説明

電子部品のメッキ装置

【課題】メッキ厚のばらつきの小さいメッキ処理ができる電子部品のメッキ装置を提供する。
【解決手段】短冊状に破断した長尺基板Sa,Sbを縦列状態に連続してメッキ槽34に投入する際に、一方電極にメッキ電流を供給するメッキ槽34の入口側ローラR1,R2への電流を出口側のローラR3,R4への電流よりも大きくする。このようにすることで、ローラR1,R2,R3,R4に供給されるメッキ電流がメッキ槽34の入口側と出口側のローラ間でバランスがとれ、連続する長尺基板Sa,Sbの表面電極と陽極電極間で生じるメッキ電流のばらつきを無くしメッキ膜厚のばらつきを抑えることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品素子が形成され側面に金属膜が形成された長尺基板にメッキを施す電子部品のメッキ装置に関し、例えば、チップ形電子部品の電極等にメッキを施すことが可能な電子部品のメッキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
チップ形抵抗器、チップ形コンデンサ、チップ形インダクタ等の小型電子部品は、回路基板上にハンダ付けする際のハンダ付け性能の向上や電気的導通を確保するため、それら小型電子部品の外部電極にメッキが施されている。
【0003】
これらの外部電極にメッキを施す装置には、従来よりバレル法(バレルメッキ法)が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。バレル法は、チップ状に分割した小型電子部品をダミーボールとともに筒状のバレル内に投入し、メッキ液が満たされたメッキ槽内でバレルを回転させながら小型電子部品に電気メッキを施す方法である。
一方、帯状の可撓性長尺基板にメッキを施して配線基板を製造するための装置として、例えば、特許文献2に記載の技術が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−260611号公報
【特許文献2】特開2003−321796号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したバレル法は、一度に多数の小型電子部品にメッキ処理できるが、小型電子部品どうしが互いに重なり合う可能性があり、重なり合いの結果生じる不良品の発生が避けられない。
【0006】
また、通電媒体としての大量のダミーボールが必要となるため設備が大型化し、バレルを回転させるためのエネルギー消費が大きい上、廃液も多いという問題がある。
【0007】
さらに、ダミーボールにもメッキが付着し、メッキの付着によって規格サイズを外れたダミーボールは廃棄することになるため、その分のメッキ材料が無駄となるという問題もある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、ダミーボールを使用しない小型の装置によりメッキ厚のばらつきの小さいメッキ処理が可能な電子部品のメッキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成し、上述した課題を解決する一手段として、例えば、以下の構成を備える。すなわち、電子部品素子が形成され側面に金属膜が形成された長尺基板にメッキを施す電子部品のメッキ装置であって、内部に電極が配設されたメッキ槽と、前記メッキ槽の前記長尺基板搬入口近傍に配設され前記金属膜に接触可能な第1の接触電極と、前記メッキ槽の前記長尺基板搬出口近傍に配設され前記金属膜に接触可能な第2の接触電極と、前記メッキ槽内の電極にプラス電位を印加可能であるとともに前記第1の接触電極と第2の接触電極とにマイナス電位を印加可能な電源と、前記金属膜を前記第1の接触電極に接触させつつ前記長尺基板を前記メッキ槽内に搬送すると共に前記金属膜を前記第2の接触電極に接触させつつメッキ槽外に搬送する搬送手段とを備え、前記電源は、前記第1の接触電極への供給電流が前記第2の接触電極への供給電流よりも大きくなるように供給することを特徴とする。
