説明

電子部品実装方法

【課題】電子部品の一面に多数の突起電極が設けられていても確実に高い信頼性をもって超音波接合できる電子部品実装方法を提供する。
【解決手段】一面に複数の突起電極2aを有する電子部品2の突起電極配設面とは反対側の背面を超音波振動伝達手段にて保持し、支持台8上に配置固定した基板3と位置合わせを行い、電子部品2の各突起電極2aを基板3の各電極に接触させる工程と、超音波振動伝達手段を介して電子部品2の背面に押圧荷重を負荷しつつ超音波振動発生手段24にて超音波振動伝達手段を介して電子部品2の表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与する工程と、加熱手段39にて超音波振動伝達手段に対して非接触方式で電子部品2をその背面から加熱して電子部品2と基板3の接合部に熱エネルギーを付与する工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一面に複数の突起電極を有する電子部品を基板などの実装対象物に超音波振動にて実装する電子部品実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波振動による電子部品実装装置としては、ボイスコイルモータ等の移動手段にて昇降可能に支持された支持ブラケットに水平姿勢で固定支持された超音波振動発生手段の出力端にホーンを結合するとともにそのホーンの先端に電子部品を吸着保持する吸着ノズルを装着して成る実装ヘッドと、実装ヘッドに電子部品を供給する手段と、基板などの実装対象物を固定支持する支持台と、実装ヘッドと支持台を水平方向に相対移動させて電子部品と実装対象物の位置合わせを行う位置決め手段とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の電子部品実装装置は、電子部品の一面に突設された複数の突起電極を実装対象物に形成された電極に超音波接合して実装する場合に好適に適用され、部品供給手段にて突起電極を下向きにして供給された電子部品の上面を実装ヘッドの吸着ノズルにて吸着保持し、支持台上に実装対象物を供給して固定支持し、電子部品が実装対象物の実装位置の上方に位置するように実装ヘッドと支持台を相対移動させて位置決めし、実装ヘッドの移動手段にて電子部品の突起電極を実装対象物の電極に当接させ、さらに所定の押圧力を作用させた状態で超音波振動発生手段を作動させてホーンを介して吸着ノズルを水平方向に超音波振動させることで、電子部品と実装対象物の接合面に超音波振動エネルギーを付与して拡散溶融接合している。
【特許文献1】特開2000−68327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、近年は電子回路の小型化を図るために、電子回路を構成する電子部品(チップ)の数を少なくすることが求められ、それに伴って各電子部品の高機能化・高集積化が進められる結果、単一の電子部品は逆に大型化・多電極化が進行しつつある。例えば、従来は電子部品(ベアICチップ)の大きさは、0.3mm角〜5mm角程度で、突起電極の数は2〜30個程度であったが、近い将来に10mm角から20mm角の大きさで、突起電極の数が50個〜100個から1000以上のものまでが実用されることが予想されるに至っている。
【0005】
このような電子部品を上記した従来の電子部品実装装置で実装する場合、多数の突起電極を実装対象物の電極に一度に超音波接合する必要があるため、吸着ノズルに負荷する押圧荷重を大きくする必要があるとともに、吸着ノズル下面の部品保持面と実装対象物の接合面との平行度を極めて高く保たないと、全ての突起電極を実装対象物の電極に確実に接合することができない。例えば、上記のような大型のベアICチップを実装する場合には、吸着ノズルの部品保持面と実装対象物の接合面の超音波振動の振動方向に対する平行度を全体にわたって5μm以内に納める必要がある。
【0006】
しかるに、上記のような構成では、支持ブラケットから超音波振動発生手段とホーンの結合箇所近傍に大きな押圧荷重を負荷すると、ホーンの先端に吸着ノズルが固定されているので、吸着ノズル下面の位置と押圧荷重の負荷位置との間に距離があるためホーンに曲げモーメントが作用し、ホーンの押圧荷重による撓みによって吸着ノズル下面の部品保持面が傾斜し、精度の高い平行度を得ることはできず、信頼性の高い接合が確保することが できないという問題がある。これに対して、ホーンと吸着ノズルの部品保持面との間に可撓部を設けて平行度を確保することも考えられるが、そうすると超音波振動の伝播効率が一挙に低下し、接合効率が低下して信頼性の高い接合ができないという問題が発生する。
