説明

電極性能評価装置

【課題】非破壊検査であって、電極抵抗及び電極容量について正負電極ごとに精度の高い評価が可能である電極性能評価装置を提供する。
【解決手段】電極性能評価装置は、擬似電池セル本体11と、充放電装置と、電極評価装置と、から構成される。擬似電池セル本体11は、正電極15A,15B、負電極16A,16B、及び基準電極17A,17Bをそれぞれ支持する2つの電極支持体14A,14Bから構成される。各電極支持体は、当接対向配置され、回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った距離が均等となる位置に貫通孔23A,23Bを備え、貫通孔の内部の電極設置部に各電極が接合され、貫通孔に挿入されて電極と充放電装置及び電極評価装置とを接続する電極ターミナル25を有する。第2電極支持体14Bが回転して擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、各電極支持体の貫通孔が繋がり電解液溜めを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極性能評価装置に係り、特にリチウムイオン2次電池等の正負電池電極それぞれの電極抵抗及び電極容量の評価を実施できる電池電極の性能評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ビデオカメラ、ノートパソコン等のポータブル機器やコードレス機器の普及により、これらの機器に電力を供給する電池の高性能化要求が強くなっており、小型且つ軽量で、エネルギ密度が高く、繰り返し充放電が可能な2次電池の需要が特に高まっている。自動車の分野においも、環境問題、資源問題から、2次電池を搭載した電気自動車、ハイブリッド自動車の開発が盛んに行われている。電気自動車等に搭載される高性能2次電池としては、高エネルギ密度で長寿命、且つ安全性にも優れたリチウムイオン電池が挙げられる。
【0003】
リチウムイオン電池等の電池は、正負電池電極及び電解液を主要部材として構成され、それぞれの部材の性能が向上することにより電池全体としての性能が大きく向上してきた。一般的に、電池の研究開発は、これら構成部材ごとに材料設計や構造設計が行われ、性能評価も個別に実施される。研究開発における性能評価は、高性能化或いは性能劣化に関与する因子を解析して最適な材料設計や構造設計を行う上で極めて重要であり、精度の高い評価が常に要求される。正負電池電極についても、構成材料や構造は大きく異なるため、電池電極について精度の高い性能評価を行うためには、電極ごとに切り分けた評価を実施する必要がある。
【0004】
正負電極単位で性能評価を実施する方法としては、大別して、電池セルに測定の基準となる参照電極(必要により補助電極も挿入)を挿入して測定する参照電極法(三電極法)や交流インピーダンス法等の非破壊検査、電池を分解して評価する破壊検査が挙げられる。ここで、リチウムイオン電池等の2次電池電極の性能評価としては、所定の充放電を繰り返した後の劣化レベル(電極抵抗及び電極容量の変化を測定)を評価する耐久性試験がよく行われる。参照電極法は、最も基本的な電気化学測定法であるが、参照電極等を挿入することが困難であり、また、正負電極が存在する電池セルにおいて参照電極を挿入して電極抵抗等を測定しても評価しない他方の電極の影響を完全に排除することはできない。また、交流インピーダンス法は、電池セルに微小な交流信号を印可し、電圧/電流の応答信号から電極の各部位の劣化レベルを推定可能であるが、正負電極のシグナル(抵抗成分)を完全に分離することは困難であり、参照電極法と同様に、他方の電極の影響を完全に排除することはできない。一方、破壊検査で各電極を分解して評価する場合には、他方の電極の影響を排除できるものの、評価に長時間を要し、さらには、以後の耐久性試験を継続できないという課題がある。
【0005】
非破壊検査であり、且つ電極ごとに他の因子の影響をうけることなく評価できる方法が特許文献1に開示されている。特許文献1には、X線コンピュータトモグラフィ(CT)の撮影原理に基づき、2次電池の電極体の積層断面における正極合材層および負極合材層の少なくとも一方の少なくとも1つの領域のCT値を測定するCT値測定工程と、測定して得られたCT値により、二次電池の劣化状態を評価する劣化状態評価工程とを含む2次電池の状態評価方法が開示されている。また、特許文献1には、X線CT画像データによって、電極体の位置、集電体からの電極合材の剥離、崩落、電極どうしの積層間隔のズレ等、電極の積層状態が、手に取るように観察できると述べられている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−203003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の評価方法では、電極の積層状態を非破壊で観察することはできるが、電極性能評価において極めて重要な評価項目である電極抵抗及び電極容量の測定を行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、非破壊検査であって、且つ重要評価項目である電極抵抗及び電極容量について正負電極ごとに精度の高い評価が可能である電極性能評価装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電極性能評価装置は、性能評価対象となる正負電極を支持する少なくとも2つの電極支持体と電極間隙に充填される電解液とを含み、2つの電極支持体の相対位置を変化させることで、擬似セルと電極評価セルとを形成する擬似セル本体、擬似セルを充放電するための充放電装置、及び電極評価セルの電極を評価するための電極評価装置を備え、擬似セル本体は、少なくとも第1正電極及び第1負電極を支持する第1電極支持体と、少なくとも第2正電極及び第2負電極を支持する第2電極支持体と、を有し、2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、第1正電極と第2負電極及び第1負電極と第2正電極がそれぞれ対向して充放電を行う擬似セル配置と、第1正電極と第2正電極及び第1負電極と第2負電極がそれぞれ対向して正負電極の電極抵抗を測定する電極抵抗評価セル配置とを形成することを特徴とする。
