説明

電子部品用接合材

【課題】硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなり、信頼性の高い接合体を得ることのできる電子部品用接合材を提供する。
【解決手段】硬化性化合物と、硬化剤と、ポリイミド粒子とを含有し、前記ポリイミド粒子は、表面に凹凸のある形状を有し、平均粒子径が0.03〜10μmである電子部品用接合材。表面に凹凸のある形状は、規則的な形状、又は、球場の表面に凹凸が形成された形状でなくとも、粒子状又はフィルム状のポリイミドを機械的に粉砕して得た不規則な凹凸ある形状であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなり、信頼性の高い接合体を得ることのできる電子部品用接合材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体チップを基板等に接着固定する際に用いられる接着剤等には、接合後、接合された半導体チップにできる限り応力を発生させない性質が求められる。応力が発生すると、例えば、基板と半導体チップ、又は、半導体チップと半導体チップとの剥がれ等が生じるためである。
【0003】
半導体チップに応力を発生させないためには、接着剤等の硬化物の内部応力を低減することが有効である。内部応力は、接着剤等の硬化物のガラス転移温度(Tg)以下の温度領域における線膨張率及び弾性率を低下させることで抑制できると考えられている。
【0004】
従来から、接着剤等に無機充填材を大量に添加することによって硬化物の線膨張率を低下させる方法が用いられてきた。例えば、特許文献1に開示されている、接着性、速硬化性、信頼性に優れた半導体用ダイアタッチペーストには、必須成分として銀粉、シリカ等の充填材が添加されている。しかしながら、接着剤等に無機充填材を大量に添加すると、硬化物の線膨張率を低下させることはできるものの、同時に弾性率を上昇させてしまうことから、低線膨張率と低弾性率とを同時に実現することのできる新たな方法が望まれている。
【0005】
この問題に対し、充填材としてポリイミド粒子を用いることにより、接着剤等の硬化物の弾性率の上昇を抑制しながら線膨張率を低下させる試みがなされている。例えば、特許文献2に開示されている、回路部材と回路接続部との界面での剥離を抑制する回路接続材料には、絶縁性粒子としてポリアミック酸粒子及びポリイミド粒子の一方又は双方が配合されている。しかしながら、近年、半導体装置には更なる小型化及び高集積化が要求されており、半導体チップの小型化及び薄層化もますます進行していることから、信頼性の高い接合体を得るためには、接着剤等の硬化物の内部応力をより厳密に低減することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−172443号公報
【特許文献2】特開2008−150573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなり、信頼性の高い接合体を得ることのできる電子部品用接合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性化合物と、硬化剤と、ポリイミド粒子とを含有し、前記ポリイミド粒子は、表面に凹凸のある形状を有し、平均粒子径が0.03〜10μmである電子部品用接合材である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者は、ポリイミド粒子を含有する電子部品用接合材において、ポリイミド粒子の形状を表面に凹凸のある形状とし、かつ、平均粒子径を特定の範囲内とすることにより、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率及び弾性率を充分に低くできることを見出した。また、本発明者は、このような電子部品用接合材は、硬化後、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなることを見出した。
このように、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が充分に低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなって高温での接着信頼性が向上する電子部品用接合材を用いると、小型化及び薄層化した半導体チップを接合する場合にも信頼性の高い接合体を製造することができる。
【0010】
本発明の電子部品用接合材は、硬化性化合物を含有する。
上記硬化性化合物は特に限定されず、例えば、付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、開環重合等の反応により硬化する化合物が挙げられる。上記硬化性化合物として、具体的には、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、得られる接合体が信頼性及び接合強度に優れることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び、これらの変性物、水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記硬化性化合物として上記エポキシ樹脂を用いる場合、上記硬化性化合物は、更に、上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有してもよい。
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる電子部品用接合材の硬化物は靭性をもち、優れた耐衝撃性を有することができる。
【0013】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
上記硬化性化合物として上記エポキシ樹脂と、上記エポキシ基を有する高分子化合物とを用いる場合、得られる電子部品用接合材の硬化物は、上記エポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた靭性とを兼備し、高い接着信頼性及び高い導通信頼性を発現することができる。
