説明

電子部品とその製造方法及び該電子部品を備える電子装置

【課題】電子部品において、エアギャップ内の水分に起因する使用不能状態の発生及び雑音の増加を抑制する。
【解決手段】電子部品1は、固定膜8と、固定膜8に対向する振動膜16と、固定膜8に設けられ、中央部に少なくとも1つの第1貫通孔11を有する第1電極6と、振動膜16に、第1電極6と重なる位置に設けられ、周縁部に少なくとも1つの第2貫通孔17を有する第2電極18と、固定膜8と振動膜16との間にリブ10に囲まれるように構成され、第1貫通孔11及び第2貫通孔17にそれぞれ通じているエアギャップ14と、エアギャップ14を囲むリブ中10に設けられ、エアギャップ14から外側に向かって伸びる少なくとも1つの側孔15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS(Micro Electro Mechanical System)技術を用いた電子部品とその製造方法及びそれを用いた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型、薄型化の進展に伴い、MEMS技術を用いた電子部品及び電子装置の開発が行われている。このような電子装置と例として、センサースイッチ、エレクトレットコンデンサーマイクロホン(以下、「ECM」と略記する)等がある。ECMの構成部品の一つに、エレクトレットコンデンサーがある。
【0003】
従来のセンサースイッチ及びエレクトレットコンデンサーは、樹脂、セラミック等を用いた台座に、ポリイミドのような可撓性有機膜からなる振動膜を接着して得られるダイアフラムの構成を有していた。これに対し、近年では、ダイアフラムの台座、台座上の振動膜及びエレクトレット膜である固定膜(背面膜)の加工、振動膜と固定膜との間のエアギャップの加工等に、半導体素子製造のための微細加工技術が用いられるようになってきている。
【0004】
このように微細加工技術を用いる結果、エアギャップが狭くなっている。そのため、高温多湿環境においてセンサースイッチやECMを使用し、エアギャップ中の水分が結露した場合に、振動膜と固定膜との貼り付きが起こるという問題が発生してきた。
【0005】
従来の構造において、固定膜(エレクトレット膜)又は振動膜に貫通孔(第1貫通孔または第2貫通孔)が形成されている。この孔からエアギャップ中に取り込まれた水蒸気又は水分の一部が残存して結露するという不都合を回避するために、水蒸気や水分を速やかに排出させる必要がある。
【0006】
この目的のために、エアギャップ内において、固定膜の内面と、ダイアフラムの振動膜の内面とのいずれか一方又は両方の面に、疎水層を形成する方法とその構造が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。この技術によると、固定膜及びダイアフラムの振動膜の内面いずれか一方又は両方の面に疎水層を形成する。これは、固定膜及びダイアフラムの振動膜が有する第1貫通孔及び第2貫通孔を通じて、例えば液相の過フルオロアルキルシラン等のような疎水性物質をエアギャップ内に流入させることにより実現する。このようにすると、振動膜と固定膜との貼り付きを防止し、エレクトレットコンデンサーの性能が影響を受けるのを防ぐことができる。
【0007】
また、結露により、エアギャップ内において、固定膜とダイアフラムの振動膜との間の絶縁区間において表面抵抗が破壊して使用不能になるか、局所的に電気的導通が生じてECMの雑音が大きくなることもある。
【0008】
このようなECMの使用不能及び雑音の発生を回避するためには、エアギャップ内の絶縁区間の結露を防止するか、又は、導電性となる絶縁区間の形成を防止する必要がある。
【0009】
この目的のために、ECMの固定膜(エレクトレット膜)又は振動膜について、ECMの筐体と比較して、体積熱容量を1/3に、熱伝導率を1/100に、それぞれ小さくする構成が開示されている(例えば、特許文献2を参照)。このような物性の部品を用いたECMは、エアギャップ内の絶縁区間の結露を抑制すること、導電性となる絶縁区間を形成することを共に実現することができるとしている。
【特許文献1】特表2005−508579号公報
【特許文献2】特開平05−7397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の技術には、それぞれ、次のような課題があった。
【0011】
特許文献1の技術によると、疎水層を形成することにより振動膜と固定膜(エレクトレット膜)との貼り付きを防止する。
【0012】
しかしながら、疎水層に付着した水滴や結露は、水分子同士の引力が中心部に向って作用するために表面積が小さい形状となる性質を有する。その結果、エアギャップ内に浸入した水蒸気や水分により形成される水滴や結露は蒸発速度が遅く、固定膜や振動膜の絶縁性が低下しやすい。よって、この点の解決が課題となる。
【0013】
また、特許文献2の技術によると、固定膜やダイアフラムの振動膜の体積熱容量及び熱伝導率を筐体よりも小さくする構成により、エアギャップ内の水滴や結露を防止する。
【0014】
しかしながら、これらの条件を満たす必要があることから、固定膜、ダイアフラムの振動膜及び筐体の材料について、選択肢が著しく減少している。そのため、センサースイッチや、ECMを具現化するのが困難である。そのため、この点を解決することが課題となっている。
【0015】
以上の課題に鑑み、本発明の目的は、前記の課題を回避すると共に、エアギャップ内に侵入した水滴、結露等による固定膜(エレクトレット膜)と振動膜との貼り付きを防止すると共に、両者の膜の間の絶縁区間における表面抵抗値の低下を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電子部品は、固定膜と、固定膜に対向する振動膜と、固定膜に設けられ、少なくとも1つの第1貫通孔を有する第1電極と、振動膜における第1電極と重なる位置に設けられ、少なくとも1つの第2貫通孔を有する第2電極と、固定膜と振動膜との間にリブに囲まれるように構成され、第1貫通孔及び第2貫通孔にそれぞれ通じているエアギャップと、エアギャップを囲むリブ中に設けられ、エアギャップに通じている少なくとも1つの側孔とを備える。ここで、固定膜は、エレクトレット膜である。
【0017】
本発明の電子部品によると、高温多湿な環境にて使用される場合等にエアギャップ内に蒸気や水分が侵入したとしても、エアギャップを囲う側壁(リブ)に設けられた側孔(毛細管として機能する孔)により解消することができる。つまり、エアギャップ内の水分を側孔にトラップさせる(吸い込ませる)ことができる。更に、側孔がリブを貫通して外部まで通じている場合には、水分を外部まで排出し、また、逆の経路により外部から乾いた空気を取り入れることもできる。また、エアギャップ内にて結露が生じた場合にも、同様にして側孔によりトラップするか又は排除することができる。
【0018】
このため、狭い間隔に対向させてエアギャップを構成する固定膜(エレクトレット膜)と振動膜とが水分により貼り付くことによる使用不能状態、絶縁区間の水分による表面抵抗低下とそれに伴う雑音原の発生等を防ぐこととができる。
【0019】
また、各構成要素の材料について、特別な限定は生じていないため、材料選択の自由度を低下させることはない。
【0020】
尚、第1貫通孔は前記第1電極の中央部に設けられ、第2貫通孔は第2電極の周縁部に設けられていることが好ましい。
【0021】
第1貫通孔及び第2貫通孔の配置としては、このようになっていても良い。
【0022】
また、少なくとも1つの側孔は、リブを貫通しているものを含むことが好ましい。
【0023】
このように側孔がリブを貫通していると、エアギャップ内と電子部品の外部とが側孔によって通じることになる。この結果、エアギャップ内から水分を外部に排出することができるため、より確実に固定膜と振動間との貼り付き防止及び絶縁区間の表面抵抗低下防止が実現できる。
【0024】
また、少なくとも1つの側孔は、曲がった形状を有しているものを含むことが好ましい。
【0025】
曲がった形状とすることにより側孔をより長くすることができ、水分をトラップする能力を構えることができる。
【0026】
また、少なくとも1つの側孔の厚さは、エアギャップの厚さと同じであることが好ましい。ここで、側孔の厚さとは、エアギャップの厚さ方向についての側孔の寸法を言うものとする。このような側孔は、容易に形成することができる。
【0027】
また、開口を有する基板からなる台座を更に備え、振動膜の一部に設けられた第1接合金属膜と、台座に設けられた第2接合金属膜とが接続されていることが好ましい。
【0028】
このようにすると、台座上にエレクトレットコンデンサー部等を備える電子部品において、台座とエレクトレットコンデンサー部とを独立して形成した後に接合して製造することができる。この結果、個片化後に台座及びエレクトレットコンデンサー部のどちらかに不具合が発生した場合にも、不具合のある方を交換して良品とすることが可能となる。このことから、部品としての製造歩留りを向上することができ、結果として製造コストの削減が可能となる。
【0029】
また、電子部品としては、センサースイッチ又はエレクトレットコンデンサーマイクロホンが考えられる。このような電子部品について、本発明は顕著な効果を発揮する。
【0030】
前記の目的を達成するため、本発明に係る電子部品の製造方法は、固定膜と振動膜とによって犠牲膜が挟まれ且つ犠牲膜がリブに囲まれた構造を含む積層体を形成する工程と、積層体から犠牲膜を除去することにより、固定膜と振動膜とに挟まれ且つリブに囲まれたエアギャップを形成する工程とを含み、積層体を形成する工程において、犠牲膜の一部がリブ中を外側に伸びた構造とすることにより、犠牲膜を除去する工程において、エアギャップに加え、エアギャップからリブ中に伸びる少なくとも1つの側孔を設ける。
