説明

電極触媒および製造方法

貴金属触媒およびこの触媒を製造する方法が提供される。この触媒は、燃料電池などの用途において有用である。この触媒は、従来の貴金属触媒と比べて、低減された触媒粒子凝集を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属触媒およびこの触媒を製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は白金ベースの貴金属触媒に関する。この触媒は、アノードまたはカソード電極触媒として有用である。この電極触媒は燃料電池において有用である。この電極触媒を製造する方法は、部分的にコロイド化学に依存する。
【背景技術】
【0002】
白金を含む貴金属電極触媒は、燃料電池の用途に広く使用される。例えば、ルテニウムと白金の二元触媒は、いくつかの反応において相乗効果を有すると報告されている。例えば、白金−ルテニウム触媒の場合、純粋の白金の場合に比べて10倍大きい特有の活性が報告されている(非特許文献1)。ワタナベらは、白金/ルテニウム触媒を製造する方法を開示している。この方法では、コロイド分散系において、溶液1リットルあたり約0.7グラムのコロイド金属(白金、または白金とルテニウム)の触媒濃度を有するクラスタが製造される。貴金属触媒製造のその他の方法には、酸処理した炭素担体を使用することが含まれる。かかる触媒は、電気化学電池において有用である。電気化学電池は、一般に、電解液で隔てられたアノード電極およびカソード電極を含む。電気化学電池の良く知られている用途は、燃料電池(燃料および酸化体を電気エネルギーに変換する電池)用のスタックであり、それは、電解質としてプロトン交換膜(以下「PEM」)を使用する。このような電池では、水素などの反応物または還元流体がアノード電極に供給され、酸素または空気などの酸化体がカソード電極に供給される。水素は、電気化学的に反応して、アノード電極の表面で水素イオンおよび電子を生成する。電子は、外部負荷回路に導かれ、次いでカソード電極に戻され、一方、水素イオンは、電解質を経由してカソード電極に移動し、そこで、水素イオンは、酸化体および電子と反応して、水を生成し、熱エネルギーを放出する。
【0003】
最も効率のよい燃料電池は、燃料として純粋水素、酸化体として酸素を使用する。純粋水素の使用は、相対的に高い原価および貯蔵について考慮すべき点を含む周知の欠点を有する。それゆえに、燃料として純粋水素以外のものを使用して燃料電池を作動させる試みが行われてきた。
【0004】
有機物/空気燃料電池では、メタノール、ホルムアルデヒド、またはギ酸などの有機物の燃料が、アノードで二酸化炭素に酸化され、一方、空気または酸素は、カソードで水に還元される。有機物燃料を使用する燃料電池は、有機物燃料の高い比エネルギーを一つの理由として、据え付けの用途および携帯型の用途にとって極めて魅力的であり、例えば、メタノールの比エネルギーは、1キログラムあたり6232ワット時間(Wh/kg)である。そのような一つの燃料電池が、有機物燃料がアノードに直接に供給され、アノードで燃料が酸化される「直接酸化」燃料電池である。したがって、有機物燃料を水素富化燃料ガスに転化する改質器の必要性が回避され、燃料電池システムのかなりの重量および体積の節減が得られる。直接型メタノール燃料電池は、そのような一つの燃料電池システムである。
【0005】
アノード電極触媒として通例使用される材料は、表面積の大きい炭素に担持された純金属または単一合金(例えばPt、Pt/Ru、Pt〜i)である。例えば、炭化水素燃料電池用(例えば直接型メタノール)の最先端技術を用いたアノード触媒は、白金(Pt)−ルテニウム(Ru)合金を主成分としている。これまで、最もよく知られた触媒は、Pt50/Ru50であった(添字の数は原子比を示す)。非特許文献2;非特許文献3
【0006】
貴金属触媒を製造するいくつかの周知の方法では、特に金属対炭素比の高い炭素担持触媒の場合、担体上に高度に凝集化された貴金属触媒粒子が生成する。
【0007】
【非特許文献1】ワタナベ(Watanabe)らの「高度に分散したPt+Ru合金クラスタの調製およびメタノールの電解酸化の活性(Preparation of Highly Dispersed Pt + Ru Alloy Clusters and the Activity for the Electrooxidation of Methanol)」、ジャーナル・オブ・エレクトロアナリィティカル・ケミストリ(J.Electroanal.Chem.)、229、395−406(1987)
【非特許文献2】ガスタイガー(Gasteiger)らのジャーナル・オブ・フィジカル・ケミストリ(J Phys.Chem.)、98:617、1994
【非特許文献3】ワタナベらのジャーナル・オブ・エレクトロアナリィティカル・ケミストリ、229−395、1987。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
改良された触媒の要望が依然として存在する。金属表面積を最大にするため、かつ、製造される触媒の反応性を改良するため、触媒の濃度を最大にすること、および、担持された触媒の場合、担体上での金属粒子の凝集化を最小限に抑えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、貴金属触媒を調製する方法である。この方法には、(IV)未満の原子価を有する白金を含む白金反応物の溶液を提供し、酸化剤を白金反応物に加え、処理された粒子炭素を提供し、白金反応物溶液に粒子炭素を導入し、そして、粒子炭素を含む白金溶液を沈殿剤に接触させることが含まれる。
【0010】
いくつかの実施形態では、この方法は、前記処理された粒子炭素を提供する前に、IV(4+としても表される)未満の原子価を有するルテニウムを含むルテニウム反応物溶液を提供し、そして、ルテニウム反応物溶液を白金反応物溶液に加えることが含まれる。
【0011】
いくつかの実施形態では、水性クロロ白金酸溶液を提供し、そして、亜硫酸水素ナトリウムを水性クロロ白金酸溶液に加えて、亜硫酸白金酸を形成することによって、白金反応物が形成される。
【0012】
本発明の別の態様は、粒子炭素担体、および(IV)未満の原子価を有する粒子白金を含んでなる貴金属触媒である。この触媒は、約2.4×1011nm/nm未満の合計凝集体体積を有する。好ましい実施態様では、粒子炭素担体は、化学的に処理される。この処理は、前記炭素を、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される物質に接触させることを含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、担持された貴金属触媒およびそれらを調製する方法を提供する。この方法には、コロイド化学を利用し、界面活性剤または分散剤、および処理された炭素担体の使用が含まれる。炭素の処理は、例えば、酸化性酸を用いて達成することができる。あるいは、炭素に官能性をもたせ、炭素表面を酸性化できるマイルドな酸化体のような物質で炭素を処理することができる。
【0014】
驚くべきことに、触媒を製造する際に使用するある種の構成成分の他の構成成分への添加速度を制御すると、本明細書に開示した方法に従って製造した触媒の品質が改良される
ことが判明した。驚くべきことに、本方法において使用する粒子炭素担体の機能化により、構成成分の添加速度の制御を相互に組み合わせた場合、触媒担体上の金属粒子の凝集化の最小化または排除を含めて、界面活性剤または分散剤の存在下で、製造される触媒の特性の予想外の改良が提供されることも判明した。さらに、分散剤または界面活性剤の存在下での特性の改良は、2つの変数、すなわち、独立して、機能化と制御された添加速度それぞれに起因して観測される改良に比べて、予想外に大きい。本発明はいかなる特定の理論によっても束縛されないことを意図するが、塩化ルテニウム、または、RuClなどのIV未満の原子価を有する可溶性ルテニウム前駆体と過酸化水素などの液体酸化剤は、触媒を製造する際に両方とも利用されるが、これらの間の反応生成物と、界面活性剤または分散剤の存在下に処理された粒子炭素との間の相互作用が、その相互作用はルテニウムと白金を一緒にする速度に部分的に依存するが、予想外の観測結果を部分的に提供すると考えられる。
【0015】
本明細書に開示した方法では、従来の方法に比べて、触媒調製中に存在する液体体積中においてより高い濃度の触媒、並びに、触媒担体上での金属またはコロイド酸化物粒子のより良好な分散および非凝集化が提供される。触媒担体上の貴金属粒子の凝集化は、金属対炭素比の触媒組成が相対的に高いことに関連する周知の問題である。金属対炭素比の組成が高い場合、または金属富化組成の場合、金属または金属酸化物粒子が担体表面で密集することは、表面の密集、および、表面構造での金属または金属酸化物粒子の凝集化につながる。ここでいう凝集とは、触媒担体上に存在するより小さい貴金属粒子の凝集を意味する二次構造体である。本明細書に開示した方法ではまた、他の方法、例えば金属対炭素比の触媒組成が低い方法と比較して、粒子凝集が低減された触媒、および、ワタナベらによって開示されているような、触媒合成の際、液体構成成分が相対的に多い希釈液が使用される合成方法が提供される。例えば、製造される触媒に存在する金属の合計量(例えばPt/Ru二成分系では白金とルテニウム)が炭素のそれより多い場合、すなわち、金属対炭素の重量比が50重量パーセント金属より大きい場合、密集した炭素担体上での貴金属粒子の凝集化が起こる可能性がある。