【0010】
そして例えば、前記搬送手段は、第1の接触電極と第2の接触電極に前記金属膜を接触させながら複数の前記長尺基板を縦列状態に連続して前記メッキ槽を通過させることを特徴とする。
【0011】
また例えば、前記第1の接触電極と第2の接触電極は、それぞれ所定間隔離間した1対の電極からなり、前記搬送手段は、前記接触電極間を前記長尺基板両側面の前記金属膜が接触した状態で搬送することを特徴とする。
【0012】
さらに例えば、前記メッキ槽内の電極は、前記長尺基板をはさむ様に2つ備えられ、前記電源は、前記長尺基板の両側面のそれぞれの金属膜に対応するよう2系統に分けて各側面毎に備えることを特徴とする。
【0013】
また例えば、前記長尺基板は、当該電子部品をチップ状に個片化する前の短冊状態の基板であることを特徴とする。あるいは、前記長尺基板は、セラミック製の基板であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、連続する長尺基板間で生じるメッキ膜厚のばらつきを抑えるとともに、小型の装置で電子部品へのメッキ処理を効率的に行うことができる電子部品のメッキ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る一実施の形態例を詳細に説明する。最初に図1乃至図8を参照して、本実施の形態例に係るメッキ装置におけるメッキ対象としてのチップ形電子部品(長尺基板ともいう。)の製造方法について説明する。図1乃至図8は、本発明に係る一実施の形態例に係るメッキ装置におけるメッキ対象であるチップ形電子部品(長尺基板)の製造方法を説明するための図である。
【0016】
まず、図1に示すチップ形電子部品の基板となる大判の平面基板を用意する。図1は、後述する電極形成や抵抗体の印刷を行うための大判の平面基板10の例であり、例えば、酸化アルミニウム(Al23)と、二酸化ケイ素(SiO2)等からなるガラス材料との混合物からなる所定厚のガラス・セラミック基板(セラミック基板)である。
【0017】
続いて図1に示す平板基板10の表面と裏面それぞれに、1次ブレイク用の溝11と2次ブレイク用の溝13を形成する。1次ブレイク用の溝11と2次ブレイク用の溝13を形成した基板の例を図2に示す。
【0018】
次に、ブレイク用の溝11,13が形成された平板基板10の表面と裏面とに電極を形成する。電極は、平板基板10の表面と裏面にそれぞれ整然と規則正しく形成される、平板基板10の表面に表面電極15を形成した状態を図3に示す。また、平板基板10の裏面に電極(裏面電極)17を形成した状態を図4に示す。
本実施の形態例では、例えば、平板基板10上にガラスフリット入り銀電極素材を例えば図3及び図4に示すパターン様に印刷し、その後焼成して表面電極及び裏面電極を形成する。
【0019】
次に、図3に示す表面電極15のそれぞれの間に、所定の成分(例えば、酸化ルテニウム系等)からなる抵抗体21をスクリーン印刷し、その後焼成する。抵抗体21をスクリーン印刷し、焼成した状態を図5に示す。
【0020】
次に、これら焼成した抵抗体21を覆うように、例えば、スクリーン印刷等によって絶縁膜としても機能を有する保護膜(ガラス保護コート)を印刷し、その後焼成する。
【0021】
その後、例えば、レーザトリミングによって抵抗体21のパターンに切れ込みを入れて抵抗値のトリミング(抵抗値調整)を行う。具体的には、抵抗体21の抵抗値をその両端の2つの電極間で測定し、その値をもとに抵抗体21に対してレーザー等により切れ込みを入れることで抵抗値のトリミングを行ない、所望の抵抗値の抵抗体となる様に調整する。
【0022】
次に、保護膜(ガラス保護コート)が形成され、抵抗値が調整された抵抗体の上に、絶縁膜として機能する、例えば、エポキシ樹脂からなる保護膜23を形成する。保護膜23が形成された状態を図6に示す。
