説明

電子顕微鏡の試料ホルダ

【課題】 観察像から測定点を選択し、接近した少なくとも2点間の電気抵抗の測定が行える電子顕微鏡の試料ホルダを提供する。
【解決手段】 2つの電流測定用のプローブ1a、1bを搭載したレバー2a、2bが、支点となる球体3にV溝11a、11bで接している。マイクロメータヘッド13a、13bでレバー2a、2bを押すとプローブ1a、1bはX方向に移動し、引くとばね16a、16bにより押し戻されて−X方向に移動する。マイクロメータヘッド14aでレバー2aを押すと、プローブ1aは球体3を支点とする回転運動によりY方向に移動し、引くとばね16aにより押し戻されて−Y方向に移動する。プローブ1bのY軸方向移動はマイクロメータヘッド14bを同様に操作して行う。プローブ1a、1bのZ軸方向の移動も、マイクロメータヘッド15a、15bを同様に操作して行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透過電子顕微鏡(以下、TEMと略す)において、電子線の通路に試料を保持するための試料ホルダに係わり、さらに詳しくは、試料に通電しまたは試料から電気信号を取り出しながら像観察を可能とする試料ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
TEMは高い空間分解能で観察や分析等を行うことが可能なため、極微小領域の材料評価に不可欠な装置となっている。TEMは単に高い空間分解能で像観察を行うだけでなく、試料の加熱、冷却、引っ張り、電圧印加などを行いながら試料の変化を観察することにより、試料に関するより多くの知見を得ることができるので、多くの材料分野で使われている。
【0003】
例えば半導体分野などの試料においては、試料に通電しながら又はその前後に試料から電気信号を取り出すことにより、試料の抵抗値を測定して試料の材料特性に関する知見を得ることが行われている。しかしながら、TEMで観察する試料は対物レンズ磁極片の狭い間隙に置かれるため、試料ホルダの形状や機能は制約を受ける。こうした測定や観察を可能とするための試料ホルダに関する技術が、特開2003−35682号公報、実開平5−6966号に開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−35682号公報
【特許文献2】実開平5−6966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2003−35682号には、集束イオンビーム装置(以下、FIB)とTEMを用いて、設計寸法が0.1μm程度のLSI等の内部の電気特性などを測定する技術が開示されている。この技術では、一対の微細導線をマニピュレータで試料の所望する測定場所に移動させ、FIB加工によって微細導線を測定場所に固定した後、試料ホルダをFIBから取り外し、TEM等の装置に装着して測定、観察を行うことができる。しかし、この方法ではTEMに試料を装着する前に、必ずマニピュレータとFIBにより、所望の測定場所に測定用プローブを固定させなければならないため、TEMで高倍率像観察を行った結果から所望する測定場所を見つけても、その場所を測定することはできない。
【0006】
実開平5−6966号公報には、電子顕微鏡において4端子法で使用する電気抵抗測定用試料ホルダが開示されている。該試料ホルダにおいては、対向する試料台に跨って試料を載置するようにしている。対向する試料台には、試料に電圧を印加するためのリード線が予め接続されている。また、2つの支持台を介して、試料の電圧降下を測定するための2つの端子を試料に接触させる構造となっている。しかし、2つの端子を試料に接触させる方法は、例えば微細なリード線を試料の端部に直接半田付けするか、又はばね性を有するワイヤ等で導電性を取ることになり、試料上の微細な測定場所を選んで測定することはできない。
【0007】
本発明は、上述の問題を解決し、TEMの高倍率像を観察した結果から、所望する微小な部位の電気伝導度等の電気特性を測定することのできる試料ホルダを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の問題を解決するために、第1の発明は、
電子顕微鏡の鏡体を貫通する試料ホルダ装着部材により、電子線の通路に交差して鏡体を貫通するホルダ軸方向に沿って移動可能に支持された試料ホルダ外筒を有する試料ホルダであって、
前記試料ホルダ外筒の先端に支持されて電子線が通過するための開口部を有する試料支持部材と、前記試料を前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記開口部の一部を塞ぐように前記試料を保持する試料保持手段と、
前記ホルダ軸を含んで直交する3軸方向に位置調整可能な少なくとも2つの電流測定用プローブを前記試料の所望の位置に接触させるプローブ位置精密調節機構を備えたことを特徴とする。
【0009】
また第2の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、前記プローブと電気的に絶縁された状態で先端部に前記プローブを搭載したレバーと、前記レバーをホルダ軸方向に移動可能でホルダ軸と直交する2軸方向には回転動により前記プローブ先端を移動可能とするための支点となる球体と、前記レバーを前記試料ホルダ外筒に支持するための支持部材と、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端に配置されホルダ軸方向を含む3軸方向にレバーを移動させる直線移動機構と、前記直線移動機構とレバーを挟んだ対向位置に前記レバーを押し戻すための弾性体を備えたことを特徴とする。
