電子装置
【課題】実装基板としてのプリント基板を、特性インピーダンスが50Ωに合うように設計していても、高速信号を伝送する伝送線路としてのボンディングワイヤーの部分で高インピーダンス化が生じる。このようなインピーダンスの変動は、信号の反射や波形の歪みを生じさせ、半導体装置としての特性に影響を与える。また、半導体装置としてのインピーダンス整合を達成するためにフリップチップ接続方法を用いる場合、コストの増加を招いてしまう。
【解決手段】所望信号を流すボンディングワイヤーに隣接して、所望信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤーを配置する。さらに、これら複数のボンディングワイヤーにおける断面形状を、楕円や多角形の組み合わせにする。その結果、ボンディングワイヤーおよび実装基板における特性インピーダンスの不整合が緩和される。
【解決手段】所望信号を流すボンディングワイヤーに隣接して、所望信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤーを配置する。さらに、これら複数のボンディングワイヤーにおける断面形状を、楕円や多角形の組み合わせにする。その結果、ボンディングワイヤーおよび実装基板における特性インピーダンスの不整合が緩和される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置と、この電子装置の製造方法とに係り、特に、ボンディングワイヤーを用いる電子装置と、この電子装置の製造方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
従来技術による半導体装置において、半導体チップにおける接続パッドと、半導体チップが搭載された配線基板における電極パッドとを、ボンディングワイヤーによって接続する方法が知られている。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特開2007−150078号公報)には、半導体装置に係る記載が開示されている。この半導体装置は、配線基板と、支持体と、半導体チップと、複数のボンディングワイヤーと、受動部品と、樹脂封止体とを有する。ここで、配線基板は、主面に複数の電極パッドが形成されている。支持体は、配線基板の主面に搭載されている。半導体チップは、主面に複数の電極パッドが形成されており、配線基板の主面上に支持体を介在して搭載されている。複数のボンディングワイヤーは、半導体チップの複数の電極パッドと配線基板の複数の電極パッドとを夫々電気的に接続している。受動部品は、配線基板の主面に実装されている。樹脂封止体は、支持体、半導体チップ、複数のボンディングワイヤー、及び受動部品を封止している。支持体は、半導体チップよりも小さい平面サイズで形成されている。受動部品は、支持体の周囲において半導体チップと平面的に重なるように配置されていることを特徴とする。
【0004】
また、特許文献2(実開平2−27607号公報)には、ウェッジボンディング用ワイヤーに係る記載が開示されている。このウェッジボンディング用ワイヤーは、断面形状が楕円状であることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献3(特開平6−283565号公報)には、高周波用ボンディングワイヤーに係る記載が開示されている。この高周波用ボンディングワイヤーは、表面断面形状が波型であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−150078号公報
【特許文献2】実開平2−27607号公報
【特許文献3】特開平6−283565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、このような半導体装置を含む電子装置で高速な信号を処理する際、ボンディングワイヤーの部分においてインピーダンス特性に問題が発生していた。すなわち、実装基板としてのプリント基板を、特性インピーダンスが50Ωに合うように設計していても、高速信号を伝送する伝送線路としてのボンディングワイヤーの部分で高インピーダンス化が生じていた。このようなインピーダンスの変動は、信号の反射や波形の歪みを生じさせ、電子装置としての信号伝送特性を劣化させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による電子装置は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)と、信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とを具備する。ここで、実装基板(13)は、半導体チップ(11)を実装するものである。信号用ボンディングワイヤー(151)は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して所望信号を流すものである。リファレンス用ボンディングワイヤー(152)は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して所望信号に対応するリターン電流を流すものである。信号用ボンディングワイヤー(151)またはリファレンス用ボンディングワイヤー(152)は、断面が楕円または多角形である。信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とは、お互いに隣接する位置に配置されている。
【0010】
本発明による電子装置設計方法は、(a)半導体チップ(11)と、半導体チップ(11)を実装する実装基板(13)とを接続して、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤー(151)の配置と、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して、所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤー(152)の配置とを設定するステップと、(b)信号用ボンディングワイヤー(151)またはリファレンス用ボンディングワイヤー(152)として用いるボンディングワイヤー(15)の断面形状を、楕円または多角形に設定するステップと、(c)ステップ(a)およびステップ(b)による設定にしたがって、半導体チップ(11)における特性インピーダンスを計算するステップと、(d)ステップ(c)による計算結果が所望の範囲に収まるまで、ステップ(a)およびステップ(b)を繰り返すステップとを具備する。ここで、ステップ(a)は、(a−1)信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とを、お互いに隣接する位置に配置するステップを具備する。
【0011】
本発明では、所望信号を流すボンディングワイヤー151に隣接して、所望信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置する。さらに、これら複数のボンディングワイヤー15における断面形状を、楕円や多角形の組み合わせにする。その結果、ボンディングワイヤー15の特性インピーダンスと実装基板13の特性インピーダンスの不整合を緩和させることができるため、電子装置における信号伝達特性を改善することができる。
【発明の効果】
【0012】
電子装置の信号伝達特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に対する比較例としての電子装置における半導体装置の構成について説明するための図である。図1(a)は、本発明に対する比較例としての半導体装置の断面図である。図1(b)は、本発明に対する比較例としての半導体装置の、図1(a)における線A−A’による断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による電子装置における半導体装置の構成について説明するための図である。図2(a)は、本発明の実施形態による半導体装置の断面図である。図2(b)は、本発明の実施形態による半導体装置の、図2(a)における線A−A’による断面図である。
【図3】図3は、本発明に対する比較例としての電子装置と、本発明の実施形態による電子装置とにおいて、特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(a)は、本発明に対する比較例としての電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(b)は、本発明の実施形態による電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図5A】図5Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図5B】図5Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図7(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図7(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図7(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図8(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図8(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図8(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図9(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では横方向に長い楕円、第2の段では縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図9(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では横方向に長い長方形、第2の段では縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図9(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では縦方向に長い多角形、第2の段では横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による電子装置について説明する前に、その比較例としての電子装置について説明する。