【0016】
凝集化する金属または凝集化するコロイド金属酸化物粒子、あるいは、コロイド金属/コロイド酸化物混合物の数および大きさの低減は、本明細書に開示した方法によって提供されるが、透過電子顕微鏡法(TEM)によって計数および測定することができる。触媒調製においてより小さい合成体積を使用することもできる。本明細書に開示した方法の典型的な体積生産性は、約2.26g触媒/リットル反応体積である。ワタナベが開示した方法の見かけの体積生産性は、<1g触媒/リットル反応体積である。
【0017】
本明細書に開示した方法に従って製造される触媒は、燃料電池に有用であり、特に、燃料電池用の担持された触媒として、例えば、直接型メタノール燃料電池のアノードまたはカソード触媒として有用である。この触媒は、燃料電池のどんな酸化または還元反応でも有用である。さらに、この触媒は、貴金属触媒が使用される任意の用途に有用である。
【0018】
この触媒は、従来の二元金属触媒と比較して、担体中の酸素含量が増加されている。触媒に含まれる炭素担体の酸素含量は、炭素担体の約0.1〜約5重量パーセントであることが好ましく、好ましくは炭素担体の約3〜4重量パーセント、より好ましくは約2.45〜約2.65重量パーセントである。
【0019】
典型的な炭素担体(処理前)は、キャボット社(Cabot Corporation)のバルカン(Vulcan)(登録商標)XC72R、アクゾ・ノーブル・ケッチェン(Akzo Noble Ketjen)(登録商標)600または300、バルカン(登録商標)ブラック・パール(Black Pearls)(キャボット社)、アセチレンブラック(電気化学工業株式会社(Denki Kagaku Kogyo Kabu
shiki Kaisha))、並びに、他の導電性炭素種などの様々な表面領域の乱層状または黒鉛状炭素である。その他の炭素には、アセチレンブラックおよび他の黒鉛粉末、単一または多層壁炭素ナノチューブ、繊維または他の炭素構造(フラーレン、ナノホーン)が含まれる。
【0020】
この触媒はまた、従来の貴金属触媒の微細構造とは異なる微細構造を有する。処理された炭素担体と触媒中の金属の間の相互作用により、担体上の金属凝集が最小の、高度に分散された触媒が得られると考えられる。凝集化は、金属:炭素比が高い組成では問題になる可能性がある。
【0021】
触媒を製造するために水性白金混合物が提供される。この水性白金混合物は、より小さい原子価状態(Pt4+未満)にあるか、または、より小さい原子価状態に還元できる可溶性白金前駆体を含む。水性白金混合物中の白金は、触媒の製造に使用するためには、その+2の酸化状態で提供されることが好ましい。例えば、クロロ白金酸HPtCIは、NaHSOを用いて還元し、その場でPt(II)反応物である亜硫酸白金酸HPt(SOOHを形成することができる。クロロ白金酸は、+4の酸化状態、すなわちPt(IV)のPtを含む。あるいは、HPt(SOOH、または、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、水溶性の白金(II)ホスフィン錯体類(例えば、クロロトリス(2,3,5−トリアザ−7−ホスホアダマンタン)白金(II)塩化物、(TPA)PtCl)などの他の可溶性白金+2(Pt(II))塩、あるいは、他の原子価が小さい水溶性白金塩、を直接使用することができる。しかし、クロロ白金酸を使用し、続けてNaHSOと反応させるか、または、HPt(SOOHを直接使用することが好ましい。
【0022】
したがって、好ましい実施態様では、本明細書に開示した方法は、水性クロロ白金酸溶液を利用する。クロロ白金酸溶液の濃度は、重要でない。しかし、クロロ白金酸の濃度は、一般に約1〜約20重量パーセント白金の間で変化させることができ、約5〜約15重量パーセントの白金が有利に使用される。
【0023】
塩化ルテニウム溶液などのルテニウムを含む反応物溶液が、酸化体、好ましくは過酸化水素の存在下に水性白金混合物と混合され、触媒混合物が形成される。塩化ルテニウム溶液は、当業者に周知の方法によって調製することができる。溶液中の塩化ルテニウムの濃度は重要でないが、約1重量パーセント〜約10重量パーセントが有利に使用でき、約2重量パーセントが好ましい。塩化ルテニウム溶液を、水性白金混合物に加えることが好ましい。また、塩化ルテニウム溶液は、0.3mmolesRu/分、好ましくは約0.7〜約4.0mmolesルテニウム/分、最も好ましくは約0.9〜約3.6mmolesRu/分を超える速度で加えることが好ましい。ルテニウム(III)ニトロシル硝酸塩、ルテニウム(III)ニトロシル硫酸塩、および、(IV)より小さいルテニウム原子価を有する他の水溶性ルテニウム反応物などの、その他の可溶性ルテニウム前駆体もまた使用することができる。塩化ルテニウムが好ましい。
【0024】
Pt(II)反応物の生成、または、Pt(II)反応物の直接使用、および触媒混合物の形成に続けて、過酸化水素などの酸化剤が、触媒混合物に加えられる。その他の適切な酸化剤には、水溶性の物質(例えば次亜塩素酸)またはオゾンなどの気相酸化剤が含まれる。気相酸化剤は、液体媒体へのバブリングによって導入することができる。酸化剤は、Pt(II)反応物を、白金がPt(IV)であるコロイドPtOに転化するために、加えられる。酸化剤の導入により、コロイド混合物が形成され、その場合、白金はコロイド状態で存在する。塩化ルテニウムが触媒混合物に存在し、かつ、過剰な酸化剤、例えば過剰な過酸化水素が存在する場合、この酸化剤は、塩化ルテニウムと反応し、やはりコロイドとして存在する酸化ルテニウムを形成することができる。
【0025】
反応に使用する過酸化水素の量は、H対金属の合計モルのモル比を基準にして、約15:1〜700:1、好ましくは100:1〜300:1、より好ましくは約211:1とすることができる。
【0026】
あるいは、白金溶液の添加後に過酸化水素の全てを加える代わりに、一部の過酸化水素を、塩化ルテニウムと同時に加えることができる。
【0027】
NaHSOを添加してHPt(SOOHを生成した後、界面活性剤または分散剤を、クロロ白金酸溶液に加えることができる。あるいは、Pt(II)反応物がその場で生成されるのではなく、直接導入される場合、界面活性剤または分散剤を直接それに加えることができる。しかし、界面活性剤または分散剤はまた、塩化ルテニウムの添加後に直接加えることができ、泡立ちまたは界面活性剤と過酸化水素との反応が起こり得る場合、それが望ましいこともある。さらに別の代替として、界面活性剤または分散剤を、炭素担体に加えることができ、その後、それがコロイド混合物に加えられる。一つの好適な実施形態では、界面活性剤は、RuCl添加後にコロイド混合物に加えられ、場合により炭素担体を分散させ、界面活性剤炭素担体スラリーを反応混合物に加える。
【0028】
界面活性剤および分散剤は、当業者に周知である。分散剤は、本明細書で使用されるように、それらの凝集化または流体媒体中での沈澱を抑制または防ぐように、微細な固体粒子を懸濁状態にすることができる一群の材料である。用語の界面活性剤または表面活性剤は、両親媒性の構造(反対性向の溶解性をもつ基(groups)を有すること)、液体媒体での溶解度、一定濃度でのミセル形成、相界面の界面活性剤分子で配向した単一層、および相界面(この場合、液体−固体の界面)でのイオン形態の配向した単一層の形成、並びに、界面での吸着のような、構造および物性におけるある種の特性特徴を有する物質を記載するために本明細書で使用される。したがって、界面活性剤は粒子を分散させる働きをすることができるが、分散剤は、界面活性剤の物性を有する必要はなく、界面活性剤のそれよりはむしろ異なる機構によって機能することができる。したがって、本明細書では、これら用語は、互換性があるようには使用されない。この触媒を製造する方法において使用するのに適する界面活性剤および分散剤は、カルボキシレート、スルホネート、サルフェート、またはホスフェート基を含むアニオン界面活性剤;エトキシレート、カルボン酸エステル、カルボン酸アミン、およびポリアルキレンオキシドブロック共重合体から誘導されるものなどの非イオン性界面活性剤とすることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、界面活性剤が使用される場合、非イオン性界面活性剤が好ましい。いくつかの実施形態では、分散剤が使用される場合、アニオン系分散剤が好ましい。例示的なアニオン界面活性剤は、テルギトール(Tergitol)(登録商標)15−S−40(25%水溶)であり、それは、アルキルアルコールエトキシレートである。例示的な非イオン性分散剤は、ダグサド(Daxad)(登録商標)分散剤であり、それは、ハンプシャー・ケミカル社(Hampshire Chemical Corporation)(テキサス州ヒューストン(Houston))から入手できる。ダグサド(登録商標)分散剤には、様々な高および低分子量の濃縮されたナフタレンスルホネートが含まれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、界面活性剤または分散剤は、懸濁液の形で提供される。この懸濁液は、コロイドおよび/または炭素担体を安定化するのに十分な界面活性剤または分散剤を含む。懸濁液は、固体を合わせた合計重量を基準にして約0.0001重量パーセント〜約20重量パーセントの界面活性剤または分散剤を含むことが好ましい。固体を合わせた合計重量は、界面活性剤/分散剤、白金、および粒子炭素の合計重量を意味する。粒子炭素は、本明細書の以下に議論される。懸濁液は、固体を合わせた合計重量を基準に