【0010】
また、第1及び第2電極支持体は、さらに、正負電極それぞれの電極容量を測定する際に、正負電極の対電極となる第1及び第2基準電極をそれぞれ有し、2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、擬似セル配置及び電極抵抗評価セル配置に加えて、第1正電極と第2基準電極、第1負電極と第2基準電極、第1基準電極と第2正電極、及び第1基準電極と第2負電極がそれぞれ対向して正負電極の電極容量を測定する電極容量評価セル配置を形成することが好ましい。
【0011】
また、各電極支持体は、相対的に回転可能な円盤形状であって、円盤面が対向して配置されると共に、円盤面上に回転の中心となる回転中心が形成され、回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った電極間距離が均等となる位置に各電極が支持或いは固定され、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、その相対位置を変化させることにより、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、対向配置される各電極の間隙に電解液を充填するための電解液溜めが形成されることが好ましい。
【0012】
また、各電極支持体は、円盤面同士が当接して対向配置され、回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った距離が均等となる位置に電極支持体を貫通する貫通孔を備え、貫通孔の内部に電極を支持又は固定する貫通孔電極設置部材が設けられ、貫通孔に挿入され貫通孔電極設置部材に支持又は固定された電極に当接して、電極と充放電装置及び電極評価装置の少なくとも一方とを接続する電極ターミナルを有し、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、各電極支持体の貫通孔同士が繋がって電解液溜めを形成し、さらに、少なくとも1つの電極支持体は、電解液溜めに電解液を充填するための電解液充填路を有することが好ましい。
【0013】
また、電解液充填路は、内部円盤面から電極支持体を貫通して形成された電解液を導入するための電解液導入路及び余剰の電解液を導出するための電解液導出路と、内部円盤面上に形成され、一端が電解液導入貫通路と繋がり各貫通孔を連通して他端が電解液導出貫通路に繋がる電解液流通溝と、から構成され、電解液溝が形成された一方の電極支持体の円盤面と他方の電極支持体の円盤面とが当接することにより電解液流通路が形成され、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、電解液導入路から電解液流通路を通って各電解液溜めに電解液が充填され、余剰の電解液は電解液導出路から導出されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る電極性能評価装置によれば、擬似セル本体が、少なくとも第1正電極及び第1負電極を支持する第1電極支持体と、少なくとも第2正電極及び第2負電極を支持する第2電極支持体と、を有し、2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、擬似セル配置と、電極抵抗を測定する電極抵抗評価セル配置とを形成するので、擬似セル本体を分解することなく、即ち非破壊検査によって、重要項目である電極抵抗の評価を正負電極ごとに高い精度で実施することができる。
【0015】
また、第1及び第2電極支持体は、さらに、正負電極それぞれの電極容量を測定する際に、正負電極の対電極となる第1及び第2基準電極をそれぞれ有し、2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、正負電極それぞれの電極容量を測定する電極容量評価セル配置を形成する構成とすれば、非破壊検査によって、重要項目である電極容量の評価を正負電極ごとに高い精度で実施することができる。
【0016】
また、各電極支持体は、相対的に回転可能な円盤形状であって、円盤面が対向して配置されると共に、円盤面上に回転の中心となる回転中心が形成され、回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った電極間距離が均等となる位置に各電極が支持或いは固定され、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させることにより対向配置される各電極の間隙に電解液を充填するための電解液溜めが形成される構成とすれば、電極支持体を回転させるだけで、充放電サイクル及び性能評価を繰り返し実施することができる。また、1つの装置において複数の性能評価を同時に実施することができ、耐久性試験等の電極性能評価を簡便且つ迅速に行うことが可能になる。