【0014】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる電子部品用接合材の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性等を有することができることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、重量平均分子量の好ましい下限は1万である。重量平均分子量が1万未満であると、シート状の電子部品用接合材としようとしても、製膜性が不充分となり、形状を保持することができないことがある。
【0016】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、エポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。エポキシ当量が200未満であると、得られる電子部品用接合材の硬化物が堅くて脆くなることがある。エポキシ当量が1000を超えると、得られる電子部品用接合材の硬化物の機械的強度又は耐熱性が不充分となることがある。
【0017】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が1重量部未満であると、得られる電子部品用接合材の硬化物は、熱によるひずみが発生する際、靭性が不足し、接着信頼性が劣ることがある。上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が500重量部を超えると、得られる電子部品用接合材の硬化物の耐熱性が低下することがある。
【0018】
本発明の電子部品用接合材は、硬化剤を含有する。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。なかでも、酸無水物硬化剤が好ましい。
【0019】
上記酸無水物硬化剤は特に限定されないが、2官能酸無水物硬化剤が好ましい。上記2官能酸無水物硬化剤は特に限定されず、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0020】
また、上記酸無水物硬化剤として、3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を用いてもよい。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子は特に限定されず、例えば、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物からなる粒子、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物からなる粒子等が挙げられる。
【0021】
上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が20μmである。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化剤粒子の凝集が生じ、得られる電子部品用接合材が増粘することがある。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が20μmを超えると、硬化時に硬化剤粒子が充分に拡散することができず、硬化不良となることがある。
【0022】
上記硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られる電子部品用接合材が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られる電子部品用接合材の接着信頼性が低下することがある。
上記硬化剤の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が140重量部である。
【0023】
また、上記硬化剤が、上記2官能酸無水物硬化剤と上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子とを含有する場合、これらの配合比は特に限定されないが、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量(重量)を上記2官能酸無水物硬化剤の含有量(重量)で除した値[=(3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量)/(2官能酸無水物硬化剤の含有量)]の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記値が0.1未満であると、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を添加する効果が充分に得られないことがある。上記値が10を超えると、得られる電子部品用接合材の硬化物が脆くなり、充分な接着信頼性が得られないことがある。
上記値のより好ましい下限は0.2、より好ましい上限は8である。
【0024】
本発明の電子部品用接合材は、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度、硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記硬化促進剤の含有量が1重量部未満であると、得られる電子部品用接合材が充分に硬化しないことがある。上記硬化促進剤の含有量が20重量部を超えると、得られる電子部品用接合材の接着信頼性が低下することがある。
【0027】
本発明の電子部品用接合材は、ポリイミド粒子を含有する。
上記ポリイミド粒子を添加することによって、無機充填材等を添加しなくても、電子部品用接合材の硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させることができる。また、無機充填材は線膨張率を低下させると同時に弾性率を上昇させる効果を有するのに対し、上記ポリイミド粒子は、弾性率の上昇を抑制しながら線膨張率を低下させることができる。更に、上記ポリイミド粒子を添加することによって、電子部品用接合材の硬化後のガラス転移温度以上の温度領域における弾性率を高めることができる。
【0028】
上記ポリイミド粒子は、表面に凹凸のある形状を有し、平均粒子径が0.03〜10μmである。
