子棚札5の総通信時間は、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と一致する。一方、対象電子棚札5がサブセルA内におけるサブセルBとの重複領域に配置されている場合、対象電子棚札5の総通信時間はサブセルAとサブセルBの重複領域に係る総通信時間(すなわち、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と、サブセルBに係る総通信時間T1(B)とを加算した値)と一致する。
【0117】
ところが、ESLサーバ10は、対象電子棚札5が、どのサブセルに配置されているかを特定する情報を有しているが、対象電子棚札5がサブセル内のどの領域に配置されているかまでは特定できない。そこで、残存電池容量算出部921bは、対象電子棚札5が配置されたサブセルにおいて、最も総通信時間が長い領域の総通信時間を、当該対象電子棚札5の予想最大通信時間T11として取得する。例えば上記の例の場合、サブセルAとサブセルBの重複領域の総通信時間を、対象電子棚札5の予想最大通信時間T11として取得する。
【0118】
続いて、残存電池容量算出部921bは、得られた予想最大通信時間T11の値に通信電流A1の値を乗じて得られる値を、対象電子棚札5の通信電気量Q111として取得する。また、使用期間Tから予想最大通信時間T1mを差分して得られる値に、スタンバイ電流A2の値を乗じて得られる値を、対象電子棚札5のスタンバイ電気量Q112として取得する。
【0119】
表示変更電気量Q113を算出する方法について説明する。残存電池容量算出部921bは、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、対象電子棚札5が使用期間Tにおいて表示を更新した回数を特定する。そして、得られた更新回数の値に、電子棚札5がディスプレイ51の表示を1回更新する際に消費する電気量(更新電気量C)の値を乗じて得られた値を、表示変更電気量Q113として取得する。
【0120】
〈3−3−2.効果〉
この変形例によると、第2の変形例において得られる効果と同様の効果を得られる上、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して残存寿命を予測するので、残存寿命の予測値として正確な値を得ることができる。
【0121】
〈3−4.第4の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値は、ESLサーバ10のディスプレイ15に表示等されることによってオペレータに知得させる構成としていたが、電池56の残存寿命が残り少ない場合(具体的には、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さい場合)に、その旨をオペレータに報知する構成としてもよい。
【0122】
〈3−4−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90cの構成について、図14を参照しながら説明する。図14は、残存寿命予測処理部90dの構成を示すブロック図である。なお、以下においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0123】
残存寿命予測処理部90cは、通信実績取得部91と、残存寿命予測部92と、報知処理部93とを備えている。通信実績取得部91および残存寿命予測部92の機能は上述した通りである。
【0124】
報知処理部93は、残存寿命予測部92が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値(例えば、1ヶ月)よりも小さい場合に、電池56が消耗する時期が近いことをオペレータに報知する処理を行う。報知処理の具体的な態様はどのようなものであってもよい。例えば、ESLサーバ10のディスプレイ15に所定のメッセージ(例えば、「電子棚札の電池容量が残り僅かです。電池交換をしてください。」とのメッセージ)を表示する構成としてもよいし、メンテナンス装置に当該所定のメッセージを送信する構成としてもよい。
【0125】
〈3−4−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90cが実行する処理の流れについて、図15を参照しながら説明する。図15は、この処理の流れを示す図である。
【0126】
ステップS21〜ステップS24の各処理は、上記の実施の形態に係るステップS11〜ステップS14の各処理と同様である。
【0127】
ステップS24で、残存寿命予測値Rが算出されると、続いて報知処理部93が、算出された残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25で、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さいと判断された場合、報知処理部93は、電池56が消耗する時期が近いことをオペレータに報知する処理を行う(ステップS26)。ステップS24で、残存寿命予測値Rが所定値以上であると判断された場合、報知処理部93は、報知処理を行うことなく処理を終了する。
【0128】
〈3−4−3.効果〉
この変形例によると、電子棚札5の電池56が消耗する時期が近い場合、その旨をオペレータに報知するので、オペレータは電池56が消耗してしまうまでに電池交換などの措置をとることができる。
【0129】
〈3−5.第5の変形例〉
上記の実施の形態に係るESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部(残存寿命予測処理部90)を備える構成としたが、さらに、電池56の残存寿命に応じてESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度を調整する機能部(通信頻度調整部81)を備える構成としてもよい。
【0130】
〈3−5−1.機能構成〉
この変形例に係るESLサーバ10は、図16に示す通り、上述した残存寿命予測処理部90に加えて、通信頻度調整部81と能動化指示受付部82とを備えている。通信頻度調整部81および能動化指示受付部82は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0131】
通信頻度調整部81は、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値(例えば、1ヶ月)よりも小さい場合に、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度を所定値まで低下させて、電子表示システム1をセーブモード状態とする。
【0132】
ここで、セーブモード状態について説明する。通常状態(非セーブモード状態)においては、ESLサーバ10は、電子棚札5へ送るべき情報信号が発生すると直ちに当該情報信号を電子棚札5へ送信するが、セーブモード状態においては、ESLサーバ10は、発生した情報信号をすぐには電子棚札5へ送信せずに、所定のタイミングまでESLサーバ10の側で蓄積しておく。そして、所定のタイミングで、蓄積された情報信号を一度に電子棚札5へ送信する。蓄積された情報信号の送信は、例えば、予め定められた所定の周期毎に行ってもよいし、所定量以上の情報信号が蓄積された時点で行ってもよい。また、原則として所定の周期毎に行うこととし、次の送信時刻になる前に、蓄積された情報量が所定量以上となった場合は、その時点で送信を行う構成としてもよい。
【0133】
電子表示システム1をセーブモード状態とすることによって、電子棚札5が電池56を消耗する速度を低下させることができる。すなわち、電池56の残存寿命を延命することができる。その理由は次の通りである。
【0134】
ESLサーバ10から電子棚札5へ送信される赤外線信号には、商品情報や、装置コードなど、電子棚札5に送信すべき情報を含んだ情報信号の他に、間欠動作を解除する信号である「間欠動作解除信号」が含まれる。間欠動作解除信号は、電子棚札5の間欠動作(図21参照)を解除するための信号であり、図17に模式的に示されるように、情報信号に先立って所定時間(ただし、間欠動作時においてウェイクアップ状態に遷移する周期よりも長い時間であり、例えば2秒間程度)送信される。したがって、例えば、通信時間が0.1秒間の情報信号を1件送信する場合、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(a)に示されるように、約2.1秒間となる。
【0135】
ここで、通信時間が0.1秒間の情報信号を5件送信する場合の通信時間を考える。5件の情報信号をバラバラに送った場合、送信を1回行う度毎に間欠動作解除信号を送らなければならないので、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(b)に示されるように、約10.5秒間という長時間に及んでしまう。一方、5件の情報信号をまとめて送った場合、間欠動作解除信号は1回だけ送信すればよいので、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(c)に示されるように、2.5秒間ですむ。このように、複数件の情報信号をまとめて電子棚札5に送信することによって通信時間を短くすることが可能となり、その結果、電池56の消耗を抑えることができるのである。
【0136】
能動化指示受付部82は、通信頻度調整部81を能動化させるか否かの選択指示を、オペレータから受け付ける。ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが通信頻度調整部81を能動化させる旨の指示を入力した場合、能動化指示受付部82は当該指示に応じて通信頻度調整部81を能動化させる。すると、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合に、電子表示システム1がセーブモード状態とされる。すなわち、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度が低下する。
【0137】
一方、オペレータが通信頻度調整部81を能動化させない旨の指示を入力した場合、能動化指示受付部82は当該指示に応じて通信頻度調整部81を非能動化させる。すると、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合であっても、電子表示システム1はセーブモード状態とはならない。すなわち、ESLサーバ10は、電子棚札5へ送るべき情報信号が発生すると直ちに当該情報信号を電子棚札5へ送信する。
【0138】
〈3−5−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90および通信頻度調整部81が実行する処理の流れについて、図18を参照しながら説明する。図18は、この処理の流れを示す図である。
【0139】
ただし、以下のステップS35〜ステップS36の各処理は、通信頻度調整部81が能動化されている場合(具体的には、オペレータが、予めESLサーバ10の入力部16を介して通信頻度調整部81を能動化させる旨の指示を入力し、当該指示を受け付けた能動化指示受付部82が、当該指示に応じて通信頻度調整部81を能動化させている場合)にのみ行われる。
【0140】
ステップS31〜ステップS34の各処理は、上記の実施の形態に係るステップS11〜ステップS14の各処理と同様である。
【0141】
ステップS34で、残存寿命予測値Rが算出されると、通信頻度調整部81は、算出された残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35で、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さいと判断された場合、通信頻度調整部81は、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させる(ステップS36)。ステップS34で、残存寿命予測値Rが所定値以上であると判断された場合は、通信頻度調整部81は、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させない。
【0142】
〈3−5−3.効果〉
この変形例によると、残存寿命予測処理部90が取得した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合に、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させることができる。セーブモード状態においては電池56の消耗が抑えられるので、電子表示システム1をセーブモード状態とすることによって、電子棚札5の電池56を延命することができる。
【0143】
また、セーブモードにおいては、電池56の消耗が抑えられるというメリットがある半面、ESLサーバ10において一定期間情報信号が蓄積されるため、電子棚札5への情報伝達のタイミングが遅れるというデメリットがある。この変形例においては、能動化指示受付部82が、オペレータからの指示に応じて通信頻度調整部81を能動化もしくは非能動化するので、オペレータは、電池56の残存寿命が残り少なくなった場合に電子表示システム1をセーブモード状態に移行させるか否かを選択することができる。すなわち、電子表示システム1をセーブモード状態として電池56の残存寿命の延命を優先するか、セーブモード状態とせずに、電子棚札5への速やかな情報伝達を優先するか、をオペレータが選択することができる。
【0144】
〈3−6.第6の変形例〉
上記の実施の形態に係る電子棚札5は、制御部57のメモリに、自装置の電池56の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する構成であってもよい。カウンタ値は、例えば、電子棚札5がESLサーバ10との間で行った通信の回数を示す値であり、このカウンタ値に基づいて、電池56の消費電気量を特定することができる。
【0145】
ところで、電子棚札5が記憶するカウンタ値は、電子棚札5の電池56を交換した時に一旦クリアしなければならない。従来の一般的な電子表示システムの場合、専用のリモコン型送信機を用いて、対象となる電子棚札に対して、カウンタ値をクリアさせるコマンド(カウンタクリアコマンド)をブロードキャスト(送信先の電子棚札を特定しない送信方法)により送信し、これにより対象となる電子棚札にカウンタ値のクリアを行わせていた。ところがこの構成によると、ESLサーバの側において、どの電子棚札がカウンタ値をクリアしたかを把握できないため、システム管理の観点からみて問題であった。また、電池の交換を行っていない電子棚札がカウンタクリアコマンドを受信すると、そのような電子棚札までもがカウンタ値をクリアしてしまう恐れがあった。
