説明

電子部品及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、コイルの直流抵抗を低減することができる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】積層体12は、絶縁体層16と絶縁体層16よりも高い空孔率を有する絶縁体層17とが積層されてなる。コイルLは、積層体12に内蔵され、コイル導体18,19を含んでいる。コイル導体18は、絶縁体層16上に設けられている。コイル導体19は、コイル導体18が設けられている絶縁体層16上に積層されている絶縁体層17上に設けられ、かつ、絶縁体層17に設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介してコイル導体18に対して接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、コイルを備えている電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の積層チップインダクタが知られている。特許文献1に記載のチップインダクタでは、フェライトシート片が積層されることにより積層体が構成されている。積層体は、コイルを内蔵している。コイルは、複数のコイル用パターンがスルーホール導体により接続されることにより螺旋状をなしている。また、コイル用パターンは、同一の形状を有するものが2つずつスルーホール導体により並列に接続されている。すなわち、積層チップインダクタにおいて、コイルは、二重螺旋構造をなしている。以上のような積層チップインダクタによれば、巻数を増すことなく直流抵抗を低減することが可能である。
【0003】
ところで、コイルを内蔵する電子部品において、コイルの直流抵抗を更に低減したいという要望が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−57817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、コイルの直流抵抗を低減することができる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る電子部品は、第1の絶縁体層と該第1の絶縁体層よりも高い空孔率を有する第2の絶縁体層とが積層されてなる積層体と、前記積層体に内蔵されているコイルと、を備え、前記コイルは、前記第1の絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体と、前記第1のコイル導体が設けられている前記第1の絶縁体層上に積層されている前記第2の絶縁体層上に設けられている第2のコイル導体であって、該第2の絶縁体層に設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して前記第1のコイル導体に対して接続されている第2のコイル導体と、を含んでいること、を特徴とする。
【0007】
本発明の一形態に係る電子部品の製造方法は、第1のセラミックグリーンシートを準備する工程と、加熱により消失する粒状の消失部材が混入された第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、前記第1のセラミックグリーンシート上にコイルを構成する第1のコイル導体を形成する工程と、前記第2のセラミックグリーンシート上に前記コイルを構成する第2のコイル導体を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーンシート上に前記第2のセラミックグリーンシートを積層することにより積層体を形成する工程と、前記積層体を焼成して、前記消失部材を消失させる工程と、を備えていること、を特徴とする。
【0008】
本発明のその他の形態に係る電子部品の製造方法は、第1のセラミックペーストを準備する工程と、加熱により消失する粒状の消失部材が混入された第2のセラミックペーストを準備する工程と、前記第1のセラミックペーストを用いて第1のセラミックグリーン層を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーン層上にコイルを構成する第1のコイル導体を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーン層上に、前記第2のセラミックペーストを用いて第2のセラミックグリーン層を形成する工程と、前記第2のセラミックグリーン層上に前記コイルを構成する第2のコイル導体を形成する工程と、前記第1のセラミックグリーン層及び前記第2のセラミックグリーン層を含む積層体を焼成して、前記消失部材を消失させる工程と、を備えていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コイルの直流抵抗を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】図1の電子部品の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態に係る電子部品及びその製造方法について説明する。
【0012】
(電子部品の構成)
本発明の一実施形態に係る電子部品の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、図1の電子部品10の部分断面図である。
