説明

電子装置の製造方法

本発明は安価で生産性に優れかつ良好な通信特性を得るのに好適な電子装置の製造方法に関するものである。
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成された複数のICチップ(100)の一方の外部電極(102)を、スリットが形成された送受信アンテナにおける搭載すべきアンテナ回路(201)上にそれぞれ配置し、さらに前記ICチップ各々の他方の外部電極(103)と対応する前記アンテナ回路(201)の所定の位置とをそれぞれ別途電気的に接続するための短絡板(300)を設ける電子装置の製造方法において、少なくとも1個の前記ICチップ(100)と対応する搭載すべき前記アンテナ回路(201)上の所定の位置との位置合わせをすれば、それに従い、残りの前記ICチップ(100)もアンテナ回路(201)上の所定の位置に一括して配置できるようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップを搭載した非接触式個体識別装置に関して、安価で生産性に優れかつ良好な通信特性を得るのに好適な電子装置の製造方法及びそれに用いる部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いる非接触式個体識別システムは、物のライフサイクル全体を管理するシステムとして製造、物流、販売の全ての業態で注目されている。特に、2.45GHzのマイクロ波を用いる電波方式のRFIDタグは、ICチップに外部アンテナを取り付けた構造で数メートルの通信距離が可能であるという特徴によって注目されており、現在、大量の商品の物流及び物品管理や製造物履歴管理等を目的にシステムの構築が進められている。
【0003】
前記マイクロ波を用いる電波方式のRFIDタグとしては、例えば、株式会社日立製作所と株式会社ルネサステクノロジ社によって開発されたTCP(Tape Carrier Package)型インレットを用いたものが知られており、TCP型インレットの製造は、ポリイミド基材と銅アンテナ回路を連続して形成したテープキャリヤに、同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップを1個ずつ実装するTAB(Tape Automated Bonding)工法が採用されている(香山 晋、成瀬 邦彦「VLSIパッケージング技術(上)、(下)」、日経BP社、1993年)。以下、一般的なTAB工法を用いたRFIDタグの製造工程について図1を用いて説明する。
【0004】
図1において、まず、図1(a)に示すように、金バンプ104が回路面に形成された同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップ110をダイシング加工によって個片化した後に、ダイシングフィルム10から真空吸着器20によって吸着する。次に、図1(b)に示すように、同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップ110の金バンプ104が表面になるように真空吸着ステーション30に移す。次に、図1(c)に示すように、金バンプ104が下面になるように真空吸着ステーション30を上下反転させる。前記同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップ110を、銅箔付きポリイミド基材の銅箔をアンテナ回路加工して作製したアンテナ基板500の所定の位置に位置合せをした後、ヒータ40を用いて加熱圧着し、固定する。アンテナ回路501上の金バンプと接続する部分には錫めっき又ははんだめっきを施しておくことで金−錫合金による接続を得ることができる。次に、図1(d)に示すように、同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップ110とアンテナ基板500の空隙を熱硬化性樹脂600によって封止する。前記熱硬化性樹脂の硬化が終了した状態はインレットと呼ばれるRFIDタグの中間形態である。このインレットをラベルや薄型ケースに格納することでRFIDタグとしての使用が可能になる。
【0005】
その他のインレット構造としては、例えば、株式会社日立製作所の宇佐美により、ICチップの外部電極が向かい合った1組の各々の面に1個ずつ形成されたICチップにおいて、各々の面に形成された各外部電極にダイポールアンテナを接続するガラスダイオード・パッケージ構造が開発されている(特開2002−269520号公報)。さらに、宇佐美らにより、上記2個の外部電極がICチップの向かい合った1組の各々の面に1個ずつ形成されたICチップを励振スリット型ダイポールアンテナに実装する際に、アンテナによって前記ICチップの向かい合った1組の各々の面に1個ずつ形成された各外部電極を挟む、サンドイッチ・アンテナ構造が開発されている(ISSCC Digest of Technical Papers,pp.398−399,2003年)。励振スリットを有するダイポールアンテナ構造は、このスリットの幅及び長さを変えることで、アンテナのインピーダンスと上記ICチップの入力インピーダンスを整合することが可能で、通信距離を向上することができる。
【発明の開示】
【0006】
RFIDタグを用いた非接触式個体識別システムで大量の商品の物流及び物品管理を実現するためには、商品の1つ1つにRFIDタグを取り付ける必要があり、そのためにはRFIDタグの大量かつ安価な生産が不可欠となる。
【0007】
しかしながら、良好な通信特性が得られる励振型ダイポールアンテナ構造ではICチップの2つの外部電極が励振スリットを跨いでアンテナに接続されることで共振回路を形成するため、同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップでは、信号入力用の2個の外部電極とスリットを精度良く位置合せする必要がある。そのため、従来は図1に示したTAB工法を用いてICチップを1個ずつアンテナ基板に実装していたが、前記TAB工法では、ダイシングフィルムからの真空吸着器による同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップの吸着や同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップとアンテナ基板の位置合せ及び加熱圧着、さらに樹脂封止等の各工程を同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップについて1個ずつ行うため、各工程のタクト時間を1秒程度又は1秒以下に短縮することは非常に困難であり、大量生産性における大きな課題となっていた。