【0146】
また、従来用いられていたカウンタ値のクリア方法として、電子棚札にカウンタ値のリセットスイッチを設けておき、作業者が電池を交換した際にこのリセットスイッチを押下して、電子棚札5のカウンタ値をクリアする構成も考案されていた。しかしながら、この構成によると、電子棚札のそれぞれにリセットスイッチを設ける必要があるため電子棚札の電気回路が複雑になり、コスト上好ましくなかった。また、作業者の手間がかかるという難点もあった。
【0147】
そこで、上記の実施の形態に係る電子表示システム1において、ESLサーバ10に、店舗内に配置された複数の電子棚札5のカウンタ値を管理する機能部を備える構成としてもよい。
【0148】
〈3−6−1.機能構成〉
この変形例に係るESLサーバ10は、図19に示す通り、上述した残存寿命予測処理部90に加えて、コマンド送信部83とカウンタ値管理部84とを備えている。コマンド送信部83およびカウンタ値管理部84は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0149】
コマンド送信部83は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して、カウンタクリアコマンドを送信する。カウンタクリアコマンドの送信は、例えばトランシーバを経由して行われる。
【0150】
コマンド送信部83は、カウンタクリアコマンドの送信を、ユニキャスト(送信先の電子棚札5を特定する送信方法)もしくはブロードキャストで行う。例えば、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうちの一部が電池交換された場合、コマンド送信部83は、電池交換が行われた電子棚札5を、カウンタ値をクリアさせるべき電子棚札5として特定する。そして、当該電子棚札5に対して、ユニキャストでカウンタクリアコマンドを送信する。一方、店舗内に配置された複数の電子棚札5が一斉に電池交換された場合、コマンド送信部83は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して、ブロードキャストでカウンタクリアコマンドを送信する。
【0151】
カウンタクリアコマンドがユニキャストで送信される場合について具体的に説明する。この場合、コマンド送信部83は、カウンタクリアコマンドおよび電池交換が行われた電子棚札5の装置コードを含む電気的な信号を生成し、ベースステーション41を通じて各通信装置4に送信する。通信装置4は、カウンタクリアコマンド及び装置コードの情報を含む赤外線信号を出力する。通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信されて電気信号に変換される。電子棚札5の制御部57は、通信部54で得られた電気信号から、カウンタクリアコマンド及び装置コードを取得する。
【0152】
次に、電子棚札5の制御部57は、得られた装置コードが、制御部57のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致しない場合は、受信した赤外線信号は他の電子棚札5のための信号と判断し、処理を終了する。一方で、制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合は、受信した赤外線信号は自装置のための信号と判断し、メモリに記憶されたカウンタ値をクリアする。さらに、制御部57は、カウンタ値をクリアした場合、カウンタクリアコマンドを正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号(ACK応答信号)を発光部52に出力させる。この赤外線信号は通信装置4で受信されて、当該赤外線信号に含まれる情報がESLサーバ10に伝達される。これにより、ESLサーバ10は、電子棚札5のカウンタ値がクリアされたことを確認することができる。
【0153】
カウンタ値管理部84は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれについて、当該電子棚札5がカウンタ値をクリアした時刻を記憶する。具体的には、ESLサーバ10が、店舗内に配置された電子棚札5のいずれかからACK応答信号を受信した場合、当該ACK応答信号をESLサーバ10が受信した時刻とともに、当該ACK応答信号を送信した電子棚札5の装置コードを、ESLサーバ10のハードディスク14に格納する。
【0154】
〈3−6−2.効果〉
この変形例によると、ESLサーバ10から電子棚札5に対してカウンタクリアコマンドを送信し、これに応じて電子棚札5がカウンタ値をクリアするので、ESLサーバ10が店舗内に配置された電子棚札5それぞれのカウンタ値の状態(カウンタ値がクリアされたか否か)を把握することができる。また、この構成によると、電子棚札5に対してカウンタクリアコマンドを送信するためのリモコン型送信機が不要となる。また、電子棚札5にカウンタ値をクリアするためのリセットスイッチ等を設ける必要もない。
【0155】
また、ESLサーバ10から電子棚札5へユニキャストでカウンタクリアコマンドを送信することができるので、電池の交換を行っていない電子棚札に対してカウンタクリアコマンドが送信されてしまい、カウンタ値をクリアすべきでない電子棚札5のカウンタ値が誤ってクリアされてしまうといった事態が生じない。
【0156】
なお、上記の変形例においては、ESLサーバ10は、残存寿命予測処理部90とコマンド送信部83との両方を備える構成としたが、コマンド送信部83のみを備える構成としてもよい。
【0157】
〈3−7.その他の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値を、ESLサーバ10のディスプレイ15に表示、もしくは、ESLサーバ10と通信回線を介して接続された他の外部装置(例えば、ストアコントローラ2や、メンテナンス用の装置)に送信する構成としたが、それ以外の構成であってもよい。例えば、算出された残存寿命予測値Rの値を、通常はESLサーバ10のディスプレイ15に表示し、ある条件を満たした場合(例えば、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さい場合)に限って外部装置に送信する構成としてもよい。
【0158】
また、上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90は、ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが所定の指示を入力した場合に、当該指示に応じて残存寿命予測値Rを算出する処理を実行する構成としたが、オペレータにより予め設定された期間をおいて定期的に(例えば、2ヶ月毎に)、自動で処理を実行する構成としてもよい。この変形例の場合、処理の結果出力された残存寿命予測値Rの値は、ストアコントローラ2や、通信回線を介して接続されたメンテナンス用の装置に送信される構成とすることが好ましい。
【0159】
また、上記の実施の形態においては、この発明に係る電子表示システムを、電子棚札システム1に用いていたが、この発明に係る電子表示システムは他のシステムに用いることも可能である。例えば、DMS(ドットマトリクスサイネージ)システム80に用いても有効である。
【0160】
DMSシステム80の構成例を、図20を参照しながら簡単に説明する。DMSシステムは、電子表示装置の一種である作業表示装置85と、作業表示装置85のそれぞれに対して情報を提供するサーバであるDMSサーバ86とを備える。作業表示装置85は、作業対象物の存在する位置に配置されて、作業対象物に対する作業内容に関する情報を表示する。また、DMSサーバ86は、電波中継器たるアクセスポイントAPを介して、作業表示装置85のそれぞれに、当該作業表示装置85において表示すべき情報を無線送信する。
【0161】
このような構成を備えるDMSシステム80において、DMSサーバ86に、作業表示装置85を駆動する電池の残存寿命を予測する機能部(上述した残存寿命予測処理部90と同様の機能部)を備えさせることによって、当該電池の残存寿命を高い信頼性をもって予測することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 電子棚札システム
5 電子棚札
56 電池
10 ESLサーバ
81 通信頻度調整部
82 能動化指示受付部
90 残存寿命予測処理部
91 通信実績取得部
92 残存寿命予測部
93 報知処理部
9211 通信電気量算出部
9212 スタンバイ電気量算出部
9213 表示変更電気量算出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池で駆動される電子表示装置と当該電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムおよび電子表示システム用のサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような電子表示システムは、従来から様々な分野で利用されている。例えば、近年実用化されている「電子棚札システム(ESLシステム/Electronic Shelf Label System)」においても、この電子表示システムが用いられている。
【0003】
電子棚札システムについて簡単に説明する。一般に、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの店舗では、POSシステム等に記憶される商品マスタによって、店舗内の商品の売価が一元的に管理されている。その一方で、顧客(消費者)への売価の伝達は、商品の位置に配置される紙媒体の棚札によりなされることが多い。このような紙媒体の棚札を採用した場合においては、棚札の管理は人手に頼らざるを得ないことから、売価の間違いなどの人為的ミスが生じやすい。このため、POSシステムのレジスタによる精算時の売価とは異なる誤った売価が、顧客に対して伝達されるおそれがある。
【0004】
電子棚札システムはこのような問題を解決するために実用化されたシステムである。電子棚札システムは、電子表示装置の一種である「電子棚札」と、電子棚札のそれぞれに対して情報を提供するサーバである「情報配信装置」とを備える。情報配信装置は、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号を各電子棚札に送信(例えば、赤外線送信)する。電子棚札は、店舗内において各商品に対応して配置され、情報配信装置から受信した通信信号に基づいて、対応する商品の売価などの商品情報を表示する。この電子棚札システムを用いると、電子棚札において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子棚札システムに用いられる電子棚札は、商品の配置変更に対応できるように可搬性をもたせる必要があるため、その駆動源は電池とされることが多い。
【0006】
図21は、電子棚札が消費する電気量を模式的に示す図である。通信を行っていない状態においては、電子棚札は、消費する電気量を抑えるべく、ごく僅かな電流(例えば6μA程度)しか必要としないスリープ状態となっており、周期的に(例えば、単位秒あたりに約1/128秒間程度)、スリープ状態からウェイクアップに遷移している(間欠動作)。そして、ウェイクアップ状態において情報配信装置からの赤外線信号を検知すると、電子棚札はその時点から情報配信装置との通信を開始し、通信が完了するまでウェイクアップ状態を維持し続ける。情報配信装置との間で通信を行っている間は、電子棚札は相当量の電流(例えば50μA程度)を必要とする。ここからわかるように、電子棚札5が消費する電気量は、情報配信装置との間で通信を行った時間に依存し、情報配信装置との間で通信を行った時間が長くなればなるほど、電子棚札が消費する電気量は増加する。すなわち、電子棚札を駆動する電池が激しく消耗する。
【0007】
例えば、特売が頻繁に行われる店舗においては、電子棚札の表示内容(すなわち、商品の売価)を書き換える頻度が高くなるため、情報配信装置から電子棚札へ頻繁に赤外線信号が送られる。すなわち、電子棚札と情報配信装置との間での総通信時間が長くなる。したがって、このような店舗においては、電子棚札を駆動する電池の消耗が激しい。
【0008】
このように、電子棚札を駆動する電池の消耗速度は、電子棚札システムが導入されている店舗の運用状況によって変わってくるため、この電池の残存寿命は、画一的な計算では正確に予測することができない。また、電子棚札システムが導入されている店舗の運用状況までを考慮して事前に電池の残存寿命を予測しようとすると、予測に要する計算処理が非常に煩雑になってしまう。また、店舗の運用状況を考慮して電池の残存寿命の予測値を計算したとしても、店舗の運用状況は時間とともに変化していく可能性があるので、算出された予測値が将来的にも信頼できる値であるとはいえない。
【0009】
このような事情は、電子棚札システムに用いられる電子表示システムに限ったことではなく、電池により駆動される電子表示装置を備える電子表示システム全般において同様に当てはまる。
【0010】
