説明

電極の製造方法、電極、及び電気化学素子

【課題】 電極の活物質層と集電体との密着性をより一層向上させることができる電極の製造方法、電極、及び電気化学素子を提供すること。
【解決手段】 活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、カリウム塩を電離させる溶媒を含む塗料を集電体12,22上に塗布する工程と、集電体12,22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する工程と、を備える電極10,20の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極の製造方法、電極、及び電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子の寿命やサイクル特性を向上させるために、例えば、電極の活物質層と集電体との密着性を向上させることが試みられている。
特許文献1には、金属製シート状物の表面に、複数の凸部が形成された集電体が開示されている。また、特許文献2には、バインダーポリマーに対して、特定の単量体から得られたポリマー粒子を添加したバインダーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−16310号公報
【特許文献2】特表2008−537841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法では、活物質層と集電体との密着性が十分ではなかった。したがって、活物質層と集電体との密着性をより一層向上させることが求められている。
【0005】
そこで本発明は、活物質層と集電体との密着性をより一層向上させることができる電極の製造方法、電極、及び電気化学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、カリウム塩を電離させる溶媒を含む塗料を集電体上に塗布する工程と、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去する工程と、を備える電極の製造方法を提供する。
【0007】
本発明によれば、電極の活物質層と集電体との密着性をより一層向上させることができる。活物質層と集電体との密着性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察する。すなわち、活物質層の原料である塗料中にカリウムイオンが存在することによって、塗料を塗布する工程及び/又は溶媒を除去する工程において、フッ素樹脂が架橋するためと考えられる。
【0008】
溶媒中にカリウムイオンが存在することによってフッ素樹脂が架橋する理由も明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察する。例えば、溶媒中にカリウムイオンが存在することによって、フッ素樹脂からフッ化水素が脱離し、フッ素樹脂中に、二重結合及び/又は三重結合が形成されることが考えられる。そして、近傍に存在する二重結合同士、三重結合同士、又は、二重結合と三重結合とが相互作用することにより、フッ素樹脂中に、緩やかな架橋構造が形成されることが考えられる。
【0009】
また、例えば、フッ素樹脂中のフッ素原子は、電気的にマイナスの電荷を帯びる傾向にあるため、カリウムイオンとフッ素樹脂中のフッ素原子との間には、電気的な引力が作用することが考えられる。したがって、カリウムイオンを介して、フッ素樹脂が静電引力による緩やかな結合を構成することにより、フッ素樹脂中に、緩やかな架橋構造が形成されることも考えられる。
【0010】
このようにして作製された電極を備える電気化学素子は、活物質層と集電体との密着性がより一層向上するため、サイクル特性が向上する。
【0011】
ここで、カリウム塩はフッ化カリウムであることが好ましい。
【0012】
また、フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。
【0013】
また、カリウム塩は、フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部となるように塗料に添加されていることが好ましい。カリウム塩の添加量が上記範囲内にあると、活物質層と集電体との密着性がより一層向上する。
【0014】
また、本発明は、集電体と、活物質、フッ素樹脂、及びカリウム塩を含み、集電体上に設けられた活物質層と、を備える電極を提供する。
【0015】
本発明に係る電極によれば、集電体と活物質層との密着性をより一層向上させることができるものと本発明者らは推測する。集電体と活物質層との密着性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察する。すなわち、活物質層にフッ素樹脂及びカリウム塩が存在することによって、活物質層における活物質層と集電体との界面、又は、複数の活物質の表面に、粘着性が生じるためと考えられる。
【0016】
ここで、フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデンであることが好ましい。また、カリウム塩はフッ化カリウムであることが好ましい。
【0017】
また、活物質層におけるカリウム塩の含有量は、フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましい。カリウム塩の含有量が上記範囲内にあると、集電体と活物質層との密着性がより一層向上する。
【0018】
また、本発明は、上記電極を備える電気化学素子を提供する。本発明は、活物質層と集電体との密着性がより一層向上された電極を備えるため、電気化学素子のサイクル特性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電極の活物質層と集電体との密着性をより一層向上させることができる電極の製造方法、電極、及び電気化学素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