【0031】
本発明の電子部品の製造方法によると、リブ中にエアギャップに通じる少なくとも1つの側孔を有する、前記した本発明の電子部品を製造することができる。
【0032】
尚、積層体を形成する工程は、半導体基板上に、少なくとも1つの振動膜貫通孔を有する振動膜を形成する工程(a)と、振動膜上に、振動膜貫通孔が形成された領域を囲み且つ振動膜に達する深さのリブ形成用溝を有する犠牲膜を形成する工程(b)と、犠牲膜上に、少なくとも1つの固定膜貫通孔を有する固定膜を形成すると共に、リブ形成用溝にリブを形成する工程(c)と、固定膜のうちの固定膜貫通孔及びその周囲上を除く部分の上に、導電膜からなる第1電極を形成した後、第1電極上を覆う表面保護膜を形成する工程(d)と、工程(d)の後、半導体基板の中央部に、振動膜の裏面に達する開口を設けることにより台座を形成する工程(e)とを含み、工程(e)の後、エアギャップを形成する工程を行ない、エアギャップを形成する工程の後、少なくとも振動膜の台座側の面に、導電膜からなる第2電極を形成する工程を更に備え、工程(b)において、リブ形成用溝に囲まれる犠牲膜の一部がリブ形成用溝中に伸びるように犠牲膜を形成することにより、工程(c)において、リブに囲まれた犠牲膜の一部がリブ中に伸びた構造を得ることが好ましい。
【0033】
より詳しい本発明に係る電子部品の製造方法として、このようにしても良い。
【0034】
また、積層体を形成する工程は、第1半導体基板の一方の面上に表面保護膜を形成した後、表面保護膜上に導電膜からなる第1電極を形成する工程(f)と、表面保護膜上に、第1電極を覆うように、少なくとも1つの固定膜貫通孔を有する固定膜を形成する工程(g)と、固定膜上に、固定膜貫通孔が形成された領域を囲み且つ固定膜に達する深さのリブ形成用溝を有する犠牲膜を形成する工程(h)と、犠牲膜上に、少なくとも1つの振動膜貫通孔を有する振動膜を形成すると共に、リブ形成用溝にリブを形成する工程(i)と、振動膜上に、リブの上方において、第1接合金属膜を形成する工程(j)と、第1半導体基板とは別の第2半導体基板上に酸化膜を形成した後、酸化膜上に、第1接合金属膜と対応するように第2接合金属膜を形成する工程(k)と、第1接合金属膜と、第2接合金属膜とを対向するように位置合わせし、合金化させることにより第1半導体基板と第2半導体基板とを接合する工程(l)と、第2半導体基板の中央部に開口を設けることにより台座を形成する工程(m)とを含み、工程(m)の後、エアギャップを形成する工程を行ない、エアギャップを形成する工程の後、少なくとも振動膜の台座側の面に、導電膜からなる第2電極を形成する工程を更に備え、工程(h)において、リブ形成用溝に囲まれる犠牲膜の一部がリブ形成用溝中に伸びるように形成することにより、工程(i)において、リブに囲まれた犠牲膜の一部がリブ中に伸びた構造を得ることが好ましい。
【0035】
より詳しい本発明に係る電子部品の製造方法として、このようにしても良い。特に、該方法によると、台座と、該台座上に設けるエレクトレットコンデンサー部とを個別に製造した後に接続して本発明の電子部品とすることができる。よって、先にも説明した通り、製造歩留りが向上して製造コストの削減に繋がる。
【0036】
また、第2電極は、振動膜の台座側の面に加えて、台座の開口の側壁及び台座の下面にも形成することが好ましい。第2電極は、このような範囲に形成されていても良い。
【0037】
また、エアギャップを形成する工程は、ウェットエッチングを利用して行ない、ウェットエッチングに用いるエッチング液を加温して粘度低下させることが好ましい。
【0038】
このように、エッチング液の粘度を低下させることにより微細加工を容易にすることができ、毛細管として機能する側孔の加工を容易にすることができる。
【0039】
また、エッチング液に超音波振動を加えることが好ましい。これにより、更に微細加工が容易になる。
【0040】
また、前記の目的を達成するため、本発明に係る電子装置は、前記した本発明の電子部品のいずれか一つと、少なくとも1つの半導体素子と、少なくとも1つの受動電子部品と、2つの搭載領域を有し、二つの搭載領域の一方には電子部品、半導体素子及び受動電子部品が搭載され、2つの搭載領域の他方には外部接続端子を備える配線基板と、電子部品の電極端子と、配線基板の接続端子及び半導体素子の電極端子とを接続する金属細線と、電子部品、半導体素子、受動電子部品及び金属細線を覆うように、配線基板上に取り付けられたシールドケースとを備える。
【0041】
このような構成とすると、本発明の電子部品を利用した電子装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の電子部品及びこれを用いた電子装置によれば、高温多湿環境での使用においても、毛細管である側孔により、エアギャップ中に浸入した水蒸気や水分をトラップする(吸い込む)、排出する、更には外部の乾いた大気を取り込む等とすることができる。このため、小型で故障のない電子部品及びそれを用いて電子装置を実現することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下に、本発明の幾つかの実施形態を説明する。ここでは、MEMS技術を用いた電子部品としてエレクトレットコンデンサーを例とし、また、電子装置としてはECMを例として説明するが、これらに限定するわけではない。他の例としてはセンサースイッチ等があり、広く種々の電子部品及びそれを用いた電子装置において利用可能である。尚、参照する図面について、いずれも模式的に表したものであって、スケールや一部構成要素の数等は必ずしも実際と同じではない。
【0044】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態に係る電子部品と、その製造方法について説明する。図1(a)〜(c)は、電子部品の一つであるエレクトレットコンデンサー1の構造を示す図であり、図1(a)は一部構成要素を切り開いて示す平面図、図1(b)は図1(a)のIb-Ib'線による断面図、図1(c)は図1(a)のIc-Ic'線による断面図である。
【0045】
本実施形態のエレクトレットコンデンサー1は、図1(a)〜(c)に示す通り、シリコン基板の中央部に所定の大きさの台座開口22を有する構造の台座21を用いて形成されている。
【0046】
台座21上には台座開口22を覆うように振動膜16が形成され、台座21と共にダイアフラムを構成している。振動膜16と対向するように、エアギャップ14を隔ててエレクトレット膜である固定膜8が配置されている。また、エアギャップ14は、側壁と考えることができるリブ10によって囲まれている。リブ10は、ここでは固定膜8の一部が台座21の側に突出した部分として構成されている。また、固定膜8は、下と上とから下層絶縁膜9と上層絶縁膜7とによって挟まれている。
【0047】
固定膜8上を覆う上層絶縁膜7の上には、第1電極6が設けられると共に、該第1電極6を覆うように表面保護膜4が設けられている。また、振動膜16の下面(台座開口22の側)と、台座開口22の側壁と、台座21の下面(振動膜16とは反対側の面)には、第2電極18が設けられている。
【0048】
固定膜8を含むエアギャップ14上の積層膜に関し、中央付近の領域に、少なくとも1つ(本実施形態では複数)の第1貫通孔11がエアギャップ14に達するように設けられている。また、振動膜16及びその下面に設けられた第2電極18について、台座開口22の周縁部において、少なくとも1つの結露防止用の第2貫通孔17がエアギャップ14に達するように設けられている。
【0049】
また、リブ10が複数の部分に分割され、その隙間として、エアギャップ14から台座21の上面に沿って伸びる細い孔(毛細管)である側孔15が設けられている。
【0050】
側孔15は、エアギャップ14を囲う側壁であるリブ10中を通って外側に伸びている微細な孔である。側孔15は、リブ10を貫通していない構成の場合、エアギャップ14内から水蒸気をトラップする(しみ込ませる)機能を果たす。側孔15がリブ10を貫通して外部まで通じている場合(本実施形態に示す例の場合)には、エアギャップ14内から水蒸気を外部に排出する機能と、外部からエアギャップ14内に乾燥した空気を取り入れる機能とを果たす。
【0051】
エレクトレットコンデンサー1をモジュール基板(図示省略)に実装すると、台座開口22は下方が塞がれて密閉された構造となる。このため、固定膜8等に設けられた第1貫通孔11からエアギャップ14内に流入した気流は、振動膜16等に設けられた第2貫通孔17を通じて台座開口22に達したとしても、外部に流出することはない。
【0052】
側孔15のような構成を備えていない従来のエレクトレットコンデンサーの場合、第1貫通孔11に相当する部分しかエアギャップから外部に気流が流出する経路は無いことになる。これに対し、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1の場合、側孔15が設けられていることから、第1貫通孔11を通じて流入した気流は側孔15を通じて外部に流出することができる。このため、エアギャップ14内における結露を抑制することができ、また、結露が生じた場合にも、側孔15を通じて水を外部に排出することが可能である。
【0053】