して、約0.001〜約10重量パーセントの界面活性剤または分散剤、さらにより好ましくは約0.01〜約5重量パーセントの界面活性剤または分散剤、さらにより好ましくは約0.1〜約2重量パーセントの界面活性剤または分散剤を含むことがより好ましい。懸濁液中の界面活性剤または分散剤の濃度は重要でない。しかし、約10重量パーセントの界面活性剤または分散剤の濃度が有利に使用できることが判明した。
【0031】
代わりの実施形態では、界面活性剤または分散剤は、固体の形態で提供することができる。固体の形態で提供される場合、白金および粒子炭素に対する界面活性剤または分散剤の相対的な量は、懸濁液に提供される界面活性剤または分散剤に適する量と同じであることが好ましい。
【0032】
亜硫酸水素ナトリウムNaHSOは、塩化白金(IV)を亜硫酸水素白金(II)に転化するが、やはり懸濁液に存在することができ、白金を+2の酸化状態に転化するため、そのような形で提供される。NaHSOの濃度は、変化させることができ、NaHSO対白金のモル比によって表すと、好ましくは約3:1〜約20:1、より好ましくは約5:1〜約15:1、さらにより好ましくは約7:1〜約12:1である。
【0033】
ルテニウムと白金反応物を化合して触媒混合物を形成した後、かつ過酸化水素の添加後、酸性化された粒子炭素などの化学的に処理された粒子炭素が、この触媒混合物に加えられる。炭素は、例えば、スラリーとして、または固体の状態で提供することができる。炭素を化学的に処理することは、当業者に知られた方法によって実行することができる。酸性化は、様々な酸化性酸を使用して行うことができる。例えば、炭素粒子は、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、オゾンなどの酸化剤を用いて処理することができ、あるいは、炭素粒子は、例えば、硝酸、過塩素酸、塩素酸、過マンガン酸、またはクロム酸などの酸化性酸を用いて酸化および酸性化することができる。いくつかの実施形態では、粒子炭素のスラリーは、希釈酸溶液を用いて製造することができ、酸性化は、加熱することによって、例えばスラリーを還流することによって行うことができる。場合により、特にこの粒子が、酸素ガス、オゾン、または揮発性有機過酸化物などの官能化剤を用いて処理される場合、粒子は、例えば約175℃、好ましくは炭素の分解を避けるため約100℃を超えない温度に加熱することができる。
【0034】
使用する粒子炭素の量は、製造される触媒の所望の組成に依存する。この濃度は、約0.01重量パーセントの白金とルテニウムを含む金属〜約99重量パーセント金属、および約1重量パーセント〜約99.99重量パーセント炭素とすることができる。貴金属組成物は、白金に加えて、ルテニウム、クロム、モリブデン、タングステン、および鉄よりなる群から選択される1種もしくはそれ以上の他の金属とすることができる。ルテニウムと白金が好ましい。
【0035】
炭素が触媒混合物に加えられた後、触媒混合物および炭素は沈殿剤と接触させ、沈殿剤は、部分的に触媒混合物を還元し、触媒粒子を炭素担体上に沈殿または堆積させるのを助けると考えられる。水素ガスが好適な沈殿剤である。場合により、還元剤と接触させることを、例えば窒素の存在下などの制御された環境で行うことができる。水素ガスが沈殿剤として使用される場合、窒素雰囲気のような不活性雰囲気を使用することが望ましい場合がある。
【0036】
本明細書に開示した触媒、および本明細書に開示した方法を使用して製造された触媒は、燃料電池を製造する際に有用である。燃料電池は、典型的には膜電極組立体のスタックまたは集合体として形成され、好ましくは、被覆された基板、アノード、カソード、および他の任意選択の構成要素が含まれる。被覆された基板は、例えば、触媒被覆膜(CCM)、または、ガス拡散電極(GDE)を形成するためのガス拡散バッキング上に被覆され
た触媒とすることができる。燃料電池を製造する際に使用される場合、本明細書に開示した触媒を好都合に使用して、CCMまたはGDEが製造される。
【0037】
この被覆基板は、本明細書に記載したような電極触媒被覆組成物をその上に被覆した基板を含んでなる。被覆基板は、触媒被覆膜、または、被覆されたガス拡散バッキングとすることができる。
【0038】
アノードおよびカソードの電極触媒は、一般に所望の電気化学反応を引き起こす。燃料電池は一般に、電極のそれぞれと電気的に接触し、かつ電極までの反応物の拡散を可能にする多孔性の導電性シート材料をさらに含んでなる。本明細書に記載されるように、電極触媒被覆組成物がイオン交換膜に被覆され、そこにアノードまたはカソードが形成され、それによって触媒被覆膜を形成することができる。あるいは、電極触媒被覆組成物を、一般にガス拡散バッキングとして知られている多孔性の導電性シート材料に被覆することができる。ガス拡散バッキングは、通常織成または非織成炭素繊維基板から製造され、それは、水濡れ性物性に影響を与えるため処理される。ガス拡散バッキング基板は、一面または両面に炭素粒子および結合剤(通常PTFE)を含む薄い多孔質層で被覆することができる。この薄い多孔質層は、通常「ガス拡散層」と呼ばれる。電極触媒被覆組成物は、このガス拡散層の上に被覆することができる。
【0039】
CCM製造に対し様々な技術が知られている。典型的な製造法には、イオン交換高分子膜のような基板上への電極触媒被覆組成物の塗布が含まれる。電極触媒を基板上に塗布する方法には、吹付け、塗装、パッチ被覆、およびスクリーン印刷が含まれる。
【0040】
一般に、電極触媒被覆組成物は、アノード電極触媒、イオン交換高分子などの結合剤、および溶剤を含んでなる。電極触媒被覆組成物に使用するイオン交換高分子は、電極触媒粒子の結合剤として働くだけでなく、電極を膜に固着する際にも助けとなるので、該組成物中のイオン交換高分子が、膜中のイオン交換高分子と共存できることが好ましい。最も典型的には、該組成物中のイオン交換高分子が、膜中のイオン交換高分子と同じ種類である。
【0041】
本明細書に記載した触媒を使用して被覆基板を製造する際に使用するのに適切なイオン交換高分子には、高度フッ化イオン交換高分子が含まれる。「高度フッ化」は、高分子中の一価原子の総数の少なくとも90%がフッ素原子であることを意味する。最も典型的には、この高分子はペルフルオロ化されている。燃料電池に使用する高分子は、スルホネート・イオン交換基を有することが典型的である。用語「スルホネート・イオン交換基」は、本明細書で使用されるとき、スルホン酸基、または、スルホン酸基の塩、典型的にはそのアルカリ金属もしくはアンモニウム塩のいずれかを意味する。燃料電池などのプロトン交換に高分子が使用されることになる用途では、スルホン酸の形の高分子が典型的である。使用するとき電極触媒被覆組成物中の高分子がスルホン酸形でない場合、後処理酸交換ステップを使用して、使用前に高分子を酸性形に転化することができる。
【0042】
典型的には、使用されるイオン交換高分子は、繰り返し側鎖を備えた高分子骨格鎖を含んでなり、該側鎖は、イオン交換基を所持する側鎖を有する骨格鎖に結合している。ホモポリマーまたは共重合体を使用することができる。共重合体は、通常、非官能性モノマーであり、かつ高分子骨格鎖のために炭素原子を供給する、第1のモノマーから形成され、第2のモノマーは、高分子骨格鎖のために炭素原子を供給するとともに、さらにカチオン交換基またはその前駆体を所持する側鎖を与え、該側鎖には、例えばスルホニルフルオリド(−SOF)などのスルホニル・ハロゲン化物の基があり、これは、その後スルホネート・イオン交換基に加水分解することができる。例えば、第1のフッ化ビニルモノマーとスルホニルフルオリド基(−SOF)を有する第2のフッ化ビニルモノマーとの共重
