説明

電子黒板システム

【課題】電子ペンの操作性を落とさずに、隣接する部屋同士での混信や盗聴を防止する。
【解決手段】電子ペン2は、可視光を発光する発光部と、ユーザの操作を検出する操作検出部と、操作検出部により検出されたユーザの操作に関する情報を、可視光通信の変調方式に基づいて変調することにより変調信号を得る変調部と、変調部により得られた変調信号に基づいて発光部の点灯を制御する点灯制御部とを備える。表示装置3は、可視光を検出する光検出部と、光検出部により検出された可視光を、変調方式に対応する復調方式に基づいて復調することによりユーザの操作に関する情報を得る復調部と、復調部により得られたユーザの操作に関する情報に基づく画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された画像をスクリーンに表示させる画像表示部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学校の教室や企業の会議室等で用いられる電子黒板システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、50インチ以上の大型ディスプレイ装置を利用した電子黒板システムが商品開発されている。特許文献1には、プラズマディスプレイ装置と、プラズマディスプレイ装置のスクリーンに配設されたタッチパネルと、プラズマディスプレイ装置に画像を表示させるパーソナルコンピュータとを備えた電子黒板システムが開示されている。この電子黒板システムにおいて、タッチパネルは、スクリーン上でのユーザの操作(例えば、タッチパネルに触れたまま指を移動させるなどの描画動作や、描画する線の色や幅を選択するためにアイコンに触れる選択動作など)を検出し、検出されたユーザの操作に関する情報をパーソナルコンピュータに送信する。パーソナルコンピュータは、受信したユーザの操作に関する情報に基づいて画像を生成し、生成された画像をプラズマディスプレイ装置に表示させる。これにより、ユーザの操作がプラズマディスプレイ装置のスクリーンにリアルタイムに反映される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−43484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、タッチパネルには、使用を重ねるにつれてキズや油脂の付着によりスクリーンの品質が劣化するという問題がある。そこで、ユーザ操作を検出する手段として、タッチパネルに代えて電子ペンを採用することが考えられる。電子ペンには、ユーザの描画動作や選択動作を検出し、検出されたユーザ操作に関する情報をパーソナルコンピュータに送信する機能が備えられている。ここで、情報の送信手段として無線通信を採用した場合、学校の教室や企業の会議室で利用すると隣の部屋との間で混信が生じたり盗聴されたりするおそれがある。また、有線通信を採用した場合には、混信や盗聴は防止できるが、電子ペンの操作性が悪くなる。
【0005】
そこで、本発明は、電子ペンの操作性を落とさずに、隣接する部屋同士での混信や盗聴を防止することができる電子黒板システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子黒板システムは、電子ペンと、スクリーンと、表示装置とを備えた電子黒板システムであって、前記電子ペンは、可視光を発光する発光部と、ユーザの操作を検出する操作検出部と、前記操作検出部により検出されたユーザの操作に関する情報を、可視光通信の変調方式に基づいて変調することにより変調信号を得る変調部と、前記変調部により得られた変調信号に基づいて前記発光部の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、前記表示装置は、可視光を検出する光検出部と、前記光検出部により検出された可視光を、前記変調方式に対応する復調方式に基づいて復調することにより前記ユーザの操作に関する情報を得る復調部と、前記復調部により得られた前記ユーザの操作に関する情報に基づく画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部により生成された画像を前記スクリーンに表示させる画像表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記構成によれば、情報の送信手段として、可視光通信が採用されている。可視光通信では電子ペンと表示装置とを配線で接続する必要がないので、電子ペンの操作性を落とすことがない。また、可視光通信では、通信可能な範囲が可視光の届く範囲のみに制限されるので、隣接する部屋同士での混信や盗聴を防止することができる。