以下、電極が、リチウムイオン二次電池に用いられる電極である場合について、図1を参照しながら具体的に説明する。図1は、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池100を示す模式断面図である。
【0023】
リチウムイオン二次電池100は、主として、積層体30、積層体30を密閉した状態で収容するケース50、及び積層体30に接続された一対のリード60,62を備えている。
【0024】
積層体30は、一対の正極10、負極20がセパレータ18を挟んで対向配置されたものである。正極10は、板状(膜状)の正極集電体12上に正極活物質層14が設けられたものである。負極20は、板状(膜状)の負極集電体22上に負極活物質層24が設けられたものである。正極活物質層14及び負極活物質層24がセパレータ18の両側にそれぞれ接触している。正極集電体12及び負極集電体22の端部には、それぞれリード60,62が接続されており、リード60,62の端部はケース50の外部にまで延びている。
【0025】
以下、正極10及び負極20を総称して、電極10、20といい、正極集電体12及び負極集電体22を総称して集電体12、22といい、正極活物質層14及び負極活物質層24を総称して活物質層14、24という。
【0026】
まず、電極10、20について具体的に説明する。
(正極10)
正極集電体12は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
正極活物質層14は、正極活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、必要に応じた量の導電助剤を含むものである。正極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、リチウムイオンと該リチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能であれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている正極活物質を使用できる。例えば、リチウム含有金属酸化物が挙げられる。リチウム含有金属酸化物としては、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、及び、一般式:LiNiCoMn(x+y+z=1)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV)、オリビン型LiMPO(ただし、Mは、Co、Ni、Mn又はFeを示す)、チタン酸リチウム(LiTi12)等が挙げられる。
【0027】
フッ素樹脂は、フッ素を含むオレフィンの重合体でありバインダーとして用いられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)が挙げられる。中でも、特にPVDFが好ましい。
【0028】
導電助剤は、正極活物質層14の導電性を良好にするものであれば特に限定されず、公知の導電助剤を使用できる。例えば、カーボンブラック類、炭素材料、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、ITO等の導電性酸化物が挙げられる。
【0029】
正極活物質層14におけるフッ素樹脂の含有量は特に限定されないが、活物質、導電助剤及びフッ素樹脂の質量の和を基準にして、1質量%〜15質量%であることが好ましく、3質量%〜10質量%であることがより好ましい。フッ素樹脂の含有量を上記範囲とすることにより、得られた活物質層において、フッ素樹脂の量が少なすぎて強固な活物質層を形成できなくなる傾向を抑制できる。また、電気容量に寄与しないフッ素樹脂の量が多くなり、十分な体積エネルギー密度を得ることが困難となる傾向も抑制できる。
正極活物質層14における導電助剤の含有量も特に限定されないが、導電助剤を添加する場合には通常、活物質に対して0.5質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜12質量%とすることがより好ましい。
【0030】
カリウム塩としては、例えば、フッ化カリウム(KF)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、硝酸カリウム(KNO)、硫酸カリウム(KSO)が挙げられる。
【0031】
正極活物質層14におけるカリウム塩の含有量は、フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部であることが好ましく、0.5〜15質量部であることがより好ましく、3〜10質量部であることがさらに好ましい。カリウム塩の含有量が上記範囲内にあると、フッ素樹脂の架橋が生じ易く、正極活物質層14と正極集電体12との密着性がより一層向上する傾向があり、放電容量及びサイクル特性をより向上させることができる。カリウム塩の含有量がフッ素樹脂100質量部に対して20質量部を超えると、導電性が低下するためか、放電容量が減少しサイクル特性が低下する傾向がある。一方、カリウム塩の含有量がフッ素樹脂100質量部に対して0.1質量部を下回ると、正極活物質層14と正極集電体12との密着性が低下する、又は、正極活物質層14中の活物質同士の密着性が低下するためか、放電容量が減少しサイクル特性が低下する傾向がある。
【0032】
(負極20)
負極集電体22は、導電性の板材であればよく、例えば、アルミ、銅、ニッケル箔の金属薄板を用いることができる。