合体を使用することができる。例示的な第1のフッ化ビニルモノマーには、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、ビニリジン(vinylidine)フルオリド、三フッ化エチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、およびそれらの2種もしくはそれ以上の混合物が含まれる。例示的な第2のモノマーには、スルホネート・イオン交換基または前駆体の基を有するフッ化ビニルエーテルが含まれ、該基は、高分子中に所望の側鎖を形成することができる。第1のモノマーはまた、スルホネート・イオン交換基のイオン交換機能を干渉しない側鎖を有してもよい。その他のモノマーもまた、所望ならこれらの高分子の中に組み込むことができる。
【0043】
被覆基板を製造する際に使用する典型的な高分子には、式 −(O−CFCFR−O−CFCFR’SOH により表される側鎖を有する、高度フッ化、最も好ましくはペルフルオロ化炭素骨格鎖を有する高分子が含まれ、上式中、RおよびR’は、独立してF、Cl、および1〜10個の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基から選択され、a=0、1、または2である。適切な高分子の具体的な例には、米国特許第3,282,875号明細書、米国特許第4,358,545号明細書、および米国特許第4,940,525号明細書に開示されているものが含まれる。一つの例示的な高分子は、ペルフルオロカーボン骨格鎖、および、式 −O−CFCF(CF)−O−CFCFSOH により表される側鎖を含んでなる。このような高分子は、米国特許第3,282,875号明細書に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ペルフルオロ化ビニルエーテル CF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、すなわちペルフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)とを共重合して、続けてフッ化スルホニル基の加水分解によってスルホン酸基に転化し、イオン交換してプロトン形としても知られている酸に転化することにより、製造することができる。米国特許第4,358,545号明細書および米国特許第4,940,525号明細書に開示されているこのタイプの例示的な高分子は、側鎖 −O−CFCFSOH を有する。この高分子は、テトラフルオロエチレン(TFE)と、ペルフルオロ化ビニルエーテル CF=CF−O−CFCFSOF、すなわちペルフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)との共重合、続けて加水分解および酸交換によって、製造することができる。
【0044】
上記したタイプのペルフルオロ化高分子の場合、高分子のイオン交換容量は、イオン交換比(「IXR」)によって表すことができる。イオン交換比は、イオン交換基に対する高分子骨格鎖中の炭素原子数である。高分子の場合広い範囲のIXR値が可能である。しかし、ペルフルオロ化スルホネート高分子の場合、IXRの範囲は通常約7〜約33である。上記タイプのペルフルオロ化高分子の場合、高分子のカチオン交換容量は、当量(EW)によって表すことができる。当量(EW)は、本明細書で使用されるとき、1当量のNaOHを中和するのに必要な酸形態をした高分子の重量である。ペルフルオロカーボン骨格鎖および側鎖 −O−CF−CF(CF)−O−CF−CF−SOH(またはその塩)を有するスルホネート高分子の場合、約7〜約33のIXRに対応する当量の範囲は、約700EW〜約2000EWである。このような高分子のIXRの好ましい範囲は約8〜約23(750〜1500EW)、より好ましい範囲は約9〜約15(800〜1100EW)である。
【0045】
GDEまたはCCMを形成する方法、あるいは触媒を基板の上に被覆する方法と共存できる液体媒体はどれでも使用することができる。組成物が膜に移動する前に基板上で乾燥するほど速く組成物が乾燥しないとの条件で、この媒体は、電極層の急速な乾燥が、使用されるプロセス条件下で可能である、十分低い沸点を有することが有利である。可燃性成分が使用されることになる場合、媒体が、使用の間触媒と接触するので、かかる成分に関
連するプロセスの危険性を最小限にするように媒体を選択することができる。媒体はまた、酸形態で強い酸性活性を有するイオン交換高分子の存在下に十分に安定である。液体媒体は、典型的にはイオン交換高分子との相溶性のために極性であり、膜を濡らすことができるのが好ましい。水を液体媒体として使用することは可能であるが、媒体は、イオン交換高分子が乾燥時に合体し、かつ安定な電極層を形成するために加熱するなどの後処理ステップを必要としないようなものが好ましい。
【0046】
多種多様な極性有機液体またはそれらの混合物が、電極触媒被覆組成物用に適切な液体媒体としての機能を果たすことができる。被覆プロセスを干渉しない場合、わずかな量の水がこの媒体に存在できる。十分多量に存在する場合、いくつかの極性有機液体は膜を膨潤できるが、電極触媒被覆に使用する液体量は、プロセスの間の膨潤からの悪影響がわずかまたは検知されない程度の少量が好ましい。イオン交換膜を膨潤できる溶剤が、電極の膜へのより良好な接触およびより確実な塗布を提供できると考えられる。様々なアルコールが、液体媒体として使用するのに十分に適している。
【0047】
典型的な液体媒体には、適切な、n−、iso−、sec−、およびtert−ブチルアルコールなどのC〜Cアルキルアルコール;1、2−および3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノールなどの異性体の5−炭素アルコール;1−、2−および3−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノールなどの異性体の6−炭素アルコール;異性体のCアルコール、および異性体のCアルコールが含まれる。環状アルコールもまた適する。好適なアルコールは、n−ブタノールおよびn−ヘキサノールであり、n−ヘキサノールがより好ましい。
【0048】
アノード電極触媒における液体媒体の量は変化し、使用する媒体の種類、電極触媒被覆の成分、使用する被覆装置の型式、所望の電極厚さ、プロセス速度などによって定められる。
【0049】
水/アルコールに分散したペルフルオロ化スルホン酸高分子の酸形態で商業的に入手可能な分散液は、ナフィオン(Nafion)(登録商標)の商品名でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I.du Pont de Nemours and Company)によって市販されているが、出発原料として使用して電極触媒被覆組成物を調製できることが判明した。電極触媒被覆組成物用の結合剤およびプロトン輸送構成要素として、ペルフルオロ化スルホン酸高分子の酸形態の分散液を含むこのイオン交換高分子を使用して、電極触媒を加えて、電極触媒被覆組成物を形成することができる。
【0050】
電極触媒被覆組成物では、アノード電極触媒、イオン交換高分子、および、存在する場合他の構成要素の量を調節して、アノード電極触媒が、得られる電極の重量による主成分であるようにすることが好ましい。電極におけるアノード電極触媒対イオン交換高分子の重量比が、約2:1〜約10:1であることがより好ましい。
【0051】
周知の電極触媒被覆技術を使用することができ、例えば20μm以上の非常に厚いものから例えば1μm以下の非常に薄いものまでの範囲の実質的に任意の厚さの多種多様な塗布層が製造されるだろう。
【0052】
触媒被覆膜(CCM)を調製する際に使用する基板は、電極触媒被覆組成物に使用するのと同じ上述のイオン交換高分子膜とすることができる。この膜は、周知の押出成形またはキャスティング技術によって製造することができ、意図した用途に応じて変化させるこ
とができる厚さを有する。最近、非常に薄い、すなわち50μm以下の膜が使用されているが、膜は、一般に350μm以下の厚さを有する。高分子はアルカリ金属またはアンモニウム塩の形をしていてもよいが、後処理酸交換ステップを避けるため、膜中の高分子が酸形態をしているのが典型的である。酸形態をした適切なペルフルオロ化スルホン酸高分子膜は、ナフィオン(登録商標)の商品名でイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニーから入手できる。
【0053】
補強されたペルフルオロ化イオン交換高分子膜もまた、CCM製造に利用することができる。補強された膜は、イオン交換高分子を多孔性の膨潤したPTFE(ePTFE)に含浸することにより、製造することができる。ePTFEは、W.L.ゴア・アンド・アソシエイツ社(W.L.Gore and Associates,Inc.)(メリーランド州エルクトン(Elkton))から「ゴアテックス(Goretex)」の商品名で、および、テトラテック(Tetratec)(ペンシルバニア州フィースタビィレ(Feasterville))から「テトラテックス(Tetratex)」の商品名で市販されている。ペルフルオロ化スルホン酸高分子のePTFEへの含浸は、米国特許第5,547,551号明細書および米国特許第6,110,333号明細書に開示されている。