また、前記表示装置は、プロジェクタ装置と、前記プロジェクタ装置と通信可能に接続された画像処理装置とから構成され、前記光検出部、前記復調部および前記画像表示部は、前記プロジェクタ装置に含まれ、前記画像生成部は、前記画像処理装置に含まれていることとしてもよい。
【0008】
上記構成によれば、光検出部がプロジェクタ装置に含まれているので、可視光通信は電子ペンとプロジェクタ装置との間で行われる。通常、プロジェクタ装置とスクリーンとの間には、可視光を遮蔽する物は配置されない。すなわち、電子ペンの使用中において、電子ペンとプロジェクタ装置との間にも可視光を遮蔽する物はない。したがって、可視光通信において通信エラーの発生を抑制することができる。
【0009】
また、前記操作検出部は、描画ボタンと、前記スクリーン上におけるペン先の位置を検出する位置検出部と、前記描画ボタンが押下された場合に、前記位置検出部により検出されたペン先の位置を示す情報を、ユーザの操作に関する情報として出力する情報出力部とを備えることとしてもよい。
画像処理装置がユーザ操作に基づく画像を生成するには、電子ペンにおいて描画ボタンが押下されたことと、そのときのペン先の位置とを知る必要がある。このとき、描画ボタンの押下の検出タイミングとペン先の位置の検出タイミングとがずれると、正確な描画ができない。上記構成によれば、描画ボタンと位置検出部の両方が電子ペンに含まれている。したがって、それらが別々に存在する場合に比べて、描画ボタンの押下の検出タイミングとペン先の位置の検出タイミングとのずれを小さくすることができ、より正確に描画することができる。
【0010】
また、前記スクリーンは、矩形であり、前記スクリーンの直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材が設けられ、前記位置検出部は、直交する2方向にそれぞれ信号を出射する信号出射部と、前記直交する2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出する信号検出部と、前記直交する2方向のそれぞれについて、前記信号出射部により信号が出射されてから前記信号検出部により信号が検出されるまでの時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された時間を、前記スクリーン上におけるペン先の位置を示す情報に変換する変換部を備えることとしてもよい。
【0011】
上記構成によれば、比較的簡易な構成でスクリーン上におけるペン先の位置を検出することができる。
また、前記描画ボタンは、前記電子ペンのペン先に、その押下方向が前記電子ペンの長手方向に直交または傾斜するように設けられ、前記電子ペンには、前記描画ボタンの押下方向に平行な方向を軸として遥動可能であり、前記軸から重心がずれている遥動部材が設けられ、前記信号出射部および前記信号検出部が前記遥動部材に固定されていることとしてもよい。
【0012】
上記構成によれば、描画ボタンがペン先に設けられているので、電子ペンのペン先をスクリーンに押し当てたときに描画ボタンが押されるようになっている。したがって、自然な動作でスクリーンに描画することができる。また、正確にペン先の位置を検出するには、電子ペンの使用中において信号出射部により信号が出射される方向を一定方向に維持する必要がある。上記構成によれば、遥動部材の姿勢は、遥動部材の軸と重心とを結ぶ線が鉛直になるように維持される。そのような遥動部材に信号出射部および信号検出部が設けられているので、信号出射部により信号が出射される方向を一定方向に維持することができる。
【0013】
また、前記プロジェクタ装置と前記画像処理装置とが電力線搬送通信で通信可能であることとしてもよい。
上記構成によれば、プロジェクタ装置と画像処理装置との間に電力線以外の配線を設けずに、ユーザ操作に関する情報を受け渡しすることができる。
また、前記スクリーンと前記表示装置とが一体となって液晶ディスプレイ装置を構成しており、前記操作検出部は、描画ボタンと、前記スクリーン上におけるペン先の位置を検出する位置検出部と、前記描画ボタンが押下された場合に、前記位置検出部により検出されたペン先の位置を示す情報を、ユーザの操作に関する情報として出力する情報出力部とを備えることとしてもよい。
【0014】
画像処理装置がユーザ操作に基づく画像を生成するには、電子ペンにおいて描画ボタンが押下されたことと、そのときのペン先の位置とを知る必要がある。このとき、描画ボタンの押下の検出タイミングとペン先の位置の検出タイミングとがずれると、正確な描画ができない。上記構成によれば、描画ボタンと位置検出部の両方が電子ペンに含まれている。したがって、それらが別々に存在する場合に比べて、描画ボタンの押下の検出タイミングとペン先の位置の検出タイミングとのずれを小さくすることができ、より正確に描画することができる。
【0015】