負極活物質層24は、負極活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、必要に応じた量の導電助剤を含むものである。負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出、リチウムイオンの脱離及び挿入、又は、リチウムイオンと、そのリチウムイオンのカウンターアニオン(例えば、ClO)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることができれば特に限定されず、公知のリチウムイオン二次電池に用いられている負極活物質を使用することができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバー(MCF)、コークス類、ガラス状炭素、有機化合物焼成体等の炭素材料、Al、Si、Sn等のリチウムと化合することができる金属、SiO、SnO等の酸化物を主体とする非晶質の化合物、チタン酸リチウム(LiTi12)、等が挙げられる。活物質の体積膨率が大きく、活物質層と集電体との剥離が問題となる、例えばSnを主成分とする材料を活物質として用いる場合に、本発明に係る塗料は特に効果的である。
【0033】
フッ素樹脂、カリウム塩、及び導電助剤には、上述した正極10に用いる材料と同様の材料を用いることができる。また、フッ素樹脂、カリウム塩、及び導電助剤の含有量も上述した正極10における含有量と同様の含有量を採用すればよい。
【0034】
次に、本実施形態に係る電極10,20の製造方法について説明する。
本実施形態に係る電極10,20の製造方法は、活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、カリウム塩を電離させる溶媒を含む塗料を集電体上に塗布する工程(以下、「塗布工程」ということがある。)と、集電体上に塗布された塗料中の溶媒を除去する工程(以下、「溶媒除去工程」ということがある。)と、を備える。
【0035】
(塗布工程)
塗料を集電体12、22に塗布する塗布工程について説明する。塗料は、活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、カリウム塩を電離させる溶媒を含む。塗料には、これらの成分の他に、例えば、活物質の導電性を高めるための導電助剤が含まれていてもよい。
【0036】
カリウム塩を電離させる溶媒としては、カリウム塩を電離させ、カリウムイオンを生じさせるものであれば用いることができる。また、カリウム塩を、溶媒中で十分に電離し、懸濁又は沈殿させないものが好ましく、完全解離させる傾向にあるものがより好ましい。
すなわち本発明において、「カリウム塩を電離させる溶媒」とは、その溶媒中において、カリウム塩の電離度が0より大きくなる溶媒を意味する。このような溶媒の中でも、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を用いることが好ましく、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。上記溶媒は、極性が非常に高く、カリウム塩が電離し易いため好ましい。塗料中における溶媒の量は特に限定されず、塗布に適する粘度等が得られるように適宜調節すればよい。
【0037】
塗料中、カリウム塩は、フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部となるように添加することが好ましく、0.5〜15質量部となるように添加することがより好ましく、3〜10質量部となるように添加することがさらに好ましい。カリウム塩の添加量が上記範囲内にあると、フッ素樹脂の架橋が生じ易く、活物質層14、24と集電体12、22との密着性がより一層向上する傾向があり、放電容量及びサイクル特性を向上させることができる。カリウム塩の添加量がフッ素樹脂100質量部に対して20質量部を超えると、導電性が低下するためか、放電容量が減少しサイクル特性が低下する傾向がある。一方、カリウム塩の添加量がフッ素樹脂100質量部に対して0.1質量部を下回ると、物質層14、24と正極集電体12、22との密着性が低下する、又は、活物質層14、24中の活物質同士の密着性が低下するためか、放電容量が減少しサイクル特性が低下する傾向がある。
【0038】
活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、カリウム塩を電離させる溶媒、導電助剤等の塗料を構成する成分の混合方法は特に制限されず、混合順序もまた特に制限されない。例えば、まず、活物質、導電助剤、及びカリウム塩を乾燥混合し、得られた混合物に、PVDFを含むNMP溶液を加えて混合し、塗料を調整する。
【0039】
上述した活物質、フッ素樹脂、溶媒、及び、溶媒中で電離するカリウム塩を含む上記塗料を、上記集電体12、22に塗布する。塗布方法としては、特に制限はなく、通常電極を作製する場合に採用される方法を用いることができる。例えば、スリットダイコート法、ドクターブレード法が挙げられる。
【0040】
(溶媒除去工程)
続いて、集電体12、22上に塗布された塗料中の溶媒を除去する。除去法は特に限定されず、塗料が塗布された集電体12、22を、例えば80℃〜150℃の雰囲気下で乾燥させればよい。
【0041】
そして、このようにして活物質層14、24が形成された電極を、その後、必要に応じて例えば、ロールプレス装置等によりプレス処理すればよい。ロールプレスの線圧は例えば、10〜50kgf/cmとすることができる。
【0042】
以上の工程を経て、本実施形態に係る電極を作製することができる。
【0043】
(作用効果)
本発明によれば、電極の活物質層14、24と集電体12、22との密着性をより一層向上させることができる。活物質層14、24と集電体12、22との密着性が向上する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察する。すなわち、塗料を形成する工程において、溶媒中にカリウムイオンが存在することによって、フッ素樹脂が架橋するためと考えられる。