【0010】
また第3の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に位置固定された球体と、前記球体を挟むように構成されている2つのレバーと、前記ホルダ外筒と前記レバーとの間に弾性体を備え、
前記レバーと前記球体とが当接する前記レバー側にV溝が形成され、前記弾性体によって前記球体と前記V溝とが密着するようになされ、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、
前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記レバーのV溝を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたことを特徴とする。
【0011】
また第4の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、2つの球体の貫通穴に嵌合し前記球体と相対的に移動しないように各々固定された2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材とを備え、
前記球体支持部材は前記2つの球体が各々ホルダ軸方向に相対的に移動可能な2つの円筒穴を有し、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記円筒穴内壁が相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、
前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と前記球体支持部材との接触部を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたことを特徴とする。
【0012】
また第5の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に貫通穴を有する2つの球体と、前記貫通穴に嵌合し前記球体と相対的にホルダ軸方向に移動可能な2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材と、前記球体を前記球体支持部材に押圧する球体押圧部材とを備え、
前記球体支持部材は前記球体との当接部に円錐座を有し、前記球体押圧部材は前記球体を前記球体支持部材の円錐座に密着させるように前記球体を押圧するようになされ、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体の貫通穴と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記球体支持部材の円錐座及び球体押圧部材を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたことを特徴とする。
【0013】
また第6の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構と前記レバーとの間に圧電素子が組み込まれていることを特徴とする。
【0014】
また第7の発明は、前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構を駆動するモーターが組み込まれていることを特徴とする。
【0015】
また第8の発明は、前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記試料支持部材に取り付けられ前記試料と接触する端子を有する電極を備えたことを特徴とする。
【0016】
また第9の発明は、前記試料を前記試料支持部材に押止するために試料上の異なる位置に接触し、且つ前記試料支持部材と電気的に絶縁された電極として使用し得る少なくとも2つの試料押止部材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明によれば、電子顕微鏡の鏡体を貫通する試料ホルダ装着部材により、電子線の通路に交差して鏡体を貫通するホルダ軸方向に沿って移動可能に支持された試料ホルダ外筒を有する試料ホルダであって、前記試料ホルダ外筒の先端に支持されて電子線が通過するための開口部を有する試料支持部材と、前記試料を前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記開口部の一部を塞ぐように前記試料を保持する試料保持手段と、前記ホルダ軸を含んで直交する3軸方向に位置調整可能な少なくとも2つの電流測定用プローブを前記試料の所望の位置に接触させるプローブ位置精密調節機構を備えたので、電子顕微鏡像を観察しながらまたはその前後に、試料上の所望の2点間の電気伝導度を測定することができる。
【0018】