【0015】
図1は、比較例としての電子装置における半導体装置1の構成について説明するための図である。図1(a)は、比較例としての半導体装置1の断面図である。図1(b)は、比較例としての半導体装置1の、図1(a)における線A−A’による断面図である。
【0016】
この半導体装置1は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、モールド樹脂14と、ボンディングワイヤー15と、入出力部としての半田ボール16とを具備する。半導体チップ11は、入出力部として複数の端部を具備する。実装基板13は、2つの配線層131と、誘電体層132とを具備する。
【0017】
実装基板13において、誘電体層132は、2つの配線層131の間に配置されている。2つの配線層131の一方には、マウント部121およびボンディングワイヤー15が接続されている。2つの配線層131の他方には、半田ボール16が接続されている。なお、誘電体層132は、図示されないビアホールや他の配線層などを内部に具備している場合もある。また、2つの配線層131の表面の所望の箇所には、図示されないソルダレジストが塗布されていることが望ましい。
【0018】
マウント部121には、半導体チップ11が接続されている。半導体チップ11の各端部は、ボンディングワイヤー15における一方の端部に接続されている。ボンディングワイヤー15における他方の端部は、配線層131に接続されている。なお、ボンディングワイヤー15は、その他に、半導体チップ11における端部と他の半導体チップにおける端部とを接続したりする場合もある。
【0019】
これらのボンディングワイヤー15の形状は、半導体チップ11や実装基板13の上の空間に描かれる山なりの曲線形状であり、さらに、お互いに接触しないように立体的に配置されている。また、一般的に、ボンディングワイヤー15の断面は円形である。
【0020】
モールド樹脂14は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、ボンディングワイヤー15とを固定する。したがって、その後、ボンディングワイヤー15が移動したり、お互いに接触して短絡したりする恐れはない。
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明による電子装置と、この電子装置の製造方法とを実施するための形態を以下に説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態による電子装置における半導体装置1の構成について説明するための図である。図2(a)は、本実施形態による半導体装置1の断面図である。図2(b)は、本実施形態による半導体装置の、図2(a)における線A−A’による断面図である。なお、図2は、後述するボンディングワイヤー15の断面形状を除いて、図1と同じであるが、再度詳細に説明する。
【0023】
この半導体装置1は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、モールド樹脂14と、ボンディングワイヤー15と、入出力部としての半田ボール16とを具備する。半導体チップ11は、入出力部として複数の端部を具備する。実装基板13は、2つの配線層131と、誘電体層132とを具備する。
【0024】
実装基板13において、誘電体層132は、2つの配線層131の間に配置されている。2つの配線層131の一方には、マウント部121およびボンディングワイヤー15が接続されている。2つの配線層131の他方には、半田ボール16が接続されている。なお、誘電体層132は、図示されないビアホールや他の配線層などを内部に具備している場合もある。また、2つの配線層131の表面の所望の箇所には、図示されないソルダレジストが塗布されていることが望ましい。
【0025】
マウント部121には、半導体チップ11が接続されている。半導体チップ11の各端部は、ボンディングワイヤー15における一方の端部に接続されている。ボンディングワイヤー15における他方の端部は、配線層131に接続されている。なお、ボンディングワイヤー15は、その他に、半導体チップ11における端部と他の半導体チップにおける端部とを接続したりする場合もある。
【0026】
これらのボンディングワイヤー15の形状は、半導体チップ11や実装基板13の上の空間に描かれる山なりの曲線形状であり、さらに、お互いに接触しないように立体的に配置されている。
【0027】
モールド樹脂14は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、ボンディングワイヤー15とを固定する。したがって、その後、ボンディングワイヤーが移動したり、お互いに接触して短絡したりする恐れはない。
【0028】
ここまでは本発明に対する比較例と同じであり、このままでは電子装置のインピーダンス整合が十分に取れない。すなわち、一般的な回路では特性インピーダンスを50Ωに揃えることが望まれているが、上記に説明した電子装置のままでは、特性インピーダンスが110〜120Ωとなってしまう。
【0029】
そこで、本実施形態による電子装置では、信号電流が流れる注目信号用ボンディングワイヤー151に隣接して、この注目信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置する。ここで、リファレンス用ボンディングワイヤー152は、実装基板側の端部において、接地されていることが望ましい。
【0030】
リファレンス用ボンディングワイヤーを配置することで、電子装置の特性インピーダンスは75Ω程度まで低下出来ることが計算によって確認された。
【0031】
さらに、本実施形態による電子装置では、ボンディングワイヤー15の断面形状を単なる円形から他の形状への変更を行う。ボンディングワイヤー15の断面形状は、例えば、楕円であっても良いし、多角形であっても良い。ただし、本発明は、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形であることを妨げるものではなく、単なる円形も候補の一つである。
【0032】
特に、ボンディングワイヤーの断面形状を、縦横比が1:10の楕円に設定したところ、電子装置の特性インピーダンスが50Ω前後まで近づけられることが計算によって確認された。
【0033】
図3は、本発明に対する比較例としての電子装置と、本実施形態による電子装置とにおいて、特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(a)は、本発明に対する比較例としての電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(b)は、本実施形態による電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。
【0034】
ボンディングワイヤーにおける特性インピーダンスZ0は、
Z0=√(L/C)
の式で表される。ここで、LおよびCは、ボンディングワイヤーの断面におけるインダクタンスおよび容量をそれぞれ表す。したがって、所望信号に対応するリターン電流の経路となるリファレンス用ボンディングワイヤーの各種パラメータを変化させることで、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスを変えることが可能である。
【0035】
図3の例において、複数のボンディングワイヤー15は、2段に分けて配置されている。第1のボンディングワイヤー段は、半導体チップ側の配線層131までの距離d1が200μmに設定されている。これは、図1(a)または図2(a)における線A−A’による断面において、各ボンディングワイヤー15の中心からの距離である。同様に、第2のボンディングワイヤー段は、半導体チップ側の配線層131までの距離d2が300μmに設定されている。
【0036】
第1の段において、隣接する2本のボンディングワイヤーにおける一方の中心から他方の中心までの距離は、100μmである。これは、第2の段においても同様である。
【0037】
第1の段におけるボンディングワイヤーと、第2の段におけるボンディングワイヤーは、互い違いに配置されている。ここで、互い違いの配置方法は、一般的に用いられている例に過ぎず、本発明において他の配置方法を妨げるものではない。
【0038】
図3(a)の従来例では、ボンディングワイヤーの断面は直径φが25μmの円形であり、したがってその断面積は491μm2である。図3(b)の本実施形態によるボンディングワイヤーにおいて、断面積は同じ491μm2で、断面形状は縦横比1:10の楕円になっている。
【0039】
図4A、図4B、図5A、図5B、図6Aおよび図6Bは、本実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【0040】
これらの計算は、図3に示す2次元モデルを用いて行っている。この2次元モデルは、図2における線A−A’による断面図に等しい。なお、線A−A’の位置は、3次元モデルによる計算の結果に最も近い結果が得られるように選択されている。
【0041】
図4Aおよび図4Bでその結果をまとめた計算では、図3の条件に以下のさらなる変化を与えている。すなわち、リファレンス用ボンディングワイヤー152の数および注目信号用ボンディングワイヤーに対する位置関係と、第1の段と第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状の組み合わせとである。
【0042】
図4Aおよび図4Bの表における横軸には、6つのレイアウト1〜6が並んでいる。これら6つのレイアウトは、リファレンス用ボンディングワイヤー152の数および注目信号用ボンディングワイヤー151に対する位置関係に対応する。なお、いずれのレイアウトにおいても、注目信号用ボンディングワイヤー151は、第2の段の中央に位置している。