【0044】
溶媒中にカリウムイオンが存在することによってフッ素樹脂が架橋する理由も明らかではないが、本発明者らは、以下のように推察する。例えば、溶媒中にカリウムイオンが存在することによって、フッ素樹脂からフッ化水素が脱離し、フッ素樹脂中に、二重結合及び/又は三重結合が形成されることが考えられる。そして、近傍に存在する二重結合同士、三重結合同士、又は、二重結合と三重結合とが相互作用することにより、フッ素樹脂中に、緩やかな架橋構造が形成されることが考えられる。
【0045】
また、例えば、フッ素樹脂中のフッ素原子は、電気的にマイナスの電荷を帯びる傾向にあるため、カリウムイオンとフッ素樹脂中のフッ素原子との間には、電気的な引力が作用する。したがって、カリウムイオンを介して、フッ素樹脂が、静電引力による緩やかな結合を構成することにより、フッ素樹脂中に、緩やかな架橋構造が形成されることも考えられる。
このようにして作製された電極を備える電気化学素子は、活物質層14、24と集電体12、22との密着性がより一層向上するため、サイクル特性が向上する。
【0046】
ここで、上述のように作製した電極を用いたリチウムイオン二次電池100の他の構成要素を説明する。
【0047】
電解質は、正極活物質層14、負極活物質層24、及び、セパレータ18の内部に含有させるものである。電解質としては、特に限定されず、例えば、本実施形態では、リチウム塩を含む電解質溶液(電解質水溶液、有機溶媒を使用する電解質溶液)を使用することができる。ただし、電解質水溶液は電気化学的に分解電圧が低いことにより、充電時の耐用電圧が低く制限されるので、有機溶媒を使用する電解質溶液(非水電解質溶液)であることが好ましい。電解質溶液としては、リチウム塩を非水溶媒(有機溶媒)に溶解したものが好適に使用される。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiClO、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiCFCFSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO、LiN(CFCFSO、LiN(CFSO)(CSO)、LiN(CFCFCO)、LiBOB等の塩が使用できる。なお、これらの塩は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
また、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、及び、ジエチルカーボネート等が好ましく挙げられる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で混合して使用してもよい。
【0049】
なお、本実施形態において、電解質は液状以外にゲル化剤を添加することにより得られるゲル状電解質であってもよい。また、電解質溶液に代えて、固体電解質(固体高分子電解質又はイオン伝導性無機材料からなる電解質)が含有されていてもよい。
【0050】
セパレータ18は、電気絶縁性の多孔体であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリオレフィンからなるフィルムの単層体、積層体や上記樹脂の混合物の延伸膜、或いは、セルロース、ポリエステル及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布が挙げられる。
【0051】
ケース50は、その内部に積層体30及び電解質溶液を密封するものである。ケース50は、電解液の外部への漏出や、外部からの電気化学デバイス100内部への水分等の侵入等を抑止できる物であれば特に限定されない。例えば、ケース50として、図1に示すように、金属箔52を高分子膜54で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムを利用できる。金属箔52としては例えばアルミ箔を、高分子膜54としてはポリプロピレン等の膜を利用できる。例えば、外側の高分子膜54の材料としては融点の高い高分子例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド等が好ましく、内側の高分子膜54の材料としてはポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が好ましい。
【0052】
リード60,62は、アルミ等の導電材料から形成されている。
【0053】
そして、公知の方法により、リード60、62を正極集電体12、負極集電体22にそれぞれ溶接し、正極10の正極活物質層14と負極20の負極活物質層24との間にセパレータ18を挟んだ状態で、電解液と共にケース50内に挿入し、ケース50の入り口をシールすればよい。
【0054】
以上、電極の製造方法、それにより得られた電極、及び当該電極を備えるリチウムイオン二次電池の好適な一実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
例えば、電極は、リチウムイオン二次電池以外の電気化学素子にも用いることができる。電気化学素子としては、金属リチウム二次電池(カソードとして本発明の電極を用い、アノードに金属リチウムを用いたもの)等のリチウムイオン二次電池以外の二次電池や、リチウムキャパシタ等の電気化学キャパシタ等が挙げられる。これらの電気化学素子は、自走式のマイクロマシン、ICカードなどの電源や、プリント基板上又はプリント基板内に配置される分散電源の用途に使用することが可能である。
【0056】
