説明

電子部品内蔵基板の製造方法

【課題】多層配線基板内に電子部品を内蔵する電子部品内蔵基板の製造方法に関し、内蔵される電子部品の厚さに拘わらず容易かつ安価に電子部品を内蔵しうる電子部品内蔵基板を製造すること。
【解決手段】内蔵電子部品が内蔵されるキャビティ30の形成位置と対応する位置に予め開口部70が形成されたビルドアップ層17,23を内蔵電子部品の厚さDに相当する層数だけ銅張積層板10上に積層する第1のビルドアップ層積層工程と、キャビティ30に内蔵電子部品を収納する収納工程と、キャビティ30が形成されたビルドアップ層17,23及び内蔵電子部品上に、更にビルドアップ層を形成する第2のビルドアップ層積層工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品内蔵基板の製造方法に係り、特に多層配線基板内に電子部品を内蔵する電子部品内蔵基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置は搭載される半導体素子の動作周波数が高周波数化してきており、これに伴って、半導体素子に供給する電源電圧の安定化を図ることが必要となってきている。これに対応するために、半導体素子が搭載される半導体装置用基板の内部に電子部品(例えば、キャパシタ素子)を組み込んだ構成の電子部品内蔵基板が提案されている。
【0003】
一方、半導体素子の高密度化に伴い、半導体素子に形成される電極パッドの狭ピッチ化が進んでいる。これに対して従来から一般に用いられている通常のプリント配線基板では、半導体素子に形成された電極パッドのピッチに対応した狭ピッチの配線パターンを形成することは困難である。このため、通常のプリント配線基板は、半導体素子を搭載する基板として使用できなくなってきている。
【0004】
そこで、近年ではプリント配線基板をコア層として、その両面にビルドアップ法を用いてビルドアップ層と配線層を積層形成すると共に各配線層間をビアで接続した、いわゆるビルドアッププリント配線基板と称せられる多層基板が用いられるようになってきている。尚、ビルドアップ法を用いて形成される、配線層が表面に形成されたビルドアップ層(一層のみ)のことをビルドアップ層というものとする。
【0005】
従来、この種の多層配線基板に対して電子部品(キャパシタ素子等)を組み込むには、例えば特許文献1参照に開示されているように、多層形成されるビルドアップ層のいずれか一のビルドアップ層(以下、素子内層ビルドアップ層という)内に電子部品を内設することが行われていた。
【0006】
具体的には、ビルドアップ法のプロセスにおいて、素子内層ビルドアップ層の形成時にチップ部品を組み込むキャビティを形成し、このキャビティ内に電子部品を配設する。その後、この素子内層ビルドアップ層の上部にビルドアップ法を用いてビルドアップ層と配線層を積層形成すると共にビアを形成する。また、素子内層ビルドアップ層に配設された電子部品の端子と多層配線基板内の配線層は、ビアを介して電気的に接続される構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−197809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、従来の電子部品内蔵基板では、積層される(ビルドアップ)されるビルドアップ層のいずれか一のビルドアップ層(素子内層ビルドアップ層)内に電子部品が内設される構成とされていた。しかしながら、一のビルドアップ層である素子内層ビルドアップ層内に電子部品を設ける構成では、必然的に電子部品の厚さを素子内層ビルドアップ層の厚さよりも薄くする必要が生じる。
【0009】
通常、ビルドアップ法により積層されるビルドアップ層の厚さは50μm程度であるため、電子部品は50μm以下の厚さにする必要がある。しかしながら、厚さが50μm以下の電子部品を製造することは容易ではなく高コスト化してしまい、また製造が困難であることより歩留り改善等を確立しないと最終製品が成り立たないという問題点があった。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、内蔵される電子部品の厚さに拘わらず容易かつ安価に電子部品を内蔵しうる電子部品内蔵基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために本発明では、次に述べる各手段を講じたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項1記載の発明は、
複数層形成されたビルドアップ層内に電子部品が内蔵された電子部品内蔵基板の製造方法であって、
前記電子部品が内蔵されるキャビティの形成位置と対応する位置に予め開口部が形成されたビルドアップ層を、前記電子部品の厚さに相当する層数だけコア基板上に積層する第1のビルドアップ層積層工程と、
前記キャビティに前記電子部品を収納する収納工程と、