電池の残存寿命が正確に予測できていなかったために、予測したよりも早く電池が消耗してしまうと、電池交換などの対応措置が間に合わず、システムの運用に支障が出てしまう可能性がある。一方、このような事態に備えて、あらゆる使用条件に耐えうるように電池容量の大きな電池を電子表示装置に搭載しようとすると、過剰設計となってしまい、コスト面からみて好ましくない。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みて成されたものであり、電子表示装置を駆動する電池の残存寿命を正確に予測可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、電池で駆動される電子表示装置と、前記電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムであって、前記サーバが、前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、を備える。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、現時点で前記電池に残存している電池容量である残存電池容量を特定する残存電池容量特定手段と、前記通信実績情報に基づいて、現時点までの所定期間において前記電子表示装置が電気を消費した速度である近傍消費速度を算出する消費速度算出手段と、前記電子表示装置が前記近傍消費速度で電気を消費し続けた場合に、前記残存電池容量を消費してしまうまでの期間を算出し、算出された期間を前記電池の残存寿命の予測値として取得する残存寿命予測値算出手段と、を備える。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間で前記電子表示装置が消費した電気量である消費電気量を算出し、前記電池の使用前の電池容量と前記消費電気量とを差分して得られる値を前記残存電池容量として取得する。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記サーバと前記電子表示装置との間で行われた通信の総時間を特定し、特定された前記総時間の値に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量を算出する通信電気量算出手段、を備え、前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項3または4に記載の電子表示システムであって、前記残存電池容量特定手段が、前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更を行った回数を特定し、特定された回数に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量を算出する表示変更電気量算出手段、を備え、前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記サーバが、前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記サーバと前記電子表示装置との間での通信頻度を所定値まで低下させる通信頻度調整手段、を備える。
【0018】
請求項7の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記サーバが、前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記電池が消耗する時期が近いことを報知する報知手段、を備える。
【0019】
請求項8の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、定期的に、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する。
【0020】
請求項9の発明は、請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記残存寿命予測手段が、外部からの指示に応じて、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する。
【0021】
請求項10の発明は、請求項1から9のいずれかに記載の電子表示システムであって、前記電子表示装置が、前記電池の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する記憶手段と、所定のカウンタクリアコマンドに応じて前記カウンタ値をクリアするカウンタ値クリア手段と、を備え、前記サーバが、前記電子表示装置に前記カウンタクリアコマンドを送信する送信手段、を備える。
【0022】
請求項11の発明は、請求項10に記載の電子表示システムであって、前記送信手段が、前記カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信する。
【0023】
請求項12の発明は、電池で駆動される電子表示装置に対して情報を提供する電子表示システム用のサーバであって、前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、を備える。
【発明の効果】
【0024】
請求項1〜12の発明によると、電子表示システムにおいて、サーバが電子表示装置との間での通信実績情報に基づいて電子表示装置を駆動する電池の残存寿命を予測する。この構成によると、電子表示装置の使用実態に即して電池の残存寿命を予測するので、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0025】
特に、請求項2の発明によると、電子表示装置が最近と同じ速度で今後も電気を消費し続けた場合に、現時点で前記電池に残存している電池容量を消費してしまうまでの期間を算出して、電池の残存寿命の予測値として取得する。この構成によると、電子表示装置が電気を消費する速度が経年変化している場合であっても、その変化を反映させた正確な予測値を得ることができる。
【0026】
特に、請求項3の発明によると、通信実績情報に基づいて現時点で電池に残存している電池容量を特定するので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することができる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0027】
特に、請求項4の発明によると、消費電気量に、電池が使用開始されてから現時点までの期間において電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれるところ、この電気量を、通信実績情報に基づいて特定した通信の総時間に基づいて算出する。この構成によると、通信により消費した電気量を正確に算出できるので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することが可能となる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0028】
特に、請求項5の発明によると、消費電気量に、電池が使用開始されてから現時点までの期間において電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれるところ、この電気量を、通信実績情報に基づいて特定した表示変更の回数に基づいて算出する。この構成によると、表示変更のために消費した電気量を正確に算出できるので、現時点で電池に残存している電池容量を正確に特定することが可能となる。その結果、電池の残存寿命を正確に予測することができる。
【0029】
特に、請求項6の発明によると、残存寿命予測手段が予測した電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、サーバと電子表示装置との間の通信頻度を所定値まで低下させるので、電池が消耗してしまうまでの時間を延長することができる。
【0030】
特に、請求項7の発明によると、残存寿命予測手段が予測した電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、電池が消耗する時期が近いことを報知するので、電子表示システムのオペレータは電池が消耗してしまうまでに電池交換などの措置をとることができる。
【0031】
特に、請求項10の発明によると、電子表示装置の電池の消費電気量を示すカウンタ値をクリアさせるカウンタクリアコマンドを、サーバから電子表示装置に送信する。この構成によると、サーバが電子表示装置のカウンタ値の状態を把握することができる。
【0032】
特に、請求項11の発明によると、カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信するので、電池の交換を行っていない電子表示装置に対してカウンタクリアコマンドが送信されてしまい、カウンタ値をクリアすべきでない電子表示装置のカウンタ値が誤ってクリアされてしまうといった事態が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】電子棚札システムが備える電子棚札が配置された様子を示す図である。
【図2】電子棚札システムを含む商品管理システムの構成例を示す図である。
【図3】発注処理端末の構成を示す斜視図である。
【図4】ESLサーバの構成を示す図である。
【図5】商品ファイルの例を示す図である。
【図6】電子棚札の構成を示す図である。
【図7】残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】残存寿命予測処理部が行う処理の原理を説明するための図である。
【図9】残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図10】残存寿命予測処理部が行う処理の原理を説明するための図である。
【図11】第1の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図12】店舗内に規定されたサブセルの様子を模式的に示す図である。
【図13】第2の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図14】第4の変形例に係る残存寿命予測処理部の構成を示すブロック図である。
【図15】第4の変形例に係る残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図16】第5の変形例に係る残存寿命予測処理部等の構成を示すブロック図である。
【図17】ESLサーバから電子棚札へ送信される赤外線信号を模式的に示す図である。
【図18】第5の変形例に係る残存寿命予測処理部が実行する処理の流れを示す図である。
【図19】第6の変形例に係る残存寿命予測処理部等の構成を示すブロック図である。
【図20】DMSシステムの構成例を示す図である。
【図21】電子棚札が消費する電気量を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図面を参照しつつこの発明の実施の形態について説明する。以下においては、この発明に係る電子表示システムを、電子棚札システムに用いた場合を例にとって説明する。
【0035】
〈1.電子棚札システム〉
〈1−1.電子棚札システムの概要〉
図1は、電子棚札システム1が備える電子棚札5が、店舗の商品棚60に配置された様子を示す図である。本電子棚札システム1においては、売価などの商品6に係る商品情報を表示する可搬性の電子棚札5が、各商品6に対応して配置される。そして、商品マスタに基づく売価を示す情報を含む通信信号が情報配信装置から各電子棚札5に送信され、その売価が各電子棚札5に表示される。これにより、電子棚札5において精算時の売価と一致する正しい売価が表示され、正しい売価が顧客に伝達されるようになっている。
【0036】
図1に示されるように、商品棚60はフェース61と呼ばれる空間に区分され、各フェース61には同一種の商品6が集約されて載置される。商品棚60のフレーム62には、各フェース61に対応する位置にそれぞれ電子棚札5が取り付けられている。すなわち、電子棚札5はそれぞれ一の商品6(正確には、一の商品の種類)に対応づけられ、その対応する商品6の近傍(一般的には、商品6の下側)のフレーム62に配置される。各電子棚札5はそれぞれディスプレイを備えており、ディスプレイには対応する商品6の売価が表示される。店舗の顧客(消費者)は、このような電子棚札5の表示により商品6の売価を認識する。
【0037】
電子棚札5は可搬性の装置であり、商品6の配置変更に対応できるように、フレーム62から取り外して別の位置に再配置することも可能とされている。本実施の形態においては、図1に示すような商品棚60が店舗内の販売スペースに複数配置されている。
【0038】
〈1−2.商品管理システムの構成〉
図2は、店舗に適用される、電子棚札システム1を含む商品管理システム100の構成例を示す図である。図2に示されるように、商品管理システム100は、電子棚札システム1とともに、ストアコントローラ2及びPOSシステム3を備えている。POSシステム3が備えるPOSサーバ31、及び電子棚札システム1が備えるESLサーバ10は、LAN21を介してストアコントローラ2に接続されている。これにより、ストアコントローラ2、POSシステム3及び電子棚札システム1の相互間でデータ通信が可能とされている。
【0039】
〈ストアコントローラ〉
ストアコントローラ2は一般的なコンピュータで構成され、商品管理システム100を統括的に管理する装置として機能する。また、ストアコントローラ2はインターネットなどの外部ネットワークに接続されており、外部ネットワークを介して、店舗を統括管理する本部センターに配置されたサーバ装置等のコンピュータと通信可能とされている。
【0040】
〈POSシステム〉
POSシステム3は、商品6の販売に係る情報をその販売時点において収集して分析するシステムであり、POSシステム3を統括的に管理するPOSサーバ31とともに、商品6の精算を行う複数のレジスタ32を備えている。POSサーバ31とレジスタ32とは専用の通信ケーブルで接続されている。
【0041】
POSサーバ31は一般的なコンピュータで構成され、そのハードディスクには、売価などの商品6に係る各種の情報を示す商品マスタ301が記憶されている。複数のレジスタ32のそれぞれにおいては、商品マスタ301に記載される売価に基づいて商品6の精算がなされる。
【0042】
店舗内の全商品6に係る情報は、この商品マスタ301により一元的に管理されている。商品マスタ301に記載される情報には、商品6を識別するための商品コード、商品6の名称である商品名、通常の売価である通常価格、特売における売価である特売価格、特売を実施する期間である特売期間、販売数、在庫数、1回の発注で納品される数である発注数などが含まれている。
【0043】
〈発注処理端末〉
LAN21には、無線LAN用の電波中継器たるアクセスポイント(AP)170が接続されている。商品6を発注する際に使用される可搬性の発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じてLAN21に接続することが可能であり、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。発注処理端末180は、店舗スタッフにより所定の操作が実行されると、商品6の発注を指示する発注指示情報を、無線LANを利用してストアコントローラ2に出力する。発注指示情報には、例えば、発注対象の商品6を識別するための商品コードや、当該商品6の発注数などが含まれている。ストアコントローラ2は、発注処理端末180からの発注指示を受け付ける発注サーバとしても機能し、入力された発注指示情報を本部センターに通知する。本部センターは、各店舗からの発注指示情報に基づいて、発注先の業者のサーバに対して商品6の発注を行う。
【0044】
