説明

電極を備えた透明基板

特に太陽電池に適切であって電極が組み合わされた特にガラス製の透明基板であって、その電極が、ドーピングされていない無機酸化物で構成された第一の透明な導電性層を含み、その第一層が、同じ無機酸化物であるがドーピングされている無機酸化物で構成されている第二の透明な導電性層で被覆されていることを特徴とする透明基板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極を備えた、特にガラス製の透明基板に関する。この導電性基板は、特に、太陽電池の部品を製造することを意図としている。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ケイ素(Si)またはテルル化カドミウム(CdTe)の薄層に基づいた太陽電池には、この種の導電性基板が組み込まれている。
【0003】
薄膜技術を利用してSiまたはCdTeが組み込まれている電池に対して、SnO2:F、SnO2:Sb、ZnO:AlまたはZnO:Gaに基づいた一般にTCO(透明導電性酸化物)層と呼称される薄い導電性透明層が使用されている。これらの層は、一般に、薄いシリコン層に基づいた太陽電池のフロント電極として使用されている。SnO2:FはCVD法によって堆積され、そしてZnO:Alはマグネトロンスパッタリング法で堆積されている。ZnO:Al化合物は、粗面にするため、酸によるエッチングの後処理が必要であるが、SnO2:Fは、本来、堆積の後に粗面である。この粗さによって、太陽電池の活性部分を構成するシリコンによる光吸収率を増大するため、光閉じ込め効果を起こさせることができる。このパラメータは、光閉じ込め効果に関するTCO層の性能基準の一つであり、この基準は、得られるヘイズの強さで特徴付けられる基準である。
【0004】
光起電力の技術分野で利用することを目的とするTCO層の改良されたヘイズを探索する各種のアプローチが知られており、特に、フランス特許第2 832 706号に例示されている方法は、RMS粗さ>3 nmおよび形体の大きさ>50 nmの、ヘイズを誘発する粗い透明導電性層の構造を開示している。
【0005】
ヨーロッパ特許第1 422 761号には、凹凸のあるSnO2/SiOCまたはSiOCまたはSiSnOの副層の多層体における使用が開示されている。
【0006】
さらに、ヨーロッパ特許第1 056 136号には、NaCl結晶から正孔を生成させるために、Naベースのガラス基板の上でSnO2/SiO2の副層を使用することが教示されている。
【0007】
先行技術のアプローチがどのような方法であろうとも、ヘイズを有する多層構造を製造するには、SiSnxOyCyの副層を使用するか、またはTCO層を堆積させる前に基板にテクスチャ加工を行う必要がある。これを行うには、追加の加工ステップが必要である。
【0008】
光起電力の用途に使うTCO層の性能を評価する際に通常直面する別の基準は、光透過率/電気抵抗の比率である。
【0009】
この点については、ヨーロッパ特許第2 90 345号が、光透過率/電気抵抗の比率が最適化されている、SnO2/SnO2:Fの二重層に基づいたTCOタイプの薄膜多層を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、既知の電極より製造しやすくおよび/または経費が低く、そしてヘイズと光透過率の積、光透過率/電気抵抗の比率、ヘイズ/電気抵抗の比率およびヘイズにより表される組み合わさった性能特性が付随的に改善されている、太陽電池のための電極を備えた基板を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一の主題は、太陽電池に特に適切な、電極が組み合わされた特にガラス製の透明基板であって、その電極が、ドーピングされていない無機酸化物で構成された第一の透明な導電性層を含み、その第一透明導電性層が、上記と同じ無機酸化物であるがドーピングされている無機酸化物で構成されている第二の透明な導電性層で被覆されていることを特徴とする透明基板にある。
【0012】
本発明に関連して、用語「層」は、連続層または不連続層、特に、特徴部分(連続層をエッチィングするか、または例えばマスクシステムを使って不連続層に望ましい特徴を直接堆積させることによって形成される)を有する連続層または不連続層を意味するものとする。このことは、本願明細書に含まれているすべての層に当てはまるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の好ましい実施態様では、下記の構成の一つ以上を、さらに任意に採用することができる。