【0013】
以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義し、電子部品10のz軸方向の正方向側の上面の2辺に沿った方向をx軸方向及びy軸方向と定義する。x軸方向とy軸方向とz軸方向とは直交している。また、電子部品10において、z軸方向の両側に位置する面を上面及び下面と呼び、上面と下面とを接続する面を側面と呼ぶ。
【0014】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極14(14a,14b)及びコイルLを備えている。
【0015】
積層体12は、図1に示すように、直方体状をなしており、コイルLを内蔵している。積層体12は、図2に示すように、絶縁体層16(16a〜16m),17(17d〜17j)が積層されることにより構成されている。絶縁体層16は、磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなる長方形状の層である。絶縁体層17は、絶縁体層16よりも高い空孔率を有する磁性体材料(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)からなる長方形状の層である。よって、絶縁体層17は、図3に示すように、無数の空孔を有している。絶縁体層16の空孔率は、3%以下であり、絶縁体層17の空孔率は、60%である。なお、磁性体材料とは、−55℃以上+125℃以下の温度範囲において、磁性体材料として機能する材料を意味する。以下では、絶縁体層16,17のz軸方向の正方向側の面を表面と称し、絶縁体層16,17のz軸方向の負方向側の面を裏面と称す。
【0016】
絶縁体層17d〜17jと絶縁体層16d〜16jとは、z軸方向に交互に並ぶように積層されている。より詳細には、絶縁体層16d〜16jは、z軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並んでいる。そして、絶縁体層17d〜17jはそれぞれ、絶縁体層16d〜16jのz軸方向の正方向側に積層されている。また、絶縁体層16a〜16cは、絶縁体層17dのz軸方向の正方向側においてこの順に並ぶように積層され、絶縁体層16k〜16mは、絶縁体層16jのz軸方向の負方向側においてこの順に並ぶように積層されている。
【0017】
外部電極14aは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の負方向側に位置する側面を覆うように設けられている。外部電極14bは、図1に示すように、積層体12のx軸方向の正方向側に位置する側面を覆うように設けられている。更に、外部電極14a,14bは、側面に隣接する上面、下面及び側面に対して折り返されている。外部電極14a,14bは、電子部品10外の回路とコイルLとを電気的に接続する接続端子として機能する。
【0018】
コイルLは、積層体12に内蔵され、図2に示すように、コイル導体18(18a〜18g),19(19a〜19g)及びビアホール導体b1〜b18により構成されている。コイルLは、コイル導体18,19及びビアホール導体b1〜b18が接続されることにより二重螺旋状をなすように構成され、z軸方向に沿って延在する(すなわち、z軸方向に平行な)コイル軸を有している。
【0019】
コイル導体18a〜18gは、図2に示すように、絶縁体層16d〜16jの表面上に設けられており、z軸方向から平面視したときに、時計回りに旋回するコ字型の線状導体層である。より詳細には、コイル導体18a〜18gは、3/4ターンのターン数を有しており、絶縁体層16d〜16jの三辺に沿っている。コイル導体18aは、絶縁体層16dにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18aは、x軸方向の負方向側の短辺に引き出されており、外部電極14aと接続されている。コイル導体18bは、絶縁体層16eにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18cは、絶縁体層16fにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18dは、絶縁体層16gにおいて、y軸方向の正方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18eは、絶縁体層16hにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18fは、絶縁体層16iにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体18gは、絶縁体層16jにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体18gは、x軸方向の正方向側の短辺に引き出されており、外部電極14bと接続されている。
【0020】
