説明

電子装置及びその製造方法

本発明は、第1パターンの導電線が設けられた第1接触表面と、第2パターンの導電性が設けられた第2接触表面と、を備えた実質的に透明な電子装置であって、前記第1接触表面が前記第2接触表面に平行に延在しており、前記第1パターンが前記第2パターンに対して15から165°の間の角度だけ回転変位している電子装置に関する。前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線は、可視光に対して実質的に透明でなく、好ましくはシャント線として使用される。本発明はさらに、このような装置の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1パターンの導電線が設けられた第1接触面と、第2パターンの導電線が設けられた第2接触面とを備え、該第1接触面が該第2接触面に対して平行に延在している実質的に透明な電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭において定義されたような電子装置の実施形態は、特許文献1で知られている。周知の電子装置は、基板と、基板の表面上に配置された有機電界発光ユニットと、有機電界発光層を覆う一対の対向する電極とを備える有機電界発光ディスプレイ(OELD)に関する。アノードまたはカソードによって有機電界発光層に適当な電気パルスが印加されると、そこから所望の発光が可能となる。
【0003】
周知のOELDは可視領域の光を発光すると考えられているため、OELDの各構造的層に使用される材料は、少なくとも部分的に透明である。しかしながら、それぞれの層において互いに上部に配置された、パターン形成されたカソード及びアノードの導電線は、互いに光学的に干渉し、望ましくないモアレ効果を引き起こす。
【0004】
モアレ効果を抑制するため、または部分的に軽減するために、周知の装置は、OELDの機能層から所定の高さだけずらして配置された、セルを含む多孔性材料の追加の層を備える。特許文献1によると、モアレ効果を軽減するためには、このような距離は、10から100マイクロメートルの間に設定しなければならない。このような所定の間隔を容易にするために、周知の電子装置は、多孔性材料の層と協働する側壁を備える。
【0005】
周知の電子装置の欠点は、モアレ効果を軽減するために多孔性材料の層及び壁を配置する工程などの追加の製造ステップを実施しなければならない点にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願第2005/0046338号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、単純な手段を使用してモアレ効果が軽減される、実質的に透明な電子装置を提供することにある。
【0008】
この目的を達成するために、本発明による電子装置では、第1パターンが第2パターンに対して15から165°の間の角度だけ回転変位され、ここで、前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線は、可視光に対して実質的に透明でない。
【0009】
本発明の技術的手段は、アノード及びカソードの各導電線の間の完全な整列を目指すのではなく、第1パターン及び第2パターンを形成する導電線が可視光に対して実質的に透明でないという条件で、アノード及びカソードのパターンを互いに対して回転させることによってモアレ効果の軽減を可能にするという見識に基づくものである。当然のことながら、「実質的に透明でない」との表現は、可視光に対して50%未満の透明度を有すると解釈されるべきである。好ましくは、前記線は、シャント線として使用され、これは、図3a及び3bに示される大面積の電極の導電性を維持するために有利である。
【0010】
当然のことながら、アノード及びカソードのパターンは、類似の形状を有してもよく、異なる形状を有してもよい。前者の場合、回転変位は、パターンの類似の部分を形成する類似の線の間で全く同一の角度が測定されるようなアノード及びカソードの線のそれぞれの配列に関する。例えば、アノード及びカソードの導電線が長方形構造に沿って配列される場合、アノードの長方形の一側に対応する線がカソードの長方形の対応する側の線に平行でないときに回転変位が存在するようになる。
【0011】
カソード及びアノードのそれぞれのパターンが異なる場合、例えばアノードでは一組の平行な線が選択され、カソードでは、四角形、長方形、ダイアモンド、ハニカム、または同様の形状が選択される場合、平行な線に沿った第1ベクトルのようなアノードのパターンの主要な幾何学的方向が、カソードのパターンの方向に沿った第2ベクトルのようなカソードパターンの主要な幾何学的方向に対して変位すると、層の間の回転変位が存在するようになる。
【0012】
例えば、架空軸に対して0から90°の角度を有する線の四角形パターンをカソードに使用し、平行な線のパターンをアノードに使用する場合、平行な線のパターンは、同一の架空軸に対して15から75°の間で回転されなければならない。結果として、カソードの線のいずれもアノードの線と平行とはならないため、モアレ効果が軽減される。