【0043】
レイアウト1では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が無い。1本の注目信号用ボンディングワイヤー151の他は全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0044】
レイアウト2では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0045】
レイアウト3では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0046】
レイアウト4では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151とは異なる段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0047】
レイアウト5では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0048】
レイアウト6では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が4本ある。そのうちの2本は注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。残る2本は注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。言い換えれば、レイアウト6は、レイアウト3およびレイアウト5の組み合わせに等しい。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0049】
図4Aおよび図4Bの表における縦軸には、複数のボンディングワイヤー段における、ボンディングワイヤーの断面形状の5つの組み合わせが並んでいる。
【0050】
第1の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が円形である。
【0051】
第2の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が横に長い楕円である。
【0052】
第3の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が縦に長い楕円である。
【0053】
第4の断面形状の組み合わせでは、第1の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は横に長い楕円であり、第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は縦に長い楕円である。
【0054】
第5の断面形状の組み合わせでは、第1の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は縦に長い楕円であり、第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は横に長い楕円である。なお、第2〜第5の断面形状の組み合わせでは、楕円の縦横比として、1:3と1:10の2種類について計算結果をまとめている。
【0055】
以上に説明したように、図4Aおよび図4Bの表では、合計54種類の条件で計算を行っている。
【0056】
図4Aおよび図4Bの表において、レイアウト1〜レイアウト6を比較すると、ごく一部の例外を除いて、レイアウト1、レイアウト4、レイアウト2、レイアウト5、レイアウト3、レイアウト6の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づいていることが確認される。
【0057】
図4Aおよび図4Bの表において、ボンディングワイヤーの断面形状の、段単位での組み合わせを比較すると、一部の例外を除いて、第1の断面形状の組み合わせ、第4の断面形状の組み合わせ、第2または第3の断面形状の組み合わせ、第5の断面形状の組み合わせ、の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づいていることが確認される。ただし、第2の断面形状の組み合わせと第3の断面形状の組み合わせでははっきりした傾向が見当たらない。
【0058】
図4Aおよび図4Bの表における条件の全ての組み合わせについて、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形、縦横比1:3の楕円、縦横比1:10の楕円、の順に特性インピーダンスが低下し、かつ、目標値である50Ωに近づくことが確認された。
【0059】
上記に説明したとおり、半導体装置1におけるボンディングワイヤー15の設計条件を組み合わせることによって、特性インピーダンスが様々に変化し、特に、目標値である50Ωに十分近づけられることが計算によって確認された。半導体装置1の実際の設計では、リファレンス用ボンディングワイヤー152として使用可能な本数や配置、その他の条件などに具体的な制限があるので、特性インピーダンスの値とのトレードオフが必要となる。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、図4Aおよび図4Bにおける第1のボンディングワイヤー段と第2のボンディングワイヤー段とを入れ替えた場合の計算結果をまとめた表である。
【0061】
図5Aおよび図5Bの表における項目のほとんどにおいて、図4Aおよび図4Bの表の同じ条件による計算結果よりも、特性インピーダンスが低く、かつ、目標値である50Ωに近づいている。
【0062】
その他の傾向については、図4Aおよび図4Bの場合と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0063】
図6Aおよび図6Bは、図4Aおよび図4Bにおける第2のボンディングワイヤー段より100μm上方に、第3のボンディングワイヤー段を追加した場合の計算結果をまとめた表である。
【0064】
図4Aおよび図4Bまたは図5Aおよび図5Bと同様に、図6Aおよび図6Bの表においても、横軸には6つのレイアウト1〜6が並んでいる。いずれのレイアウトにおいても、注目信号用ボンディングワイヤーは1本であり、第2の段の中央に位置している。
【0065】
レイアウト1では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が無い。1本の注目信号用ボンディングワイヤー151の他は全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0066】
レイアウト2では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0067】
レイアウト3では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0068】
レイアウト4では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151とはそれぞれに異なる段で隣接している。なお、第1の段のリファレンス用ボンディングワイヤー152と、第2の段の注目信号用ボンディングワイヤー151と、第3の段のリファレンス用ボンディングワイヤー152とは、一直線上に配置されている。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0069】
レイアウト5では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が4本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。すなわち、第1の段において2本のリファレンス用ボンディングワイヤー152が第2の段における1本の注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接しており、かつ、第3の段において2本のリファレンス用ボンディングワイヤー152が第2の段における1本の注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0070】
レイアウト6では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が6本ある。そのうちの2本は、第2の段における注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。残る4本のリファレンス用ボンディングワイヤー152のうち、2本は第1の段において注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接しており、別の2本は第3の段において注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接している。言い換えれば、レイアウト6は、レイアウト3およびレイアウト5の組み合わせに等しい。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0071】
図6Aおよび図6Bの表において、レイアウト1〜レイアウト6を比較すると、ごく一部の例外を除いて、レイアウト1、レイアウト4、レイアウト2、レイアウト3、レイアウト5、レイアウト6の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づき、一部の組み合わせでは50Ωを下回る場合さえあることが確認された。
【0072】
その他の傾向については、図4Aおよび図4Bの場合と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0073】
図4A、図4B、図5A、図5B、図6Aおよび図6Bにおける組み合わせのほぼ全てについて、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形、縦横比1:3の楕円、縦横比1:10の楕円、の順に特性インピーダンスが低下し、かつ、目標値である50Ωに近づき、一部の組み合わせでは50Ωを下回る場合さえあることが確認された。