【0017】
また、各電極支持体は、円盤面同士が当接して対向配置され、回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った距離が均等となる位置に電極支持体を貫通する貫通孔を備え、貫通孔の内部に電極を支持又は固定する貫通孔電極設置部材が設けられ、貫通孔に挿入され貫通孔電極設置部材に支持又は固定された電極に当接して、電極と充放電装置及び電極評価装置の少なくとも一方とを接続する電極ターミナルを有し、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させることにより各電極支持体の貫通孔同士が繋がって電解液溜めを形成し、さらに、少なくとも1つの電極支持体は、電解液溜めに電解液を充填するための電解液充填路を有する構成とすれば、簡素化した装置を実現でき、電極性能評価の簡便性及び迅速性をさらに向上させることができる。
【0018】
また、電解液充填路は、内部円盤面から電極支持体を貫通して形成された電解液を導入するための電解液導入路及び余剰の電解液を導出するための電解液導出路と、内部円盤面上に形成され、一端が電解液導入貫通路と繋がり各貫通孔を連通して他端が電解液導出貫通路に繋がる電解液流通溝と、から構成され、電解液溝が形成された一方の電極支持体の円盤面と他方の電極支持体の円盤面とが当接することにより電解液流通路が形成される構成とすれば、電解液溜めへの電解液の充填操作が極めて容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図面を用いて本発明に係る実施の形態につき以下詳細に説明する。以下においては、電極性能評価装置は、2次電池電極の性能評価装置として説明するが、電池に限定されず、充放電が可能である電気二重層キャパシタ等のキャパシタ電極の性能評価にも使用することができる。
【0020】
図1は、2次電池電極の性能評価装置の構成を示すブロック図である。図2は、擬似電池セル本体を構成する2つの電極支持体が分離された状態を示す図である。図3は、図2において電極支持体が当接対向配置された状態を示す図である。図4は、図3の要部断面を示す模式図である(ストッパ33省略)。
【0021】
図1に示すように、2次電池電極の性能評価装置10(以下、性能評価装置10とする)は、擬似電池セル本体11を主要構成要素として備える。この擬似電池セル本体11とは、電池セル(単電池)のモデル(擬似電池セル)及び電極の評価を行うための電極評価セルを形成する部材である。また、性能評価装置10は、電池電極の性能評価を実施する上で不可欠な構成要素である充放電装置12及び電極評価装置13が備える。
【0022】
性能評価装置10が適用できる電池、即ち性能評価装置10の擬似電池セル本体11によって形成される電池は、充放電可能な2次電池であることが好ましい。具体的には、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、密閉型ニカド電池、ニッケル水素電池、ニッケル亜鉛電池、金属リチウム電池等が挙げられる。以下においては、評価対象電極として、主にリチウムイオン電池の正負電極を例に挙げて説明するが、評価対象はこれに限定されるものではない。
【0023】
性能評価装置10の評価対象である電極は、一般的に、アルミニウム箔等からなる集電体(電極基材)と、集電体の表面に形成された電極活物質層(本明細書及び図面では、電極活物質層を電極と称して説明する場合がある)と、から構成される。電極活物質層には、微粒子状の活物質と、導電性付与材(アセチレンブラック等)と、それらを結着するバインダ樹脂(ポリフッ化ビニリデン等)と、を含んでいる。リチウムイオン電池では、正電極活物質として、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム化合物が使用され、負電極活物質には、グラファイト等のカーボン材料が使用される。
【0024】
性能評価装置10によって評価される正負電極の形状やサイズとしては、本発明の構成上特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。例えば、Li−ion電池ならば、正極に三元系やオリビンを用いることができ、負極にLiメタル、フッ素系の材料を用いてもよい。また、電極材料も任意に設定できる。液式の電解液を有する電池全てに適用を広げることもできる。実際の電池形態は、例えば、シート状の正電極(正電極シート)と、負極シートとを、多孔質ポリオレフィンシート等のセパレータを介して重ね合わせ、これを捲回してなる捲回電極体として、電解液とともに適当な容器に収容したものである。従って、正負電極の形状としては、実際の電池形態に即した形状であるシート形状(薄膜形状)が好ましい。なお、後述する電極容量等は電極の単位面積或いは単位重量あたりの数値として規定されるため、評価精度を向上させるためには、電極のサイズ(面積、厚み、重量等)を正確に測定しておく必要がある。
【0025】
性能評価装置10によって評価できる項目は、電極抵抗(単極抵抗)及び電極容量(単極容量)であり、電極性能評価において極めて重要な評価項目である。一般的に、リチウムイオン電池は、充放電を繰り返すと、電極抵抗の上昇により電池の使用範囲が狭くなったり、電極容量が低下する。抵抗上昇及び容量低下の主な原因は、充放電の繰り返しによって負極表面にリチウム含有化合物が徐々に堆積して、可動のリチウムイオン量が減少することである。従って、電極容量(=電池容量)の低下を引き起こし、更に負極表面に不動態被膜が形成されることにより電極抵抗が上昇して、電池出力も大幅に低下することになる。このように、リチウムイオン電池において、充放電特性は極めて重要な性能であって、充放電を繰り返した後に電極の劣化状態を評価する耐久性試験は重要な性能評価試験であり、性能評価装置10は、この耐久性試験に好適な装置である。