【0054】
あるいは、イオン交換膜は多孔性の支持体であってもよい。多孔性の支持体は、いくつかの用途に対して機械的性質を改善する、および/または原価を低減することができる。多孔性の支持体は、炭化水素およびポリオレフィン、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリオレフィンを含む共重合体等を含めて、広範囲の構成成分から製造することができる。ポリクロロトリフルオロエチレンなどのペルハロゲン化高分子もまた、使用することができる。この膜はまた、米国特許第5,525,436号明細書、米国特許第5,716,727号明細書、米国特許第6,025,085号明細書、および米国特許第6,099,988号明細書に記載されているように、ポリベンジマダゾール高分子から、例えば、トリフルオロ酢酸(TFA)をドープしたリン酸(HPO)中のポリベンジマダゾール溶液をキャスティングすることによって、製造することができる。
【0055】
ガス拡散バッキングは、親水性または疎水性挙動を示すように処理することができる、織成または非織成炭素繊維から製造される紙または布などの多孔性の導電性シート材料と、典型的には炭素粒子およびPTFEなどのフルオロポリマーのフィルムを含んでなるガス拡散層とを含んでなる。電極触媒被覆組成物は、ガス拡散バッキングの上に被覆される。アノードまたはカソードを形成する電極触媒被覆組成物は、触媒被覆膜を製造する際に使用する上記したものと同じである。
【0056】
この膜、および、電極触媒組成物が膜またはガス拡散バッキングに、あるいはその両方に被覆されたガス拡散バッキングを含む組立体は、しばしば膜電極組立体(「MEA」)と呼ばれる。導電材料からできており、反応物の流れ場を提供する双極形セパレータ・プレートが、相当数の隣接するMEAの間に置かれる。相当数のMEAおよび両極性プレートがこのようにして組立てられ、燃料電池スタックが提供される。
【0057】
電極が燃料電池内で効果的に機能するために、効果的なアノードおよびカソード触媒部位が提供される。有効なアノードおよびカソード電極触媒部位は、いくつかの望ましい特性を有する:(1)この部位は、反応物にアクセス可能である、(2)この部位は、ガス拡散層に電気的に接続される、および(3)この部位は、イオンによって燃料電池電解質に接続される。
【0058】
燃料電池スタック中の反応物流体流れの流路をシールして、燃料および酸化体の流体流
れの漏れまたは相互混合を防ぐことが望ましい。燃料電池スタックは、通常、セパレータ・プレートと膜の間に、エラストマのガスケットなどの流体に気密な弾性シールを使用する。かかるシールは、通常マニホールドおよび電気化学的に活性な領域を取り囲む。シーリングは、弾性的なガスケット・シールに圧縮力をかけることによって行うことができる。圧縮により、セパレータ・プレートの面とMEAの間のシーリングおよび電気的接触、並びに、隣接する燃料電池スタック構成要素の間のシーリングが強化される。従来の燃料電池スタックでは、燃料電池スタックは、通常、それらの組立てられた状態の一対のエンド・プレートの間で、1個もしくはそれ以上の金属タイロッド(tie rods)または引張部材により圧縮され、かつ維持される。タイロッドは、通常スタック・エンド・プレートに形成された貫通穴を延在し、それらをスタック組立体の中に固定するために付随するナットまたは他の固定手段を有する。タイロッドは外部にあってもよいが、すなわち燃料電池プレートとMEAを通って延在しなくてもよいが、しかし、外部タイロッドは、スタック重量および体積を大幅に増加させる可能性がある。米国特許第5,484,666号明細書に記載されているように、燃料電池プレートとMEAの開口部を通じてスタック・エンド・プレート間を延在する、1個もしくはそれ以上の内部タイロッドを使用することが、一般に好ましい。通常、タイロッドおよびエンド・プレートと協働するように弾性部材を利用して、2枚のエンド・プレートを互いの方向へ圧接して燃料電池スタックを圧縮する。
【0059】
弾性部材は、例えば、熱もしくは圧力誘起の膨張および収縮、並びに/または変形によって引き起こされたスタック長さの変化に適応する。すなわち、燃料電池組立体の厚さが縮んだ場合、燃料電池組立体上の圧縮荷重を維持するために、弾性部材は膨張する。弾性部材はまた、燃料電池組立体の厚さの増加に適応するために、縮むことができる。弾性部材は、作動中の燃料電池に予想される膨張および収縮の範囲内で、燃料電池組立体に対し実質的に均一な圧縮力を提供するように選択することが好ましい。弾性部材は、機械的ばね、油圧もしくは空気圧ピストン、ばねプレート、プレッシャーパッド(pressure pads)、または、他の弾力性のある圧縮デバイスもしくは機構を含んでもよい。例えば、1個もしくはそれ以上のばねプレートを、スタック中で層状にしてもよい。弾性部材は、引張部材と協働してエンド・プレートを互いの方向へ圧接し、それによって圧縮荷重を燃料電池組立体にかけて、引張荷重を引張部材にかける。
【実施例】
【0060】
比較例A
10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55g(アルドリッチ(Aldrich、ミズーリ州セントルイス(St.Louis))からのHPtCl、26.258−7を、水と化合させることによって調製し、白金を基準にして10.13重量%の水溶液を形成した)、および、500mlの水を、磁気撹拌子を含む10リットル容器に加え、それを、大きい磁気撹拌プレートの上に置いた。17.65gのNaHSO(J.T.ベーカー(Baker)からの3556,01、ニュージャージー州フィリップスバーグ(Phillipsburg))を加え、5分間撹拌した。この時点のpHを、希釈した炭酸ナトリウム溶液を使用して約5.0に調節した。30重量%の過酸化水素溶液858ml(VWR、ペンシルバニア州ウェスト・チェスター(West Chester))を加えた。重炭酸ナトリウム溶液を使用して、溶液pHを5に制御した。2.02重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液89.77g(RuClを水と混合することによって調製し、ルテニウムで2.02重量%の溶液を調製した)を、300mlの水で希釈し、上記溶液に15分にわたってゆっくり加えた。添加の際、pHを約5.0に制御した(10%のNaOH溶液を使用し、20ml/分の速度でそれも加えた)。RuCl添加の全体にわたって、いくつかの角氷(蒸留水で調製した)を入れることによって添加中の温度を制御した。この温度は、RuCl添加の間、約50℃を超えないようにした。1.69gのバルカン(Vulcan)(登録商標)XC−72R炭素(
キャボット社(Cabot Corporation)、マサチューセッツ州ボストン(Boston))を加え、pHが安定化するまで15分間撹拌した。
【0061】
その後、この混合物を、反応容器の底部近くに浸漬されたガラス・フリットを通して窒素ガスを導入できる(150ml/minの速度)容器内に入れた。次いで、100%Hガスを130ml/分で導入し、この混合物を、それを機械的に撹拌しながら、水素を用いて約5時間「ガス噴霧」した。
【0062】
水素噴霧手続きの後、反応容器は、Nガスを用いて約20分間パージし(50ml/minの速度)、次いで、2ミクロン・フィルターディスクでろ過した。その後、5リットルの水を用いてそれを洗浄した。ろ過ケーキを、使用前、空気中で一晩乾燥させた。
【0063】
この比較例では、界面活性剤または分散剤は、全く使用しなかった。加えて、炭素担体は処理しなかった。
【0064】
表1に示すように、この実施例で得た合計の凝集体体積は、所望したものより大きいことが明らかである。
【0065】
実施例1
11.14重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液31.42g(比較例1に記載したように調製した)および500mlの水を、磁気撹拌子を含む10リットル容器に加え、その容器を、大きい磁気撹拌プレートの上に置いた。ダグサド(登録商標)15LS分散剤を含む10重量%の水溶懸濁液0.10g(ハンプシャー・ケミカル社、テキサス州ヒューストン、ダウ・ケミカル(Dow Chemical)の子会社)をクロロ白金酸溶液に加えた。17.65gの亜硫酸水素ナトリウム(NaHSO)(J.T.ベーカー、3556,01、ニュージャージー州フィリップスバーグ)を加え、5分間撹拌した。
【0066】
希釈した炭酸ナトリウム溶液を使用してpHを約5.0に調節した。30重量%の過酸化水素溶液858ml(VWR、ペンシルバニア州ウェスト・チェスター)を加えた。重炭酸ナトリウム溶液を使用して、溶液pHを5に制御した。2.02重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液89.77g(RuCl(206229、ミズーリ州セントルイス)を水と混合することによって調製し、ルテニウムで2.02重量%の溶液を調製した)を300mlの水を用いて希釈し、該溶液に15分にわたってゆっくり加えた。この添加の際、pHを約5.0に制御した(10%のNaOH溶液を使用し、20ml/分の速度でそれも加えた)。RuCl添加の全体にわたって、いくつかの角氷(蒸留水で調製した)を入れることによって添加中の温度を制御した。この温度は、RuCl添加の間、約50℃を超えないようにした。
