説明

電子部品の実装装置及び実装方法

【課題】この発明は実装ツールの下降速度を切換えたときに、実装ツールが振れるのを防止して実装に要する手タクトタイムを短縮した実装装置を提供することにある。
【解決手段】上下方向に駆動される駆動体3に変位可能に設けられた実装ツール8が駆動体に対して上下方向に変位するのを阻止する第1の荷重を実装ツールに付与するボイスコイルモータ12と、駆動体を第1の高さ位置から第1の速度で第2の高さ位置まで下降させた後、第1の速度よりも遅い第2の速度に切換えて第3の高さ位置まで下降させるとともに、第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に実装ツールに付与された荷重を第1の荷重から第2の荷重となるまで徐々に減少させる制御装置19を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は基板に半導体チップなどの電子部品を実装する実装装置及び実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば電子部品としての半導体チップをリードフレームなどの基板に実装する場合、実装ツールの下端に上記半導体チップを吸着保持し、この半導体チップを上記基板に押圧することで実装するようにしている。
【0003】
実装時に、実装ツールが半導体チップを基板に押圧する押圧力(実装荷重)が小さいと実装不良となり、大き過ぎると半導体チップにダメージを与え、割れや欠けを生じるということがある。したがって、上記押圧力は半導体チップや基板の厚さなどに応じて最適値に設定する必要がある。
【0004】
このような実装を行う一般的な実装装置は、駆動源によって上下方向に駆動される駆動体を有する。この駆動体には上記実装ツールが上下方向に変位可能に設けられている。この実装ツールは、上記駆動体にボイスコイルモータによって上下方向の変位の抵抗となる荷重(保持力)が付与されるようになっているとともに、上記駆動体に対して相対的に上昇したときにそのことがギャップセンサによって検出されるようになっている。
【0005】
上記実装ツールは、上記駆動体によって上昇待機位置から所定の高さ位置まで高速度で下降させられる。この間の下降を第1のサーチ下降とする。駆動体が高速度で第1のサーチ下降をすると、上記実装ツールには上記駆動体の下降に伴う加速度が加わるから、その加速度によって上下方向に振れる。
【0006】
したがって、上記実装ツールを上記駆動体とともに高速度で第1のサーチ下降させる時には、上記駆動体に対して上下方向に振れることがないよう上記ボイスコイルモータに最大荷重を発生させ、その最大荷重によって実装ツールを保持するようにしている。このとき、ボイスコイルモータが実装ツールに加える荷重を第1の荷重とする。
【0007】
上記実装ツールが所定の位置まで、つまり第1のサーチ下降の終了高さに到達すると、実装ツールは下降速度を減速して第2のサーチ下降が開始される。このとき、上記ボイスコイルモータが上記実装ツールに付与する荷重は、第1のサーチ下降時の最大荷重に比べて十分に低い第2の荷重に一挙に変更される。
【0008】
上記実装ツールの保持力を第1の荷重に比べて低い第2の荷重に変更すれば、第2のサーチ下降の間に実装ツールの先端面に保持された半導体チップが基板に当たったとき、実装ツールが駆動体に対して相対的に上昇可能となるから、半導体チップに加わる衝撃が軽減され、損傷や欠けが生じるのが防止される。
【0009】
上記半導体チップが基板に当たって実装ツールが駆動体に対して相対的に上昇すると、そのことがギャップセンサによって検出される。ギャップセンサによって半導体チップが基板に当たったことが検出されると、上記ボイスコイルモータが上記加圧ツールに加える荷重が、上記半導体チップを基板に実装するのに適した実装荷重になるよう変更される。この実装荷重は上記第2の荷重よりも大きく、第1の荷重よりも小さい値である。それによって、上記半導体チップは最適な実装荷重で上記基板に実装されることになる。
【0010】
特許文献1には、ペレットをフレームに実装する際、その実装荷重をボイスコイルモータを用いて制御することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5−131386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、従来は、上述したように実装ツールが第1のサーチ下降から下降速度を減速して第2のサーチ下降に移行するとき、ボイスコイルモータが上記実装ツールに付与する荷重を、ボイスコイルモータの最大荷重である第1の荷重から、この第1の荷重に比べて十分に低い第2の荷重に一挙に低減するようにしていた。