【0074】
図7〜図9は、本実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤー15の断面形状の例について説明するための断面図である。図7(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図7(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図7(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。図8(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図8(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図8(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。図9(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では横方向に長い楕円、第2の段では縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図9(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では横方向に長い長方形、第2の段では縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図9(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では縦方向に長い多角形、第2の段では横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【0075】
このように、本実施形態による電子装置には、断面形状が円や楕円以外であるボンディングワイヤー15を用いても何ら問題は無い。また、複数のボンディングワイヤー15の断面形状は、段の単位で異なる形状を組み合わせても良いし、さらには、同じ段の中でも異なる形状を組み合わせても良い。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態による電子装置では、注目信号用ボンディングワイヤー151に隣接して、この注目信号に対応するリターン電流を流すために接地されたリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置すると同時に、それぞれのボンディングワイヤーの断面形状に多様な組み合わせを用いる。
【0077】
その結果として、次のような効果が得られる。すなわち、リターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤー152を確保したことで、反射やノイズが低減し、半導体チップ11に向けて所望の信号を安定して入力することが可能となる。その結果、信号の伝達特性も向上する。表皮効果を考慮し、流れる電流の量が同じになるように、ボンディングワイヤーの断面形状を変化させることにより、ワイヤー量を抑制することが可能となり、低コスト化に有効である。ボンディングワイヤー15と実装基板13とのインピーダンスを整合することが可能となる。従来のフリップチップ接続方法よりも、簡単な構造で安価である。
【0078】
また、本実施形態による電子装置を設計する方法としては、上記の組み合わせを計算することで、特性インピーダンスがより良い電子装置の設計がより速く簡単になる。つまり、所定の特性インピーダンスのボンディングワイヤーをより簡単に設計することが可能となる。
【0079】
上記に説明した組み合わせについて計算を行うことで、電子装置の特性インピーダンスの変化における大雑把な傾向は掴むことが出来ることが確認された。すなわち、一方では、信号用ボンディングワイヤー151に隣接するリファレンス用ボンディングワイヤー152の数や配置を変化させることによって、信号用ボンディングワイヤー151の特性インピーダンスを低下させることが可能である。また、他方では、信号用ボンディングワイヤー151およびリファレンス用ボンディングワイヤー152の断面形状を変化させることによって、信号用ボンディングワイヤー151の特性インピーダンスを低下させることが可能である。特に、これらの組み合わせによっては、信号用ボンディングワイヤー151が目標値である50Ωを下回るまで低下させることが可能である。
【0080】
本実施形態による電子装置設計方法では、これらの条件を組み合わせた上で、ある程度の当たりをつけて計算を行い、その結果に応じて、信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスが所望の範囲に収まるまで計算を繰り返す。こうすることによって、信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスを目標値に近づけるという観点で、電子装置をより効率的に設計することが可能である。
【0081】
以上は特性インピーダンスの場合を説明してきたが、特性インピーダンスの代わりに差動インピーダンスの場合でも本願発明は成立する。なお、差動インピーダンスは、次の式で表すことが出来る。
Zdiff=2×√((L−Lm)/(C+Cm))
C=Cs+Cm
ここで、Zdiffは差動インピーダンス、Lは単位長さあたりの自己インダクタンス、Csは基準GNDに対する容量、Lmは単位長さあたりの相互インダクタンス、Cmはペア線路間の容量、をそれぞれ表す。
【0082】
なお、本発明による電子装置には、半導体チップを実装した半導体装置のみならず、この半導体装置を具備する電子機器や電子回路、例えばテレビ受像機、DVD(Digital Versatile Disc)またはBD(Blu−ray Disc)のプレイヤーおよびレコーダー、パーソナルコンピュータ、プリンター、さらには自動車などに搭載される制御回路、この制御回路を搭載する自動車、などをも含む。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体装置
11 半導体チップ
121 マウント部
13 実装基板
131 配線層
132 誘電体層
14 モールド樹脂
15 ボンディングワイヤー
151 信号用ボンディングワイヤー(注目信号用ボンディングワイヤー)
152 リファレンス用ボンディングワイヤー
153 その他の信号用ボンディングワイヤー
16 入出力部(半田ボール)
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置と、この電子装置の製造方法とに係り、特に、ボンディングワイヤーを用いる電子装置と、この電子装置の製造方法とに係る。
【背景技術】
【0002】
従来技術による半導体装置において、半導体チップにおける接続パッドと、半導体チップが搭載された配線基板における電極パッドとを、ボンディングワイヤーによって接続する方法が知られている。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特開2007−150078号公報)には、半導体装置に係る記載が開示されている。この半導体装置は、配線基板と、支持体と、半導体チップと、複数のボンディングワイヤーと、受動部品と、樹脂封止体とを有する。ここで、配線基板は、主面に複数の電極パッドが形成されている。支持体は、配線基板の主面に搭載されている。半導体チップは、主面に複数の電極パッドが形成されており、配線基板の主面上に支持体を介在して搭載されている。複数のボンディングワイヤーは、半導体チップの複数の電極パッドと配線基板の複数の電極パッドとを夫々電気的に接続している。受動部品は、配線基板の主面に実装されている。樹脂封止体は、支持体、半導体チップ、複数のボンディングワイヤー、及び受動部品を封止している。支持体は、半導体チップよりも小さい平面サイズで形成されている。受動部品は、支持体の周囲において半導体チップと平面的に重なるように配置されていることを特徴とする。
【0004】
また、特許文献2(実開平2−27607号公報)には、ウェッジボンディング用ワイヤーに係る記載が開示されている。このウェッジボンディング用ワイヤーは、断面形状が楕円状であることを特徴としている。
【0005】
また、特許文献3(特開平6−283565号公報)には、高周波用ボンディングワイヤーに係る記載が開示されている。この高周波用ボンディングワイヤーは、表面断面形状が波型であることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−150078号公報
【特許文献2】実開平2−27607号公報
【特許文献3】特開平6−283565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術において、このような半導体装置を含む電子装置で高速な信号を処理する際、ボンディングワイヤーの部分においてインピーダンス特性に問題が発生していた。すなわち、実装基板としてのプリント基板を、特性インピーダンスが50Ωに合うように設計していても、高速信号を伝送する伝送線路としてのボンディングワイヤーの部分で高インピーダンス化が生じていた。このようなインピーダンスの変動は、信号の反射や波形の歪みを生じさせ、電子装置としての信号伝送特性を劣化させる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、(発明を実施するための形態)で使用される番号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号は、(特許請求の範囲)の記載と(発明を実施するための形態)との対応関係を明らかにするために付加されたものである。ただし、それらの番号を、(特許請求の範囲)に記載されている発明の技術的範囲の解釈に用いてはならない。
【0009】