また、前記スクリーンは、矩形であり、前記スクリーンの直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材が設けられ、前記位置検出部は、直交する2方向にそれぞれ信号を出射する信号出射部と、前記直交する2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出する信号検出部と、前記直交する2方向のそれぞれについて、前記信号出射部により信号が出射されてから前記信号検出部により信号が検出されるまでの時間を計測する計測部と、前記計測部により計測された時間を、前記スクリーン上におけるペン先の位置を示す情報に変換する変換部とを含むこととしてもよい。
【0016】
上記構成によれば、比較的簡易な構成でスクリーン上におけるペン先の位置を検出することができる。
また、前記発光部は、前記電子ペンのペン先に、その光出射方向が前記電子ペンの長手方向に直交または傾斜するように設けられ、前記電子ペンには、前記発光部の光出射方向に平行な方向を軸として遥動可能であり、前記軸から重心がずれている遥動部材が設けられ、前記信号出射部および前記信号検出部が前記遥動部材に固定されていることとしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、描画ボタンがペン先に設けられているので、電子ペンのペン先をスクリーンに押し当てたときに描画ボタンが押されるようになっている。したがって、自然な動作でスクリーンに描画することができる。また、正確にペン先の位置を検出するには、電子ペンの使用中において信号出射部により信号が出射される方向を一定方向に維持する必要がある。上記構成によれば、遥動部材の姿勢は、遥動部材の軸と重心とを結ぶ線が鉛直になるように維持される。そのような遥動部材に信号出射部および信号検出部が設けられているので、信号出射部により信号が出射される方向を一定方向に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電子黒板システムの全体構成を示す図
【図2】スクリーン上における電子ペンの位置の検出原理を説明するための図
【図3】電子ペンの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は(b)の一点鎖線で切り欠いた正面の一部拡大図
【図4】電子ペンの機能ブロック図
【図5】表示装置の機能ブロック図
【図6】電子ペンの動作を示すフローチャート
【図7】電子ペンの動作を示すフローチャート
【図8】ペン情報のフォーマットを例示する図
【図9】本発明の第2実施形態に係る液晶ディスプレイの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図
【図10】電子ペンの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は(b)の一点鎖線で切り欠いた正面の一部拡大図
【図11】本発明の第2実施形態に係る電子黒板システムにおいて、電子ペンの使用状態を示す図
【図12】液晶ディスプレイ装置のブロック図
【図13】位置検出部がスクリーンの周辺に配置される変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子黒板システムの全体構成を示す図である。
電子黒板システム1は、電子ペン2、表示装置3、スクリーン4を備える。表示装置3は、プロジェクタ装置5および画像処理装置6を備える。プロジェクタ装置5は、電力線7にPLC(Power Line Communications)アダプタ8を介して接続されている。画像処理装置6は、電力線7にPLCアダプタ9を介して接続されている。これにより、プロジェクタ装置5から画像処理装置6までユーザ操作に関する情報を送信することができる。また、プロジェクタ装置5と画像処理装置6とは映像信号線10を介して接続されている。これにより、画像処理装置6からプロジェクタ装置5まで画像信号を伝送することができる。
【0020】
電子ペン2は、スクリーン4上でのユーザ操作(例えば、ペン先をスクリーンに押し当てたまま移動させるなどの描画動作や、描画する線の色や幅を選択するボタンを押下する選択動作など)を検出し、検出されたユーザの操作に関する情報をプロジェクタ装置5に送信する機能を有する。電子ペン2とプロジェクタ装置5との間の通信手段として可視光通信が採用されている。
【0021】
スクリーン4は、プロジェクタ装置5から投射された画像を映し出すためのシート、板、壁などである。
プロジェクタ装置5は、電子ペン2から受けたユーザ操作に関する情報を画像処理装置6に送信する機能と、画像処理装置6から受けた画像信号に基づいてスクリーン4に画像を投射する機能とを有する。プロジェクタ装置5から画像処理装置6までの通信手段として電力線搬送通信が採用されている。