【0023】
次に、上述したブレイク用の溝11を分割ラインとする1次ブレイクを行い、基板10を短冊状に破断(分割)する。基板10を短冊状に破断(分割)した状態を図7に示す。分断された短冊状の基板を長尺基板という。
【0024】
チップ形電子部品においては、表面電極と裏面電極とを電気的に接続する必要がある。そのため、基板の表面電極と裏面電極間を電気的に接続するために側面に外部電極(側面電極)を形成する。
【0025】
側面に電極を形成するために、例えば、長尺基板の破断面(両側面)を露出させ、それら両側面に例えば、スパッタリングなどにより導電性金属、例えばニッケル−クロム(Ni/Cr)の薄膜27を形成する。この長尺基板に側面電極を形成した状態を図8に示す。
【0026】
このようにして本実施の形態例のメッキ装置によりメッキ(電解メッキ)を行う前の、側面に電極27が形成された長尺基板が製造される。
次に、このようにして製造された長尺基板の電極表面にメッキを施す本実施の形態例の電子部品のメッキ装置について説明する。
【0027】
以下、本実施の形態例に係る電子部品のメッキ装置およびメッキ処理工程を図9を参照して詳細に説明する。図9は、本実施の形態例に係るメッキ装置の全体構成を模式的に示す図であり、図9に(a)で示すのは本実施の形態例に係るメッキ装置の平面図、図9に(b)で示すのは、本実施の形態例に係るメッキ装置の側面図である。
【0028】
本実施の形態例のメッキ装置30は、複数のメッキ槽34,36と洗浄槽33,35,37を交互に縦列配置し、それらの槽の中を順次、メッキ対象である長尺基板を縦列状態で連続して投入搬送し、通過させることで連続メッキ処理可能な構成を備えている。
【0029】
図9において、31は長尺基板の押出し機構であり、メッキ対象の長尺基板をメッキ装置30側へ押し出すためのもので、その長手方向に往復動作する押出部32を備える。押出部32は、メッキを開始する際に図9の左端部側に鎖線で示す位置に後退する。この状態で、所定の位置に載置されているメッキ処理前の長尺基板28の一つが、後退前の押出部32の位置(図の実線の位置)に搬送位置決めされる。
【0030】
メッキ槽34,36の入口側と出口側には、それぞれ1対のローラが配設されている。具体的には、メッキ槽34の入口側にはローラR1,R2が、出口側にはローラR3,R4が配され、メッキ槽36の入口側にはローラR5,R6が、出口側にはローラR7,R8が配設されている。
【0031】
これらのローラは、導電性材料で形成されたローラであり、長尺基板の側面電極に接触してメッキ槽への長尺基板の搬入と搬出を支持・補助するとともに、接触している長尺基板の側面電極に所定の電圧(マイナス電圧)を印加するための接触電極としての機能を有する。
【0032】
メッキ対象の長尺基板を所定位置に位置決めした後、押出部32が鎖線で示す位置から実線で示す位置へ移動することで、位置決めされた長尺基板は洗浄槽33に向けて押し出され、先端部分は洗浄槽33を抜けてローラR1,R2間に移動してくる。
【0033】
この洗浄槽33には、長尺基板表面に付着している不純物を除去するための酸(例えば、硫酸)や水等が貯留されており、次工程のメッキ処理の前段階として長尺基板に付着した汚れ等を洗浄し、洗い流す様に構成されている。前処理の仕様により洗浄槽33内の洗浄液は適宜最適なものを選択すればよい。なお、メッキ対象の長尺基板の表面状態が清浄な状態である場合などメッキ不良を生じない状態である場合などには、洗浄槽33を設けない構成にしてもよい。
【0034】
先端部分が洗浄槽33を抜けてローラR1,R2間に移動してくる。以後は、押出し機構31により押出された長尺基板によって、基板S4〜S1が一連となって順次押されることで、メッキ工程内を搬送させる。なお、ローラ(R1,R2等)をモータ等で駆動させ、長尺基板をローラの回転により搬送させるようにしてもよい。
【0035】
