説明

電子部品を弾力的に支持する方法および電子装置

電子装置において、電子部品(17)を保持する方法。電子装置は、PCB(プリント回路基板)(14)と、当該PCB(14)の少なくとも一部をカバーする構造部材(15)とを含む。本方法には、電子部品(17)をPCB(14)上に搭載するステップと、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18)を構造部材(15)の領域22にあてがうステップと、PCB(14)と構造部材(15)とを組み立てるステップとを含む。衝撃吸収部材(18)は、電子部品(17)をカバーするように構成されている。組み立ての際には、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18)をPCB(14)に向けて電子部品(17)上に圧力が作用するようにする。構造部材とPCBとの間に弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18)を設けた電子装置も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB(プリント回路基板)と、PCBの少なくとも一部をカバーする構造部材とを含む電子装置において、電子部品を支持する方法に関連する。本発明は同様にそのような電子装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
はんだ付けによってPCB(プリント回路基板)に取り付けられる電子部品では、PCBを提供された電子装置に作用する動的な力によってはんだの継ぎ目に亀裂が生じるといった一般的な問題にさらされている。亀裂は、電子部品とPCBとの間の電気的な接触を断つため、電子装置の機能に影響が生じる。亀裂は、一般に、電子装置を落下させたり、電子装置の主要部に大きな力が作用したり、または主要部が繰り返し衝撃を受けることで疲労破壊が引き起こされたりすると発生する。
【0003】
PCBは電子部品よりも柔軟性があるので亀裂が生じる。外力が電子装置に作用すると、しばしばPCBが小さく折れ曲がり、それがPCBと電子部品との間のにあるはんだの継ぎ目に応力が働くことになる。亀裂形成の問題は、いわゆるチップスケール部品や、とりわけBGA(ボールグリッドアレイ)タイプの部品で発生する。BGAタイプの部品は、当該部品の底面に設けられた複数のボール形状のはんだ付けポイントを介してPCBへとはんだ付けされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
はんだの継ぎ目に発生する亀裂の形成は別としても、PCBが折れ曲がることで、同様に電子部品自体に亀裂が生じる可能性がある。さらに、この亀裂によって電子部品が誤動作し、最終的に、電子装置が誤動作するおそれがある。
【0005】
これまで、はんだ付けの継ぎ目に発生する亀裂を回避する種々の技術が採用されてきた。1つは、いわゆる「アンダーフィル(underfill)」手法である。これは、エポキシタイプの接着剤を、PCBと電子部品との間のはんだ付けの継ぎ目の周囲に付与するものである。たとえ亀裂が形成されるような状況であっても、大抵の場合、この問題を解決できる。このアンダーフィル手法には、いくつかの欠点がある。どちらかといえば高価手法であり、また、後でPCBを修復することもできず、さらに、エポキシタイプの接着剤を用いることは環境的に望ましくない。
【0006】
はんだ継ぎ目の亀裂の形成を最小限にするために使用されてきたもう1つの技術は、いわゆる「オーバーフィル(overfill)」手法である。この手法は、シールド缶や電子部品をカバーするフレームなどの構造部材と電子部品との間に、熱溶融(ホットメルト)接着剤を設けるものである。この解決手法の目的は、PCB、電子部品及び構造部材からなるリジッド構造を形成することにある。このリジッド構造は、外力が電子装置に作用しても、PCBの折れ曲がる程度を減少させることにある。しかしながら、この解決手法にもいくつかの欠点がある。ホットメルト接着剤によって構造部材と電子部品とが連結されているため、その後の修理は難しくなり、また、電子部品とホットメルト接着剤との間に小さなギャップが生じるので、硬化したホットメルト接着剤によって電子部品が完全には支持されない。
【0007】
そこで、本発明は、上述したアンダーフィルの解決手法及びオーバーフィルの解決手法の各欠点に対して、シールド缶や電子部品をカバーするフレームなどの構造部材と、PCB(プリント回路基板)とを含む電子装置において、電子部品を支持するための新規かつ改善された方法を提供する。本方法によって、製品における上述の課題が解決され、PCB上の電子部品を完全に支持することができるようになる。また、本発明は、電子部品の完全な支持を確実ならしめる電子装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下のステップを用いる電子部品を支持する方法によって、本発明の目的は達成される:
− 電子部品をPCBに取り付けるステップと;
− 弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材を、電子部品をカバーするように構成された構造部材の領域に適用するステップと;
− 弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材によってPCBの方向へと電子部品に圧力が作用するような手法により、PCBと構造部材とを組み立てるステップとを含む。
【0009】
弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材によってPCBの方向へと電子部品に圧力が作用するような手法により、PCBと構造部材との間に弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材を設けた上述の電子装置によっても、本発明は達成される。
【0010】
