説明

電子装置

【課題】電気的な接続不良の発生が抑制された電子装置を提供する。
【解決手段】電子部品(10)、及び、該電子部品(10)が実装される実装基板(30)を備える電子装置であって、実装基板(30)に、電子部品(10)の実装面(30a)からその裏面(30b)までを貫通する貫通溝(31)が少なくとも1つ形成され、貫通溝(31)によって、電子部品(10)の実装領域の少なくとも一部が囲まれており、貫通溝(31)は、実装基板(30)よりもヤング率が低い弾性部材(32)によって埋められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、及び、該電子部品が実装される実装基板を備える電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、電気部品がその表面に実装もしくは挿入実装される部品実装基板が提案されている。この部品実装基板には、表面とその裏面を貫く少なくとも一つのスリットが設けられている。したがって、熱膨張のために、部品実装基板にねじれが生じたとしても、スリットを挟んで対向する二つの領域が相対的に変動することとなり、電子部品が実装された実装領域に、スリットを挟んで実装領域と対向する領域のねじれが印加されることが抑制される。この結果、ねじれに起因する応力が、部品実装基板と電気部品との接続部位に印加されることが抑制され、部品実装基板と電気部品とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−148687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の部品実装基板では、スリットによって表面とその裏面とが貫通されている。そのため、裏面側から水などの導電性を有する異物がスリットを介して表面側に流入する虞がある。異物が表面側に流入すると、その異物を介して、電子部品と部品実装基板との複数の接続部位が電気的に接続され、電気的な接続不良が生じる虞がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、電気的な接続不良の発生が抑制された電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、電子部品(10)、及び、該電子部品(10)が実装される実装基板(30)を備える電子装置であって、実装基板(30)に、電子部品(10)の実装面(30a)からその裏面(30b)までを貫通する貫通溝(31)が少なくとも1つ形成され、貫通溝(31)によって、電子部品(10)の実装領域の少なくとも一部が囲まれており、貫通溝(31)は、実装基板(30)よりもヤング率が低い弾性部材(32)によって埋められていることを特徴とする。
【0007】
このように本発明によれば、貫通溝(31)が弾性部材(32)によって埋められている。これにより、導電性を有する異物が、貫通溝(31)を介して、裏面(30b)から実装面(30a)に流動することが抑制される。この結果、電子部品(10)と実装基板(30)とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0008】
また、貫通溝(31)によって、実装領域の少なくとも一部が囲まれている。したがって、貫通溝(31)を挟んで実装領域と対向する領域(以下、対向領域と示す)に熱によるねじれが生じたとしても、そのねじれが実装領域に印加されることが抑制される。この結果、電子部品(10)と実装基板(30)との接続部位に応力が印加されることが抑制され、電子部品(10)と実装基板(30)とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。なお、もちろんではあるが、貫通溝(31)は弾性部材(32)によって埋められているので、対向領域のねじれは、弾性部材(32)を介して実装領域に印加される。しかしながら、弾性部材(32)は実装基板(30)よりもヤング率が低いので、貫通溝(31)が実装基板(30)と同一材料によって埋められた構成、すなわち、貫通溝(31)が実装基板(30)に形成されていない構成と比べて、対向領域のねじれが実装領域に印加されることが抑制される。
【0009】
請求項2に記載のように、弾性部材(32)は、実装基板(30)よりも線膨張係数が低い構成が好適である。これによれば、弾性部材(32)と実装基板(30)の線膨張係数が等しい構成と比べて、実装領域に印加される、熱膨張に起因する応力(以下、熱応力と示す)が弱くなる。このため、熱応力によって、実装領域に歪みが生じることが抑制され、電子部品(10)と実装基板(30)との接続部位に応力が印加されることが抑制される。この結果、電子部品(10)と実装基板(30)とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0010】
請求項3に記載のように、実装面(30a)に沿う第1方向において、実装領域を介して2つの貫通溝(31)が並んだ構成が良い。これによれば、第1方向において、実装領域と対向する対向領域のねじれが、実装領域に印加されることが抑制される。
【0011】
請求項4に記載のように、実装面(30a)に沿い、第1方向に直交する第2方向において、実装領域を介して2つの貫通溝(31)が並んだ構成が良い。これによれば、第2方向において、実装領域と対向する対向領域のねじれが、実装領域に印加されることが抑制される。
【0012】
請求項5に記載のように、貫通溝(31)の形状としては、平面環状、平面矩形状、平面C字状、平面L字状、若しくは、平面コの字状を採用することができる。
【0013】
請求項6に記載のように、電子部品(10)は、半田を介して、実装基板(30)に実装された構成を採用することができる。
【0014】
請求項7に記載のように、電子部品(10)は、センサ部(11)、及び、該センサ部(11)を収納するパッケージ(12)を有する構成を採用することができる。