押出し機構31は長尺基板28をローラR1,R2間に搬送すると、再び図9の左端部の鎖線位置に戻り、次のメッキ対象となる新たな長尺基板が32の鎖線位置に搬送位置決めされてくる。
【0036】
このとき、即ち、押出部32が後退し、新たな長尺基板が位置決めされ、長尺基板の押出しを開始するまでの間は、電源からのメッキ電流の供給を停止することが望ましい。このようにすることで、メッキ槽内の長尺基板へのメッキ厚のバラツキを抑えることができる。
【0037】
そして新たな長尺基板が押出部32により洗浄槽33側へ送られる。このようにして順次新たな長尺基板が洗浄槽33からローラR1,R2に押し出し搬送されることになる。
【0038】
洗浄槽33を通過した長尺基板は、ローラR1,R2の回転に伴いニッケル(Ni)メッキ槽34内を経てローラR3,R4間に搬送される。ニッケルメッキ槽34は、上面が開口したメッキ槽であり、メッキする金属であるニッケルを含有するメッキ液が貯留されている。
【0039】
また、このニッケルメッキ層34内の長尺基板の側面にあたる両側面近傍には、所定間隔離間して配設された一対の陽極電極(アノード)41a,41bが浸漬配置されている。
【0040】
陽極電極(アノード)41a,41bは後述する電源のプラス側に接続される。後述する電源のマイナス側をローラR1,R2,R3,R4に接続することにより、陽極電極(アノード)41a,41bと、カソード(陰極)としてのローラR1,R2,R3,R4に電気的に接続された長尺基板28の側面電極との間に電位差が生じ、陽極電極41a,41b間を通過する長尺基板の電極に対して電解メッキ(ニッケルメッキ)を行う。
【0041】
ニッケルメッキ槽34を通過した長尺基板は、後続の長尺基板に押されて、水などの洗浄液が貯留された洗浄槽35内に搬送される。洗浄槽35では、ニッケルメッキを施した長尺基板から、残留しているメッキ液等を除去する。
【0042】
次に、洗浄槽35でメッキ液が除去された長尺基板は、ローラR5,R6間ににまで搬送されると、後続の長尺基板に押されて、さらにスズ(Sn)メッキ槽36内にからローラR7,R8間に搬送されスズメッキ槽36を通過する(図9の基板S2,S1を参照)。
【0043】
このスズメッキ槽36は、ニッケルメッキ槽34と同様、上面が開口したメッキ槽であり、メッキする金属であるスズを含有するメッキ液が貯留されている。また、ニッケルメッキ槽34と同様に槽内のスズメッキ液には、電源のプラス側に接続される所定間隔離間して配設された一対の陽極電極(アノード)43a,43bが対向して浸漬配置されている。
【0044】
スズメッキ槽36の入口側近傍には少なくとも表面が導電材料で形成されたローラR5,R6が、また出口側には同じくローラR7,R8が配設されており、これらのローラを電源のマイナス側に接続することにより、陽極電極(アノード)43a,43b間を搬送される、カソード(陰極)として機能するローラR5,R6,R7,R8に接触している長尺基板電極との間に電位差が生じ長尺基板表面の電極に対して電解メッキを施すことができる。
【0045】
スズメッキ槽36を通過した長尺基板は、ローラR7,R8に到達し、次に、水等の洗浄液が貯留された洗浄槽37へ送られる(図9の基板S1を参照)。この洗浄槽37は、スズメッキを施した長尺基板から、残留しているメッキ液を除去するためのものである。その後、長尺基板は不図示の乾燥工程を経て、2次ブレイク工程へと進む。
【0046】
なお、ニッケルメッキ槽34とスズメッキ槽36それぞれの下部には、メッキ槽から溢れたメッキ液を回収するための回収槽38,39が配設されており、ここで回収されたメッキ液は、再び各メッキ槽34,36へと還元される様に制御する不図示のメッキ液循環機構が設けられている。
【0047】
次に、図10を参照して本実施の形態例に係るメッキ装置におけるメッキ槽でのメッキ電流の調整部の詳細構成を説明する。図10は本実施の形態例メッキ装置のメッキ電流調整部の詳細を説明するための図である。
【0048】
