電子部品の製造方法
【課題】 線幅精度の高い導電膜が形成された電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の電子部品の製造方法は、基板1と、基板1に形成された電極5を備えた電子部品の製造方法であって、基板1上に、反射防止膜2を形成する工程と、反射防止膜2上に、レジスト膜3を形成する工程と、所定の形状からなるマスク4を介して、KrFレーザまたはi線を照射して、レジスト膜3を露光する工程と、レジスト膜3を現像し、レジストパターン3aを形成する工程と、レジストパターン3aを用いて、基板1上に電極膜5を形成する工程を備え、反射防止膜2の膜厚が、70nm以上、200nm以下であるようにした。
【解決手段】 本発明の電子部品の製造方法は、基板1と、基板1に形成された電極5を備えた電子部品の製造方法であって、基板1上に、反射防止膜2を形成する工程と、反射防止膜2上に、レジスト膜3を形成する工程と、所定の形状からなるマスク4を介して、KrFレーザまたはi線を照射して、レジスト膜3を露光する工程と、レジスト膜3を現像し、レジストパターン3aを形成する工程と、レジストパターン3aを用いて、基板1上に電極膜5を形成する工程を備え、反射防止膜2の膜厚が、70nm以上、200nm以下であるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、さらに詳しくは、基板上に電極が形成された電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイス、半導体デバイスなど、基板上に所定の線幅の電極が形成された電子部品の製造方法として、たとえば、特許文献1(特開平5‐80534号公報)に示されるような、フォトリソグラフィ技術が広く活用されている。
【0003】
図9(A)〜図10(E)に、フォトリソグラフィ技術を用いた、典型的な、基板上への電極の形成方法を示す。
【0004】
まず、図9(A)に示すように、基板101上に、レジスト膜102を形成する。レジスト膜102は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても良い。レジスト膜102の形成は、たとえば、コーターチャック(図示せず)により基板101を裏面側から真空吸着したうえで、基板101を回転させ、基板101の表面にレジスト材料を塗布し、塗布されたレジスト材料を遠心力によって均一に伸ばすことによりおこなうことができる。
【0005】
次に、図9(B)に示すように、所望の形状からなるマスク103を介して、ArFレーザ、KrFレーザ、i線などを照射して、レジスト膜102を露光する。
【0006】
次に、図9(C)に示すように、基板101およびレジスト膜102を現像液(図示せず)に浸漬し、レジスト膜102の不要部分を除去し、レジストパターン102aを形成する。なお、レジスト膜102がポジ型の場合は、感光した部分が除去される。また、レジスト膜102がネガ型の場合は、感光しなかった部分が除去される。図9(C)においては、レジスト膜102にポジ型を用いているため、感光した部分が除去されている。
【0007】
次に、引続き図9(C)に示す状態で、加熱して、レジストパターン102aを基板101に密着させる。
【0008】
次に、図10(D)に示すように、レジストパターン102aを用いて、蒸着、スパッタリングなどにより、基板101上に、所定の線幅からなる導電膜104を形成する。なお、このとき、レジストパターン102a上には、不要な導電膜105が形成される。
【0009】
次に、図10(E)に示すように、全体をレジスト膜除去液に浸漬することにより、レジストパターン102aおよび不要な導電膜105を除去する。この結果、基板101上に、所定の線幅からなる導電膜104が形成される。この導電膜がデバイスにおける電極となる。
【0010】
上記方法によれば、基板101上に所望の線幅を有する導電膜104を形成することができる。しかしながら、上記方法には、次のような問題があった。
【0011】
まず、基板101上にレジスト膜102を形成する工程(図9(A)参照)において、基板101をコーターチャックに真空吸着する。この際、コーターチャックの熱が基板101に伝わり、さらにレジスト膜102に伝わり、レジスト材料の粘度が変化する。これにより、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、形成されたレジスト膜102の膜厚がばらつく、という問題があった。レジスト膜102の膜厚は、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅に影響を与える。すなわち、同じ条件で処理しているにもかかわらず、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、レジストパターン102aの開口の線幅がばらつく、という問題があった。そして、レジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生すると、基板101の表面に形成される導電膜104の線幅にもばらつきが発生し、さらには、製造される電子部品の特性にもばらつきが発生するという問題があった。
【0012】
また、別の問題として、レジスト膜102を露光する工程(図9(B)参照)において、照射されるArFレーザ、KrFレーザ、i線などと、基板101によるそれらの反射波とが干渉し、レジストパターン102の露光されている部分において定在波が発生して、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生するという問題があった(いわゆる「定在波干渉効果」)。そして、上述したように、レジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生すると、基板101の表面に形成される導電膜104の線幅にもばらつきが発生し、さらには、製造される電子部品の特性にもばらつきが発生するという問題があった。
【0013】
これらの問題への対策として、従来から、図11(A)に示すように、基板101とレジスト膜102の間に反射防止膜(BARC)106を設け、図11(B)に示すように、レジスト膜102への露光をおこなうことがおこなわれている。たとえば、特許文献2(特開2009‐94481号公報)には、反射防止膜を用いたフォトリソグラフィ技術が開示されている。
【0014】
反射防止膜106は、基板101上にレジスト膜102を形成する工程において、基板101からレジスト膜102へ熱が伝わるのを防ぐ効果がある。したがって、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、形成されるレジスト膜102の膜厚のばらつきを低減させることができるため、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを抑えることができる。
【0015】
また、反射防止膜106は、レジスト膜102を露光する工程において、基板101からの反射波を低減させることができるため、定在波の発生を抑え、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5‐80534号公報
