説明

電子錠式キャビネット

【課題】収納空間を開放せずに、収納対象機器の有無を確認する。
【解決手段】電子錠式キャビネット1を、キャビネット本体3の内部に、LAN−I/F9を内蔵したノートPC5の収納空間として区画形成する引き出し7を上下に8段並べて構成する。各引き出し7には、ノートPC5を1台横置きで開放された上面から収納可能な底浅のトレイ11と、収納位置および出し入れ位置の2つの位置間でトレイ11をキャビネット本体3の前面側にスライド自在とする開閉手段13と、収納位置にあるトレイ11のスライドを許可または阻止するように、駆動モータによる遠隔操作または個別の鍵による手動操作によって、引き出し7の開閉手段13を施解錠するように構成された公知の電子錠15とを設ける。またトレイ11の内側背面付近には、LAN−I/F9をLANに接続するためのLANポートを配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納対象機器の収納空間をキャビネット本体内部に区画形成し、収納空間の開閉手段に設けた電子錠を施錠制御してなる電子錠式キャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、収納空間の開閉手段に設けた電子錠を施解錠制御する種々の技術として、例えば特許文献1、2等が案出されている。
特許文献1には、遠隔操作により開閉手段としての扉の施解錠が可能で、かつ物品情報が書き込まれたICタグを有する物品が内部に収納されている複数のキャビネットにおける扉の施解錠装置が開示されている。また、特許文献2には、施錠可能な物品の保管ケースと、各保管ケースに備えられIDの確認により保管ケースを解錠する保管ケース解錠手段とを有する保管ケース管理システムが開示されている。
【0003】
前者は、物品情報を非接触で読み取り可能なタグリーダーが各キャビネットに設けられ、管理端末からの物品情報の指定により、物品情報とタグリーダーが読み取ったICタグの物品情報が一致した場合に、ICタグを有する物品が収納されているキャビネットの扉を解錠するものである。
【0004】
また後者は、ID確認手段と、ログイン確認手段とを有する複数の操作者確認装置と、操作者確認装置と保管ケース解錠手段とを接続するLANと、ID確認手段で認定したIDとログイン確認手段で確認したログインデータとが一致しているときに、保管ケースのうち特定グループに属する保管ケースについて、その解錠手段を解錠可能状態とする解錠許可手段とを有するものである。そして解錠許可手段により解錠が許可されている保管ケースにおいて、保管ケース解錠手段がID確認を行ったときに、保管ケースを解錠する。
【0005】
【特許文献1】特開2004−250952号公報
【特許文献2】特許第3564122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の技術では、物品情報をICタグから読み取ることで扉の解錠制御を行う構成上、取り出された際に物品からICタグが剥がれた場合には、キャビネットの収納対象から除外される点で問題があった。また、一般的に、ICタグとタグリーダとの間には、読み取り可能な最大距離が規定されるため、物品を収納する際には、この最大距離以内にICタグとタグリーダとを配置させなければならず、ICタグの貼付位置や、キャビネット内での物品の収納位置等に制約が生じる点で問題があった。
また特許文献2の技術では、保管ケース内に物品が収納されているか否かに関わらず、カードのIDが一致しているか否かに基づきLANを介して保管ケースの解錠制御を行うものであり、保管ケース内の物品の有無についての判断はできず、保管ケースに収納される物品ついて持ち出し管理はできない。
【0007】
そこで、本発明では上記課題を鑑み、開閉手段を操作して収納空間を開放しなくても、収納対象機器の有無を確認でき、収納対象機器の収納管理を行うことができる電子錠式キャビネットの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る電子錠式キャビネットは、LANインターフェイスを備える収納対象機器の収納空間をキャビネット本体内部に区画形成し、収納空間の開閉手段に設けた電子錠を施錠制御する電子錠式キャビネットであって、収納空間内に設けられ、収納対象機器のLANインターフェイスに接続されるLAN接続手段と、LAN接続手段に接続された収納対象機器の収納対象機器情報をLANを介して検出し、検出した収納対象機器情報が予め登録された機器識別情報を含む場合、収納対象機器に対応する電子錠を施錠制御する制御手段とを備えるように構成される。