前記キャビティが形成されたビルドアップ層及び前記電子部品上に、更にビルドアップ層を形成する第2のビルドアップ層積層工程とを有することを特徴とするものである。
【0013】
上記発明によれば、キャビティの形成位置と対応する位置に予め開口部が形成されたビルドアップ層を電子部品の厚さに相当する層数だけコア基板上に積層することにより、ビルドアップ層が積層された状態で電子部品が内蔵されるキャビティが形成される。
【0014】
この際、1層のビルドアップ層の厚さは電子部品の厚さよりも薄くても、複数積層されることにより積層されたビルドアップ層全体の厚さは電子部品の厚さに相当する厚さとなっており、よってキャビティの深さは電子部品を内部に収納しうる深さとなっている。そして、収納工程においてキャビティに電子部品を収納し、続いて第2のビルドアップ層積層工程においてキャビティが形成されたビルドアップ層及び電子部品上にビルドアップ層を形成することにより、電子部品は第1及び第2のビルドアップ層内に内蔵される。
【0015】
よって、電子部品の厚さをビルドアップ層の厚さ以下にする必要はなく、電子部品内蔵基板のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。また、開口部は予め各ビルドアップ層に形成されているため、電子部品内蔵基板の製造工程において開口部の形成時間を無くすることができ、電子部品内蔵基板を更に効率良く短時間で製造することができる。
【0016】
また、請求項2記載の発明は、
請求項1記載の電子部品内蔵基板の製造方法において、
前記コア基板に位置決めピンを設けると共に、前記積層されるビルドアップ層に位置決め孔を形成し、
前記位置決めピンに前記位置決め孔を挿通することにより、前記ビルドアップ層に形成された各開口を一致させて前記キャビティを形成することを特徴とするものである。
【0017】
上記発明によれば、コア基板に形成された位置決めピンに、ビルドアップ層に形成された位置決め孔を挿通することにより、ビルドアップ層に形成された各開口が一致するよう位置決めしてキャビティを形成するため、キャビティを高精度に形成することができ、電子部品の収納処理を確実に行うことができる。
【0018】
また、請求項3記載の発明は、
請求項2記載の電子部品内蔵基板の製造方法において、
前記コア基板として銅張積層板を用い、
前記位置決めピンを該銅張積層板に立設したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
上述の如く本発明によれば、内蔵される電子部品の厚さに拘わらず、容易かつ安価に電子部品内蔵基板を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その1)。
【図2】図2は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その2)。
【図3】図3は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その3)。
【図4】図4は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その4)。
【図5】図5は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その5)。
【図6】図6は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その6)。
【図7】図7は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その7)。
【図8】図8は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その8)。
【図9】図9は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その9)。
【図10】図10は、第1参考例である製造方法で製造された電子部品内蔵基板を用いた半導体装置を示す図である。
【図11】図11は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その1)。
【図12】図12は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その2)。
【図13】図13は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その3)。
【図14】図14は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その4)。
【図15】図15は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その5)。
【図16】図16は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その6)。
