説明

電子部品の実装装置及び実装方法

【課題】この発明はテープ状部材を搬送するクランパによる最大搬送ピッチよりも大きなピッチで電子部品を能率よく実装する実装装置を提供することにある。
【解決手段】キヤリア部材を搬送するクランパ31,35によって搬送されるキヤリア部材に電子部品を実装する実装部1と、キヤリア部材に電子部品を実装するときにクランパの駆動を制御する制御装置50を具備し、キヤリア部材にクランパの最大送りピッチよりも大きなピッチで電子部品を実装するとき、実装ピッチをP1、搬送手段によるキヤリア部材の最大送りピッチをP2、実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さをSとすると、制御装置は、クランパを初期位置から不足長さS或いは最大送りピッチP2のいずれかの距離で駆動してキヤリア部材を搬送させてから、クランパを不足長さS分だけ戻し、ついでキヤリア部材の最初からの搬送距離が実装ピッチP1と同じになるようキヤリア部材をクランパによって搬送させてからクランパを初期位置に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は樹脂や金属で作られた所定長さのキヤリア部材に電子部品を実装する電子部品の実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記キヤリア部材に電子部品を実装する場合、キヤリア部材はガイドレールに沿って移動可能に支持される。ガイドレールに支持されたキヤリア部材は搬送手段によって所定のピッチずつ搬送し、搬送する毎に実装部で上記キヤリア部材に電子部品を実装するようになっている。
【0003】
上記搬送手段は、上記キヤリア部材の幅方向の両端部をそれぞれクランプする開閉可能なクランパ、このクランパを所定のピッチで往復駆動する駆動機構などによって構成されている。駆動機構はねじ軸と、このねじ軸を回転駆動する駆動源を有し、上記ねじ軸は上記クランパが一体的に設けられた可動部材に螺合している。可動部材は所定方向、つまり上記キヤリア部材を支持したガイドレールの長手方向に沿って移動可能に設けられている。
【0004】
したがって、上記可動部材に設けられたクランパによって上記キヤリア部材の幅方向の両端部を挟持させて上記ねじ軸を回転駆動すれば、上記クランパが上記可動部材とともに駆動されるから、それによって上記キヤリア部材を送ることができるようになっている。このようにしてキヤリア部材を搬送する先行技術は特許文献1に示されている。
【0005】
ところで、上記ねじ軸による上記クランパの最大送りピッチは、装置全体の大きさやその装置によってキヤリア部材に実装する電子部品のピッチ間隔である、実装ピッチなどの設計条件によって最大値が決定されている。
【0006】
しかしながら、最近では製品の多様化などによってキヤリア部材に実装される電子部品の実装ピッチが上記クランパによるキヤリア部材の最大送りピッチよりも大きくなることがある。
【0007】
従来、キヤリア部材に実装される電子部品の実装ピッチがキヤリア部材の最大送りピッチよりも大きくなった場合、まず、初期位置にあるクランパを最大送りピッチで駆動してキヤリア部材を搬送した後、上記クランパを初期位置まで戻してから、上記クランパを不足する距離分だけ再度送り、合計でキヤリア部材を所定のピッチで搬送するということが行なわれていた。
【特許文献1】特許第3768472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、キヤリア部材に電子部品を実装する実装作業は、キヤリア部材を実装ピッチで搬送した後でなければ行なうことができない。
【0009】
しかしながら、キヤリア部材をクランパの最大送りピッチよりも大きなピッチで搬送するために、上述したようにクランパを初期位置から最大送りピッチで駆動し、ついで初期位置まで戻してから不足する距離を再度送るようにすると、キヤリア部材に電子部品を実装する実装作業を開始するまでには、最大送りピッチで搬送されたキヤリア部材を、その最大送りピッチ分だけ戻し、さらに不足する距離を搬送してからでなければ行なうことができない。
【0010】
すなわち、キヤリア部材の搬送を開始してから電子部品の実装を開始するまでには、キヤリア部材をクランパの最大送りピッチで搬送した後、そのクランパを初期位置に戻さなければならない。そのため、最大送りピッチで駆動されたクランパを初期位置に戻すために時間が掛かり、それによってキヤリア部材に電子部品を実装するまでのタクトタイムが長くなり、生産性が低下するということがあった。
【0011】