第2の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、前記プローブと電気的に絶縁された状態で先端部に前記プローブを搭載したレバーと、前記レバーをホルダ軸方向に移動可能でホルダ軸と直交する2軸方向には回転動により前記プローブ先端を移動可能とするための支点となる球体と、前記レバーを前記試料ホルダ外筒に支持するための支持部材と、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端に配置されホルダ軸方向を含む3軸方向にレバーを移動させる直線移動機構と、前記直線移動機構とレバーを挟んだ対向位置に前記レバーを押し戻すための弾性体を備えたので、直線運動及び回転運動の組合せにより、前記プローブを3次元的に移動させて、試料上の所望の場所に前記プローブを接触させることができる。
【0019】
第3の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に位置固定された球体と、前記球体を挟むように構成されている2つのレバーと、前記ホルダ外筒と前記レバーとの間に弾性体を備え、
前記レバーと前記球体とが当接する前記レバー側にV溝が形成され、前記弾性体によって前記球体と前記V溝とが密着するようになされ、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、
前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記レバーのV溝を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたので、直線運動及び回転運動の組合せにより、前記プローブを3次元的に移動させて、試料上の所望の場所に前記プローブを接触させることができる。
【0020】
第4の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、2つの球体の貫通穴に嵌合し前記球体と相対的に移動しないように各々固定された2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材とを備え、前記球体支持部材は前記2つの球体が各々ホルダ軸方向に相対的に移動可能な2つの円筒穴を有し、前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記円筒穴内壁が相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と前記球体支持部材との接触部を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたので、直線運動及び回転運動の組合せにより、前記プローブを3次元的に移動させて、試料上の所望の場所に前記プローブを接触させることができる。
【0021】
第5の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に貫通穴を有する2つの球体と、前記貫通穴に嵌合し前記球体と相対的にホルダ軸方向に移動可能な2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材と、前記球体を前記球体支持部材に押圧する球体押圧部材とを備え、前記球体支持部材は前記球体との当接部に円錐座を有し、前記球体押圧部材は前記球体を前記球体支持部材の円錐座に密着させるように前記球体を押圧するようになされ、前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体の貫通穴と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記球体支持部材の円錐座及び球体押圧部材を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにしたので、直線運動及び回転運動の組合せにより、前記プローブを3次元的に移動させて、試料上の所望の場所に前記プローブを接触させることができる。
【0022】
第6の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構と前記レバーとの間に圧電素子を組み込んだので、より微小なプローブの移動制御が可能となり、より高分解能観察像のもとで所望する測定場所の選択が可能となる。
【0023】
第7の発明によれば、前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構を駆動するモーターを組み込んだので、操作者がマイクロメータヘッドを直接手で触る必要が無くなった。そのため、観察像への機械振動の影響を防ぐことができ、操作性が向上し、遠隔操作が可能となる。
【0024】
第8の発明によれば、前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記試料支持部材に取り付けられ前記試料と接触する端子を有する電極を備えたので、電子顕微鏡像を観察しながらまたはその前後に、測定場所の選択が可能な2つのプローブと試料と接触する場所が固定された端子で3端子法による電気特性の測定を行うことができる。
【0025】
第9の発明によれば、前記試料を前記試料支持部材に押止するために試料上の異なる位置に接触し、且つ前記試料支持部材と電気的に絶縁された電極として使用し得る少なくとも2つの試料押止部材を備えたので、電子顕微鏡像を観察しながらまたはその前後に、測定場所の選択が可能な2つのプローブと試料と接触する場所が固定された2つの端子で4端子法による電気特性の測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の説明においては、電子顕微鏡に適用した例を説明するが、本発明は適用例に限定されるものではなく、サイドエントリー構造を有する一般の荷電粒子線装置に適用可能である。また、各図において、同一又は類似の機能を有する構成要素には同一の番号を付し、説明の重複を避ける。