【特許文献2】特開2009‐94481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した、反射防止膜106を用いた、基板101上へのレジスト膜102の形成方法においても、未だ、次のような問題があった。
【0018】
すなわち、反射防止膜106を設けても、その膜厚が十分に大きくないと、基板101上にレジスト膜102を形成する工程において、基板101からレジスト膜102へ熱が伝わるのを完全に防ぐことができなかった。従って、形成されるレジスト膜102の膜厚ばらつきが大きくなり、その結果、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅もばらつきが大きい、という問題があった。
【0019】
また、反射防止膜106の膜厚が適切でないと、レジスト膜102を露光する工程において、基板101からの反射波を十分に低減させることができず、定在波の発生を十分に抑えることができない。その結果、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを十分に抑えることができない、という問題もあった。また、反射防止膜106の膜厚が適切でないと、却って、定在波干渉効果を大きくしてしまう恐れもあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたものであり、その手段として、本発明の電子部品の製造方法は、基板と、基板の表面に形成された電極を備えた電子部品の製造方法であって、基板上に、反射防止膜を形成する工程と、反射防止膜上に、レジスト膜を形成する工程と、所定の形状からなるマスクを介して、KrFレーザまたはi線を照射して、レジスト膜を露光する工程と、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを用いて、基板上に電極膜を形成する工程を備え、反射防止膜の膜厚が、70nm以上、200nm以下であるようにした。
【0021】
なお、反射防止膜の膜厚は、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下であることがより好ましい。
【0022】
なお、レジスト膜を形成する工程は、基板をコーターチャックに保持しておこなうことができる。
【0023】
また、基板の熱伝導率は、水晶の熱伝導率以上であることが好ましい。この場合には、形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきの改善が、より顕著になるからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板上にレジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを効果的に防ぐことができる。また、レジスト膜を露光する工程において、基板からの反射波を十分に低減させることができる。これらの結果、本発明によれば、形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきを抑えることができ、そのレジストパターンを用いて形成された電極の線幅のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)〜(C)は、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法おいて適用される工程を示す断面図である。
【図2】図2(D)、(E)は、図1(C)の続きである。
【図3】反射防止膜の膜厚とレジストパターンの開口の線幅のばらつきの関係を示すグラフである。
【図4】反射防止膜の膜厚と反射率の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1(反射防止膜の膜厚が90nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図6】比較例1(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図7】水晶基板を用いた、本発明の実施例2(反射防止膜の膜厚が90nm)と比較例2(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図8】Si基板を用いた、本発明の実施例3(反射防止膜の膜厚が90nm)と比較例3(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図9】図9(A)〜(C)は、従来の電子部品の製造方法おいて適用される工程を示す断面図である。
【図10】図10(D)、(E)は、図9(C)の続きである。
【図11】図11(A)、(B)は、図9(A)〜図10(E)に示した、従来の電子部品の製造方法おいて適用される工程の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
図1(A)〜図2(E)は、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法において適用される工程を示す断面図である。
【0028】
本実施形態においては、電子部品の一例として、基板上にIDT電極が形成されてなるSAWデバイスを製造する。
【0029】
まず、図1(A)に示すように、基板1を準備し、基板1上に反射防止膜(BARC)2を形成し、さらに反射防止膜2上にレジスト膜3を形成する。
【0030】
基板1としては、たとえば、LN基板(LiNbO3 基板)やLT基板(LiTaO3 基板)を準備する。
【0031】
反射防止膜2には、たとえば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いることができる(「AZ」および「BARLi」
は登録商標である)。反射防止膜2の膜厚は、70nm以上、200nm以下とする。反射防止膜2の基板上への形成は、たとえば、スピンコータでおこなう。
【0032】
レジスト膜としては、適宜の材料を用いることができる。レジスト膜3の膜厚は、任意である。レジスト膜3の反射防止膜2上への形成は、たとえば、コーターチャック(図示せず)により基板1を裏面側から真空吸着したうえで、反射防止膜2が形成された基板1を回転させ、反射防止膜2の表面にレジスト材料を塗布し、塗布されたレジスト材料を遠心力によって均一に伸ばすことによりおこなうことができる。
【0033】
次に、図1(B)に示すように、マスク4を介して、KrFレーザまたはi線(図において矢印で示す)を照射して、レジスト膜3を露光する。KrFレーザ、i線のいずれを照射しても良いが、本実施形態においてはKrFレーザを照射した。マスク4は、たとえば、レジストパターンの開口の線幅が500nmとなるような形状に形成されている。
【0034】
次に、図1(C)に示すように、基板1、反射防止膜2、レジスト膜3を現像液(図示せず)に浸漬し、レジスト膜3と反射防止膜2の不要部分を除去し、レジストパターン3aを形成する。なお、レジスト膜3がポジ型の場合は、感光した部分が除去される。また、レジスト膜3がネガ型の場合は、感光しなかった部分が除去される。図1(C)においては、レジスト膜3にポジ型を用いているため、感光した部分が除去されている。