上記ポリイミド粒子が表面に凹凸のある形状を有し、平均粒子径が上記範囲内であることにより、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させる効果を大きく向上させることができる。これは、上記硬化性化合物等の硬化性成分と上記ポリイミド粒子との接触面積が増大する効果と、上記ポリイミド粒子の表面の凹凸によるアンカー効果とによるものと推測される。
本発明の電子部品用接合材を用いると、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が充分に低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなって高温での接着信頼性が向上することにより、小型化及び薄層化した半導体チップを接合する場合にも信頼性の高い接合体を製造することができる。
【0029】
本明細書中、表面に凹凸のある形状とは、電子顕微鏡で1000〜30万倍程度の倍率で観察したときに表面に凹凸が観察される形状を意味する。
上記ポリイミド粒子が表面に凹凸のある形状を有さない場合には、上記硬化性化合物等の硬化性成分と上記ポリイミド粒子との接触面積が減少して上記ポリイミド粒子の熱特性が上記硬化性化合物等の硬化性成分に充分に伝わらず、また、上記ポリイミド粒子の表面のアンカー効果が低下することから、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させる効果が充分に得られない。上記ポリイミド粒子が表面に凹凸のある形状を有さない場合として、例えば、上記ポリイミド粒子が、表面が滑らかな球状等の比表面積の小さい形状を有する場合等が挙げられる。
【0030】
上記表面に凹凸のある形状として、例えば、放射状、表面に複数の凹部のある形状、表面に複数の凸部のある形状、表面にシワのある形状等が挙げられる。なかでも、表面だけでなく粒子内部にまで凹部又は空隙のある形状は凹部又は空隙に空気が含まれやすく、ボイド発生の原因となることがあることから、放射状、表面に複数の凸部のある形状、表面にシワのある形状等が好ましい。
上記ポリイミド粒子が放射状を有する場合、上記ポリイミド粒子の結晶形態として、例えば、繊維状結晶、リボン状結晶、板状結晶、棒状結晶、針状結晶及びこれらの凝集体、並びに、星形結晶等が挙げられる。図1(a)〜(c)に、上記ポリイミド粒子が放射状を有する場合の上記ポリイミド粒子の形状の例を模式的に示す。
【0031】
上記ポリイミド粒子が表面に複数の凸部のある形状、又は、表面に複数の凹部のある形状を有する場合、凸部又は凹部の形状は特に限定されず、例えば、半球体、円錐、円柱、三角錐等の多角錐、三角柱等の多角柱等が挙げられる。図2(a)〜(c)に、上記ポリイミド粒子が表面に複数の凸部のある形状を有する場合の上記ポリイミド粒子の形状の例を模式的に示す。図3に、上記ポリイミド粒子が表面に複数の凹部のある形状を有する場合の上記ポリイミド粒子の形状の例を模式的に示す。
上記ポリイミド粒子が表面にシワのある形状を有する場合、上記シワは凹状であってもよく凸状であってもよい。図4(a)及び(b)に、上記ポリイミド粒子が表面にシワのある形状を有する場合の上記ポリイミド粒子の形状の例を模式的に示す。
また、上記表面に凹凸のある形状として、例えば、図5に示すような形状も挙げられる。
【0032】
なお、上記表面に凹凸のある形状は、規則的な凹凸のある形状、又は、球状の表面に凹凸が形成された形状でなくとも、粒子状又はフィルム状のポリイミドを機械的に粉砕して得た不規則な凹凸のある形状であってもよい。
【0033】
本明細書中、ポリイミド粒子の平均粒子径とは、ポリイミド粒子を電子顕微鏡で1000〜30万倍程度の倍率で観察したときの写真から、任意に50個以上のポリイミド粒子を選択し、この任意の50個以上のポリイミド粒子の最長径から算出した数平均値を意味する。
例えば、上記ポリイミド粒子が放射状を有する場合、上記ポリイミド粒子の最長径は、上記ポリイミド粒子を電子顕微鏡で1000〜30万倍程度の倍率で観察したときの放射状の端から端の長さである。例えば、上記ポリイミド粒子が表面に複数の凸部のある形状を有する場合、上記ポリイミド粒子の最長径は、上記ポリイミド粒子を電子顕微鏡で1000〜30万倍程度の倍率で観察したときの凸部の端から端の長さである。
【0034】
上記平均粒子径が0.03μm未満であると、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させる効果が充分に得られる程度にポリイミド粒子を高充填すると、電子部品用接合材の流動性が低下し、塗布性、製膜性等が著しく低下する。上記平均粒子径が10μmを超えると、上記硬化性化合物等の硬化性成分と上記ポリイミド粒子との接触面積が減少し、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させる効果が充分に得られない。また、上記平均粒子径が10μmを超えると、小型化及び薄層化した半導体チップを接合する場合に、電子部品用接合材中でポリイミド粒子が異物となったり、半導体チップの接合時にポリイミド粒子のかみ込みが生じたり、電子部品用接合材を薄膜化できなかったりする。
上記ポリイミド粒子の平均粒子径の好ましい下限は0.05μm、好ましい上限は5μmである。
【0035】
上記ポリイミド粒子は、粒子径のCV値の好ましい下限が10%、好ましい上限が50%である。上記粒子径のCV値が10%未満であると、電子部品用接合材の流動性の低下を抑制しながらポリイミド粒子を高充填することが困難となることがある。また、高充填できた場合でも、シート状の電子部品用接合材としようとすると、表面荒れが起こってしまい良好なシート化ができないことがある。上記粒子径のCV値が50%を超えると、異常に大きな粒子又は異常に小さな粒子が含まれてしまうことにより、例えば、電子部品用接合材の流動性が低下し、塗布性、製膜性等が低下することがある。
上記ポリイミド粒子の粒子径のCV値のより好ましい下限は15%、より好ましい上限は40%である。
なお、本明細書中、ポリイミド粒子の粒子径のCV値とは、ポリイミド粒子の平均粒子径mと標準偏差σから下記式により算出した値を意味する。
CV値(%)=σ/m×100