-電極は、5%〜25%、好ましくは10%〜20%のヘイズを有している。
-電極は、グラフH(TL)で表されるヘイズ(H)と光吸透過率(TL)の積であるファクターを有し、このファクターは、下記の座標対:(15,82)、(10,84)および(6,85)で定義される線の上方に位置している。
-光吸収率に電極の電気表面抵抗を乗じて得られる積は、0.6Ω/□未満である。
-電極は、抵抗/平方(R/□)が15Ω/□もしくはそれ未満であり、特に12Ω/□もしくはそれ未満であり、好ましくは10Ω/□に等しくまたは12Ω/□もしくはそれ未満である。
-ドーピングされていない無機酸化物に基づいた第一層の厚さは、150 nm〜900 nmである。
-第一層は酸化スズ(SnO2)に基づいており、そして第二層はフッ素をドーピングされた酸化スズ(SnO2:F)に基づいている。
-電極は、窒化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素、窒化アルミニウムもしくはオキシ窒化アルミニウムまたは酸化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素タイプのもので、厚さが20 nm〜150 nmであるアルカリ金属バリヤー特性を有する副層の上に堆積されている。
-バリヤー副層は、1.9〜2.3の高屈折率の層と1.4〜1.7の低屈折率の層とを交互に、特にSi3N4/SiO2またはSi3N4/SiO2/Si3N4の順序で含んでいる。
-第一層は、酸化亜鉛(ZnO)に基づいており、そして第二層はアルミニウムをドーピングされた酸化亜鉛(ZnO:Al)に基づいている。
-ドーピングされているおよび/またはドーピングされていない酸化スズは、高温、特に600℃を超える温度で堆積されている。
-SiベースまたはCdTeベースの光起電力電池の電極としての上記基板の使用。
-基板は、「Albarino」または「Diamant」タイプの超透明ガラスである。
-基板の面の一方には、反射防止性または疎水性または光触媒性の機能を呈する多層が被覆されている。
【0014】
本発明は、非限定的実施例の下記の詳細な説明を読むことや、一方ではSnO2:Fの単一層とSnO2:Fの二重層を有する多層構造および他方ではSnO2/SnO2:Fの二重層を有する多層構造の比較点を示す図1及び図2を調査することで、より明確に理解されるであろう。
【0015】
SnO2/SnO2:Fベースの二重層の電極を製造するため、基板の温度を600℃を超えて上げた後、(CnH2n+1)4Sn(式中、n=1〜4)、(CH3)2SnH2、(C4H9)3SnH、(C4H9)3Sn(COOCH3)2、SnCl4、(CH3)2SnCl2またはモノブチル四塩化スズ(MBTCl)ならびに水蒸気、酸素および窒素からなる蒸気混合物を分解させる。
【0016】
次に、SnO2:Fの第二層を得るため、部分的に被覆された上記基板を再び加熱して、フッ素化スズ化合物またはスズ化合物及びフッ素化合物と接触させる。
【0017】
SnO2:F層を堆積させるため、上記したすべてのスズ化合物を使用できる。但し、フッ素ドナーすなわちCF3COOH、HF、CH3CH2F2、CHClF2、CH3CClF2、CHF3、CF2Cl2、CF3Cl、CF3Brを添加する。
【0018】
これらのスズ化合物を、加熱された透明基板と接触させ、かつ酸化反応と熱分解を起こさせるため、CVD(化学蒸着)法を利用して、スズ化合物の蒸気と酸化ガスを高温の透明基板と接触させるか、さもなければ、スプレイ法を利用して、スズ化合物の溶液を、スプレイヤーを使って高温の透明基板上にスプレイする。
【0019】
スズ化合物の蒸気、酸化ガスなどの混合物を、400〜700℃の温度に、好ましくは600〜680℃の温度範囲の近傍に加熱された透明基板と接触させるCVD法を利用することが好ましい。その結果、2層、すなわち、SnO2層と、そのSnO2層の上面にSnO2:F層が堆積されている2層からなる透明な導電性被膜が堆積される。
【0020】
本発明によれば、SnO2/SnO2:Fの二重層の被膜の厚さは、0.6〜1.5ミクロンである。
【実施例】
【0021】
「Albarino」および/または「Diamant」のタイプのガラス基板に、一連のコーティングを、下記の手法を利用して堆積させた。なお、「Diamant」及び「Albarino」は、それぞれ、超透明タイプのガラス基板および表面レリーフを有するタイプのガラス基板の、本特許願の出願人の登録商標である。