図3は発注処理端末180の詳細な構成を示す斜視図である。図3に示されるように、発注処理端末180は、「ハンディーターミナル」と呼ばれる可搬性の業務端末であって、各種情報を表示するディスプレイ181と、バーコードを読み取るバーコードリーダ182と、店舗スタッフの各種操作を受け付ける操作部183とを備えている。また、発注処理端末180は、アクセスポイント170と無線通信を行う通信部184を備えている。この通信部184の機能により、発注処理端末180は、アクセスポイント170を通じて、ストアコントローラ2、POSサーバ31及びESLサーバ10と通信することが可能である。そして、発注処理端末180には、その動作を統括的に管理する制御部185が設けられている。制御部185はCPUやメモリなどで構成されている。
【0045】
〈1−3.電子棚札システム〉
電子棚札システム1は、上述した複数の電子棚札5と、電子棚札5に表示すべき商品6の売価などを配信する情報配信装置40と、電子棚札5の表示画面を切り換える際に使用される可搬性のリモコン160とを備えている。
【0046】
〈情報配信装置〉
情報配信装置40は、電子棚札システム1を統括的に管理するサーバ装置であるESLサーバ10と、複数の通信装置4と、ESLサーバ10と複数の通信装置4との間の信号の中継器として機能するベースステーション41とを備えている。ESLサーバ10と複数の通信装置4とは、ベースステーション41を通じて相互にデータ通信が可能とされている。各通信装置4は電子棚札5と赤外線通信を行う。複数の通信装置4は、販売スペース90内に配置された全ての電子棚札5と通信可能なように、販売スペース90の天井などに略一定距離ごとに配置される。
【0047】
ESLサーバ10のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。図4はESLサーバ10の構成を示す図である。ESLサーバ10は、各種演算処理を行うCPU11、ブートプログラム等を記憶するROM12、演算処理の作業領域となるRAM13、プログラムや各種のデータファイルなどを記憶するハードディスク14、各種表示を行うディスプレイ15、キーボード及びマウスなどで構成される入力部16、LAN21を介したデータ通信機能を有するデータ通信部17、並びに、ベースステーション41と通信するためのインターフェイス18を備えている。電子棚札5に送信すべき売価を示す信号はインターフェイス18及びベースステーション41を通じて通信装置4に伝達される。
【0048】
ESLサーバ10のハードディスク14には、動作プログラムが予め記憶されており、この動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより、ESLサーバ10としての各種機能が実現される。また、ESLサーバ10のハードディスク14には、商品6に係る各種の情報を示すデータファイルである商品ファイル101が記憶されている。
【0049】
図5は商品ファイル101の例を示す図である。図5に示されるように、商品ファイル101はテーブル形式となっており、レコード102のそれぞれが一の商品6に係る情報を示している。具体的には、レコード102ごとに、商品コード、商品名、通常価格、特売価格、特売期間、販売数及び在庫数などが登録されている。これらの情報は、上述したPOSシステム3に記憶された商品マスタ301と同様の情報であり、ESLサーバ10とPOSシステム3との通信により商品マスタ301の情報に基づいて登録される。このため、商品ファイル101の情報と商品マスタ301の情報とは内容が一致する。
【0050】
商品ファイル101の各レコード102には、さらに、電子棚札システム1が備える複数の電子棚札5のそれぞれに固有のハードウェアIDである一の「装置コード」が登録される。これにより、商品6と電子棚札5とが一対一の関係でデータ的に対応づけられる(リンク付けされる)。この装置コードが利用されることにより、ある商品6の売価が、その商品6に対応する電子棚札5に対して送信されるようになっている。
【0051】
以上の構成を有するESLサーバ10は、各電子棚札5に送信する送信データをCPU11で生成し、当該送信データをインターフェイス18及びベースステーション41を通じて各通信装置4に出力する。各通信装置4は、入力された送信データを含む通信信号を、自身が通信可能な各電子棚札5に出力する。これにより、販売スペース90に配置された各電子棚札5に対して同一の送信データが情報配信装置40から入力される。ESLサーバ10から送信される送信データには、商品ファイル101中の通常価格や特売価格などの商品情報や、装置コードなどが含まれている。
【0052】
また、ESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能を備えている。これについては後に説明する。
【0053】
〈電子棚札〉
次に電子棚札5の構成について詳細に説明する。図6は電子棚札5の構成を示す図である。図6に示されるように、電子棚札5の前面には、商品情報を表示するディスプレイ51と、情報配信装置40との通信を担う通信部54とが配置されている。また、電子棚札5の裏面には、自装置の装置コードを示す文字列とバーコードが印刷されたラベルが貼付されている。
【0054】
通信部54は、赤外線信号を出力する発光部52と、通信装置4からの赤外線信号及びリモコン160からの赤外線信号を受信し、それを電気信号に変換して後述の制御部57に出力する受光部53とを備えている。データを送信する送信部として機能する発光部52は例えばLEDで構成されており、データを受信する受信部として機能する受光部53は、例えばフォトダイオード及びアンプで構成されている。
【0055】
ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の不揮発性表示部であって、例えば電子ペーパで構成されている。電子ペーパ等の不揮発性表示部では、駆動電力を与えることなく表示内容を保持することができる。ディスプレイ51は、ドットマトリクス方式の表示部であるため、商品6の売価などを示す数値のみならず、文字、記号、図形などを表示することができる。また、本実施の形態に係るディスプレイ51は、複数の表示画面を切り換えて表示することが可能である。例えば、ディスプレイ51は、商品の売価など、商品を購入する顧客が利用する情報が主に表示される表示画面(表画面)と、商品の販売数など、店舗の店員が利用する情報(販売数、発注数、特売期間などの商品情報や、自身に割り当てられた装置コード等)が表示される表示画面(裏画面)とを切り換えて表示することができる。
【0056】
表画面には、例えば図6に示されるように、自装置が対応付けられた商品の売価51aとともに、その商品を特定可能な情報である商品名51b及び商品コード51d(具体的には、商品コードを示すバーコード)が表示される。ディスプレイ51に商品特定情報が表示されずに売価51aのみが表示される場合には、電子棚札5がいずれの商品に対応付けられているかの把握は困難であるが、このような商品特定情報の表示により、電子棚札5と商品とが視覚的に対応付けられる。また、自装置が対応付けられた商品6の商品コードを数字で表す文字列51cと、当該商品コードを示すバーコード51dとが、当該バーコード51dが延びる方向に並んで表示されてもよい。
【0057】
電子棚札5の内部には、当該電子棚札5の電源を供給する小型の56と、当該電子棚札5の動作を統括的に制御する制御部57とが設けられている。制御部57は、CPUやメモリなどで構成されている。このメモリには、ディスプレイ51に表示すべき売価や商品名などの各種情報や、自装置の装置コードが記憶される。通信装置4から出力された赤外線信号に含まれる売価などの情報は、通信部54で受信されて、その後、制御部57に入力される。制御部57は、入力された当該情報を一旦メモリに記憶する。そして、制御部57は、ディスプレイ51を制御して、メモリ内の各種情報をディスプレイ51に表示させる。このように、制御部57は、ディスプレイ51の表示を制御する表示制御部として機能する。
【0058】
制御部57は、ディスプレイ51の表示をリモコン160から出力される赤外線信号に応じて切り換える。後述するように、リモコン160は、操作ボタン(図示省略)を有しており、操作ボタンに対する外部からの操作に応じて赤外線信号を送信することが可能である。リモコン160の操作ボタンが押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、例えば表画面から裏画面に変更する。この状態で、リモコン160の操作ボタンが再度押下されて、受光部53にリモコン160からの赤外線信号が入力されると、受光部53は当該赤外線信号を電気信号に変換して制御部57に入力する。そうすると、制御部57は、ディスプレイ51の表示を、裏画面から表画面に変更する。
【0059】
〈リモコン〉
リモコン160は、電子棚札5の表示画面を切り換えるための信号を発信する遠隔操作機器である。リモコン160は、赤外線信号を出力する発光部と、発光部を制御する制御部と、赤外線信号の送信指示を受け付ける操作ボタンとを備えている(いずれも図示省略)。操作ボタンが押下されると、制御部は発光部を制御して、当該発光部から所定の赤外線信号を出力させる。リモコン160からの赤外線信号を受信した電子棚札5では、上述したとおり、そのディスプレイ51の表示が切り換わることになる。
【0060】
〈1−4.電子棚札システムの基本動作〉
次に、電子棚札5に売価が表示されるまでの電子棚札システム1の動作について説明する。本電子棚札システム1において、情報配信装置40から電子棚札5への売価の配信は、システム起動時、及び電子棚札5に表示させる売価を更新する際などに行われる。ここで売価を更新する際とは、商品マスタ301の通常価格が変更されたときや、特売の実施にあたって売価を通常価格から特売価格に変更するときなどが該当する。システム起動時には、店舗内の全ての商品6に関して売価の配信がなされる。一方、売価を更新する際には、対象となる商品6のみに関して売価の配信がなされる。これにより、電子棚札5に表示される売価と、レジスタ32による精算時の売価とが常時に一致されることになる。以下では、一の商品6に関しての売価の配信に係る動作について説明する。以下の説明において、売価の配信の対象となる商品6を「対象商品6」という。
【0061】
まず、情報配信装置40のESLサーバ10において、商品ファイル101のうちの対象商品6に係るレコード102が参照され、通常価格及び特売価格のうちの配信すべき売価、及び装置コードが取得される。ここで取得された装置コードは、対象商品6に対応する電子棚札5の装置コードであり、また、取得された売価はその電子棚札5が表示すべき売価となる。これらの売価及び装置コードは、電気的な信号としてベースステーション41を通じて各通信装置4に送信される。そして、通信装置4は、売価及び装置コードの情報を含む赤外線信号を出力する。
【0062】
通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信されて電気信号に変換される。制御部57は、通信部54で得られた電気信号から、売価及び装置コードを取得する。
【0063】
次に、制御部57は、得られた装置コードが、制御部57のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致しない場合は、受信した赤外線信号は他の電子棚札5のための信号と判断し、処理を終了する。一方で、制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合は、受信した赤外線信号は自装置のための信号と判断し、得られた売価をディスプレイ51に表示させて、ディスプレイ51に表示されている売価を更新する。
【0064】
以上のような動作によって、情報配信装置40から電子棚札5へ売価の配信がなされることになる。
【0065】
制御部57は、ディスプレイ51の表示を更新すると、売価を正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号を発光部52に出力させる。この赤外線信号は通信装置4で受信されて、当該赤外線信号に含まれる情報がESLサーバ10に伝達される。ESLサーバ10は、電子棚札5からの赤外線信号を受信しない場合は、配信した売価が電子棚札5で正常に受信されなかったと判断して、電子棚札5からの赤外線信号を受信するまで売価を繰り返し配信する処理を行う(リカバリー通信)。これにより、電子棚札5の表示を確実に更新でき、システムの信頼性を大幅に向上できる。
【0066】
〈1−5.電子棚札を駆動する電池の残存寿命の予測〉
〈1−5−1.機能構成〉
上述したとおり、ESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部(残存寿命予測処理部90)を備えている。残存寿命予測処理部90は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0067】
残存寿命予測処理部90の構成について図7を参照しながら説明する。図7は、残存寿命予測処理部90の構成を示すブロック図である。なお、以下においては、適宜図8を参照する。図8は、残存寿命予測処理部90が行う処理の原理を説明するための図である。
【0068】
残存寿命予測処理部90は、通信実績取得部91と残存寿命予測部92とを備える。
【0069】
〈通信実績取得部〉
ESLサーバ10は電子棚札5との間で行った通信の履歴をハードディスク14に蓄積しており、通信実績取得部91は、この通信履歴からESLサーバ10と電子棚札5との間の通信実績に関する情報である「通信実績情報」を取得する。「通信実績情報」には、ESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信(ただし、ここでいう「通信」には、正常な通信だけでなく、上述したリカバリー通信も含まれる)のそれぞれについて、当該通信を実行した時刻と、当該通信に要した時間とを示す情報が含まれる。したがって、通信実績情報に基づいて、特定の期間に行われた通信の回数を特定することができる。また、特定の期間内で行われた通信の総通信時間を算出することができる。
【0070】
なお、上述したとおり、ESLサーバ10は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して一斉送信を行う。したがって、通信実績情報に含まれる通信を実行した時刻や通信に要した時間は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれの間で共通する情報である。したがって、これらの情報に基づいて後述する残存寿命予測部92が算出した「電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命」は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうちの任意の電子棚札5について当てはまる値となる。