【0007】
また、突起電極の数が多い場合には、部品保持面と実装対象物の接合面の平行度をある程度確保しつつ大きな押圧荷重を負荷して超音波振動を付与しても、その超音波振動によって付与できる接合エネルギーが不足し易く、十分に信頼性の高い接合状態を得るのが困難な場合があるという問題がある。
【0008】
また、従来は電子部品の接合を行った後、実装対象物の間に封止材を充填し、封止材を加熱硬化させて封止する工程を後工程として別途に行っていたので、工程数が多く、コスト高となるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、電子部品の一面に設けられた突起電極の数が多くても確実に高い信頼性をもって超音波接合することができる電子部品実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電子部品実装方法は、一面に複数の突起電極を有する電子部品を実装対象物の電極に接合して実装する電子部品の実装方法であって、電子部品の突起電極配設面とは反対側の背面を超音波振動伝達手段にて保持し、支持台上に配置固定した実装対象物と位置合わせを行い、電子部品の各突起電極を実装対象物の各電極に接触させる工程と、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつその表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与する工程と、超音波振動伝達手段に対して非接触方式で電子部品をその背面から加熱して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与する工程とを有するものである。
【0011】
このような構成によると、電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつその表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与するとともに電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与するので、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができる。また、熱エネルギーを付与する工程で、電子部品をその背面から加熱しているので、電子部品の各突起電極に対して効率的に熱エネルギーを付与できて、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができる。さらに、超音波振動伝達手段に対して非接触方式で加熱するので、振動系に影響を与えずに加熱でき、信頼性の高い超音波接合を容易に確保することができる。また、実装対象物の実装位置に予め封止材を塗布しておくと、電子部品を接合する工程で封止材が電子部品と実装対象物の隙間に充填されるとともに、接合時に熱を付与されて封止材が硬化されて封止工程も完了するので、別途の封止工程を削減できてコスト低下を図ることができる。
【0012】
また、本発明の電子部品実装方法は、一面に複数の突起電極を有する電子部品を実装対象物の電極に接合して実装する電子部品の実装方法であって、電子部品の突起電極配設面とは反対側の背面を超音波振動伝達手段にて保持し、支持台上に配置固定した実装対象物と位置合わせを行い、電子部品の各突起電極を実装対象物の各電極に接触させる工程と、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつ、超音波振動伝達手段に連結された超音波振動発生手段にて電子部品の表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与する工程と、加熱手段にて超音波振動伝達手段を介して電子部品をその背面から加熱して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与する工程と、加熱手段にて加熱された超音波振動伝達手段の熱が超音波振動発生手段に伝わるのを超音波振動発生手段と超音波振動伝達手段の間で冷却する工程とを有するものである。
【0013】