【0035】
次に、引続き図1(C)に示す状態で、加熱して、反射防止膜2、レジストパターン3aを基板1に密着させる。
【0036】
次に、図2(D)に示すように、レジストパターン3aを用いて、蒸着、スパッタリングなどにより、基板1上に、所定の線幅からなる導電膜5を形成する。なお、このとき、レジストパターン3a上には、不要な導電膜6が形成される。
【0037】
次に、図2(E)に示すように、全体をレジスト膜除去液に浸漬することにより、レジストパターン3a、反射防止膜2および不要な導電膜6を除去する。この結果、基板1上に、所定の線幅からなる導電膜5が形成される。導電膜5は、製造されるSAWデバイスのIDT電極や配線などを構成する。
【0038】
このあと、表面に導電膜5が形成された基板1に対し、必要に応じて、配線、パッケージングなどを施し、本実施形態にかかるSAWデバイスが完成する。
【0039】
本発明においては、反射防止膜の膜厚を70nm以上、200nm以下とするが、その理由は以下のとおりである。
【0040】
すなわち、反射防止膜は、レジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ役割をはたすが、反射防止膜の厚みが70nm以上であれば、その効果が十分だからである。
【0041】
図3は、基板上に形成された厚さ30nmの反射防止膜上と、基板上に形成された70nmの反射防止膜上に、それぞれ、レジスト膜を形成し、そのレジスト膜に、上述した方法で基板の全領域にわたって各所に開口を設けたレジストパターンを形成し、その開口の線幅のばらつきを示したものである。なお、図中、「OF水平」は基板のオリフラに対して水平方向に測定個所を移動させたことを意味し、「OF垂直」は基板のオリフラに対して垂直方向に測定個所を移動させたことを意味する。
【0042】
線幅のばらつきは、反射防止膜の厚さが30nmのときにσ=8.0nmであったものが、反射防止膜の厚さを70nmにすることによりσ=5.0nmに改善されている。
【0043】
これは、反射防止膜の厚みが30nmから70nmになることにより、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ反射防止膜の機能が十分になり、形成されるレジスト膜の厚みばらつきが小さくなり、レジスト膜に形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきが小さくなったものと考えられる。これより、レジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ役割においては、反射防止膜の厚みは、70nm以上であれば十分であることがわかる。
【0044】
また、レジスト膜を露光する工程において、定在波の発生を抑えるために、基板からの反射波を十分に低減させる必要がある。この観点からも、反射防止膜の厚みを70nm以上とすることが必要になることがいえる。これを、公知のデータである図4および表1を用いて説明する。
【0045】
図4には、反射防止膜の膜厚と反射防止膜の反射率の関係が示されている。反射率は小さいほど好ましい。そして、反射率は、反射防止膜の膜厚により変化する。
【0046】
また、表1に、主要点の反射率を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
図4および表1からわかるように、反射防止膜の膜厚が70nm以上であれば、反射率は6.2%以下となるため好ましい。この反射率であれば、実使用上問題とはならない。
【0049】
以上の理由により、本発明においては、反射防止膜の膜厚を70nm以上とした。
【0050】
一方、反射防止膜の膜厚を200nm以下としたのは、反射防止膜が200nmより大きくても、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ機能、および反射率は問題ないが、反射防止膜を形成する工程と削除する工程において、負荷が大きくなり好ましくないからである。
【0051】
また、反射防止膜の膜厚は、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下であることがより好ましい。この数値の範囲内であれば、反射率が約3.3%以下となるからである。
【0052】
なお、本発明は、KrFレーザまたはi線によりレジスト膜を露光する場合を対象としており、本発明で規定する数値は、KrFレーザまたはi線により、KrFレーザ用またはi線用のレジストを露光する場合に適用しうる数値である。
【0053】
以上、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法について説明した。しかしながら、本発明が上述の内容に限定されることはなく、発明の趣旨に応じて、種々の変更をなすことができる。
【0054】
たとえば、上記実施形態においては、電子部品の一例としてSAWデバイスを製造したが、本発明により製造される電子部品はSAWデバイスには限られず、弾性境界波デバイスや板波デバイスなど、他の電子部品であっても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、反射防止膜2に、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いているが、他の反射防
止膜材料を用いても良い。また、レジスト膜3の露光は、i線に代えて、KrFレーザを照射しておこなうようにしても良い。
【実験例】
【0056】
本発明の有効性を確認するため、次の実施例1〜3、比較例1〜3について実験をおこなった。
【0057】
(実施例1)
まず、直径100mmのLT基板を用意した。LT基板の熱伝導率は、10W/mKである。
【0058】
次に、基板上に、90nmの反射防止膜を形成した。反射防止膜には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いた。
次に、反射防止膜上に、レジスト膜を形成した。レジスト膜の目標膜厚は、800nmとした。
【0059】
次に、所望の形状からなるマスクを介してKrFレーザを照射し、レジスト膜を露光した。
【0060】
次に、基板、反射防止膜、レジスト膜を現像液に浸漬し、レジスト膜と反射防止膜の不要部分を除去し、レジストパターンを形成した。続いて、加熱して、反射防止膜とレジストパターンを基板に密着させた。レジストパターンは、基板の全領域にわたって、各所にそれぞれ、目標線幅500nmの開口を設けた形状からなる。
【0061】
そして、基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図5のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例1において、線幅のばらつきは、σ=5.0nmであった。
【0062】
更に、実施例1の基板を使い、導電膜を形成し、約9000個のSAWデバイスを作製して、基本周波数周F0のばらつきを調べた。ばらつきは、σ=4.3MHzであった。
【0063】
(比較例1)