【0008】
また、タクト時間が長いとその分人件費等がかかり低コスト化の妨げになることに加え、同一面上に全ての外部電極が形成されたICチップとアンテナ基板との接続は金−錫又は金−はんだ接合によって行うために、基板材料として耐熱性に優れ、高価であるポリイミドフィルムに銅箔を貼り合わせたテープ基材を用いる必要があることから、安価なインレットの生産が困難となっている。
【0009】
上記アンテナによって2個の外部電極が向かい合った1組の各々の面に1個ずつ形成されたICチップの各々の面に1個ずつ形成された各外部電極を挟むサンドイッチ・アンテナ構造を用いれば、励振スリットと前記ICチップの各々の面に1個ずつ形成された各外部電極との高精度な位置合せが不要となるものの、TAB工法を用いた従来通りの生産方法では、2個の外部電極が向かい合った1組の各々の面に1個ずつ形成されたICチップにおけるICチップの大きさを0.4mm以下にすると、従来の真空吸着器によるICチップの吸着が困難となり、インレットの大量生産及び低コスト化が困難となる。
【0010】
本発明は、前記に鑑みてなされたものであり、安価で生産性に優れかつ良好な通信特性を得ることができる電子装置の製造方法及びそれに用いる部材を提供するものである。
【0011】
即ち、本発明は以下の通りである。
(1)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、整列した複数の前記ICチップのうち少なくとも1個のICチップと対応する搭載すべきアンテナ回路上の所定の位置との位置合せをすれば、それに従って残りのICチップについても高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0012】
(2)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列又は横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、整列した複数の前記ICチップを電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板に第1の異方導電性接着剤層を介して一括して仮固定し、ICチップ付き短絡板を作製する工程、前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に、複数の前記ICチップが電気的に接続するように、前記ICチップ付き短絡板を位置合せする工程、アンテナ基板上の所定の位置に、前記ICチップ付き短絡板を第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0013】
(3)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、第1の異方導電性接着剤層を介して仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0014】
(4)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、前記アンテナ回路上の所定の位置に第1の異方導電性接着剤層を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、第1の異方導電性接着剤層上に整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に第2の異方導電性接着剤層を形成する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0015】
(5)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、アンテナ基板の幅方向に前記ICチップを並べたときの列を1列ずつ、一括して加熱圧着することができる個数分を1個片として短絡板を分割する工程、前記短絡板をアンテナ基板の幅方向に並べられたアンテナ回路の1列と位置合せする工程、短絡板を前記ICチップ及びアンテナ基板上に異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0016】
(6)前記(1)〜(5)の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方がアルミニウムであることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0017】
(7)前記(1)〜(5)の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方が有機樹脂からなるベース基材に支持されており、前記有機樹脂は、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート樹脂(PC)、2軸延伸ポリエステル(O−PET)、ポリイミド樹脂から選択されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0018】
(8)前記(1)〜(5)の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方が紙からなるベース基材に支持されていることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0019】
(9)前記(1)〜(5)の製造方法において、第1及び第2の異方導電性接着剤層の加熱圧着によって、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0020】
(10)前記(1)〜(5)の製造方法において、複数の前記ICチップをアンテナ基板及び短絡板と一括して加熱圧着する工程の後に、連続しているアンテナ回路を1個ずつの個片に切断する工程を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0021】
(11)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置における部材において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で予め挟み込んだ状態の半導体素子であることを特徴とする電子装置の部材。
【0022】