このような構成によると、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつ、超音波振動伝達手段に連結された超音波振動発生手段にて電子部品の表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与するとともに、加熱手段にて超音波振動伝達手段を介して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与するので、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができる。また、熱エネルギーを付与する工程で、電子部品をその背面から加熱しているので、電子部品の各突起電極に対して効率的に熱エネルギーを付与できて、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができる。さらに、超音波振動発生手段と超音波振動伝達手段の間で冷却しているので、超音波振動伝達手段を介して超音波振動発生手段に熱が伝達され、超音波振動発生手段の温度が上昇してその性能が低下したり、損傷したりするのを確実に防止することができる。
【0014】
なお、電子部品の背面に対する押圧荷重を、背面の垂直方向の直上位置から負荷すると、上記のように大きな押圧荷重を作用させても電子部品の突起電極端面と実装対象物の接合面の平行度を高精度に維持することができ、従って大きな押圧荷重を負荷することによって電子部品の突起電極の数が多い場合にも各突起電極に均等に所要の押圧荷重を負荷した状態で超音波振動を印加することができ、全ての突起電極を確実に高い信頼性をもって接合することができる。
【0015】
また、超音波振動の電子部品の背面と平行な方向の成分に対して垂直な方向の成分は10%未満、より好適には5%未満、さらに好適には3%未満にするのが好ましく、そうすることで大きな押圧荷重を負荷しながら超音波接合する過程で突起電極が破損したり、大きく変形したりするのを防止して、適正な接合状態を確保することができる。
【0016】
また、電子部品の1つの突起電極当たり30〜200gとしてそれに突起電極の数を掛けた荷重を押圧荷重として負荷することにより、各突起電極に過大な荷重を作用せず、突起電極を大きく変形したりすることなく、効率的に超音波接合することができる。
【0017】
また、電子部品が、その一面に50個以上の突起電極を有する場合に、以上の構成を適用することでその効果が顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の電子部品実装方法によれば、電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつその表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与するとともに、電子部品の背面側から各突起電極に対して効率的に熱エネルギーを付与して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与でき、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができ、さらに振動系に影響を与えずに加熱でき、信頼性の高い超音波接合を容易に確保することができる。
【0019】
また、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつ、超音波振動伝達手段に連結された超音波振動発生手段にて電子部品の表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与するとともに、加熱手段にて超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面側から各突起電極に対して効率的に熱エネルギーを付与して電子部品と実装対象物の接合部に効率的に熱エネルギーを付与でき、電子部品の電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができ、さらに超音波振動発生手段の温度が上昇してその性能が低下したり、損傷したりするのを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の電子部品実装方法を適用した電子部品実装装置の実施形態について、図 1〜図5を参照して説明する。
【0021】
まず、本実施形態の電子部品実装装置における従来例と共通の全体構成について、図1、図2を参照して説明する。1は、ベアICチップからなる電子部品2を実装対象物の基板3(図3参照)に実装する電子部品実装装置で、電子部品2はその一面に複数の突起電極2aが配列されており、基板3の部品実装位置には各突起電極2aを接合する電極が形成されている。電子部品2は、例えば10mm角〜20mm角の大きさで、突起電極2aは50〜100個以上、特に大型の電子部品2においては1000個以上設けられている。