このため、狭い隙間であるエアギャップ14を挟んで対向する固定膜8と振動膜16とが水分のために貼り付くこと抑制し、このような貼り付きによる使用不能状態の発生を防ぐことができる。また、固定膜8と振動膜16との間の絶縁区間において水分により表面抵抗が低下するのを抑制し、このような表面抵抗の低下に起因する使用不能状態及び雑音の増加を抑制することができる。
【0054】
このように、側孔15によって結露の抑制と水分の排出が可能であるため、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1は、耐湿性、信頼性及び性能に優れるものとなっている。
【0055】
次に、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1の各構成要素、特に、台座21、振動膜16、固定膜8、エアギャップ14、側孔15及び電極端子28について、より詳しく説明する。
【0056】
まず、台座21は、平面形状が円形か、又は、矩形を含む多角形(本実施形態においては一例として正方形)であり、その中央部に台座開口22を備える。台座開口22は、表面から裏面に(振動膜16の面からその反対側の面に)向かって広がる形状であり、垂直断面(図1(b))において側壁は傾斜している。本実施形態において、台座開口22の平面形状は矩形であるものとするが、これに限定されるわけではない。
【0057】
尚、ここでは台座21はシリコン半導体基板を用いて形成されているが、これには限らない。例えば、ゲルマニウム、砒化ガリウム、炭化珪素等の半導体でも良いし、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等のセラミックでも良いし、パイレックス(登録商標)、テレックス、石英等のガラスであっても良い。
【0058】
振動膜16は、台座21の一方の面上に振動膜16を介して接合されており、台座開口22上を覆っている。台座開口22上の部分の振動膜16の周縁部には、第2貫通孔17が少なくとも1つ設けられている。このようにして、台座21と振動膜16とによってエレクトレットコンデンサー1のダイヤフラムが構成されている。
【0059】
尚、ここでは振動膜16の材料はシリコン窒化膜とするが、これには限らない。例えば、多結晶シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の絶縁膜を用いることができる。
【0060】
また、振動膜16の台座開口22側に露出した面、台座21の台座開口22の側壁傾斜面及び台座21の裏面には、第2電極18が形成されている。ここで、第2電極18を構成する導電膜の材質は金(Au)膜とするが、これには限らない。例えば、銅、ニッケル、アルミニウム合金等のいずれか1つであってもよいし、このような導電膜を複数積層したものであってもよい。
【0061】
固定膜8には、上層絶縁膜7と下層絶縁膜9とが上下に積層されて三層構造となっている。上層絶縁膜7上には導電膜からなる第1電極6が設けられている。また、固定膜8の外周各辺の端面は、上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9のいずれの端面よりも内側に位置している。このため、固定膜8の端面は上層絶縁膜7によって覆われている。
【0062】
更に、固定膜8の中央部において、少なくとも1つの第1貫通孔11が設けられている。第1貫通孔11は、固定膜8に加えて上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9を貫通し、エアギャップ14に接続されている。第1貫通孔11は円形、矩形等の形状とすることができ、その寸法(円の直径、矩形の辺の長さ等)は、3μmから50μmであることが好ましく、5μmから8μmであることが更に好ましい。
【0063】
上層絶縁膜7上に配置される第1電極6には、固定膜8が有する第1貫通孔11に対応する位置に、第1貫通孔11よりも径の大きな孔が設けられている。第1電極6上を覆うように表面保護膜4が設けられ、第1電極6に覆われていない部分の上層絶縁膜7及び第1貫通孔11の部分の固定膜8、上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9の側面についても、表面保護膜4によって覆われている。
【0064】
尚、固定膜8の材料はシリコン酸化膜とするが、これには限らず、例えばシリコン窒化膜、多結晶シリコン等を用いることもできる。また、上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9の材料としては、例えば、シリコン窒化膜、多結晶シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム等の誘電体膜を用いることができる。また、第1電極6の材料としては、例えば、アルミニウム合金、金、銅、アルミニウムとニッケルの積層材、銅とニッケルの積層材等の導電成膜を用いることができる。更に、表面保護膜4の材料としては、例えばシリコン窒化膜、シリコン酸化膜等を用いることができる。
【0065】
エアギャップ14は、振動膜16と固定膜8とに挟まれ、リブ10に囲まれた空間である。その厚さ(振動膜16と固定膜8との間隔)は、固定膜8が台座21の側に突出した部分であるリブ10の高さによって設定され、0.3μmから10μmの範囲とするのがよい。より好ましくは、0.5μmから5μmの範囲とする。また、エアギャップ14は、振動膜16に設けられた第2貫通孔17を通して台座開口22と接続されていると共に、リブ10中を外側に向かって伸びる側孔15及び固定膜8に設けられた第1貫通孔11を通じて外部と接続されている。
【0066】
リブ10は、固定膜8の振動膜16と対向する面における台座開口22よりも外側の領域において、固定膜8と下層絶縁膜9とが振動膜16側に突出して振動膜16に接合する部分として形成されている。リブ10は台座開口22を不連続に囲んでおり、不連続部分が側孔15となる。円形状、多角形状等の配置形状を取るように配置され、高さはエアギャップ14の厚さと等しい。
【0067】
尚、リブ10よりも外側において、振動膜16と固定膜8との間の隙間は犠牲膜12で埋められている。犠牲膜12の材質は、例えば燐珪酸ガラス、硼珪酸燐ガラス等である。
【0068】
側孔15は、エアギャップ14を囲むリブ10の不連続部分として設けられている。図1(c)には、側孔15の周囲の断面を拡大して示している。側孔15の高さ(振動膜16に垂直な方向の寸法)は、加工上の理由からエアギャップ14と同等以下であることが好ましい。例えば、0.2μmから5μmとするのがよい。また、側孔15の幅については、水蒸気をトラップする又は通過させるための寸法として、0.05μmから5μmとするのが好ましく、0.5μmから2μmとするのがより好ましい。
【0069】
尚、図1(a)において、側孔15が一定の幅に設けられる例を示している。しかし、側孔15は、エアギャップ14側において幅が広く外側に向かって狭くなる構造であっても良いし、逆に、エアギャップ14側において幅が狭く外側に向かって狭くなる構造であっても良い(このような場合の図示については省略する)。いずれの形状が相応しいものであるかについては、エレクトレットコンデンサー1を搭載する電子機器の使用環境に依存する。例えば携帯電話のマイクロフォンとして用いた場合、大気圧の変化が頻繁に起きるため、外気と電子機器内との大気圧、湿度等に差が生じて結露が発生することがある。また、電子機器の内外における気圧の高低の逆転も頻繁に発生する。このような、電子機器の使用環境を想定して、側孔15の形状を調整する。
【0070】
第1電極6の周縁部の所定箇所上に、電極端子28が設けられている。これは、表面保護膜4を貫通する電極端子開口5が設けられ、該電極端子開口5において第1電極6と接続するように形成されている。尚、電極端子開口5は、側孔15の上方を避けた位置に形成することが好ましい。
【0071】
続いて、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1の製造方法を説明する。まず、図2(a)及び(b)は、エレクトレットコンデンサー1の製造工程を示す図であり、図2(a)が平面図、図2(b)が図2(a)のIIb-IIb'線における断面図である。同様に、図(a)及び(b)〜図13(a)及び(b)についても、それぞれ製造工程を示す平面図及び断面図である。
【0072】
初めに、図1(a)及び(b)に示すように、シリコンからなる半導体基板20の両面にシリコン酸化膜19とシリコン窒化膜16aを積層して形成する。このためには、ドライ又はスチームによる酸化法によりシリコン酸化膜19を形成した後、SiH2 Cl2 とNH3 の成膜用ガスによる減圧CVD法によって所定の厚さにシリコン窒化膜16aを堆積する。別の方法としては、プラズマCVD法を用いても良いし、スパッタリング法でも良い。
【0073】
尚、半導体基板20の上面側に形成するシリコン窒化膜16aは、後の工程によりエレクトレットコンデンサー1の振動膜16に加工される。これに対し、半導体基板20の下面側のシリコン窒化膜16aは、半導体基板20を加工するためのマスクとなる下面側のシリコン酸化膜19を保護するために設けている。つまり、下面側のシリコン酸化膜19の膜厚が減少すること、損傷を受けること等を防ぐために設けている。
【0074】
次に、図3(a)及び(b)に示す工程を行なう。尚、図3(a)が平面図であり、そのIIIb-IIIb'線による断面図が図3(b)である。
【0075】