(12)外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置における部材において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で挟み込んだ状態の半導体素子の前記異方導電性接着剤層のうちの一方の面上に、短絡板をさらに予め設けていることを特徴とする電子装置の部材。
【0023】
(13)前記(1)〜(5)の製造方法において、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列して、複数の前記ICチップを一括して整列する方法が、前記ICチップが収まる寸法の凹部を数個から数万個程度形成した治具を用いて、治具を振動させることで治具上の前記ICチップを各凹部に収める方法であることを特徴とする電子装置の製造方法。
【0024】
(14)前記(1)〜(5)の製造方法において、短絡板と前記ICチップ及びアンテナ基板を一括して加熱圧着することを特徴とする電子装置の製造方法。
【0025】
本発明の電子装置の製造方法及びそれに用いる部材により次のような効果を得ることができる。外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップを複数個整列し、アンテナ基板及び短絡板に一括して実装することによって、優れた生産性を実現することができ、また、良好な通信特性を得ることができる。インレット1個当りの生産タクト時間を1秒程度又は1秒以下に短縮することができること並びに異方導電性接着剤層を介して前記ICチップとアンテナ基板及び短絡板を接続するためにベース基材及びアンテナ回路の材料に安価な材料を使用することができることから、低価格のインレットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、従来の製造方法を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の製造方法によって得られるインレットの構造を示す図である。
【図3】図3は、本発明のICチップの整列方法の一例を説明するための図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態を説明するための製造工程図である。
【図5】図5は、本発明の第2の実施の形態を説明するための製造工程図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0028】
本発明における電子装置は、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板と、を備えるものである。
【0029】
前記電子装置は、本発明の製造方法を用いたRFIDタグ用インレットである。図2(a)はRFIDタグ用インレットを上面から見た概略図である。また、図2(b)は図2(a)のA−A’部の断面概略図である。図2を用いて、前記インレットの構造を簡単に説明する。
【0030】
図2において、図2(b)に示すように、前記ICチップ100の向かい合った1組の各々の面には、第1の外部電極102及び第2の外部電極103が各々形成されている。前記ICチップ100は第1の外部電極102によって、ベース基材202及びアンテナ回路201で構成されるアンテナ基板200に第1の接続部2において、異方導電性接着剤層400に含有される導電粒子401を介して接続されている。同様に、ベース基材302及び金属箔301で構成される短絡板300と前記ICチップ100の第2の外部電極103が第2の接続部3において、また、短絡板300とアンテナ基板200が第3の接続部4において、異方導電性接着剤層400に含有される導電粒子401を介して各々接続されている。前記ICチップの第2の外部電極103の第2の接続部3とアンテナ基板上の第3の接続部4は、アンテナ基板に形成されたスリット1を跨いで接続される構造となる。すなわち、前記ICチップの第1の外部電極102と第2の外部電極103は、第1の接続部2、アンテナ回路201、第3の接続部4、短絡板の金属箔301及び第2の接続部3を介して電気的に接続される。また、アンテナ基板200と短絡板300の空隙は、異方導電性接着剤層のマトリクス樹脂402によって封止されている。
【0031】
次に、前記電子装置の製造方法について例を挙げて、図面を用いて説明する。
【0032】
本発明における前記電子装置の製造方法の第1の例は、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列又は横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、整列した複数の前記ICチップを電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板に第1の異方導電性接着剤層を介して一括して仮固定し、ICチップ付き短絡板を作製する工程、前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に、複数の前記ICチップが電気的に接続するように、前記ICチップ付き短絡板を位置合せする工程、アンテナ基板上の所定の位置に、前記ICチップ付き短絡板を第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有するものである。
【0033】
また、本発明における前記電子装置の製造方法の第2の例は、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、第1の異方導電性接着剤層を介して仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有するものである。
【0034】
また、本発明における前記電子装置の製造方法の第3の例は、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、前記アンテナ回路上の所定の位置に第1の異方導電性接着剤層を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、第1の異方導電性接着剤層上に整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に第2の異方導電性接着剤層を形成する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有するものである。
【0035】