【図17】図17は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その7)。
【図18】図18は、本発明の第2参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その8)。
【図19】図19は、本発明の一実施例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その1)。
【図20】図20は、本発明の一実施例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その2)。
【図21】図21は、本発明の一実施例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その3)。
【図22】図22は、本発明の一実施例である電子部品内蔵基板の製造方法を説明するための図である(その4)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面と共に説明する。
【0022】
図1乃至図10は、本発明の第1参考例である電子部品内蔵基板の製造方法を製造手順に沿って示す図である。特に、図9は第1参考例に係る製造方法により製造された電子部品内蔵基板50を示しており、図10はこの電子部品内蔵基板50を用いて製造された半導体装置60を示している。先ず、図9及び図10を用いて、第1参考例に係る製造方法により製造される電子部品内蔵基板50及び半導体装置60の構成について説明しておく。
【0023】
図9に示すように、電子部品内蔵基板50はコア基板11、ビルドアップ層17,18,23,24,34,35、内蔵電子部品32、ソルダーレジスト41,42等により構成されている。コア基板11は、後述するように両面銅張積層板を加工したものであり、その両面に配線14,15が形成されている。
【0024】
このコア基板11の図中上部には、ビルドアップ層17,23,34が順次積層された構成とされている。また、コア基板11の図中下部には、ビルドアップ層18,13,35が順次積層された構成とされている。この各ビルドアップ層17,18,23,24,34,35は、絶縁層17A,18A,23A,24A,34A,35Aと、ビア17B,18B,23B,24B,34B,35Bと、配線層17C,18C,23C,24C,34C,35Cとにより構成されている。この配線層17C,18C,23C,24C,34C,35Cは、ビア17B,18B,23B,24B,34B,35Bにより層間接続された構成とされている。
【0025】
本参考例に係る電子部品内蔵基板50では、コア基板11の図中上部に内蔵電子部品32が配設されている。この内蔵電子部品32は、本参考例ではチップコンデンサを用いた例を示しているが、特にチップコンデンサに限定されるものではない。この内蔵電子部品32は、ビア34Bを介して配線層34Cに接続されている。
【0026】
最上層に位置するビルドアップ層34の上部にはソルダーレジスト41が形成されており、また最下層に位置するビルドアップ層35の下部にはソルダーレジスト42が形成されている。ソルダーレジスト41には、図10に示す半導体チップ51に配設されたバンプ52が配線層34Cと接続するための開口43が形成されている。また、ソルダーレジスト42には、図10に示す外部接続端子となるはんだボール53が接続される開口44が形成されている。
【0027】
ここで、コア基板11の上部に積層形成された各ビルドアップ層17,23,34内における内蔵電子部品32の内蔵状態に注目する。本参考例では、内蔵電子部品32の厚さは、個々のビルドアップ層17,23,34の厚さよりも大きくなっている。具体的には、内蔵電子部品32の厚さは約100μmであるのに対し、各ビルドアップ層17,23,34の厚さは約50μmとされている。
【0028】
即ち、本参考例では内蔵電子部品32は、ビルドアップ層17とビルドアップ層23とのふたつのビッドアップ層が積層された積層体(以下、第1のビルドアップ積層体31という)内に埋設された(内蔵された)構成となっている。この際、内蔵電子部品32の上面は、ビルドアップ層23の上面と面一となるよう構成されている。
【0029】
このように、複数層(本参考例では2層)のビルドアップ層17,23よりなる第1のビルドアップ積層体31内に内蔵電子部品32を内蔵することにより、電子部品内蔵基板50及びこれを用いる半導体装置60のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。尚、この理由については、説明の便宜上後述するものとする。
【0030】
続いて、上記構成とされた電子部品内蔵基板50の製造方法について説明する。電子部品内蔵基板50を製造するには、先ず図1に示すような銅張積層板10を用意する。この銅張積層板10は、コア基板11の両面に銅膜12,13が形成されたものである。
【0031】