本発明に係る電子装置および方法によれば、PCBの方向へと電子部品に圧力を作用させる弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材によって電子部品が完全に支持されることになる。これは、主要部への圧力など、電子装置に適用されるいかなる外力も、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材によってある程度吸収されることを意味する。これにより、電子部品とPCBとの間におけるはんだの継ぎ目への応力が軽減される。本発明に係る弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材を使用することで、チップスケール部品に関連するはんだ継ぎ目部の亀裂が顕著に減少することを観測した。これは、電子装置の主要部に大きな力が作用する場合だけでなく、誤作動をもたらすような衝撃が主要部に繰り返し作用する場合にも効果があった。
【0011】
好ましい実施形態によれば、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材としてシリコンを用いる。この材料は、電子装置においてしばしばフレームや他の構造部材部品上のガスケットを構成するために使用されるものであり、従って、大幅なコスト増を招くことなく、フレームや他の構造部品にも適用しうる。
【0012】
他の適当な材料としては、同様に低価格で、構造部材としても利用可能な熱可塑性のエラストマーが含まれよう。
【0013】
弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料は、導電性があってもよい。この場合、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料を電子装置の機能の一部としても利用できよう。
【0014】
もし構造部材が電磁シールド缶であり、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材がシールド缶の外縁に適用される製造工程において、電子部品をカバーするように構成されているシールド缶の領域に同一の弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材を適用すれば、とりわけ好適であろう。これによって、リムの支持部材および電子部品の支持部材として2つの異なる材料を採用する場合に比較し、製造コストが削減される。
【0015】
好ましい実施形態によれば、電子装置は、移動電話機などの移動無線装置である。
【0016】
これは強調しておくべきことであるが、本明細書において「含む/含んでいる」との用語が使用されるときは、記載の特徴、数、ステップまたは部品などの存在を特定するために使用されていると理解されなければならず、他の一以上の特徴、数、ステップもしくは部品またはこれらの組み合わせとなるグループの存在を排除することを意図してはいない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下において、図面を参照しつつ本発明を詳細に説明する。
【0018】
図1は、フロントカバー2と、バックカバー3と、フロントカバー2に取り付けられたPCB4と、内部フレーム5と、バッテリー6とを含む移動電話機1を部分的に分解した様子を示している。
【0019】
PCB4には、いくつかの電子部品が取り付けられており、そのうちのいくつかはチップスケール部品7、7’である。これらは、いわゆるBGA(ボールグリッドアレイ)タイプの部品である。これらのタイプの電子部品は、露出しているので、移動電話機1の主要部に外力が働いたときに、電子部品とPCB4との間にあるはんだの継ぎ目に亀裂が形成されてしまう。
【0020】
内部フレーム5は、PCB上の電子部品を電磁波から保護するために、シールド缶として形成されてもよいし、あるいは移動電話機1の構造部材の一部として形成されてもよい。内部フレーム5は、チップスケール部品7、7’をカバーするような領域を有しており、また、本発明によればこれらの領域には、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料8,8’の層が設けられており、これにより、内部フレームがPCB4上に搭載されたときに、チップスケール部品7、7’上に逆圧が働く。内部フレーム5をPCB4へと結合する際には、ねじ止め、はんだ付けまたは接着など、従来のいかなる方法が用いられてもよい。また、フロントカバー2またはバックカバー6へとしっかりと結合することで、内部フレーム5を間接的にPCB4へと結合してもよい。
【0021】
図2は、金属製シールド缶15を用いて、PCB14上のBGAタイプのチップスケール部品17を支持する本発明に係る方法を示す図である。本方法は、初めのうちは並行に工程(部品搭載工程とシールド缶準備工程)が進む。
【0022】
部品搭載工程において、ボールグリッドアレイ19を有するチップスケール部品17は、何れかの既知の処理(表面搭載処理など)が使用され、PCB上に搭載される。この処理で、チップスケール部品17はPCB14上に位置決めされ(好ましくはピック・アンド・プレイス装置が使用される。)、PCB14には熱が加えられ、チップスケール部品17とPCB14との間にはんだ付けの継ぎ目が生成される。これは、ボールグリッドアレイ19におけるそれぞれのはんだ屑のところで行われる。もちろん、他の電子部品についても、PCB14上に位置決めされるが、この点に関しては明瞭性の観点から不図示とする。
【0023】
平坦かつ開放型の金属ボックスであるシールド缶15を準備する工程において、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料が取り付けられる。好ましい実施形態によれば、導電性のシリコン材料18,18’が衝撃吸収材料として用いられる。また、衝撃吸収材料は、外縁またはリム21および領域22に設けられ、シールド缶15がPCB14とともに組み立てられると、チップスケール部品17を覆うように構成されている。導電性のシリコン材料18、18’は、シールド缶15のリム21のところにある層に配置される。これにより、シールド缶のリム21とPCB14とが完全に接触するように固定される。また、電子部品17をカバーするように構成された領域の層にも導電性のシリコン材料18、18’が設けられるが、図2の最後に示すように、シールド缶15が逆さまにされ、PCB14上に取り付けられると、導電性のシリコン材料18、18’によってチップスケール部品17上に逆圧がかかるように、十分にしっかりと取り付けられる。
【0024】
弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料は、適当な弾力特性を有する多数の材料の中から選択することができる。好ましくは、図2を参照しつつ説明したように導電性を有するシリコン材料を採用できるであろうし、あるいは、2重金型処理において適用される通常のシリコンも採用可能であろう。他の適当な材料としては、熱可塑性エラストマーや他の何れかの種類のゴムもしくはゴムのよう材料も採用できるであろう。