コイル導体19a〜19gは、図2に示すように、絶縁体層17d〜17jの表面上に設けられており、z軸方向から平面視したときに、時計回りに旋回するコ字型の線状導体層である。より詳細には、コイル導体19a〜19gは、3/4ターンのターン数を有しており、絶縁体層17d〜17jの三辺に沿っている。コイル導体19aは、絶縁体層17dにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体19aは、x軸方向の負方向側の短辺に引き出されており、外部電極14aと接続されている。コイル導体19bは、絶縁体層17eにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体19cは、絶縁体層17fにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体19dは、絶縁体層17gにおいて、y軸方向の正方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体19eは、絶縁体層17hにおいて、x軸方向の負方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体19fは、絶縁体層17iにおいて、y軸方向の負方向側の長辺以外の三辺に沿って設けられている。コイル導体19gは、絶縁体層17jにおいて、x軸方向の正方向側の短辺以外の三辺に沿って設けられている。また、コイル導体19gは、x軸方向の正方向側の短辺に引き出されており、外部電極14bと接続されている。
【0021】
以上のようなコイル導体18a〜18gとコイル導体19a〜19gとは、絶縁体層17d〜17jを挟んでいるもの同士で、同じ形状を有し、かつ、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。以下では、コイル導体18,19において、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りの上流側の端部を上流端とし、時計回りの下流側の端部を下流端とする。なお、コイル導体18,19のターン数は、3/4ターンに限らない。よって、コイル導体18,19のターン数は、例えば、1/2ターンであってもよいし、7/8ターンであってもよい。
【0022】
ビアホール導体b1〜b18は、図2に示すように、絶縁体層16d〜16i,17d〜17jをz軸方向に貫通するように設けられている。より詳細には、ビアホール導体b1は、絶縁体層17dをz軸方向に貫通し、コイル導体19aの下流端及びコイル導体18aの下流端に接続されている。ビアホール導体b2は、絶縁体層16dをz軸方向に貫通し、コイル導体18aの下流端及びコイル導体19bの上流端に接続されている。ビアホール導体b3は、絶縁体層17eをz軸方向に貫通し、コイル導体19bの上流端及びコイル導体18bの上流端に接続されている。ビアホール導体b4は、絶縁体層17eをz軸方向に貫通し、コイル導体19bの下流端及びコイル導体18bの下流端に接続されている。ビアホール導体b5は、絶縁体層16eをz軸方向に貫通し、コイル導体18bの下流端及びコイル導体19cの上流端に接続されている。ビアホール導体b6は、絶縁体層17fをz軸方向に貫通し、コイル導体19cの上流端及びコイル導体18cの上流端に接続されている。ビアホール導体b7は、絶縁体層17fをz軸方向に貫通し、コイル導体19cの下流端及びコイル導体18cの下流端に接続されている。ビアホール導体b8は、絶縁体層16fをz軸方向に貫通し、コイル導体18cの下流端及びコイル導体19dの上流端に接続されている。ビアホール導体b9は、絶縁体層17gをz軸方向に貫通し、コイル導体19dの上流端及びコイル導体18dの上流端に接続されている。ビアホール導体b10は、絶縁体層17gをz軸方向に貫通し、コイル導体19dの下流端及びコイル導体18dの下流端に接続されている。ビアホール導体b11は、絶縁体層16gをz軸方向に貫通し、コイル導体18dの下流端及びコイル導体19eの上流端に接続されている。ビアホール導体b12は、絶縁体層17hをz軸方向に貫通し、コイル導体19eの上流端及びコイル導体18eの上流端に接続されている。ビアホール導体b13は、絶縁体層17hをz軸方向に貫通し、コイル導体19eの下流端及びコイル導体18eの下流端に接続されている。ビアホール導体b14は、絶縁体層16hをz軸方向に貫通し、コイル導体18eの下流端及びコイル導体19fの上流端に接続されている。ビアホール導体b15は、絶縁体層17iをz軸方向に貫通し、コイル導体19fの上流端及びコイル導体18fの上流端に接続されている。ビアホール導体b16は、絶縁体層17iをz軸方向に貫通し、コイル導体19fの下流端及びコイル導体18fの下流端に接続されている。ビアホール導体b17は、絶縁体層16iをz軸方向に貫通し、コイル導体18fの下流端及びコイル導体19gの上流端に接続されている。ビアホール導体b18は、絶縁体層17jをz軸方向に貫通し、コイル導体19gの上流端及びコイル導体18gの上流端に接続されている。
【0023】
以上のように、コイル導体18b〜18fの両端とコイル導体19b〜19fの両端とはそれぞれ、絶縁体層17e〜17iに設けられているビアホール導体b3、b4、b6、b7,b9,b10,b12,b13,b15,b16を介して接続されている。また、コイル導体18a,18gの一端とコイル導体19a,19gの一端とはそれぞれ、絶縁体層17d,17jに設けられているビアホール導体b1,b18を介して接続されている。コイル導体18a,18gの他端とコイル導体19a,19gの他端とはそれぞれ、外部電極14a,14bを介して接続されている。