比較例1においても、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた。ただし、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した実験例1と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0064】
比較例1についても、基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図6のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例1において、線幅のばらつきは、σ=10.0nmであった。
【0065】
更に、比較例1の基板を使い、導電膜を形成し、約9000個のSAWデバイスを作製して、基本周波数周F0のばらつきを調べた。ばらつきは、σ=8.3MHzであった。
【0066】
(実施例1と比較例1の対比)
本発明を実施することにより、比較例1においてσ=10.0nmであった線幅ばらつきが、実施例1においてσ=5.0nmに改善されている。
【0067】
同様に、比較例1においてσ=8.3MHzであったSAWデバイスの基本周波数周F0のばらつきが、実施例1においてσ=4.3MHzに改善されている。
【0068】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0069】
(実施例2)
実施例2においては、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は90nmとした。また、露光にはi線を用いた。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0070】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図7のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例2において、線幅のばらつきは、σ=8.2nmであった。
【0071】
(比較例2)
比較例2においても、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた。ただし、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した実験例1と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0072】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図7のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例2において、線幅のばらつきは、σ=8.6nmであった。
【0073】
(実施例2と比較例2の対比)
本発明を実施することにより、比較例2においてσ=8.6nmであった線幅ばらつきが、実施例2においてσ=8.2nmに改善されている。
【0074】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0075】
(実施例3)
実施例3においては、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は90nmとした。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0076】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図8のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例3において、線幅のばらつきは、σ=3.0nmであった。
【0077】
(比較例3)
比較例3においても、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0078】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図8のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例3において、線幅のばらつきは、σ=7.0nmであった。
【0079】
(実施例3と比較例3の対比)
本発明を実施することにより、比較例3においてσ=7.0nmであった線幅ばらつきが、実施例3においてσ=3.0nmに改善されている。
【0080】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0081】
(実施例1〜3の対比)
上述したとおり、本発明を実施した実施例1〜3はいずれも、比較例1〜3に対して、線幅ばらつきが改善されている。
【0082】
各実施例において実用上十分な改善がなされているが、改善の度合いは、基板の熱伝導率により異なっている。すなわち、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた、比較例2から実施例2への改善よりも、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた、比較例1から実施例1への改善の方が、より顕著である。また、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた、比較例1から実施例1への改善よりも、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた、比較例3から実施例3への改善の方が、より顕著である。
【0083】
基板の熱伝導率が高いほど、線幅ばらつきが改善されるのは、熱伝導率が低いと、基板に熱がこもり、反射防止膜の膜厚を大きくしても、レジスト膜への影響を完全になくすことができないからだと考えられる。
【0084】
本発明を適用する基板の熱伝導率は、水晶の熱伝導率以上であることが望ましい。また、LT(LiTaO3)の熱伝導率以上であることがより望ましく、Siの熱伝導率以上であることがさらに望ましい。
【符号の説明】
【0085】
1:基板
2:反射防止膜
3:レジスト膜
3a:レジストパターン
4:マスク
5:導電膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関し、さらに詳しくは、基板上に電極が形成された電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
SAWデバイス、半導体デバイスなど、基板上に所定の線幅の電極が形成された電子部品の製造方法として、たとえば、特許文献1(特開平5‐80534号公報)に示されるような、フォトリソグラフィ技術が広く活用されている。
【0003】
図9(A)〜図10(E)に、フォトリソグラフィ技術を用いた、典型的な、基板上への電極の形成方法を示す。
【0004】
まず、図9(A)に示すように、基板101上に、レジスト膜102を形成する。レジスト膜102は、ポジ型、ネガ型のいずれであっても良い。レジスト膜102の形成は、たとえば、コーターチャック(図示せず)により基板101を裏面側から真空吸着したうえで、基板101を回転させ、基板101の表面にレジスト材料を塗布し、塗布されたレジスト材料を遠心力によって均一に伸ばすことによりおこなうことができる。