この発明は、キヤリア部材を搬送する搬送手段の最大送りピッチよりも大きなピッチで電子部品を実装する場合、キヤリア部材の搬送を開始してから電子部品を実装するまでの時間を短くして生産性の向上を図ることができるようにした電子部品の実装装置及び実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、キヤリア部材に電子部品を所定のピッチで実装する電子部品の実装装置であって、
上記キヤリア部材を搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される上記キヤリア部材に上記電子部品を上記所定のピッチで実装する実装手段と、
この実装手段によって上記キヤリア部材に上記電子部品を実装するときに上記搬送手段の駆動を制御して上記キヤリア部材を搬送させる制御手段を具備し、
上記キヤリア部材に上記搬送手段の最大送りピッチよりも大きなピッチで上記電子部品を実装するとき、上記電子部品の実装ピッチをP1、上記搬送手段による上記キヤリア部材の最大送りピッチをP2、実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さをP3とすると、
上記制御手段は、
上記搬送手段を初期位置から上記不足長さP3或いは上記最大送りピッチP2のいずれかの距離で駆動して上記キヤリア部材を搬送させてから、上記搬送手段を上記不足長さP3分だけ戻し、ついで上記キヤリア部材の最初からの搬送距離が上記実装ピッチP1と同じになるよう上記キヤリア部材を上記搬送手段によって搬送させてから上記搬送手段を初期位置に戻している間に、上記キヤリア部材に上記実装手段によって上記電子部品の実装を行なわせることを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0013】
この発明は、キヤリア部材に、このキヤリア部材を搬送する搬送手段の最大送りピッチよりも大きなピッチで電子部品を実装する電子部品の実装方法であって、
上記電子部品の実装ピッチをP1、上記搬送手段による上記キヤリア部材の最大送りピッチをP2、実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さをP3とすると、
上記キヤリア部材を上記搬送手段によって初期位置から上記不足長さP3或いは上記最大送りピッチP2のいずれかの距離で搬送する第1の工程と、
第1の工程の後で上記搬送手段を上記不足長さP3分だけ戻す第2の工程と、
第2の工程の後で上記キヤリア部材の最初からの搬送距離が上記実装ピッチP1と同じになるよう上記キヤリア部材を上記搬送手段によって搬送する第3の工程と、
第3の工程の後で上記搬送手段を初期位置に戻すとともにその間に、上記キヤリア部材に上記電子部品を実装する第4の工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法にある。
【0014】
上記搬送手段を初期位置に戻している間に、上記キヤリア部材に対する上記電子部品の実装を開始する工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、キヤリア部材を搬送する搬送手段を最大送りピッチ或いは実装ピッチと最大送りピッチの差の不足長さのどちらかで駆動してキヤリア部材を搬送したならば、上記搬送手段を上記不足長さだけ戻してから、上記キヤリア部材を最大送りピッチに足りない分だけ搬送するようにした。
【0016】
そのため、キヤリア部材を実装ピッチで搬送するのに、搬送手段は上記不足長さ分だけ戻せばよいから、キヤリア部材を搬送位置決めするのに要する時間が短縮されて生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は実装部1を挟んで第1の搬送装置2と第2の搬送装置3とが一列に配置された実装装置を示し、この実装装置は図5に示すように合成樹脂や金属板によって所定の長さに形成されたキヤリア部材Wに半導体チップなどの電子部品Cを所定のピッチで実装できるようになっている。電子部品Cの実装ピッチをP1とする。
【0018】
上記第1の搬送装置2は前工程から供給された上記キヤリア部材Wを上記実装部1に後述するように搬送する。上記実装部1は上記第1の搬送装置2によって搬送位置決めされた上記キヤリア部材Wを受けるバックアップツール1a及び上記キヤリア部材Wのバックアップツール1aによって支持された部分に上記電子部品Cを実装する実装ツール(図示せず)によって構成されている。そして、電子部品Cが実装された上記キヤリア部材Wは上記第2の搬送装置3によって次工程に搬出されるようになっている。
【0019】