本発明による電子装置は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)と、信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とを具備する。ここで、実装基板(13)は、半導体チップ(11)を実装するものである。信号用ボンディングワイヤー(151)は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して所望信号を流すものである。リファレンス用ボンディングワイヤー(152)は、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して所望信号に対応するリターン電流を流すものである。信号用ボンディングワイヤー(151)またはリファレンス用ボンディングワイヤー(152)は、断面が楕円または多角形である。信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とは、お互いに隣接する位置に配置されている。
【0010】
本発明による電子装置設計方法は、(a)半導体チップ(11)と、半導体チップ(11)を実装する実装基板(13)とを接続して、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤー(151)の配置と、半導体チップ(11)と、実装基板(13)とを接続して、所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤー(152)の配置とを設定するステップと、(b)信号用ボンディングワイヤー(151)またはリファレンス用ボンディングワイヤー(152)として用いるボンディングワイヤー(15)の断面形状を、楕円または多角形に設定するステップと、(c)ステップ(a)およびステップ(b)による設定にしたがって、半導体チップ(11)における特性インピーダンスを計算するステップと、(d)ステップ(c)による計算結果が所望の範囲に収まるまで、ステップ(a)およびステップ(b)を繰り返すステップとを具備する。ここで、ステップ(a)は、(a−1)信号用ボンディングワイヤー(151)と、リファレンス用ボンディングワイヤー(152)とを、お互いに隣接する位置に配置するステップを具備する。
【0011】
本発明では、所望信号を流すボンディングワイヤー151に隣接して、所望信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置する。さらに、これら複数のボンディングワイヤー15における断面形状を、楕円や多角形の組み合わせにする。その結果、ボンディングワイヤー15の特性インピーダンスと実装基板13の特性インピーダンスの不整合を緩和させることができるため、電子装置における信号伝達特性を改善することができる。
【発明の効果】
【0012】
電子装置の信号伝達特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明に対する比較例としての電子装置における半導体装置の構成について説明するための図である。図1(a)は、本発明に対する比較例としての半導体装置の断面図である。図1(b)は、本発明に対する比較例としての半導体装置の、図1(a)における線A−A’による断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態による電子装置における半導体装置の構成について説明するための図である。図2(a)は、本発明の実施形態による半導体装置の断面図である。図2(b)は、本発明の実施形態による半導体装置の、図2(a)における線A−A’による断面図である。
【図3】図3は、本発明に対する比較例としての電子装置と、本発明の実施形態による電子装置とにおいて、特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(a)は、本発明に対する比較例としての電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(b)は、本発明の実施形態による電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。
【図4A】図4Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図4B】図4Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図5A】図5Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図5B】図5Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【図7】図7は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図7(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図7(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図7(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図8(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図8(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図8(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が縦方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤーの断面形状の例について説明するための断面図である。図9(a)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では横方向に長い楕円、第2の段では縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図9(b)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では横方向に長い長方形、第2の段では縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図9(c)は、ボンディングワイヤーの断面形状が、第1の段では縦方向に長い多角形、第2の段では横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による電子装置について説明する前に、その比較例としての電子装置について説明する。
【0015】
図1は、比較例としての電子装置における半導体装置1の構成について説明するための図である。図1(a)は、比較例としての半導体装置1の断面図である。図1(b)は、比較例としての半導体装置1の、図1(a)における線A−A’による断面図である。
【0016】
この半導体装置1は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、モールド樹脂14と、ボンディングワイヤー15と、入出力部としての半田ボール16とを具備する。半導体チップ11は、入出力部として複数の端部を具備する。実装基板13は、2つの配線層131と、誘電体層132とを具備する。
【0017】
実装基板13において、誘電体層132は、2つの配線層131の間に配置されている。2つの配線層131の一方には、マウント部121およびボンディングワイヤー15が接続されている。2つの配線層131の他方には、半田ボール16が接続されている。なお、誘電体層132は、図示されないビアホールや他の配線層などを内部に具備している場合もある。また、2つの配線層131の表面の所望の箇所には、図示されないソルダレジストが塗布されていることが望ましい。
【0018】
マウント部121には、半導体チップ11が接続されている。半導体チップ11の各端部は、ボンディングワイヤー15における一方の端部に接続されている。ボンディングワイヤー15における他方の端部は、配線層131に接続されている。なお、ボンディングワイヤー15は、その他に、半導体チップ11における端部と他の半導体チップにおける端部とを接続したりする場合もある。
【0019】
これらのボンディングワイヤー15の形状は、半導体チップ11や実装基板13の上の空間に描かれる山なりの曲線形状であり、さらに、お互いに接触しないように立体的に配置されている。また、一般的に、ボンディングワイヤー15の断面は円形である。
【0020】
モールド樹脂14は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、ボンディングワイヤー15とを固定する。したがって、その後、ボンディングワイヤー15が移動したり、お互いに接触して短絡したりする恐れはない。
【0021】
次に、添付図面を参照して、本発明による電子装置と、この電子装置の製造方法とを実施するための形態を以下に説明する。
【0022】
図2は、本発明の実施形態による電子装置における半導体装置1の構成について説明するための図である。図2(a)は、本実施形態による半導体装置1の断面図である。図2(b)は、本実施形態による半導体装置の、図2(a)における線A−A’による断面図である。なお、図2は、後述するボンディングワイヤー15の断面形状を除いて、図1と同じであるが、再度詳細に説明する。
【0023】
この半導体装置1は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、モールド樹脂14と、ボンディングワイヤー15と、入出力部としての半田ボール16とを具備する。半導体チップ11は、入出力部として複数の端部を具備する。実装基板13は、2つの配線層131と、誘電体層132とを具備する。
【0024】
実装基板13において、誘電体層132は、2つの配線層131の間に配置されている。2つの配線層131の一方には、マウント部121およびボンディングワイヤー15が接続されている。2つの配線層131の他方には、半田ボール16が接続されている。なお、誘電体層132は、図示されないビアホールや他の配線層などを内部に具備している場合もある。また、2つの配線層131の表面の所望の箇所には、図示されないソルダレジストが塗布されていることが望ましい。
【0025】