【0027】
なお、説明の理解を容易にするため、図面において、互いに直交する座標軸X,Y,Z軸を定義し、座標軸を図面上に表記する。この表記中、「〇」の中に「・」が記載されているものは、紙面裏から表に向かう矢印を表し、「〇」の中に「×」が記載されているものは、紙面表から裏に向かう矢印を意味するものとする。図面中、電子線の通路に交差して鏡体を貫通するホルダ軸方向をX軸、ホルダ軸と直交する水平方向をY軸、電子線の照射軸と平行な方向をZ軸としている。
【0028】
図1は、透過電子顕微鏡に試料ホルダが装着された状態を示す図である。図1において、鏡体300の内部は真空に保持され、電子銃301から電子線EBが放出され、集束レンズ系302により集束されて試料に照射される。先端部に観察試料を装着した試料ホルダ307は試料ステージ308に装填され、試料ホルダ装着部材により支持される。試料ホルダ307の先端部は対物レンズ磁極片303の間隙に挿入され、観察試料は電子線通路に保持される。試料ステージ308は図示しない試料移動機構及び傾斜機構を備えており、試料に電子線を照射したまま、試料上の電位線EBの照射位置を変えることができる。試料を透過した電子線は、中間レンズ系304、投影レンズ系305を経て蛍光板306に観察像を形成する。さらには必要に応じて、図示しないフィルム、CCDカメラ等により記録される。
【0029】
(実施の形態1)
図2は、本発明の実施の形態例を示す試料ホルダの図である。図2Aは試料ホルダH1を電子銃301側から見た平面図である。図2Bは図2AのR-R断面図であるが、途中から省略してある。図2C、図2Dはそれぞれ図2AのQ-Q断面、P-P断面を表す図である。また図6に、試料ホルダH1の先端部の拡大図を示す。図6Aは先端部を電子銃側から見た平面図である。図6B、図6Cはそれぞれ図6AのD−D断面、E−E断面を表す図である。なお、図6Bに示すように、対物レンズの上下磁極片303の狭い間隙に試料Sを挿入し、試料傾斜等を行うために、試料ホルダH1の先端は極めて薄く作られている。そのため、構造を理解しやすいように、実際の寸法よりも縦方向に2倍程度引き延ばして図示している。
【0030】
図6において、試料Sは、試料支持部材8の上に配置された絶縁体32の上に置かれ、さらに絶縁体33を挟んで電気的に絶縁された状態で、試料押止部材7により支持されている。試料押止部材7を固定するビス31a、31bは図示しない絶縁体により試料支持部材8と電気的に絶縁されている。試料Sの被観察部は開口部8aに張り出すように支持されており、電子線EBが試料Sを透過できるようになっている。なお、試料支持部材8の厚みに対する試料S、試料押止部材7、絶縁体32、33の厚みは実際とは異なり、上下の位置関係が見やすいように模式的に示している。
【0031】
図6において、先端が尖った電流測定用のプローブ1aは、レバー2aの先端に設けられたプローブ支持部材35aにプローブ押止部材34aとビス37aで支持されている。プローブ押止部材34aと電線9aは電気的に接続され、電線9aは気密端子21に接続され真空外に電気信号を取り出すことができる。プローブ支持部材35aとレバー2aは絶縁部材36aで電気的に絶縁されている。絶縁部材36aはビス38a、39aによりプローブ支持部材35a、レバー2aに固定されている。
【0032】
図2において、レバー2a、2b駆動時の支点となる球体3には、ホルダ外筒5に固定された球体固定用軸4が貫通している。球体3とレバー2a、2bが接する部分のレバー2a、2b側にはV溝11a、11bが設けられており、レバーはX軸方向に直線移動が可能で、Y,Z軸方向には回転が可能である。レバー2a、2bのV溝11a、11bと球体3との摺動部を密着させるために、ばね6a、6bが設けられている。
【0033】
プローブ1a、1bに接続された電線9a、9bは気密端子21に接続され、真空外に電気信号を取り出すことができる。Oリング10は、図1の鏡体300内部の真空を保持するためにホルダ外筒5と試料ステージ308との間に配置されている。またOリング12は、試料ホルダH1内部の真空を保持するためにホルダ外筒5と直線移動機構支持部材19との間に配置されている。なお図2では、直線移動機構としてマイクロメータヘッドを用いる例が示されている。それぞれのマイクロメータヘッドと直線移動機構支持部材19との間には、図2Dに示すように、試料ホルダH1内部の真空を保持するためのOリング20が配置されている。図中ではマイクロメータヘッド14aのOリングのみ代表的に20の番号を付しているが、他のマイクロメータヘッドにも同様に同じOリングが配置されている。
【0034】
プローブ1a、1bのX方向の移動は、マイクロメータヘッド13a、13bでレバー2a、2bをX方向に押すことにより行われる。マイクロメータヘッド13a、13bの対向位置にはレバーを押し返すばね16a、16bが設けられているので、マイクロメータヘッドを引く方向に操作すれば、プローブ1a、1bを−X方向に移動させることができる。この時、球体3と接するレバー2a、2bのV溝が摺動部となる。
【0035】