【0071】
〈残存寿命予測部〉
残存寿命予測部92は、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921と、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。
【0072】
〈残存電池容量算出部〉
残存電池容量算出部921は、現時点t(電池56の残存寿命の算出処理を実行する時点)で電池56に残存している電池容量(残存電池容量)Q2を算出する。具体的には、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、電池56が使用開始されてから現時点tまでの間の期間(使用期間)Tで、電子棚札5が消費した総電気量(消費電気量)Q1を算出する。そして、電池56の使用前の電池容量(初期電気量)Q0から消費電気量Q1を差分して得られた値を、残存電池容量Q2として取得する(すなわち、「残存電池容量Q2=初期電気量Q0−消費電気量Q1」)。
【0073】
ここで、消費電気量Q1の算出方法について説明する。図21に示されるように、電子棚札5は、スリープ状態とウェイクアップ状態との間を遷移しており、ウェイクアップ状態においてESLサーバ10からの赤外線信号を検知すると、ESLサーバ10との通信が完了するまでウェイクアップ状態を維持し続ける。つまり、電子棚札5は、ESLサーバ10と通信を行っている時間帯においては比較的大きな電流(通信電流)A1を消費し、ESLサーバ10と通信を行っていない時間帯においては比較的小さな電流(スタンバイ電流)A2を消費する。
【0074】
そこで、残存電池容量算出部921は、使用期間Tの間で電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、使用期間Tの間で電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得する(すなわち、「消費電気量Q1=通信電気量Q11+スタンバイ電気量Q12」)。
【0075】
残存電池容量算出部921は、通信電気量Q11を算出する機能部である通信電気量算出部9211と、スタンバイ電気量Q12を算出する機能部であるスタンバイ電気量算出部9212とを備える。
【0076】
通信電気量算出部9211は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のトータルの時間(総通信時間)T1を算出する。そして、得られた総通信時間T1の値に、電子棚札5がESLサーバ10と通信する時に必要とする電流(通信電流)A1の値を乗じて得られた値を、通信電気量Q11として取得する(すなわち、「通信電気量Q11=通信電流A1×総通信時間T1」)。
【0077】
スタンバイ電気量算出部9212は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で通信が行われていないトータルの時間(スタンバイ時間)T2を算出する。ただし、スタンバイ時間T2は、使用期間Tと総通信時間T1との差分によって取得することができる(すなわち、「スタンバイ時間T2=使用期間T−総通信時間T1」)。そして、得られたスタンバイ時間T2の値に、電子棚札5がESLサーバ10と通信していない時に必要とする電流(例えば、スリープ状態にある時に必要とする電流)(スタンバイ電流)A2の値を乗じて得られた値を、スタンバイ電気量Q12として取得する(すなわち、「スタンバイ電気量Q12=スタンバイ電流A2×スタンバイ時間T2」)。
【0078】
〈消費速度算出部〉
消費速度算出部922は、通信実績取得部91が取得した通信実績に基づいて、最近(現時点tまでの所定期間(例えば、過去1ヶ月間))において、電子棚札5が電気を消費する平均速度(近傍消費速度)Kを算出する。
【0079】
ここで、近傍消費速度Kの算出方法について具体的に説明する。消費速度算出部922は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、現時点tまでの所定期間(近傍期間)Tiにおいて、電子棚札5が消費した電気量(近傍消費電気量)Qiを算出する。近傍消費電気量Qiの算出方法は、消費電気量Q1の算出方法と同様である。すなわち、消費速度算出部922は、通信実績情報に基づいて、電子棚札5が、近傍期間Tiの間で通信により消費した電気量と、近傍期間Tiの間で通信を行っていない時間帯で消費した電気量とをそれぞれ算出し、算出された各値を加算して得られた値を近傍消費電気量Qiとして取得する。
【0080】
続いて、消費速度算出部922は、取得された近傍消費電気量Qiに基づいて近傍消費速度Kを算出する。具体的には、近傍消費電気量Qiを近傍期間Tiで割って得られた値を、近傍消費速度Kとして取得する(すなわち、「近傍消費速度K=近傍消費電気量Qi/近傍期間Ti」)。
【0081】
〈残存寿命予測値算出部〉
残存寿命予測値算出部923は、残存電池容量算出部921が算出した残存電池容量Q2と、消費速度算出部922が算出した近傍消費速度Kとに基づいて、現時点tから電池56の電池容量が「0」となるまでの期間(すなわち、電池56の残存寿命)として予測される値(残存寿命予測値)Rを算出する。具体的には、残存電池容量Q2を近傍消費速度Kで割った値を残存寿命予測値Rとして取得する(すなわち、「残存寿命予測値R=残存電池容量Q2/近傍消費速度K」)。つまり、電子棚札5が、最近(具体的には、現時点tまでの所定期間Ti)のペースと同じペースで電気を消費し続けた場合に(図8の仮想線)、電池56の残存電池容量が「0」となるまでの期間を算出して、残存寿命予測値Rとして取得するのである。
【0082】
〈1−5−2.処理の流れ〉
次に、残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れについて、図9を参照しながら説明する。図9は、この処理の流れを示す図である。なお、以下の処理は、外部からの所定の指示が与えられた場合(例えば、ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが所定の指示を入力した場合、また例えば、ESLサーバ10と通信回線を介して接続されたメンテナンス装置からESLサーバ10へ所定の指示が送られてきた場合)に、当該指示に応じて実行開始される。
【0083】
まず、通信実績取得部91が、ハードディスク14に蓄積された通信履歴から、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信実績情報を取得する(ステップS11)。
【0084】
続いて、残存寿命予測部92が電池56の残存寿命を予測する。具体的には、まず、ステップS11で取得された通信実績情報に基づいて、残存電池容量算出部921が残存電池容量Q2を算出する(ステップS12)。また、ステップS11で取得された通信実績情報に基づいて、消費速度算出部922が近傍消費速度Kを算出する(ステップS13)。そして、取得された残存電池容量Q2および近傍消費速度Kに基づいて、残存寿命予測値算出部923が残存寿命予測値Rを算出する(ステップS14)。以上で電池56の残存寿命を予測する処理が終了する。
【0085】
なお、上記一連の処理によって算出された残存寿命予測値Rの値は、各種の方法でオペレータに知得される。例えば、ESLサーバ10の入力部16を介して入力された指示に応じて上記一連の処理が実行された場合、残存寿命予測値Rが算出されると、ESLサーバ10のCPU11は、算出された残存寿命予測値RをESLサーバ10のディスプレイ15に表示させる。また例えば、メンテナンス装置からESLサーバ10へ通信回線を介して送られた指示に応じて上記一連の処理が実行された場合、残存寿命予測値Rが算出されると、ESLサーバ10のCPU11は、算出された残存寿命予測値Rをメンテナンス装置に送信する。
【0086】
〈2.効果〉
上記の実施の形態に係る電子表示システム1が備えるESLサーバ10においては、残存寿命予測処理部90が、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する。通信実績情報に基づくと、電子棚札5が通信により消費した電力を正確に特定することができるので、電池56の残存寿命の予測値として信頼性の高い値を得ることができる。
【0087】
特に、消費電気量算出部92が、通信実績情報に基づいて、使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11を算出し、これに基づいて使用期間Tの間で電子棚札5が消費した総電気量(消費電気量)Q1を特定する。そして、得られた消費電気量Q1に基づいて、残存寿命予測値算出部94が残存寿命予測値Rを算出する。通信実績情報に基づくと、使用期間TにおいてESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のトータルの時間(総通信時間T1)を正確に算出することができるので、正確な通信電気量Q11を特定することが可能となり、結果として電池56の残存寿命を正確に予測することができる。
【0088】
また、消費速度算出部93が、最近において電子棚札5が電気を消費する平均速度(近傍消費速度K)を算出し、残存寿命予測値算出部94が、電子棚札5が、そのペースで電気を消費し続けた場合に電池56の残存電池容量が「0」となるまでの期間を残存寿命予測値Rとして取得する。したがって、例えば、図10に示されるように、電子棚札5が電気を消費するペースが早くなってきた場合、この変化に応じて近傍消費速度Kの値(すなわち、仮想線の傾き)は大きくなり、電池56の残存寿命はその分だけ短く算出される。すなわち、ある時刻t1において予測される残存寿命予測値R1と、時刻t1よりも後の時刻t2において予測される残存寿命予測値R2とがそれぞれ予測する電池56の消耗時刻は、互いに異なる値となり、当然の事ながら、後者の値の方がより正確な予測値となっている。このように、上記の実施の形態に係る残存寿命予測処理部90は、実際の電子棚札5の使用態様に変化があった場合でも、その変化を加味して電池56の残存寿命を正確に予測することができる。
【0089】
〈3.変形例〉
〈3−1.第1の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存電池容量算出部921は、電子棚札5が使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、電子棚札5が使用期間Tの間で通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得していたが、さらに、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して消費電気量Q1を算出する構成としてもよい。
【0090】
〈3−1−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90aの構成について、図11を参照しながら説明する。図11は、残存寿命予測処理部90aの構成を示すブロック図である。なお、図11においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0091】
残存寿命予測処理部90aは、通信実績取得部91aと残存寿命予測部92aとを備える。
【0092】
通信実績取得部91aは、上述した実施の形態に係る通信実績取得部91と同様の機能部であり、通信実績情報を取得する。ただし、通信実績取得部91aが取得する通信実績情報には、ESLサーバ10と電子棚札5との間で行われた通信のそれぞれについて、当該通信にて送信された送信データに含まれる装置コードを示す情報が含まれる。この情報を参照することによって、当該送信データに応じて表示を更新した電子棚札5が、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちのどれであるかを特定することができる。したがって、通信実績情報に基づいて、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のそれぞれについて、特定の期間内において当該電子棚札5が表示を更新した回数を特定することができる。
【0093】
残存寿命予測部92aは、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921aと、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。消費速度算出部922および残存寿命予測値算出部923の機能は上述した通りである。
【0094】
残存電池容量算出部921aは、現時点tで電池56に残存している電池容量(残存電池容量)Q2を算出する。具体的には、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて電池56の消費電気量Q1を算出し、初期電気量Q0から消費電気量Q1を差分して得られた値を、残存電池容量Q2として取得する。
【0095】
ここで、消費電気量Q1の算出方法について説明する。残存電池容量算出部921aは、使用期間Tの間で電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q11と、使用期間Tの間で電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12と、使用期間Tの間で電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量(表示変更電気量)Q13とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を消費電気量Q1として取得する(すなわち、「消費電気量Q1=通信電気量Q11+スタンバイ電気量Q12+表示変更電気量Q13」)。
【0096】
残存電池容量算出部921aは、通信電気量Q11を算出する機能部である通信電気量算出部9211と、スタンバイ電気量Q12を算出する機能部であるスタンバイ電気量算出部9212と、表示変更電気量Q13を算出する機能部である表示変更電気量算出部9213とを備える。通信電気量算出部9211およびスタンバイ電気量算出部9212の機能は上述した通りである。
【0097】