【0015】
請求項8に記載のように、センサ部(11)は、センサチップ(13)、及び、該センサチップ(13)の信号を処理する回路チップ(14)を有する構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る電子装置の概略構成を示す上面図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す電子部品の概略構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図4】電子装置の変形例を示す上面図である。
【図5】電子装置の変形例を示す上面図である。
【図6】電子装置の変形例を示す上面図である。
【図7】電子装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電子装置の概略構成を示す上面図である。図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図3は、図1に示す電子部品の概略構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図である。なお、図2では、本来であれば蓋部12bによって隠れるために図示されない外部端子16を破線で示し、図3の(a)では、蓋部12bを省略している。以下においては、実装基板30の実装面30aに沿う一方向を第1方向、実装面30aに沿い、第1方向に直交する方向を第2方向と示す。
【0018】
図1及び図2に示すように、電子装置100は、電子部品10、及び、実装基板30を備える。電子部品10が、実装基板30の実装面30aに表面実装されており、半田(図示略)を介して、電子部品10と実装基板30とが機械的及び電気的に接続されている。
【0019】
電子部品10は、図3に示すように、センサ部11、及び、該センサ部11を収納するパッケージ12を有する。センサ部11は、センサチップ13、及び、該センサチップ13の信号を処理する回路チップ14を有する。センサチップ13は、バンプ(図示略)を介して、回路チップ14と機械的及び電気的に接続され、回路チップ14は、接着剤(図示略)を介してパッケージ12に機械的に接続されている。そして、回路チップ14は、配線15を介してパッケージ12と電気的に接続されている。本実施形態に係るセンサチップ13は第1半導体層、絶縁層、第2半導体層が順次積層されて成るSOI基板であり、周知の露光技術を用いて、容量変化によって物理量を検出する微細構造(センシング部)を第1半導体層及び絶縁層に形成している。
【0020】
パッケージ12は、有底筒状の箱部12aと、箱部12aの開口端を閉塞する蓋部12bと、を有する。箱部12aは、セラミックパッケージであり、箱部12aの内面に内部端子(図示略)が形成され、外面に外部端子16が形成され、内部に内部端子と外部端子16とを接続する内部配線(図示略)が形成されている。配線15が内部端子に接続されており、センサ部11と実装基板30とが、配線15、内部端子、内部配線、外部端子16、及び、半田を介して電気的に接続されている。本実施形態では、図3に示すように、箱部12aの側壁に外部端子16が形成されており、電子部品10は、実装基板30に対して横付けされる。
【0021】
実装基板30は、プリント基板であり、実装面30aからその裏面30bまでを貫通する貫通溝31を有する。本実施形態では、図1に示すように、平面矩形状の貫通溝31が、電子部品10の実装領域を介して、第1方向に2つ並んでいる。これにより、実装領域が、第1方向において貫通溝31によって囲まれている。
【0022】
図2に示すように、貫通溝31は、弾性部材32によって埋められている。弾性部材32は、実装基板30よりもヤング率及び線膨張係数が低い材料から成る。このような弾性部材32は、以下の工程を経ることで形成される。
【0023】
先ず、貫通溝31が形成された実装基板30を冶具に固定する。この際、貫通溝31の裏面30b側の開口部を冶具によって閉塞する。こうすることで、貫通溝31を構成する壁面を側壁、貫通溝31の開口部を閉塞する冶具を底部とする凹部を構成する。その後、この凹部に液状の材料を流入し、固化する。上記工程を経ることで、弾性部材32が形成される。
【0024】
次に、本実施形態に係る電子装置100の作用効果を説明する。上記したように、貫通溝31が弾性部材32によって埋められている。これにより、導電性を有する異物が、貫通溝31を介して、裏面30bから実装面30aに流動することが抑制される。この結果、電子部品10と実装基板30とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0025】
また、貫通溝31によって、実装領域30が囲まれている。したがって、貫通溝31を挟んで実装領域と対向する領域(以下、対向領域と示す)に熱によるねじれが生じたとしても、そのねじれが実装領域に印加されることが抑制される。この結果、電子部品10と実装基板30との接続部位(半田)に応力が印加されることが抑制され、電子部品10と実装基板30とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。なお、もちろんではあるが、貫通溝31は弾性部材32によって埋められているので、対向領域のねじれは、弾性部材32を介して実装領域に印加される。しかしながら、弾性部材32は実装基板30よりもヤング率が低いので、貫通溝31が実装基板30と同一材料によって埋められた構成、すなわち、貫通溝31が実装基板30に形成されていない構成と比べて、対向領域のねじれが実装領域に印加されることが抑制される。
【0026】