つぎに、上記第1の搬送装置2と第2の搬送装置3について説明する。なお、第1、第2の搬送装置2,3は同一の構成であるので、一方の搬送装置について説明する。すなわち、各搬送装置2,3は矩形状のベース部材5を有する。ベース部材5の上面には図1に矢印Xで示すキヤリア部材Wの搬送方向に対して所定間隔で、かつその搬送方向と直交する方向に沿って一対の第1のリニアガイド6が設けられている。
【0020】
上記一対の第1のリニアガイド6には一対の幅方向可動部材7がこれらの下面の長手方向両端部に設けられた受け部材7aをスライド可能に係合させて設けられている。図2はベース部材5上に設けられた一対の幅方向可動部材7を示す平面図である。各幅方向可動部材7の長手方向中央部の下面にはナット体8a,8bが設けられている。一方のナット体8aは右めねじが形成され、他方のナット体8bは左めねじが形成されている。
【0021】
一対のナット体8a,8bには上記ベース部材5の幅方向に沿って設けられた駆動ねじ軸9に形成された右おねじ部9aと左おねじ部9bがそれぞれ螺合されている。この駆動ねじ軸9の一端は上記ベース部材5の幅方向一端に立設された第1の支持部11に回転可能に支持され、他端は上記ベース部材5の幅方向他端に設けられた第2の支持部12に回転可能に支持されている。
【0022】
第2の支持部12に支持された上記駆動ねじ軸9の他端はカップリング13を介して幅調整用駆動源14の出力軸14aに連結されている。それによって、幅調整用駆動源14が上記駆動ねじ軸9を正方向(右方向)に回転すれば、一対のナット体8a,8bを介して一対の幅方向可動部材7が離反する方向に駆動され、上記駆動ねじ軸9を逆方向(左方向)に回転すれば、一対の幅方向可動部材7が接近する方向に駆動される。
【0023】
上記幅調整用駆動源14、上記駆動ねじ軸9及び上記一対のナット体8a,8bは一対の幅方向可動部材7を接離する方向に駆動する幅方向駆動機構を構成している。
なお、上記駆動ねじ軸9の第1の支持部11に支持された一端にはハンドル15が設けられている。このハンドル15によって上記駆動ねじ軸9を手動によっても回転させることができるようになっている。
【0024】
上記一対の幅方向可動部材7の上面には、図4に示すように第2のリニアガイド18が上記第1のリニアガイド6と直交する、上記幅方向可動部材7の長手方向一端部を除く部分の全長にわたって設けられている。上記第2のリニアガイド18には送り用可動部材19がその下面に設けられた受け部材19aをスライド可能に係合させて設けられている。
【0025】
一対の上記幅方向可動部材7の長手方向一端部には支持部材21が立設されている。各支持部材21の上端には角部にL字状の係合部22aが形成されたガイドレール22が上記第2のリニアガイド18と同方向に沿って設けられている。一対のガイドレール22の係合部22aには上記キヤリア部材Wが搬送方向と交差する方向である、幅方向の両端部を係合させて支持される。
【0026】
上記一対の送り用可動部材19は側面形状がほぼL字状をなしていて、これら送り用可動部材19間にはボールスプライン軸23が架設されている。すなわち、ボールスプライン軸23は図3に示すように一端が一方の送り用可動部材19の外面に設けられた開閉用駆動源25に連結され、他端は他方の送り用可動部材19に設けられたボールスプラインナット24に軸方向にスライド可能に挿通支持されている。
【0027】
上記ボールスプライン軸23の一端部には第1のカム体26が固定されて設けられ、他端部には上記ボールスプラインナット24に連結された第2のカム体27が上記ボールスプラインナット24とともに上記ボールスプライン軸23に沿ってスライド可能に設けられている。
【0028】
上記第1のカム体26と第2のカム体27は、それぞれ上用カム26a,27aと下用カム26b,27bが上死点と下死点の位置を、周方向に180度をずらして一体的に設けられている。
【0029】
各カム体26,27の上用カム26a,27aの外周面にはそれぞれL字状の上用アーム28の一端に設けられた上用カムフォロア29が当接している。上用アーム28の他端には上クランパ31が設けられている。上記上用カムフォロア29が上用カム26a,27aの上死点に当接しているとき、上記上クランパ31の下端は上記ガイドレール22の係合部22aよりもわずかに上方に位置している。
【0030】
各カム体26,27の下用カム26b,27bの外周面にはそれぞれL字状の下用アーム33の一端に設けられた下用カムフォロア34が当接している。下用アーム33の他端には上記上クランパ31とでクランパ機構を構成する下クランパ35が設けられている。上記下用カムフォロア34が下用カム26b,27bの下死点に当接しているとき、上記下クランパ35の上端は上記ガイドレール22の係合部22aよりもわずかに下方に位置し、かつ上記上クランパ31の下端と所定の間隔を介して対向している。