表示変更電気量算出部9213は、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のそれぞれについて、使用期間Tにおいて当該電子棚札5が表示を更新した回数を特定する。そして、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、使用期間Tにおける更新の回数が最も多い電子棚札5を特定し、当該電子棚札5の更新の回数を「最大更新回数N」として取得する。さらに、得られた最大更新回数Nの値に、電子棚札5がディスプレイ51の表示を1回更新する際に消費する電気量(更新電気量C)の値を乗じて得られた値を、表示変更電気量Q13として取得する(すなわち、「表示変更電気量Q13=最大更新回数N×更新電気量C」)。
【0098】
〈3−1−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90aが実行する処理の流れは、上述した残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れと同様である(図9参照)。
【0099】
〈3−1−3.効果〉
この変形例によると、残存寿命予測処理部90aが、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して残存寿命を予測するので、残存寿命の予測値として正確な値を得ることができる。特に、電子ペーパを用いたドットマトリクス方式の表示デバイスで構成されるディスプレイ51においては、表示を更新する際に電気を大きく消費するので、この変形例が有効である。一方、ディスプレイが、表示を更新する際に消費する電気がほとんど変化しないタイプの表示装置(例えば、液晶を用いたセグメントタイプの表示デバイス)により構成される場合には、上述した実施の形態に係る算出方式で十分に正確な消費電気量Q1(ひいては、残存寿命予測値R)の値を得ることができる。
【0100】
なお、この変形例においては、残存電池容量算出部921aが算出する消費電気量Q1は、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで使用期間Tにおける更新の回数が最も多い電子棚札5(すなわち、電気の消耗が最も激しい電子棚札5)が、使用期間Tにおいて消費した総電気量である。したがって、残存寿命予測部92が算出する残存寿命予測値Rは、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、電池56が最も早く消耗すると予想される電子棚札5を駆動する電池56の残りの寿命として予測される値である。つまり、この構成によると、店舗内に配置された電子棚札5のどれかが電池切れを起こしてしまう最も早い時刻を正確に予測することができる。
【0101】
〈3−2.第2の変形例〉
電子表示システム1が比較的狭い店舗に導入される場合、ESLサーバ10は、店舗内の全領域に向けて赤外線信号を送信する。しかしながら、電子表示システム1が比較的広い店舗に導入される場合、図12に例示されるように、店舗内をサブセルと呼ばれる複数のエリアA,B,Cに区分し、ESLサーバ10が、各サブセルA,B,Cに向けて個別に赤外線の送信を行う構成とされる場合がある。つまり、サブセルA,B,Cは、赤外線信号を送信する単位であり、例えばサブセルAの領域内に配置された電子棚札5に対する赤外線信号を送信する場合、ESLサーバ10は、サブセルAに対してのみ当該赤外線信号を送信する。
【0102】
ESLサーバ10が、サブセル単位で赤外線信号を送信する場合、店舗内の位置によってESLサーバ10と電子棚札5との間で通信が行われる時間が変わってくる。したがって、電子棚札5の電池56が消費する電気量(消費電気量Q1)は、当該電子棚札5が配置されている位置によって変わってくる。そこで、ESLサーバ10がサブセル単位で赤外線信号を送信する場合には、下記の態様で残存寿命予測値Rを算出する構成としてもよい。
【0103】
〈3−2−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90bの構成について、図13を参照しながら説明する。図13は、残存寿命予測処理部90bの構成を示すブロック図である。なお、図13においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0104】
残存寿命予測処理部90bは、通信実績取得部91bと残存寿命予測部92bとを備える。
【0105】
通信実績取得部91bは、上述した実施の形態に係る通信実績取得部91と同様の機能部であり、通信実績情報を取得する。ただし、通信実績取得部91bが取得する通信実績情報には、ESLサーバ10と各電子棚札5との間で行われた通信のそれぞれについて、当該通信を実行した時刻および当該通信に要した時間とを示す情報の他に、通信対象となった電子棚札5がどのサブセルに配置されていたか(すなわち、どのサブセルに対して行われた通信であるか)を特定する情報が含まれる。したがって、通信実績情報に基づいて、各サブセルについて、特定の期間に行われた通信の回数を特定することができる。また、各サブセルについて、特定の期間内で行われた通信の総通信時間を算出することができる。
【0106】
残存寿命予測部92bは、通信実績情報に基づいて電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部であり、残存電池容量算出部921bと、消費速度算出部922と、残存寿命予測値算出部923とを備えている。消費速度算出部922および残存寿命予測値算出部923の機能は上述した通りである。
【0107】
残存電池容量算出部921bは、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうち、電池の消耗が最も激しいと予想される電子棚札5の電池56に残存している残存電池容量(最小残存電池容量)Q2bを算出する。具体的には、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、電気の消耗が最も激しいと予想される電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量(最大消費電気量)Q1bを算出し、初期電気量Q0から最大消費電気量Q1bを差分して得られた値を、最小残存電池容量Q2bとして取得する。
【0108】
残存電池容量算出部921bが最大消費電気量Q1bを算出する方法について、図12に示されるサブセル配置を例にとって説明する。このようなサブセル配置の場合、2つのサブセルA,Bが重複する領域に配置された電子棚札5は、ESLサーバ10がサブセルAに配置された電子棚札5に対して行った送信と、ESLサーバ10がサブセルBに配置された電子棚札5に対して行った送信との両方を受信する。つまり、この重複領域に配置された電子棚札5とESLサーバ10との間の通信の総時間は、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と、サブセルBに係る総通信時間T1(B)とを加算した値となる。同様に、サブセルB,Cが重複する領域に配置された電子棚札5とESLサーバ10との間の通信の総時間は、サブセルBに係る総通信時間T1(B)と、サブセルCに係る総通信時間T1(C)とを加算した値となる。上述した通り、ESLサーバ10との間での通信時間が長くなるほど電子棚札5の消費電気量が大きくなる。したがって、サブセルの重複領域に配置された電子棚札5は、それ以外の領域に配置された電子棚札5よりも電池56の消耗が激しいと予想できる。そこで、残存電池容量算出部921bは、サブセルの重複領域(重複領域が多数ある場合は、総通信時間が最も長い重複領域)に配置された電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量を算出して、最大消費電気量Q1bとして取得する。
【0109】
具体的には、残存電池容量算出部921bは、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、サブセルの重複領域それぞれに係る総通信時間を特定する。そして、総通信時間が最も長い重複領域の総通信時間を、最大総通信時間T1bとして取得する。続いて、残存電池容量算出部921bは、当該重複領域に配置された電子棚札5が、使用期間Tの間で通信により消費した電気量(通信電気量)Q11bと、使用期間Tの間で当該電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q12bとを算出し、算出された各値を加算して得られた値を最大消費電気量Q1bとして取得する。ただし、通信電気量Q11bは、先に取得された最大総通信時間T1bの値に通信電流A1の値を乗じて得られる値である。また、スタンバイ電気量Q12bは、使用期間Tから最大総通信時間T1bを差分して得られる値に、スタンバイ電流A2の値を乗じて得られる値である。
【0110】
〈3−2−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90bが実行する処理の流れは、上述した残存寿命予測処理部90が実行する処理の流れと同様である(図9参照)。
【0111】
〈3−2−3.効果〉
この変形例においては、残存電池容量算出部921bは、サブセルの重複領域(重複領域が多数ある場合は、総通信時間が最も長い重複領域)に配置された電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量を算出して、最大消費電気量Q1bとして取得する。したがって、残存寿命予測部92が算出する残存寿命予測値Rは、店舗内に配置された複数個の電子棚札5のうちで、電池56が最も早く消耗すると予想される電子棚札5を駆動する電池56の残りの寿命として予測される値である。つまり、この構成によると、ESLサーバ10がサブセル単位で赤外線信号を送信する構成において、店舗内に配置された電子棚札5のどれかが電池切れを起こしてしまう最も早い時刻を正確に予測することができる。
【0112】
〈3−3.第3の変形例〉
第2の変形例において、最大消費電気量Q1bの算出にあたり、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味してもよい。
【0113】
〈3−3−1.機能構成〉
この変形例の場合、残存電池容量算出部921bは、まず、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれについて、当該電子棚札5が使用期間Tにおいて消費した電気量として予想される最大の値(予想最大消費電気量)Q100を算出する。そして、複数の電子棚札5のうち、予想最大消費電気量Q100が最も大きい電子棚札5の予想最大消費電気量Q100を、最大消費電気量Q1bとして取得する。
【0114】
残存電池容量算出部921bが、任意の電子棚札5(以下「対象電子棚札5」という)の予想最大消費電気量Q100を算出する方法について説明する。
【0115】
残存電池容量算出部921bは、使用期間Tの間で対象電子棚札5が通信により消費した電気量(通信電気量)Q111と、使用期間Tの間で対象電子棚札5が通信を行っていない時間帯で消費した電気量(スタンバイ電気量)Q112と、使用期間Tの間で電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量(表示変更電気量)Q113とを算出し、算出された各値を加算して得られた値を予想最大消費電気量Q100として取得する。
【0116】
通信電気量Q111およびスタンバイ電気量Q112を算出する方法について説明する。残存電池容量算出部921bは、まず、対象電子棚札5の総通信時間として考えられる最大の値(予想最大通信時間)T11を特定する。例えば、対象電子棚札5がサブセルA(図12参照)に配置されているとする。ここで、対象電子棚札5がサブセルA内におけるサブセルBとの非重複領域に配置されている場合、対象電子棚札5の総通信時間は、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と一致する。一方、対象電子棚札5がサブセルA内におけるサブセルBとの重複領域に配置されている場合、対象電子棚札5の総通信時間はサブセルAとサブセルBの重複領域に係る総通信時間(すなわち、サブセルAに係る総通信時間T1(A)と、サブセルBに係る総通信時間T1(B)とを加算した値)と一致する。
【0117】
ところが、ESLサーバ10は、対象電子棚札5が、どのサブセルに配置されているかを特定する情報を有しているが、対象電子棚札5がサブセル内のどの領域に配置されているかまでは特定できない。そこで、残存電池容量算出部921bは、対象電子棚札5が配置されたサブセルにおいて、最も総通信時間が長い領域の総通信時間を、当該対象電子棚札5の予想最大通信時間T11として取得する。例えば上記の例の場合、サブセルAとサブセルBの重複領域の総通信時間を、対象電子棚札5の予想最大通信時間T11として取得する。
【0118】
続いて、残存電池容量算出部921bは、得られた予想最大通信時間T11の値に通信電流A1の値を乗じて得られる値を、対象電子棚札5の通信電気量Q111として取得する。また、使用期間Tから予想最大通信時間T1mを差分して得られる値に、スタンバイ電流A2の値を乗じて得られる値を、対象電子棚札5のスタンバイ電気量Q112として取得する。
【0119】
表示変更電気量Q113を算出する方法について説明する。残存電池容量算出部921bは、まず、通信実績取得部91が取得した通信実績情報に基づいて、対象電子棚札5が使用期間Tにおいて表示を更新した回数を特定する。そして、得られた更新回数の値に、電子棚札5がディスプレイ51の表示を1回更新する際に消費する電気量(更新電気量C)の値を乗じて得られた値を、表示変更電気量Q113として取得する。
【0120】
〈3−3−2.効果〉
この変形例によると、第2の変形例において得られる効果と同様の効果を得られる上、電子棚札5がディスプレイ51の表示を更新する際に消費した電気量を加味して残存寿命を予測するので、残存寿命の予測値として正確な値を得ることができる。
【0121】
〈3−4.第4の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値は、ESLサーバ10のディスプレイ15に表示等されることによってオペレータに知得させる構成としていたが、電池56の残存寿命が残り少ない場合(具体的には、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さい場合)に、その旨をオペレータに報知する構成としてもよい。
【0122】