【0026】
充放電装置12としては、上記擬似電池セルを繰り返し充放電できる装置であれば、特に限定されることなく使用することができ、公知の充放電装置、例えば、ポテンショスタットやガルバノスタットを挙げることができる。ポテンショスタット(電位制御)とガルバノスタット(電流制御)の機能を一体化したポテンショ/ガルバノスタット(マルチスタット1470E型;ローラトロン社製等)を使用することもできる。
【0027】
電極評価装置13としては、上記電極評価セルにおいて電極抵抗及び電極容量を測定できる装置であれば、特に限定されることなく使用することができる。例えば、電極容量の測定では、充放電装置12と同様のポテンショ/ガルバノスタットを使用することができる。また、電極抵抗の測定では、インピーダンスアナライザ(周波数応答解析器;FRA)を使用することができ、一般的には、FRAをポテンショスタットに接続して使用される。なお、電極評価において、定電圧又は定電流充放電による測定だけでなく、サイクリックボルタンメトリ法やパルス法等の測定手法を採用することもできる。
【0028】
図1に示すように、擬似電池セル本体11は、2つの電極支持体14A(第1電極支持体14Aとする)及び電極支持体14B(第2電極支持体14Bとする)から構成され、各電極支持体14には、評価対象である電池電極が支持或いは固定されている。ここで、擬似電池セル本体11は、3つ以上の電極支持部材14を有することもできるが、評価操作の簡素化等の観点から2つであることが好ましく、以下では、電極支持体14は2つとして説明する。擬似電池セル本体11は、上記のように、電池セルのモデルである擬似電池セル及び電極評価セルを形成する部材であって、これらのセルは、2つの電極支持体14によって形成される。なお、電極を支持するとは、取り外し可能に設置されていること、電極を固定するとは、取り外しできない或いは取り外しが極めて困難であることを大凡意味するが、評価対象である電極等は、耐久性試験が終了すると交換されるのが一般的であるから、電極は支持されていることが好ましい。
【0029】
各電極支持体14には、少なくとも1つずつの正電極15及び負電極16が支持される。各電極支持体14が正電極15及び負電極16を有する場合、2つの電極支持体14の相対位置を変化させることにより、第1正電極15Aと第2負電極16B及び第1負電極16Aと第2正電極15Bがそれぞれ対向して充放電を行う擬似電池セル配置と、第1正電極15Aと第2正電極15B及び第1負電極16Aと第2負電極16Bがそれぞれ対向して正負電極それぞれの電極抵抗を測定する電極抵抗評価セル配置とを形成することができる。従って、性能評価装置10によれば、擬似電池セル本体11を分解することなく、耐久性試験において最も重要な評価項目である電極抵抗の測定が可能になる。このように、擬似電池セル本体11を分解する必要がないため、電極抵抗評価の前後で、電極間距離や電極設置圧力等の条件(電池セルの状態)が変化することなく、同じ条件を維持して耐久性試験を継続することが可能である。
【0030】
図1に示すように、各電極支持体14は、正電極15及び負電極16に加えて、電極容量測定の際の基準となる電極である基準電極17を支持或いは固定することが好ましい。具体的には、第1電極支持体14Aは、評価対象となる第1正電極15A及び第1負電極16A、評価基準となる第1基準電極17Aを有する。同様に、第2電極支持体14Bも第1正電極15A、第1負電極16A、第1基準電極17Aを有する。各電極支持体14が基準電極17を有する場合、2つの電極支持体14の相対位置を変化させることにより、擬似電池セル配置及び電極抵抗評価セル配置に加えて、第1正電極15Aと第2基準電極17B、第1負電極16Aと第2基準電極17B、第1基準電極17Aと第2正電極15B、及び第1基準電極17Aと第2負電極16Bがそれぞれ対向して正負電極それぞれの電極容量を測定する電極容量評価セル配置を形成することができる。従って、擬似電池セル本体11を分解することなく、耐久性試験において重要な評価項目である電極容量の測定が可能になる。ここで、基準電極17とは、上記のように、電極容量測定の際に測定の基準となる電極であって、リチウムイオン電池では、リチウム金属からなる基準電極を使用することが好ましい。
【0031】
なお、各電極支持体14は、4つ以上の電極を支持することもできる。例えば、正電極15、負電極16、基準電極17を2つずつ支持することができ、また、第1電極支持体14Aは、2つの正電極15と1つの負電極16を支持し、第2電極支持体14Bは、1つの正電極15と2つの負電極16を支持するように、電極支持体14によって異なる電極の組み合わせとすることもできる。さらに、電極支持体14によって支持する電極の数を変えることもできるが、性能評価の効率向上の観点からは支持する電極の数は同数であることが好ましい。以下では、擬似電池セル本体11を構成する各電極支持体14に支持或いは固定される電極数は同数として説明する。
【0032】