【0022】
画像処理装置6は、ユーザ操作に関する情報に基づいて画像信号を生成し、この画像信号をプロジェクタ装置5に送信する機能を有する。画像処理装置6として、パーソナルコンピュータを利用することができる。
図2は、スクリーン上における電子ペンの位置の検出原理を説明するための図である。
スクリーン4は矩形であり、その直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材11,12が設けられている。反射部材11は、長尺形状であり、その長手方向がスクリーン4のx軸方向に平行に配置されている。反射部材12は、長尺形状であり、その長手方向がスクリーン4のy軸方向に平行に配置されている。なお、「信号」としては、音波または電磁波の信号が挙げられる。本実施形態では、電磁波の一種である光、特に、直進性の優れたレーザ光の信号を採用している。
【0023】
電子ペン2は、直交する2方向(x軸方向およびy軸方向)にそれぞれ信号を出射し、その2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出し、各方向での信号の出射から検出までの時間を計測し、それらの時間に基づいてペン先の位置を検出する。この検出方法を利用するには、電子ペン2の姿勢が変動したとしても、信号の出射方向が変動しない構成が必要である(図中A,B参照)。以下に、電子ペン2の構成について説明する。
<電子ペンの構成>
図3は、電子ペンの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は(b)の一点鎖線で切り欠いた正面の一部拡大図である。
【0024】
図3(a),(b)に示すように、ボディ21の正面には、円錐状の透明カバー22が配され、透明カバー22の頂部に描画ボタン23が配されている。描画ボタン23は、ボディ21の長手方向に直交する方向(円錐の軸方向)に押下可能に構成されている。この描画ボタン23が電子ペンのペン先に相当する。描画ボタン23がペン先に設けられているので、電子ペン2のペン先をスクリーンに押し当てたときに描画ボタン23が押されるようになる。
【0025】
図3(c)に示すように、ボディ21の背面には、可視光を発光する発光部24、ペンの色を選択するためのペン色ボタン25、ペン幅を選択するためのペン幅ボタン26および描画された線を消すためのクリアボタン27が配されている。発光部24は、ペン先の背面に相当する位置に配置されている。また、発光部24は、描画の際に発光しているので、スクリーン上における電子ペン2の位置を分りやすくすることができる。発光部24の光源としては、例えば、LED(Light Emitting Diode)を採用することができ、発光色としては、例えば、赤、緑、青、黄、白などを採用することができる。また、この例では、ペン色ボタン25として、赤(R)、青(B)、黄(Y)の3種類が用意され、ペン幅ボタン26として、細(1)、中(2)、太(3)の3種類が用意されている。
【0026】
図3(d)に示すように、透明カバー22内部には、ボディ21の長手方向に直交する軸28を遥動軸とする遥動部材29が配されている。遥動部材29の重心が遥動軸からずれているので、電子ペン2の姿勢が変動したとしても遥動部材29の重心と遥動軸とを結ぶ線が鉛直になるように遥動部材29の姿勢が維持される。遥動部材29には、レーザ30、レーザ検出部31、レーザ32、レーザ検出部33が配されている。レーザ30は、遥動部材29の重心と遥動軸とを結ぶ線に直交する方向(x軸方向)にレーザ光を出射するように配されている。レーザ検出部31は、x軸方向から反射されてきたレーザ光を検出するように配されている。レーザ32は、遥動部材29の重心と遥動軸とを結ぶ線に平行な方向(y軸方向)にレーザ光を出射するように配されている。レーザ検出部33は、y軸方向から反射されてきたレーザ光を検出するように配されている。このような構成により、電子ペン2の姿勢が変動したとしても、レーザ30,32のレーザ光の出射方向は変動しない。
【0027】
図4は、電子ペンの機能ブロック図である。
電子ペン2は、ユーザ操作検出部110、可視光通信変調部120、発光制御部130および発光部24を備える。ユーザ操作検出部110は、xレーザ30、xレーザ検出部31、yレーザ32、yレーザ検出部33、描画ボタン23、ペン色ボタン25、ペン幅ボタン26、クリアボタン27、x位置検出部111、y位置検出部112、ボタン押下検出部113およびペン情報生成部114を備える。xレーザ30およびyレーザ32が、直交する2方向にそれぞれ信号を出射する信号出射部に相当する。xレーザ検出部31およびyレーザ検出部33が、直交する2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出する信号検出部に相当する。また、xレーザ30、xレーザ検出部31、yレーザ32、yレーザ検出部33、x位置検出部111およびy位置検出部112が、スクリーン上におけるペン先の位置を検出する位置検出部に相当する。