【0036】
上記ポリイミド粒子に含有されるポリイミド化合物は特に限定されないが、主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物が好ましい。
上記ポリイミド化合物は、主骨格に芳香環を有することで、より剛直で揺らぎの少ない分子構造となり、電子部品用接合材の硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を更に低下させることができる。
【0037】
上記主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物は特に限定されないが、主骨格にベンゾオキサゾール構造を有するポリイミド化合物が好ましい。
また、上記主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物として、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフタレン等の芳香環を主骨格に有するポリイミド化合物も挙げられ、具体的には、例えば、ポリ(N,N’−p−フェニレン−ビフェニルテトラカルボキシルイミド)等が挙げられる。
【0038】
上記ポリイミド粒子を製造する方法は特に限定されず、例えば、無水テトラカルボン酸含有溶液とジアミン含有溶液とをそれぞれ調製し、超音波攪拌を行いながら2つの溶液を混合してポリアミド酸粒子を析出させるか、又は、2つの溶液を混合した混合溶液を超音波攪拌を行いながらポリアミド酸の貧溶媒に滴下してポリアミド酸粒子を析出させた後、得られたポリアミド酸粒子をイミド化することによりポリイミド粒子とする方法が挙げられる。また、例えば、ジアミン含有溶液又は無水テトラカルボン酸含有溶液を調製しておき、超音波撹拌を行いながら固体状の無水テトラカルボン酸又は固体状のジアミンを溶液に直接添加し、ポリアミド酸粒子を析出させた後、得られたポリアミド酸粒子をイミド化することによりポリイミド粒子とする方法も挙げられる。
これらの方法によれば、超音波攪拌を行うことにより、微細なポリイミド粒子を得ることができる。
【0039】
また、上記ポリイミド粒子を製造する方法として、例えば、反応溶媒に対して可溶性のイミド構造を形成するジアミンと、反応溶媒に対して不溶性のイミド構造を形成するジアミンと、アミノ基等の官能基を有するイミド構造を形成するジアミンとからなるジアミン混合物を用い、該ジアミン混合物と無水テトラカルボン酸とを反応溶媒中で反応させることによりポリアミド酸ワニスを調製し、得られたポリアミド酸ワニスを加熱することにより、反応溶媒からポリイミド粒子を析出させる方法等も挙げられる。
この方法によれば、ジアミン混合物中のジアミンの配合比を調整することにより、所望の平均粒子径を有するポリイミド粒子を得ることができる。
【0040】
上記ポリイミド粒子の形状を上述したような表面に凹凸のある形状とするためには、例えば、ジアミンと無水テトラカルボン酸とを、高沸点かつポリアミド酸の貧溶媒である溶媒中で高温で長時間重合させる方法を用いることが好ましい。
また、例えば、ポリアミド酸を可溶な溶媒中でポリアミド酸を合成し、得られたポリアミド酸溶液に特定のポリマーを溶解させ、得られたポリアミド酸/ポリマー混合溶液をポリアミド酸の貧溶媒中に添加してポリアミド酸を再沈殿させる方法を用いると、多孔性のポリアミド酸粒子を作製することができる。このポリアミド酸粒子をイミド化することで所望の形状を有する孔質性のポリイミド粒子を得ることができる。
また、例えば、あらかじめ小片状にしておいた粒子状又はフィルム状のポリイミドをビーズミル、ボールミル等の公知の機械的粉砕機で粉砕したり、適切な溶媒に分散させてホモジナイザーで粉砕したりすることにより、不規則な凹凸のある形状を有するポリイミド粒子を得ることができる。
【0041】
上記無水テトラカルボン酸は特に限定されず、例えば、芳香族テトラカルボン酸無水物が挙げられる。
上記芳香族テトラカルボン酸無水物は特に限定されず、例えば、4,4’−ビフタル酸無水物(BPDA)、ピロメリット酸無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,6,6’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0042】
また、上記無水テトラカルボン酸として、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸無水物、シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の複素環族テトラカルボン酸無水物等も挙げられる。
これらの無水テトラカルボン酸は単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0043】
上記ジアミンは特に限定されず、例えば、芳香族ジアミンが挙げられる。
上記芳香族ジアミンは特に限定されず、例えば、1,4−フェニレンジアミン(PPD)、1,3−フェニレンジアミン、1,2−フェニレンジアミン、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール(DAMBO)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(DDM)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−Q)、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン等が挙げられる。
【0044】
また、上記ポリイミド粒子が上記主骨格にベンゾオキサゾール構造を有するポリイミド化合物を含有する場合、上記芳香族ジアミンは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンであることが好ましい。