プローブ1a、1bのY軸方向又はZ軸方向の移動は、マイクロメータヘッド14a、14b、15a、15b、でレバー2a、2bの−X方向端をY軸方向又はZ軸方向に押すか又は引くことにより行われる。例えば、プローブ1aのY方向への移動は、次のように行われる。先ず、マイクロメータヘッド14aでレバー2aの−X方向端を−Y方向に押動する。この時、プローブ1aは、球体3を支点とし、球体3とレバー2aのV溝11aの当接部を摺動部としてY方向に回動する。また、マイクロメータヘッド14aの対向位置にはレバー2aを押し返すばね17aが設けられているので、マイクロメータヘッド14aを引く方向に操作すれば、プローブ1aを−Y方向に回動させることができる。マイクロメータヘッド14bの操作及びプローブ1a、1bをZ軸方向に移動させるためのマイクロメータヘッド15a、15bの操作は、上記したマイクロメータヘッド14aの操作と原理的に同じであるため説明を省略する。
【0036】
すなわち、試料ホルダH1のプローブ位置精密調節機構は、レバー2a、2b、球体3、球体固定用軸4、マイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15b、ばね6a、6b、16a、16b、17a、17b、18a、18bで構成されている。
【0037】
プローブ1a、1bの尖った先端を試料上の所望する電流測定場所に移動させる操作は、電子顕微鏡像を観察しながら行うことが可能である。また、電流測定が可能な2点間の最小距離はプローブ先端の太さに依存する。
【0038】
(実施の形態2)
次に図3に基づいて、プローブ1a、1bを3次元に移動させるための支点の構造について、他の実施の形態例を説明する。
図3Aは、試料ホルダH2を電子銃301側から見た平面図である。ただし、試料ホルダH2の右半分(−X方向側)は、図2Aの試料ホルダH1と同じ構造と機能を有するので図示を省略している。図3Bは図3AのA-A断面図である。プローブ1a、1bに接続する電線9a、9bは図を見やすくするため図示を省略している。
【0039】
レバー102a、102bはそれぞれ固定ピン104a、104bにより、動きの支点となる球体103a、103bに固定されている。試料ホルダH2の内部には、ホルダ外筒105に固定された球体支持部材106が設けられている。球体支持部材106は、球体103a、103bがX軸方向に相対的に移動可能な円筒穴107a、107bを有している。プローブ1a、1bのX軸方向の移動は、球体支持部材106の円筒穴107a、107b内壁と球体103a、103bが相対移動することによって行われる。
この時、円筒穴107a、107b内壁と球体103a、103bの接触部が摺動部となる。
【0040】
また、プローブ1a、1bのY軸方向又はZ軸方向の移動は、マイクロメータヘッド14a、14b、15a、15b、でレバー102a、102bの−X方向端をY軸方向又はZ軸方向に押すか又は引くことにより行われる。例えば、プローブ1aのY方向への移動は、次のように行われる。先ず、マイクロメータヘッド14aでレバー102aの−X方向端を−Y方向に押動する。この時、プローブ1aは、球体103を支点とし、球体103と球体支持部材106の円筒穴107a内壁の当接部を摺動部としてY方向に回動する。また、マイクロメータヘッド14aの対向位置にはレバーを押し返すばね17aが設けられているので、マイクロメータヘッドを引く方向に操作すれば、プローブ1aを−Y方向に回動させることができる。マイクロメータヘッド14bの操作及びプローブ1a、1bをZ軸方向に移動させるためのマイクロメータヘッド15a、15bの操作は、上記したマイクロメータヘッド14aの操作と原理的に同じであるため説明を省略する。
【0041】
すなわち、試料ホルダH2のプローブ位置精密調節機構は、レバー102a、102b、球体103a、103b、固定ピン104a、104b、球体支持部材106、マイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15b、ばね16a、16b、17a、17b、18a、18bで構成されている。
【0042】
(実施の形態3)
次に図4に基づいて、プローブ1a、1bを3次元に移動させるための支点の構造について、他の実施の形態例を説明する。
図4Aは、試料ホルダH3を電子銃301側から見た平面図である。ただし、試料ホルダH3の右半分(-X方向側)は、図2Aの試料ホルダH1と同じ構造と機能を有するので図示を省略している。図4Bは図4AのB-B断面図である。プローブ1a、1bに接続する電線9a、9bは図を見やすくするため図示を省略している。
【0043】
球体203a、203bはX軸方向に貫通穴を有している。球体203a、203bの貫通穴には、X軸方向に移動可能なようにレバー202a、202bが嵌合している。球体支持部材206はホルダ外筒205に固定され、球体203a、203bとの当接部には円錐座が形成されている。球体押圧部材211は、球体203a、203bが球体支持部材206の円錐座に密着するように、図示しない弾性体等でX方向に押圧されている。プローブ1a、1bのX軸方向の移動は、球体203a、203bの貫通穴内壁とレバー202a、202bが相対移動することによって行われる。この時、球体203a、203bの貫通穴内壁とレバー202a、202bの接する部分が摺動部となる。
【0044】