マウント部121には、半導体チップ11が接続されている。半導体チップ11の各端部は、ボンディングワイヤー15における一方の端部に接続されている。ボンディングワイヤー15における他方の端部は、配線層131に接続されている。なお、ボンディングワイヤー15は、その他に、半導体チップ11における端部と他の半導体チップにおける端部とを接続したりする場合もある。
【0026】
これらのボンディングワイヤー15の形状は、半導体チップ11や実装基板13の上の空間に描かれる山なりの曲線形状であり、さらに、お互いに接触しないように立体的に配置されている。
【0027】
モールド樹脂14は、半導体チップ11と、マウント部121と、実装基板13と、ボンディングワイヤー15とを固定する。したがって、その後、ボンディングワイヤーが移動したり、お互いに接触して短絡したりする恐れはない。
【0028】
ここまでは本発明に対する比較例と同じであり、このままでは電子装置のインピーダンス整合が十分に取れない。すなわち、一般的な回路では特性インピーダンスを50Ωに揃えることが望まれているが、上記に説明した電子装置のままでは、特性インピーダンスが110〜120Ωとなってしまう。
【0029】
そこで、本実施形態による電子装置では、信号電流が流れる注目信号用ボンディングワイヤー151に隣接して、この注目信号に対応するリターン電流を流すためのリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置する。ここで、リファレンス用ボンディングワイヤー152は、実装基板側の端部において、接地されていることが望ましい。
【0030】
リファレンス用ボンディングワイヤーを配置することで、電子装置の特性インピーダンスは75Ω程度まで低下出来ることが計算によって確認された。
【0031】
さらに、本実施形態による電子装置では、ボンディングワイヤー15の断面形状を単なる円形から他の形状への変更を行う。ボンディングワイヤー15の断面形状は、例えば、楕円であっても良いし、多角形であっても良い。ただし、本発明は、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形であることを妨げるものではなく、単なる円形も候補の一つである。
【0032】
特に、ボンディングワイヤーの断面形状を、縦横比が1:10の楕円に設定したところ、電子装置の特性インピーダンスが50Ω前後まで近づけられることが計算によって確認された。
【0033】
図3は、本発明に対する比較例としての電子装置と、本実施形態による電子装置とにおいて、特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(a)は、本発明に対する比較例としての電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。図3(b)は、本実施形態による電子装置における特性インピーダンスを計算した際の条件について説明するための断面図である。
【0034】
ボンディングワイヤーにおける特性インピーダンスZ0は、
Z0=√(L/C)
の式で表される。ここで、LおよびCは、ボンディングワイヤーの断面におけるインダクタンスおよび容量をそれぞれ表す。したがって、所望信号に対応するリターン電流の経路となるリファレンス用ボンディングワイヤーの各種パラメータを変化させることで、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスを変えることが可能である。
【0035】
図3の例において、複数のボンディングワイヤー15は、2段に分けて配置されている。第1のボンディングワイヤー段は、半導体チップ側の配線層131までの距離d1が200μmに設定されている。これは、図1(a)または図2(a)における線A−A’による断面において、各ボンディングワイヤー15の中心からの距離である。同様に、第2のボンディングワイヤー段は、半導体チップ側の配線層131までの距離d2が300μmに設定されている。
【0036】
第1の段において、隣接する2本のボンディングワイヤーにおける一方の中心から他方の中心までの距離は、100μmである。これは、第2の段においても同様である。
【0037】
第1の段におけるボンディングワイヤーと、第2の段におけるボンディングワイヤーは、互い違いに配置されている。ここで、互い違いの配置方法は、一般的に用いられている例に過ぎず、本発明において他の配置方法を妨げるものではない。
【0038】
図3(a)の従来例では、ボンディングワイヤーの断面は直径φが25μmの円形であり、したがってその断面積は491μm2である。図3(b)の本実施形態によるボンディングワイヤーにおいて、断面積は同じ491μm2で、断面形状は縦横比1:10の楕円になっている。
【0039】
図4A、図4B、図5A、図5B、図6Aおよび図6Bは、本実施形態による電子装置において、図3の条件にさらなる変化を与えた場合の計算結果をまとめた表である。
【0040】
これらの計算は、図3に示す2次元モデルを用いて行っている。この2次元モデルは、図2における線A−A’による断面図に等しい。なお、線A−A’の位置は、3次元モデルによる計算の結果に最も近い結果が得られるように選択されている。
【0041】
図4Aおよび図4Bでその結果をまとめた計算では、図3の条件に以下のさらなる変化を与えている。すなわち、リファレンス用ボンディングワイヤー152の数および注目信号用ボンディングワイヤーに対する位置関係と、第1の段と第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状の組み合わせとである。
【0042】
図4Aおよび図4Bの表における横軸には、6つのレイアウト1〜6が並んでいる。これら6つのレイアウトは、リファレンス用ボンディングワイヤー152の数および注目信号用ボンディングワイヤー151に対する位置関係に対応する。なお、いずれのレイアウトにおいても、注目信号用ボンディングワイヤー151は、第2の段の中央に位置している。
【0043】
レイアウト1では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が無い。1本の注目信号用ボンディングワイヤー151の他は全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0044】
レイアウト2では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0045】
レイアウト3では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0046】
レイアウト4では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151とは異なる段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0047】
レイアウト5では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0048】
レイアウト6では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が4本ある。そのうちの2本は注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。残る2本は注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。言い換えれば、レイアウト6は、レイアウト3およびレイアウト5の組み合わせに等しい。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0049】
図4Aおよび図4Bの表における縦軸には、複数のボンディングワイヤー段における、ボンディングワイヤーの断面形状の5つの組み合わせが並んでいる。
【0050】
第1の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が円形である。
【0051】
第2の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が横に長い楕円である。
【0052】
第3の断面形状の組み合わせでは、全てのボンディングワイヤー15の断面形状が縦に長い楕円である。
【0053】
第4の断面形状の組み合わせでは、第1の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は横に長い楕円であり、第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は縦に長い楕円である。
【0054】
第5の断面形状の組み合わせでは、第1の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は縦に長い楕円であり、第2の段におけるボンディングワイヤー15の断面形状は横に長い楕円である。なお、第2〜第5の断面形状の組み合わせでは、楕円の縦横比として、1:3と1:10の2種類について計算結果をまとめている。
【0055】
以上に説明したように、図4Aおよび図4Bの表では、合計54種類の条件で計算を行っている。
【0056】
図4Aおよび図4Bの表において、レイアウト1〜レイアウト6を比較すると、ごく一部の例外を除いて、レイアウト1、レイアウト4、レイアウト2、レイアウト5、レイアウト3、レイアウト6の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づいていることが確認される。
【0057】
図4Aおよび図4Bの表において、ボンディングワイヤーの断面形状の、段単位での組み合わせを比較すると、一部の例外を除いて、第1の断面形状の組み合わせ、第4の断面形状の組み合わせ、第2または第3の断面形状の組み合わせ、第5の断面形状の組み合わせ、の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づいていることが確認される。ただし、第2の断面形状の組み合わせと第3の断面形状の組み合わせでははっきりした傾向が見当たらない。
【0058】