【0013】
上記実装ツールに付与された荷重を第1の荷重から一挙に第2の荷重に低減すると、実装ツールの下降速度が第1のサーチ下降の下降速度から第2のサーチ下降の下降速度に減速されて実装ツールにマイナスの加速度が生じたときに、その加速度によって上記実装ツールが上記駆動体に対して上下方向に振動を繰り返すということになる。
【0014】
上記実装ツールが上記駆動体に対して上下方向に振動すると、上記ギャップセンサによる検出が正確に行えなくなるということがある。つまり、半導体チップが実装される基板の上面の高さ位置の検出である、面検出がギャップセンサによって正確に行えなくなるということがある。
【0015】
したがって、そのような場合、上記面検出に基づく実装ツールの下降制御を精密にフィードバック制御することができなくなるということがあったり、上記駆動体に対する実装ツールの振動が収まるまでギャップセンサによる検出を待たなければならないから、その分、タクトタイムが長くなり、生産性の低下を招くということになる。
【0016】
この発明は、実装ツールを第1のサーチ下降速度から第2のサーチ下降速度に減速する際、その駆動速度の変化によって実装ツールに加速度が生じても、その加速度によって実装ツールが駆動体に対して上下方向に振れるのを防止した電子部品の実装装置及び実装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この発明は、基板に電子部品を実装する電子部品の実装装置であって、
駆動源によって上下方向に駆動される駆動体と、
この駆動体に上下方向に変位可能に設けられ先端面に上記電子部品を保持する実装ツールと、
この実装ツールが上記駆動体に対して上下方向に変位するのを阻止する荷重を付与するとともに、上記実装ツールが上記駆動源によって上記駆動体とともに第1の高さから第2の高さに第1の速度で下降させるときに第1の荷重を付与する荷重設定手段と、
上記実装ツールが上記第2の高さから第3の高さまで上記第1の速度よりも遅い第2の速度で下降させるときに上記荷重設定手段によって上記実装ツールに付与される荷重を上記第1の荷重からこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させる制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置にある。
【0018】
上記制御手段は、上記実装ツールが上記第2の高さからこの実装ツールに保持された上記電子部品が上記基板の当たるまでの間に、上記実装ツールに付与される荷重を上記第1の荷重からこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させることが好ましい。
【0019】
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールの先端面に保持された上記電子部品が上記基板に当接して上記実装ツールが上記駆動体に対して相対的に上昇したときにその上昇を検出する高さ検出手段を具備し、
上記制御手段は、上記高さ検出手段の検出に基づいて上記荷重設定手段が上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重に維持して上記実装ツールを上記第3の高さ位置まで下降させてから、上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重よりも大きく、上記第1の荷重よりも小さい第3の荷重に変更することが好ましい。
【0020】
この発明は、実装ツールの先端面に保持された電子部品を基板に実装する電子部品の実装方法であって、
上記実装ツールを第1の高さ位置から第1の速度で第2の高さ位置まで下降させた後、上記第1の速度よりも遅い第2の速度に切換えて第3の高さ位置まで下降させる工程と、
上記実装ツールが上記第1の高さ位置から第2の高さ位置に下降する間に上記実装ツールが上下方向に変位するのを阻止する第1の荷重を上記実装ツールに付与する工程と、
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールに付与された第1の荷重をこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させる工程と、