【0028】
x位置検出部111は、xレーザ30がレーザ光を出射してからxレーザ検出部31がレーザ光を検出するまでの時間を計測する機能と、計測された時間をスクリーン上におけるペン先のx軸方向の位置に変換する機能とを有する。時間の測定は、例えば、xレーザ30から出射されたレーザ光とxレーザ検出部31により検出されたレーザ光との干渉効果を利用することにより実施できる。位置の変換は、予め時間と位置との関係をメモリに保存しておき、得られた時間に対応する位置をメモリに保存された関係を用いて特定することにより実施できる。
【0029】
y位置検出部112は、yレーザ32がレーザ光を出射してからyレーザ検出部33がレーザ光を検出するまでの時間を計測する機能と、計測された時間をスクリーン上におけるペン先のy軸方向の位置に変換する機能とを有する。x位置検出部111の時間計測機能およびy位置検出部112の時間計測機能が、直交する2方向のそれぞれについて、レーザからレーザ光が出射されてからレーザ検出部によりレーザ光が検出されるまでの時間を計測する計測部に相当する。また、x位置検出部111の位置変換機能およびy位置検出部112の位置変換機能が、計測された時間をスクリーン上におけるペン先の位置を示す情報に変換する変換部に相当する。
【0030】
ボタン押下検出部113は、各種ボタンの押下を検出する。
ペン情報生成部114は、x位置検出部111、y位置検出部112およびボタン押下検出部113から得られたユーザ操作に関する情報から特定のフォーマットのペン情報を生成する。ペン情報のフォーマットを図8に例示する。ペン情報は、フィールド41〜45からなり、フィールド41にx座標、フィールド42にy座標、フィールド43にペン色、フィールド44にペン幅、フィールド45にクリアの有無が記述される。
【0031】
可視光通信変調部120は、可視光通信の変調方式に基づいてペン情報を変調することにより、変調信号を得る。
発光制御部130は、変調信号に基づいて発光部24の点灯を制御する。
<表示装置の構成>
次に、表示装置3の構成について説明する。図5は、表示装置の機能ブロック図である。
【0032】
表示装置3は、プロジェクタ装置5および画像処理装置6を備える。プロジェクタ装置5は、光検出部151、可視光通信復調部152、PLC通信変調部153、ランプ154、液晶部155、レンズ156、画像信号入力部157および液晶制御部158を備える。画像処理装置6は、PLC通信復調部161、ペン画像生成部162、下地画像記憶部163、画像合成部164および画像信号出力部165を備える。
【0033】
光検出部151は、発光部24から出射された可視光を検出する。光検出部151としては、例えば、フォトダイオードを採用することができる。
可視光通信復調部152は、光検出部151により検出された可視光を、可視光通信の復調方式に基づいて復調することにより、ペン情報(ユーザ操作に関する情報)を得る。
PLC通信変調部153は、電力線搬送通信の変調方式に基づいてペン情報を変調することにより変調信号を得る。
【0034】
PLC通信復調部161は、電力線搬送通信の復調方式に基づいて変調信号を復調することによりペン情報(ユーザ操作に関する情報)を得る。
ペン画像生成部162は、ペン情報の各フィールドを解析することにより、ユーザ操作に基づくペン画像を生成する。
下地画像記憶部163は、下地画像を記憶している。
【0035】
画像合成部164は、下地画像記憶部163に記憶されている下地画像とペン画像生成部162により生成されたペン画像とを合成する。
画像信号出力部165は、画像合成部164により得られた合成画像の画像信号を出力する。
ランプ154は、レンズ156を通じて外部のスクリーン4を照射する。ランプ154からレンズ156までの光路には液晶部155が介在している。
【0036】
画像信号入力部157は、合成画像の画像信号の入力を受ける。
液晶制御部158は、画像をスクリーンに表示させる画像表示部として機能し、画像信号入力部157により得られた合成画像の画像信号に基づいて液晶部155を制御することにより、合成画像をスクリーン4に表示させる。
<電子ペンの動作>
次に、電子ペンの動作について説明する。図6,7は、電子ペンの動作を示すフローチャートである。
【0037】
電子ペンは、電源投入時にメモリの初期化を行い(ステップS1)、ユーザ操作によりペン色ボタン、ペン幅ボタン、クリアボタンおよび描画ボタンの何れかが押下されるまで待機状態となる(ステップS2,S4,S6,S8:No)。