この銅張積層板10の両面には感光性レジストが塗布されると共に露光・現像処理が順次行われ、所定の配線14,15及びストッパー層16の形成位置を除きレジストが除去される。続いて、このパターニングされたレジストをマスクとして銅膜12,13に対してエッチング処理が行われる。続いてレジストの除去が行われ、これにより図2に示すようにコア基板11上に配線14,15及びストッパー層16が形成される。
【0032】
上記のようにコア基板11に配線14,15及びストッパー層16が形成されると、続いてこのコア基板11の両面に順次ビルドアップ層17,18,23,24,34,35が形成される。このビルドアップ層17,18,23,24,34,35の形成は、ビルドアップ法を用いて行われる。ビルドアップ法も種々の方法が知られているが、本参考例ではビルドアップ法としてセミアディティブ法を用いている。以下、ビルドアップ層17,18,23,24,34,35の具体的な形成方法について説明する。
【0033】
ビルドアップ層17,18を形成するには、図3に示すようにコア基板11の両面に絶縁層17A,18Aを形成する。具体的には、ビルドアップ用絶縁樹脂フィルム(以下、単にビルドアップフィルムという)がコア基板11の両面に貼着され、続いてこのビルドアップフィルムに硬化処理が実施され、これにより絶縁層17A,18Aが形成される。
【0034】
絶縁層17A,17Bが形成されると、続いて周知の方法を用いてこの絶縁層17A,17Bにビア17B,18B及び配線層17C,18Cが形成される。具体的には、絶縁層17A,17Bのビア17B,18Bの形成位置にレーザを用いてビア孔を形成し、続いてビア孔が形成された絶縁層17A,17Bの表面に無電解めっき法によりシード層を形成する。次に、このシード層を給電用の電極として電解銅めっき処理を実施し、絶縁層17A,17Bの表面に銅層を形成する。続いて、銅層を上記した配線14,15及びストッパー層16の形成方法と同様の方法にてパターニングし、これによりビア17B,18B及び配線層17C,18Cが形成される。図4は、コア基板11にビルドアップ層17,18が形成された状態を示している。
【0035】
上記のようにしてビルドアップ層17,18が形成されると、本参考例では続いてビルドアップ層23,24の形成処理を実施する。このビルドアップ層23,24の形成方法は、先に説明したビルドアップ層17,18の形成方法と同様なのでここではその説明を省略する(尚、後述するビルドアップ層34,35も同様とする)。図5は、ビア23B,24B及び配線層23C,24Cを有するビルドアップ層23,24が形成された状態を示している。
【0036】
ビルドアップ層23,24が形成されると、続いてコア基板11の図中上側に位置するビルドアップ層17,23に対しキャビティ30が形成される。本参考例では、キャビティ30の形成方法としてレーザ加工法を用いており、図6に示すように、上部からレーザ光29を照射してキャビティ30を形成する。このキャビティ30内には、後述するように内蔵電子部品32が収納される。
【0037】
上記のように本参考例では、キャビティ30の形成方法としてレーザ加工法を用いている。このため、絶縁層17A,23Aをエッチング法等により除去する方法に比べ、比較的容易な加工設備で、かつ少ない加工工程でキャビティ30を容易に形成することができる。
【0038】
また、一般にレーザ加工法では加工深さの制御が難しいが、本参考例ではコア基板11のキャビティ30形成位置にストッパー層16が形成されている。レーザ光29による加工速度は、樹脂よりなる絶縁層17A,23Aに比べて銅よりなるストッパー層16の方が遅い。
【0039】
よって本参考例ではこの加工速度の差を利用し、レーザ光29により絶縁層17A,23Aが除去されてストッパー層16が露出するとレーザ光29の照射位置を移動させ、そしてキャビティ30の全ての加工が終了した時点でレーザ光29の照射を停止する構成としている。この構成とすることにより、均一の深さDを有するキャビティ30を容易に形成することができる。
【0040】
尚、キャビティ30の形成方法はレーザ加工法に限定されるものではなく、ルータ加工、ドライエッチング、デスミア処理等によりキャビティ30を形成してもよく、またこれらを組み合わせて(レーザ加工法も含む)キャビティ30を加工することとしてもよい。
【0041】
上記のようにキャビティ30が形成されることにより、ビルドアップ層17及びビルドアップ層23には夫々開口部が形成される。この開口部が形成されたビルドアップ層17とビルドアップ層23との積層体を、以下第1のビルドアップ積層体31というものとする。尚、このキャビティ30の深さDは、ビルドアップ層17,23を形成する際に、絶縁層17A,23Aの厚さを適宜変更することにより容易に調整することが可能である。
【0042】
キャビティ30が形成されると、続いて図7に示すように、キャビティ30内に内蔵電子部品32が収納される。具体的には、内蔵電子部品32の下面に接着剤36が塗布され、この接着剤36により内蔵電子部品32はストッパー層16上に固定される。この内蔵電子部品32がキャビティ30内に収納された状態において、内蔵電子部品32の上面とビルドアップ層23の上面は略面一となるよう構成されている。また、内蔵電子部品32の上面に形成されている電極33と、ビルドアップ層23の上面に形成されている配線層23Cも略面一となるよう構成されている。