【0022】
単一のSnO2:F層を含む第一シリーズのコーティングを、高温にて(少なくとも600℃を超える温度)、CVD法で、上記したものに基づいた前駆体+空気+H2O+フッ素化合物を分解させることによって堆積させた。
【0023】
TLとヘイズ(H)は、ヘイズメーターで測定した。下記の一連の試験片が得られた。
【0024】
【表1】

【0025】
次に、SnO2/SnO2:F二重層タイプの一連の多層コーティングを、「Albarino」および/または「Diamant」のタイプのガラス基板に、先に述べたのと同じ操作条件で堆積させた(750〜1000 nmの全厚さに対して、それぞれの厚さは25%/75%〜75%/25%である)。下記の試験片が得られた。
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
これらの測定値は、すべての試験片で、顕著に優れた性能(より高いヘイズとTLを示す)が、単一層を使用したときよりも二重層を使用したときに達成されることを示している。この状態は、図1に示すグラフに示されている。
【0029】
第二の試験片の場合、分光光度計で測定して、下記のようなキャリア移動度(mobility)、キャリア密度、ヘイズおよびTLが得られた。これらの測定値は、性能が非常に満足すべきものである(高い移動度、中位の密度、高いTL、高いヘイズ)ことを示している。
【0030】
【表4】

【0031】
第二シリーズのコーティングの試験片(試験片6〜12)の場合、Hすなわちヘイズと光透過率の関係を表す第二の基準を定義することが提案される。図2で明らかなように、第二シリーズの試験片はすべて、座標対(15,82)、(10,84)および(6,85)で定義される曲線の上方 (ハッチング無しの領域)に位置している。
【0032】
得られたヘイズ値に対するドーピングの影響およびヘイズに対する製造温度の影響を示す別の比較実施例を以下に示す(光学測定は、ヘイズメーターを使って実施した)。
【0033】
その結果、下記の第一実施例は、高温T1(600℃を超える温度)で堆積させた通常のSnO2:F層とドーピング無しで製造した同じ層との間の差を示している。
【0034】
【表5】

【0035】
下記の第二実施例は、ヘイズの発生に対する温度の影響を示す。通常の層を、T1より少なくとも30℃高い温度T2で製造した。
【0036】
【表6】

【0037】
ヘイズ値は、T1からT2に変えるとほとんど2倍まで増加する。
【0038】
第三実施例は、高温(600℃を超える温度)で堆積させた厚い層の、ドーパントの流量とヘイズの間の関係を示す。
【0039】
【表7】

【0040】
ドーピングはTLを低下させることが分かるであろう。層のドーピングを行えば行うほど、電荷キャリアによる光吸収率が大きくなる。
【0041】
結論として、層にドーピングを行わないとヘイズが増大する。さらに、温度も、ヘイズを増大する効果を有している。
【0042】
したがって、二重層の戦略において、SnO2副層は、ヘイズに対して有利な状態をつくり出すために使用される。同時に、SnO2副層は、高い光透過率を得るために有利である。SnO2:Fのオーバーレーヤーは、TCOの抵抗/平方を調節するために存在している。
【0043】
ZnO/ZnO:Alの二重層を製造するため、スパッタリング法、特に磁界で強化したスパッタリング法すなわちマグネトロンスパッタリング法および好ましくはスパッタリングチャンバー内に酸素および/または窒素を存在させて行う反応性スパッタリング法によって、少なくとも一つの誘電層を基板上に堆積させる。
【0044】
ZnO層は、ドーピングされた金属からなるカソード、すなわちマイノリティ元素を含有するカソードから得られる。一例として、小比率の、例えばアルミニウムまたはガリウムのような他の金属を含有する亜鉛カソードを使用することが一般的な方法である。制御パラメータは、P=4.0 kW、I=40 A、U=360 V、ガス(アルゴン)=350 sccmである。しかし、ZnO/ZnO:Alの二重層にヘイズをつくりだすには、ZnO第一層に酸エッチング法でテクスチャ加工を行う必要がある。
【0045】
一変形例として、マグネトロンスパッタリング法で、SnO2/SnO2:F二重層の上に続いて、ZnOオーバーレーヤーを堆積させることができる。なお、このオーバーレーヤーは、水素プラズマによるタップに対して防御するための層であり、厚さは10〜50 nm、好ましくは約20 nmである。