待機状態において、ペン色ボタン、ペン幅ボタンおよびクリアボタンの何れかが押下されると(ステップS2,S4,S6:Yes)、その都度、押下されたボタンを示す情報をメモリに保存する(ステップS3,S5,S7)。
【0038】
待機状態において、描画ボタンが押下されると(ステップS8:Yes)、スクリーン上における電子ペンの位置を検出する(ステップS9)。位置の検出は、上述の通りであり、その結果、x座標およびy座標が得られる。
次に、電子ペンは、押下されたボタンを示す情報をメモリから読み出し(ステップS10)、それらとステップS9で得られた位置情報とを合わせてペン情報を生成し(ステップS11)、ペン情報を送信する(ステップS12)。ペン情報の送信は、上述の通り、可視光通信を用いて行う。
【0039】
次に、電子ペンは、一定の期間だけ待機し(ステップS13)、描画ボタンの押下が維持されているか否かを判断する(ステップS14)。描画ボタンの押下が維持されていれば(ステップS14:Yes)、ステップS9からS13までの一例の動作を繰り返す。その結果、描画ボタンの押下が維持されている間は、一定の期間毎にペン情報が送信される。これにより、電子ペンを用いて線を描画することができる。一方、描画ボタンの押下が維持されていなければ(ステップS14:No)、ステップS2に戻る。
【0040】
第1実施形態の構成によれば、可視光通信が採用されているので、電子ペン2と表示装置3とを配線で接続する必要がなく、電子ペン2の操作性を落とすことがない。しかも、可視光通信では、通信可能な範囲が可視光の届く範囲のみに制限されるので、隣接する部屋同士での混信や盗聴を防止することができる。
[第2実施形態]
第2実施形態では、液晶ディスプレイ装置を用いた電子黒板システムを説明する。
【0041】
図9は、本発明の第2実施形態に係る液晶ディスプレイの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
液晶ディスプレイ装置50は、筐体51、反射部材52,53、保護ガラス54、液晶パネル55、導光パネル56、回路基板57、発光素子58、光検出部59を備える。
本実施形態では、保護ガラス54が透過型のスクリーンとして機能する。保護ガラス54は矩形であり、その直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材52,53が設けられている。液晶ディスプレイ装置50の保護ガラス54以外の構成が、スクリーンに画像を表示する表示装置として機能する。
【0042】
図10は、電子ペンの構造を示す図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は背面図、(d)は(b)の一点鎖線で切り欠いた正面の一部拡大図である。
電子ペン70は、ボディ71、透明カバー72、発光部兼描画ボタン73、ペン色ボタン75、ペン幅ボタン76、クリアボタン77、軸78、遥動部材79、レーザ80、レーザ検出部81、レーザ82およびレーザ検出部83を備える。この例では、ボディ71の背面に発光部がない代わりに、ボディ71の正面に発光部兼描画ボタン73を備える。これ以外の構成については第1実施形態と同様である。発光部兼描画ボタン73は、可視光を発光する発光部と描画ボタンとが一体となったものである。発光部および描画ボタンのそれぞれの機能については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0043】
図11は、本発明の第2実施形態に係る電子黒板システムにおいて、電子ペンの使用状態を示す図である。発光部兼描画ボタン73は、保護ガラス54に押し当てられたときに、ユーザ操作に関する情報を可視光通信で送信するために発光する。光検出部59は、液晶パネル55および導光パネル56を通過してきた可視光を検出する。
図12は、液晶ディスプレイ装置のブロック図である。
【0044】
液晶ディスプレイ装置50は、光検出部59、可視光通信復調部172、ペン画像生成部173、下地画像記憶部174、画像合成部175、バックライト176、液晶パネル55、液晶制御部178を備える。バックライト176および液晶パネル55以外の構成については第1実施形態で説明したものと同様である。
バックライト176は、導光パネル56、回路基板57および発光素子58を含み、液晶パネル55を背後から照明するものである。
【0045】
第2実施形態の構成によれば、可視光通信が採用されているので、電子ペン70と表示装置を含む液晶ディスプレイ装置50とを配線で接続する必要がなく、電子ペン70の操作性を落とすことがない。しかも、可視光通信では、通信可能な範囲が可視光の届く範囲のみに制限されるので、隣接する部屋同士での混信や盗聴を防止することができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