【0043】
前記したように、キャビティ30の深さDは、ビルドアップ層17,23を形成する際に、絶縁層17A,23Aの厚さを適宜変更することにより容易に調整することが可能である。よって、内蔵電子部品32の厚さ(正確には、接着剤36も含めた厚さ)とキャビティ30の深さDとを一致させること、換言すれば内蔵電子部品32の上面とビルドアップ層23の上面とを略面一とすることは容易に行うことができる。
【0044】
また本参考例では、複数のビルドアップ層(本参考例では、ビルドアップ層17とビルドアップ層23との二層)が積層された第1のビルドアップ積層体31に形成されたキャビティ30内に内蔵電子部品32が収納された構成となっている。即ち、本参考例では従来と異なり、一つのビルドアップ層内ではなく、複数のビルドアップ層17,23内に内蔵電子部品32が収納された構成となっている。
【0045】
このように、コア基板11上に内蔵電子部品32の厚さに相当する層数だけビルドアップ層17,23を積層し、その後にキャビティ30を形成し、このキャビティ30内に内蔵電子部品32を収納する構成とすることにより、個々のビルドアップ層17,23の厚さ(約50μm)は内蔵電子部品32の厚さ(約100μm)よりも薄くても、複数積層されることにより積層された第1のビルドアップ積層体31の厚さは内蔵電子部品32の厚さに相当する厚さとなる。よって、キャビティ30の深さDは内蔵電子部品32を内部に収納しうる深さとなり、内蔵電子部品32を確実にキャビティ30内に収納することができる。
【0046】
これにより、内蔵電子部品32の厚さをビルドアップ層17,23の厚さ以下にする必要はなくなり、内蔵電子部品32の高コスト化を抑えることができると共に、歩留りも向上させることができる。よって、この内蔵電子部品32を内蔵する電子部品内蔵基板50のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。
【0047】
また、本参考例では内蔵電子部品32の厚さに相当する層数(本参考例では2層)だけビルドアップ層17,23を積層した後にキャビティ30を形成するため、ビルドアップ層毎に開口を形成しこれを積層してキャビティを形成する方法に比べてキャビティ30を高精度に形成することができる。
【0048】
上記のようにキャビティ30に内蔵電子部品32が収納されると、続いて図8に示すように、キャビティ30が形成された第1のビルドアップ積層体31(ビルドアップ層17,23)及び内蔵電子部品32の上部にビルドアップ層34を、またビルドアップ層24の下部にビルドアップ層35を形成する。このビルドアップ層34は絶縁層34A,ビア34B,及び配線層34Cにより構成され、ドアップ層35は絶縁層35A,ビア35B,及び配線層35Cにより構成される。
【0049】
尚、本参考例では、ビルドアップ層23及びビルドアップ層24に1層のビルドアップ層34,35を積層した構成としているが、ビルドアップ層23及びビルドアップ層24に積層するビルドアップ層は1層に限定されるものではなく、多層形成する構成としてもよい。
【0050】
また、図7に示すように、内蔵電子部品32の収納時には、キャビティ30の内壁と内蔵電子部品32との間には収納性を高めるために間隙が形成されている。しかしながら、この間隙はビルドアップ層34の絶縁層34Aを加熱硬化させる際に、絶縁層34Aを構成する樹脂が間隙の内部に流入して埋められる。よって、キャビティ30内に空隙が形成されるようなことはない。
【0051】
上記のようにビルドアップ層34,35が形成されると、ビルドアップ層34の上面及びビルドアップ層35の下面にソルダーレジスト41,42が形成されると共に、所定位置に開口43,44が形成される。これにより、図9に示す電子部品内蔵基板50が製造される。上記したように本参考例による電子部品内蔵基板50の製造方法によれば、内蔵電子部品32の厚さをビルドアップ層17,23の厚さ以下にする必要がなくなるため、電子部品内蔵基板50及びこれを用いた半導体装置60(図10参照)のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。
【0052】
また、本参考例ではビルドアップ層17,18,23,24,34,35の形成(第1及び第2のビルドアップ層積層工程)においてセミアディティブ法を用いているため、各ビルドアップ層17,18,23,24,34,35に形成される配線層17C,18C,23C,24C,34C,35Cの形成精度を高めることができ、電子部品内蔵基板50の高密度化を図ることができる。
【0053】
次に、本発明の第2参考例及び本願の一実施例である電子部品内蔵基板50の製造方法について説明する。
【0054】