【0022】
電子部品実装装置1の基台4上の後部には、電子部品2を保持して基板3に実装する実装ヘッド5をX軸方向に移動可能に支持するX方向テーブル6が配設されている。X方向テーブル6の所定箇所の下部とその前部の間にわたってY軸方向に移動可能なY方向テーブル7が配設され、このY方向テーブル7上に基板3を載置固定する支持台8が設けられている。X方向テーブル6の前部には基板3を基台4の一側からY方向テーブル7まで搬入するローダ9と、Y方向テーブル7から基台4の他側に搬出するアンローダ10が配設されている。ローダ9やアンローダ10は基板3の両側を支持する一対のレールを有し、支持台8の前後両側にはこれら一対のレールに接続可能でかつ昇降可能な部分レール11が設けられて基板3をこの部分レール11上に受けた後、支持台8上に載置固定するように構成されている。
【0023】
基台4の他側のX方向テーブル6より前方位置に、多数の電子部品2を形成され、エキスパンドシート上でダイシングされた半導体ウエハ12を収容した部品マガジン13を設置されて、所望の半導体ウエハ12を所定の供給高さ位置に位置決めするマガジンリフタ14が配設され、マカジンリフタ14とY方向テーブル7との間に、マガジンリフタ14から導入された半導体ウエハ12のエキスパンドシートを拡張させ、各部品2を間隔をあけて分離させるエキスパンド台15が、任意の部品2を所定の第1の部品供給位置に位置決めするXYテーブル16上に設置して配設されている。17は第1の部品供給位置の部品2を認識する認識カメラである。
【0024】
18は、エキスパンド台15上の第1の部品供給位置で電子部品2を吸着し、X方向に移動して第2の部品供給位置まで移載するとともに吸着した電子部品2を180度上向きに旋回させる部品反転手段で、X方向テーブル6とは別に設けられたX方向テーブルにて移動可能に構成されている。半導体ウエハ12の状態では、各電子部品2の突起電極2aは上面に形成されており、部品反転手段18にて各電子部品2の突起電極2aが形成された面を吸着した後上向きに180度旋回することによって、電子部品2の突起電極2aが形成された面が下向き、反対側の面が上向きとなり、その状態で第2の部品供給位置で実装ヘッド5に受け渡すように構成されている。以上のマガジンリフタ14、エキスパンド台15、部品反転手段18にて電子部品2を実装ヘッド5に供給する部品供給手段20が構成されている。尚、19は基板3の電子部品2の実装位置又は電子部品2に封止材を塗布するディスペンサである。
【0025】
実装ヘッド5は、ボイスコイルモータなどの移動手段22にて軸芯方向に昇降駆動可能なスプライン軸(図示せず)の下部に超音波ヘッド21が取付けられている。超音波ヘッド21は、支持ブラケット23に超音波振動発生手段24と共振体25を取付けて構成され、その共振体25又はそれに取付固定された吸着ノズルにて部品2を保持するように構成されている。
【0026】
以上の全体構成における部品実装動作を説明すると、部品供給手段20にて電子部品2をその突起電極2aを下向きにした状態で第2の部品供給位置に供給した後、実装ヘッド 5の共振体25又はそれに取付固定された吸着ノズルにて電子部品2を保持し、次いで実装ヘッド5がX方向テーブル6にて基板3における電子部品2の実装位置のX方向位置まで移動する。一方、ローダ9にて供給された基板3はY方向テーブル7に設けられた部分レール11上に受け渡された後、部分レール11が所定高さ位置まで下降してこの基板3が支持台8上に載置固定され、次いでY方向テーブル7が基板3における電子部品2の実装位置のY方向位置が実装ヘッド5のY方向位置に一致するように移動する。次に、必要に応じてディスペンサ19にて実装位置に封止材を塗布した後、実装ヘッド5の移動手段22を作動させて電子部品2を下降させ、その突起電極2aを基板3の実装位置の電極に当接させるとともに、移動手段22にて所定の押圧荷重を負荷しながら超音波振動発生手段24を作動させることで、突起電極2aと基板3の電極の接合面に超音波エネルギーを供給して拡散及び溶融させて接合し、またディスペンサ19にて塗布された封止材が基板3と電子部品2の隙間に充填されて、電子部品2の基板3に対する実装が終了する。電子部品2の実装が終了すると、部分レール11が上昇して基板3が部分レール11上に受け渡されるとともに、部分レール11がアンローダ10に接続され、基板3がアンローダ10にて搬出される。
【0027】