また、擬似電池セル配置及び電極評価セル配置を形成して電極が対向配置されるときに、各電極間隙には電解液が充填される電解液溜め18が形成される。擬似電池セル配置の電解液溜め18(電極間隙)に電解液が充填されると擬似電池セルが完成し、電極評価セル配置の電解液溜め18に電解液が充填されると電極評価セルが完成する。ここで、電解液としては、本発明の構成上特に限定されず、公知の電解液を使用することができる。リチウムイオン電池では、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)等の有機溶媒に、溶質(電解質)として6フッ化リン酸リチウムや4フッ化ホウ酸リチウム等を添加した有機電解液を用いることができる。
【0033】
擬似電池セル本体11を構成する各電極支持体14は、上記のように、評価対象及び評価基準となる各電極を支持或いは固定する機能を有し、さらに、電極支持体14の少なくとも一方が動いて相対位置を変化させる機能を有することが必要である。
【0034】
電極支持体14の形態としては、各電極を支持或いは固定することができ、相対的に移動可能であれば、種々の形態を採用することが可能であり、例えば、矩形の板状形状であって上下或いは左右にスライドする形態、円筒形状や円盤形状であって回転する形態等が挙げられる。このような形態のうち、操作の簡素化や評価の迅速化等の観点から、円盤形状であって回転する形態であることが好ましい。
【0035】
円盤形状の各電極支持体14は、相対位置を変化できる必要があり、上記のように、相対的に回転することにより相対位置を変化させることが好ましい。具体的には、各電極支持体14は、その円盤面が対向するように配置されて擬似電池セル本体11が構成する。そして、各電極支持体14は、対向配置された円盤面上の中央部に相対的な回転動作の中心となる回転中心を有する。
【0036】
各電極支持体14は、上記回転中心から等距離の円周上であって、且つ円周方向に沿った距離が均等となる位置に各電極を支持或いは固定する。即ち、回転中心が重なるように各電極支持体14の円盤面を対向配置したとき(必要により回転操作を加える)には、各電極支持体14に支持或いは固定された全ての電極は対向することになる。このように電極を配置すると、擬似電池セル配置及び電極評価セル配置を形成することが容易になり、耐久性試験の簡素化、迅速化が促進される。
【0037】
各電極支持体14の円盤面が対向配置される際には、所定の間隔を空けて配置する、或いは円盤面同士を当接対向配置することが可能である。所定の間隔を空けて対向配置する場合には、例えば、電解液溜め18を形成するアダプタを挟み込むことができる。また、電極支持体14が対向配置されることにより各支持体に支持される電極同士は接触しないので、電極支持体14の間に、一般的な電池の構成部材であるセパレータを設ける必要はない。なお、各電極支持体14の配置形態としては、図3に示すように、円盤面同士を当接対向配置する形態が好ましい。
【0038】
図2では、円盤形状の2つの電極支持体14から構成される擬似電池セル本体11を示している。各電極支持体14には、正電極15、負電極16、基準電極17が支持されており、上述のように、電極抵抗及び電極容量の評価を行うことが可能である。図3は、各電極支持体14の円盤面同士が当接対向配置された状態であって、第1電極支持体14Aの側から見た図である。以下では、主に円盤面同士を当接対向配置した形態について説明する。
【0039】
ここで、電極支持体14に支持される電極配置は、上記のように、回転中心から等距離の円周上であって、且つ円周方向に沿った距離が均等となる位置であるが、耐久性試験の迅速化等の観点から、電極の配置順序を特定することが好ましい。具体的には、図2に示すように、第1電極支持体14Aでは、120°間隔で電極が支持され、基準電極17Aから時計回りに、負電極16A、正電極15Aとなっている。同じく、第2電極支持体14Bでも、基準電極17Bから時計回りに、負電極16B、正電極15Bとなっている。即ち、各電極支持体14には、同じ順序で電極を取り付けることが好ましい。このような電極配置にすると、図3に示すように、2つの電極支持体14を当接対向配置した場合に、第1正電極15Aと第2負電極16B及び第1負電極16Aと第2正電極15Bがそれぞれ対向する2つの擬似電池セル配置を形成することができる。従って、長時間を要する充放電過程を同時に行うことができる。
【0040】
図2に示すように、擬似電池セル本体11は、各電極支持体14をセットする固定台19を備えることが好ましい。固定台19は、円盤形状である電極支持体14と同一曲率のハーフパイプ構造を有し、電極支持体14を立てた状態で安定に維持することができる。第1電極支持体14Aは、動かないように螺子20で固定されており、第2電極支持体14Bは、固定台19に固定されず回転可能にセットされる。
【0041】
各電極支持体14は、上記のように、円盤面の中央に回転中心を有することが好ましい。図2に示すように、第1電極支持体14Aの回転中心には回転軸21を備え、第2電極支持体14Bの回転中心には、回転軸21が挿入される回転軸受け孔22を設けることができる。このような構成とすれば、電極支持体14のセッティングが容易になり、さらに耐久性試験の簡素化、迅速化が促進される。また、各電極支持体14には、当接される円盤面の密着性を向上させるために、各種ベアリング、各種シーリング材(Oリング等)を設けることができる。
【0042】
図2〜図4に示すように、各電極支持体14には、回転中心(回転軸21、回転軸受け孔22)から等距離の円周上であって、且つ円周方向に沿った距離が均等となる位置に電極支持体14を貫通する貫通孔23が形成される。貫通孔23は、各電極の支持部材を設けるため、電解液溜め18を形成するため、後述する電極ターミナル25を挿入するために設けられたものである。なお、貫通孔23の孔の形状は、本発明の構成上特に限定されないが、以下では円形状として説明する。
