説明

電極設定システム及び電極設定方法

【課題】電界通信の際に、携帯情報端末の持ち方や携帯情報端末の形状が変形しても十分な通信性能を引き出す。
【解決手段】電極20A,20B,20C,20Dのそれぞれが信号電極、グランド電極あるいはオフの状態のいずれかの状態となるように設定する電極切替回路14と、送信電圧および受信電圧を検出するモニタ回路13と、を備え、モニタ回路13が検出した送信電圧あるいは受信電圧が最適となるように電極20A,20B,20C,20Dの組み合わせを設定する。これにより、状況に応じた電界通信に最適な信号電極、グランド電極の配置が得られるので、携帯電話機の持ち方や形状の変化に応じて十分な通信性能を引き出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信すべき情報に基づく電界を電界伝達媒体に誘起させるとともに、この誘起した電界を検出して情報の送受信を行う電界通信装置に接続される電極を設定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの電界伝達媒体に電界を誘起し、この誘起された電界を用いてデータ通信を行う電界通信装置が提案されている。電界通信装置に用いる電極は、その送信および受信性能を向上させるために、さまざまな工夫が施される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−303922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、携帯電話機などの携帯情報端末に電界通信装置を内蔵する場合、携帯情報端末の持ち方、身につけ方、あるいは、折りたたみ式やスライド式など形状が変形する携帯電話機において、変形した形状によっては十分な通信性能が出せない可能性があった。
【0004】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、携帯情報端末の持ち方や携帯情報端末の形状が変形しても十分な通信性能を引き出すことにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の本発明に係る電極設定システムは、電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に用いる電極を設定する電極設定システムであって、複数の電界通信用の電極と、複数の電極の接続を切り替える切替手段と、送信電圧及び受信電圧の少なくとも一方を検出するモニタ手段と、モニタ手段が検出する送信電圧あるいは受信電圧が電界通信に適するように切替手段を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
【0006】
上記電極設定システムにおいて、切替手段は、電極が信号電極、グランド電極あるいはオフ状態のいずれかとなるように電極の接続を切り替えることを特徴とする。
【0007】
第2の本発明に係る電極設定方法は、電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に用いる電極を設定する電極設定方法であって、切替手段により、複数の電極の接続を切り替えるステップと、モニタ手段により、送信電圧及び受信電圧の少なくとも一方を検出するステップと、制御手段により、モニタ手段が検出する送信電圧あるいは受信電圧が最適となるように切替手段を制御するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、切替手段により複数の電極を切り替えつつ、モニタ手段により送信電圧、受信電圧を検出し、検出した送信電圧、受信電圧が電界通信に適するように切替手段を制御することにより、状況に応じた電極の接続状態が得られるので、携帯情報端末の持ち方や携帯情報端末の形状が変形しても十分な通信性能を引き出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態における電極設定システムを備えた携帯電話機に配置した電極の構成を示す平面図であり、図1(a)は携帯電話機の前面から見た平面図、図1(b)は携帯電話機の側面から見た平面図である。同図に示すように、携帯電話機の筐体10の内部の前面には電極20A,20Bが配置され、背面には電極20C,20Dが配置されている。
【0011】
図2は、上記携帯電話機の構成を示すブロック図である。同図に示すように携帯電話機は、マイコン(マイクロコンピュータ)11、送受信部12、モニタ回路13、および電極切替回路14を有する。また、図示していないが携帯電話機としての機能を実現する回路も有する。
【0012】