【0046】
その結果、本発明によれば、電気抵抗が低く、光透過率が高くかつヘイズ値が高い透明導電性被膜を得ることができる。
【0047】
本発明の一実施態様によれば、基板の他方の面(本発明の二重層で被覆されていない面)に機能を付与することが賢明であろう。
【0048】
したがって、特別の特性を付与することを目的として薄層を基板の表面に堆積させる。ここで、特別の特性とは、例えば、環境の攻撃がどうであれ、基板をできるだけ清浄に保持することを可能となすこと、すなわち表面および外観の特性を経時的に保守すること、および、特に、例えば指紋または大気中に存在する揮発性有機物質のような有機物由来の汚染物質または汚染ダストもしくはススタイプの汚染物質さえも基板の表面上に徐々に堆積するので、どのような汚染物質でも除去し続けながら、洗浄操作の時間間隔を広げることである。
【0049】
現在、有機物質の酸化をひきおこすラジカル反応を適切な波長の放射線の作用下で開始することができる特定の金属酸化物ベースの半導体材料があることが知られている。これらの材料は、一般に、「光触媒」または「光反応」物質と呼称されている。
【0050】
透明(グレージング)機能を有する基板の分野では、顕著な「汚染防止」効果を有しかつ工業規模で製造できる光触媒コーティングを基板上に使用することが知られている。これらの光触媒コーティングは、一般に、少なくとも部分的に結晶化された酸化チタンを包含し、ここで、酸化チタンは、粒子の形にコーティング中に組み込まれており、粒子のサイズは、特に数nm(3または4 nm)〜100 nmの間、好ましくは約50 nmであり、また、これらの粒子は、特にアナターゼ型またはアナターゼ/ルチル型で結晶化されている。
【0051】
酸化チタンは、可視光線または紫外線の作用下で、それらの表面に堆積した有機化合物を分解する半導体に属している。
【0052】
したがって、第一の例示的態様によって、光触媒特性を有するコーティングは、TiO2ナノ粒子および中間細孔(メゾポア)のシリカ(SiO2)結合剤に基づいた溶液から得られる。
【0053】
第二の例示的態様によって、光触媒特性を有するコーティングは、TiO2ナノ粒子および非構造化シリカ(SiO2)結合剤に基づいた溶液から得られる。
【0054】
さらに、光触媒コーティングの態様がどうであれ、酸化チタンの粒子については、少なくとも部分的に結晶化されている酸化チタンが選択される。なぜならば、かかる酸化チタンは、光触媒活性が非晶質の酸化チタンよりはるかに有効であることが示されているからである。酸化チタン粒子は、好ましくは、アナターゼ型、ルチル型またはアナターゼ/ルチル混合型で結晶化されている。
【0055】
コーティングの製造は、そのコーティングが含有する結晶化酸化チタンが、「クリスタリット(crystallite)」すなわち単結晶の形態であるが、平均のサイズが0.5〜100 nm、好ましくは3〜60 nmの範囲にあるようにして実施される。すなわち、その理由は、恐らくこのサイズのクリスタリットは、大きい活性表面積を生成するので、酸化チタンが最適の光触媒作用を有すると考えられるのはこの大きさの範囲内であるからである。
【0056】
光触媒性を有するコーティングは、酸化チタンは別として、特に非晶質または部分的に結晶化された酸化物の形態の少なくとも一種の他のタイプの無機材料、例えば、酸化ケイ素(もしくは酸化ケイ素の混合物)、酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウムまたは酸化アルミニウムを包含していてもよい。また、この無機材料は、それ自体、非晶質のまたは部分的に結晶化された酸化チタンに相当する特定の光触媒作用を有しているので、その光触媒作用がたとえ結晶化TiO2と比べて小さくても、結晶化酸化チタンの光触媒作用に寄与することができる。
【0057】
また、酸化チタンを結晶格子にドーピングして、その格子中に下記の金属元素:ニオブ、タンタル、鉄、ビスマス、コバルト、ニッケル、銅、ルテニウム、セリウムおよびモリブデンのうちの少なくとも一種を挿入することによって、電荷キャリアの数を増加することもできる。
【0058】
また、このドーピングは、酸化チタンの表面だけで、さもなければ全コーティングについてドーピングして実施してもよく、ここで、表面ドーピングは、酸化物または金属塩の層のコーティングの少なくとも一部分を被覆することによって実施され、また、金属は、鉄、銅、ルテニウム、セリウム、モリブデン、バナジウムおよびビスマスから選択される。
【0059】