【0043】
貫通孔23の内部には、貫通孔電極設置部24(以下、電極設置部24とする)が設けられる。各電極は、貫通孔23及び電極設置部24の形状に対応した薄膜円形状に成形され、電極設置部24に接着剤等を使用して接合される。電極設置部24は、貫通孔23の内径面上から張出したリング形状であり、電極支持体14の製造において一体形成することができる。なお、薄膜電極は、図4等に示すように、電極ターミナル25との接続性向上等の観点から、電極設置部24の外側のリング面に接合されることが好ましい。ここで、当接対向配置する円盤面を内部円盤面、他方の円盤面を外部円盤面とし、電極設置部24の外側のリング面とは、外部円盤面側のリング面を意味する。
【0044】
図4に示すように、電極設置部24は、当接する円盤面(内部円盤面)から所定の距離を有する位置に設けられる。この所定距離を変更することにより、電極間距離を調整することができ、電解液溜め18の容量も変化する。即ち、内部円盤面からの距離を長くするほど電極間距離が長くなり、電解液溜め18のサイズは大きくなる。従って、所定距離は、電極間距離、電解液溜め18のサイズを考慮して設定することができ、後述する電解液流通溝29を備える場合には、少なくとも電解液流通溝29を形成することができる距離とすることが好ましい。
【0045】
擬似電池セル本体11は、貫通孔23に外側から挿入され電極設置部24に接合された各電極に当接して、電極と充放電装置12及び電極評価装置13(以下、充放電評価装置とする)とを接続する電極ターミナル25を備える。電極ターミナル25は、電極と充放電評価装置とを電気的に接続する機能を有する部材であると共に、電極を安定に支持するため機能も有する。電極ターミナル25は、図2に示すように、円筒形状であって、円筒の直径は貫通孔23の内径よりもやや小さく設計されている。従って、図4に示すように、電極ターミナル25は、貫通孔23に挿入でき、電極は、電極設置部24と電極ターミナル25によって挟持され、安定的に支持される。電極ターミナル25は、電極を構成する集電体34に圧接して、擬似電池セルの充放電等を可能にする。
【0046】
図3に示すように、貫通孔23に挿入され、電極に圧接される電極ターミナル25を、ストッパ33によって固定することができる。このように、ストッパ33によって電極ターミナル25が固定されるので、充放電過程等において導電性が低下する等のおそれがなく、同じ条件(電極設置圧力等)を維持して耐久性試験を継続することが可能である。また、耐久性試験終了後には、ストッパ33を外すことにより電極ターミナル25を引き抜いて評価対象電極の交換を容易に行うことができる。
【0047】
第2電極支持体14Bを回転させて、擬似電池セル配置及び電極評価セル配置を形成するとき、図4に示すように、各電極支持体14の貫通孔23同士が繋がって電解液溜め18が形成される。即ち、貫通孔23の一部が電解液溜め18となる。なお、電解液溜め18のサイズは、上述のように、電極間距離、即ち電極設置部24の位置を調整することによって決定される。
【0048】
第2電極支持体14Bは、上記のように、回転可能であって、回転操作の際に把持される操作レバー26を備える。また、充放電過程等において、第2電極支持体14Bが回転しないように、固定台19には、操作レバー26を固定するための操作レバー固定部27を設けることができる。
【0049】
電極支持体14の構成材質としては、絶縁性、耐薬品性、加工性等が良好な材料であることが好ましく、有機化合物(樹脂)、金属酸化物や金属窒化物等の無機化合物、絶縁性が確保できれば金属材料も適用することができる。これらのうち、絶縁性や加工性等の観点から、樹脂材料であることが好ましく、その中でも耐薬品性の高い樹脂、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等であることが好ましい。
【0050】
電極支持体14には、電解液溜め18に電解液を充填する電解液充填路が形成される。電解液充填路は、擬似電池セル本体11を分解することなく、電解液溜め18に電解液を供給するための流路である。加工コストの低減や電解液充填操作の簡素化等の観点から、電解液充填路は、電極支持体14の一方に設けることが好ましく、具体的には、固定台19に固定された第1電極支持体14Aに設けることが好ましい。
【0051】
第1電極支持体14Aに設けられる電解液充填路は、図2に示すように、電解液導入路28と、電解液流通溝29と、電解液導出路30と、から構成されることが好ましい。電解液導入路及28及び電解液導出路30は、内部円盤面から電極支持体14Aを貫通して形成され、前者が電解液を導入するための流路、後者が余剰の電解液を導出するための流路である。電解液流通溝29は、内部円盤面上に形成され、一端が電解液導入路28と繋がり各貫通孔23を連通して他端が電解液導出路30に繋がる溝である。電解液流通溝29は、第1及び第2電極支持体14A、14Bが当接対向配置(図3、図4)されることにより、第2電極支持体14Bの内部円盤面により溝が電解液を漏れることなく流通できる流通路(以下、電解液流通路とする)となり、電解液は、電解液導入路28から電解液流通路を通って、各電解液溜め18に電解液が充填され、余剰の電解液は電解液導出路30から導出される。
【0052】
第1電極支持体14Aは、電解液導入路30の外部開口部に、シリンジ31を設置するシリンジ取付け部32を備えることができる。電解液の充填が終了した場合には、上記のように、電解液導出路30から余剰の電解液が排出され、シリンジ31に供給される。従って、シリンジ31に電解液が溜まると各電解質溜め18に電解液の充填が完了したことが判る。シリンジ31には、目盛りが付いており、充填された電解液量、また、充放電時におけるガス発生量を定量することができる。