【0013】
本発明による電子装置の実施形態では、第1パターン及び第2パターンは幾何学的に類似している。
【0014】
カソード及びアノードの導電線を類似したパターンに配列することが有利であることが見出された。例えば、パターンは、一組の平行な線、またはそれぞれの接触表面上で並進された幾何学的形状に関し得る。この場合の回転変位は、カソード及びアノードの線の半数以上が非平行となるように、全体としてパターンを回転させることによって達成することができる。好ましくは、接触面に沿ったそれぞれの位置で線が互いに平行に伸びないように、回転変位の角度が選択される。
【0015】
カソード及びアノードに使用するための類似のパターンの好ましい実施形態は、ハニカム構造、三角形、長方形、及び直線または曲線であり得る相互に平行な線に関する。
【0016】
第1パターンが第1四角形を有し、第2パターンが第2四角形を有するような、本発明による電子装置の特定の実施形態では、第1四角形と第2四角形との間の変位角は30から60°の間である。
【0017】
四角形は90、180、270及び360°回転した場合には元の形状となることが理解されるように、回転変位角のこれらの境界は、形状によって決定される。アノードの線とカソードの線との間の所望のずれを得るために、これらの構造体の間の回転変位は、30から60°の間に設定される。しかしながら、角度の境界は、15から75°の範囲まで緩和され得る。
【0018】
本発明はさらに、第1接触表面がアノードに関し、第2接触表面がカソードに関し、OLEDが第1接触表面と第2接触表面との間に配置された機能層をさらに備える、前述の記載を参照して定義されるような装置を含む、有機発光ダイオード(OLED)に関する。
【0019】
モアレ効果が単純な方法で適当に軽減されたOLEDを提供することが特に有利である。OLEDの実施形態については、図3を参照して説明する。
【0020】
本発明による実質的に透明な電子装置の製造方法は、
第1パターンの導電性を有する第1接触表面を提供するステップと、
前記第1接触表面に実質的に平行に延在する第2接触表面を提供するステップと、
第2パターンが前記第1パターンに対して15から165°の間の角度だけ回転変位するように、前記第2接触表面上に第2パターンの導電線を提供するステップと、
前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線に、可視光に対して実質的に透明でない材料を選択するステップと、を含む。
【0021】
特定の実施形態では、本発明による方法は、OLEDを製造するために使用され、この場合、本方法は、
第1接触表面上にアノードを配列するステップと、
第2接触表面上にカソードを配列するステップと、
カソードとアノードとの間に機能発光層を配置するステップとをさらに含む。
【0022】
例として、本発明による実質的に透明な電子装置は、以下の一連のステップによって製造され得る。
【0023】
例えば、導電材料の第1グリッドまたは線のパターンが基板上に適用され得る。当然のことながら、このために、多様な周知のパターン形成技術が適用され得る。例えば、導電線は、リソグラフィ、インクジェット印刷、グラビア、またはフレキソ印刷、または同様のものによって堆積され得る。次いで、電極(アノードまたはカソード)が該線上に堆積され得る。想定される電子装置がOLEDに関する場合、製造方法はさらに、機能層を適用するステップ、例えばPEDOTなどの正孔注入層を適用するステップ、及び発光ポリマーまたは発光低分子などの発光層を適用するステップを含み得る。次いで、さらに電極(カソード)が堆積され、続いてアノードに適用されたパターンに対して例えば15°より大きな角度の下で堆積される、導電線のパターンが堆積され得る。当然のことながら、アノード及びカソードのそれぞれのパターンは、好ましくは同一パターンに関する。
【0024】
本発明のこれら及びその他の態様は、図面を参照してより詳細に説明される。ここで、類似の要素には類似の参照符号が付される。当然のことながら、図面は例示目的で示されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するために使用されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1a】モアレ効果の第1実施形態を概略的に示す。
【図1b】モアレ効果の第2実施形態を概略的に示す。
【図2】本発明による可能な変位パターンの実施形態を概略的に示す。
【図3a】本発明によるOLEDの実施形態を概略的に示す。
【図3b】本発明によるOLEDのパターニングの実施形態を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1aは、モアレ効果の第1実施形態を概略的に示す。この実施形態では、線間隔がわずかに異なるピッチを有する2つの重なり合うパターンから生じる光学干渉が描かれている。ここで、これらの線を構成する材料が可視光に対して実質的に透明でないため、導電線は、裸眼で視認できる。モアレ効果に起因して、その全体構造は、外見的により太い線及びより細い線の周期的発生を含むようである。このような光学干渉は、特にディスプレイ上に生じる場合に望ましくない。