(1)実施形態では、スクリーン上における電子ペンの位置を検出する位置検出部が電子ペンに含まれていたが、本発明はこれに限られない。例えば、図13に示すように、位置検出部90がスクリーン4の周辺に配置されることとしてもよい。位置検出部90は、レーザ91、ポリゴンミラー92、レーザ検出部93および発光部94を備える。レーザ91は、ポリゴンミラー92に向けてレーザ光を出射するように配置されている。ポリゴンミラー92は、回転しており、レーザ光の反射角を時間的に変化させる。レーザ検出部93は、電子ペン2から反射されたレーザ光を検出する。レーザ検出部93が電子ペン2からの反射光を検出したときのポリゴンミラー92の角度と、レーザ91がレーザ光を出射してからレーザ検出部93で反射光が検出されるまでの時間とを計測することにより、スクリーン上における電子ペンの位置を検出することができる。発光部94は、電子ペンの位置を示す情報を可視光通信で送信する。
(2)第1実施形態では、電子ペンの発光部から出射された可視光を検出する光検出部がプロジェクタ装置に含まれているが、本発明は、これに限らない。例えば、画像処理装置に含まれることとしてもよい。ただし、プロジェクタ装置に含むほうが、通信エラーを抑制できる可能性を高めることができる。
(3)実施形態では、電子ペンの位置検出を、レーザ光の出射から検出までの時間の計測により行っているが、本発明は、これに限られない。例えば、スクリーン上に微細なドットをプリントしておき、そのドットの形状を検出することによりスクリーン上の位置を検出するような方法でも構わない。
(4)実施形態では、電子ペンの姿勢が変動したときでも一定方向にレーザ光を出射させる手段として遥動部材を採用しているが、本発明は、これに限らない。例えば、3次元加速度センサ等の姿勢センサと、姿勢センサにより検出された姿勢に基づいてレーザ光の出射方向を調整する調整手段とを含むような例でも構わない。
(5)実施形態では、描画ボタンをペン先に設け、スクリーンへの接触により描画ボタンが押下される構成としているが、本発明は、これに限らない。例えば、描画ボタンを電子ペンの背面に設け、ユーザが指で押下することとしてもよい。
(6)実施形態では、電子ペンの長手方向に直交する方向に描画ボタンが押下されることとしているが、本発明は、これに限らない。例えば、長手方向に傾斜する方向に描画ボタンが押下されることとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、例えば、学校の教室や企業の会議室等で用いられる電子黒板システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 電子黒板システム
2 電子ペン
3 表示装置
4 スクリーン
5 プロジェクタ装置
6 画像処理装置
7 電力線
8 PLCアダプタ
9 PLCアダプタ
10 映像信号線
11,12 反射部材
21 ボディ
22 透明カバー
23 描画ボタン
24 発光部
25 ペン色ボタン
26 ペン幅ボタン
27 クリアボタン
28 軸
29 遥動部材
30,32 レーザ
31,33 レーザ検出部
41〜45 フィールド
50 液晶ディスプレイ装置
51 筐体
52,53 反射部材
54 保護ガラス
55 液晶パネル
56 導光パネル
57 回路基板
58 発光素子
59 光検出部
70 電子ペン
71 ボディ
72 透明カバー
73 発光部兼描画ボタン
75 ペン色ボタン
76 ペン幅ボタン
77 クリアボタン
78 軸
79 遥動部材
80,82 レーザ
81,83 レーザ検出部
90 位置検出部
91 レーザ
92 ポリゴンミラー
93 レーザ検出部
94 発光部
110 ユーザ操作検出部
111 位置検出部
112 位置検出部
113 ボタン押下検出部
114 ペン情報生成部
120 可視光通信変調部
130 発光制御部
151 光検出部
152 可視光通信復調部
153 PLC通信変調部
154 ランプ
155 液晶部
156 レンズ
157 画像信号入力部
158 液晶制御部
161 PLC通信復調部
162 ペン画像生成部
163 下地画像記憶部
164 画像合成部
165 画像信号出力部
172 可視光通信復調部
173 ペン画像生成部
174 下地画像記憶部
175 画像合成部
176 バックライト
178 液晶制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ペンと、スクリーンと、表示装置とを備えた電子黒板システムであって、
前記電子ペンは、
可視光を発光する発光部と、
ユーザの操作を検出する操作検出部と、
前記操作検出部により検出されたユーザの操作に関する情報を、可視光通信の変調方式に基づいて変調することにより変調信号を得る変調部と、