【0067】
バルカン(登録商標)XC72R粉末を以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料1.69gを、15分にわたり撹拌しながら、pHが安定化するまで混合物に加えた。
【0068】
その後、この混合物を、反応容器の底部近くに浸漬されたガラス・フリットを通して窒素ガスを導入できる(150ml/minの速度)容器内に入れた。次いで、100%Hガスを130ml/分で導入し、この混合物を、それを機械的に撹拌しながら、このようにして約5時間「水素噴霧」した。
【0069】
水素噴霧手続きの後、反応容器は、Nガスを用いて約20分間パージし(50ml/minの速度)、次いで、2ミクロン・フィルターディスクでろ過した。その後、5リットルの水を用いてそれを洗浄した。得られたろ過ケーキを、使用前、空気中で一晩乾燥させた。
【0070】
上記したのと同じ手続きを使用して、第2の触媒を製造した。10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55gを使用した。2.02重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液89.77gを15分間にわたって加えた。ダグサド(登録商標)15LS分散剤を含む10重量%の水溶懸濁液0.10g(ハンプシャー・ケミカル社、テキサス州ヒューストン、ダウ・ケミカルの子会社)を、亜硫酸水素ナトリウムの添加前に、クロロ白金酸溶液に加えた。
【0071】
バルカン(登録商標)XC72R粉末は、以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料の1.69gを反応に使用した。
【0072】
2つの触媒それぞれを、28枚の個々の透過電子顕微鏡写真を100,000倍の倍率で調べることによって分析した。全ての場合、視野の30%が触媒粒子によって占められていた。2個の調製品の2回の独立した測定の平均を表1に作表した。
【0073】
この実施例では、速いRuCl添加速度は、処理された炭素担体および分散剤の存在とあいまって、表1の0.03nm/nmの応答特性によって示されるように、非凝集化した触媒粉末の形成に有利に貢献することが示される。
【0074】
比較例B:
実施例1に述べた、以下の相違がある手続きを使用した。10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55 g(HPtCl(アルドリッチ、26.258−7、ミズーリ州セントルイス)を水と化合させることによって調製し、白金を基準にして10.13重量%の水溶液を形成した)を使用した。
【0075】
2.1重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液78.64g(RuClを混合することによって調製した、206229、ミズーリ州セントルイス)を使用した。塩化ルテニウム溶液は、60分間にわたって加えた。
【0076】
塩化ルテニウム添加の後、炭素の添加前に、0.005gのテルギトール(登録商標)TM15−S−9界面活性剤(ダウ・ケミカル社、ユニオン・カーバイド(Union Carbide)、コネティカット州ダンベリ(Danbury))を加えた。
【0077】
バルカン(登録商標)XC72R粉末を以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料の1.69gを反応に使用した。
【0078】
第2の触媒サンプルを調製した。10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55g(HPtCl(アルドリッチ、26.258−7、ミズーリ州セントルイス)を水と化合させることによって調製し、白金を基準にして10.13重量%の水溶液を形成した)を使用した。
【0079】
1.81重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液78.64g(RuClを混合することによって調製した、206229、ミズーリ州セントルイス)を使用した。塩化ルテニウム溶液は、60分間にわたって加えた。
【0080】
塩化ルテニウム添加の後、炭素の添加前に、0.005gのテルギトール(登録商標)TM15−S−9界面活性剤(ダウ・ケミカル社、ユニオン・カーバイド、コネティカット州ダンベリ)を加えた。
【0081】
バルカン(登録商標)XC72R粉末を以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料の1.69gを反応に使用した。
【0082】
2つの触媒それぞれを、28枚の個々の透過電子顕微鏡写真を100,000倍の倍率で調べることによって分析した。全ての場合、視野の30%が触媒粒子によって占められていた。2個の調製品の2回の独立した測定の平均を表1に作表した。
【0083】
この比較例では、RuCl添加の遅い速度(1分あたり0.3ミリモルRu未満)は、分散剤および処理された担体を有していても、表1の3.84nm/nmの「応答特性」によって示されるように、触媒担体上で金属粒子の大きい凝集化を示す触媒が得られることが示される。
【0084】
比較例C:
実施例1に述べた、以下の相違がある手続きを使用した。10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55g(HPtC1(アルドリッチ、26.258−7、ミズーリ州セントルイス)を水と化合させることによって調製し、白金を基準にして10.13重量%の水溶液を形成した)を使用した。
【0085】
2.31重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液78.64g(RuClを混合することによって調製した、206229、ミズーリ州セントルイス)を使用した。塩化ルテニウム溶液は、60分間にわたって加えた。
【0086】
ダグサド(登録商標)15LS分散剤を含む10重量%の水溶懸濁液0.10g(ハンプシャー・ケミカル社、テキサス州ヒューストン、ダウ・ケミカルの子会社)を、亜硫酸水素ナトリウムの添加前に、クロロ白金酸溶液に加えた。
【0087】
バルカン(登録商標)XC72R粉末を以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料の1.69gを反応に使用した。
【0088】
この比較例では、RuCl添加のより遅い速度(0.3mmolesRu/分)は、界面活性剤および処理された担体を有していても、表1の5.49nm/nmの応答特性によって示されるように、担体上で金属粒子の大きい凝集化を示す触媒が得られることが示される。
【0089】
実施例2
実施例1に述べた、以下の相違がある手続きを使用した。10.13重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液34.55gを使用した。
【0090】
1.81重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液78.64gを使用した。塩化ルテニウム溶液は、15分間にわたって加えた。
【0091】
塩化ルテニウム添加の後、炭素の添加前に、0.005gのテルギトール(登録商標)TM15−S−9界面活性剤(ダウ・ケミカル社、ユニオン・カーバイド、コネティカット州ダンベリ)を加えた。
【0092】
バルカン(登録商標)XC72R粉末を以下の手続きによって前処理した:60.2gの粉末を2%の硝酸を用いてスラリーにした(69%硝酸を水で希釈することによって調製した、J.T.ベーカー)。この材料を5時間30分還流し、2ミクロン・フィルタでろ過し、次いで、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。この材料の1.69gを反応に使用した。
【0093】
この実施例では、速いRuCl添加速度(0.94mmolesRu/分)は、処理された炭素担体および界面活性剤の存在とあいまって、表1の0.0nm/nm応答特性によって示されるように、非凝集化触媒粉末の形成に有利に貢献することが示される。
【0094】
実施例1および2と比較例BおよびCを比較すると、1分あたり0.3ミリモルのルテニウムより速いRuCl添加速度により、処理された担体、および分散剤または界面活性剤とあいまって、凝集化が最小の触媒が製造されることが示される。
【0095】
実施例3