以下の説明はニッケルメッキ槽34を例に説明するが、スズメッキ槽36においても同様構成を備えており、同様にしてメッキ電流の制御を行っている。なお、図10において、図9に示す構成と同一構成には同一符号を付してある。
【0049】
ニッケルメッキ槽34に貯留されたニッケルメッキ液には、一対の陽極電極(アノード)41a,41bが浸漬されており、陽極電極41aには電源A51のプラス電位が、陽極電極41bには電源B53のプラス電位がそれぞれ印加されている。
【0050】
また、ローラR1には電源A51のマイナス電位が、ローラR2には電源B53のマイナス電位がそれぞれ印加されている。ローラR3は、電流バランスをとるための抵抗器55を介して電源A51のマイナス電位側に接続され、同様にローラR4は、抵抗器57を介して電源B53のマイナス電位側に接続されている。
【0051】
ここで、これらのローラR1,R2,R3,R4に対して抵抗器を介在させない場合、すなわち、電流バランスをとらずにメッキ処理をした場合について説明する。
【0052】
例えば、図11の(a)に示すように、ローラR1,R2に挟まれた状態で長尺基板Saがメッキ槽34内に搬送されると、長尺基板の表面電極には、接触状態のローラR1,R2からの通電により、長尺基板Saのうちメッキ槽34に侵入した部分(側面電極部分)にメッキが施される。
【0053】
そして、この長尺基板Saに続く長尺基板Sbにより長尺基板Saがメッキ槽の出口方向へ押し出され、図11の(b)に示すように長尺基板Sbがメッキ槽34に侵入してきた状態では、長尺基板Sbに対するメッキ形成はそれほど進行していない。そのため、その側面金属膜の抵抗値が高く、メッキされにくい。
【0054】
一方、長尺基板Saには既にメッキが形成されているため、側面金属膜の抵抗値が低く、メッキされ易い。このことは、ニッケルメッキ槽34に長尺基板Saに続けて長尺基板Sbを投入したことで、ニッケルメッキ槽の入口側のローラR1,R2と、出口側のローラR3,R4とで電流バランスがくずれ、長尺基板Saに偏重してメッキ処理が進行することを意味している。
【0055】
そのため、長尺基板Saのメッキ厚の分布は、その基板のうち先にメッキ槽に投入された側(前端)よりも、後端側のメッキが厚くなる。また、左右の膜厚にもばらつきが生じる、という問題が発生する。
【0056】
そこで、本実施の形態例のメッキ装置では、図10に示すように電源A51および電源B53それぞれのマイナス側電源とニッケルメッキ槽34の出口側のローラR3,R4との間に抵抗器55,57を介在させることで、ニッケルメッキ槽34の入口側のローラR1,R2への電流(Iaとする。)が、出口側のローラR3,R4への電流(Ibとする。)よりも大きくなるように制御している。
【0057】
このようにしてメッキ対象に供給するメッキ電流が(Ia>Ib)となる様に制御し、入口側と出口側の長尺基板電極と陽極電極との間のメッキ電流がほぼ同じ電流値となる様に抵抗値を適切な値とすることにより、電流バランスがとれ、長尺基板Sa,Sb間で生じるメッキ膜厚のばらつきを抑えることが可能となる。
【0058】
さらには、図10に示すように、メッキ対象である長尺基板Sa,Sbの左右の側面金属膜ごとに電源系統を分ける(それぞれ独立した電源を設ける。)ことにより、各電極間のメッキ電流のばらつきを解消することが可能となり、メッキ槽を通過する長尺基板の側面電極膜としてのメッキ膜厚にばらつきが生じるのを抑制することができる。この抵抗値は、実験により選択しても、不図示の電極間に流れるメッキ電流を測定して所望の電流値となる様に抵抗値を制御する構成を備えてもよい。
【0059】
以上の工程によりメッキ処理された長尺基板は、その後2次ブレイク工程により個片化したチップ状電子部品となる。2次ブレイク工程により個片化したチップ状電子部品(以上の説明の例では抵抗器)の断面構成を図12に示す。
【0060】