ここでは、振動膜16となる半導体基板20の上面側のシリコン窒化膜16aに対し、少なくとも1つの第2貫通孔17を形成する。例えばフォトリソグラフィと反応性イオンエッチング(以下、RIEと略記する)とを用いて、振動膜16の周縁部となる部分に形成する。RIEに用いる反応ガスは、C2 6 ガスを用いてもよいし、CF4 、CF4 /O2 、CF4 /H2 、CHF3 /O2 、CHF3 /O2 /CO2 、CH2 2 /CF4 のうちのいずれかを用いてもよい。
【0076】
次に、図4(a)及び(b)に示す工程を行なう。図4(a)が平面図であり、そのIVb-IVb'線による断面図が図4(b)である。
【0077】
まず、上面側のシリコン窒化膜16a上を覆い且つ第2貫通孔17を埋め込むように、犠牲膜12を形成する。例えば、PH3/SiH4/O2 の成膜用ガスによる常圧CVD法により、燐珪酸ガラスを材料として所定の厚さに形成する。但し、プラズマCVD方により成膜しても良いし、材料として硼珪酸燐ガラスを使用してもよい。
【0078】
次に、シリコン窒化膜16aにおける第2貫通孔17が形成された領域よりも外側の部分の犠牲膜12に、円形又は多角形に配置された不連続なパターンを有するリブ形成用溝13を形成する。これは、フォトリソグラフィとHF(フッ酸)系エッチング液を用いたウェットエッチング法により、シリコン窒化膜16aに達する深さに形成する。
【0079】
不連続なリブ形成用溝13の隣接する部分同士に挟まれた領域12aには、犠牲膜12が残されている。領域12aは後の工程において側孔15となる部分であり、そのために必要な形状として残すようにリブ形成用溝13を形成する。
【0080】
次に、図5(a)及び(b)に示す工程を行なう。図5(a)が平面図であり、そのVb-Vb'線による断面図が図5(b)である。ここでは、半導体基板20の下面側に形成されているシリコン窒化膜16aを除去する。このためには、RIE法を用いればよい。反応ガスとしては、C2 6 ガスを用いてもよいし、CF4 、CF4/O2、CF4/H2、CHF3/O2、CHF3/O2/CO2 、CH22/CF4 のうちのいずれかを用いてもよい(これらは、図3(a)及び(b)に示す工程においてRIEに用いたのと同様の反応ガスである)。尚、半導体基板20の上面のシリコン窒化膜16aは、振動膜16として残す。
【0081】
次に、図6(a)及び(b)に示す工程を行なう。図6(a)が平面図であり、そのVIb-VIb'線による断面図が図6(b)である。ここでは、犠牲膜12上に、下層絶縁膜9、固定膜8及び上層絶縁膜7からなる三層の積層膜を形成する。但し、図6(a)において、下層絶縁膜9等の一部の構成要素は示していない。
【0082】
このために、まず、犠牲膜12及びリブ形成用溝13上に、シリコン窒化膜からなる下層絶縁膜9とシリコン窒化膜からなる固定膜8とを順にそれぞれ所定の厚さに形成する。続いて、フォトリソグラフィとRIEとを用いて固定膜8の外周部分を除去し、固定膜8の外縁端は下層絶縁膜9の外縁端よりも内側に位置するようにする。この後、固定膜8と下層絶縁膜9の露出部分とを覆うように、上層絶縁膜7を形成する。上層絶縁膜7は、シリコン窒化膜により所定の厚さに形成する。
【0083】
これにより、固定膜8と振動膜16とによって犠牲膜12が挟まれ、該犠牲膜12はリブ10によって囲まれた構造の積層体が得られる。このとき、リブ形成用溝13が不連続な形状を有することからリブ10も隙間を有する不連続な形状となり。該隙間は、前記に説明した領域12aであり、ここには犠牲膜12が残されている。
【0084】
尚、上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9は、固定膜8に加工時の膜厚の減少や損傷を生じさせないために設けている。
【0085】
また、下層絶縁膜9及び上層絶縁膜7については、例えばプラズマCVD法によりSiH4 /NH3 を成膜用ガスとして形成する。また、固定膜8は、プラズマCVD法によりSi(OC2 5 4 /O2 を成膜用ガスとして形成しても良い。また、固定膜8の外周部分の除去の際、RIEに使用する反応ガスとしては、CF4 ガスを用いてもよいし、C4 8 /O2 /Ar、C5 8 /O2 /Ar、C3 6 /O2 /Ar、C4 8 /Co、CHF3 /O2 、CF4 /Hのうちのいずれかを用いてもよい。
【0086】
次に、図7(a)及び(b)に示す工程を行なう。図7(a)が平面図であり、そのVIIb-VIIb'線による断面図が図7(b)である。ここでは、下層絶縁膜9、固定膜8及び上層絶縁膜7を含む積層膜に対し、その中央付近に複数の第1貫通孔11を形成する。ここで、RIEに使用する反応ガスとしては、例えばCF4 を使用する。その他、CF4 /H2 またはCHF3 /O2 を用いてもよい。
【0087】
次に、図8(a)及び(b)に示す工程を行なう。図8(a)が平面図であり、そのVIIIb-VIIIb'線による断面図が図8(b)である。ここでは、上層絶縁膜7上に導電膜42を形成する。この際、第1貫通孔11についても導電膜42によって埋め込まれる。導電膜42の形成方法としては、例えば、アルミニウム合金を材料とするスパッタリング法を用いることができる。また、別の方法として、抵抗加熱蒸着法を用いても良い。
【0088】
次に、図9(a)及び(b)に示す工程を行なう。図9(a)が平面図であり、そのIXb-IXb'線による断面図が図9(b)である。ここでは、導電膜42を加工して第1電極6を形成する。
【0089】
このためには、上層絶縁膜7上の導電膜42について、第1貫通孔11の周辺と外周部分とをフォトリソグラフィ及びRIEにより除去し、外縁端が上層絶縁膜7上の外縁端よりも内側にあり且つ複数の開口を有する第1電極6のパターンに加工する。RIEに使用する反応ガスとしては、例えばBCl3 /Cl2 ガスを用いてもよいし、BCl3 /CHF3 /Cl2 、BCl3 /CH2 /Cl2 、B/Br3 /Cl2 、BCl3 /Cl2 /N2 、SiO4 /Cl2 のうちのいずれかを用いてもよい。
【0090】
次に、図10(a)及び(b)に示す工程を行なう。図10(a)が平面図であり、そのXb-Xb'線による断面図が図10(b)である。ここでは、第1電極6を覆うように上層絶縁膜7上に表面保護膜4を形成する。これは、プラズマCVD法により、シリコン窒化膜からなる膜として形成すればよい。成膜用ガスには、SiH4 /NH3 を使用する。
【0091】
成膜方法として、常圧CVD法を用いることも可能である。しかし、下層となる第1電極6がアルミニウム合金により形成されている場合、250℃から400℃の成膜温度により低欠陥膜が得られることから、プラズマCVD法が適している。
【0092】
次に、図11(a)及び(b)に示す工程を行なう。図11(a)が平面図であり、そのXIb-XIb'線による断面図が図11(b)である。ここでは、半導体基板20に台座開口22を開口し、台座21を形成して台座21と振動膜16とからなるダイアフラムを構成する。
【0093】
まず、フォトリソグラフィとRIEとを利用し、半導体基板20の下面のシリコン酸化膜19を加工して、台座開口22を形成するためのエッチング用マスクパターンを得る。RIEの反応ガスにはCF4 ガスを用いてもよいし、C4 8 /O2 /Ar、C5 8 /O2 /Ar、C3 6 /O2 /Ar、C4 8 /Co、CHF3 /O2 、CF4 /Hのうちのいずれかを用いてもよい。また、RIEに代えて、HF系のエッチング液を用いたウェットエッチング法を利用しても良い。
【0094】
シリコン酸化膜19を元にエッチング用マスクパターンを形成した後、半導体基板20の裏面の側からKOH液によるウェットエッチングを行なう。これにより、半導体基板20を貫通する台座開口22を形成する。尚、KOH液以外のエッチング液として、NaOH液を使用しても良い。
【0095】
この後、台座21の裏面に設けたエッチング用マスクパターンと、振動膜16の下に設けられていた部分のシリコン酸化膜19とをHF系のエッチング液に浸漬することにより除去する。但し、シリコン酸化膜19の除去については、台座開口22を開口するためのRIEの際に同時に除去しても良い。以上により、台座21と振動膜16とを含むダイアフラムが構成される。
【0096】
次に、図12(a)及び(b)に示す工程を行なう。図12(a)が平面図であり、そのXIIb-XIIb'線による断面図が図12(b)である。ここでは、表面保護膜4に第1貫通孔11を設けた後、エアギャップ14と側孔15とを形成する。
【0097】
まず、下層絶縁膜9、固定膜8、上層絶縁膜7及び第1電極6を貫通している孔に埋め込まれた部分の表面保護膜4を除去し、犠牲膜12に達する第1貫通孔11を形成する。これと同時に、第1電極6上の所定の部分の表面保護膜4を除去することにより、電極端子28を設けるための電極端子開口5を形成する。このためには、フォトリソグラフィ及びRIEを用いればよい。RIEに使用する反応ガスとしては、C2 6 ガスを用いてもよいし、CF4 、CF4 /O2 、CF4 /H2 、CHF3 /O2 、CHF3 /O2 /CO2 、CH2 2 /CF4 のうちのいずれかを用いてもよい。
【0098】
続いて、B−HF(バッファードフッ酸)又は他のHF系のエッチング液に浸漬すると共に、エッチング液に超音波振動を加えて液を揺動させることにより、固定膜8等を貫く第1貫通孔11と、振動膜16に設けられた第2貫通孔17とを通じてエッチング液を侵入させる。これにより、固定膜8と振動膜16との間の部分の犠牲膜12を除去してエアギャップ14を形成する。また、リブ10中に伸びた領域12aの部分の犠牲膜12を除去することにより、エアギャップ14からリブ10中を外側に向かって伸びる側孔15を形成する。