例えば、電気化学素子が電気化学キャパシタの場合には、電極の活物質としては、公知の電子伝導性を有する多孔体を用いればよい。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、メソカーボンファイバー(MCF)、コークス類、ガラス状炭素、有機化合物焼成体等の炭素材料を好適に用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(実施例1)
[正極の作製]
正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/3を85g、導電助剤としてカーボンブラック(電気化学工業(株)製、DAB50)及び黒鉛(ティムカル(株)製、KS−6)をそれぞれ5g、フッ化カリウム((株)高純度化学研究所製 純度99%)150mgを、ドライMIXした後に、バインダーとしてのPVDF(ポリフッ化ビニリデン(呉羽化学工業(株)製、KF7305又は東京材料(株) Kyner 761)のNMP(N−メチル−2−ピロリジノン)溶液(50g、PVDF成分10質量%)を加えて混合し塗料約145gを作製した。PVDFに対するフッ化カリウムの質量比は3%であった。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.15質量%であった。
この塗料を集電体であるアルミニウム箔(厚み20μm)にドクターブレード法で塗布後、90℃で乾燥し、圧延した。なお、外部引き出し端子(リード)を溶接するために塗料を塗布しない部分を設けておいた。
得られた正極は、結着性が強く剥がれにくかった。JIS K5600−5−6に基づき塗膜(活物質層)の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは3%(分類1)となった。結果を表1に示す。
【0059】
[負極の作製]
負極活物質としての天然黒鉛45gと、導電助剤としてのカーボンブラック2.5gをドライミックスした後に、バインダーとして上記PVDF溶液22.5gを加え負極用の塗料を作製した。この塗料を、集電体である銅箔(厚み16μm)にドクターブレード法で正極と同様に外部引き出し端子の溶接部分を除くようにして塗布後、90℃で乾燥し、圧延した。
【0060】
[電池の作製]
上述したようして作製した正極、負極及びセパレータ(ポリオレフィン製の微多孔質膜)を所定の寸法に切断した。続いて、正極、負極、及びセパレータをこの順序で積層した。積層数は、リチウムイオン二次電池の容量が200mAhになるように積層した。積層するときには、正極、負極、及びセパレータがずれないようにホットメルト接着剤(エチレン−メタアクリル酸共重合体、EMAA)を少量塗布し固定した。
正極及び負極には、それぞれ、外部引き出し端子としてアルミニウム箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)、ニッケル箔(幅4mm、長さ40mm、厚み100μm)を超音波溶接した。外部端子と外装体とのシール性を向上させるために、この外部引き出し端子に、無水マレイン酸をグラフト化したポリプロピレン(PP)を巻き付け熱接着させた。
正極、負極、及びセパレータを積層した電池要素を封入する電池外装体はアルミニウムラミネート材料からなり、その構成は、PET(厚さ12μm)/Al(厚さ40μm)/PP(厚さ50μm)のものを用意した。この時、PPが内側となるように製袋した。この外装体の中に電池要素を入れ電解質溶液(エチレンカーボンネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の混合溶媒(EC:DEC=30:70vol%)にLiPFを1Mに溶解させた電解液)を適当量添加し、外装体を真空密封しリチウムイオン二次電池を作製した。10mA(0.05C)にて10時間エージングした。
【0061】
[電池の45℃、500サイクル後の放電容量評価]
まず、初期での容量の確認として、25℃のチャンバー内にて、上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vの条件で100mA(0.5C)にて充放電を数回繰り返した。上記手法で作製したリチウムイオン二次電池の平均放電容量は約200mAhであることを確認した。
次に、45℃のチャンバー内にて、上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vの条件で、200mA(1C)にて充放電を500回繰り返した。その後、25℃のチャンバー内にて、上限電圧4.2V、下限電圧3.0Vの条件で100mA(0.5C)にて充放電を数回繰り返した際の平均放電容量は約150mAh(容量維持率約70%)であった。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例2)
フッ化カリウム40mgを正極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.04質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは4%(分類1)となった。
【0063】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約135mAh(容量維持率約60%)であった。
【0064】
(実施例3)
フッ化カリウム260mgを正極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.26質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは2%(分類1)となった。
【0065】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約155mAh(容量維持率約78%)であった。
【0066】
(実施例4)