前記第1〜第3の例において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方はアルミニウムである。前記第1〜第3の例において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方は有機樹脂又は紙からなるベース基材に支持されている。前記有機樹脂は、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート樹脂(PC)、2軸延伸ポリエステル(O−PET)、ポリイミド樹脂から選択される。
【0036】
前記第1〜第3の例において、アンテナ基板を形成する方法としては、例えば、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成してからベース基材上に設けることでアンテナ基板を形成する方法、ベース基材上に第1の金属箔を設けてからエッチング等により複数のアンテナ回路を形成することでアンテナ基板を形成する方法がある。
【0037】
前記第1〜第3の例において、前記ICチップの整列方法としては、例えば、金属板表面に前記ICチップが収まる寸法の凹部を、数個から数万個程度形成した治具を準備し、凹部の個数又はそれ以上のICチップを治具上に供給した後、治具を振動させることで凹部に前記ICチップを収める方法を用いることができる。図3に前記整列方法に用いる治具の例を模式的に示す。図3において、図3(a)に示すように、治具60において、61は前記ICチップを収めるための凹部、62は各凹部の底面に設けた真空吸引するための穴、63は真空ポンプである。治具の振動とともに真空吸引を行うことで、一度凹部に収まった前記ICチップがさらなる振動で脱落することを防止でき、また凹部に前記ICチップが収まった後に余剰なICチップを除去することも容易にできる。凹部はICチップの形状に合せて作られ、真空吸引するための穴62はICチップの面積大よりも微細に形成されており、容易にICチップの着脱をすることができる。図3(b)は前記ICチップを治具上に供給した様子、図3(c)は治具を振動させ、前記ICチップが凹部に収まった後に余剰なICチップを除去し、前記ICチップの整列が完了した様子を示す。
【0038】
また、他の前記ICチップの整列方法としては、例えば、チップコンデンサやチップ抵抗等のチップ部品を1列に整列する高速バルクフィーダーやパーツフィーダーと、1列に整列した部品をプリント基板等に実装する高速チップマウンタとを組合せる方法がある。
【0039】
この場合、以下のようにして製造することができる。
【0040】
この場合、例えば、高速バルクフィーダーから排出された複数の前記ICチップを、高速チップマウンタを用いて、異方導電性接着剤層付短絡板上に対応する搭載すべきアンテナ回路上の配置と等間隔に整列して仮固定し、前記ICチップ付短絡板をアンテナ基板上の所定の位置に一括して実装することができる。
【0041】
前記第1〜第3の例において、整列した複数の前記ICチップのうち少なくとも1個のICチップと対応する搭載すべきアンテナ回路上の所定の位置との位置合せをすれば、それに従って残りのICチップについても高精度な位置合せをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができる。
【0042】
前記第1〜第3の例において、アンテナ基板の幅方向に前記ICチップを並べたときの列を1列ずつ、一括して加熱圧着することができる個数分を1個片として短絡板を分割する工程、前記短絡板をアンテナ回路上の所定の位置に位置合せする工程、短絡板を前記ICチップ及びアンテナ基板上に異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を有する場合、タクト時間を短縮することができる点で好ましい。
【0043】
前記第1〜第3の例において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で予め挟み込んだ状態の半導体素子を用いてもよく、この場合より効率的にインレットを製造することができる。
【0044】
前記第1〜第3の例において、前記第1及び第2の異方導電性接着剤層の加熱圧着によって、複数の前記ICチップをアンテナ基板及び短絡板と一括して加熱圧着するとともに、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止することができる。
【0045】
この場合、前記第1及び第2の異方導電性接着剤層の厚みの合計を少なくとも前記ICチップの厚みの2分の1以上にすることが、アンテナ基板と短絡板との封止性を得ることができ、高信頼性を実現することができる点で好ましい。
【0046】
前記加熱圧着前に短絡板を複数個に分割しておくと、熱歪みによる位置ずれを防止することができる点で好ましい。
【0047】
前記第1〜第3の例において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で予め挟み込んだ状態の半導体素子の前記異方導電性接着剤層のうちの1方の面上に、短絡板をさらに予め設けているものを用いてもよく、この場合さらに効率的にインレットを製造することができる。
【0048】
前記第1〜第3の例において、短絡板を形成するために第2の金属箔をベース基材上に設ける方法としては、例えば、第2の金属箔を単に前記ベース基材上に貼り付けるだけの方法があり、前記第2の金属箔についてエッチング等の処理をする必要がないことから工程が少なくて済み、タクト時間を短縮することができ、低コスト化することができる点で好ましい。
【0049】
前記第1〜第3の例において、短絡板を前記ICチップ及びアンテナ基板上に異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程の後、連続しているアンテナ回路を1個ずつの個片に切断する工程を有する。
【0050】
前記第1〜第3の例において、前記切断する工程において、図2におけるAーA’方向を幅方向としたとき、短絡板はスリットを跨いで前記ICチップにかかる程度の長さを有することが必要であり、アンテナ回路の幅とほぼ同等の長さを有していることがインレット全体の外観上好ましい。
【0051】
前記第1〜第3の例において、前記各工程を経て、本発明の電子装置であるインレット構造を得ることができる。
【0052】
前記インレットについて、RFIDタグの形態で使用する際には、インレットの上下にカバーシートを設けることが、回路を保護してショート等を防ぐ点で好ましい。
【0053】
前記第1〜第3の例において、複数の前記ICチップを整列し、短絡板及びアンテナ基板に一括して固定することによって、前記ICチップを1個ずつ実装する場合に比べて優れた生産性を実現することができる。生産性を向上することでインレット1個当たりのタクト時間を短縮することができる。