【0027】
先に説明したように、ディスプレイなどの透明電子装置において、OLEDまたは類似のものは、第1接触表面及び第2接触表面上に配置されたそれぞれの電極の間にゼロでない間隔を有するため、当然のことながら、第1接触表面及び第2接触表面上のそれぞれのパターンが完全に一致する場合であっても、ある程度のモアレ効果が常に存在するようになる。
【0028】
図1bは、モアレ効果の第2実施形態を概略的に示す。この特定の実施形態では、第1接触表面の線と第2接触表面の線との間に互いにわずかな角度のずれを有する光学干渉パターン4の例が示されている。同様に、実質的に透明な電子装置におけるこのような現象は望ましくない。
【0029】
図2は、本発明による可能な変位パターンの実施形態を概略的に示す。本発明によると、モアレ効果を軽減するために、第1接触表面(上)及び第2接触表面(下)に配置された線のそれぞれのパターンは、回転変位αを有するように配列される。
【0030】
例えば、それぞれのパターンは、六角形20、長方形22、または三角形24などの幾何学的に類似した物体に関連し得る。しかしながら、当然のことながら、それぞれのパターンが、上記の適当な組み合わせ、または相互に平行な1組の線の間の組み合わせ及び幾何学的物体の適当な並進によって得られるパターンなど、非類似の物体に関する場合もある。
【0031】
回転変位αの角度を画定するために、それぞれのパターンにおいて、適当な主要な(dominant)方向が画定され得る。六角構造を表す配列20を参照すると、パターンの間の角度を画定するために、各構造において2つのベクトルv1、v2、v1’、v2’それぞれが画定され得る。当然のことながら、該角度は、パターン毎の類似の構造毎に選択された一つのベクトルによって画定することもできる。さらには、当然のことながら、「類似の構造」との用語は、両パターンにおいて見られ得る(接続)線などの幾何学的物体に関する。しかしながら、パターンが、四角形、線、六角形、または三角形などの回転対称を有する幾何学的物体の並進によって得られる場合、回転角αは、パターンの接触層に沿った対応する領域上の線が少なくとも15°互いにずれるように選択すべきである。従って、そのようなパターンでは、回転変位の許容可能な角度の範囲は、15〜165°未満であり得、四角形では例えば30〜60°であり得る。当業者であれば、そのような物体の許容可能な変位角の境界がどのように決定されるべきであるか理解するであろう。
【0032】
図3aは、本発明によるOLEDの実施形態を概略的に示す。OLED30は、アノード層32、カソード層34、及びアノード32とカソード34との間に配置された機能発光層36を備え得る。機能発光層は、発光ポリマーのサブ層、PEDOTのような正孔注入材料のサブ層などの1つまたは複数のサブ層を備え得る。適当な発光を生じさせるために、適当なソース38からアノード32及びカソード34へと電力が供給される。アノード32及びカソード34は、発光層36の画素に関する制御を可能にするために適当にパターン形成される。
【0033】
図3bは、モアレ効果を軽減するための本発明によるOLED電極のパターン形成の実施形態を概略的に示す。この特定の実施形態では、アノード32及びカソード34は、それぞれ一連の相互に平行な線32a、34aのパターンを含む。モアレ効果を軽減するために、アノードのパターン32aは、カソードのパターン34aから15から165°の間の角度だけ回転変位している。該角度は、パターンのそれぞれの線と連携しているそれぞれのベクトルV1、V1’の間で測定される。
【0034】
当然のことながら、これまで本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は説明されたもの以外にも実施することができる。さらに、別々の図面を参照して説明した別々の特徴を組み合わせることも可能である。さらには、当然のことながら、本発明による装置は、OLED以外の装置、例えばエレクトロクロミックホイルまたはウィンドウ、有機または無機光電池などにも適する。
【0035】
本発明は特に、先に定義されたような電池装置を含むエレクトロクロミック装置(EC)に適する。ここで、第1接触表面はアノードに関し、第2接触表面はカソードに関し、ECはさらに第1接触表面と第2接触表面との間に配置された材料の機能層を備え、前記機能層は、使用時に、その伝達信号を光へと変換するように構成される。加えて、本発明は、先に定義されたような電子装置を含む光起電装置(OPV)に関する。ここで、第1接触表面はアノードに関し、第2接触表面はカソードに関し、OPVはさらに、第1接触表面と第2接触表面との間に配置された機能有機変換生成層を含む。
【0036】