【0053】
上記構成の性能評価装置10(図2〜図4に示す性能評価装置10)による電極性能評価について、図5を加えて以下詳細に説明する。図5は、2次電池電極の性能評価の手順を示すフローチャートであり、電極性能評価項目は、電極抵抗及び電極容量である。
【0054】
まず初めに、各電極支持体14に、評価対象である正電極15及び負電極16と、電極容量評価の基準となる電極である基準電極17と、を取り付ける(S10)。電極の取り付け順序としては、上述のように、各電極支持体14において同じ順序であることが好ましい。同じ順序となるように各電極支持体14の電極設置部24に電極を接合した後、貫通孔23に電極ターミナル25を挿入して、電極ターミナル25を電極の集電体34接触させる。この状態において、電極ターミナル25は、ストッパ33によって固定されて、電極と充放電評価装置との電気的接続を確保できると共に、電極を安定して支持することができる。
【0055】
各電極及び電極ターミナル25が固定された各電極支持体14を、図3に示すように当接対向配置する(S11)。具体的には、第1電極支持体14Aを固定台19に螺子20で固定した後、第1電極支持体14Aの回転軸21に、第2電極支持体14Bの回転軸受け孔22を嵌め込んで、第2電極支持体14Bを固定台19にセットする。この状態において、各電極支持体14の内部円盤面は隙間なく当接(密着)されている。なお、第2電極支持体14Bは、固定台19に螺子止めされず、回転可能に設置されている。第2電極支持体14Aの操作レバー26が図3において左側、即ち操作レバー26が操作レバー固定部27に嵌る位置まで回転させることにより、擬似電池セル配置が形成される。即ち、第1正電極15Aと第2負電極16B及び第1負電極16Aと第2正電極15Bがそれぞれ対向した状態である。
【0056】
S11において各電極支持体14が当接対向配置されることにより形成された電解液溜め18に電解液を充填する(S12)。電解液の充填は、電解液導入路28に電解液供給用のポンプ等を接続して行う。電解液導入路28から電解液流通路(電解液流通溝29)を通って各電解液溜め18に電解液が充填され、余剰の電解液は電解液導出路30から排出される。その際に、シリンジ31によって充填された電解液量を確認することができる。S10〜S12において、擬似電池セルが構成され、耐久性試験の準備が完了する。
【0057】
耐久性試験として、まず、擬似電池セルの充放電を実施する(S13)。具体的には、電極ターミナル25を介して電極と接続された充放電評価装置を所定のパターン(例えば、定電流充放電)で作動させて充放電サイクルを実行する。
【0058】
所定の充放電サイクルが終了したか否かを判定する(S14)。所定の充放電サイクルとしては、一般的に、数千〜数万回のサイクルであり、充放電評価装置は、設定された所定のサイクル数に達するまで充放電を繰り返し実行する。
【0059】
所定の充放電サイクルが終了した場合には、第2電極支持体14Bを図3において右方向に120°回転させて、第1正電極と15Aと第2正電極15Bとが対向配置された正電極15の電極抵抗評価セルを形成する。また、第1負電極16Aと第2基準電極17B、第2負電極16Bと第1基準電極17Aとが対向した負電極16の電極容量評価セルを形成する(S15)。なお、S10における電極配置の順序を変更すれば、セル形成の順序を変更することができる。
【0060】
S15によって形成された電極評価セルに基いて、正電極15の電極抵抗評価、及び負電極16の電極容量評価が実施される(S16)。所定の電極評価が終了するまで評価が継続される(S17)。
【0061】
所定の電極評価が終了した場合には、第2電極支持体14Bを右方向にさらに120°回転させて、第1負電極16Aと第2負電極16Bとが対向配置された負電極16の電極抵抗評価セルを形成する。また、第1正電極15Aと第2基準電極17B、第2正電極15Bと第1基準電極17Aとが対向した正電極16の電極容量評価セルを形成する(S18)。
【0062】
S18によって形成された電極評価セルに基いて、負電極16の電極抵抗評価、及び正電極15の電極容量評価が実施される(S19)。所定の電極評価が終了するまで評価が継続される(S20)。
【0063】
S13〜S20が擬似電池セルの充放電から性能評価までのワンサイクル、即ち耐久性試験のワンサイクルを示す手順である。第2電極支持体14Aを元の状態(操作レバー26が操作レバー固定部27に嵌る位置まで)まで回転させることにより、再び擬似電池セルが形成され、充放電サイクルを実行することができる。従って、S13〜S20のサイクルを繰り返すことができ、継続して耐久性試験を実施することが可能になる。
【0064】
また、性能評価装置10によれば、擬似電池セル本体11を分解する必要がないため(即ち、非破壊検査である)、電極抵抗評価の前後で、電極間距離や電極設置圧力等の条件(電池セルの状態)が変化することなく、同じ条件を維持して耐久性試験を継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】2次電池電極の性能評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】擬似電池セル本体を構成する2つの電極支持体が分離された状態を示す図である。
【図3】図2において電極支持体が当接対向配置された状態を示す図である。