図4Aおよび図4Bの表における条件の全ての組み合わせについて、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形、縦横比1:3の楕円、縦横比1:10の楕円、の順に特性インピーダンスが低下し、かつ、目標値である50Ωに近づくことが確認された。
【0059】
上記に説明したとおり、半導体装置1におけるボンディングワイヤー15の設計条件を組み合わせることによって、特性インピーダンスが様々に変化し、特に、目標値である50Ωに十分近づけられることが計算によって確認された。半導体装置1の実際の設計では、リファレンス用ボンディングワイヤー152として使用可能な本数や配置、その他の条件などに具体的な制限があるので、特性インピーダンスの値とのトレードオフが必要となる。
【0060】
図5Aおよび図5Bは、図4Aおよび図4Bにおける第1のボンディングワイヤー段と第2のボンディングワイヤー段とを入れ替えた場合の計算結果をまとめた表である。
【0061】
図5Aおよび図5Bの表における項目のほとんどにおいて、図4Aおよび図4Bの表の同じ条件による計算結果よりも、特性インピーダンスが低く、かつ、目標値である50Ωに近づいている。
【0062】
その他の傾向については、図4Aおよび図4Bの場合と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0063】
図6Aおよび図6Bは、図4Aおよび図4Bにおける第2のボンディングワイヤー段より100μm上方に、第3のボンディングワイヤー段を追加した場合の計算結果をまとめた表である。
【0064】
図4Aおよび図4Bまたは図5Aおよび図5Bと同様に、図6Aおよび図6Bの表においても、横軸には6つのレイアウト1〜6が並んでいる。いずれのレイアウトにおいても、注目信号用ボンディングワイヤーは1本であり、第2の段の中央に位置している。
【0065】
レイアウト1では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が無い。1本の注目信号用ボンディングワイヤー151の他は全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0066】
レイアウト2では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が1本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0067】
レイアウト3では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0068】
レイアウト4では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が2本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151とはそれぞれに異なる段で隣接している。なお、第1の段のリファレンス用ボンディングワイヤー152と、第2の段の注目信号用ボンディングワイヤー151と、第3の段のリファレンス用ボンディングワイヤー152とは、一直線上に配置されている。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0069】
レイアウト5では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が4本あり、注目信号用ボンディングワイヤー151に異なる段で左右に隣接している。すなわち、第1の段において2本のリファレンス用ボンディングワイヤー152が第2の段における1本の注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接しており、かつ、第3の段において2本のリファレンス用ボンディングワイヤー152が第2の段における1本の注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接している。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0070】
レイアウト6では、リファレンス用ボンディングワイヤー152が6本ある。そのうちの2本は、第2の段における注目信号用ボンディングワイヤー151に同じ段で左右に隣接している。残る4本のリファレンス用ボンディングワイヤー152のうち、2本は第1の段において注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接しており、別の2本は第3の段において注目信号用ボンディングワイヤー151にそれぞれ隣接している。言い換えれば、レイアウト6は、レイアウト3およびレイアウト5の組み合わせに等しい。その他のボンディングワイヤーは全てその他の信号用ボンディングワイヤー153である。
【0071】
図6Aおよび図6Bの表において、レイアウト1〜レイアウト6を比較すると、ごく一部の例外を除いて、レイアウト1、レイアウト4、レイアウト2、レイアウト3、レイアウト5、レイアウト6の順に特性インピーダンスが減少し、かつ、目標値である50Ωに近づき、一部の組み合わせでは50Ωを下回る場合さえあることが確認された。
【0072】
その他の傾向については、図4Aおよび図4Bの場合と同じであるので詳細な説明を省略する。
【0073】
図4A、図4B、図5A、図5B、図6Aおよび図6Bにおける組み合わせのほぼ全てについて、ボンディングワイヤー15の断面形状が円形、縦横比1:3の楕円、縦横比1:10の楕円、の順に特性インピーダンスが低下し、かつ、目標値である50Ωに近づき、一部の組み合わせでは50Ωを下回る場合さえあることが確認された。
【0074】
図7〜図9は、本実施形態による電子装置に用いることが可能なボンディングワイヤー15の断面形状の例について説明するための断面図である。図7(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図7(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図7(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。図8(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図8(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図8(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が縦方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。図9(a)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では横方向に長い楕円、第2の段では縦方向に長い楕円である場合について説明するための断面図である。図9(b)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では横方向に長い長方形、第2の段では縦方向に長い長方形である場合について説明するための断面図である。図9(c)は、ボンディングワイヤー15の断面形状が、第1の段では縦方向に長い多角形、第2の段では横方向に長い多角形である場合について説明するための断面図である。
【0075】
このように、本実施形態による電子装置には、断面形状が円や楕円以外であるボンディングワイヤー15を用いても何ら問題は無い。また、複数のボンディングワイヤー15の断面形状は、段の単位で異なる形状を組み合わせても良いし、さらには、同じ段の中でも異なる形状を組み合わせても良い。
【0076】
以上に説明したように、本実施形態による電子装置では、注目信号用ボンディングワイヤー151に隣接して、この注目信号に対応するリターン電流を流すために接地されたリファレンス用ボンディングワイヤー152を配置すると同時に、それぞれのボンディングワイヤーの断面形状に多様な組み合わせを用いる。
【0077】
その結果として、次のような効果が得られる。すなわち、リターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤー152を確保したことで、反射やノイズが低減し、半導体チップ11に向けて所望の信号を安定して入力することが可能となる。その結果、信号の伝達特性も向上する。表皮効果を考慮し、流れる電流の量が同じになるように、ボンディングワイヤーの断面形状を変化させることにより、ワイヤー量を抑制することが可能となり、低コスト化に有効である。ボンディングワイヤー15と実装基板13とのインピーダンスを整合することが可能となる。従来のフリップチップ接続方法よりも、簡単な構造で安価である。
【0078】
また、本実施形態による電子装置を設計する方法としては、上記の組み合わせを計算することで、特性インピーダンスがより良い電子装置の設計がより速く簡単になる。つまり、所定の特性インピーダンスのボンディングワイヤーをより簡単に設計することが可能となる。
【0079】
上記に説明した組み合わせについて計算を行うことで、電子装置の特性インピーダンスの変化における大雑把な傾向は掴むことが出来ることが確認された。すなわち、一方では、信号用ボンディングワイヤー151に隣接するリファレンス用ボンディングワイヤー152の数や配置を変化させることによって、信号用ボンディングワイヤー151の特性インピーダンスを低下させることが可能である。また、他方では、信号用ボンディングワイヤー151およびリファレンス用ボンディングワイヤー152の断面形状を変化させることによって、信号用ボンディングワイヤー151の特性インピーダンスを低下させることが可能である。特に、これらの組み合わせによっては、信号用ボンディングワイヤー151が目標値である50Ωを下回るまで低下させることが可能である。
【0080】
本実施形態による電子装置設計方法では、これらの条件を組み合わせた上で、ある程度の当たりをつけて計算を行い、その結果に応じて、信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスが所望の範囲に収まるまで計算を繰り返す。こうすることによって、信号用ボンディングワイヤーの特性インピーダンスを目標値に近づけるという観点で、電子装置をより効率的に設計することが可能である。