次に、本実施形態の参考例における実装ヘッド5の要部である超音波ヘッド21の構成について、図3を参照して説明する。図3において、支持ブラケット23に共振体25を支持する一対の支持ブロック26a、26bがそれらの軸芯を水平にして取付けられ、共振体25の一端に振幅を拡大するホーン27の出力端面27aが同芯状に結合され、ホーン27の他端側に超音波振動発生手段24が結合されている。共振体25は、共振モードMの波長をλとして、(1+3/4)λの長さを有する軸体28から成り、一端からλ/4の位置と他端の振動モードの節の位置に支持部29a、29bが設けられて支持ブロック26a、26bにて支持され、支持部29a、29b間の中央の振動モードの腹となる位置に吸着ノズル30が垂直に貫通させて配設されている。30aは吸着ノズル30の軸芯部に形成された吸引通路である。吸着ノズル30の下端部には吸着保持すべき電子部品2の大きさに対応する平面形状の作用部31が形成され、この作用部31にカートリッジヒータなどの加熱手段32が埋設されるとともに、下面が電子部品2を保持する作用面33とされている。共振体25を構成する軸体28及び吸着ノズル30にて、超音波振動発生手段24にて発生された超音波振動を作用面33に伝播する超音波振動伝達手段34を構成している。
【0028】
なお、実装ヘッド5には、作用面33と支持台8の上面との平行度が5μm以下となるように調整するための調整機構(図示せず)が設けられている。また、超音波振動発生手段24にて発生され、超音波振動伝達手段34を介して作用面33に伝播された超音波振動は、作用面33においてその面に平行な水平方向の振動成分に対して垂直成分は3%未満となるように設定調整されている。また、ボイスコイルモータやシリンダなどの荷重負荷手段としての移動手段22により作用面33に負荷される押圧荷重は、電子部品2に設けられた各突起電極2aの直径やその数によって調整できるように構成されている。突起電極2aの径によるが、通常は1個の突起電極2a当たり30〜50gとして、それに突起電極2aの数を乗じた荷重を負荷するように構成されている。なお、1個の突起電極2a当たり30〜200gとして、それに突起電極2aの数を乗じた荷重が負荷される場合もある。
【0029】
以上の構成において、支持台8上に実装対象物の基板3を載置固定し、電子部品2を超音波ヘッド21の作用面33にて保持した状態で、移動手段22にて支持ブラケット23を下降移動させて吸着ノズル30を支持台8に向けて下降させ、その作用面33と支持台8の上面との間で基板3と電子部品2を挟圧し、さらに支持ブラケット23、一対の支持ブロック26a、26b、共振体25を構成する軸体28、及び吸着ノズル30を介して作用面33に上記した所定の押圧荷重を作用させる。この時、押圧荷重は作用面33に対 して垂直な軸芯の直上位置から負荷されることになる。その状態で、超音波振動発生手段24から超音波振動を出力し、さらに加熱手段32を作動させて加熱する。
【0030】
すると、電子部品2の背面にその垂直方向の直上位置から押圧荷重が負荷されるので、大きな押圧荷重を作用させても電子部品2の多数の突起電極2aの端面と基板3の接合面との平行度を高精度に維持することができ、従って電子部品2の突起電極2aの数が多く、負荷する押圧荷重が大きくても各突起電極2aに均等に所要の押圧荷重を負荷した状態で超音波振動を印加することができ、全ての突起電極2aを確実に高い信頼性をもって接合することができる。
【0031】
また、上記のようにして電子部品2の突起電極2aと基板3の電極の間に超音波エネルギーを付与しながら、さらに加熱手段32にて電子部品2をその背面から加熱して熱エネルギーを付与することにより、電子部品2の突起電極2aの数が多い場合にも全ての突起電極2aを確実に生産効率良く接合することができる。
【0032】
その際、支持台8側にも加熱手段(図示せず)を配設して基板3側からも熱エネルギーを付与するように構成するのが好適である。しかし、支持台8側には必ずしも加熱手段を設けなくても良く、逆に場合によっては支持台8側にのみ加熱手段を設けて熱エネルギーを付与するようにしてもよい。
【0033】
また、基板3の実装位置にディスペンサ19にて塗布され、電子部品2の実装によって電子部品2と基板3の間の隙間に充填された封止材が同時に加熱によって硬化され、電子部品2の接合と同時に封止も完了する。これによって、後続の封止工程が削減され、コスト低下が図られる。
【0034】