上記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンは特に限定されず、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’−p−フェニレンビス(5−アミノベンゾオキサゾール)、2,2’−p−フェニレンビス(6−アミノベンゾオキサゾール)、1−(5−アミノベンゾオキサゾロ)−4−(6−アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(4,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,4’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:5,4−d’]ビスオキサゾール、2,6−(3,3’−ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2−d:4,5−d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。
【0045】
これらのベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましく、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールがより好ましい。
なお、上記アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基の配位位置に応じて定められる各異性体であり、例えば、5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6−アミノ−2−(m−アミノフェニル)ベンゾオキサゾール等が挙げられる。
これらのベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンは単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0046】
また、上記ジアミンとして、例えば、1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,10−ジアミノドデカン等の脂肪族ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミン、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等も挙げられる。
これらのジアミンは単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0047】
上記ポリイミド粒子は、表面処理されていてもよい。
上記ポリイミド粒子に表面処理を施すことにより、電子部品用接合材の流動性の低下を更に抑制しながらポリイミド粒子を高充填することができる。
上記表面処理する方法は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤を用いて表面処理する方法等が挙げられる。上記シランカップリング剤を用いて表面処理する方法は特に限定されず、例えば、ポリイミド粒子の表面に存在する官能基とシランカップリング剤とを反応させる方法、ポリイミド粒子の表面にコーティング層を形成した後、コーティング層の表面に存在する官能基とシランカップリング剤とを反応させる方法等が挙げられる。上記コーティング層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコールを物理吸着させる方法等が挙げられる。
【0048】
更に、上述のようなポリイミド粒子を製造する方法を改良することによっても、上記ポリイミド粒子を表面処理することができる。
例えば、上記無水テトラカルボン酸と上記ジアミンの2種類の原料に、更に、例えば、2,4,6−トリアミノピリジン等の3価のアミンを組み合わせることで、表面にアミノ基を有するポリイミド粒子が得られる。このアミノ基に、例えば、グリシジル基、カルボキシル基等を有する機能性化合物を反応させることで、ポリイミド粒子の表面を2次修飾することができる。
【0049】
上記ポリイミド粒子の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が900重量部である。上記ポリイミド粒子の含有量が5重量部未満であると、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率を低下させる効果が充分に得られないことがある。上記ポリイミド粒子の含有量が900重量部を超えると、電子部品用接合材の流動性が低下し、塗布性、製膜性等が低下することがある。
上記ポリイミド粒子の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限が30重量部、より好ましい上限が700重量部であり、更に好ましい下限が50重量部、更に好ましい上限が500重量部である。
【0050】
本発明の電子部品用接合材は、本発明の効果を阻害しない範囲内、即ち、硬化後のガラス転移温度以下の温度における線膨張率を更に低下させ、かつ、弾性率を上昇させない範囲内であれば、無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカ、ガラス繊維、アルミナ微粒子等が挙げられる。
【0051】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.1nm、好ましい上限は30μmである。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が0.1nm未満であると、電子部品用接合材の流動性が低下し、塗布性、製膜性等が低下することがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が30μmを超えると、小型化及び薄層化した半導体チップを接合する場合に、無機充填材のかみ込みが生じることがある。
【0052】
上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は100重量部である。上記無機充填材の含有量が5重量部未満であると、上記無機充填材を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記無機充填材の含有量が100重量部を超えると、電子部品用接合材の硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率は低下するものの、同時に弾性率が上昇することがある。