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールの先端面に保持された上記電子部品が上記基板に当接したならば、上記実装ツールに付与された荷重を上記第2の荷重に維持して上記実装ツールを上記電子部品が上記基板に当接した高さよりも低い上記第3の高さ位置まで下降させる工程と、
上記実装ツールが上記第3の高さ位置まで下降したならば、上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重よりも大きく、上記第1の荷重よりも小さい第3の荷重に変更する工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法にある。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、駆動体に対して実装ツールが上下方向に変位するのを阻止する第1の荷重が付与された状態で第1の高さ位置から第2の高さ位置まで第1の速度で下降させた後、下降速度を第2の速度に減速して第3の高さ位置まで下降させるときに、実装ツールに加えられた第1の荷重をこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させるようにした。
【0022】
そのため、実装ツールの下降速度が第1の速度から第2の速度に減速されるとき、実装ツールは第1の荷重から第2の荷重に徐々に減少させられる荷重によって上下方向の動きが規制されるから、速度の切換え時に実装ツールにマイナスの加速度が生じても、その加速度によって実装ツールが駆動体に対して上下方向に振れるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施の形態を示す実装装置の概略的構成図。
【図2】実装ツールの高さ、実装ツールに付与する荷重及びギャップセンサが検出する検出信号の関係を示す図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1はこの発明の実装装置の概略的構成を示し、この実装装置は側面形状が逆L字状の架台1を有する。この架台1の垂直面1aにはリニアガイド2が上下方向に沿って設けられている。このリニアガイド2には駆動体3が受け部3aを移動可能に係合させて支持されている。
【0025】
上記駆動体3には軸線を垂直にしたねじ軸4が螺合されている。このねじ軸4は上記架台1の水平面1bの上面に設けられた駆動源5によって回転駆動される。それによって、上記駆動体3は上記リニアガイド2に沿って上下方向に駆動されるようになっている。
【0026】
上記駆動体3にはブラケット6の一端が固着されている。このブラケット6の他端には筒状のホルダ7が取り付けられている。このホルダ7には実装ツール8が上下方向に移動可能に挿通支持されている。この実装ツール8は上下端部を上記ホルダ7の上下端から突出させていて、上端部の外周面には電磁コイル9が装着されている。
【0027】
上記電磁コイル9は筒状のヨーク10内に収容されている。このヨーク10は一端を上記ブラケット6に連結した連結部材11の他端に取り付けられている。上記電磁コイル9とヨーク10とで荷重設定手段としてのボイスコイルモータ12を構成している。
【0028】
それによって、上記電磁コイル9に印加する電圧(電流)を制御すれば、上記実装ツール8を下降方向に付勢する荷重が付与されるようになっている。つまり、上記実装ツール8はその上部に設けられた鍔8aが上記ホルダ7の上端面に当たる下降限の高さ位置で、上記電磁コイル9に印加する電圧に応じた荷重、つまり上昇方向に対して所定の抵抗を有する状態で保持されるようになっている。なお、図1は上記実装ツール8が上記ホルダ7に対して上昇限の位置にある状態を示している。
【0029】
上記実装ツール8の先端面には吸引孔14の一端が開口している。この吸引孔14の他端は実装ツール8の先端部の外周面に開口していて、この他端には図示しない吸引ポンプに連通するチューブ15が接続されている。
【0030】
それによって、上記実装ツール8の先端面に開口した吸引孔14に吸引力を生じさせることができるから、その吸引力によって上記実装ツール8の先端面に電子部品としての半導体チップ16を吸着保持することができるようになっている。
【0031】
上記電磁コイル9に電圧を印加して上記実装ツール8を所定の荷重で上記駆動体3のホルダ7に対して下降限の高さで保持した状態から、上記実装ツールが駆動体3に対して相対的に上昇すると、その上昇は高さ検出手段としてのギャップセンサ17によって検出されるようになっている。
【0032】
上記ギャップセンサ17は検出面17aを垂直方向下方に向けて上記ホルダ7にL字状の支持具7aによって取り付けられている。上記実装ツール8にはアクチュエータ18の一端が連結されている。このアクチュエータ18の他端は上記ギャップセンサ17の検出面17aに対向している。