フッ化カリウム500mgを正極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.5質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0067】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約158mAh(容量維持率約79%)であった。
【0068】
(実施例5)
フッ化カリウム750mgを正極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.75質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0069】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約147mAh(容量維持率約74%)であった。
【0070】
(実施例6)
フッ化カリウム1000mgを正極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例1と同様にして正極を作製した。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は1.0質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0071】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約130mAh(容量維持率約65%)であった。
【0072】
(実施例7)
[正極の作製]
フッ化カリウムを用いなかった以外は、実施例1の正極の作製方法と同様にして正極を作製した。
【0073】
[負極の作製]
負極活物質としての天然黒鉛45gと、導電助剤としてのカーボンブラック2.5gと、フッ化カリウム75mgとをドライミックスした後に、バインダーとして上記PVDF溶液22.5gを加え負極用の塗料を作製した。PVDFの質量に対するフッ化カリウムの質量比は3%であった。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.15質量%であった。
この塗料を集電体である銅箔(厚み16μm)にドクターブレード法で塗布後、90℃で乾燥し、圧延した。
得られた負極は、結着性が強く剥がれにくかった。JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは2%(分類1)となった。
【0074】
[電池の作製]
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約135mAh(容量維持率約68%)であった。
【0075】
(実施例8)
フッ化カリウム20mgを負極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例7と同様にして負極を作製した。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.04質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは3%(分類1)となった。
【0076】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約125mAh(容量維持率約63%)であった。
【0077】
(実施例9)
フッ化カリウム129mgを負極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例7と同様にして負極を作製した。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.26質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0078】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約140mAh(容量維持率約70%)であった。
【0079】
(実施例10)
フッ化カリウム230mgを負極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例7と同様にして負極を作製した。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.5質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0080】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約144mAh(容量維持率約72%)であった。
【0081】
(実施例11)
フッ化カリウム340mgを負極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例7と同様にして負極を作製した。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は0.68質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0082】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約136mAh(容量維持率約68%)であった。
【0083】
(実施例12)
フッ化カリウム500mgを負極活物質及び導電助剤と混合した以外は実施例7と同様にして負極を作製した。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化カリウムの質量の割合は1.0質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは1%(分類1)となった。
【0084】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約126mAh(容量維持率約63%)であった。