上記無機充填材の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい上限が50重量部である。
【0053】
本発明の電子部品用接合材は、本発明の効果を阻害しない範囲内で希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は特に限定されないが、電子部品用接合材の加熱硬化時に硬化物に取り込まれる反応性希釈剤が好ましい。なかでも、得られる電子部品用接合材の接着信頼性を悪化させないために、1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤がより好ましい。
上記1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤として、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
【0054】
上記希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記希釈剤の含有量が1重量部未満であると、上記希釈剤を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記希釈剤の含有量が50重量部を超えると、得られる電子部品用接合材の接着信頼性が劣ったり、後述する粘度特性が得られなかったりすることがある。
上記希釈剤の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0055】
本発明の電子部品用接合材は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0056】
本発明の電子部品用接合材は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。上記無機イオン交換体のうち、市販品としては、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。
上記無機イオン交換体の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%である。
【0057】
本発明の電子部品用接合材は、その他必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等の添加剤を含有してもよい。
【0058】
本発明の電子部品用接合材は、ペースト状である場合、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したときに、0.5rpmにおける粘度の好ましい下限が20Pa・s、好ましい上限が1000Pa・sである。上記粘度が20Pa・s未満であると、電子部品用接合材は形状保持性に欠けることがある。上記粘度が1000Pa・sを超えると、電子部品用接合材は塗布性、製膜性等が低下し、例えば、エアーディスペンサーで塗布する場合の吐出安定性に欠けることがある。
【0059】
また、本発明の電子部品用接合材は、ペースト状である場合、E型粘度計を用いて25℃、5rpmの条件で測定した粘度をT、E型粘度計を用いて25℃、0.5rpmの条件で測定した粘度をTとしたときに、T/Tの下限が2、上限が8であることが好ましい。上記T/Tが上記範囲内にあることで、電子部品用接合材は、塗布に好適なチクソ性を有することができる。
【0060】
本発明の電子部品用接合材は、硬化後のガラス転移温度以下の温度領域における線膨張率の好ましい下限が10ppm、好ましい上限が60ppmである。上記線膨張率が10ppm未満であると、ハンダ又は基板等よりも電子部品用接合材の線膨張率が低くなることで、ハンダ又は基板等の熱膨張によって接合部へ応力が集中して半導体チップが剥離することがある。上記線膨張率が60ppmを超えると、熱によるひずみが発生する際、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。
上記線膨張率は、使用する硬化性化合物の特性にも左右されるが、より好ましい下限が15ppm、より好ましい上限が55ppmである。
【0061】
また、本発明の電子部品用接合材は、硬化後のガラス転移温度以上の温度領域における線膨張率の好ましい下限が50ppm、好ましい上限が140ppmである。上記線膨張率のより好ましい下限は60ppm、より好ましい上限は130ppmである。
【0062】
なお、本明細書中、電子部品用接合材の硬化後の線膨張率は、電子部品用接合材を110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、熱応力歪測定装置(「EXTEAR TMA/SS 6100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、荷重2N、昇温速度5℃/分、サンプル長1cmで300℃まで昇温し、このとき得られたSSカーブの傾きから求められる値である。
【0063】
本発明の電子部品用接合材は、硬化後の25〜170℃における弾性率の好ましい下限は10MPa、好ましい上限は7000MPaである。上記弾性率が10MPa未満であると、電子部品用接合材の硬化物は充分な耐熱性が得られないことがある。上記弾性率が7000MPaを超えると、熱によるひずみが発生する際、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。
上記弾性率は、使用する硬化性化合物の特性にも左右されるが、より好ましい下限が50MPa、より好ましい上限が6000MPa、更に好ましい上限が5000MPaである。
【0064】
なお、本明細書中、電子部品用接合材の硬化物の弾性率は、電子部品用接合材を110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、粘弾性測定機(型式「DVA−200」、アイティー計測制御社製)を用いて、昇温速度5℃/分、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで300℃まで昇温して得られる値である。