【0099】
尚、超音波振動を加えてエッチング液を揺動させることにより、エアギャップ14及び側孔15となる部分にエッチング液を十分に循環させる。これにより、エッチング速度のバラツキを低減することができる。また、温度を上昇させてエッチング液の粘度を下げることによっても、エッチング液の循環を良くすることができる。これらの方法は、併用することができる。
【0100】
次に、図13(a)及び(b)に示す工程を行なう。図13(a)が平面図であり、そのXIIIb-XIIIb'線による断面図が図13(b)である。ここでは、固定膜8に対して電荷を注入した後、第2電極18を形成する。
【0101】
まず、コロナ放電又はプラズマ放電に晒すことにより、シリコン酸化膜からなる固定膜8に電荷を注入して電荷蓄積を行なう。これにより、固定膜8はエレクトレット膜としての機能を得る。次に、台座21の裏面、台座開口22の側壁及び振動膜16の下面に、スパッタリング法によって金(Au)からなる導電膜を形成する。これにより、第2電極18が形成される。尚、導電膜は、抵抗加熱法によって形成しても良い。これにより、エレクトレットコンデンサー1の構造が得られる。
【0102】
この後、半導体基板20に設けられた複数のエレクトレットコンデンサー1を個片化する。このためには、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ステルスダイシング等を行なえばよい。
【0103】
以上により、個々のエレクトレットコンデンサー1が製造される。このような製造方法により得られたエレクトレットコンデンサー1は、既に説明した通り、側孔15により水分をトラップ又は除去することができるから、耐湿性、信頼性、製造歩留り、性能等に優れ、且つ小型化を実現することができる。
【0104】
(第2の実施の形態)
以下に、第2の実施形態に係る電子部品と、その製造方法について説明する。図14(a)〜(c)は、電子部品の一つであるエレクトレットコンデンサー2の構造を示す図であり、図14(a)は一部構成要素を切り開いて示す平面図、図14(b)は図14(a)のXIVb-XIVb'線による断面図、図14(c)は図14(a)のXIVc-XIVc'線による断面図である。
【0105】
本実施形態のエレクトレットコンデンサー2は、台座部30と、エレクトレットコンデンサー部31とが合金接合層27によって接合された構造を有する。
【0106】
台座部30は、第2半導体基板25の中央部に所定の大きさの台座開口22が設けられた台座21と、台座21の上面に設けられたシリコン酸化膜19と、シリコン酸化膜19上に配置された第2接合膜26とを備える。第2接合膜26は、後に説明するエレクトレットコンデンサー部31において振動膜16のに形成された第1接合膜24のパターンと対応するように、不連続に形成されている。
【0107】
エレクトレットコンデンサー部31は、固定膜8と振動膜16とによって挟まれ且つリブ10によって囲まれたエアギャップ14を含む。
【0108】
ここで、リブ10は、振動膜16の一部が固定膜8の側に突き出した部分として形成されており、側孔15となる隙間を残して不連続に台座開口22を囲んでいる。側孔15はエアギャップ14からリブ10中に伸びている。リブ10の高さは0.5μmから10μm程度であり、このため、エアギャップ14の厚さ(振動膜16と固定膜8との隙間の幅)も同様に0.5μmから10μm程度である。
【0109】
また、固定膜8は上下から上層絶縁膜7と下層絶縁膜9とによって覆われている。また、固定膜8上には上層絶縁膜7を介して第1電極6が設けられており、該第1電極6を覆うように、上層絶縁膜7上に表面保護膜4が設けられている。下層絶縁膜9、固定膜8、上層絶縁膜7、第1電極6及び表面保護膜4を全て貫通する第1貫通孔11が少なくとも1つ設けられ、エアギャップ14に達している。但し、固定膜8及び第1電極6について、孔の側面は下層絶縁膜9、上層絶縁膜7、表面保護膜4によってそれぞれ覆われている。固定膜8の貫通孔は、直径が3μmから10μmである。
【0110】
表面保護膜4には、第1電極6に達する電極端子開口5が設けられ、該電極端子開口5に電極端子28が設けられている。
【0111】
振動膜16には、第2貫通孔17が形成されている。また、振動膜16のリブ10が突出するのとは反対側の面には、台座部30に設けられた第2接合膜26と対応するように、第1接合膜24が設けられている。
【0112】
以上のような台座部30及びエレクトレットコンデンサー部31は、それぞれに設けられた第2接合膜26及び第1接合膜24が接合されて合金接合層27となることにより接合され、本実施形態のエレクトレットコンデンサー2を構成している。尚、振動膜16の台座部30側の面と、台座21の裏面(エレクトレットコンデンサー部31とは反対側の面)と、台座21における台座開口22の側壁とに、第2電極18が設けられている。
【0113】
本実施形態のエレクトレットコンデンサー2においても、エアギャップ14からリブ10中に伸びる細い管である側孔15が設けられている。このため、第1の実施形態のエレクトレットコンデンサー1と同様に、エアギャップ14内に侵入するなどした水分をトラップするか又は外部に排出することができる。また、エアギャップ14内における結露の発生を抑制することもできる。このため、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1は、耐湿性、信頼性及び性能に優れると共に、小型化が実現できる。
【0114】
また、台座部30とエレクトレットコンデンサー部31とを接合する構造であるから、台座部30又はエレクトレットコンデンサー部31に不良が生じた場合、交換して再生することができる。
【0115】
尚、台座21、振動膜16、エアギャップ14、下層絶縁膜9、固定膜8、上層絶縁膜7、側孔15、電極端子28等については第1の実施形態のエレクトレットコンデンサー1における各部材と同様であるから、詳しい説明は省略する。
【0116】
合金接合層27は、前記の通り、台座21に設けられた第2接合膜26と、振動膜16に設けられた第1接合膜24とが合金化されて台座部30とエレクトレットコンデンサー部31とを接合する機能を有する。例えば、第1接合膜24を金の薄膜パターンとして、第2接合膜26を珪素の薄膜パターンとして、それぞれ形成する。その他には、金とゲルマニウム、金と錫、金と錫鉛共晶半田のような組み合わせを用いても良い。また、第1接合膜24及び第2接合膜26の両者について、錫鉛共晶半田、錫亜鉛共晶半田、錫ビスマス共晶半田により形成しても良い。更に、これらの他の組み合わせを用いても良い。また、金属を用いるのに代えて、有機材料からなり且つ所定の形状に撃ち抜かれたプリプレグ状接着剤により貼り合わせても良い。
【0117】
次に、本実施形態のエレクトレットコンデンサー2の製造方法について説明する。前記の通り、エレクトレットコンデンサー部31と台座部30とを形成した後にこれらを接合する方法を取るため、初めに、エレクトレットコンデンサー部31の製造工程を説明する。図15(a)〜(d)と、図16(a)〜(c)とは、エレクトレットコンデンサー部31の製造方法を説明するための断面図である。
【0118】
初めに、図15(a)に示す工程を行なう。ここでは、第1半導体基板23の一方の面に、エレクトレットコンデンサー部31の表面保護膜4と第1電極6との積層膜のレプリカ41を形成する。
【0119】
レプリカ41は、導電膜によりパターン化された第1電極6と相似形の溝構造であ。該溝の深さは、第1電極6を構成する導電膜の厚さとする。また、第1半導体基板23の面に沿う方向の寸法については、第1電極6の寸法に対し、表面保護膜4の厚さに応じて大きく形成する。具体的には、表面保護膜4の厚さの1倍から2倍の範囲の寸法だけ大きくすることが好ましく、1.2倍から1.6倍の範囲の寸法だけ大きくすることが更に好ましい。
【0120】
尚、レプリカ41は、第1半導体基板23に対してフォトリソグラフィ及びRIEを利用して行なわれる。RIEを利用に使用する反応性ガスとしては、SF6 ガスを用いてもよいし、C4 8 、CBrF3 、CF4 /O2 、Cl2 、SiCl4 /Cl2 、SF6 /N2 /Ar、BCl2 /Cl2 /Arのうちのいずれかを用いてもよい。
【0121】
次に、図15(b)に示す工程を行なう。ここでは、第1半導体基板23に形成したレプリカ41上に、シリコン窒化膜からなる表面保護膜4を所定の厚さに形成する。尚、表面保護膜4の成膜方法については、第1の実施形態の図10(a)及び(b)に示す工程にて説明したのと同様である。
【0122】
次に、図15(c)に示す工程を行なう。ここでは、表面保護膜4上に第1電極6を形成する。まず、表面保護膜4上に、例えばアルミニウム合金からなる導電膜をレプリカ41と同じ厚さに堆積する。次に、第1貫通孔11となる部分及び第1半導体基板23の周縁部上の部分とを、例えばフォトリソグラフィ及びRIEにより除去する。導電膜の成膜法と、RIEとについては、第1の実施形態において図8(a)及び(b)と、図9(a)及び(b)とに示す工程にて説明したのと同様である。
【0123】
次に、図15(d)に示す工程を行なう。ここでは、第1電極6上に、上層絶縁膜7、固定膜8及び下層絶縁膜9の3層積層膜を形成する。
【0124】
まず、導電膜からなる第1電極6上と、第1電極6に覆われていない部分の表面保護膜4上とに、シリコン窒化膜からなる上層絶縁膜7を形成する。次に、上層絶縁膜7上に、シリコン酸化膜からなる固定膜8を所定の厚さに形成する。続いて、固定膜8のうち第1貫通孔11に相当する部分と、第1半導体基板23の周縁部上の部分と、例えばフォトリソグラフィ及びRIEにより除去する。この後、固定膜8と、露出している部分の上層絶縁膜7との上に、下層絶縁膜9を形成する。