弾性部材32は、実装基板30よりも線膨張係数が低い材料から成る。これによれば、弾性部材32と実装基板30の線膨張係数が等しい構成と比べて、実装領域に印加される、熱膨張に起因する応力(以下、熱応力と示す)が弱くなる。このため、熱応力によって、実装領域に歪みが生じることが抑制され、電子部品10と実装基板30との接続部位(半田)に応力が印加されることが抑制される。この結果、電子部品10と実装基板30とで電気的な接続不良が生じることが抑制される。
【0027】
貫通溝31が、電子部品10の実装領域を介して、第1方向に2つ並んでいる。これにより、第1方向において、実装領域と対向する対向領域(以下、第1対向領域と示す)のねじれが、実装領域に印加されることが抑制される。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0029】
以下、図4〜図7に基づいて、電子装置100の変形例を示す。図4〜図7は、電子装置の変形例を示す上面図である。
【0030】
本実施形態では、貫通溝31が、電子部品10の実装領域を介して、第1方向に2つ並んだ例を示した。しかしながら、図4に示すように、貫通溝31が、電子部品10の実装領域を介して、第1方向だけではなく、第2方向に2つ並んだ構成を採用することもできる。これによれば、第2方向において、実装領域と対向する対向領域(以下、第2対向領域と示す)のねじれが、実装領域に印加されることが抑制される。
【0031】
本実施形態では、貫通溝31が平面矩形状である例を示した。しかしながら、図5〜図7に示すように、貫通溝31の形状としては、平面L字状、平面環状、平面コの字状を採用することができる。また、図示しないが、貫通溝31の形状としては、平面C字状、弧状等を採用することができ、上記例に限定されない。
【0032】
特に、図6に示すように、貫通溝31が平面環状の場合、実装領域が対向領域から切り離され、弾性部材32によってのみ連結された構成と成る。そのため、対向領域のねじれの実装領域への印加が、本実施形態で示した構成及びその他の変形例と比べてより効果的に抑制される。なお、貫通溝31が平面環状である場合、以下の工程を経ることで、実装基板30が形成される。実装領域を構成する第1基板(実装基板)と、対向領域を構成する第2基板(対向基板)とを冶具に固定する。こうすることで、貫通溝31を形作り、貫通溝31を構成する壁面を側壁、貫通溝31の一方の開口部を閉塞する冶具を底部とする凹部を構成する。その後、この凹部に液状の材料を流入し、固化する。この工程を経ることで、弾性部材32が形成され、2つの基板が連結される。この結果、実装基板30が形成される。
【0033】
本実施形態では、電子部品10と実装基板30とが半田を介して機械的及び電気的に接続された例を示した。しかしながら、例えば、電子部品10と実装基板30とが接着剤を介して機械的に接続され、ワイヤを介して電気的に接続された構成を採用することもできる。なお、この場合、ワイヤの一端が電子部品10に接続され、他端が対向領域に接続される構成が良い。これによれば、素子を形成することができない貫通溝31をワイヤが跨ぐので、ワイヤの配置による、素子形成領域の減少が抑制される。この結果、電子装置100の体格の増大が抑制される。
【符号の説明】
【0034】
10・・・電子部品
16・・・外部端子
30・・・実装基板
30a・・・実装面
30b・・・裏面
31・・・貫通溝
32・・・弾性部材
100・・・電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品(10)、及び、該電子部品(10)が実装される実装基板(30)を備える電子装置であって、
前記実装基板(30)に、前記電子部品(10)の実装面(30a)からその裏面(30b)までを貫通する貫通溝(31)が少なくとも1つ形成され、
前記貫通溝(31)によって、前記電子部品(10)の実装領域の少なくとも一部が囲まれており、
前記貫通溝(31)は、前記実装基板(30)よりもヤング率が低い弾性部材(32)によって埋められていることを特徴とする電子装置。
【請求項2】
前記弾性部材(32)は、前記実装基板(30)よりも線膨張係数が低いことを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記実装面(30a)に沿う第1方向において、前記実装領域を介して2つの前記貫通溝(31)が並んでいることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記実装面(30a)に沿い、前記第1方向に直交する第2方向において、前記実装領域を介して2つの前記貫通溝(31)が並んでいることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項5】
前記貫通溝(31)は、平面環状、平面矩形状、平面C字状、平面L字状、若しくは、平面コの字状であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記電子部品(10)は、半田を介して、前記実装基板(30)に実装されていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項7】
前記電子部品(10)は、センサ部(11)、及び、該センサ部(11)を収納するパッケージ(12)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の電子装置。
【請求項8】
前記センサ部(11)は、センサチップ(13)、及び、該センサチップ(13)の信号を処理する回路チップ(14)を有することを特徴とする請求項7に記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221999(P2012−221999A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82957(P2011−82957)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】