【0024】
ところで、電子部品10において、絶縁体層17の空孔率は、絶縁体層16の空孔率よりも高い。そのため、図3に示すように、積層体12の焼成時に、コイル導体18,19の一部が溶融して、絶縁体層17の空孔に入り込む。これにより、図3に示すように、コイル導体18が設けられている絶縁体層16上に積層されている絶縁体層17上に設けられているコイル導体19は、絶縁体層17に設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して、該コイル導体18に対して多数の箇所において接続されている。より詳細には、コイル導体18aとコイル導体19aとは、絶縁体層17dに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18bとコイル導体19bとは、絶縁体層17eに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18cとコイル導体19cとは、絶縁体層17fに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18dとコイル導体19dとは、絶縁体層17gに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18eとコイル導体19eとは、絶縁体層17hに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18fとコイル導体19fとは、絶縁体層17iに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。コイル導体18gとコイル導体19gとは、絶縁体層17jに設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して接続されている。
【0025】
(電子部品の製造方法)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、一つの電子部品10の製造方法について説明を行うが、実際には、大判のマザーセラミックグリーンシートが積層されてマザー積層体が作製され、更に、マザー積層体がカットされることにより、複数の積層体が同時に作製される。
【0026】
まず、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0027】
このフェライトセラミック粉末に対して、結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)、可塑剤、湿潤材及び分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートを作製する。絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートの厚さは、20μm〜25μmである。
【0028】
次に、絶縁体層17となるべきセラミックグリーンシートを準備する。具体的には、酸化第二鉄(Fe23)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ニッケル(NiO)及び酸化銅(CuO)を所定の比率で秤量したそれぞれの材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、フェライトセラミック粉末を得る。
【0029】
このフェライトセラミック粉末に対して、結合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)、可塑剤、湿潤材、分散剤及び消失部材を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。消失部材は、平均粒径8μmの球状の微粒子ポリマーからなる粉末であり、後述する積層体12の焼成時の加熱により消失する。消失部材は、例えば、架橋メタクリル酸メチルにより作製されている。また、フェライトセラミック粉末と消失部材との体積比率を40:60とした。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、キャリアシート上にシート状に形成して乾燥させ、消失部材が混入された絶縁体層17となるべきセラミックグリーンシートを作製する。
【0030】
次に、絶縁体層16d〜16i,17d〜17jとなるべきセラミックグリーンシートのそれぞれに、ビアホール導体b1〜b18を形成する。具体的には、絶縁体層16d〜16i,17d〜17jとなるべきセラミックグリーンシートにレーザビームを照射してビアホールを形成する。更に、ビアホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などの導電性材料からなるペーストを印刷塗布などの方法により充填して、ビアホール導体b1〜b18を形成する。
【0031】
次に、絶縁体層16d〜16jとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体18a〜18gを形成する。導電性材料からなるペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。
【0032】