また、プローブ1a、1bのY軸方向又はZ軸方向の移動は、マイクロメータヘッド14a、14b、15a、15b、でレバー202a、202bの−X方向端をY軸方向又はZ軸方向に押すか又は引くことにより行われる。例えば、プローブ1aのY方向への移動は、次のように行われる。先ず、マイクロメータヘッド14aでレバー202aの−X方向端を−Y方向に押動する。この時、プローブ1aは、球体203を支点とし、球体203と球体支持部材206の円錐座及び球体押圧部材211との当接部を摺動部としてY方向に回動する。また、マイクロメータヘッド14aの対向位置にはレバーを押し返すばね17aが設けられているので、マイクロメータヘッドを引く方向に操作すれば、プローブ1aを−Y方向に回動させることができる。マイクロメータヘッド14bの操作及びプローブ1a、1bをZ軸方向に移動させるためのマイクロメータヘッド15a、15bの操作は、上記したマイクロメータヘッド14aの操作と原理的に同じであるため説明を省略する。
【0045】
すなわち、試料ホルダH3のプローブ位置精密調節機構は、レバー202a、202b、球体203a、203b、球体支持部材206、球体押圧部材211、マイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15b、ばね16a、16b、17a、17b、18a、18bで構成されている。
【0046】
(実施の形態4)
次に、図5に基づいて、プローブ位置精密調節機構に圧電素子及び/又はモーターを組み込む場合の実施の形態例について説明する。
図5Aは、マイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15bとレバー2a、2bの間に圧電素子53a、53b、54a、54b、55a、55bを配置し、さらにマイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15bを駆動するためのモーター56a、56b、57a、57b、58a、58bを組み込んだ試料ホルダH4の右半分(−X方向側)を示す電子銃301側から見た平面図である。図5Bは図5AのC−C断面図である。なお、圧電素子とモーターにはそれぞれを駆動するための図示しない電線が接続されている。
【0047】
マイクロメータヘッド13aとレバー1aとの間に組み込まれた圧電素子53aは、印加する電圧に応じてX軸方向に伸縮する。プローブ1aをX方向に移動させる場合は、圧電素子53aが伸張するように印加電圧を調節する。反対に圧電素子53aが圧縮するように印加電圧を調節すれば、対応する位置に配置されているばね16aでレバーが押し戻されて、プローブ1aは−X方向に移動する。他のマイクロメータヘッドとレバーとの間に組み込まれた圧電素子の動作についても同じであるため説明を省略する。圧電素子の伸縮によりプローブを移動させる動作は、マイクロメータヘッド13aを押したり引いたりしてプローブ1aをX軸方向に移動させる動作と同様であるが、圧電素子を用いる方がマイクロメータヘッドによる制御に比較してより微小なプローブの移動制御が可能であり、より高分解能観察像のもとで所望する測定場所の選択が可能となる。
【0048】
図2の試料ホルダH1に示されているマイクロメータヘッド(例えば13a)を操作者が直接手動操作することは可能であるが、実用上はいくつかの問題がある。例えば、マイクロメータヘッドを直接手で触ることにより、高分解能観察像に機械的振動が伝わり鮮明な像の観察が困難となる。また、大型の電子顕微鏡では、試料ホルダの取り付け位置に操作者が手を伸ばすことで操作性が著しく低下するという問題もある。また、装置の自動化と共に遠隔操作の機能を要求される場合もある。これらの問題は、マイクロメータヘッドにモーターを組み込む
ことにより解決できる。図5では、マイクロメータヘッド13a、13b、14a、14b、15a、15bにそれぞれモーター56a、56b、57a、57b、58a、58bを組み込んだ例を示している。図5Aの左側(X方向側)の構造としては、上述した試料ホルダH1、H2、H3のいずれの場合にも適用が可能である。
【0049】
図5では圧電素子とモーターを同時に組み込んだ例を示したが、必ずしも同時に組み込まれている必要は無く、圧電素子のみ又はモーターのみを組み込んだ場合には上記した各々の効果を得ることが可能である。
【0050】
(実施の形態5)
次に、図7に基づいて、試料ホルダ先端部に電気信号を測定するための固定端子を追加した例を説明する。図7Aは、試料ホルダH5の先端を電子銃側から見た平面図である。図7B、図7Cはそれぞれ図7AのF−F断面、G−G断面を表す図である。なお、図6B,図6Cと同様に、構造を理解しやすいように、実際の寸法よりも縦方向に2倍程度引き延ばして図示している。
【0051】
図7において、試料Sは、試料支持部材8と電気的に絶縁された状態で試料押止部材7により試料支持部材8に保持されている。板ばね端子60は試料支持部材8にビス61で固定されている。ビス61は図示しない絶縁体で試料支持部材8と電気的に絶縁されている。板ばね端子60は試料Sと電気的に接続されている。板ばね端子60には電線62が接続されており、電線62は気密端子21に接続されている。従って、板ばね端子60を介して試料Sに通電し又は試料Sからの電気信号を取り出すことができる。すなわち、試料ホルダH5において、測定場所の選択可能な2つのプローブ1a、1bと板ばね端子60による3端子測定が可能である。
【0052】
(実施の形態6)
次に、図8に基づいて、試料ホルダ先端部に電気信号を測定するための2つの固定端子を追加した例を説明する。図8Aは、試料ホルダH6の先端を電子銃側から見た平面図である。図8B、図8Cはそれぞれ図8AのH−H断面、I−I断面を表す図である。なお、図6B,図6Cと同様に、構造を理解しやすいように、実際の寸法よりも縦方向に2倍程度引き延ばして図示している。