【0031】
この状態から、上記ボールスプライン軸23が開閉用駆動源25によって180度回転駆動され、それに各カム体26,27が連動すると、上クランパ31が下降し、下クランパ35が上昇するから、これらクランパ31,35によって上記ガイドレール22の係合部22aに係合支持されたキヤリア部材Wの幅方向両端部を挟持することになる。このとき、キヤリア部材Wは上記係合部22aからわずかに上昇させられて挟持される。
【0032】
なお、上記上用アーム28と下用アーム33は支持部材36によって上下方向にスライド可能に支持されている。各支持部材36はそれぞれ取付けアーム37によって上記送り用可動部材19に取付け固定されている。
【0033】
図1と図3に示すように、左右一対の送り用可動部材19は連結部材41によって連結されている。この連結部材41の長手方向中途部の下面にはナット体42が設けられている。このナット体42には送り用ねじ軸43が螺合されている。この送り用ねじ軸43は軸線をキヤリア部材Wの搬送方向と平行にして配置されていて、その一端と他端は図1に示すように上記ベース部材5に立設された一対の支持部材44に回転可能に支持されている。
【0034】
上記送り用ねじ軸43の一方の支持部材44から突出した一端には従動プーリ45が嵌着されている。この従動プーリ45の下方には送り用駆動源46が設けられている。この送り用駆動源46の出力軸46aには駆動プーリ47が嵌着されている。この駆動プーリ47と上記従動プーリ45とにはベルト48が張設されている。
【0035】
それによって、上記送り用駆動源46が作動して上記送り用ねじ軸43が回転駆動されれば、その回転方向に応じて上記連結部材41によって連結された一対の送り用可動部材19が上記第2のリニアガイド18に沿う方向である、キヤリア部材Wの送り方向に駆動されるようになっている。
なお、上記送り用駆動源46、送り用ねじ軸43、一対のプーリ45,47及びベルト48は、一対の送り用可動部材19をキヤリア部材Wの搬送方向に沿って往復駆動する送り用駆動機構を構成している。
【0036】
なお、上記第1、第2の搬送装置2,3の幅調整用駆動源14、開閉用駆動源25及び送り用駆動源46は図3に示す制御装置50によって駆動が制御されるようになっている。
【0037】
このような構成の実装装置において、前工程から第1の搬送装置2に、上クランパ31と下クランパ35とが開いた状態にある一対のガイドレール22にキヤリア部材Wが供給されると、開閉用駆動源25が作動してボールスプライン軸23が180度回転駆動される。
【0038】
それによって、上記上クランパ31と下クランパ35とが閉じるから、ガイドレール22に保持されたキヤリア部材Wの幅方向両端部が左右一対の上クランパ31と下クランパ35によって挟持される。
【0039】
キヤリア部材Wの幅方向両端部が上クランパ31と下クランパ35によって挟持されると、送り用駆動源46が作動して送り用ねじ軸43を所定方向に所定の回転数だけ回転駆動する。送り用ねじ軸43が回転すると、その回転数に応じたストロークで一対の送り用可動部材19が実装部1に向かって駆動されるから、この送り用可動部材19と一体的に設けられた上クランパ31と下クランパ35が連動する。それによって、上クランパ31と下クランパ35に幅方向の両端部が挟持固定された上記キヤリア部材Wが実装部1に向かって搬送されることになる。
【0040】
キヤリア部材Wを所定のストロークで搬送したならば、ボールスプライン軸23が180度回転駆動されて上クランパ31と下クランパ35が開放される。つまり、各クランパ31,35によるキヤリア部材Wの挟持状態が解除される。
【0041】
ついで、送り用駆動源46が送り用ねじ軸43を先程とは逆方向に所定の回転数だけ回転駆動する。それによって、上クランパ31と下クランパ35はキヤリア部材Wの搬送方向と逆方向に所定のストロークだけ戻ることになる。つまり、これらクランパ31,35は初期位置に戻ることになる。
【0042】
その初期位置で、ボールスプライン軸23が180度回転駆動されて上クランパ31と下クランパ35が閉じられ、キヤリア部材Wの幅方向両端部がこれらクランパ31,35によって再び挟持固定されると、送り用駆動源46が送り用ねじ軸43を所定回転数だけ回転させてキヤリア部材Wを所定のストロークで搬送するということが繰り返される。
【0043】
そして、キヤリア部材Wの電子部品Cが実装される部位が実装部1のバックアップツール(図示せず)上に位置決めされると、この実装部1の電子部品Cを保持した図示しない実装ツールが下降方向に駆動され、その電子部品Cをキヤリア部材Wに実装することになる。
【0044】