【0005】
次に、図9(B)に示すように、所望の形状からなるマスク103を介して、ArFレーザ、KrFレーザ、i線などを照射して、レジスト膜102を露光する。
【0006】
次に、図9(C)に示すように、基板101およびレジスト膜102を現像液(図示せず)に浸漬し、レジスト膜102の不要部分を除去し、レジストパターン102aを形成する。なお、レジスト膜102がポジ型の場合は、感光した部分が除去される。また、レジスト膜102がネガ型の場合は、感光しなかった部分が除去される。図9(C)においては、レジスト膜102にポジ型を用いているため、感光した部分が除去されている。
【0007】
次に、引続き図9(C)に示す状態で、加熱して、レジストパターン102aを基板101に密着させる。
【0008】
次に、図10(D)に示すように、レジストパターン102aを用いて、蒸着、スパッタリングなどにより、基板101上に、所定の線幅からなる導電膜104を形成する。なお、このとき、レジストパターン102a上には、不要な導電膜105が形成される。
【0009】
次に、図10(E)に示すように、全体をレジスト膜除去液に浸漬することにより、レジストパターン102aおよび不要な導電膜105を除去する。この結果、基板101上に、所定の線幅からなる導電膜104が形成される。この導電膜がデバイスにおける電極となる。
【0010】
上記方法によれば、基板101上に所望の線幅を有する導電膜104を形成することができる。しかしながら、上記方法には、次のような問題があった。
【0011】
まず、基板101上にレジスト膜102を形成する工程(図9(A)参照)において、基板101をコーターチャックに真空吸着する。この際、コーターチャックの熱が基板101に伝わり、さらにレジスト膜102に伝わり、レジスト材料の粘度が変化する。これにより、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、形成されたレジスト膜102の膜厚がばらつく、という問題があった。レジスト膜102の膜厚は、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅に影響を与える。すなわち、同じ条件で処理しているにもかかわらず、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、レジストパターン102aの開口の線幅がばらつく、という問題があった。そして、レジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生すると、基板101の表面に形成される導電膜104の線幅にもばらつきが発生し、さらには、製造される電子部品の特性にもばらつきが発生するという問題があった。
【0012】
また、別の問題として、レジスト膜102を露光する工程(図9(B)参照)において、照射されるArFレーザ、KrFレーザ、i線などと、基板101によるそれらの反射波とが干渉し、レジストパターン102の露光されている部分において定在波が発生して、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生するという問題があった(いわゆる「定在波干渉効果」)。そして、上述したように、レジストパターン102aの開口の線幅にばらつきが発生すると、基板101の表面に形成される導電膜104の線幅にもばらつきが発生し、さらには、製造される電子部品の特性にもばらつきが発生するという問題があった。
【0013】
これらの問題への対策として、従来から、図11(A)に示すように、基板101とレジスト膜102の間に反射防止膜(BARC)106を設け、図11(B)に示すように、レジスト膜102への露光をおこなうことがおこなわれている。たとえば、特許文献2(特開2009‐94481号公報)には、反射防止膜を用いたフォトリソグラフィ技術が開示されている。
【0014】
反射防止膜106は、基板101上にレジスト膜102を形成する工程において、基板101からレジスト膜102へ熱が伝わるのを防ぐ効果がある。したがって、コーターチャックに真空吸着されている部分と、それ以外の部分で、形成されるレジスト膜102の膜厚のばらつきを低減させることができるため、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを抑えることができる。
【0015】
また、反射防止膜106は、レジスト膜102を露光する工程において、基板101からの反射波を低減させることができるため、定在波の発生を抑え、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平5‐80534号公報
【特許文献2】特開2009‐94481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述した、反射防止膜106を用いた、基板101上へのレジスト膜102の形成方法においても、未だ、次のような問題があった。
【0018】
すなわち、反射防止膜106を設けても、その膜厚が十分に大きくないと、基板101上にレジスト膜102を形成する工程において、基板101からレジスト膜102へ熱が伝わるのを完全に防ぐことができなかった。従って、形成されるレジスト膜102の膜厚ばらつきが大きくなり、その結果、形成されるレジストパターン102aの開口の線幅もばらつきが大きい、という問題があった。
【0019】
また、反射防止膜106の膜厚が適切でないと、レジスト膜102を露光する工程において、基板101からの反射波を十分に低減させることができず、定在波の発生を十分に抑えることができない。その結果、形成されたレジストパターン102aの開口の線幅のばらつきを十分に抑えることができない、という問題もあった。また、反射防止膜106の膜厚が適切でないと、却って、定在波干渉効果を大きくしてしまう恐れもあった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上述した従来の問題を解消するためになされたものであり、その手段として、本発明の電子部品の製造方法は、基板と、基板の表面に形成された電極を備えた電子部品の製造方法であって、基板上に、反射防止膜を形成する工程と、反射防止膜上に、レジスト膜を形成する工程と、所定の形状からなるマスクを介して、KrFレーザまたはi線を照射して、レジスト膜を露光する工程と、レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを用いて、基板上に電極膜を形成する工程を備え、反射防止膜の膜厚が、70nm以上、200nm以下であるようにした。
【0021】
なお、反射防止膜の膜厚は、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下であることがより好ましい。
【0022】
なお、レジスト膜を形成する工程は、基板をコーターチャックに保持しておこなうことができる。
【0023】