【0053】
図8において、試料Sは、板ばね端子70a、70bにより異なる位置で押止され試料支持部材8に保持されている。板ばね端子70a、70bはそれぞれビス71a、71bにより固定されている。ビス71a、71bは図示しない絶縁体で試料支持部材8と電気的に絶縁されている。板ばね端子70a、70bは試料Sと電気的に接続されている。板ばね端子70a、70bにはそれぞれ電線72a、72bが接続されており、電線72a、72bは気密端子21に接続されている。
従って、板ばね端子70a、70bを介して試料Sに通電し又は試料Sからの電気信号を取り出すことができる。すなわち、試料ホルダH6において、測定位置選択可能な2つのプローブ1a、1bと2つの板ばね端子70a、70bによる4端子測定が可能である。
【0054】
なお、試料ホルダH5の例では、試料押止部材7と板ばね端子60を別々に設けたが、ひとつの端子で試料の押止と電極の機能を兼用するようにしても良い。また、試料ホルダH6の例では、板ばね端子70a、70bを試料の押止と電極の機能を兼用するようにしているが、試料ホルダH5の例のように、板ばね端子70a、70bとは別に試料押止部材7を設けても良い。
【0055】
図9は、試料Sと接するプローブ1aの先端形状の側面図を拡大して示した例である。図9Aは、試料Sの表面を測定する場合の先端形状の例を示しており、たとえば走査プローブ顕微鏡などに用いられる探針を利用できる。図9Bは、試料Sの側面を測定する場合の例である。この形状の場合は、先端を細くすればするほど、測定する2点間の距離を短くすることが可能である。
【0056】
以上に述べたように、本発明によって、3軸方向に位置調整可能な少なくとも2つの電流測定用プローブによって、電子顕微鏡像を観察しながらまたはその前後に、試料上の所望する2点間の電気伝導度を測定することができる。また、固定端子を加えれば、TEMを用いた極めて微小な領域の電気特性の測定を、4端子法によって行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】

【図1】サイドエントリー構造を有する電子顕微鏡に試料ホルダを装着した状態を示す図。
【図2】本発明の実施の形態例を説明するための図。
【図3】電流測定用プローブを3次元に動かすための支点の構造について、他の例を説明するための図。
【図4】電流測定用プローブを3次元に動かすための支点の構造について、もうひとつの他の例を説明するための図。
【図5】電流測定用プローブを3次元に動かすためのレバーの移動機構に、圧電素子とモーターを組み込んだ例を示す図。
【図6】本発明の試料ホルダ先端部を拡大した図。
【図7】本発明の試料ホルダ先端部を拡大した図において、固定端子を追加した例を示す図。
【図8】本発明の試料ホルダ先端部を拡大した図において2つの固定端子を追加した例を示す図。
【図9】プローブ先端形状の例を拡大して示した図。
【符号の説明】
【0058】
(同一または類似の動作を行うものには共通の符号を付す。)
EB 電子線 S 試料
H1〜H6 試料ホルダ
1a、1b プローブ 2a、2b レバー
3 球体 4 球体固定用軸
5 ホルダ外筒 6a、6b ばね
7 試料押止部材 8 試料支持部材
8a 開口部
9a、9b 電線 10 Oリング
11a、11b V溝 12 Oリング
13a、13b、14a、14b、15a、15b マイクロメータヘッド
16a、16b、17a、17b、18a、18b ばね
19 直線移動機構支持部材 20 Oリング
21 気密端子
31a、32a ビス 32、33 絶縁体
34a プローブ押止部材 35a プローブ支持部材
36a 絶縁部材 37a、38a、39a ビス
53a、53b、54a、54b、55a、55b 圧電素子
56a、56b、57a、57b、58a、58b モーター
60 板ばね端子 61 ビス
62 電線 70a、70b 板ばね端子
71a、71b ビス 72a、72b 電線
102a、102b レバー 103a、103b 球体
104a、104b 固定ピン 105 ホルダ外筒
106 球体支持部材 107a、107b 円筒穴
202a、202b レバー 203a、203b 球体
205 ホルダ外筒 206 球体支持部材
211 球体押圧部材
300鏡体 301 電子銃
302 集束レンズ系 303 対物レンズ磁極片
304 中間レンズ系 305 投影レンズ系
306 蛍光板 307 試料ホルダ
308 試料ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子顕微鏡の鏡体を貫通する試料ホルダ装着部材により、電子線の通路に交差して鏡体を貫通するホルダ軸方向に沿って移動可能に支持された試料ホルダ外筒を有する試料ホルダであって、
前記試料ホルダ外筒の先端に支持されて電子線が通過するための開口部を有する試料支持部材と、前記試料を前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記開口部の一部を塞ぐように前記試料を保持する試料保持手段と、
前記ホルダ軸を含んで直交する3軸方向に位置調整可能な少なくとも2つの電流測定用プローブを前記試料の所望の位置に接触させるプローブ位置精密調節機構を備えた、ことを特徴とする電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項2】