【0081】
以上は特性インピーダンスの場合を説明してきたが、特性インピーダンスの代わりに差動インピーダンスの場合でも本願発明は成立する。なお、差動インピーダンスは、次の式で表すことが出来る。
Zdiff=2×√((L−Lm)/(C+Cm))
C=Cs+Cm
ここで、Zdiffは差動インピーダンス、Lは単位長さあたりの自己インダクタンス、Csは基準GNDに対する容量、Lmは単位長さあたりの相互インダクタンス、Cmはペア線路間の容量、をそれぞれ表す。
【0082】
なお、本発明による電子装置には、半導体チップを実装した半導体装置のみならず、この半導体装置を具備する電子機器や電子回路、例えばテレビ受像機、DVD(Digital Versatile Disc)またはBD(Blu−ray Disc)のプレイヤーおよびレコーダー、パーソナルコンピュータ、プリンター、さらには自動車などに搭載される制御回路、この制御回路を搭載する自動車、などをも含む。
【符号の説明】
【0083】
1 半導体装置
11 半導体チップ
121 マウント部
13 実装基板
131 配線層
132 誘電体層
14 モールド樹脂
15 ボンディングワイヤー
151 信号用ボンディングワイヤー(注目信号用ボンディングワイヤー)
152 リファレンス用ボンディングワイヤー
153 その他の信号用ボンディングワイヤー
16 入出力部(半田ボール)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを実装する実装基板と、
前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーと、
前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して前記所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤーと
を具備し、
前記信号用ボンディングワイヤーまたは前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、断面が楕円または多角形であり、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとは、お互いに隣接する位置に配置されている
電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーを含む複数のリファレンス用ボンディングワイヤー
を具備し、
前記複数のリファレンス用ボンディングワイヤーのそれぞれは、前記信号用ボンディングワイヤーに隣接した位置に配置されている
電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーおよび前記リファレンス用ボンディングワイヤーを含む複数のボンディングワイヤー
を具備し、
前記複数のボンディングワイヤーは、多段式に配置された複数の列として並べて配置されている
電子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、前記信号用ボンディングワイヤーと同じ段の列に配置されている
電子装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、前記信号用ボンディングワイヤーとは異なる段の列に配置されている
電子装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の電子装置において、
前記複数のボンディングワイヤーは、
断面形状が前記複数の列の方向に長い楕円または多角形であるボンディングワイヤー
を具備する
電子装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の電子装置において、
前記複数のボンディングワイヤーは、
断面形状が前記複数の列が多段式に配置された方向に長い楕円または多角形であるボンディングワイヤー
を具備する
電子装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとの間の特性インピーダンスが、任意の値に設定された
電子装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとの間の差動インピーダンスが、任意の値に設定された
電子装置。
【請求項10】
(a)半導体チップと、前記半導体チップを実装する実装基板とを接続して、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーの配置と、前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して、前記所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤーの配置とを設定するステップと、
(b)前記信号用ボンディングワイヤーまたは前記リファレンス用ボンディングワイヤーとして用いるボンディングワイヤーの断面形状を、楕円または多角形に設定するステップと、
(c)前記ステップ(a)および前記ステップ(b)による設定にしたがって、前記半導体チップにおけるインピーダンス特性を計算するステップと、
(d)前記ステップ(c)による計算結果が所望の範囲に収まるまで、前記ステップ(a)および前記ステップ(b)を繰り返すステップと
を具備し、
前記ステップ(a)は、
(a−1)前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとを、お互いに隣接する位置に配置するステップ
を具備する
電子装置設計方法。
【請求項1】
半導体チップと、
前記半導体チップを実装する実装基板と、
前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーと、
前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して前記所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤーと
を具備し、
前記信号用ボンディングワイヤーまたは前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、断面が楕円または多角形であり、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとは、お互いに隣接する位置に配置されている
電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーを含む複数のリファレンス用ボンディングワイヤー
を具備し、
前記複数のリファレンス用ボンディングワイヤーのそれぞれは、前記信号用ボンディングワイヤーに隣接した位置に配置されている
電子装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーおよび前記リファレンス用ボンディングワイヤーを含む複数のボンディングワイヤー
を具備し、
前記複数のボンディングワイヤーは、多段式に配置された複数の列として並べて配置されている
電子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、前記信号用ボンディングワイヤーと同じ段の列に配置されている
電子装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電子装置において、
前記リファレンス用ボンディングワイヤーは、前記信号用ボンディングワイヤーとは異なる段の列に配置されている
電子装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれかに記載の電子装置において、
前記複数のボンディングワイヤーは、
断面形状が前記複数の列の方向に長い楕円または多角形であるボンディングワイヤー
を具備する
電子装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれかに記載の電子装置において、
前記複数のボンディングワイヤーは、
断面形状が前記複数の列が多段式に配置された方向に長い楕円または多角形であるボンディングワイヤー
を具備する
電子装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとの間の特性インピーダンスが、任意の値に設定された
電子装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の電子装置において、
前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとの間の差動インピーダンスが、任意の値に設定された
電子装置。
【請求項10】
(a)半導体チップと、前記半導体チップを実装する実装基板とを接続して、所望信号を流す信号用ボンディングワイヤーの配置と、前記半導体チップと、前記実装基板とを接続して、前記所望信号に対応するリターン電流を流すリファレンス用ボンディングワイヤーの配置とを設定するステップと、
(b)前記信号用ボンディングワイヤーまたは前記リファレンス用ボンディングワイヤーとして用いるボンディングワイヤーの断面形状を、楕円または多角形に設定するステップと、
(c)前記ステップ(a)および前記ステップ(b)による設定にしたがって、前記半導体チップにおけるインピーダンス特性を計算するステップと、
(d)前記ステップ(c)による計算結果が所望の範囲に収まるまで、前記ステップ(a)および前記ステップ(b)を繰り返すステップと
を具備し、
前記ステップ(a)は、
(a−1)前記信号用ボンディングワイヤーと、前記リファレンス用ボンディングワイヤーとを、お互いに隣接する位置に配置するステップ
を具備する
電子装置設計方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−135025(P2011−135025A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295730(P2009−295730)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]