この実施例では、範例でHとRuClを共に加えた;また、12.45重量%(Ptとして)のクロロ白金酸溶液84.34gの添加前に、界面活性剤と炭素担体を前もって混合し、1500mlの水を、磁気撹拌子を含む10リットル容器に加え、大きい磁気撹拌プレートの上にそれを置いた。52.94gのNaHSO(J.T.ベーカー、3556,01、ニュージャージー州フィリップスバーグ)を加え、5分間撹拌した。希釈した炭酸ナトリウム溶液を使用してpHを約5.0に調節した。30重量%の過酸化水素溶液400ml(VWR,ペンシルバニア州ウェスト・チェスター)を加えた。重炭酸ナトリウム溶液を使用して溶液のpHを5に制御した。2.54重量%(Ruとして)の塩化ルテニウム溶液214.17gを300mlの水で希釈し、溶液に15分にわたってゆっくり加えた。添加の際、pHを約5.0に制御した(10%のNaOH溶液を使用し、20ml/分の速度でそれも加えた)。蒸留水から製造したいくつかの角氷を、RuCl添加の全体にわたって入れることによって、温度を制御した。塩化ルテニウム添加の間、H溶液(2174ml)の残りを、同じ時間にわたって共に加えた。この温度は、RuCl添加の間、約50℃を超えないようにした。
【0096】
5.07gのバルカン(登録商標)XC−72R炭素(キャボット社、マサチューセッツ州ボストン)を、61.21gのバルカン(登録商標)XC72R粉末(キャボット社、マサチューセッツ州ボストン)を2パーセントのHNO1リットルの中に入れることによって、酸処理した。炭素および酸を、5時間30分還流し、冷却し、2マイクロメータ・フィルタを通してろ過し、真空オーブン中100℃で5時間乾燥させた。処理された炭素を、テルギトール(登録商標)TM15−S−9界面活性剤(ダウ・ケミカル社、ユニオン・カーバイド、コネティカット州ダンベリ)を含む10重量%の溶液0.15gと混合した。使用前に、炭素および界面活性剤混合物を2分間粉化した。
【0097】
酸処理したバルカン(登録商標)XC−72R炭素とテルギトール(登録商標)界面活性剤の混合物を、白金およびルテニウム反応物を含む反応容器に加え、pHが安定化するまで15分間撹拌した。次いで、化合した混合物を、容器の底部近くに浸漬されたガラス・フリットを通して窒素ガスを導入できる容器に入れた。次いで、100%Hガスを130ml/分の速度で導入し、この混合物を、それを機械的に撹拌しながら、約12時間水素噴霧した。水素噴霧手続きの後、反応容器を、Nガスで約20分間パージし(50ml/minの速度)、次に、内容物を2ミクロン・フィルターディスクでろ過した。その後、得られたケーキを5リットルの水で洗浄し、使用前、空気中で一晩乾燥させた。
【0098】
実施例3では、処理された炭素、界面活性剤、およびRuClの速い速度が使用される系では、一部の過酸化水素を、塩化ルテニウム溶液と共に一緒に加えることができることが例示される。このプロセスの変形形態の利点は、それにより、特に(過酸化水素の分解と関連して)起こり得る発泡を考慮して、反応に関するより大きい制御が提供されることである。
【0099】
比較例D
実施例3に記載したのと同じ手続きを使用した。12.45重量%のPt溶液84.34gおよび2.54重量%のRu溶液214.17gを使用した。界面活性剤は、どのステップの間も全く加えなかった。
【0100】
触媒材料は、Hガス中で14時間噴霧した後、ろ過し、水で洗浄した。洗浄ステップの際、ろ液は色が非常に黒かった。ICP(誘導結合プラズマ)分析およびXRF(蛍光X線分析分光法)分析の両方による生成物の最後の分析では、炭素担体上への貴金属触媒の不十分な堆積が示された。XRFで測定した粉末のPt:Ru原子比は0.74、ICPで測定したものは0.9であった。
【0101】
この実施例では、75.9重量%のPt/Ruで処理されたバルカン(登録商標)炭素を利用し、界面活性剤は全く加えなかった。この結果は、触媒担体への貴金属の不十分な堆積であった。それは、界面活性剤または分散剤、および処理された炭素を利用して担持された貴金属触媒を製造することの重要性を示す。
【0102】
表1
実施例1〜3および比較例A〜Dの結果
表1に示したデータは、28枚の画像(それぞれ100,000倍の倍率で、触媒は視野の1/3を占める)を通じて凝集体体積を合計し、次に、28枚の写真を通じて撮像された合計の幾何学的面積で割ることによって得た幾何学的な面積あたりの合計の凝集体体積である。
【0103】
データを得るため、nmで表した貴金属粒子の凝集体体積を、28枚の画像に測定された合計の二次元幾何学的面積で割った。このデータは、「応答特性」として示され、触媒表面に撮像された幾何学的面積nmあたりのnm×1011を単位にして表している。炭素担体上の貴金属凝集体に対しては球形の凝集体幾何形状が仮定されている。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例1および2、並びに比較例BおよびCを、統計学的に設計した実験のより大きいデータセットの一部として分析し、そこで、3つのパラメータ、(i)炭素担体の処理対処理なし、(ii)分散剤(ダグサド(登録商標))対界面活性剤(テルギトール(登録商標))の添加、および、(iii) RuCl添加速度(15分間対60分間)を調べた。統計学上の分析のためにECHIPソフトウェア(ECHIP社、デラウェア州ホッケシン(Hockessin))を使用した。統計学的に設計した実験概念の説明は、「実験者のための統計学、設計への入門、データ分析およびモデル構築(Statistics for Experimenters, An Introduction to Design, Data Analysis and Model Building)」(G.ボックス(Box)、W.ハンター(Hunter)、J.ハンター(Hunter)、ジョン・ワイリー・アンド・サン(John Wiley and Sons)、1978)などの教科書に述べられている。
【0106】
上記データの統計学上の分析によれば、界面活性剤または分散剤の存在下においては、より速いルテニウム添加速度(15分にわたって行う)および炭素担体の処理が有利であることが示された。加えて、界面活性剤または分散剤の存在下では、予想外の統計学的に証明された(95%を超える信頼性で)、ルテニウムの添加速度と炭素担体の処理の間の2方向の相互作用が観察された。これは、担体上の貴金属触媒粒子の凝集化の程度を最小限にする2つの重要なパラメータ間の全く驚異的かつ特異な増強された相互作用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(IV)未満の原子価を有する白金を含む白金反応物溶液を提供し、
酸化剤を加え、
処理された粒子炭素を提供し、
前記粒子炭素を前記白金反応物溶液に導入し、そして
前記粒子炭素を含む前記白金反応物溶液を沈殿剤と接触させる
ことを含んでなる貴金属触媒を調製する方法。
【請求項2】
前記処理された粒子炭素を提供する前に、
(IV)未満の原子価を有するルテニウムを含むルテニウム反応物の溶液を提供し、そして
前記ルテニウム反応物溶液を前記白金反応物溶液に加える
ことをさらに含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ルテニウム反応物溶液が1分あたり0.3ミリモルより速い速度で前記白金溶液に加えられる請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化剤の少なくとも一部が前記ルテニウム反応物溶液の前記添加と同時に前記白金溶液に加えられる請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ルテニウム反応物が水溶性のルテニウム(III)化学種よりなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ルテニウム反応物が塩化ルテニウム、ルテニウムニトロシル硝酸塩、およびルテニウムニトロシル硫酸塩よりなる群から選択される請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記ルテニウム反応物が塩化ルテニウムを含んでなる請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記白金反応物が水性クロロ白金酸溶液を提供し、そして前記水性クロロ白金酸溶液に亜硫酸水素ナトリウムを加えて、亜硫酸白金酸を形成することによって形成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記白金反応物が水溶性の白金(II)塩よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記白金反応物が亜硫酸白金酸、テトラクロロ白金(II)酸アンモニウム、テトラクロロ白金(II)酸カリウム、および水溶性の白金(II)ホスフィン錯体類よりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記クロロ白金酸溶液に、固体を合わせた合計重量を基準にして約0.001重量パーセント〜約2.0重量パーセントの分散剤または界面活性剤を含む懸濁液を加えることをさらに含んでなる請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化剤が過酸化水素、酸素ガス、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