図11乃至図18は本発明の第2参考例である製造方法を説明するための図であり、図19乃至図22は本発明の一実施例である製造方法を説明するための図である。尚、図11乃至図22において、図1乃至図10に示した構成と同一構成については同一符号を付してその説明を省略するものとする。また、以下説明する第2参考例及び本発明の一実施例に係る製造方法は、第1のビルドアップ層積層工程及びキャビティ形成工程に特徴を有するものである。このため、第2参考例及び本発明の一実施例に係る製造方法の説明では、主にこの二つの工程について説明するもとする。
【0055】
先ず、図11乃至図18を用いて第2参考例である電子部品内蔵基板50の製造方法に対説明する。
【0056】
本参考例においても、電子部品内蔵基板50を製造するのに、先ず図11に示すように銅張積層板10を用意する。そして、第1参考例で説明した同様の方法により、図12に示すようにコア基板11に配線14,15及びストッパー層16を形成する。続いて図13に示すように、配線14,15及びストッパー層16が形成されたコア基板11の両面に絶縁層17A,18Aを形成する。この図11乃至図13に示す処理は、図1乃至図3に示した処理と同一の処理である。
【0057】
本参考例では、上記のように形成された絶縁層17A上に金属マスク61を配設する。この金属マスク61は銅または金よりなり、キャビティ30に対応した形状の開口パターン62が形成されている。図14は、絶縁層17A上に金属マスク61を配設した状態を示している。
【0058】
続いて、この金属マスク61を用いて絶縁層17Aに対してエッチング処理を行う。絶縁層17Aに対するエッチング方法としては、例えば過マンガン酸ナトリウム等を用いたウェットエッチング法を用いることができる。
【0059】
図15は、ウェットエッチングを実施することにより、絶縁層17Aに開口部63が形成された状態を示している。この開口部63は、後にキャビティ30を形成するものである。
【0060】
この開口部63を形成する際、本参考例においてもコア基板11上のキャビティ30の形成位置に対応する部分にストッパー層16が形成されているため、上記のウェットエッチング時に絶縁層17Aが除去されストッパー層16が露出した状態でウェットエッチングは停止される。よって、絶縁層17Aに開口部63を精度良く形成することができる。
【0061】
尚、本参考例では上記のように開口部63を形成するマスクとして金属マスク61を用いているが、これに代えてドライフイルムレジスト(DFR)等を利用して樹脂マスクを形成することも可能である。しかしながら、樹脂マスクを用いてウェットエッチング法を実施した場合、樹脂マスクはエッチング液により劣化して精度良く開口部63を形成できないおそれがある。
【0062】
これに対し、本参考例のように金属マスク61を用いてウェットエッチング法を実施することにより、マスクの耐久性を延ばすことができる。よって、金属マスク61を繰り返し使用することが可能となり、1回毎に除去する樹脂マスクに比べてコスト低減を図ることができる。
【0063】
上記のように開口部63が形成されると、図16に示すように絶縁層17Aから金属マスク61が取り外され、続いて上記したビルドアップ法を用いて絶縁層17A,18Bにビア17B,18B及び配線層17C,18Cの形成が行われ、これによりコア基板11の両面にビルドアップ層17,18が形成される。図17は、ビルドアップ層17,18が形成された状態を示している。
【0064】
上記のようにビルドアップ層17,18が形成されると、図13乃至図17を用いて説明した工程が繰り返して実施される。具体的には、先ずビルドアップ層17,18に絶縁層23A,24Aを積層形成する。そして、絶縁層23Aに金属マスク61を配設した上で絶縁層23Aに対してウェットエッチングを実施し、開口部64を形成する。この開口部64は、前記した開口部63と協働してキャビティ30を形成する。
【0065】
次に、絶縁層23Aから金属マスク61が取り外され、続いて上記したビルドアップ法を用いて絶縁層23A,24Aにビア23B,24B及び配線層23C,24Cの形成が行われ、これによりビルドアップ層17,18に積層された状態でビルドアップ層23,24が形成される。
【0066】
尚、この第1のビルドアップ層積層工程後に実施される収納工程及び第2のビルドアップ層積層工程は、図7乃至図9を用いて説明した第1参考例と同一であるため、その説明は省略するものとする。
【0067】
本参考例では、ビルドアップ層17とビルドアップ層23とのふたつのビッドアップ層が積層された時点、即ち第1のビルドアップ積層体31が形成された時点でキャビティ30が形成されている。また、ビルドアップ層17とビルドアップ層23が積層されることにより形成されるキャビティ30の深さDは、第1参考例と同様に内蔵電子部品32が収納された状態において、内蔵電子部品32の上面にビルドアップ層23の上面と略面一となるよう構成されている。
【0068】