上記実装部1で電子部品Cが実装されたキヤリア部材Wは所定のストロークで搬送されると、先端部が第2の搬送装置3のガイドレール22に保持される。第2の搬送装置3のガイドレール22に送られたキヤリア部材Wは、この第2の搬送装置3の上クランパ31と下クランパ35とで幅方向の両端部が挟持されて搬送され、第2の搬送装置3から次工程に受け渡されることになる。
それによって、第1の搬送装置2に供給されたキヤリア部材Wは実装部1で1つの電子部品Cが実装された後、第2の搬送装置3によって次工程に受け渡すことができる。
【0045】
なお、上記第1の搬送装置2と第2の搬送装置3の上クランパ31と下クランパ35は、上記制御装置50によって同期して作動するよう駆動が制御される。それによって、第1の搬送装置2による搬送されて実装部1で電子部品Cが実装されたキヤリア部材Wは、第2の搬送装置3によって連続して搬送されるようになっている。
【0046】
上記キヤリア部材Wに実装される電子部品Cのピッチ、つまり実装ピッチをP1、上記送り用駆動源46によって駆動される送り用ねじ軸43の回転によって送ることができる上記キヤリア部材Wの最大の送りピッチをP2とすると、上記実装ピッチP1を送りピッチをP2よりも大きくすることが要求されることがある。なお、P1とP2の寸法差を上記送り用駆動源46による不足長さSとする。
【0047】
上述したようにキヤリアテープWに電子部品Cを送りピッチP2よりも大きな実装ピッチP1で実装することが要求された場合、制御装置50によって上記送り用駆動源46は図6(a)又は同図(b)に示すようにクランパ31,35の駆動を制御する。
【0048】
図6(a)は、搬送開始時間t0でクランパ31,35によってキヤリア部材Wを挟持したならば、このキヤリア部材Wを上記不足長さS分だけ搬送する。この搬送は時間をt1で終了する。
【0049】
キヤリア部材Wを上記不足長さSだけ搬送したならば、クランパ31,35を開く。この終了時間をt2とする。ついで、クランパ31,35を先程搬送した上記不足長さSの分だけ戻す。これを同図に−Sで示す。このときの終了時間をt3とする。
【0050】
ついで、時間t3〜t4でクランパ31,35を閉じてキヤリア部材Wを挟持し、このキヤリア部材Wを実装ピッチP1に足りない長さだけ搬送する。つまり、このときの搬送長さは、P1−S=P2であって、P2はクランパ31,35によるキヤリア部材Wの最大の送りピッチである。この搬送の完了時間をt5とする。
【0051】
このようにして、キヤリア部材Wをクランパ31,35によるキヤリア部材Wの最大の実装ピッチP1で搬送したならば、実装部1によってキヤリア部材Wに電子部品Cの実装を開始すると同時に、実装ピッチP1で搬送されたクランパ31,35を初期位置に戻す。
【0052】
すなわち、キヤリア部材Wをクランパ31,35による最大送りピッチP2よりも大きな実装ピッチP1で搬送するに際し、クランパ31,35を戻す長さは実装ピッチP1と送りピッチP2の寸法差である、不足長さSだけである。
【0053】
それに対して、従来は図6(c)に示すようにキヤリア部材Wを最大送りピッチP2で搬送してから、時間t11〜t12でクランパ31,35を開き、時間t12〜t13でクランパ31,35を最大送りピッチP2に等しい距離(この距離を−P2とする)で戻し、ついで時間t14〜t15でクランパ31,35を閉じてキヤリア部材Wを実装ピッチP1に足りない不足長さS分を搬送するようにしていた。
【0054】
そのため、キヤリア部材Wに対して電子部品Cの実装が可能となる時間は、図6(a)のt5に比べてクランパ31,35を戻す長さが長い分(P2−S)だけ遅くなるから、その時間差によって図6(a)の方式によってキヤリア部材Wを搬送した方が生産性が向上することになる。
【0055】
なお、図6(a)と図6(c)において、クランパ31,35はそれぞれ1回ずつ開閉され、その開閉に要する時間は同じとする。
【0056】
図6(b)は、時間t0でクランパ31,35がキヤリア部材Wを挟持したならば、このキヤリア部材Wを最大送りピッチP2で搬送する。この搬送の終了時間をtaとする。ついで、クランパ31,35を時間ta〜tbで開いたならば、クランパ31,35を実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さSだけ戻す。これを同図に−Sで示し、この終了時間をtcとする。ついで、時間tc〜tdでクランパ31,35を閉じた後、時間td〜teでキヤリア部材Wを実装ピッチP1に足りない長さである、上記不足長さSだけクランパ31,35によって搬送し、搬送完了となる。
【0057】
このような搬送方式によれば、キヤリア部材Wを最大送りピッチP2よりも大きな実装ピッチP1で搬送し終わるまでに、クランパ31,35を戻す長さは、図6(a)の場合と同様、実装ピッチP1と送りピッチP2の寸法差である、不足長さSの分だけである。