〈3−4−1.機能構成〉
この変形例に係る残存寿命予測処理部90cの構成について、図14を参照しながら説明する。図14は、残存寿命予測処理部90dの構成を示すブロック図である。なお、以下においては、上記の実施の形態と同じ構成については同じ符号を付して示している。また、以下においては、上記の実施の形態と相違する点のみを説明する。
【0123】
残存寿命予測処理部90cは、通信実績取得部91と、残存寿命予測部92と、報知処理部93とを備えている。通信実績取得部91および残存寿命予測部92の機能は上述した通りである。
【0124】
報知処理部93は、残存寿命予測部92が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値(例えば、1ヶ月)よりも小さい場合に、電池56が消耗する時期が近いことをオペレータに報知する処理を行う。報知処理の具体的な態様はどのようなものであってもよい。例えば、ESLサーバ10のディスプレイ15に所定のメッセージ(例えば、「電子棚札の電池容量が残り僅かです。電池交換をしてください。」とのメッセージ)を表示する構成としてもよいし、メンテナンス装置に当該所定のメッセージを送信する構成としてもよい。
【0125】
〈3−4−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90cが実行する処理の流れについて、図15を参照しながら説明する。図15は、この処理の流れを示す図である。
【0126】
ステップS21〜ステップS24の各処理は、上記の実施の形態に係るステップS11〜ステップS14の各処理と同様である。
【0127】
ステップS24で、残存寿命予測値Rが算出されると、続いて報知処理部93が、算出された残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS25)。ステップS25で、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さいと判断された場合、報知処理部93は、電池56が消耗する時期が近いことをオペレータに報知する処理を行う(ステップS26)。ステップS24で、残存寿命予測値Rが所定値以上であると判断された場合、報知処理部93は、報知処理を行うことなく処理を終了する。
【0128】
〈3−4−3.効果〉
この変形例によると、電子棚札5の電池56が消耗する時期が近い場合、その旨をオペレータに報知するので、オペレータは電池56が消耗してしまうまでに電池交換などの措置をとることができる。
【0129】
〈3−5.第5の変形例〉
上記の実施の形態に係るESLサーバ10は、電子棚札5を駆動する電池56の残存寿命を予測する機能部(残存寿命予測処理部90)を備える構成としたが、さらに、電池56の残存寿命に応じてESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度を調整する機能部(通信頻度調整部81)を備える構成としてもよい。
【0130】
〈3−5−1.機能構成〉
この変形例に係るESLサーバ10は、図16に示す通り、上述した残存寿命予測処理部90に加えて、通信頻度調整部81と能動化指示受付部82とを備えている。通信頻度調整部81および能動化指示受付部82は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0131】
通信頻度調整部81は、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値(例えば、1ヶ月)よりも小さい場合に、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度を所定値まで低下させて、電子表示システム1をセーブモード状態とする。
【0132】
ここで、セーブモード状態について説明する。通常状態(非セーブモード状態)においては、ESLサーバ10は、電子棚札5へ送るべき情報信号が発生すると直ちに当該情報信号を電子棚札5へ送信するが、セーブモード状態においては、ESLサーバ10は、発生した情報信号をすぐには電子棚札5へ送信せずに、所定のタイミングまでESLサーバ10の側で蓄積しておく。そして、所定のタイミングで、蓄積された情報信号を一度に電子棚札5へ送信する。蓄積された情報信号の送信は、例えば、予め定められた所定の周期毎に行ってもよいし、所定量以上の情報信号が蓄積された時点で行ってもよい。また、原則として所定の周期毎に行うこととし、次の送信時刻になる前に、蓄積された情報量が所定量以上となった場合は、その時点で送信を行う構成としてもよい。
【0133】
電子表示システム1をセーブモード状態とすることによって、電子棚札5が電池56を消耗する速度を低下させることができる。すなわち、電池56の残存寿命を延命することができる。その理由は次の通りである。
【0134】
ESLサーバ10から電子棚札5へ送信される赤外線信号には、商品情報や、装置コードなど、電子棚札5に送信すべき情報を含んだ情報信号の他に、間欠動作を解除する信号である「間欠動作解除信号」が含まれる。間欠動作解除信号は、電子棚札5の間欠動作(図21参照)を解除するための信号であり、図17に模式的に示されるように、情報信号に先立って所定時間(ただし、間欠動作時においてウェイクアップ状態に遷移する周期よりも長い時間であり、例えば2秒間程度)送信される。したがって、例えば、通信時間が0.1秒間の情報信号を1件送信する場合、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(a)に示されるように、約2.1秒間となる。
【0135】
ここで、通信時間が0.1秒間の情報信号を5件送信する場合の通信時間を考える。5件の情報信号をバラバラに送った場合、送信を1回行う度毎に間欠動作解除信号を送らなければならないので、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(b)に示されるように、約10.5秒間という長時間に及んでしまう。一方、5件の情報信号をまとめて送った場合、間欠動作解除信号は1回だけ送信すればよいので、ESLサーバ10と電子棚札5との間での通信時間は、図17(c)に示されるように、2.5秒間ですむ。このように、複数件の情報信号をまとめて電子棚札5に送信することによって通信時間を短くすることが可能となり、その結果、電池56の消耗を抑えることができるのである。
【0136】
能動化指示受付部82は、通信頻度調整部81を能動化させるか否かの選択指示を、オペレータから受け付ける。ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが通信頻度調整部81を能動化させる旨の指示を入力した場合、能動化指示受付部82は当該指示に応じて通信頻度調整部81を能動化させる。すると、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合に、電子表示システム1がセーブモード状態とされる。すなわち、ESLサーバ10と電子棚札5との間の通信頻度が低下する。
【0137】
一方、オペレータが通信頻度調整部81を能動化させない旨の指示を入力した場合、能動化指示受付部82は当該指示に応じて通信頻度調整部81を非能動化させる。すると、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合であっても、電子表示システム1はセーブモード状態とはならない。すなわち、ESLサーバ10は、電子棚札5へ送るべき情報信号が発生すると直ちに当該情報信号を電子棚札5へ送信する。
【0138】
〈3−5−2.処理の流れ〉
残存寿命予測処理部90および通信頻度調整部81が実行する処理の流れについて、図18を参照しながら説明する。図18は、この処理の流れを示す図である。
【0139】
ただし、以下のステップS35〜ステップS36の各処理は、通信頻度調整部81が能動化されている場合(具体的には、オペレータが、予めESLサーバ10の入力部16を介して通信頻度調整部81を能動化させる旨の指示を入力し、当該指示を受け付けた能動化指示受付部82が、当該指示に応じて通信頻度調整部81を能動化させている場合)にのみ行われる。
【0140】
ステップS31〜ステップS34の各処理は、上記の実施の形態に係るステップS11〜ステップS14の各処理と同様である。
【0141】
ステップS34で、残存寿命予測値Rが算出されると、通信頻度調整部81は、算出された残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さいか否かを判断する(ステップS35)。ステップS35で、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さいと判断された場合、通信頻度調整部81は、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させる(ステップS36)。ステップS34で、残存寿命予測値Rが所定値以上であると判断された場合は、通信頻度調整部81は、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させない。
【0142】
〈3−5−3.効果〉
この変形例によると、残存寿命予測処理部90が取得した残存寿命予測値Rの値が所定値よりも小さい場合に、電子表示システム1をセーブモード状態に移行させることができる。セーブモード状態においては電池56の消耗が抑えられるので、電子表示システム1をセーブモード状態とすることによって、電子棚札5の電池56を延命することができる。
【0143】
また、セーブモードにおいては、電池56の消耗が抑えられるというメリットがある半面、ESLサーバ10において一定期間情報信号が蓄積されるため、電子棚札5への情報伝達のタイミングが遅れるというデメリットがある。この変形例においては、能動化指示受付部82が、オペレータからの指示に応じて通信頻度調整部81を能動化もしくは非能動化するので、オペレータは、電池56の残存寿命が残り少なくなった場合に電子表示システム1をセーブモード状態に移行させるか否かを選択することができる。すなわち、電子表示システム1をセーブモード状態として電池56の残存寿命の延命を優先するか、セーブモード状態とせずに、電子棚札5への速やかな情報伝達を優先するか、をオペレータが選択することができる。
【0144】
〈3−6.第6の変形例〉
上記の実施の形態に係る電子棚札5は、制御部57のメモリに、自装置の電池56の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する構成であってもよい。カウンタ値は、例えば、電子棚札5がESLサーバ10との間で行った通信の回数を示す値であり、このカウンタ値に基づいて、電池56の消費電気量を特定することができる。
【0145】
ところで、電子棚札5が記憶するカウンタ値は、電子棚札5の電池56を交換した時に一旦クリアしなければならない。従来の一般的な電子表示システムの場合、専用のリモコン型送信機を用いて、対象となる電子棚札に対して、カウンタ値をクリアさせるコマンド(カウンタクリアコマンド)をブロードキャスト(送信先の電子棚札を特定しない送信方法)により送信し、これにより対象となる電子棚札にカウンタ値のクリアを行わせていた。ところがこの構成によると、ESLサーバの側において、どの電子棚札がカウンタ値をクリアしたかを把握できないため、システム管理の観点からみて問題であった。また、電池の交換を行っていない電子棚札がカウンタクリアコマンドを受信すると、そのような電子棚札までもがカウンタ値をクリアしてしまう恐れがあった。
【0146】
また、従来用いられていたカウンタ値のクリア方法として、電子棚札にカウンタ値のリセットスイッチを設けておき、作業者が電池を交換した際にこのリセットスイッチを押下して、電子棚札5のカウンタ値をクリアする構成も考案されていた。しかしながら、この構成によると、電子棚札のそれぞれにリセットスイッチを設ける必要があるため電子棚札の電気回路が複雑になり、コスト上好ましくなかった。また、作業者の手間がかかるという難点もあった。
【0147】
そこで、上記の実施の形態に係る電子表示システム1において、ESLサーバ10に、店舗内に配置された複数の電子棚札5のカウンタ値を管理する機能部を備える構成としてもよい。
【0148】
〈3−6−1.機能構成〉
この変形例に係るESLサーバ10は、図19に示す通り、上述した残存寿命予測処理部90に加えて、コマンド送信部83とカウンタ値管理部84とを備えている。コマンド送信部83およびカウンタ値管理部84は、ESLサーバ10のハードディスク14に予め記憶された動作プログラムに従ってCPU11が演算処理を行うことにより実現されてもよいし、専用のハードウェアによって実現されてもよい。
【0149】
コマンド送信部83は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して、カウンタクリアコマンドを送信する。カウンタクリアコマンドの送信は、例えばトランシーバを経由して行われる。
【0150】
コマンド送信部83は、カウンタクリアコマンドの送信を、ユニキャスト(送信先の電子棚札5を特定する送信方法)もしくはブロードキャストで行う。例えば、店舗内に配置された複数の電子棚札5のうちの一部が電池交換された場合、コマンド送信部83は、電池交換が行われた電子棚札5を、カウンタ値をクリアさせるべき電子棚札5として特定する。そして、当該電子棚札5に対して、ユニキャストでカウンタクリアコマンドを送信する。一方、店舗内に配置された複数の電子棚札5が一斉に電池交換された場合、コマンド送信部83は、店舗内に配置された複数の電子棚札5に対して、ブロードキャストでカウンタクリアコマンドを送信する。
【0151】
カウンタクリアコマンドがユニキャストで送信される場合について具体的に説明する。この場合、コマンド送信部83は、カウンタクリアコマンドおよび電池交換が行われた電子棚札5の装置コードを含む電気的な信号を生成し、ベースステーション41を通じて各通信装置4に送信する。通信装置4は、カウンタクリアコマンド及び装置コードの情報を含む赤外線信号を出力する。通信装置4から出力された赤外線信号は、電子棚札5の通信部54において受信されて電気信号に変換される。電子棚札5の制御部57は、通信部54で得られた電気信号から、カウンタクリアコマンド及び装置コードを取得する。
【0152】