前記変調部により得られた変調信号に基づいて前記発光部の点灯を制御する点灯制御部と、を備え、
前記表示装置は、
可視光を検出する光検出部と、
前記光検出部により検出された可視光を、前記変調方式に対応する復調方式に基づいて復調することにより前記ユーザの操作に関する情報を得る復調部と、
前記復調部により得られた前記ユーザの操作に関する情報に基づく画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された画像を前記スクリーンに表示させる画像表示部と、を備えること
を特徴とする電子黒板システム。
【請求項2】
前記表示装置は、プロジェクタ装置と、前記プロジェクタ装置と通信可能に接続された画像処理装置とから構成され、
前記光検出部、前記復調部および前記画像表示部は、前記プロジェクタ装置に含まれ、
前記画像生成部は、前記画像処理装置に含まれていること
を特徴とする請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項3】
前記操作検出部は、
描画ボタンと、
前記スクリーン上におけるペン先の位置を検出する位置検出部と、
前記描画ボタンが押下された場合に、前記位置検出部により検出されたペン先の位置を示す情報を、ユーザの操作に関する情報として出力する情報出力部と
を備えることを特徴とする請求項2に記載の電子黒板システム。
【請求項4】
前記スクリーンは、矩形であり、前記スクリーンの直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材が設けられ、
前記位置検出部は、
直交する2方向にそれぞれ信号を出射する信号出射部と、
前記直交する2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出する信号検出部と、
前記直交する2方向のそれぞれについて、前記信号出射部により信号が出射されてから前記信号検出部により信号が検出されるまでの時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された時間を、前記スクリーン上におけるペン先の位置を示す情報に変換する変換部と
を含むことを特徴とする請求項3に記載の電子黒板システム。
【請求項5】
前記描画ボタンは、前記電子ペンのペン先に、その押下方向が前記電子ペンの長手方向に直交または傾斜するように設けられ、
前記電子ペンには、前記描画ボタンの押下方向に平行な方向を軸として遥動可能であり、前記軸から重心がずれている遥動部材が設けられ、
前記信号出射部および前記信号検出部が前記遥動部材に固定されていること
を特徴とする請求項4に記載の電子黒板システム。
【請求項6】
前記プロジェクタ装置と前記画像処理装置とが電力線搬送通信で通信可能であること
を特徴とする請求項2に記載の電子黒板システム。
【請求項7】
前記スクリーンと前記表示装置とが一体となって液晶ディスプレイ装置を構成しており、
前記操作検出部は、
描画ボタンと、
前記スクリーン上におけるペン先の位置を検出する位置検出部と、
前記描画ボタンが押下された場合に、前記位置検出部により検出されたペン先の位置を示す情報を、ユーザの操作に関する情報として出力する情報出力部と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項8】
前記スクリーンは、矩形であり、前記スクリーンの直交する2辺にそれぞれ信号を反射する反射部材が設けられ、
前記位置検出部は、
直交する2方向にそれぞれ信号を出射する信号出射部と、
前記直交する2方向からそれぞれ反射されてきた信号を検出する信号検出部と、
前記直交する2方向のそれぞれについて、前記信号出射部により信号が出射されてから前記信号検出部により信号が検出されるまでの時間を計測する計測部と、
前記計測部により計測された時間を、前記スクリーン上におけるペン先の位置を示す情報に変換する変換部と
を含むことを特徴とする請求項7に記載の電子黒板システム。
【請求項9】
前記発光部は、前記電子ペンのペン先に、その光出射方向が前記電子ペンの長手方向に直交または傾斜するように設けられ、
前記電子ペンには、前記発光部の光出射方向に平行な方向を軸として遥動可能であり、前記軸から重心がずれている遥動部材が設けられ、
前記信号出射部および前記信号検出部が前記遥動部材に固定されていること
を特徴とする請求項8に記載の電子黒板システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−140154(P2011−140154A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1708(P2010−1708)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】