【0054】
前記第1〜第3の例において、前記ICチップと短絡板を用い、スリットを跨ぐ接続構造とすることで、前記ICチップのアンテナ回路に接する側の面の外部電極とアンテナ回路上の励振スリットの高精度な位置合せが不要であり、篩いや金型を用いて整列する前記ICチップの粗い位置精度でも、一括してアンテナ基板に良好に実装することができる。
【0055】
前記第1〜第3の例において、前記ICチップとアンテナ基板及び短絡板、短絡板及びアンテナ基板の各電気的接続は、異方導電性接着剤層を介して行う。異方導電性接着剤層による接続は、被接続体である前記ICチップの各々の面に形成された各外部電極を前記異方導電性接着剤層に含有される導電粒子との接触によって得られるものであり、アンテナ回路上の表面めっきが不要であること、かつ、金属接合を形成するために200°C以上の高温でのボンディングに耐えうる高耐熱性ベース基材が不要であることから、安価なベース基材及びアンテナ回路の使用が可能となり、低コスト化を実現することができる。
【0056】
前記電気的接続を異方導電性接着剤層を介して行うため、例えば、従来の金−錫接合等で接続する場合にはアンテナ基板のベース基材として耐熱性の高いポリイミドを使用する必要があったのに対し、例えば、安価なポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。また、前記接続部のアンテナ回路上の表面に錫めっき等を施す必要がないことから、錫やはんだのめっき性が悪いものの安価なアルミニウムをアンテナ回路の材料に使用することができる。従って、例えば、ポリエチレンテレフタレートのベース基材にアルミニウムのアンテナ回路を形成して得られるアンテナ基板は、安価なRFIDタグ用インレットを製造するために好適な部材である。
【0057】
前記第1の例において、第1の異方導電性接着剤層は予め短絡板に形成してもよいし、前記ICチップの第2の外部電極側に形成してもよい。また、第2の異方導電性接着剤層は予めアンテナ基板上に形成してもよいし、前記ICチップの第1の外部電極102側に形成してもよい。
【0058】
前記第2の例において、第1の異方導電性接着剤層は予めアンテナ基板上に形成してもよいし、前記ICチップの第1の外部電極102側に形成してもよい。また、第2の異方導電性接着剤層は予め短絡板に形成してもよいし、ICチップ及びアンテナ回路上に形成してもよい。
【0059】
前記第1〜第3の例において、整列した複数の前記ICチップのうち少なくとも1個のICチップと対応する搭載すべきアンテナ回路上の所定の位置との位置合せをすれば、それに従って残りのICチップについても高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができる。
【0060】
即ち、本発明の電子装置の製造方法は、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、整列した複数の前記ICチップのうち少なくとも1個のICチップと対応する搭載すべきアンテナ回路上の所定の位置との位置合せをすれば、それに従って残りのICチップについても高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができることを特徴とする電子装置の製造方法である。
【0061】
前記第1〜第3の例で説明したように、複数の前記ICチップを整列させた後、短絡板及びアンテナ基板に電気的に接続するよう一括して固定することで、インレットの生産性を飛躍的に向上することができる。
【実施例】
以下、本発明の好適な実施例について図面を用いてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
図2(a)は本発明の実施形態であり、本発明の製造方法を用いたRFIDタグ用インレットを上面から見た概略図である。また、図2(b)は図2(a)のA−A’部の断面概略図である。図2を用いて、インレットの構造を簡単に説明する。
【0063】
図2において、図2(b)に示すように、ICチップ100の向かい合った1組の各々の面には、第1の外部電極102及び第2の外部電極103が形成されている。ICチップ100は第1の外部電極102によって、ベース基材202及びアンテナ回路201で構成されるアンテナ基板200に第1の接続部2において、異方導電性接着剤層400に含有される導電粒子401を介して接続されている。同様に、ベース基材302及び金属箔301で構成される短絡板300とICチップ100の第2の外部電極103が第2の接続部3において、また、短絡板300とアンテナ基板200が第3の接続部4において、前記導電粒子401を介して各々接続されている。すなわち、前記ICチップの第2の外部電極103の第2の接続部3とアンテナ基板上の第3の接続部4は、アンテナ基板に形成されたスリット1を跨いで接続される構造となる。すなわち、前記ICチップの第1の外部電極102と第2の外部電極103は、第1の接続部2、アンテナ回路201、第3の接続部4、短絡板の金属箔301及び第2の接続部3を介して電気的に接続される。また、アンテナ基板200と短絡板300の空隙は、異方導電性接着剤層のマトリクス樹脂402によって封止されている。
【0064】
<第1の実施の形態>
以下、図4を用いて、第1の実施の形態を説明する。
【0065】
まず、図4(a)に示すように、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材202に、厚み9μmのアルミニウム箔を接着剤にて貼り合せたテープ状基材のアルミニウム箔面に、スクリーン印刷でエッチングレジストを形成した後、エッチング液に塩化第二鉄水溶液を用いて、アンテナ回路201を連続して形成する。ここで、アンテナ回路1個当りのアンテナの幅を2.5mm、スリット幅を0.5mm、アンテナ回路の形成ピッチを3mmとした。紙面の都合上、以下の工程ではBの部分のみを示す。
【0066】
次に、図4(b)に示すように、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成された縦横各0.4mmで厚さ0.15mmのICチップ100を約10000個準備し、金属板表面に前記ICチップが収まる寸法の凹部を、横(製造ラインの進行方向に対する幅方向)が3mmピッチで40個、縦(製造ラインの進行方向)が2mmピッチで50個の合計2000個分形成した治具を準備した。次に約10000個の前記ICチップを治具上に供給した後、治具を約60秒振動させることで各凹部に前記ICチップを納め、整列した。この際、各凹部の底面に真空吸引するための穴を設けておき、治具の振動とともに真空吸引を行うことで、一度凹部に収まった前記ICチップがさらなる振動で脱落することを防止し、さらに凹部に前記ICチップが収まった後に刷毛で余剰なICチップを除去した。