【図4】図3の要部断面を示す模式図である。
【図5】2次電池電極の性能評価の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0066】
10 電池電極の性能評価装置、11 擬似電池セル本体、12 充放電装置、13 電極評価装置、14 電極支持体、15 正電極、16 負電極、17 基準電極、18 電解液溜め、19 固定台、20 螺子、21回転軸、22 回転軸受け孔、23 貫通孔、24 貫通孔電極設置部、25 電極ターミナル、26 操作レバー、27 操作レバー固定部、28 電解液導入路、29 電解液流通溝、30 電解液導出路、31 シリンジ、32 シリンジ取付け部、33 ストッパ、34 集電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
性能評価対象となる正負電極を支持する少なくとも2つの電極支持体と電極間隙に充填される電解液とを含み、2つの電極支持体の相対位置を変化させることで、擬似セルと電極評価セルとを形成する擬似セル本体、擬似セルを充放電するための充放電装置、及び電極評価セルの電極を評価するための電極評価装置を備え、
擬似セル本体は、
少なくとも第1正電極及び第1負電極を支持する第1電極支持体と、
少なくとも第2正電極及び第2負電極を支持する第2電極支持体と、
を有し、
2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、第1正電極と第2負電極及び第1負電極と第2正電極がそれぞれ対向して充放電を行う擬似セル配置と、第1正電極と第2正電極及び第1負電極と第2負電極がそれぞれ対向して正負電極の電極抵抗を測定する電極抵抗評価セル配置とを形成することを特徴とする電極性能評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極性能評価装置において、
第1及び第2電極支持体は、
さらに、正負電極それぞれの電極容量を測定する際に、正負電極の対電極となる第1及び第2基準電極をそれぞれ有し、
2つの電極支持体の相対位置を変化させることにより、擬似セル配置及び電極抵抗評価セル配置に加えて、第1正電極と第2基準電極、第1負電極と第2基準電極、第1基準電極と第2正電極、及び第1基準電極と第2負電極がそれぞれ対向して正負電極の電極容量を測定する電極容量評価セル配置を形成することを特徴とする電極性能評価装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電極性能評価装置において、
各電極支持体は、
相対的に回転可能な円盤形状であって、円盤面が対向して配置されると共に、円盤面上に回転の中心となる回転中心が形成され、
回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った電極間距離が均等となる位置に各電極が支持或いは固定され、
2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、その相対位置を変化させることにより、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、対向配置される各電極の間隙に電解液を充填するための電解液溜めが形成されることを特徴とする電極性能評価装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電極性能評価装置において、
各電極支持体は、
円盤面同士が当接して対向配置され、
回転中心から等距離の円周上であって円周方向に沿った距離が均等となる位置に電極支持体を貫通する貫通孔を備え、
貫通孔の内部に電極を支持又は固定する貫通孔電極設置部材が設けられ、貫通孔に挿入され貫通孔電極設置部材に支持又は固定された電極に当接して、電極と充放電装置及び電極評価装置の少なくとも一方とを接続する電極ターミナルを有し、
2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、各電極支持体の貫通孔同士が繋がって電解液溜めを形成し、
さらに、少なくとも1つの電極支持体は、電解液溜めに電解液を充填するための電解液充填路を有することを特徴とする電極性能評価装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電極性能評価装置において、
電解液充填路は、
内部円盤面から電極支持体を貫通して形成された電解液を導入するための電解液導入路及び余剰の電解液を導出するための電解液導出路と、
内部円盤面上に形成され、一端が電解液導入貫通路と繋がり各貫通孔を連通して他端が電解液導出貫通路に繋がる電解液流通溝と、
から構成され、
電解液溝が形成された一方の電極支持体の円盤面と他方の電極支持体の円盤面とが当接することにより電解液流通路が形成され、2つの電極支持体の少なくとも一方を回転させて、擬似セル配置及び電極評価セル配置を形成するときに、電解液導入路から電解液流通路を通って各電解液溜めに電解液が充填され、余剰の電解液は電解液導出路から導出されることを特徴とする電極性能評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−40406(P2010−40406A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203862(P2008−203862)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】