また、基板の熱伝導率は、水晶の熱伝導率以上であることが好ましい。この場合には、形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきの改善が、より顕著になるからである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基板上にレジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを効果的に防ぐことができる。また、レジスト膜を露光する工程において、基板からの反射波を十分に低減させることができる。これらの結果、本発明によれば、形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきを抑えることができ、そのレジストパターンを用いて形成された電極の線幅のばらつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1(A)〜(C)は、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法おいて適用される工程を示す断面図である。
【図2】図2(D)、(E)は、図1(C)の続きである。
【図3】反射防止膜の膜厚とレジストパターンの開口の線幅のばらつきの関係を示すグラフである。
【図4】反射防止膜の膜厚と反射率の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の実施例1(反射防止膜の膜厚が90nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図6】比較例1(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図7】水晶基板を用いた、本発明の実施例2(反射防止膜の膜厚が90nm)と比較例2(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図8】Si基板を用いた、本発明の実施例3(反射防止膜の膜厚が90nm)と比較例3(反射防止膜の膜厚が30nm)における、レジストパターンの開口の線幅のばらつきを示すグラフである。
【図9】図9(A)〜(C)は、従来の電子部品の製造方法おいて適用される工程を示す断面図である。
【図10】図10(D)、(E)は、図9(C)の続きである。
【図11】図11(A)、(B)は、図9(A)〜図10(E)に示した、従来の電子部品の製造方法おいて適用される工程の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0027】
図1(A)〜図2(E)は、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法において適用される工程を示す断面図である。
【0028】
本実施形態においては、電子部品の一例として、基板上にIDT電極が形成されてなるSAWデバイスを製造する。
【0029】
まず、図1(A)に示すように、基板1を準備し、基板1上に反射防止膜(BARC)2を形成し、さらに反射防止膜2上にレジスト膜3を形成する。
【0030】
基板1としては、たとえば、LN基板(LiNbO3 基板)やLT基板(LiTaO3 基板)を準備する。
【0031】
反射防止膜2には、たとえば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いることができる(「AZ」および「BARLi」
は登録商標である)。反射防止膜2の膜厚は、70nm以上、200nm以下とする。反射防止膜2の基板上への形成は、たとえば、スピンコータでおこなう。
【0032】
レジスト膜としては、適宜の材料を用いることができる。レジスト膜3の膜厚は、任意である。レジスト膜3の反射防止膜2上への形成は、たとえば、コーターチャック(図示せず)により基板1を裏面側から真空吸着したうえで、反射防止膜2が形成された基板1を回転させ、反射防止膜2の表面にレジスト材料を塗布し、塗布されたレジスト材料を遠心力によって均一に伸ばすことによりおこなうことができる。
【0033】
次に、図1(B)に示すように、マスク4を介して、KrFレーザまたはi線(図において矢印で示す)を照射して、レジスト膜3を露光する。KrFレーザ、i線のいずれを照射しても良いが、本実施形態においてはKrFレーザを照射した。マスク4は、たとえば、レジストパターンの開口の線幅が500nmとなるような形状に形成されている。
【0034】
次に、図1(C)に示すように、基板1、反射防止膜2、レジスト膜3を現像液(図示せず)に浸漬し、レジスト膜3と反射防止膜2の不要部分を除去し、レジストパターン3aを形成する。なお、レジスト膜3がポジ型の場合は、感光した部分が除去される。また、レジスト膜3がネガ型の場合は、感光しなかった部分が除去される。図1(C)においては、レジスト膜3にポジ型を用いているため、感光した部分が除去されている。
【0035】
次に、引続き図1(C)に示す状態で、加熱して、反射防止膜2、レジストパターン3aを基板1に密着させる。
【0036】
次に、図2(D)に示すように、レジストパターン3aを用いて、蒸着、スパッタリングなどにより、基板1上に、所定の線幅からなる導電膜5を形成する。なお、このとき、レジストパターン3a上には、不要な導電膜6が形成される。
【0037】
次に、図2(E)に示すように、全体をレジスト膜除去液に浸漬することにより、レジストパターン3a、反射防止膜2および不要な導電膜6を除去する。この結果、基板1上に、所定の線幅からなる導電膜5が形成される。導電膜5は、製造されるSAWデバイスのIDT電極や配線などを構成する。
【0038】
このあと、表面に導電膜5が形成された基板1に対し、必要に応じて、配線、パッケージングなどを施し、本実施形態にかかるSAWデバイスが完成する。
【0039】
本発明においては、反射防止膜の膜厚を70nm以上、200nm以下とするが、その理由は以下のとおりである。
【0040】
すなわち、反射防止膜は、レジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ役割をはたすが、反射防止膜の厚みが70nm以上であれば、その効果が十分だからである。
【0041】
図3は、基板上に形成された厚さ30nmの反射防止膜上と、基板上に形成された70nmの反射防止膜上に、それぞれ、レジスト膜を形成し、そのレジスト膜に、上述した方法で基板の全領域にわたって各所に開口を設けたレジストパターンを形成し、その開口の線幅のばらつきを示したものである。なお、図中、「OF水平」は基板のオリフラに対して水平方向に測定個所を移動させたことを意味し、「OF垂直」は基板のオリフラに対して垂直方向に測定個所を移動させたことを意味する。
【0042】
線幅のばらつきは、反射防止膜の厚さが30nmのときにσ=8.0nmであったものが、反射防止膜の厚さを70nmにすることによりσ=5.0nmに改善されている。
【0043】
これは、反射防止膜の厚みが30nmから70nmになることにより、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ反射防止膜の機能が十分になり、形成されるレジスト膜の厚みばらつきが小さくなり、レジスト膜に形成されるレジストパターンの開口の線幅のばらつきが小さくなったものと考えられる。これより、レジスト膜を形成する工程において、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ役割においては、反射防止膜の厚みは、70nm以上であれば十分であることがわかる。