【0033】
上記実装ツール8が上記駆動体3のホルダ7に対して相対的に上昇して上記ギャップセンサ17とアクチュエータ18との間隔dが予め設定された間隔よりも小さくなると、そのことが上記ギャップセンサ17によって検出されるようになっている。
【0034】
上記ギャップセンサ17の検出信号は制御装置19に出力される。この制御装置19はギャップセンサ17の検出信号に基づいて上記電磁コイル9に印加する電圧の強度を後述するように制御するようになっている。さらに、上記制御装置19は上記駆動源5による上記駆動体3の下降駆動を予め設定された下降速度と高さに基づいて後述するように制御するようになっている。
【0035】
つぎに、上記構成の実装装置によって半導体チップ16を基板Sの板面に実装する動作を図2を参照しながら説明する。図2において、折れ線Aは実装ツール8の高さと時間の関係を示し、折れ線Bはボイスコイルモータ12によって実装ツール8に付与される荷重と時間の関係を示す。この荷重は、ボイスコイルモータ12に印加される電圧値に比例する。
【0036】
折れ線Cはギャップセンサ17が検出するギャップ(変位)の変化、つまり実装ツール8が駆動体3に下降限の位置に保持された状態から、ボイスコイルモータ12によって付与された荷重に抗して上記駆動体3に対して相対的に上昇する距離(ギャップ)と時間の関係を示す。つまり、実装ツール8の上下の振れの状態を示す。
【0037】
上記実装ツール8は、実装動作が開始される前は折れ線AのH1で示す第1の高さで待機している。このとき、実装ツール8の先端面には図示しない受け渡しツールによって受け渡された半導体チップ16が吸着保持されている。
【0038】
時間t1で、制御装置19によって実装動作が開始されると、実装ツール8は駆動体3とともに第1の速度V1(第1のサーチ速度)で下降を開始する。このとき、制御装置19は、実装ツール8を駆動体3に対して相対的に下降限まで下降する電圧をボイスコイルモータ12に印加する。つまり、実装ツール8は折れ線BにW1で示す第1の荷重(ボイスコイルモータ12の最大荷重)で保持される。
【0039】
時間t2で、上記実装ツール8が第1の高さH1から予め記憶設定された所定の高さ、つまり基板Wの上記半導体チップ16が実装される上面に対して所定の距離まで接近する第2の高さH2(折れ線Aに示す)まで下降すると、制御装置19は実装ツール8の下降速度を第1の速度V1よりも遅い第2の速度V2(第2のサーチ速度)に減速して第3の高さH3まで下降させる。実装ツール8が第3の高さH3に到達する時間をt4とする。
【0040】
上記制御装置19は、時間t2で上記実装ツール8の下降速度を第1の速度V1から第2の速度V2に変更すると同時に、上記ボイスコイルモータ12に印加する電圧を徐々に低下させる。
【0041】
それによって、実装ツール8に加わる荷重は折れ線Bで示すように第1の荷重W1から第2の荷重W2に向かって徐々に減少することになる。つまり、折れ線Bにおいて傾斜して減少する。実装ツール8に加わる荷重は時間t4よりも前の時間t3で第2の荷重W2になる。この時間t3は後述する。
【0042】
このように、実装ツール8の下降速度が第1の速度V1から第2の速度V2に減速されたときに、ボイスコイルモータ12により実装ツール8に付与する荷重を一気にW2に、つまり折れ線Bにおいて垂直なるよう低減せず、荷重W1から荷重W2になるよう徐々に、つまり折れ線Bにおいて傾斜するよう減少させた。
【0043】
そのため、速度を減速して実装ツール8にマイナスの加速度が発生するときには、実装ツール8は駆動体3に第1の荷重W1で保持され、第1の荷重W1から第2の荷重W2に徐々に減少するから、この実装ツール8が駆動体3に対して上下方向に振動することがない。
【0044】
上記実装ツール8が第2の高さH2から第3の高さH3に向かって下降する間に、上記実装ツール8の先端面に吸着保持された半導体チップ16は基板S(図1に示す)の上面に当たる。このときの時間は上述したt3で、実装ツール8の高さは第2の高さH2と第3の高さH3の間の高さhとする。
【0045】
そして、高さhで実装ツール8に保持された半導体チップ16が基板Sの上面に当たると、実装ツール8が駆動体3に対して相対的に上昇する。それによって、ギャップセンサ17が検出する距離(変位)、つまり実装ツール8が駆動体3に対して上方へ移動するギャップ(変位)は、折れ線Cで示すように時間t3から時間t4で、C1からC2に向かって徐々に小さくなるから、その変化によって基板Sの上面に実装ツール8が振れることなく接触したことが判る。