【0065】
本発明の電子部品用接合材の形態は特に限定されず、ペースト状であってもよく、シート状であってもよい。
【0066】
本発明の電子部品用接合材を製造する方法は特に限定されない。本発明の電子部品用接合材がペースト状である場合、本発明の電子部品用接合材を製造する方法として、例えば、上記硬化性化合物、上記硬化剤、上記ポリイミド粒子、必要に応じて加えられるその他の添加剤等を所定量配合して従来公知の方法により混合する方法等が挙げられる。
また、本発明の電子部品用接合材がシート状である場合、本発明の電子部品用接合材を製造する方法として、例えば、ペースト状の電子部品用接合材を押出成型法を用いてシート状に成形する方法、ペースト状の電子部品用接合材を含有する溶液を、溶剤キャスト法、ウェーハに直接塗工するスピンコート法、スクリーン印刷する方法等を用いてシート状に成形する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0067】
本発明によれば、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなり、信頼性の高い接合体を得ることのできる電子部品用接合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の電子部品用接合材に含まれるポリイミド粒子の形状の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の電子部品用接合材に含まれるポリイミド粒子の形状の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の電子部品用接合材に含まれるポリイミド粒子の形状の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の電子部品用接合材に含まれるポリイミド粒子の形状の一例を示す模式図である。
【図5】本発明の電子部品用接合材に含まれるポリイミド粒子の形状の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0070】
(ポリイミド粒子Aの製造)
1,4−フェニレンジアミン(PPD)0.216gをアセトン80gに添加して攪拌することにより、ジアミン溶液を得た。次いで、得られたジアミン溶液に対して超音波装置(UH−600S、SMT社製)を用いて25℃で20kHz、600Wの超音波を照射し、撹拌しながら、非溶液状態の4,4’−ビフタル酸無水物(BPDA)0.588gをジアミン溶液に速やかに添加した。30分間超音波照射し、反応を進行させポリアミド酸を生成させた。このとき、生成したポリアミド酸は反応溶液中で析出し、ポリアミド酸粒子が得られた。得られたポリアミド酸粒子を単離した後、テトラデカン146g中に分散させ、160℃で360分間加熱してイミド化処理することにより、ポリイミド粒子を得た。得られたポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子(表面に凹凸のない形状(球状)、平均粒子径0.3μm、粒子径のCV値35%)を得た。
次いで、ボールミル機(セイシン社製、プラネタリーボールミル PM−1200)を用い、純水を媒体として使用して、上記で得られたポリイミド粒子(表面に凹凸のない形状(球状)、平均粒子径0.3μm、粒子径のCV値35%)を設定回転数250rpmで1時間粉砕してポリイミド粒子を得た。得られたポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子A(表面に凹凸のある形状、平均粒子径0.2μm、粒子径のCV値45%)を得た。
【0071】
(ポリイミド粒子Bの製造)
ポリイミドフィルム(ユーピレックスSフィルム、宇部興産社製、厚み50μm)をあらかじめ約5mm角にカットし、小片状のフィルム状態とした。ボールミル機(セイシン社製、プラネタリーボールミル PM−1200)を用い、小片状のポリイミドフィルムを2時間粉砕してポリイミド粒子を得た。得られたポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子B(表面に凹凸のある形状、平均粒子径5μm、粒子径のCV値48%)を得た。
【0072】
(ポリイミド粒子Cの製造)
ピロメリット酸無水物(PMDA)をジビニルトルエン混合物(DBT)中に添加し、窒素気流下で330℃に昇温した。昇温過程でPMDAを溶解させ溶液を得た。得られた溶液に、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)をPMDAと等モル量添加して完全に溶解させた。次いで、重合濃度0.5%で、静置下で6時間重合を行ったところ、時間と共に反応物が析出し、ポリイミド粒子を得た。得られたポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子C(表面に凹凸のある形状、平均粒子径5μm、粒子径のCV値16%)を得た。
【0073】
(ポリイミド粒子Dの製造)
1,4−フェニレンジアミン(PPD)0.216gをアセトン80gに添加して攪拌することにより、ジアミン溶液を得た。次いで、得られたジアミン溶液に対して超音波装置(UH−600S、SMT社製)を用いて25℃で20kHz、600Wの超音波を照射し、撹拌しながら、非溶液状態のピロメリット酸無水物(PMDA)0.436gをジアミン溶液に速やかに添加した。30分間超音波照射し、反応を進行させポリアミド酸を生成させた。このとき、生成したポリアミド酸は反応溶液中で析出し、ポリアミド酸粒子が得られた。得られたポリアミド酸粒子を単離した後、テトラデカン146g中に分散させ、160℃で360分間加熱してイミド化処理することにより、ポリイミド粒子を得た。得られたポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子D(表面に凹凸のない形状(球状)、平均粒子径0.5μm、粒子径のCV値15%)を得た。
【0074】
(ポリイミド粒子Eの製造)