次に、絶縁体層17d〜17jとなるべきセラミックグリーンシート上に、導電性材料からなるペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コイル導体19a〜19gを形成する。導電性材料からなるペーストは、例えば、Agに、ワニス及び溶剤が加えられたものである。
【0033】
なお、コイル導体18,19を形成する工程とビアホールに対して導電性材料(Ag又はAg−Pt)からなるペーストを充填する工程とは、同じ工程において行われてもよい。
【0034】
次に、絶縁体層16,17となるべきセラミックグリーンシートを一枚ずつ積層及び仮圧着して未焼成の積層体12を得る。絶縁体層16,17となるべきセラミックグリーンシートを1枚ずつ積層及び仮圧着する。この後、未焼成の積層体12に対して、静水圧プレスにて本圧着を施す。静水圧プレスの条件は、100MPaの圧力及び45℃の温度である。圧着により、絶縁体層16,17となるべきセラミックグリーンシートの厚さは、10μm程度まで圧縮される。一方、消失部材の平均粒径は8μmである。そのため、絶縁体層17となるべきセラミックグリーンシートにおいて、積層方向に隣り合うコイル導体18及びコイル導体19の両方に接触する消失部材が発生する。
【0035】
次に、未焼成の積層体12に、脱バインダー処理及び焼成を施す。脱バインダー処理は、例えば、低酸素雰囲気中において850℃で2時間の条件で行う。焼成は、例えば、900℃〜930℃で2.5時間の条件で行う。これにより、消失部材が加熱により消失し、絶縁体層17に無数の空孔が形成される。前記の通り、消失部材の一部は、コイル導体18及びコイル導体19の両方に接触しているので、コイル導体18及びコイル導体19の両方に接触する空孔が形成される。そして、コイル導体18,19の一部が加熱により溶融し、空孔内に入り込む。その結果、コイル導体18とコイル導体19とは、無数の空孔内に入り込んだ導体により多数の箇所において接続されるようになる。この後、積層体12の表面に、バレル研磨処理を施して、面取りを行う。
【0036】
次に、Agを主成分とする導電性材料からなる電極ペーストを、積層体12のx軸方向の両端に位置する側面に塗布する。そして、塗布した電極ペーストを約800℃の温度で1時間の条件で焼き付ける。これにより、外部電極14となるべき銀電極を形成する。更に、外部電極14となるべき銀電極の表面に、Niめっき/Snめっきを施すことにより、外部電極14を形成する。以上の工程により、電子部品10が完成する。
【0037】
(効果)
以上のような電子部品10によれば、コイルLの直流抵抗を低減することができる。より詳細には、特許文献1に記載の積層チップインダクタでは、同一の形状を有する2つのコイル用パターンの両端は、スルーホール導体により互いに接続されている。これにより、特許文献1に記載のチップインダクタでは、コイルの直流抵抗の低減を図っている。
【0038】
一方、電子部品10では、コイル導体18とコイル導体19とは、絶縁体層17に設けられている無数の空孔に入り込んだ導体により多数の箇所で接続されている。すなわち、コイル導体18とコイル導体19とは、その全体において空孔に入り込んだ導体により接続されている。
【0039】
以上のように、電子部品10におけるコイル導体18とコイル導体19との間の接続箇所は、積層チップインダクタにおけるコイル用パターン同士の接続箇所に比べて多い。よって、コイル導体18とコイル導体19との間の直流抵抗は、コイル用パターン間の直流抵抗よりも小さくなる。その結果、コイルLの直流抵抗の低減が図られる。
【0040】
また、電子部品10では、コイル導体18とコイル導体19とは、絶縁体層17を挟んでいるもの同士で、同じ形状を有し、かつ、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっている。これにより、コイル導体18とコイル導体19とが略全面にわたって絶縁体層17に設けられている空孔に入り込んだ導体により接続されるようになる。その結果、コイル導体18とコイル導体19との間の直流抵抗が低減され、コイルLの直流抵抗が低減される。
【0041】
また、電子部品10では、絶縁体層17を挟んでいるコイル導体18の両端とコイル導体19の両端とは、該絶縁体層17に設けられているビアホール導体を介して接続されている。これにより、コイル導体18とコイル導体19との間の直流抵抗が更に低減され、コイルLの直流抵抗が更に低減される。
【0042】
(その他の実施形態)
本発明に係る電子部品は、前記実施形態に示した電子部品10に限らない。よって、本発明に係る電子部品は、その要旨の範囲内において変更可能である。
【0043】
絶縁体層17を挟んでいるコイル導体18とコイル導体19とは、同じ形状を有し、かつ、z軸方向から平面視したときに一致した状態で重なっているとした。しかしながら、コイル導体18は、絶縁体層17を挟んで隣り合うコイル導体19の少なくとも一部において重なっていればよい。よって、コイル導体18は、絶縁体層17を挟んで隣り合うコイル導体19と同じ形状を有している必要はない。
【0044】
また、コイルLは、図2に示すように複数のコイル導体18,19がビアホール導体b1〜b18により接続されることにより、z軸方向に長手方向を有する螺旋状をなしている。ただし、コイルLの形状は螺旋状に限らない。コイルLは、例えば、渦巻状であってもよい。
【0045】