また、上記したように作用面33における超音波振動のその面と平行な方向の成分に対して垂直な方向の成分が3%未満となるようにしているので、大きな押圧荷重を負荷しながら超音波接合する過程で突起電極2aが破損したり、大きく変形したりするのを防止して、適正な接合状態を確保することができる。なお、超音波振動エネルギーの水平方向成分に対して垂直方向成分が10%未満であれば、突起電極2aの数がかなり多い場合でも適正な接合状態を得ることができるが、垂直方向成分が10%以上になると、突起電極2aの数が多く、押圧荷重が大きい場合には突起電極2aの一部が大きく変形して適正な接合状態が得られない恐れが発生する。
【0035】
また、上記したように電子部品は、一面に50個以上の突起電極2aを有する電子部品2の場合、1つの突起電極2a当たり30〜50gとしてそれに突起電極2aの数を掛けた荷重を押圧荷重として負荷することにより、各突起電極2aに過大な荷重を作用せず、突起電極2aを大きく変形したりすることなく、効率的に超音波接合することができる。
【0036】
次に、本実施形態の電子部品実装装置の他の参考例について、図4を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明では、同一の構成要素については同一参照符号を付して説明を省略し、相違点のみを説明する。
【0037】
上記参考例では、軸体28から共振体25の両側部を支持ブロック26a、26bにて支持した状態で押圧荷重を負荷することにより、押圧荷重を作用面33の垂直方向直上から負荷するように構成した例を示したが、本参考例では超音波振動発生手段24が比較的剛性の大きなホーン27を有しており、このホーン27の入力端面からλ/2の位置に吸着ノズル30を垂直に貫通させて配設している。
【0038】
このように構成しても、作用部31に内蔵させた加熱手段32にて熱エネルギーを付与 することで、その分付与すべき超音波エネルギーを小さくできて押圧荷重を低減でき、それによって押圧荷重を負荷した状態で作用面33と支持台8の平行度を所望の範囲に納め、また作用面33における超音波振動エネルギーの水平成分に対して垂直成分を10%未満に納めることが可能であり、全ての突起電極2aを適正に接合することができる。
【0039】
次に、本実施形態の電子部品実装装置の実装ヘッドについて、図5を参照して説明する。
【0040】
上記参考例では、吸着ノズル30の作用部31に加熱手段32を埋設した例を示したが、本実施形態では作用面33の近傍に配設した部材に加熱手段を配設して、熱輻射にて加熱するようにしている。図5において、細長いブロック状の共振体35の一端の基端面36に連結軸37を介して超音波振動発生手段24が結合され、共振体35の他端部一側に作用面33が斜めに形成されている。共振体35及び連結軸37、超音波振動発生手段24は作用面33が水平になるように斜め上方に傾斜した姿勢で配設され、かつ共振体35の共振モードの節の位置に設けられた取付部35aを支持ブラケット23に固定して取付けられている。
【0041】
支持ブラケット23には、共振体35の両側に対向するように対向板部38が設けられ、この対向板部38の下部の作用面33の近傍に対向する部分にカートリッジヒータなどの間接加熱用の加熱手段39が埋設され、加熱手段39で対向板部38の下部を加熱し、その輻射熱で共振体35の作用面33近傍を加熱するように構成されている。
【0042】
また、超音波振動発生手段24の外周と連結軸37の外周の少なくとも一部を取り囲むように、冷却部若しくは保温部としての冷却チャンバ40が配設され、その流入口40aから冷却エアを導入し、流出口40bから排出することで、連結軸37や超音波振動発生手段24を冷却し、共振体35の加熱により伝わってくる熱を放熱させて超音波振動発生手段24の温度上昇を防止するように構成されている。また、連結軸37に温度監視部としての熱電対41を埋め込み配置し、その温度を監視できるように構成されている。
【0043】
本実施形態では、共振体35を間接加熱するようにしているので、超音波振動接合の振動系に影響を与えずに加熱することができるので、信頼性の高い超音波接合を容易に確保することができる。また、冷却部又は保温部として冷却チャンバ40を設けたことで、加熱手段39にて加熱した共振体35の熱が超音波振動発生手段24に熱が伝達され、超音波振動発生手段24の温度が上昇してその性能が低下したり、損傷したりするのを確実に防止することができる。また、超音波振動発生手段24の近傍に配設した熱電対41にて温度を監視するようにしているので、知らずに超音波振動発生手段24の温度が上昇して性能が低下し、接合不良が大量に発生してしまうというような事態の発生を未然に防止することができる。
【0044】