電極切替回路14は、電極20A,20B,20C,20Dのそれぞれが信号電極、グランド電極あるいはオフ状態となるように電極20A,20B,20C,20Dの接続状態を切り替える。送信時に利用する電極の組み合わせは、モニタ回路13によりキャリア信号の送信電圧を検出し、検出した送信電圧が最大となるように決定する。受信時に利用する電極の組み合わせは、モニタ回路13により受信電圧を検出し、検出した受信電圧が最大となるように決定する。電極の組み合わせとは、送信時あるいは受信時に、信号電極として利用する電極20A,20B,20C,20Dとグランド電極として利用する電極20A,20B,20C,20Dの組み合わせである。
【0013】
図3は、送受信部12の構成を示すブロック図である。同図に示す送受信部12は、I/O回路121、送信回路122、電界検出部123、信号処理回路124、および波形整形回路125を備える。
【0014】
送受信部12は、マイコン11からの送信データをI/O回路121を介して受け取ると、この送信データを送信回路122を介して電極切替回路14により信号電極として接続された電極20A,20B,20C,20Dに供給し、電極20A,20B,20C,20Dは、送信データに対応する電界を電界伝達媒体に誘起する。電界伝達媒体に誘起された電界は、電界伝達媒体を伝達して別の電界通信装置で受信される。
【0015】
一方、電界伝達媒体に誘起されて伝達した電界は、電極切替回路14により信号電極として接続された電極20A,20B,20C,20Dで受信され、電界検出部123に供給され、電気信号に変換される。信号処理回路124は、この電気信号に増幅、雑音除去などの信号処理を施す。その後、この電気信号は、波形整形回路125で波形整形され、I/O回路121を介して受信データとしてマイコン11に供給される。
【0016】
次に、電極の組み合わせを決定する処理について説明する。
【0017】
図4は、受信時の電極の組み合わせを決定するときの処理の流れを示すシーケンス図である。受信時の電極の組み合わせを決定する際、携帯電話機は電極調整要求を埋込型送受信機へ送出する(ステップ401)。埋込型送受信機とは、床、改札あるいは自動販売機など所定の場所に固定された電界通信用の電極を備え、電界通信を行うことができる機器である。
【0018】
電極調整要求を受信した埋込型送受信機は、電界通信により電極調整信号を一定時間送出する(ステップ402)。携帯電話機は、送出された電極調整信号を受信しつつ、信号電極、グランド電極となる電極の組み合わせを切り替えて、受信電圧が最大となる電極の組み合わせを決定する(ステップ403)。
【0019】
図5、図6、および図7は、電極の組み合わせの例を示す図である。各図の左側は電極の一覧を示し、最上段は電極の状態を示す。電極の状態はS,G,OFFと3つの記号で表した。それぞれ信号電極、グランド電極、オフ状態を示している。そして、図中の○印は、電極がどの状態であるかを示している。
【0020】
各電極20A,20B,20C,20Dそれぞれの状態は、S,G,OFFのいずれかの状態となる。各電極20A,20B,20C,20Dの状態の全ての組み合わせを総当たりで選択し、モニタ回路13で検出される受信電圧が最大となる組み合わせを求め、受信時に採用する組み合わせを決定する。例えば、電極20A,20Bが配置された前面を人体に密着させて携帯している場合は、図5に示す組み合わせのように、電極20A,20Bが信号電極となり、電極20C,20Dがグランド電極となる組み合わせが採用されると考えられる。一方、携帯電話機の操作ボタンが配置された下部を保持している場合は、図6に示す組み合わせのように、電極20B,20Dが信号電極となり、電極20A,20Cがグランド電極となる組み合わせが採用されると考えられる。もちろん、採用する組み合わせは、受信電圧を検出し、その受信電圧が最大となる組み合わせを採用する。
【0021】
また、図7の示す組み合わせの電極20B,20Dのように、信号電極、グランド電極のいずれとしても用いないオフ状態の電極を含む組み合わせを採用してもよい。
【0022】
なお、組み合わせを総当たりして受信電圧が最大となる組み合わせを採用するほかに、受信電圧が予め設定した閾値を超えた組み合わせを採用する方法もある。まず、総当たりで受信電圧を検出した結果を記憶しておく。そして、組み合わせを決定する際に、記憶した結果の受信電圧の大きい順に電極の組み合わせを試して受信電圧を検出し、受信電圧が予め設定した閾値を超えた組み合わせを採用する。あるいは、よく利用される組み合わせを記憶しておき、使用頻度の高い順に電極の組み合わせを試して受信電圧を検出し、受信電圧が予め設定した閾値を超えた組み合わせを採用する。
【0023】