最後に、酸化チタン、または酸化チタンを含むコーティングの少なくとも一部分を、白金、ロジウムもしくは銀のタイプの薄層の形態の貴金属で被覆しながら、光触媒反応の収率および/または速度を増大することによって、光触媒作用を強化させてもよい。
【0060】
また、光触媒性を有するコーティングは、特に結合剤が無機結合剤である場合、顕著な親水性および/または親油性を有する外表面を有し、二つの有意な利点を提供する。すなわち、コーティング上に堆積させることができる親水性によって水で完全に湿潤させることができ、その結果、清浄化が一層容易になる。
【0061】
コーティングは、親水性に加えて、有機汚染物質を「湿潤」させる親油性を呈示してもよい。なお、有機汚染物質は、水の場合と同様に、高度に局在している「着色物(ステイン)」より目視しにくい連続被膜の形態でコーティング上に堆積される傾向がある。したがって、二段階で起こる「有機汚染防止」作用が得られる。第一に、汚染物質は、コーティング上に堆積されると直ちに、殆んど目視できない状態になり、次いで光触媒的に開始されるラジカル分解反応によって徐々に消失することとなる。
【0062】
コーティングの厚さは、数ナノメートルと数ミクロンの間で変えることができ、典型的には50 nm〜10μmの範囲である。
【0063】
実際に、厚さの選択は、各種のパラメータ、特に基板について予想される用途またはコーティング中のTiO2クリスタリットのサイズに依存していてよい。コーティングは、比較的滑らかな表面を有するように選択することもできるが、表面のわずかな粗さは、光触媒として活性の表面積をより大きく増大できるならば、実際に有利である。しかし、粗さが大きすぎると、汚染物質の被覆と蓄積が促進されるので、有害となるであろう。
【0064】
別の実施態様によれば、基板の他方の面に適用される機能は、反射防止コーティングとなるようにし、エネルギー変換の効率を最大にすることを可能としてもよい。
【0065】
本発明による4層の反射防止多層コーティングの幾何学的厚さと屈折率の好ましい範囲を以下に示す。この多層コーティングは、Aと呼称される。
【0066】
-n1および/またはn3は、2.00〜2.30、特に2.15〜2.25、好ましくは2.20に近い。
-n2および/または、n4は1.35〜1.65である。
-e1は、5 nm〜50 nm、特に10 nm〜30 nmまたは15 nm〜25 nmである。
-e2は、5 nm〜50 nm、特に35 nmまたは30 nm未満もしくはそれに等しく、特に10 nm〜35 nmである。
-e3は、40 nm〜180 nm、好ましくは45 nm〜150 nmである。
-e4は、45 nm〜110 nm、好ましくは70 nm〜105nmである。
【0067】
反射防止タイプの多層コーティングAの第一層および/または第三層を製造するのに最も適切な材料、すなわち高い屈折率を有する材料は、ケイ素ジルコニウム混合窒化物またはこれらの混合窒化物の混合物に基づいている。一変形例として、これら高い屈折率の層は、ケイ素タンタル混合窒化物またはこれらの混合窒化物の混合物に基づいている。これらの材料はすべて、それらの化学的特性および/または機械的特性および/または電気抵抗特性を改善するため、任意にドーピングされていてもよい。
【0068】
多層コーティングAの第二層および/または第四層を製造するのに最も適切な材料、すなわち低い屈折率を有する材料は、酸化ケイ素、オキシ窒化ケイ素および/またはオキシ炭化ケイ素、さもなければ、そのほか、ケイ素アルミニウム混合酸化物に基づいている。このような混合酸化物は、純粋のSiO2よりもより良好な耐久性、特に化学的耐久性を有する傾向を有している(この例は、ヨーロッパ特許第791 562号に示されている)。これらの2種類の酸化物のそれぞれの比率は、層の屈折率を過剰に増大することなく、耐久性を期待通りに改善するため、調節することができる。
【0069】
この反射防止多層コーティングの好ましい実施態様は、基板/SiN4/SiO2/Si3N4/SiO2の形態であり、種々の厚さ、特に第三と第四の層の厚さを最適に選択して、透過する光がスペクトルの最大部分(すなわち可視光と赤外線)の範囲に入るようにし得るということを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による電極のヘイズ値と光透過率の関係を示すグラフである。