【0125】
尚、上層絶縁膜7及び下層絶縁膜9の名称は、エレクトレットコンデンサー2が完成した際の上下に基づいている。また、それぞれの膜の形成方法、導電膜RIEの方法等については、第1の実施形態において図5(a)及び(b)に示す工程に説明したのと同様である。
【0126】
次に、図16(a)に示す工程を行なう。ここでは、リブ形成用溝13を有する犠牲膜12を形成する。まず、下層絶縁膜9の全面を覆うように、例えばエッチング速度の速い燐珪酸ガラスからなる犠牲膜12を堆積して形成する。このとき、犠牲膜12の厚さは、エレクトレットコンデンサー2のエアギャップ14の厚さを決定するリブ10の高さと同じ厚さとする。この後、フォトリソグラフィとRIEとを利用して、犠牲膜12の外周付近に、下層絶縁膜9に達するリブ形成用溝13を形成する。
【0127】
リブ形成用溝13は、図14(a)に平面形状を示しているリブ10のように、エアギャップ14となる部分の犠牲膜12を不連続に囲むように形成する。不連続なリブ形成用溝13の隣接する部分同士に挟まれた領域12aには犠牲膜12が残されており、後の工程にて領域12aから犠牲膜12が除去されて側孔15となる。
【0128】
尚、犠牲膜12及びリブ形成用溝13の形成については、第1の実施形態において図4(a)及び(b)に示す工程にて説明したのと同様である。
【0129】
次に、図16(b)に示す工程を行なう。ここでは、第2貫通孔17を有する振動膜16を形成する。まず、犠牲膜12上に、シリコン窒化膜からなる振動膜16を所定の厚さに堆積する。この際、リブ形成用溝13に堆積されたシリコン窒化膜により、リブ10が形成される。リブ10中に外側に向かって伸びる領域12aの部分には、犠牲膜12の一部が存在する。
【0130】
次に、フォトリソグラフィとRIEとを利用して、リブ形成用溝13に囲まれた部分の犠牲膜12に、少なくとも1つの第2貫通孔17を形成する。振動膜16の成膜方法及びRIEについては、第1の実施形態において図2(a)及び(b)と、図3(a)及び(b)とに示す工程にて説明したのと同様である。
【0131】
続いて、図16(c)に示す工程を行なう。ここでは、振動膜16上に、第1接合膜24を形成する。まず、振動膜16上の全面に、例えばスパッタリング法により珪素膜を堆積する。次に、フォトリソグラフィとRIEとを用いて該珪素膜をパターン化し、リブ10に対応する部分とその付近に、第1接合膜24を設ける。RIEのための反応ガスとしては、SF6 ガスを用いてもよいし、C4 8 、CBrF3 、CF4 /O2 、Cl2 、SiCl4 /Cl2 、SF6 /N2 /Ar、BCl2 /Cl2 /Arのうちのいずれかを用いてもよい。
【0132】
尚、第1接合膜24を形成するために、スパッタリング法に代えて、SiH4 を成膜ガスとするCVD法を用いて珪素膜を成膜することもできる。また、珪素膜のパターン化は、RIEに代えてウェットエッチング法によって行なうこともできる。
【0133】
以上により、エレクトレットコンデンサー部31を形成するための第1半導体基板23を用いる工程が完了する。
【0134】
次に、台座部30を形成する工程について説明する。図17(a)及び(b)は、台座部30を形成するための工程を説明する図である。
【0135】
まず、図17(a)に示すように、第2半導体基板25の両面にシリコン酸化膜19を形成する。具体的な方法は、第1の実施形態において図5(a)及び(b)に示す工程にて説明したのと同様である。
【0136】
次に、図17(b)に示すように、第2接合膜26を形成する。これには、第2半導体基板25の一方の面におけるシリコン酸化膜19上に、金を材料としてスパッタリング法により所定の膜厚の膜を堆積した後、フォトリソグラフィとRIEとを利用してパターン化する。このとき、エレクトレットコンデンサー部31に形成した第1接合膜24と対応するパターンとする。RIE用の反応ガスとしては、ヨウ素系のガスを用いる。
【0137】
尚、金膜を形成するために、スパッタリング法に代えて、抵抗蒸着法を用いても良い。更には、電解メッキ法又は無電解メッキ法を持ち手も良い。また、金膜をパターニングするためには、RIEに代えて、ヨウ素系のエッチング液を用いるウェットエッチング法を利用しても良い。
【0138】
以上の工程により、台座部30を形成するための第2半導体基板25を用いる工程が完了する。
【0139】
次に、別々に形成した第1半導体基板23上の構造と第2半導体基板25上の構造とを接合することにより、エレクトレットコンデンサー2を製造する工程を説明する。図18(a)〜(e)は、この工程を示す断面図である。
【0140】
まず、図18(a)に示すように、第2半導体基板25上に形成された第2接合膜26と、第1半導体基板23の上方に形成された第1接合膜24とを対向させて位置合わせし、第1半導体基板23及び第2半導体基板25を挟持して固定する。次に、400℃から500℃の範囲に加熱しながら、第1半導体基板23及び第2半導体基板25の少なくとも一方に超音波振動を加える。これによって、第1接合膜24と第2接合膜26とを金−珪素合金による合金接合させて合金接合層27とすることができる。この後、徐冷して室温にすることにより、第1半導体基板23側の構造と第2半導体基板25側の構造とを接合することができる。
【0141】
次に、図18(b)に示す工程を行なう。ここでは、第2半導体基板25に台座開口22を開口すると共に、第1半導体基板23のを除去する。
【0142】
これには、第2半導体基板25の裏面のシリコン酸化膜19に、フォトリソグラフィとRIEとを用いて台座開口22を形成するためのエッチング用マスクパターン(図示省略)を形成する。次に、KOH液をエッチング液とするウェットエッチング法により、第2半導体基板25について、中央部に、表面(第1半導体基板23の側の面)のシリコン酸化膜19に達する台座開口22を形成すると共に、第1半導体基板23について、全て除去して表面保護膜4を露出させる。尚、エッチング液及びRIEについては、第1の実施形におけるの図11(a)及び(b)の工程にて説明したのと同様である。
【0143】
次に、図18(c)の工程を行なう。ここでは、台座21を形成する。
【0144】
このためには、台座開口22を形成するために設けたマスクパターンと、第2半導体基板25の台座開口22上に残る部分のシリコン酸化膜19と、第2半導体基板25の裏面における台座開口22の周囲の部分に残っているシリコン酸化膜19とを除去する。これには、HF系エッチング液に浸漬する方法を取っても良いし、RIEを使用しても良い。より詳しい方法は、第1の実施形におけるの図11(a)及び(b)の工程にて説明したのと同様である。
【0145】
次に、図18(d)の工程を行なう。ここでは、主にエアギャップ14と側孔15の形成を行なう。
【0146】
まず、フォトリソグラフィとRIEとを用いて、シリコン酸化膜からなる固定膜8に形成された孔よりも小さな孔として、下層絶縁膜9、上層絶縁膜7及び表面保護膜4を貫通して犠牲膜12に達する第1貫通孔11を形成する。また、第1電極6を露出させるように所定の部分の表面保護膜4を除去して、電極端子28を形成するための電極端子開口5を形成する。
【0147】
この後、B−HF(バッファードHF)又は他のHF系のエッチング液に浸漬しながらエッチング液に超音波振動を加えて液を揺動させることにより、固定膜8等を貫く第1貫通孔11と、振動膜16に設けられた第2貫通孔17とを通じてエッチング液を侵入させる。これにより、固定膜8と振動膜16との間の部分の犠牲膜12を除去してエアギャップ14を形成する。また、リブ10中に伸びた領域12aの部分の犠牲膜12を除去することにより、エアギャップ14からリブ10中を外側に向かって伸びる側孔15を形成する。
【0148】
尚、超音波振動を加えてエッチング液を揺動させることにより、エアギャップ14及び側孔15となる部分にエッチング液を十分に循環させる。これにより、エッチング速度のバラツキを低減することができる。また、温度を上昇させてエッチング液の粘度を下げることによっても、エッチング液の循環を良くすることができる。これらの方法は、併用することができる。
【0149】
また、表面保護膜4を貫通する第1貫通孔11及び電極端子開口5の形成のためのRIEについては、第1の実施形におけるの図12(a)及び(b)の工程にて説明したのと同様である。
【0150】
次に、図18(e)の工程を行なう。ここでは、固定膜8をエレクトレット膜とすると共に、第2電極18を形成する。
【0151】
まず、図18(d)に示す構造をコロナ放電又はプラズマ放電に晒すことにより、シリコン酸化膜からなる固定膜8に電荷を注入して電荷蓄積を行なう。これにより、固定膜8はエレクトレット膜となる。次に、台座21の裏面、台座開口22の側壁及び振動膜16の下面に、スパッタリング法によって金(Au)からなる導電膜を形成する。これにより、第2電極18が形成される。尚、導電膜は、抵抗加熱法によって形成しても良い。これにより、エレクトレットコンデンサー1の構造が得られる。
【0152】
この後、半導体基板20に設けられた複数のエレクトレットコンデンサー1を個片化する。このためには、ブレードダイシング、レーザーダイシング、ステルスダイシング等を行なえばよい。
【0153】
以上の工程により、図14(a)〜(c)に示した構造の本実施形態に係るエレクトレットコンデンサー2を製造することができる。既に説明した通り、既に説明した通り、側孔15により水分をトラップ又は除去することができるから、エレクトレットコンデンサー2は耐湿性、信頼性、製造歩留り、性能等に優れ、且つ小型化を実現することができる。