このように、本参考例においてもコア基板11上に内蔵電子部品32の厚さに相当する層数だけビルドアップ層17,23を積層した第1のビルドアップ積層体31にキャビティ30を形成し、このキャビティ30内に内蔵電子部品32を収納する構成としたため、内蔵電子部品32の厚さをビルドアップ層17,23の厚さ以下にする必要はなくなり、第1参考例と同様に電子部品内蔵基板50のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。
【0069】
また、本参考例では各ビルドアップ層17,23を形成する際に、個々のビルドアップ層17,23の形成時に開口部63,64を形成する。このため、約50μmの薄いビルドアップ層17,ビルドアップ層23に対し、ウェットエッチング法を用いて開口部63,64を形成すればよいため、開口部63,64の形成時間を短くすることができると共に、開口部63,64を高精度に形成することができる。よって、ビルドアップ層17,23を積層した後にウェットエッチング法を用いてキャビティ30を形成する方法に比べ、本参考例に係るキャビティ30の形成方法の方が短時間で精度良くキャビティ30を形成することができる。
【0070】
続いて、図19乃至図22を用いて本発明の一実施例である電子部品内蔵基板50の製造方法に対説明する。
【0071】
本実施例においては、電子部品内蔵基板50を製造するのに、図19に示すように銅張積層板10を用意する。この銅張積層板10は、所定の位置に位置決めピン65を立設した構成とされている。本実施例では、この位置決めピン65を電子部品内蔵基板50が形成される部位の外周位置に設けている。また、位置決めピン65の高さは、少なくとも内蔵電子部品32の厚さよりも大きく設定されている。
【0072】
この銅張積層板10には、第1参考例で説明した同様の方法で銅膜12,13にパターニングが行われ、図20に示すように配線14,15が形成される。尚、本実施例では、前記した各参考例と異なり、ストッパー層16は形成されていない。
【0073】
続いて、このコア基板11の図中上面には絶縁層17Aが積層されると共に、コア基板11の図中下面には絶縁層18Aを積層される。絶縁層17Aは、予め位置決め孔68及び開口部70が形成されている。位置決め孔68は位置決めピン65と対応する位置に形成されており、また開口部70はキャビティ30の形成位置に対応するよう形成されている。そして、位置決め孔68を位置決めピン65に挿通することにより、絶縁層17Aはコア基板11に装着される。
【0074】
即ち、絶縁層17Aは、位置決め孔68が位置決めピン65に位置決めされた状態でコア基板11に装着される。また、絶縁層17Aが上記のように位置決めされてコア基板11に装着された状態において、開口部70はコア基板11上のキャビティ30の形成位置に高精度に一致するよう構成されている。図21は、絶縁層17A.18Aがコア基板11に形成された状態を示している。尚、ビルドアップ層18は、前記の各参考例と同様の方法で、コア基板11に形成される。
【0075】
続いて、絶縁層17A,18Aには、上記したビルドアップ法を用いてビア17B,18B及び配線層17C,18Cの形成が行われる。これにより、コア基板11の上面及び下面には、ビルドアップ層17,18が形成される。
【0076】
上記のようにビルドアップ層17,18が形成されると、続いてビルドアップ層23,24の形成処理が行われる。ビルドアップ層23,24の形成は、上記したビルドアップ層17,18の形成方法に準じて行われる。具体的には、ビルドアップ層17の上面には絶縁層23Aが積層されると共に、ビルドアップ層18の下面には絶縁層24Aが積層される。
【0077】
絶縁層23Aには、絶縁層17Aと同様に予め位置決め孔69及び開口部71が形成されている。位置決め孔69は位置決めピン65と対応する位置に形成されており、また開口部71はキャビティ30の形成位置に対応するよう形成されている。そして、位置決め孔69を位置決めピン65に挿通することにより、絶縁層23Aはビルドアップ層17上に積層される。
【0078】
即ち、絶縁層23Aは、位置決め孔69が位置決めピン65に位置決めされた状態でビルドアップ層17上に積層される。また、絶縁層23Aが上記のように位置決めされてビルドアップ層17に積層された状態において、開口部71はビルドアップ層17の開口部70に高精度に一致し、これによりキャビティ30を形成する。尚、ビルドアップ層24は、前記の各参考例と同様の方法で、ビルドアップ層18に積層形成される。
【0079】
続いて、絶縁層23A,24Aには、上記したビルドアップ法を用いてビア23B,24B及び配線層23C,24Cの形成が行われる。これにより、図22に示すように、ビルドアップ層17上にビルドアップ層23が積層されることにより、第1のビルドアップ積層体31が形成される。また、ビルドアップ層18にはビルドアップ層24が積層形成される(請求項1における第1のビルドアップ層積層工程に相当)。
【0080】