粒子炭素担体および約5〜約95重量パーセントの粒子金属を含んでなる貴金属触媒であって、前記金属が白金を含んでなり、前記触媒が約2.4×1011nm/nm未満の合計凝集体体積を有する、貴金属触媒。
【請求項14】
前記白金の量が前記白金および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項13に記載の触媒。
【請求項15】
ルテニウムをさらに含んでなる請求項13に記載の触媒。
【請求項16】
前記凝集体体積が約1.65nm/nm未満である請求項13に記載の触媒。
【請求項17】
前記炭素が、処理される請求項13に記載の触媒。
【請求項18】
前記処理が、前記炭素を、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項17に記載の触媒。
【請求項19】
前記処理が、前記炭素を、酸化性酸よりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項17に記載の触媒。
【請求項20】
前記酸化性酸が硝酸、過塩素酸、塩素酸、過マンガン酸、およびクロム酸よりなる群から選択される請求項19に記載の触媒。
【請求項21】
前記炭素担体が炭素の重量を基準にして約0.1〜約5重量パーセントの酸素含量を有する請求項13に記載の触媒。
【請求項22】
前記白金および前記ルテニウムの合計量が前記白金、前記ルテニウム、および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項15に記載の触媒。
【請求項23】
前記白金の量が前記白金および前記炭素担体の合計重量の約60〜約80重量パーセントである請求項13に記載の触媒。
【請求項24】
前記白金および前記ルテニウムの合計量が前記白金、前記ルテニウム、および前記炭素担体の合計重量の約60〜約80重量パーセントである請求項15に記載の触媒。
【請求項25】
前記触媒が粒子炭素担体および約5〜約95重量パーセントの粒子金属を含んでなり、前記金属が白金を含んでなり、かつ、約2.4×1011nm/nm未満の合計凝集体体積を有する、請求項1に記載の方法に従って調製される触媒。
【請求項26】
前記触媒が約20〜約90重量パーセントの白金を含んでなる請求項25に記載の触媒。
【請求項27】
前記触媒が約60〜約80重量パーセントの白金を含んでなる請求項25に記載の触媒。
【請求項28】
前記触媒がさらにルテニウムを含んでなる請求項25に記載の触媒。
【請求項29】
前記凝集体体積が約1.65nm/nm未満である請求項25に記載の触媒。
【請求項30】
前記炭素が処理される請求項25に記載の触媒。
【請求項31】
前記処理が、前記炭素を、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項30に記載の触媒。
【請求項32】
前記処理が、前記炭素を、酸化性酸よりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項30に記載の触媒。
【請求項33】
前記酸化性酸が硝酸、過塩素酸、塩素酸、過マンガン酸、およびクロム酸よりなる群から選択される請求項32に記載の触媒。
【請求項34】
前記炭素担体が炭素の重量を基準にして約0.1〜約5重量パーセントの酸素含量を有する請求項25に記載の触媒。
【請求項35】
前記白金の量が前記白金および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項25に記載の触媒。
【請求項36】
前記白金および前記ルテニウムの合計量が前記白金、前記ルテニウム、および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項28に記載の触媒。
【請求項37】
前記白金および前記ルテニウムの合計量が前記白金、前記ルテニウム、および前記炭素担体の合計重量の約60〜約80重量パーセントである請求項28に記載の触媒。
【請求項38】
電極触媒被覆組成物をその上に被覆した基板を含んでなる被覆基板であって、
電極触媒被覆組成物が粒子炭素担体および粒子白金を含んでなるアノードまたはカソード電極触媒を含んでなり、前記触媒が約5〜約95重量パーセントの白金を含んでなり、かつ約2.4×1011nm/nm未満の合計凝集体体積を有する、被覆基板。
【請求項39】
前記基板がイオン交換膜である請求項38に記載の被覆基板。
【請求項40】
前記イオン交換膜がペルフルオロ化スルホン酸高分子の酸形態である請求項39に記載の被覆基板。
【請求項41】
前記基板がガス拡散バッキングである請求項39に記載の被覆基板。
【請求項42】
前記電極触媒被覆組成物が結合剤をさらに含んでなる請求項38に記載の被覆基板。
【請求項43】
前記結合剤がイオン交換高分子である請求項42に記載の被覆基板。
【請求項44】
前記電極触媒被覆組成物が溶剤をさらに含んでなる請求項38に記載の被覆基板。
【請求項45】
前記炭素が処理される請求項38に記載の被覆基板。
【請求項46】
前記処理が、前記炭素を、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項45に記載の被覆基板。
【請求項47】
前記処理が、前記炭素を、酸化性酸よりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項45に記載の被覆基板。
【請求項48】
前記酸化性酸が硝酸、過塩素酸、塩素酸、過マンガン酸、およびクロム酸よりなる群から選択される請求項45に記載の被覆基板。
【請求項49】
前記炭素担体が炭素の重量を基準にして約0.1〜約5重量パーセントの酸素含量を有する請求項45に記載の被覆基板。
【請求項50】
前記白金の量が前記白金および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項45に記載の被覆基板。
【請求項51】
被覆基板を含んでなる燃料電池であって、
前記被覆基板が電極触媒被覆組成物をその上に被覆した基板を含んでなり、かつ、電極触媒被覆組成物が粒子炭素担体および粒子白金を含んでなるアノードまたはカソード電極触媒を含んでなり、前記触媒が、約5〜約95重量パーセントの白金を含んでなり、かつ約2.4×1011nm/nm未満の合計凝集体体積を有する燃料電池。
【請求項52】
前記基板がイオン交換膜である請求項51に記載の燃料電池。
【請求項53】
前記イオン交換膜がペルフルオロ化スルホン酸高分子の酸形態である請求項51に記載の燃料電池。
【請求項54】
前記基板がガス拡散バッキングである請求項51に記載の燃料電池。
【請求項55】
前記電極触媒被覆組成物が結合剤をさらに含んでなる請求項51に記載の燃料電池。
【請求項56】
前記結合剤がイオン交換高分子である請求項55に記載の燃料電池。
【請求項57】
前記電極触媒被覆組成物が溶剤をさらに含んでなる請求項51に記載の燃料電池。
【請求項58】
前記炭素が処理される請求項51に記載の燃料電池。
【請求項59】
前記処理が、前記炭素を、酸素ガス、過酸化水素、有機過酸化物、およびオゾンよりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項58に記載の燃料電池。
【請求項60】
前記処理が、前記炭素を、酸化性酸よりなる群から選択される物質と接触させることを含んでなる請求項58に記載の燃料電池。
【請求項61】
前記酸化性酸が硝酸、過塩素酸、塩素酸、過マンガン酸、およびクロム酸よりなる群から選択される請求項60に記載の燃料電池。
【請求項62】
前記炭素担体が炭素の重量を基準にして約0.1〜約5重量パーセントの酸素含量を有する請求項52に記載の燃料電池。
【請求項63】
前記白金の量が前記白金および前記炭素担体の合計重量の約50〜約90重量パーセントである請求項51に記載の燃料電池。
【請求項64】
前記基板がイオン交換膜である請求項51に記載の燃料電池。
【請求項65】
前記イオン交換膜がペルフルオロ化スルホン酸高分子の酸形態である請求項51に記載の燃料電池。
【請求項66】
前記基板がガス拡散バッキングである請求項51に記載の燃料電池。

【公表番号】特表2006−518665(P2006−518665A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503531(P2006−503531)
【出願日】平成16年2月10日(2004.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/004165
【国際公開番号】WO2004/073090
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】