【0009】
請求項2の発明に係る電子錠式キャビネットは、機器識別情報が、LAN接続手段に接続されたLANインターフェイスが導通している状態を示す導通状態情報を含むものであるように構成される。
【0010】
請求項3の発明に係る電子錠式キャビネットは、機器識別情報が、収納対象機器の型番号、管理者またはIPアドレスに相当する一意の識別情報を含むものであるように構成される。
【0011】
請求項4の発明に係る電子錠式キャビネットは、制御手段が、電源投入コマンドを含むデータをLANを介してLAN接続手段に接続された収納対象機器へ送出し、収納対象機器の電源を遠隔投入するように構成される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、開閉手段を操作して収納空間を開放しなくても、収納対象機器の有無を確認でき、収納対象機器の収納管理を行うことができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、本電子錠式キャビネットを、貸し出し用の収納対象機器を保管する用途に使用した場合、開閉手段を操作して収納空間を開放しなくても、収納対象機器の有無を確認できる。
【0014】
請求項3の発明によれば、予め自己の型番号やPC管理者等の一意の収納対象機器情報を制御手段へ返送することができ、複数の収納対象機器を個別に特定できる。
【0015】
請求項4の発明によれば、収納対象機器の主電源が投入されていない場合であっても、電源投入コマンドを送出することで主電源を遠隔投入でき、より詳細な収納対象機器情報を用いて施解錠制御できセキュリティ性を向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る電子錠式キャビネットを示し、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。図1において、電子錠式キャビネット1は、縦長立方体形状のキャビネット本体3の内部に、収納対象機器であるノート型パソコン(ノートPC)5の収納空間として区画形成する引き出し7を、上下に8段並べて構成されている。ノートPC5は、LANに接続された他のネットワーク機器との間でデータ通信可能とするLANインターフェイス(以下、LAN−I/Fとする)9を内蔵している。
【0017】
各引き出し7は、ノートPC5を1台横置きで開放された上面から収納可能な底浅のトレイ11と、トレイ11上面をキャビネット本体3の内部に収納して閉じる収納位置、およびトレイ11上面をキャビネット本体3の外部に対して開放させてノートPC5を出し入れ可能とする出し入れ位置、これら2つの位置間でトレイ11をキャビネット本体3の前面側にスライド自在とする開閉手段13とを備えて構成されている。
【0018】
さらに引き出し7には、収納位置にあるトレイ11のスライドを許可または阻止するように、駆動モータ(図示略)による遠隔操作または個別の鍵(図示略)による手動操作によって、引き出し7の開閉手段13を施解錠するように構成された公知の電子錠15が設けられている。またトレイ11の内側背面付近には、ノートPC5のLAN−I/F9をLANに接続するためのLAN接続手段であるLANポートと、ノートPC5へ商用電力を供給する電源コンセント19とが配置されている。また各引き出し7の全てのLANコネクタ17は、LANを介して制御装置(制御手段)21に接続されている。ここで、LANポートは、LANから引き込まれてトレイ11内での配線に十分な余長が確保されたLANケーブルと、その先端に設けられLAN−I/F9に接続されるLANコネクタ17とから構成されている。
【0019】
制御装置21は、LANを介してノートPC5との間でデータ通信可能に構成されるとともに、駆動モータを遠隔操作することによって電子錠15を施解錠制御可能に構成されている。また制御装置21は、キャビネット管理者による所定操作によって、何時でも任意の引き出し7の電子錠15を施解錠動作させるように制御可能である。制御装置21としては、例えば、本キャビネット1に付設、あるいは離れた場所に設置した管理用PCが利用される。
【0020】
上記構成のキャビネット1における電子錠15の施解錠動作を説明する。