【0154】
また、台座部30とエレクトレットコンデンサー部31とを個別に形成して接合する製造方法であるため、一方に不良が発生した場合にも、容易に交換再生が可能である。
【0155】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係るエレクトレットコンデンサーについて説明する。図19(a)は、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1cの平面図であり、このXIXb-XIXb'線による断面が図19(b)に示されている。
【0156】
エレクトレットコンデンサー1cは、側孔15aが外部にまで通じていない点を除いて、第1の実施形態に係るエレクトレットコンデンサー1と同様の構造を有する。そこで、同様の点については、図19(a)〜(c)において図1(a)〜(c)と同様の符号を用いることにより詳しい説明を省略する。以下に、相違点を述べる。
【0157】
第1の実施形態のエレクトレットコンデンサー1において、図1(a)等に示す通り、リブ10の一部分同士に挟まれた側孔15はリブ10を貫通している。つまり、エアギャップ14からエレクトレットコンデンサー1の外部にまで通じている。これにより、エアギャップ14から外部に水分を排出すること、外部からエアギャップ14内に乾燥した空気を取り入れることが可能である。
【0158】
これに対し、本実施形態のエレクトレットコンデンサー1cの場合、図19(a)に示す通り、リブ10はエレクトレットコンデンサー1cの外周にまで達していない構造であり、その一部分同士に挟まれた側孔15aについても外周にまで貫通はしていない。エアギャップ14からリブ10中を外部に向かって伸びる側孔15aの先端は、除去されずに残されている犠牲膜12の一部によって塞がれている。
【0159】
このため、エアギャップ14の水分が側孔15aを通って外部に排出されることはない。しかし、エアギャップ14の水分を側孔15a内にトラップ(吸い込む)することは可能である。側孔15aが細い孔(毛細管)であることにより、毛細管機能によって水分をトラップする。これによって、振動膜16と固定膜8との貼り付きと、絶縁区間における表面抵抗の低下とを抑制し、水分による使用不能状態及び雑音の増加を抑制することができる。
【0160】
また、図19(c)には、エアギャップ14から伸びた側孔15aが曲がっている場合を示している。また、側孔15bの先に、面積の広がった水分蓄積部43を備えている様子を示している。水分蓄積部43は、より表面積を広くして水分をトラップしやすくするため、軽石のようなポーラス構造、ハニカム構造、うろこ状構造等になっていることも好ましい。
【0161】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係るシールド型のシールドケースを備えたECMについて説明する。図20(a)は、本実施形態のECM32を示す平面図であり、そのXXb-XXb'線による断面が図20(b)に示されている。
【0162】
本実施形態のECM32は、第1の実施形態に係るエレクトレットコンデンサー1と、半導体素子34と、受動電子部品35とが印刷配線基板33上に搭載され、シールドケース37によって覆われた構造を有する。
【0163】
印刷配線基板33は、半導体素子34、受動電子部品35及びエレクトレットコンデンサー1のそれぞれを搭載する各搭載領域と、各搭載領域間を電気的に接続する配線と、各搭載領域及び配線を囲むように周縁部に設けられたシールドケース接合領域38とを含む導体パターンを備える。各搭載領域に対し、受動電子部品35はハンダリフローにより接合され、半導体素子34は、熱硬化性又は熱可塑性であると共に、導電性又は絶縁性である樹脂接着剤により接着されている。更に、エレクトレットコンデンサー1は、所定の搭載領域に対し、熱硬化性又は熱可塑性であると共に導電性である樹脂接着剤により接着されている。
【0164】
また、エレクトレットコンデンサー1の電極端子28と、半導体素子34の電極端子との間、及び、エレクトレットコンデンサー1の電極端子28と、印刷配線基板33の電極端子との間が、それぞれ金属細線36によって接続されている。
【0165】
また、金属製であるか、又は、樹脂表面が金属被膜によって覆われた樹脂製であるシールドケース37の接合面と、印刷配線基板33のシールドケース接合領域38とがハンダリフローによって接合されている。
【0166】
尚、シールドケース37の上面には音孔40が設けられ、該音孔40上は耐熱面布44によって覆われている。
【0167】
このような構成とすることにより、小型軽量で特性の優れたECM32を得ることができる。
【0168】
尚、印刷配線基板33の材質は、例えば、ガラスエポキシ樹脂である。他には、アルミナセラミック、ポリイミド、珪素等のうちのいずれか一つであっても良い。また、シールドケース37と印刷配線基板33との接続抵抗は10mΩ以下とする。より好ましくは、5mΩ以下とするのがよい。
【0169】
また、本実施形態では、第1の実施形態のエレクトレットコンデンサー1を搭載するECM32を説明した。しかし、エレクトレットコンデンサー1に代えて、第2又は第3の実施形態に係るエレクトレットコンデンサー2又は1cを搭載するECMとすることも当然可能である。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の電子部品及びそれを用いた電子装置は、水分に起因した動作不良及び雑音の増加を抑制することができるため、耐湿性、性能に優れ且つ小型化が図れることから小型薄型で軽量の音響機器への適用に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1(a)は本発明の第1の実施形態にかかるエレクトレットコンデンサー1を示す平面図、図1(b)はIb-Ib'線に沿って切断した断面図、図1(c)はIc-Ic'線による拡大した断面図である。
【図2】図2(a)はエレクトレットコンデンサー1の製造方法において、半導体基板20の両面にシリコン酸化膜19を形成し、その上にシリコン窒化膜16aを形成した平面図、図2(b)はIIb-IIb'線による断面図である。
【図3】図3(a)は一方のシリコン窒化膜16aに第2貫通孔17を形成した平面図、図3(b)はIIIb-IIIb'線による断面図である。
【図4】図4(a)は第2貫通孔17を設けたシリコン窒化膜16a上に犠牲膜12を形成し、犠牲膜12にリブ形成用溝13を形成した平面図、図4(b)はIVb-IVb'線による断面図である。
【図5】図5(a)は半導体基板20の他方の面のシリコン窒化膜16aを取り除いた平面図、図5(b)はVb-Vb'線による断面図である。
【図6】図6(a)は犠牲膜12上に下層絶縁膜9、固定膜8及び上層絶縁膜7からなる積層膜を形成した平面図、図6(b)はVIb-VIb'線による断面図である。
【図7】図7(a)は積層膜に第1貫通孔11を形成した平面図、図7(b)VIIb-VIIb'線による断面図である。
【図8】図8(a)は上層絶縁膜7上に導電膜42を形成した平面図、図8(b)はVIIIb-VIIIb'線による断面図である。
【図9】図9(a)は導電膜42の一部を除去して第1電極6を形成した平面図、図9(b)はIXb-IXb'線による断面図である。
【図10】図10(a)は第1電極6と露出する上層絶縁膜7上に表面保護膜4を形成した平面図、図10(b)はXb-Xb'線による断面図である。
【図11】図11(a)は半導体基板20に下面側から台座開口22を形成し、その後に振動膜16裏面のシリコン酸化膜19を除去して台座21を形成した平面図、図10(b)はXIb-XIb'線による断面図である。
【図12】図12(a)は表面保護膜4に電極端子開口5と第1貫通孔11を形成し、その後エアギャップ14と側孔15を形成した平面図、図12(b)はXIIb-XIIb'線による断面図である。
【図13】図13(a)は放電中に放置して固定膜8中に電荷を注入し、その後第2電極18を形成した平面図、図13(b)はXIIIb-XIIIb'線による断面図である。
【図14】図14(a)は本発明の第2の実施形態のエレクトレットコンデンサー2の構成を示す平面図、図14(b)はXIVb-XIVb'線による断面図、図14(c)はXIVc-XIVc'線による拡大した断面図である。
【図15】図15(a)は第1半導体基板23の一方の面にレプリカ41を形成した断面、図15(b)はレプリカ41を覆う表面保護膜4を形成した断面、図15(c)は表面保護膜4上に導電体からなる第1電極6のパターンを形成した断面、図15(d)は第1電極6に上層絶縁膜7、固定膜8及び下層絶縁膜9の3層積層膜を形成した断面である。
【図16】図16(a)は、下層絶縁膜9上に、リブ形成用溝13を有する犠牲膜12を形成した断面図、図16(b)は犠牲膜12上に第2貫通孔17を有する振動膜16を形成した断面図、図16(c)は振動膜16上に珪素膜からなる第1接合金属膜24のパターンを形成した断面図である。
【図17】図17(a)は第2半導体基板25の両面にシリコン酸化膜19を形成した断面図、図17(b)はシリコン酸化膜19上に金膜からなる第2接合金属膜26を形成した断面図である。