【図2】本発明による電極のヘイズ値と光透過率の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極が組み合わさった透明電極であって、その電極が、ドーピングされていない無機酸化物で構成された第一の透明な導電性層を含み、その第一層が、上記と同じ無機酸化物であるがドーピングされている無機酸化物で構成されている第二の透明な導電性層で被覆されている、特に太陽電池に好適な、特にガラス製の透明基板において、
前記電極が、グラフH(TL)で表されるヘイズ(H)と光透過率(TL)の積であるファクターを有し、かつ該ファクターが、下記の座標対:(15,82)、(10,84)および(6,85)で規定される線の上方に位置することを特徴とする透明基板。
【請求項2】
前記電極が、5%〜25%のヘイズ、好ましくは10%〜20%のヘイズを有することを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項3】
電極の光吸収率に電気表面抵抗を乗じた積が0.6Ω/□未満であることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項4】
ドーピングされていない無機酸化物に基づいた第一層の厚さが150 nm〜900 nmであることを特徴とする請求項1に記載の基板。
【請求項5】
前記第一層が酸化スズ(SnO2)に基づいており、かつ前記第二層がフッ素をドーピングされた酸化スズ(SnO2:F)に基づいていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項6】
前記第一層が酸化亜鉛(ZnO)に基づいており、かつ前記第二層がアルミニウムをドーピングされた酸化亜鉛(ZnO2:Al)に基づいていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板。
【請求項7】
特にアルカリ金属に対するバリヤーとして働く少なくとも一つのバリヤー層を備えており、該バリヤー層が基板と電極の間に挿入されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の基板。
【請求項8】
前記バリヤー層が、下記の化合物:窒化ケイ素もしくはオキシ窒化ケイ素、酸化ケイ素もしくはオキシ炭化ケイ素のうちの少なくとも一種から選択した誘電体に基づいていることを特徴とする請求項7に記載の基板。
【請求項9】
前記バリヤー層が、異なる屈折率を有する少なくとも二つの誘電体層からなる、光学的機能を有する多層コーティングの一部を形成していることを特徴とする請求項7に記載の基板。
【請求項10】
ドーピングされているおよび/またはドーピングされていない前記酸化スズが、高温で、特に600℃を超える温度で、CVD法によって堆積されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の基板。
【請求項11】
酸化亜鉛に基づいた少なくとも一つのオーバーレーヤーを備えており、該オーバーレーヤーが、フッ素をドーピングされた酸化スズ(SnO2:F)に基づいた第二層の上に堆積されていることを特徴とする請求項1〜5および7〜10のいずれか一項に記載の基板。
【請求項12】
前記基板が、「Albarino」(登録商標)または「Diamant」(登録商標)タイプの超透明ガラスであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の基板。
【請求項13】
前記基板の面の1つに、反射防止性または疎水性または光触媒性のタイプの機能を呈する多層が被覆されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の基板。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板の太陽電池の電極としての使用。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の基板を含んでいることを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−509350(P2009−509350A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531754(P2008−531754)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050903
【国際公開番号】WO2007/034110
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】