【0046】
上記ギャップセンサ17の検出信号は制御装置19に出力される。このとき、上記実装ツール8は上述したように駆動体3に対して上下方向に振れていないから、実装ツール8の変位点が正確に判別さるため、ギャップセンサ17による基板Sの上面に高さの検出が精度よく行われる。
【0047】
上記半導体チップ16が基板Sの上面に当たったとき、ボイスコイルモータ12によって実装ツール8に付与される荷重は第1の荷重W1から、この第1の荷重W1よりも小さい第2の荷重W2に減少している。
【0048】
そして、ギャップセンサ17からの検出信号を受けた制御装置19は、ボイスコイルモータ12が実装ツール8に付与する荷重を第2の荷重W2に維持した状態で、上記実装ツール8を上述した高さhから第3の高さH3まで下降させる。
【0049】
上記ギャップセンサ17の検出信号を受けた制御装置19は、ボイスコイルモータ12が実装ツール8に付与する荷重を第1の荷重W1よりも小さい、第2の荷重W2に維持して上記ギャプセンサ17が検出するギャップがC2となるまで上記実装ツール8を下降させる。つまり、実装ツール8の高さが第3の高さH3となるまでさらに下降させる。
【0050】
時間t3で実装ツール8の下端に保持された半導体チップ16が基板Sの上面に当たってからも、上記実装ツール8に付与する荷重を第2の荷重W2に維持して、上記実装ツール8を高さhから第3の高さH3まで下降させる。このときの実装ツール9の下降距離(h−H3)は通常、実装ツール8の沈み込み量といわれている。
【0051】
従来、実装ツール8の沈み込み量は、実装ツール8が第1の速度V1から第2の速度V2に切り換えたときに生じる上下方向の振れを短時間で収斂させるため、たとえば150μm程度の比較的大きな寸法に設定されていた。
【0052】
しかしながら、実装ツール8が第1の速度V1から第2の速度V2に切り替わるときに、上述したように実装ツール8に付与する荷重を第1の荷重W1から第2の荷重W2に徐々に減少させるようにしたことで、上記実装ツール8に振れが生じることがないから、実装ツール8の沈み込み量をたとえば70μm程度に減少させることができる。つまり、実装ツール8の下降の慣性によって沈み込み量が70μm程度になるだけであって、実装ツール8の振れが大きな場合のように、この振れが収束するまでの時間を長く設定する必要がなくなる。
【0053】
このように、実装ツール8の振れを減少させることができることによって、実装ツール8の下降距離及び下降位置からの上昇距離を小さくできるから、そのことによっても実装に要するタクトタイムを短縮することが可能となる。
【0054】
上記実装ツール8を(h−H3)の距離だけ沈み込ませてこの実装ツール8を第3の高さH3まで下降させたならば、制御装置19はボイスコイルモータ12に付与する電圧を増加させて実装ツール8に付与する荷重を、折れ線BにW3で示す荷重、つまり第2の荷重W2よりも大きく、第1の荷重W1よりも小さい第3の荷重W3に変更し、その状態で所定時間維持する。この第3の荷重W3は半導体チップ16を基板Sに実装するに適した荷重である。それによって、半導体チップ16は基板Sに接着剤などによって実装されることになる。
【0055】
このようにして、半導体チップ16が基板Sに実装されたならば、制御装置19はボイスコイルモータ12に印加する電圧を0にするとともに、実装ツール8を第1の高さH1まで上昇させて待機させる。そして、実装ツール8の下端面につぎに実装される半導体チップ16が供給されたならば、上述した工程が繰り返して行われる。
【0056】
以上のように、実装ツール8が第1の高さH1から第2の高さH2まで下降してその下降速度を第1の速度V1から第2の速度V2に減速するとき、ボイスコイルモータ12によって実装ツール8に付与する荷重を第1の荷重W1から急激に低減させずに、第2の荷重W2になるよう徐々に減少させるようにした。
【0057】
そのため、実装ツール8の下降速度の切り換え時に実装ツール8が駆動体3に対して上下方向に振れるのを防止できるから、ギャップセンサ17による半導体チップ16の高さ検出、つまり基板Sに当たったか否かの検出を高精度に行うことが可能になる。
【0058】
しかも、実装ツール8の下降速度の切り換え時に実装ツール8が駆動体3に対して上下方向に振れるのを防止できることで、その振れが収束されるまで実装ツール8を基板Sの上面に接触させるのを待つ必要がない。それによって、実装に要するタクトタイムを短縮することができるということもある。
【0059】