4,4’−ビフタル酸無水物(BPDA)と1,4−フェニレンジアミン(PPD)の等モル重合反応により得られたポリアミド酸を、N−メチルピロリドンに1.5重量%の濃度で溶解し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液に、ポリアミド酸に対する配合量が20質量%となるようにポリアクリル酸(分子量45万)を添加し、ポリアミド酸/ポリアクリル酸混合溶液を得た。このポリアミド酸/ポリアクリル酸混合溶液0.1mLを、室温下、1500rpmの撹拌条件下でマイクロシリンジを用いて、中性高分子界面活性剤(アクリディック、DIC社製)を0.1質量%含有するシクロヘキサン10mLに注入し、ポリアミド酸粒子を得た。得られたポリアミド酸粒子を単離した後、ポリアミド酸粒子1gをテトラデカン146g中に分散させ、160℃で360分間加熱してイミド化処理することにより、ポリイミド粒子を得た。ポリイミド粒子をアセトンで洗浄して単離し、ポリイミド粒子E(表面に凹凸のある形状、平均粒子径0.2μm、粒子径のCV値27%)を得た。
【0075】
(実施例1〜4及び比較例1〜5)
表1の組成に従って、下記に示す各材料をホモディスパーを用いて攪拌混合して、電子部品用接合材を作製した。なお、各ポリイミド粒子は配合前に400℃のオーブンで30分間熱処理を行った。
【0076】
(1.硬化性化合物)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「YL−980」、ジャパンエポキシレジン社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
グリシジル基含有アクリル樹脂(商品名「G−2050M」、日油社製)
【0077】
(2.硬化剤)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、JER社製)
【0078】
(3.硬化促進剤)
2,4−ジアミノ−6−[2’メチルイミダゾリン−(1’)]−エチルs−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0079】
(4.ポリイミド粒子)
上記で得られたポリイミド粒子A(表面に凹凸のある形状、平均粒子径0.2μm、粒子径のCV値45%)
上記で得られたポリイミド粒子B(表面に凹凸のある形状、平均粒子径5μm、粒子径のCV値48%)
上記で得られたポリイミド粒子C(表面に凹凸のある形状、平均粒子径5μm、粒子径のCV値16%)
上記で得られたポリイミド粒子D(表面に凹凸のない形状(球状)、平均粒子径0.5μm、粒子径のCV値15%)
上記で得られたポリイミド粒子E(表面に凹凸のある形状、平均粒子径0.2μm、粒子径のCV値27%)
ポリイミド粒子(商品名「UIP−S」、球状、平均粒子径10μm、粒子径のCV値15%、宇部興産社製)
【0080】
(5.シリカ粒子)
シリカ粒子(商品名「シルフィル NHM−5N」、平均粒子径0.07μm、粒子径のCV値12%、トクヤマ社製)
シリカ粒子(商品名「SE2050SPJ」、平均粒子径0.5μm、粒子径のCV値10%、アドマテックス社製)
シリカ粒子(商品名「SE4050SPE」、平均粒子径1μm、粒子径のCV値10%、アドマテックス社製)
【0081】
(6.その他)
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学工業社製)
【0082】
<評価>
実施例及び比較例で得られた電子部品用接合材について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示した。
(1)線膨張率の測定
得られた電子部品用接合材について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、熱応力歪測定装置(型式「EXTEAR TMA/SS 6100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、荷重2N、昇温速度5℃/分、サンプル長1cmで300℃まで昇温し、このとき得られたSSカーブの傾きから線膨張率を求めた。
【0083】
(2)弾性率の測定
得られた半電子部品用接合材について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、粘弾性測定機(型式「DVA−200」、アイティー計測制御社製)を用い、昇温速度5℃/分、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで300℃まで昇温し、25℃、170℃にて測定して得られる値を弾性率とした。
【0084】
(3)冷熱サイクル試験
ハンダボールがペリフェラル状に配置されている半導体チップ(10mm×10mm×30μm厚)と、半導体チップを介して電気的に接続されたときに半導体チップ内のメタル配線とデイジーチェーンとなるように銅が配線された20mm×20mm×1.0mm厚の基板(ガラス/エポキシ系FR−4)とを用い、得られた電子部品用接合材を用いてフリップチップ実装(250℃、10秒、5N)した。得られたサンプルに対し、−55℃〜125℃(各10分間ずつ)、3000サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、半導体チップ−電子部品用接合材−基板の剥がれの評価を行った。なお、8つのサンプルについて評価を行い、剥がれが見られたサンプルの個数を評価した。
【0085】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、硬化後、ガラス転移温度以下の温度領域においては線膨張率及び弾性率が低くなり、かつ、ガラス転移温度以上の温度領域においては弾性率が高くなり、信頼性の高い接合体を得ることのできる電子部品用接合材を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物と、硬化剤と、ポリイミド粒子とを含有し、
前記ポリイミド粒子は、表面に凹凸のある形状を有し、平均粒子径が0.03〜10μmである
ことを特徴とする電子部品用接合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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