【0067】
次に、図4(c)に示すように、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材に、厚み9μmのアルミニウム箔を接着剤にて貼り合せた短絡板300のアルミニウム箔面上に、幅が110mmの異方導電性接着フィルム400(AC−2052P−45(日立化成工業(株)製))を80°Cでラミネートし、セパレータフィルムを剥がして異方導電性接着剤層を形成した。その上に、前記ICチップを真空吸引したまま、治具を上下反転し、真空吸引を止めることで2000個の前記ICチップの外部電極が付いている各々の面のうちの一方の面を下にして一括で整列した状態で配置した。
【0068】
次に、図4(d)に示すように、整列した前記ICチップの短絡板側の外部電極とは反対側の外部電極面上に、前記幅の前記異方導電性接着フィルム400を80°Cでラミネートした後、セパレータフィルムを剥がして異方導電性接着剤層を形成し、前記ICチップ付き短絡板とした。このとき、前記ICチップの外部電極の付いている各々の面は前記異方導電性接着剤層で挟み込まれた状態になっている。
【0069】
次に、図4(e)に示すように、前記ICチップ付き短絡板を2mm幅でアンテナ基板の幅方向に実装するように切断し、3mmピッチで40個のICチップが1列に並んだ前記ICチップ付き短絡板に分割した。
【0070】
次に、図4(f)に示すように、CCDカメラと画像処理装置を用いて、前記分割した前記ICチップ付き短絡板の異方導電性接着剤層上から透かして見た前記ICチップと、アンテナ回路上の所定の位置とを位置合せすることで、前記ICチップ付き短絡板のICチップがアンテナ基板に接続する向きに仮固定した。このとき、1個のICチップのみCCDカメラと画像処理装置を用いてアンテナ回路上の所定の位置との位置合わせをすればよく、それに従って残りの39個のICチップについても前記カメラ及び前記装置を用いて高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができる。また、CCDカメラと画像処理装置を用いる替わりに異方導電性接着剤層上から目視で透かして見た前記ICチップの位置精度でも問題はない。続いて、短絡板側から圧着ヘッドを降下し、圧力3MPa、温度180°C、加熱時間15秒の条件で、前記ICチップ付き短絡板をアンテナ基板の幅方向に並んだアンテナ回路の1列分に対して所定の位置に一括して加熱圧着するとともに、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止した。続いて、残りの49列分についても同様の工程を経てアンテナ基板に加熱圧着した。圧着ヘッドには、前記ICチップとアンテナ基板及び短絡板の接続と、短絡板及びアンテナ基板の接続が同時にできるように、前記ICチップの厚み分の突起を所定の位置に形成してある。次に、図4(g)に示すように、プレス切断機を用いて1個の個片ずつに切断し、図2に示す形状のインレット構造を得た。
【0071】
本工程を用いれば、前記ICチップの整列に要した時間がインレット1個あたり0.03秒、前記ICチップ付き短絡板をアンテナ基板に接続するのに要した時間がインレット1個あたり0.375秒であった。圧着ヘッドを複数個用いれば、さらにインレット1個当りのタクト時間を短縮することができる。
【0072】
また、前記ICチップの実装位置精度は所定の位置から±0.3mm以内に収まっており、位置ずれによる組み立て不良及び通信不良はなかった。
【0073】
即ち、短絡板を、対応する搭載すべきアンテナ回路の配置と等間隔にICチップを配置して、一括して加熱圧着できるICチップの個数分を1個片として分割する方法において、前記ICチップ又は異方導電性接着剤層はアンテナ回路上に設けておいてもよい。
【0074】
<第2の実施の形態>
以下、図5を用いて、第2の実施の形態を説明する。
【0075】
まず、図5(a)に示すように、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材202に、厚み9μmのアルミニウム箔を接着剤にて貼り合せたテープ状基材のアルミニウム箔面に、スクリーン印刷でエッチングレジストを形成した後、エッチング液に塩化第二鉄水溶液を用いて、アンテナ回路201を連続して形成する。ここで、アンテナ回路1個当りのアンテナの幅を2.5mm、スリット幅を0.5mm、アンテナ回路の形成ピッチを3mmとした。紙面の都合上、以下の工程ではB’の部分のみを示す。
【0076】
次に、図5(b)に示すように、アンテナ回路上の所定の位置に、幅2mmの異方導電性接着フィルム400(AC−2052P−45(日立化成工業(株)製))を80°Cでラミネートし、セパレータフィルムを剥がして異方導電性接着剤層を形成した。
【0077】
次に、図5(c)に示すように、外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成された縦横各0.4mmで厚さ0.15mmのICチップ100を約10000個準備し、金属板表面に前記ICチップが収まる寸法の凹部を、横(製造ラインの進行方向に対する幅方向)が3mmピッチで40個、縦(製造ラインの進行方向)が2mmピッチで50個の合計2000個形成した治具を準備した。次に約10000個の前記ICチップを治具上に供給した後、治具を約60秒振動させることで各凹部に前記ICチップを納め、整列した。この際、第1の実施例と同様に、各凹部の底面に真空吸引するための穴を設けておき、治具の振動とともに真空吸引を行うことで、一度凹部に収まった上記ICチップがさらなる振動で脱落することを防止し、さらに凹部に前記ICチップが収まった後に刷毛で余剰なICチップを除去した。
【0078】
次に、図5(d)に示すように、整列した前記ICチップのうち、横1列分の40個のみ真空吸引したまま、治具を上下反転し、CCDカメラと画像処理装置を用いてアンテナ回路上の所定の位置に位置合せし、真空吸引を止めることで、仮固定した。このとき、1個のICチップのみCCDカメラと画像処理装置を用いてアンテナ回路上の所定の位置との位置合わせをすればよく、それに従って残りの39個のICチップについても前記カメラ及び前記装置を用いて高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができる。