前記プローブ位置精密調節機構は、前記プローブと電気的に絶縁された状態で先端部に前記プローブを搭載したレバーと、前記レバーをホルダ軸方向に移動可能でホルダ軸と直交する2軸方向には回転動により前記プローブ先端を移動可能とするための支点となる球体と、前記レバーを前記試料ホルダ外筒に支持するための支持部材と、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端に配置されホルダ軸方向を含む3軸方向にレバーを移動させる直線移動機構と、前記直線移動機構とレバーを挟んだ対向位置に前記レバーを押し戻すための弾性体を備えた、ことを特徴とする請求項1に記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項3】
前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に位置固定された球体と、前記球体を挟むように構成されている2つのレバーと、前記ホルダ外筒と前記レバーとの間に弾性体を備え、
前記レバーと前記球体とが当接する前記レバー側にV溝が形成され、前記弾性体によって前記球体と前記V溝とが密着するようになされ、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、
前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記レバーのV溝を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにした、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項4】
前記プローブ位置精密調節機構は、2つの球体の貫通穴に嵌合し前記球体と相対的に移動しないように各々固定された2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材とを備え、
前記球体支持部材は前記2つの球体が各々ホルダ軸方向に相対的に移動可能な2つの円筒穴を有し、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体と前記円筒穴内壁が相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、
前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と前記球体支持部材との接触部を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにした、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項5】
前記プローブ位置精密調節機構は、ホルダ軸方向に貫通穴を有する2つの球体と、前記貫通穴に嵌合し前記球体と相対的にホルダ軸方向に移動可能な2つのレバーと、前記ホルダ外筒に固定された球体支持部材と、前記球体を前記球体支持部材に押圧する球体押圧部材とを備え、
前記球体支持部材は前記球体との当接部に円錐座を有し、前記球体押圧部材は前記球体を前記球体支持部材の円錐座に密着させるように前記球体を押圧するようになされ、
前記プローブのホルダ軸方向の移動は、前記球体の貫通穴と前記レバーが相対移動することによって行われ、前記プローブのホルダ軸方向と直交する2軸の移動は、前記レバーの前記プローブ搭載端と球体を挟む反対端のホルダ軸方向と直交する2軸方向への直線移動が、前記球体を支点とし前記球体と当接する前記球体支持部材の円錐座及び球体押圧部材を摺動部とした回転を起こすことによって行われるようにした、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項6】
前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構と前記レバーとの間に圧電素子が組み込まれている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項7】
前記プローブ位置精密調節機構は、前記直線移動機構を駆動するモーターが組み込まれている、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項8】
前記試料支持部材と電気的に絶縁して前記試料支持部材に取り付けられ前記試料と接触する端子を有する電極を備えた、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。
【請求項9】
前記試料を前記試料支持部材に押止するために試料上の異なる位置に接触し、且つ前記試料支持部材と電気的に絶縁された電極として使用し得る少なくとも2つの試料押止部材を備えた、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電子顕微鏡の試料ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−331979(P2006−331979A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−157124(P2005−157124)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】