なお、上記実施形態の説明では、非接触間接加熱として、輻射熱で作用面33近傍を加熱するようにした例を示したが、熱風を吹き付けて加熱したり、レーザ光などの熱線を照射して加熱したり、電磁誘導加熱したりする手段を配設してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の電子部品実装方法によれば、電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつその表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与するとともに、電子部品の背面側から各突起電極に対して効率的に熱エネルギーを付与して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与でき、電子部品の突起電極の数が多い場合にも全ての突起電極を確実に生産効率良く接合することができ、さらに振動系に影響を与えずに加熱でき、信頼性の高い超音波接合を容易に確保することができるので、一面に複数の突起電極を有する電子部品を基板に 超音波接合する電子部品実装装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態及び従来例に共通する電子部品実装装置における全体概略構成を示す斜視図。
【図2】図1における実装ヘッドの構成を示す斜視図。
【図3】本発明の参考例における実装ヘッドの要部構成を示す部分断面正面図。
【図4】本発明の他の参考例における実装ヘッドの要部構成を示す部分断面正面図。
【図5】本発明の実施形態における実装ヘッドの要部構成を示す部分断面正面図。
【図6】図5のA−A矢視図。
【符号の説明】
【0047】
1 電子部品実装装置
2 電子部品
2a 突起電極
3 基板(実装対象物)
5 実装ヘッド
6 X方向テーブル(位置決め手段)
7 Y方向テーブル(位置決め手段)
8 支持台
20 部品供給手段
22 移動手段(荷重負荷手段)
24 超音波振動発生手段
32 加熱手段
33 作用面
34 超音波振動伝達手段
39 加熱手段
40 冷却チャンバ(冷却部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に複数の突起電極を有する電子部品を実装対象物の電極に接合して実装する電子部品の実装方法であって、電子部品の突起電極配設面とは反対側の背面を超音波振動伝達手段にて保持し、支持台上に配置固定した実装対象物と位置合わせを行い、電子部品の各突起電極を実装対象物の各電極に接触させる工程と、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつその表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与する工程と、超音波振動伝達手段に対して非接触方式で電子部品をその背面から加熱して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与する工程とを有することを特徴とする電子部品実装方法。
【請求項2】
一面に複数の突起電極を有する電子部品を実装対象物の電極に接合して実装する電子部品の実装方法であって、電子部品の突起電極配設面とは反対側の背面を超音波振動伝達手段にて保持し、支持台上に配置固定した実装対象物と位置合わせを行い、電子部品の各突起電極を実装対象物の各電極に接触させる工程と、超音波振動伝達手段を介して電子部品の背面に押圧荷重を負荷しつつ、超音波振動伝達手段に連結された超音波振動発生手段にて電子部品の表面と略平行な振動方向の超音波振動を付与する工程と、加熱手段にて超音波振動伝達手段を介して電子部品をその背面から加熱して電子部品と実装対象物の接合部に熱エネルギーを付与する工程と、加熱手段にて加熱された超音波振動伝達手段の熱が超音波振動発生手段に伝わるのを超音波振動発生手段と超音波振動伝達手段の間で冷却する工程とを有することを特徴とする電子部品実装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−227964(P2007−227964A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115127(P2007−115127)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【分割の表示】特願2002−87594(P2002−87594)の分割
【原出願日】平成14年3月27日(2002.3.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】