【0079】
次に、図5(e)に示すように、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材に、厚み9μmのアルミニウム箔を接着剤にて貼り合せた、幅2mmのテープ状基材のアルミニウム箔面上に、前記テープ状基材と同幅の前記異方導電性接着フィルム400を80°Cでラミネートし、セパレータフィルムを剥がし、異方導電性接着剤層付き短絡板とした。
【0080】
次に、図5(f)に示すように、異方導電性接着剤層付き短絡板とアンテナ基板とを外形寸法を基準にして所定の位置に合せ、仮固定した。続いて異方導電性接着剤層付き短絡板側から圧着ヘッドを降下し、圧力3MPa、温度180°C、加熱時間15秒の条件で、前記異方導電性接着剤層付き短絡板をアンテナ基板の幅方向に並んだ前記ICチップ及びアンテナ回路の1列分に対して所定の位置に一括して加熱圧着するとともに、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止した。続いて、残りの49列分についても同様の工程を経てアンテナ基板に加熱圧着した。圧着ヘッドには、前記ICチップとアンテナ基板及び短絡板の接続と、短絡板及びアンテナ基板の接続が同時にできるように、前記ICチップの厚み分の突起を所定の位置に形成してある。
【0081】
次に、図5(g)に示すように、プレス切断機を用いて1個の個片ずつに切断し、図2及び図3に示す形状のインレットを得た。
【0082】
本工程を用いれば第1の実施の形態と同様に、前記ICチップの整列に要した時間がインレット1個あたり0.03秒、前記短絡板をアンテナ基板に接続するのに要した時間がインレット1個あたり0.375秒であった。圧着ヘッドを複数個用いれば、さらにインレット1個当りのタクト時間を短縮することができる。
【0083】
また、第1の実施の形態と同様に、前記ICチップの実装位置精度は所定の位置から±0.3mm以内に収まっており、位置ずれによる組み立て不良及び通信不良はなかった。即ち、短絡板を、対応する搭載すべきアンテナ回路の配置と等間隔にICチップを配置して、一括して加熱圧着できるICチップの個数分を1個片として分割する方法において、前記ICチップ又は異方導電性接着剤層はアンテナ回路上に設けておいてもよい。
<第3の実施の形態>
以下、第3の実施形態を説明する。
図5における図5(d)までは第2の実施の形態と同様の工程を用いて、前記アンテナ基板の加工を行い、前記異方導電性接着フィルムをアンテナ回路上にラミネートして異方導電性接着剤層を形成し、前記外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップを整列して、アンテナ回路上の所定の位置に前記ICチップを、アンテナ基板の幅方向に並んだ1列分に対して一括して仮固定した。
【0084】
次に、仮固定した前記ICチップ上に、上記ラミネートした異方導電性接着フィルムと同幅の異方導電性接着フィルムを80°Cでラミネートし、セパレータフィルムを剥がして異方導電性接着剤層を形成した。
【0085】
次に、厚み50μmのポリエチレンテレフタレート基材に、厚み9μmのアルミニウム箔を接着剤にて貼り合せた幅2mmのテープ状基材を準備し、これを短絡板とした。前記短絡板のアルミニウム箔面側を前記ICチップに向け、外形寸法を基準にして前記異方導電性接着フィルムと重なるように位置合せをし、仮固定した。続いて短絡板側から圧着ヘッドを降下し、圧力3MPa、温度180°C、加熱時間15秒の条件で、短絡板をアンテナ基板の幅方向に並んだ前記ICチップ及びアンテナ回路の1列分に対して所定の位置に一括して加熱圧着するとともに、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止した。続いて、残りの49列分についても同様の工程を経てアンテナ基板に加熱圧着した。圧着ヘッドには、ICチップとアンテナ基板及び短絡板の接続と、短絡板及びアンテナ基板の接続が同時にできるように、前記ICチップの厚み分の突起を所定の位置に形成してある。
【0086】
次に、プレス切断機を用いて1個の個片ずつに切断し、図2及び図4に示す形状のインレット構造を得た。
【0087】
本工程を用いれば第1及び第2の実施の形態と同様に、前記ICチップの整列に要した時間がインレット1個あたり0.03秒、前記短絡板をアンテナ基板に接続するのに要した時間がインレット1個あたり0.375秒であった。圧着ヘッドを複数個用いれば、さらにインレット1個当りのタクト時間を短縮することができる。
【0088】
また、第1及び第2の実施の形態と同様に、前記ICチップの実装位置精度は所定の位置から±0.3mm以内に収まっており、位置ずれによる組み立て不良及び通信不良はなかった。
【0089】
即ち、短絡板を、対応する搭載すべきアンテナ回路の配置と等間隔にICチップを配置して、一括して加熱圧着できるICチップの個数分を1個片として分割する方法において、前記ICチップ又は異方導電性接着剤層はアンテナ回路上に設けておいてもよい。
【0090】
以上の実施例の結果をまとめて表1に示す。
【0091】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、整列した複数の前記ICチップのうち少なくとも1個のICチップと対応する搭載すべきアンテナ回路上の所定の位置との位置合せをすれば、それに従って残りのICチップについても高精度な位置合わせをすることなくアンテナ回路上の所定の位置に一括して配置することができることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列又は横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、整列した複数の前記ICチップを電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板に第1の異方導電性接着剤層を介して一括して仮固定し、ICチップ付き短絡板を作製する工程、前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に、複数の前記ICチップが電気的に接続するように、前記ICチップ付き短絡板を位置合せする工程、アンテナ基板上の所定の位置に、前記ICチップ付き短絡板を第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項3】