尚、この第1のビルドアップ層積層工程後に実施される収納工程及び第2のビルドアップ層積層工程は、図7乃至図9を用いて説明した第1参考例と同一であるため、その説明は省略するものとする。
【0081】
本実施例では、予め開口部70,71が形成されているビルドアップ層17,23を積層した時点、即ち第1のビルドアップ積層体31が形成された時点でキャビティ30が形成される。また、ビルドアップ層17とビルドアップ層23が積層されることにより形成されるキャビティ30の深さDは、前記の第1及び第2参考例と同様に内蔵電子部品32が収納された状態において、内蔵電子部品32の上面にビルドアップ層23の上面と略面一となるよう構成されている。
【0082】
このように、本実施例においてもコア基板11上に内蔵電子部品32の厚さに相当する層数だけビルドアップ層17,23を積層した第1のビルドアップ積層体31にキャビティ30を形成し、このキャビティ30内に内蔵電子部品32を収納する構成としたため、内蔵電子部品32の厚さをビルドアップ層17,23の厚さ以下にする必要はなくなり、第1参考例と同様に電子部品内蔵基板50のコスト低減及び歩留りの向上を図ることができる。
【0083】
また、本実施例では絶縁層17A,絶縁層23Aとして、予め電子部品内蔵基板50の製造工程とは別工程で位置決め孔68,69及び開口部70,71が形成されたものを用いているため、電子部品内蔵基板50の製造工程の簡略化を図ることができる。また、各開口部70,71の位置決め(即ち、キャビティ30の形成)は、各位置決め孔68,69をコア基板11に立設された位置決め孔68に挿通するだけで行えるため、簡単な作業で精度良く位置決め処理を行うことができる。
【0084】
尚、上記した各参考例及び実施例の説明では説明の便宜上、1枚の銅張積層板10(図1参照)から一つの電子部品内蔵基板50を製造する例について説明したが、生産性を向上させるために1枚の銅張積層板10から多数の電子部品内蔵基板50を製造する(いわゆる、多数個取り)こととしてもよい。この場合、上記した実施例では、位置決めピン65を個々の電子部品内蔵基板50の形成領域毎に設ける必要はなく、銅張積層板10の隅の位置に少数本(例えば3本)の位置決めピン65を設ければよいため、位置決めピン65の低減及び銅張積層板10の有効利用が可能となる。
【符号の説明】
【0085】
10 銅張積層板
11 コア基板
16 ストッパー層
17,18,23,24,34,35 ビルドアップ層
17A,18A,23A,24A,34A,35A 絶縁層
17B,18B,23B,24B,34B,35B ビア
17C,18C,23C,24C,34C,35C 配線層
29 レーザ光
30 キャビティ
31 第1のビルドアップ層
32 内蔵電子部品
41,42 ソルダーレジスト
43,44,70,71 開口
50 電子部品内蔵基板
51 半導体チップ
60 半導体装置
61 金属マスク
65 位置決めピン
68,69 位置決め孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層形成されたビルドアップ層内に電子部品が内蔵された電子部品内蔵基板の製造方法であって、
前記電子部品が内蔵されるキャビティの形成位置と対応する位置に予め開口部が形成されたビルドアップ層を、前記電子部品の厚さに相当する層数だけコア基板上に積層する第1のビルドアップ層積層工程と、
前記キャビティに前記電子部品を収納する収納工程と、
前記キャビティが形成されたビルドアップ層及び前記電子部品上に、更にビルドアップ層を形成する第2のビルドアップ層積層工程と
を有することを特徴とする電子部品内蔵基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の電子部品内蔵基板の製造方法において、
前記コア基板に位置決めピンを設けると共に、前記積層されるビルドアップ層に位置決め孔を形成し、
前記位置決めピンに前記位置決め孔を挿通することにより、前記ビルドアップ層に形成された各開口を一致させて前記キャビティを形成することを特徴とする電子部品内蔵基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の電子部品内蔵基板の製造方法において、
前記コア基板として銅張積層板を用い、
前記位置決めピンを該銅張積層板に立設したことを特徴とする電子部品内蔵基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−50475(P2010−50475A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241719(P2009−241719)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【分割の表示】特願2004−194783(P2004−194783)の分割
【原出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】