なお、電子部品10は、シート積層法により作製されるものとしたが、印刷法によって作製されてもよい。以下に、印刷法により作製される場合における電子部品10の製造方法について図2を参照しながら簡単に説明する。
【0046】
まず、絶縁体層16に用いられるセラミックペーストを準備する。このセラミックペーストの製造方法は、絶縁体層16となるべきセラミックグリーンシートのセラミックスラリーの製造方法と同じであるのでこれ以上の説明を省略する。
【0047】
次に、加熱により消失する粒状の消失部材が混入されたセラミックペーストを準備する。このセラミックペーストの製造方法は、絶縁体層17となるべきセラミックグリーンシートのセラミックスラリーの製造方法と同じであるのでこれ以上の説明を省略する。
【0048】
次に、絶縁体層16に用いられるセラミックペーストを用いて絶縁体層16j〜16mとなるべきセラミックグリーン層を形成する。そして、絶縁体層16jとなるべきセラミックグリーン層上にコイル導体18gをスクリーン印刷法等により形成する。
【0049】
次に、絶縁体層17に用いられるセラミックペーストを用いて絶縁体層17jとなるべきセラミックグリーン層を絶縁体層16jとなるべきセラミックグリーン層上に形成する。この際、ビアホール導体b18となるべきビアホールを絶縁体層17jとなるべきセラミックグリーン層に形成しておく。そして、絶縁体層17jとなるべきセラミックグリーン層上にコイル導体19gをスクリーン印刷法等により形成する。コイル導体19gの形成の際に、ビアホール導体b18も形成される。この後、同様の工程を繰り返すことにより、絶縁体層16,17となるべきセラミックグリーンシート及びコイル導体18,19及びビアホール導体b1〜b17を形成する。これにより、未焼成の積層体12が得られる。この後に行われる工程は、既に説明した工程と同じであるので説明を省略する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、コイルの直流抵抗を低減できる点において優れている。
【符号の説明】
【0051】
L コイル
b1〜b18 ビアホール導体
10 電子部品
12 積層体
14a,14b 外部電極
16a〜16m,17d〜17j 絶縁体層
18a〜18g,19a〜19g コイル導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体層と該第1の絶縁体層よりも高い空孔率を有する第2の絶縁体層とが積層されてなる積層体と、
前記積層体に内蔵されているコイルと、
を備え、
前記コイルは、
前記第1の絶縁体層上に設けられている第1のコイル導体と、
前記第1のコイル導体が設けられている前記第1の絶縁体層上に積層されている前記第2の絶縁体層上に設けられている第2のコイル導体であって、該第2の絶縁体層に設けられている無数の空孔に入り込んだ導体を介して前記第1のコイル導体に対して接続されている第2のコイル導体と、
を含んでいること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記第1のコイル導体と前記第2のコイル導体とは、同じ形状を有しており、かつ、積層方向から平面視したときに重なっていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記第1のコイル導体の両端と前記第2のコイル導体の両端とは、前記第2の絶縁体層に設けられているビアホール導体を介して接続されていること、
を特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
第1のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
加熱により消失する粒状の消失部材が混入された第2のセラミックグリーンシートを準備する工程と、
前記第1のセラミックグリーンシート上にコイルを構成する第1のコイル導体を形成する工程と、
前記第2のセラミックグリーンシート上に前記コイルを構成する第2のコイル導体を形成する工程と、
前記第1のセラミックグリーンシート上に前記第2のセラミックグリーンシートを積層することにより積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成して、前記消失部材を消失させる工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
第1のセラミックペーストを準備する工程と、
加熱により消失する粒状の消失部材が混入された第2のセラミックペーストを準備する工程と、
前記第1のセラミックペーストを用いて第1のセラミックグリーン層を形成する工程と、
前記第1のセラミックグリーン層上にコイルを構成する第1のコイル導体を形成する工程と、
前記第1のセラミックグリーン層上に、前記第2のセラミックペーストを用いて第2のセラミックグリーン層を形成する工程と、
前記第2のセラミックグリーン層上に前記コイルを構成する第2のコイル導体を形成する工程と、
前記第1のセラミックグリーン層及び前記第2のセラミックグリーン層を含む積層体を焼成して、前記消失部材を消失させる工程と、
を備えていること、
を特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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