図12において基体61は平面基板10を分割したセラミックス基板部分である。基体61の表面(上面)の両端部には、図3に示す上電極(表面電極)15が形成されている。同様に、基板裏面(下面)の端部には、図4に示す下電極(裏面電極)17が形成されている。
【0061】
基体61表面の上電極15間には図5に示す抵抗体21がスクリーン印刷等で形成されて焼成されて抵抗層が形成されている。抵抗体層21と上電極15とは電気的に接続状態となっている。
【0062】
抵抗体(抵抗層)21は、ガラスコート63で覆われ、さらにその上に絶縁膜として機能する図6に示す保護膜23が形成されている。基体61の各端部側面には、上電極15と下電極17とを電気的に接続するため、これらの電極間に図8に示す端部電極としてのニッケル−クロム(Ni-Cr)膜27が、例えば、スパッタリングにより形成されている。
【0063】
さらに、上電極71と下電極72、および端部電極(Ni-Cr膜)27を覆うように、本実施の形態例メッキ装置によりメッキされたニッケルメッキ層67、その上にスズメッキ層68がそれぞれ形成されている。
【0064】
以上説明したように、短冊状に破断してなる長尺基板を縦列状態に連続してメッキ槽に投入する際、メッキ槽の入口側ローラへの電流を出口側のローラへの電流よりも大きくして、ローラに供給されるメッキ電流について入口側と出口側のローラ間でバランスをとることにより、連続する長尺基板間で生じるメッキ膜厚のばらつきを抑えることができる。それと同時にダミーボールが不要となるため、装置の小型化や省エネルギー化が可能となる。
【0065】
また、メッキ対象のメッキしたい部分を特定して、すなわち、上記実施の形態例では長尺基板の側面電極部分にのみメッキを施すことができるので、メッキ液の無駄を排するとともに、廃液や排水量を少なくすることができる。
【0066】
なお、上述した実施の形態例では、電流調整に抵抗を使用しているが、それに限定されず、同一の目的を達成できれば、抵抗以外の素子を使用してもよい。
また、上記の例では、長尺基板の左右の側面金属膜ごとに電源系統を分けているが、これに限定されず、入口側ローラへの電流Iaと出口側ローラへの電流IbとがIa>Ibの関係を満たす限り、例えば、各ローラ別々に4個の電源を配する(4系統とする。)ことで、各ローラへのメッキ電流を調整するようにしてもよい。
【0067】
一方、単一の電源からの電流系統を制御可能なコントローラを用意して、その単一の電源から各ローラへのメッキ電流を調整するようにしてもよい。また、メッキ対象はチップ形の抵抗器に限定されず、例えば、チップ形インダクタ、チップ形コンデンサ、これらの複合部品、多連抵抗器等、電極端子を有する電子部品にも適用できる。
【0068】
以上説明した様に本実施の形態例によれば、短冊状に破断した長尺基板Sa,Sbを縦列状態に連続してメッキ槽34に投入する際に、一方電極にメッキ電流を供給するメッキ槽34の入口側ローラR1,R2への電流を出口側のローラR3,R4への電流よりも大きくすることで、メッキ槽への長尺基板の入口側電極の電流を長尺基板の出口側電極の電流よりも大きくして、入口側と出口側の電極間で電流バランスをとることにより、連続する長尺基板Sa,Sbの表面電極と陽極電極間で生じるメッキ電流のばらつきを無くしメッキ膜厚のばらつきを抑えることが可能となる。小型の装置で電子部品へのメッキ処理を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る一発明の実施の形態例に係るメッキ装置におけるメッキ対象であるチップ形電子部品(長尺基板)の電極形成や抵抗体の印刷を行うための大判の平面基板の例を示す図である。
【図2】本実施の形態例の表面と裏面それぞれに1次ブレイク用の溝と2次ブレイク用の溝を形成した平面基板の例を示す図である。
【図3】本実施の形態例の平面基板に表面電極を形成した状態例を示す図である。
【図4】本実施の形態例の平面基板に裏面電極を形成した状態例を示す図である。
【0070】