【0044】
また、レジスト膜を露光する工程において、定在波の発生を抑えるために、基板からの反射波を十分に低減させる必要がある。この観点からも、反射防止膜の厚みを70nm以上とすることが必要になることがいえる。これを、公知のデータである図4および表1を用いて説明する。
【0045】
図4には、反射防止膜の膜厚と反射防止膜の反射率の関係が示されている。反射率は小さいほど好ましい。そして、反射率は、反射防止膜の膜厚により変化する。
【0046】
また、表1に、主要点の反射率を示す。
【0047】
【表1】
【0048】
図4および表1からわかるように、反射防止膜の膜厚が70nm以上であれば、反射率は6.2%以下となるため好ましい。この反射率であれば、実使用上問題とはならない。
【0049】
以上の理由により、本発明においては、反射防止膜の膜厚を70nm以上とした。
【0050】
一方、反射防止膜の膜厚を200nm以下としたのは、反射防止膜が200nmより大きくても、基板からレジスト膜へ熱が伝わるのを防ぐ機能、および反射率は問題ないが、反射防止膜を形成する工程と削除する工程において、負荷が大きくなり好ましくないからである。
【0051】
また、反射防止膜の膜厚は、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下であることがより好ましい。この数値の範囲内であれば、反射率が約3.3%以下となるからである。
【0052】
なお、本発明は、KrFレーザまたはi線によりレジスト膜を露光する場合を対象としており、本発明で規定する数値は、KrFレーザまたはi線により、KrFレーザ用またはi線用のレジストを露光する場合に適用しうる数値である。
【0053】
以上、本発明の実施形態にかかる電子部品の製造方法について説明した。しかしながら、本発明が上述の内容に限定されることはなく、発明の趣旨に応じて、種々の変更をなすことができる。
【0054】
たとえば、上記実施形態においては、電子部品の一例としてSAWデバイスを製造したが、本発明により製造される電子部品はSAWデバイスには限られず、弾性境界波デバイスや板波デバイスなど、他の電子部品であっても良い。
【0055】
また、上記実施形態においては、反射防止膜2に、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いているが、他の反射防
止膜材料を用いても良い。また、レジスト膜3の露光は、i線に代えて、KrFレーザを照射しておこなうようにしても良い。
【実験例】
【0056】
本発明の有効性を確認するため、次の実施例1〜3、比較例1〜3について実験をおこなった。
【0057】
(実施例1)
まず、直径100mmのLT基板を用意した。LT基板の熱伝導率は、10W/mKである。
【0058】
次に、基板上に、90nmの反射防止膜を形成した。反射防止膜には、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の商品名「AZ BARLi II Coatings」を用いた。
次に、反射防止膜上に、レジスト膜を形成した。レジスト膜の目標膜厚は、800nmとした。
【0059】
次に、所望の形状からなるマスクを介してKrFレーザを照射し、レジスト膜を露光した。
【0060】
次に、基板、反射防止膜、レジスト膜を現像液に浸漬し、レジスト膜と反射防止膜の不要部分を除去し、レジストパターンを形成した。続いて、加熱して、反射防止膜とレジストパターンを基板に密着させた。レジストパターンは、基板の全領域にわたって、各所にそれぞれ、目標線幅500nmの開口を設けた形状からなる。
【0061】
そして、基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図5のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例1において、線幅のばらつきは、σ=5.0nmであった。
【0062】
更に、実施例1の基板を使い、導電膜を形成し、約9000個のSAWデバイスを作製して、基本周波数周F0のばらつきを調べた。ばらつきは、σ=4.3MHzであった。
【0063】
(比較例1)
比較例1においても、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた。ただし、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した実験例1と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0064】
比較例1についても、基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図6のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例1において、線幅のばらつきは、σ=10.0nmであった。
【0065】
更に、比較例1の基板を使い、導電膜を形成し、約9000個のSAWデバイスを作製して、基本周波数周F0のばらつきを調べた。ばらつきは、σ=8.3MHzであった。
【0066】
(実施例1と比較例1の対比)
本発明を実施することにより、比較例1においてσ=10.0nmであった線幅ばらつきが、実施例1においてσ=5.0nmに改善されている。
【0067】
同様に、比較例1においてσ=8.3MHzであったSAWデバイスの基本周波数周F0のばらつきが、実施例1においてσ=4.3MHzに改善されている。
【0068】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0069】
(実施例2)
実施例2においては、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は90nmとした。また、露光にはi線を用いた。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0070】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図7のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例2において、線幅のばらつきは、σ=8.2nmであった。
【0071】
(比較例2)
比較例2においても、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた。ただし、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した実験例1と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0072】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図7のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例2において、線幅のばらつきは、σ=8.6nmであった。