キャビネット使用者は、ノートPC5を取り出す際、キャビネット管理者が選択した一の引き出し7の電子錠15を施解錠する鍵を受け取る。その引き出し7において、キャビネット管理者の制御装置21による遠隔操作またはキャビネット使用者の貸与された鍵による手動操作によって電子錠15を解錠して、ノートPC5の貸与を受ける。
【0021】
キャビネット使用者は、ノートPC5を返却収納する際、引き出し位置のトレイ11にノートPC5を収納し、電源コードを電源コンセント19に接続してノートPC5の主電源を手動で投入するとともに、LAN−I/F9をLANコネクタ17に接続してLANにノートPC5を接続する。そして、収納位置へトレイ11をスライドさせ上面を閉じノートPC5をキャビネット本体3の内部に収納する。
【0022】
ノートPC5を収納する際、キャビネット使用者によってノートPC5の主電源が投入されなかった場合、制御装置21は、LANコネクタ17から電源供給され起動したLAN−I/F9へ電源投入コマンド含むデータをLANを介して送出し、ノートPC5の主電源を遠隔投入する。
【0023】
ここで、制御装置21には、本キャビネット1の収納対象機器であることを示す機器識別情報として、LANコネクタ17に接続されたLAN−I/F9が導通している状態を示す導通状態情報が予め登録されている。また引き出し7毎に、ノートPC5の返却日等の使用期限が設定されている。
【0024】
制御装置21は、接続されたノートPC5について、LANを介してLAN−I/F9が導通しているか否かを収納対象機器情報として検出する。そして、導通している状態を示す導通状態情報を検出した場合、制御装置21は、ノートPC5が収納された引き出し7の駆動モータを遠隔操作し、電子錠15が施錠動作するように制御する。例えば導通状態情報としては、制御装置21からLAN−I/F9へ送出したping等の所定のネットワークコマンドに対して、LAN−I/F9から制御装置21へ返される所定の応答データを利用する。
【0025】
上記構成のキャビネット1によれば、LANポートとして、十分な余長を備えるLANケーブルとLANコネクタ17をトレイ11内に設けたので、トレイ11内におけるノートPC5の収納向きや収納位置等、収納状態の制約を減らしながら、ノートPC5の収納管理を行うことが可能となる。
また、ノートPC5の主電源が投入されていない場合であっても、電源投入コマンドを送出することでノートPC5の主電源を遠隔投入でき、より詳細な収納対象機器情報を用いて施解錠制御できセキュリティ性を向上できる。加えて、LAN−I/F9の導通状態をチェックすることで、トレイ11を引き出さずに引き出し7内におけるノートPC5の有無を確認できる。
さらに、引き出し7毎にノートPC5の返却日等の使用期限を設定すれば、期限管理が容易にできる。
【0026】
次に本発明の他の実施の形態を説明する。本キャビネット1の制御装置21には、収納対象機器として許可された全てについて、型番号、PC管理者等の一意の機器識別情報が予め登録されている。また収納対象機器であるノートPC5には、制御装置21からの要求により、自己の型番号やPC管理者等の情報が含まれた一意の収納対象機器情報を返すプログラムが予め格納されている。尚、その他の構成は、前述のキャビネット1と同一であり省略する。
【0027】
制御装置21は、接続されたノートPC5に対して、LANを介して上記プログラムを起動させる所定のコマンドを送出する。コマンドの要求により起動したプログラムは、自己の型番号やPC管理者等の情報を返す。制御装置21は、返された情報を一意の収納対象機器情報として検出する。そして、検出した情報と予め登録された情報とを比較する。検出した情報が登録された情報に含まれる場合、制御装置21は、ノートPC5が収納された引き出し7の駆動モータを遠隔操作し、電子錠15が施錠動作するように制御する。
【0028】
上記構成のキャビネット1によれば、予め自己の型番号やPC管理者等の一意の収納対象機器情報を返すことができ、複数のノートPC5を個別に特定できる。
【0029】
次に本発明の他の実施の形態を説明する。本キャビネット1の制御装置21には、収納対象機器として許可されたものであることを示す機器識別情報として、所定数の登録IPアドレスが予め登録されている。またノートPC5には、引き出し7に初めて収納される際、キャビネット管理者による制御装置21の設定操作によって、登録IPアドレスのうち未使用の1つが、一意の識別情報、すなわち固定IPアドレスとして設定される。尚、その他の構成は、前述のキャビネット1と同一であり省略する。
【0030】