OLED、OPV及びECの動作原理、ならびにそれらの構造はよく知られているため、ここでは詳細に説明しないことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0037】
30 OLED
32 アノード層
34 カソード層
36 機能発光層
38 ソース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パターンの導電線が設けられた第1接触表面と、
第2パターンの導電線が設けられた第2接触表面と、を備えた実質的に透明な電子装置であって、
前記第1接触表面が前記第2接触表面に平行に延在しており、
前記第1パターンが前記第2パターンに対して15から165°の間の角度だけ回転変位しており、
前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線が、
可視光に対して実質的に透明でなく、
シャント線として機能するように構成されている、電子装置。
【請求項2】
前記第1パターン及び前記第2パターンが幾何学的に類似している、請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記第1パターン及び前記第2パターンがハニカム構造を含む、請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記第1パターン及び前記第2パターンがそれぞれ相互に平行な線を含む、請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記相互に平行な線が直線である、請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項6】
前記相互に平行な線が曲線である、請求項5に記載の電子装置。
【請求項7】
前記第1パターンが第1四角形を含み、前記第2パターンが第2四角形を含み、前記第1四角形と前記第2四角形との間の変位角が30から60°の間である、請求項2に記載の電子装置。
【請求項8】
前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線がシャント線として機能するように配列されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記第1接触表面がアノードに関し、前記第2接触表面がカソードに関し、有機発光ダイオードが前記第1接触表面と前記第2接触表面との間に配置された機能発光層をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置を備える有機発光ダイオード。
【請求項10】
前記第1接触表面がアノードに関し、前記第2接触表面がカソードに関し、有機光起電装置が前記第1接触表面と前記第2接触表面との間に配置された機能有機変換発生層をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子装置を備える有機光起電装置。
【請求項11】
前記第1接触表面がアノードに関し、前記第2接触表面がカソードに関し、エレクトロクロミック装置が前記第1接触表面と前記第2接触表面との間に配置された材料の機能層をさらに備え、前記機能層が使用時に伝達信号を光へと変換するように構成されている、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子装置を備えるエレクトロクロミック装置。
【請求項12】
第1パターンの導電線を有する第1接触表面を提供するステップと、
前記第1接触表面に実質的に平行に延在する第2接触表面を提供するステップと、
第2パターンが前記第1パターンに対して15から165°の間の角度だけ回転変位するように、前記第2接触表面上に第2パターンの導電線を提供するステップと、
前記第1パターン及び前記第2パターンの導電線に、可視光に対して実質的に透明でない材料を選択するステップと、
を含む、実質的に透明な電子装置の製造方法。
【請求項13】
前記装置が有機発光ダイオードを含み、
前記第1接触表面上にアノードを配列するステップと、
前記第2接触表面上にカソードを配列するステップと、
前記カソードと前記アノードとの間に機能発光層を配置するステップと、
をさらに含む、請求項12に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2012−524972(P2012−524972A)
【公表日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507171(P2012−507171)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050215
【国際公開番号】WO2010/123356
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(511095850)ネーデルランドセ・オルガニサティ・フォール・トゥーヘパスト−ナトゥールウェテンスハッペライク・オンデルズーク・テーエヌオー (16)
【Fターム(参考)】