【図18】図18(a)は第1半導体基板23を含む積層体と第2半導体基板25を含む積層体とを接合した状態の断面図、図18(b)は第2半導体基板25に台座開口22を形成し且つ1半導体基板23を除去した断面図、図18(c)は第2半導体基板25の裏面のマスクパターンと上面のシリコン酸化膜19を除去した断面図、図18(d)は表面保護膜4の第1貫通孔11の中央部の貫通孔と電極端子開口5を形成し、犠牲膜12を除去してエアギャップ14と側孔15を形成した断面図、図18(e)は放電中に放置して固定膜中に電荷を注入し、振動膜16と台座開口22の側面と裏面とに第2電極を形成した断面図である。
【図19】図19(a)は側孔15が外部に貫通していない第3の実施形態に係るエレクトレットコンデンサー1aの構成を示す平面図、図19(b)はXIXb-XIXb'線による断面図、図19(c)は側孔15が外部に貫通していない変形例の平面図である。
【図20】図20(a)は本発明の第4の実施形態にかかるシールドケースを備えたECMの構成を示すシールドケースを除去した平面図、図(b)はXXb-XXb'線による断面図である。
【符号の説明】
【0172】
1 エレクトレットコンデンサー
1c エレクトレットコンデンサー
2 エレクトレットコンデンサー
4 表面保護膜
5 電極端子開口
6 第1電極
7 上層絶縁膜
8 固定膜
9 下層絶縁膜
10 リブ
11 第1貫通孔
12 犠牲膜
12a (リブ形成用溝の一部分同士に挟まれた)領域
13 リブ形成用溝
14 エアギャップ
15 側孔
15a 側孔
15b 側孔
16 振動膜
16a シリコン窒化膜
17 第2貫通孔
18 第2電極
19 シリコン酸化膜
20 半導体基板
21 台座
22 台座開口
23 第1半導体基板
24 第1接合膜
25 第2半導体基板
26 第2接合膜
27 合金接合層
28 電極端子
30 台座部
31 エレクトレットコンデンサー部
32 ECM
33 印刷配線基板
34 半導体素子
35 受動電子部品
36 金属細線
37 シールドケース
38 シールドケース接合領域
40 音孔
41 レプリカ
42 導電膜
43 水分蓄積部
44 耐熱面布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定膜と、
前記固定膜に対向する振動膜と、
前記固定膜に設けられ、少なくとも1つの第1貫通孔を有する第1電極と、
前記振動膜における前記第1電極と重なる位置に設けられ、少なくとも1つの第2貫通孔を有する第2電極と、
前記固定膜と前記振動膜との間にリブに囲まれるように構成され、前記第1貫通孔及び前記第2貫通孔にそれぞれ通じているエアギャップと、
前記エアギャップを囲む前記リブ中に設けられ、前記エアギャップに通じている少なくとも1つの側孔とを備えることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1貫通孔は前記第1電極の中央部に設けられ、
前記第2貫通孔は前記第2電極の周縁部に設けられていることを特徴とする電子部品。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記少なくとも1つの側孔は、前記リブを貫通しているものを含むことを特徴とする電子部品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つにおいて、
前記少なくとも1つの側孔は、曲がった形状を有しているものを含むことを特徴とする電子部品。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つにおいて、
前記少なくとも1つの側孔の厚さは、前記エアギャップの厚さと同じであることを特徴とする電子部品。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つにおいて、
開口を有する基板からなる台座を更に備え、
前記振動膜の一部に設けられた第1接合金属膜と、前記台座に設けられた第2接合金属膜とが接続されていることを特徴とする電子部品。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一つにおいて、
電子部品は、センサースイッチ又はエレクトレットコンデンサーマイクロホンであることを特徴とする。
【請求項8】
固定膜と振動膜とによって犠牲膜が挟まれ且つ前記犠牲膜がリブに囲まれた構造を含む積層体を形成する工程と、
前記積層体から前記犠牲膜を除去することにより、前記固定膜と前記振動膜とに挟まれ且つ前記リブに囲まれたエアギャップを形成する工程とを含み、
前記積層体を形成する工程において、前記犠牲膜の一部が前記リブ中に伸びた構造とすることにより、前記犠牲膜を除去する工程において、前記エアギャップに加え、前記エアギャップから前記リブ中に伸びる少なくとも1つの側孔を設けることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、
前記積層体を形成する工程は、
半導体基板上に、少なくとも1つの振動膜貫通孔を有する振動膜を形成する工程(a)と、
前記振動膜上に、前記振動膜貫通孔が形成された領域を囲み且つ前記振動膜に達する深さのリブ形成用溝を有する犠牲膜を形成する工程(b)と、
前記犠牲膜上に、少なくとも1つの固定膜貫通孔を有する固定膜を形成すると共に、前記リブ形成用溝にリブを形成する工程(c)と、
前記固定膜のうちの前記固定膜貫通孔及びその周囲上を除く部分の上に、導電膜からなる第1電極を形成した後、前記第1電極上を覆う表面保護膜を形成する工程(d)と、
前記工程(d)の後、前記半導体基板の中央部に、前記振動膜の裏面に達する開口を設けることにより台座を形成する工程(e)とを含み、
前記工程(e)の後、前記エアギャップを形成する工程を行ない、
前記エアギャップを形成する工程の後、少なくとも前記振動膜の前記台座側の面に、導電膜からなる第2電極を形成する工程を更に備え、
前記工程(b)において、前記リブ形成用溝に囲まれる前記犠牲膜の一部が前記リブ形成用溝中に伸びるように前記犠牲膜を形成することにより、前記工程(c)において、前記リブに囲まれた前記犠牲膜の一部がリブ中に伸びた構造を得ることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項10】
請求項8において、
前記積層体を形成する工程は、
第1半導体基板の一方の面上に表面保護膜を形成した後、前記表面保護膜上に導電膜からなる第1電極を形成する工程(f)と、
前記表面保護膜上に、前記第1電極を覆うように、少なくとも1つの固定膜貫通孔を有する固定膜を形成する工程(g)と、
前記固定膜上に、前記固定膜貫通孔が形成された領域を囲み且つ前記固定膜に達する深さのリブ形成用溝を有する犠牲膜を形成する工程(h)と、
前記犠牲膜上に、少なくとも1つの振動膜貫通孔を有する振動膜を形成すると共に、前記リブ形成用溝にリブを形成する工程(i)と、
前記振動膜上に、前記リブの上方において、第1接合金属膜を形成する工程(j)と、
前記第1半導体基板とは別の第2半導体基板上に酸化膜を形成した後、前記酸化膜上に、前記第1接合金属膜と対応するように第2接合金属膜を形成する工程(k)と、
前記第1接合金属膜と、前記第2接合金属膜とを対向するように位置合わせし、合金化させることにより前記第1半導体基板と前記第2半導体基板とを接合する工程(l)と、
前記第2半導体基板の中央部に開口を設けることにより台座を形成する工程(m)とを含み、
前記工程(m)の後、前記エアギャップを形成する工程を行ない、
前記エアギャップを形成する工程の後、少なくとも前記振動膜の前記台座側の面に、導電膜からなる第2電極を形成する工程を更に備え、
前記工程(h)において、前記リブ形成用溝に囲まれる前記犠牲膜の一部が前記リブ形成用溝中に伸びるように形成することにより、前記工程(i)において、前記リブに囲まれた前記犠牲膜の一部がリブ中に伸びた構造を得ることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項11】
請求項9又は10において、
前記第2電極は、前記振動膜の前記台座側の面に加えて、前記台座の開口の側壁及び前記台座の下面にも形成することを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10において、
前記エアギャップを形成する工程は、ウェットエッチングを利用して行ない、
前記ウェットエッチングに用いるエッチング液を加温して粘度低下させることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記エッチング液に超音波振動を加えることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項14】
請求項1に記載の電子部品と、
少なくとも1つの半導体素子と、
少なくとも1つの受動電子部品と、
2つの搭載領域を有し、前記二つの搭載領域の一方には前記電子部品、前記半導体素子及び前記受動電子部品が搭載され、前記2つの搭載領域の他方には外部接続端子を備える配線基板と、
前記電子部品の電極端子と、前記配線基板の接続端子及び前記半導体素子の電極端子とを接続する金属細線と、
前記電子部品、前記半導体素子、前記受動電子部品及び前記金属細線を覆うように、前記配線基板上に取り付けられたシールドケースとを備えることを特徴とする電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−38732(P2009−38732A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203085(P2007−203085)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】