次に、電子棚札5の制御部57は、得られた装置コードが、制御部57のメモリ内に予め記憶された自装置の装置コードと一致するか否かを判定する。制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致しない場合は、受信した赤外線信号は他の電子棚札5のための信号と判断し、処理を終了する。一方で、制御部57は、取得した装置コードが自装置のものと一致した場合は、受信した赤外線信号は自装置のための信号と判断し、メモリに記憶されたカウンタ値をクリアする。さらに、制御部57は、カウンタ値をクリアした場合、カウンタクリアコマンドを正常に受け取った旨を示す情報を含む赤外線信号(ACK応答信号)を発光部52に出力させる。この赤外線信号は通信装置4で受信されて、当該赤外線信号に含まれる情報がESLサーバ10に伝達される。これにより、ESLサーバ10は、電子棚札5のカウンタ値がクリアされたことを確認することができる。
【0153】
カウンタ値管理部84は、店舗内に配置された複数の電子棚札5のそれぞれについて、当該電子棚札5がカウンタ値をクリアした時刻を記憶する。具体的には、ESLサーバ10が、店舗内に配置された電子棚札5のいずれかからACK応答信号を受信した場合、当該ACK応答信号をESLサーバ10が受信した時刻とともに、当該ACK応答信号を送信した電子棚札5の装置コードを、ESLサーバ10のハードディスク14に格納する。
【0154】
〈3−6−2.効果〉
この変形例によると、ESLサーバ10から電子棚札5に対してカウンタクリアコマンドを送信し、これに応じて電子棚札5がカウンタ値をクリアするので、ESLサーバ10が店舗内に配置された電子棚札5それぞれのカウンタ値の状態(カウンタ値がクリアされたか否か)を把握することができる。また、この構成によると、電子棚札5に対してカウンタクリアコマンドを送信するためのリモコン型送信機が不要となる。また、電子棚札5にカウンタ値をクリアするためのリセットスイッチ等を設ける必要もない。
【0155】
また、ESLサーバ10から電子棚札5へユニキャストでカウンタクリアコマンドを送信することができるので、電池の交換を行っていない電子棚札に対してカウンタクリアコマンドが送信されてしまい、カウンタ値をクリアすべきでない電子棚札5のカウンタ値が誤ってクリアされてしまうといった事態が生じない。
【0156】
なお、上記の変形例においては、ESLサーバ10は、残存寿命予測処理部90とコマンド送信部83との両方を備える構成としたが、コマンド送信部83のみを備える構成としてもよい。
【0157】
〈3−7.その他の変形例〉
上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90が算出した残存寿命予測値Rの値を、ESLサーバ10のディスプレイ15に表示、もしくは、ESLサーバ10と通信回線を介して接続された他の外部装置(例えば、ストアコントローラ2や、メンテナンス用の装置)に送信する構成としたが、それ以外の構成であってもよい。例えば、算出された残存寿命予測値Rの値を、通常はESLサーバ10のディスプレイ15に表示し、ある条件を満たした場合(例えば、残存寿命予測値Rが所定値よりも小さい場合)に限って外部装置に送信する構成としてもよい。
【0158】
また、上記の実施の形態においては、残存寿命予測処理部90は、ESLサーバ10の入力部16を介してオペレータが所定の指示を入力した場合に、当該指示に応じて残存寿命予測値Rを算出する処理を実行する構成としたが、オペレータにより予め設定された期間をおいて定期的に(例えば、2ヶ月毎に)、自動で処理を実行する構成としてもよい。この変形例の場合、処理の結果出力された残存寿命予測値Rの値は、ストアコントローラ2や、通信回線を介して接続されたメンテナンス用の装置に送信される構成とすることが好ましい。
【0159】
また、上記の実施の形態においては、この発明に係る電子表示システムを、電子棚札システム1に用いていたが、この発明に係る電子表示システムは他のシステムに用いることも可能である。例えば、DMS(ドットマトリクスサイネージ)システム80に用いても有効である。
【0160】
DMSシステム80の構成例を、図20を参照しながら簡単に説明する。DMSシステムは、電子表示装置の一種である作業表示装置85と、作業表示装置85のそれぞれに対して情報を提供するサーバであるDMSサーバ86とを備える。作業表示装置85は、作業対象物の存在する位置に配置されて、作業対象物に対する作業内容に関する情報を表示する。また、DMSサーバ86は、電波中継器たるアクセスポイントAPを介して、作業表示装置85のそれぞれに、当該作業表示装置85において表示すべき情報を無線送信する。
【0161】
このような構成を備えるDMSシステム80において、DMSサーバ86に、作業表示装置85を駆動する電池の残存寿命を予測する機能部(上述した残存寿命予測処理部90と同様の機能部)を備えさせることによって、当該電池の残存寿命を高い信頼性をもって予測することができる。
【符号の説明】
【0162】
1 電子棚札システム
5 電子棚札
56 電池
10 ESLサーバ
81 通信頻度調整部
82 能動化指示受付部
90 残存寿命予測処理部
91 通信実績取得部
92 残存寿命予測部
93 報知処理部
9211 通信電気量算出部
9212 スタンバイ電気量算出部
9213 表示変更電気量算出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池で駆動される電子表示装置と、前記電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を備える電子表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
現時点で前記電池に残存している電池容量である残存電池容量を特定する残存電池容量特定手段と、
前記通信実績情報に基づいて、現時点までの所定期間において前記電子表示装置が電気を消費した速度である近傍消費速度を算出する消費速度算出手段と、
前記電子表示装置が前記近傍消費速度で電気を消費し続けた場合に、前記残存電池容量を消費してしまうまでの期間を算出し、算出された期間を前記電池の残存寿命の予測値として取得する残存寿命予測値算出手段と、
を備える電子表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間で前記電子表示装置が消費した電気量である消費電気量を算出し、前記電池の使用前の電池容量と前記消費電気量とを差分して得られる値を前記残存電池容量として取得する電子表示システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記サーバと前記電子表示装置との間で行われた通信の総時間を特定し、特定された前記総時間の値に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量を算出する通信電気量算出手段、
を備え、
前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれる電子表示システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更を行った回数を特定し、特定された回数に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量を算出する表示変更電気量算出手段、
を備え、
前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれる電子表示システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記サーバと前記電子表示装置との間での通信頻度を所定値まで低下させる通信頻度調整手段、
を備える電子表示システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記電池が消耗する時期が近いことを報知する報知手段、
を備える電子表示システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
定期的に、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する電子表示システム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
外部からの指示に応じて、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する電子表示システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記電子表示装置が、前記電池の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する記憶手段と、
所定のカウンタクリアコマンドに応じて前記カウンタ値をクリアするカウンタ値クリア手段と、
を備え、
前記サーバが、
前記電子表示装置に前記カウンタクリアコマンドを送信する送信手段、
を備える電子表示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の電子表示システムであって、
前記送信手段が、
前記カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信する電子表示システム。
【請求項12】
電池で駆動される電子表示装置に対して情報を提供する電子表示システム用のサーバであって、
前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を備える電子表示システム用のサーバ。
【請求項1】
電池で駆動される電子表示装置と、前記電子表示装置に対して情報を提供するサーバとを備える電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を備える電子表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
現時点で前記電池に残存している電池容量である残存電池容量を特定する残存電池容量特定手段と、
前記通信実績情報に基づいて、現時点までの所定期間において前記電子表示装置が電気を消費した速度である近傍消費速度を算出する消費速度算出手段と、
前記電子表示装置が前記近傍消費速度で電気を消費し続けた場合に、前記残存電池容量を消費してしまうまでの期間を算出し、算出された期間を前記電池の残存寿命の予測値として取得する残存寿命予測値算出手段と、
を備える電子表示システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間で前記電子表示装置が消費した電気量である消費電気量を算出し、前記電池の使用前の電池容量と前記消費電気量とを差分して得られる値を前記残存電池容量として取得する電子表示システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記サーバと前記電子表示装置との間で行われた通信の総時間を特定し、特定された前記総時間の値に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量を算出する通信電気量算出手段、
を備え、
前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が通信により消費した電気量が含まれる電子表示システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子表示システムであって、
前記残存電池容量特定手段が、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更を行った回数を特定し、特定された回数に基づいて、当該期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量を算出する表示変更電気量算出手段、
を備え、
前記消費電気量に、前記電池が使用開始されてから現時点までの期間において前記電子表示装置が表示変更のために消費した電気量が含まれる電子表示システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記サーバと前記電子表示装置との間での通信頻度を所定値まで低下させる通信頻度調整手段、
を備える電子表示システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記サーバが、
前記残存寿命予測手段が予測した前記電池の残存寿命が所定値よりも小さい場合に、前記電池が消耗する時期が近いことを報知する報知手段、
を備える電子表示システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
定期的に、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する電子表示システム。
【請求項9】
請求項1から7のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記残存寿命予測手段が、
外部からの指示に応じて、前記電池の残存寿命を予測する処理を実行する電子表示システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の電子表示システムであって、
前記電子表示装置が、前記電池の消費電気量を示すカウンタ値を記憶する記憶手段と、
所定のカウンタクリアコマンドに応じて前記カウンタ値をクリアするカウンタ値クリア手段と、
を備え、
前記サーバが、
前記電子表示装置に前記カウンタクリアコマンドを送信する送信手段、
を備える電子表示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の電子表示システムであって、
前記送信手段が、
前記カウンタクリアコマンドをユニキャストで送信する電子表示システム。
【請求項12】
電池で駆動される電子表示装置に対して情報を提供する電子表示システム用のサーバであって、
前記サーバと前記電子表示装置との間の通信実績に関する情報である通信実績情報を取得する通信実績情報取得手段と、
前記通信実績情報に基づいて、前記電池の残存寿命を予測する残存寿命予測手段と、
を備える電子表示システム用のサーバ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−194125(P2010−194125A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42966(P2009−42966)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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