【0025】
弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料は、使用される当該材料に依存する何れかの便利な方法を用いて、構造部材として利用されてもよい。当業者であれば、使用する材料が一旦決まってしまえば、適切な応用方法を簡単に選択できよう。
【0026】
弾力的に圧縮可能な衝撃吸収材料が利用される構造部材は、電子装置における何れの構造的な部位または機能的な部位にも使用可能である。図1および図2によれば、この構造部材は、電子装置の内部フレームや、電磁波から電子部品を保護するためのシールド缶であってもよい。また、この構造部材は、電子装置の外装やケースであってもよい。もちろん、この構造部材は、金属やプラスティックのように、何れかの適切な材料から作成されよう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、PCBと、PCB上のいくつかの電子部品を支持する手段が設けられた内部フレームとを含む移動電話機を部分的に分解した様子を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係るPCB上の電子部品を支持する方法を段階的に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCB(プリント回路基板)(4;14)と、該PCB(4;14)の少なくとも一部をカバーする構造部材(5;15)とを含む電子装置において電子部品(7,7’;17)を支持する方法であって、
− 前記電子部品(7,7’;17)を前記PCB(4;14)上に取り付けるステップと;
− 弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)を、前記電子部品(7,7’;17)をカバーするように構成された前記構造部材(5;15)の領域(22)に適用するステップと;
− 前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)を前記PCB(4;14)の方向へと前記電子部品(7,7’;17)に圧力を作用させるような手法により、前記PCB(4;14)と前記構造部材とを組み立てるステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)としてシリコンを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)として熱可塑性のエラストマーを用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)は導電性を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記構造部材が電磁シールド缶(15)であり、前記電子部品(17)をカバーするために前記電磁シールド缶(15)の領域(22)に前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18,18’)を適用する製造工程と同一の製造工程において、前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18,18’)を前記電磁シールド缶(15)の外縁へと適用すること特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
電子部品(7,7’;17)を伴うPCB(プリント回路基板)(4;14)と、該PCB(4;14)の少なくとも一部をカバーする構造部材(5;15)とを含む電子装置であって、弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)を前記PCB(4;14)の方向へと前記電子部品(7,7’;17)に圧力を作用させるような手法により、前記電子部品(7,7’;17)と前記構造部材(5;15)との間に前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)が設けられていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)としてシリコンが用いられていることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)として熱可塑性のエラストマーが用いられていることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【請求項9】
前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(8,8’;18)は導電性を有することを特徴とする請求項6ないし8のいずれかに記載の電子装置。
【請求項10】
前記構造部材は電磁シールド缶(15)であり、前記電子部品(17)をカバーするために前記電気シールド缶(15)の領域(22)に前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18,18’)が適用されており、かつ、前記電磁シールド缶(15)の外縁に前記弾力的に圧縮可能な衝撃吸収部材(18,18’)が適用されていること特徴とする請求項9に記載の電子装置。
【請求項11】
前記電子装置は、移動電話機(1)のような移動無線装置であることを特徴とする請求項6ないし請求項10のいずれかに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−514427(P2006−514427A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552476(P2004−552476)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【国際出願番号】PCT/EP2003/011458
【国際公開番号】WO2004/047510
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(502087507)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ, エービー (823)
【Fターム(参考)】