【0058】
そのため、この場合も、図6(c)の従来に比べてクランパ31,35を戻す距離が短くなるから、その分、生産性を向上させることができる。
【0059】
このように、クランパ31,35によってキヤリア部材Wを最大送りピッチP2よりも大きな実装ピッチP1で搬送する場合、クランパ31,35を戻す距離が従来に比べて少なくなるようにした。
【0060】
すなわち、キヤリア部材Wの最大送りピッチP2に相当する距離のクランパ31,35の戻りをキヤリア部材Wを実装ピッチP1で搬送し終わってから行なうようにした。そのため、図6(a),(b)にt5〜t6及びte〜tfで示すクランパ31,35が開く間と、同じくBで示すクランパ31,35が最大送りピッチP2に相当する距離で戻る間に上記キヤリア部材Wに対して電子部品Cの実装を開始することができる。
【0061】
したがって、その分だけキヤリア部材Wに対する電子部品Cの実装開始時間を早くすることができる。すなわち、キヤリア部材Wを搬送位置決めして電子部品Cを実装するのに要するタクトタイムを短縮し、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の一実施の形態の実装装置の概略的構成を示す平面図。
【図2】ベース部材に設けられた一対の幅方向調整部材を示す平面図。
【図3】搬送装置の側面図。
【図4】幅方向調整部材に設けられた送り用可動部材とガイドレールを示す搬送装置の断面図。
【図5】電子部品が実装される基板の平面図。
【図6】キヤリア部材に最大搬送ピッチよりも大きな実装ピッチで電子部品を実装するこの発明と従来の方法の説明図。
【符号の説明】
【0063】
1…実装部、2…第1の搬送装置、3…第2の搬送装置、14…幅調整用駆動源、25…開閉用駆動源、31…上クランパ、35…下クランパ、43…送り用ねじ軸、46…送り用駆動源、50…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キヤリア部材に電子部品を所定のピッチで実装する電子部品の実装装置であって、
上記キヤリア部材を搬送する搬送手段と、
この搬送手段によって搬送される上記キヤリア部材に上記電子部品を上記所定のピッチで実装する実装手段と、
この実装手段によって上記キヤリア部材に上記電子部品を実装するときに上記搬送手段の駆動を制御して上記キヤリア部材を搬送させる制御手段を具備し、
上記キヤリア部材に上記搬送手段の最大送りピッチよりも大きなピッチで上記電子部品を実装するとき、上記電子部品の実装ピッチをP1、上記搬送手段による上記キヤリア部材の最大送りピッチをP2、実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さをSとすると、
上記制御手段は、
上記搬送手段を初期位置から上記不足長さS或いは上記最大送りピッチP2のいずれかの距離で駆動して上記キヤリア部材を搬送させてから、上記搬送手段を上記不足長さS分だけ戻し、ついで上記キヤリア部材の最初からの搬送距離が上記実装ピッチP1と同じになるよう上記キヤリア部材を上記搬送手段によって搬送させてから上記搬送手段を初期位置に戻すことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
キヤリア部材に、このキヤリア部材を搬送する搬送手段の最大送りピッチよりも大きなピッチで電子部品を実装する電子部品の実装方法であって、
上記電子部品の実装ピッチをP1、上記搬送手段による上記キヤリア部材の最大送りピッチをP2、実装ピッチP1と最大送りピッチP2の差の不足長さをSとすると、
上記キヤリア部材を上記搬送手段によって初期位置から上記不足長さS或いは上記最大送りピッチP2のいずれかの距離で搬送する第1の工程と、
第1の工程の後で上記搬送手段を上記不足長さP3分だけ戻す第2の工程と、
第2の工程の後で上記キヤリア部材の最初からの搬送距離が上記実装ピッチP1と同じになるよう上記キヤリア部材を上記搬送手段によって搬送する第3の工程と、
第3の工程の後で上記搬送手段を初期位置に戻す第4の工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法。
【請求項3】
上記搬送手段を初期位置に戻している間に、上記キヤリア部材に対する上記電子部品の実装を開始する工程を有することを特徴とする請求項2記載の電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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