【図5】本実施の形態例の平面基板の表面電極間に抵抗体を形成した状態を示す図である。
【図6】本実施の形態例の平面基板の表面の抵抗体上部に保護膜を形成した状態を示す図である。
【図7】本実施の形態例の平面基板を短冊状に破断(分割)した状態を示す図である。
【図8】本実施の形態例の長尺基板に側面電極を形成した状態を示す図である。
【図9】本実施の形態例に係るメッキ装置の全体構成を模式的に示す図である。
【0071】
【図10】本実施の形態例に係るメッキ装置のメッキ槽におけるメッキ電流の調整構成を示す図である。
【図11】電流バランスをとらないメッキ処理について説明するための図である。
【図12】本実施の形態例に係る装置でメッキ処理された長尺基板を2次ブレイク工程により個片化したチップ状電子部品の断面構成を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
R1〜R8 ローラ
10 平面基板
11,13 ブレイク用溝
15 表面電極(上電極)
17 裏面電極(下電極)
21 抵抗体層
23 保護膜
25,28,S1〜S4,Sa,Sb 長尺基板
27 ニッケル−クロム膜
30 メッキ装置
31 長尺基板の押出し機構
32 押出部
33,35,37 洗浄槽
34 ニッケルメッキ槽
36 スズメッキ槽
38,39 回収槽
41a,41b,43a,43b 陽極(アノード)電極
51 電源A
53 電源B
55,57 抵抗器
61 基体
63 ガラスコート
67 ニッケルメッキ層
68 スズメッキ層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品素子が形成され側面に金属膜が形成された長尺基板にメッキを施す電子部品のメッキ装置であって、
内部に電極が配設されたメッキ槽と、
前記メッキ槽の前記長尺基板搬入口近傍に配設され前記金属膜に接触可能な第1の接触電極と、
前記メッキ槽の前記長尺基板搬出口近傍に配設され前記金属膜に接触可能な第2の接触電極と、
前記メッキ槽内の電極にプラス電位を印加可能であるとともに前記第1の接触電極と第2の接触電極とにマイナス電位を印加可能な電源と、
前記金属膜を前記第1の接触電極に接触させつつ前記長尺基板を前記メッキ槽内に搬送すると共に前記金属膜を前記第2の接触電極に接触させつつメッキ槽外に搬送する搬送手段とを備え、
前記電源は、前記第1の接触電極への供給電流が前記第2の接触電極への供給電流よりも大きくなるように供給することを特徴とする電子部品のメッキ装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、第1の接触電極と第2の接触電極に前記金属膜を接触させながら複数の前記長尺基板を縦列状態に連続して前記メッキ槽を通過させることを特徴とする請求項1に記載の電子部品のメッキ装置。
【請求項3】
前記第1の接触電極と第2の接触電極は、それぞれ所定間隔離間した1対の電極からなり、
前記搬送手段は、前記接触電極間を前記長尺基板両側面の前記金属膜が接触した状態で搬送することを特徴とする請求項1に記載の電子部品のメッキ装置。
【請求項4】
前記メッキ槽内の電極は、前記長尺基板をはさむ様に2つ備えられ、
前記電源は、前記長尺基板の両側面のそれぞれの金属膜に対応するよう2系統に分けて各側面毎に備えることを特徴とする請求項3に記載の電子部品のメッキ装置。
【請求項5】
前記長尺基板は、当該電子部品をチップ状に個片化する前の短冊状態の基板であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子部品のメッキ装置。
【請求項6】
前記長尺基板は、セラミック製の基板であることを特徴とする請求項5に記載の電子部品のメッキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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