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、第1の異方導電性接着剤層を介して仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に第2の異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項4】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、第1の金属箔を用いて複数のアンテナ回路を形成する工程及びベース基材上に前記アンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程もしくはベース基材上に設けた第1の金属箔から複数のアンテナ回路を設けることでアンテナ基板を形成する工程、前記アンテナ回路上の所定の位置に第1の異方導電性接着剤層を形成する工程、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列する工程、対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に複数の前記ICチップが電気的に接続するように、第1の異方導電性接着剤層上に整列した複数の前記ICチップを一括して位置合せした後、仮固定する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に第2の異方導電性接着剤層を形成する工程、仮固定した複数の前記ICチップ及びアンテナ回路上の所定の位置に電気的に接続するように第2の金属箔を形成した短絡板を位置合せする工程、前記短絡板を、複数の前記ICチップ及びアンテナ基板上に一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項5】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置の製造方法において、アンテナ基板の幅方向に前記ICチップを並べたときの列を1列ずつ、一括して加熱圧着することができる個数分を1個片として短絡板を分割する工程、前記短絡板をアンテナ基板の幅方向に並べられたアンテナ回路の1列と位置合せする工程、短絡板を前記ICチップ及びアンテナ基板上に異方導電性接着剤層を介して一括して加熱圧着する工程、を少なくとも有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項6】
請求の範囲第1項〜第5項に記載の電子装置の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方がアルミニウムであることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項7】
請求の範囲第1項〜第6項に記載の電子装置の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方が有機樹脂からなるベース基材に支持されており、前記有機樹脂は、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート樹脂(PC)、2軸延伸ポリエステル(O−PET)、ポリイミド樹脂から選択されることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求の範囲第1項〜第6項に記載の電子装置の製造方法において、第1及び第2の金属箔の少なくとも一方が紙からなるベース基材に支持されていることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求の範囲第1項〜第8項に記載の電子装置の製造方法において、第1及び第2の異方導電性接着剤層の加熱圧着によって、アンテナ基板と短絡板との空隙を封止することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項10】
請求の範囲第1項〜第9項に記載の電子装置の製造方法において、複数の前記ICチップをアンテナ基板及び短絡板と一括して加熱圧着する工程の後に、連続しているアンテナ回路を1個ずつの個片に切断する工程を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項11】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置における部材において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で予め挟み込んだ状態の半導体素子であることを特徴とする電子装置の部材。
【請求項12】
外部電極が向かい合った1組の各々の面に形成されたICチップと、スリットが形成された送受信アンテナと、前記ICチップと前記アンテナとを電気的に接続する短絡板とを備えた電子装置における部材において、前記ICチップの外部電極が付いている各々の面に異方導電性接着剤層を形成して、前記ICチップを前記異方導電性接着剤層で挟み込んだ状態の半導体素子の前記異方導電性接着剤層のうちの一方の面上に、短絡板をさらに予め設けていることを特徴とする電子装置の部材。
【請求項13】
請求の範囲第1項〜第10項に記載の電子装置の製造方法において、複数の前記ICチップを対応する搭載すべき前記複数のアンテナ回路上の所定の位置に配置するときと同じ間隔により、複数の前記ICチップを整列する縦列及び横列のうちの少なくとも一方の列を整列して、複数の前記ICチップを一括して整列する方法が、前記ICチップが収まる寸法の凹部を数個から数万個程度形成した治具を用いて、治具を振動させることで治具上の前記ICチップを各凹部に収める方法であることを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項14】
請求の範囲第1項〜第10項及び第13項に記載の電子装置の製造方法において、短絡板と前記ICチップ及びアンテナ基板を一括して加熱圧着することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【国際公開番号】WO2005/055130
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515960(P2005−515960)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017939
【国際出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】