また、荷重をW1からW2に徐々(傾斜させて)に減少させるようにしたから、実装ツール8が振れるのが防止され、ギャップセンサ17の距離が一定に維持される。そのため、半導体チップ16が基板Sの上面に接触する時間t3において、半導体チップ16に割れや欠けが生じすることが防止される。
【0060】
さらに、実装ツール8の沈み込み時、実装ツール8は振れていないため、ギャップセンサ17が検出する距離は徐々に小さくなるから、そのことによっても半導体チップ16に割れや掛けが生じるのが防止される。
【符号の説明】
【0061】
3…駆動体、5…駆動源、8…実装ツール、9…電磁コイル、10…ヨーク、12…ボイスコイルモータ(荷重設定手段)、16…半導体チップ(電子部品)、17…ギャップセンサ(高さ検出手段)、18…アクチュエータ、19…制御装置(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に電子部品を実装する電子部品の実装装置であって、
駆動源によって上下方向に駆動される駆動体と、
この駆動体に上下方向に変位可能に設けられ先端面に上記電子部品を保持する実装ツールと、
この実装ツールが上記駆動体に対して上下方向に変位するのを阻止する荷重を付与するとともに、上記実装ツールが上記駆動源によって上記駆動体とともに第1の高さから第2の高さに第1の速度で下降させるときに第1の荷重を付与する荷重設定手段と、
上記実装ツールが上記第2の高さから第3の高さまで上記第1の速度よりも遅い第2の速度で下降させるときに上記荷重設定手段によって上記実装ツールに付与される荷重を上記第1の荷重からこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させる制御手段と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記実装ツールが上記第2の高さからこの実装ツールに保持された上記電子部品が上記基板の当たるまでの間に、上記実装ツールに付与される荷重を上記第1の荷重からこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項3】
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールの先端面に保持された上記電子部品が上記基板に当接して上記実装ツールが上記駆動体に対して相対的に上昇したときにその上昇を検出する高さ検出手段を具備し、
上記制御手段は、上記高さ検出手段の検出に基づいて上記荷重設定手段が上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重に維持して上記実装ツールを上記第3の高さ位置まで下降させてから、上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重よりも大きく、上記第1の荷重よりも小さい第3の荷重に変更することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装装置。
【請求項4】
実装ツールの先端面に保持された電子部品を基板に実装する電子部品の実装方法であって、
上記実装ツールを第1の高さ位置から第1の速度で第2の高さ位置まで下降させた後、上記第1の速度よりも遅い第2の速度に切換えて第3の高さ位置まで下降させる工程と、
上記実装ツールが上記第1の高さ位置から第2の高さ位置に下降する間に上記実装ツールが上下方向に変位するのを阻止する第1の荷重を上記実装ツールに付与する工程と、
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールに付与された第1の荷重をこの第1の荷重よりも小さい第2の荷重となるまで徐々に減少させる工程と、
上記実装ツールが上記第2の高さ位置から第3の高さ位置に下降する間に上記実装ツールの先端面に保持された上記電子部品が上記基板に当接したならば、上記実装ツールに付与された荷重を上記第2の荷重に維持して上記実装ツールを上記電子部品が上記基板に当接した高さよりも低い上記第3の高さ位置まで下降させる工程と、
上記実装ツールが上記第3の高さ位置まで下降したならば、上記実装ツールに付与する荷重を上記第2の荷重よりも大きく、上記第1の荷重よりも小さい第3の荷重に変更する工程と
を具備したことを特徴とする電子部品の実装方法。

【図1】
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【図2】
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