【0085】
(実施例13)
実施例1と同様にして、正極を作製した。また、実施例7と同様にして、負極を作製した。この正極及び負極を用いて、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約144mAh(容量維持率約72%)であった。
【0086】
(比較例1)
[正極の作製]
フッ化カリウムを用いなかった以外は、実施例1と同様にして正極を作製した。JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは7%(分類2)となった。
比較的容易に活物質層を集電体からはがすことができた。
[負極の作製]
実施例1と同様にして負極を作製した。
【0087】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約120mAh(容量維持率約60%)であった。
【0088】
(比較例2)
[正極の作製]
実施例5と同様にして正極を作製した。
[負極の作製]
フッ化カリウムを用いなかった以外は、実施例5と同様にして負極を作製した。JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは7%(分類2)となった。
【0089】
実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約120mAh(容量維持率約60%)であった。
【0090】
(比較例3)
フッ化カリウムの代わりに、フッ化リチウム((株)高純度化学研究所製 純度99%以上)を用いた以外は実施例1と同様にして、正極を作製した。PVDFに対するフッ化リチウムの質量比は3%であった。正極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化リチウムの質量の割合は0.15質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは7%(分類2)となった。
【0091】
作製した正極を用い、実施例1と同様にして、リチウムイオン2次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約120mAh(容量維持率約60%)であった。
【0092】
(比較例4)
フッ化カリウムの代わりに、フッ化リチウム((株)高純度化学研究所製 純度99%以上)を用いた以外は実施例5と同様にして、負極を作製した。PVDFに対するフッ化リチウムの質量比は3%であった。負極活物質、導電助剤及びPVDFの合計質量を基準とした、フッ化リチウムの質量の割合は0.15質量%であった。
JIS K5600−5−6に基づき塗膜の接着強度を評価したところ、塗膜の剥がれは7%(分類2)となった。
【0093】
作製した正極を用い、実施例1と同様にして、リチウムイオン2次電池を作製した。また、作製したリチウムイオン二次電池のサイクル特性を実施例1と同様にして評価した。作製したリチウムイオン二次電池の放電容量は約200mAhであった。45℃における500サイクル後の平均放電容量は約120mAh(容量維持率約60%)であった。
【0094】
【表1】

【0095】
フッ化カリウムを含む塗料を用いて作製した電極は、活物質層と集電体との密着性が向上した。そして、このような電極を用いたリチウムイオン二次電池は、45℃、500サイクル後の放電容量維持率も向上した。
【符号の説明】
【0096】
10,20…電極、12…正極集電体、14…正極活物質層、18…セパレータ、22…負極集電体、24…負極活物質層、30…積層体、50…ケース、52…金属箔、54
…高分子膜、60,62…リード、100…リチウムイオン二次電池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質、フッ素樹脂、カリウム塩、及び、前記カリウム塩を電離させる溶媒含む塗料を集電体上に塗布する工程と、
前記集電体上に塗布された前記塗料中の溶媒を除去する工程と、
を備える電極の製造方法。
【請求項2】
前記カリウム塩はフッ化カリウムである請求項1に記載の電極の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデンである、請求項1又は2に記載の電極の製造方法。
【請求項4】
前記カリウム塩は、前記フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部となるように、前記塗料に添加されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極の製造方法。
【請求項5】
集電体と、
活物質、フッ素樹脂、及びカリウム塩を含み、前記集電体上に設けられた活物質層と、
を備える電極。
【請求項6】
前記カリウム塩はフッ化カリウムである請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記フッ素樹脂はポリフッ化ビニリデンである、請求項5又は6に記載の電極。
【請求項8】
前記活物質層における前記カリウム塩の含有量が、前記フッ素樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の電極。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の電極を備える電気化学素子。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−228048(P2011−228048A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95072(P2010−95072)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】