制御装置21は、接続されたノートPC5について、LANを介して固定IPアドレスを収納対象機器情報として検出する。そして、検出した固定IPアドレスと予め登録された登録IPアドレスとを比較する。固定IPアドレスが登録IPアドレスに含まれる場合、制御装置21は、ノートPC5が収納された引き出し7の駆動モータを遠隔操作し、電子錠15が施錠動作するように制御する。
上記構成の本キャビネット1によっても、前述のキャビネット1と同様に、複数のノートPC5を個別に特定できる。
【0031】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、下記のように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)開閉手段は、トレイをスライド自在とするものに限らず、いわゆるロッカーのように、キャビネット内部に単に区画形成した収納空間を外部に対して開閉する扉状に構成しても良い。
(2)収納対象機器には、ノートPCに限らず、LANインターフェイスを備えるものであれば、デスクトップPC、ハブ、ルータ等を適用可能である。この時、収納空間は、機器の大きさに合わせて寸法形状を適宜変更する。
(3)本キャビネットは、収納空間を、上下一列に限らず、左右に複数列設けて構成しても良い。
(4)機器識別情報は、一意の識別情報を含むものであれば、収納対象機器のMACアドレスに相当する情報等を利用して電子錠を施錠制御するように構成しても良い。
(5)電子錠の施解錠は、制御装置による遠隔操作のみの手順で行い、鍵による手動操作で施解錠を行うことができないものとしても良い。
(6)本キャビネットは、貸し出し用の収納対象機器の保管場所に限らず、収納対象機器の収納空間を提供する貸し出し用キャビネットとして用いても良い。
(7)LAN−I/FとLANポートは、有線に限らず、無線で通信可能に接続するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る電子錠式キャビネットの構成図を示す、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)はB−B断面図である。
【図2】本発明に係る電子錠式キャビネットのブロック構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・電子錠式キャビネット、3・・キャビネット本体、5・・ノートPC(収納対象機器)、7・・引き出し(収納空間)、9・・LAN−I/F(LANインターフェイス)、11・・トレイ、13・・開閉手段、15・・電子錠、17・・LANコネクタ(LANポート)、19・・電源コンセント、21・・制御装置(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LANインターフェイスを備える収納対象機器の収納空間をキャビネット本体内部に区画形成し、収納空間の開閉手段に設けた電子錠を施錠制御する電子錠式キャビネットであって、
収納空間内に設けられ、収納対象機器のLANインターフェイスに接続されるLAN接続手段と、
LAN接続手段に接続された収納対象機器の収納対象機器情報をLANを介して検出し、検出した収納対象機器情報が予め登録された機器識別情報に含まれる場合、収納対象機器に対応する電子錠を施錠制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電子錠式キャビネット。
【請求項2】
機器識別情報は、
LAN接続手段に接続されたLANインターフェイスが導通している状態を示す導通状態情報を含むものである、
請求項1に記載の電子錠式キャビネット。
【請求項3】
機器識別情報は、
収納対象機器の型番号、管理者またはIPアドレスに相当する一意の識別情報を含むものである、
請求項1または2に記載の電子錠式キャビネット。
【請求項4】
制御手段は、
電源投入コマンドを含むデータをLANを介してLAN接続手段に接続されたLANインターフェイスへ送出し、収納対象機器の電源を遠隔投入する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子錠式キャビネット。

【図1】
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【図2】
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