【0073】
(実施例2と比較例2の対比)
本発明を実施することにより、比較例2においてσ=8.6nmであった線幅ばらつきが、実施例2においてσ=8.2nmに改善されている。
【0074】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0075】
(実施例3)
実施例3においては、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は90nmとした。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0076】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図8のグラフに、各個所の線幅を示す。実施例3において、線幅のばらつきは、σ=3.0nmであった。
【0077】
(比較例3)
比較例3においても、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた。そして、反射防止膜の膜厚は30nmとした。その他の点は、上述した第1実験例と同じ方法、条件にしてレジストパターンを作成した。
【0078】
基板上の20個所について、レジストパターンの開口の線幅を測定した。図8のグラフに、各個所の線幅を示す。比較例3において、線幅のばらつきは、σ=7.0nmであった。
【0079】
(実施例3と比較例3の対比)
本発明を実施することにより、比較例3においてσ=7.0nmであった線幅ばらつきが、実施例3においてσ=3.0nmに改善されている。
【0080】
以上より、本発明を実施すれば、基板上に線幅精度の高い導電膜を形成できることがわかる。
【0081】
(実施例1〜3の対比)
上述したとおり、本発明を実施した実施例1〜3はいずれも、比較例1〜3に対して、線幅ばらつきが改善されている。
【0082】
各実施例において実用上十分な改善がなされているが、改善の度合いは、基板の熱伝導率により異なっている。すなわち、基板に熱伝導率8W/mKの水晶基板を用いた、比較例2から実施例2への改善よりも、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた、比較例1から実施例1への改善の方が、より顕著である。また、基板に熱伝導率10W/mKのLT基板を用いた、比較例1から実施例1への改善よりも、基板に熱伝導率168W/mKのSi基板を用いた、比較例3から実施例3への改善の方が、より顕著である。
【0083】
基板の熱伝導率が高いほど、線幅ばらつきが改善されるのは、熱伝導率が低いと、基板に熱がこもり、反射防止膜の膜厚を大きくしても、レジスト膜への影響を完全になくすことができないからだと考えられる。
【0084】
本発明を適用する基板の熱伝導率は、水晶の熱伝導率以上であることが望ましい。また、LT(LiTaO3)の熱伝導率以上であることがより望ましく、Siの熱伝導率以上であることがさらに望ましい。
【符号の説明】
【0085】
1:基板
2:反射防止膜
3:レジスト膜
3a:レジストパターン
4:マスク
5:導電膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に形成された電極を備えた電子部品の製造方法であって、
前記基板上に、反射防止膜を形成する工程と、
前記反射防止膜上に、レジスト膜を形成する工程と、
所定の形状からなるマスクを介して、KrFレーザまたはi線を照射して、前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを用いて、前記基板上に前記電極膜を形成する工程を備え、
前記反射防止膜の膜厚が、70nm以上、200nm以下である電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記反射防止膜の膜厚が、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下である、請求項1に記載された電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記レジスト膜を形成する工程が、前記基板をコーターチャックに保持しておこなわれる、請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記基板の熱伝導率が、水晶の熱伝導率以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記基板の熱伝導率が、LiTaO3の熱伝導率以上である、請求項4に記載された電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記基板の熱伝導率が、Siの熱伝導率以上である、請求項5に記載された電子部品の製造方法。
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に形成された電極を備えた電子部品の製造方法であって、
前記基板上に、反射防止膜を形成する工程と、
前記反射防止膜上に、レジスト膜を形成する工程と、
所定の形状からなるマスクを介して、KrFレーザまたはi線を照射して、前記レジスト膜を露光する工程と、
前記レジスト膜を現像し、レジストパターンを形成する工程と、
前記レジストパターンを用いて、前記基板上に前記電極膜を形成する工程を備え、
前記反射防止膜の膜厚が、70nm以上、200nm以下である電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記反射防止膜の膜厚が、80nm以上、105nm以下、または、160nm以上、200nm以下である、請求項1に記載された電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記レジスト膜を形成する工程が、前記基板をコーターチャックに保持しておこなわれる、請求項1または2に記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
前記基板の熱伝導率が、水晶の熱伝導率以上である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載された電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記基板の熱伝導率が、LiTaO3の熱伝導率以上である、請求項4に記載された電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記基板の熱伝導率が、Siの熱伝導率以上である、請求項5に記載された電子部品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−44887(P2013−44887A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181756(P2011−181756)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】
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