電極調整信号によらず、送信データの先頭に付加されているプリアンブルを用いて電極の組み合わせを決定してもよい。
【0024】
送信時に利用する電極の組み合わせを決定する処理も、上記受信時の処理と同様に、電極の組み合わせを総当たりで試して送信電圧が最大となる組み合わせを採用する。もちろん、送信電圧が予め設定した超えた組み合わせを採用するものでもよい。あるいは、よく利用される組み合わせを記憶しておき、使用頻度の高い順に電極の組み合わせを試して送信電圧を検出し、送信電圧が予め設定した閾値を超えた組み合わせを採用する。
【0025】
図8は、別の電極の構成を示す平面図である。図8(a)は携帯電話機の前面から見た平面図、図8(b)は携帯電話機の背面から見た平面図である。同図に示すように、さらに多くの電極20をメッシュ状に配置するものでもよい。この場合も上記と同様に、通信に最適な電極20の組み合わせを選択する。もちろん、電極20は、筐体10の前面や背面だけでなく、側面などに配置するものでもよい。
【0026】
上記では、ストレート型の携帯電話機に電極を配置した実施例を示した。折りたたみ型、T字型、L字型、あるいはスライド型など、筐体が変形する形状の携帯電話機に本発明を適用することで、変形前後の形状それぞれに適した電極の組み合わせを採用し、通信性能の向上を図ることができる。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、電極20A,20B,20C,20Dのそれぞれが信号電極、グランド電極あるいはオフ状態のいずれかの状態となるように設定する電極切替回路14と、送信電圧および受信電圧を検出するモニタ回路13と、を備え、モニタ回路13が検出した送信電圧あるいは受信電圧が最適となるように電極20A,20B,20C,20Dの接続状態を設定することで、状況に応じた電界通信に最適な信号電極、グランド電極の配置が得られるので、携帯電話機の持ち方や形状の変化に応じて十分な通信性能を引き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施の形態における電極設定システムを備えた携帯電話機に配置した電極の構成を示す平面図であり、図1(a)は携帯電話機の前面の平面図、図1(b)は携帯電話機の側面の平面図である。
【図2】一実施の形態における携帯電話機の構成を示すブロック図である。
【図3】上記携帯電話機の送受信部の構成を示すブロック図である。
【図4】上記携帯電話機が受信電極の組み合わせを決める処理の流れを示すシーケンス図である。
【図5】電極の組み合わせの例を示す図である。
【図6】電極の別の組み合わせの例を示す図である。
【図7】電極のさらに別の組み合わせの例を示す図である。
【図8】一実施の形態における電極設定システムを備えた携帯電話機に配置した別の電極の構成を示す平面図であり、図8(a)は携帯電話機の前面の平面図、図8(b)は携帯電話機の背面の平面図である。
【符号の説明】
【0029】
10…筐体
11…マイコン
12…送受信部
13…モニタ回路
14…電極切替回路
20,20A,20B,20C,20D…電極
121…I/O回路
122…送信回路
123…電界検出部
124…信号処理回路
125…波形整形回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に接続される電極を設定する電極設定システムであって、
複数の電界通信用の電極と、
前記複数の電極の接続状態を切り替える切替手段と、
前記電界通信装置の送信電圧及び受信電圧の少なくとも一方を検出するモニタ手段と、
前記モニタ手段が検出する送信電圧あるいは受信電圧が電界通信に適するように前記切替手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする電極設定システム。
【請求項2】
前記切替手段は、前記電極それぞれが信号電極、グランド電極あるいはオフ状態のいずれかとなるように前記電極の接続状態を切り替えることを特徴とする請求項1記載の電極設定システム。
【請求項3】
電界伝達媒体に電界を誘起して通信を行う電界通信装置に接続される電極を設定する電極設定方法であって、
切替手段により、複数の電極の接続状態を切り替えるステップと、
モニタ手段により、前記電界通信装置の送信電圧及び受信電圧の少なくとも一方を検出するステップと、
制御手段により、前記モニタ手段が検出する送信電圧あるいは受信電圧が最適となるように前記切替手段を制御するステップと、
を有することを特徴とする電極設定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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