説明

電極集電体、鉛蓄電池用電極及び鉛蓄電池

【課題】電極集電体の機械的強度や剛性を損なうことなく、鉛質量を削減する。
【解決手段】鉛又は鉛合金からなる電極集電体1であって、電極活物質2が設けられる格子状をなす内枠11と、当該内枠11の外側に設けられる外枠12とを備え、前記外枠12の外側周面12aに凹部121が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極集電体及びこれを用いた鉛蓄電池用電極及び鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉛蓄電池においては、その製造コストの低減が1つの問題である。そして、この製造コストを低減させる方法としては、鉛蓄電池に使用する鉛量又は鉛合金量を削減することが考えられる。
【0003】
ここで鉛蓄電池に使用される鉛又は鉛合金のほとんどは、電極を構成する電極集電体、この電極集電体に保持される電極活物質、複数の正極集電体及び負極集電体をそれぞれ一体的に接続するストラップ、このストラップに接続された極柱、及びこの極柱に接続された端子に含まれている。
【0004】
前記電極活物質は、鉛蓄電池の性能を決定する主要な部分であるため、容易に軽量化することができない。また前記ストラップ、極柱及び端子は、通常、最大充放電電流を流したときに溶断や劣化しない程度に設計されており、これらも容易に軽量化することはできない。
【0005】
このようなことから電極集電体を軽量化することが考えられるが、電極集電体の平面形状及び厚みは、前記電極活物質の保持量の設計仕様によって定まる事項である。
【0006】
この状況下においても電極集電体の質量を低減させる方法として、電極集電体の格子状の内枠の外側に設けられた一般的に親骨、親桟等と称される外枠の幅寸法又は厚さ寸法を小さくして鉛又は鉛合金を削減する方法が考えられる。
【0007】
しかしながら、外枠の幅寸法又は厚さ寸法を小さくすると、電極集電体としての機械的強度や剛性を損なってしまうという問題がある。また、外枠の厚さ寸法を小さくすると電極板全体として薄くなってしまい、電極活物質の保持量が設計仕様を満たさなくなる等の問題が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−308223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決すべくなされたものであって、電極集電体の機械的強度や剛性を損なうことなく、鉛質量を削減することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る電極集電体は、鉛又は鉛合金からなる電極集電体であって、電極活物質が設けられる格子状をなす内枠と、当該内枠の外側に設けられる外枠とを備え、前記外枠の外側面に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、外枠の外側面に凹部が形成されているので、外枠の機械的強度や剛性を損なうことなく、外枠の鉛質量を削減することができる。これにより、電極集電体全体の機械的強度や剛性を損なうことなく、鉛質量を削減することができる。電極集電体全体が機械的強度や剛性を有していると、電極を両端で保持しておいた場合の自重によるたわみを少なくすることができ、電極の製造工程での取り扱いを容易に行うことができる。
【0012】
鉛質量の観点から言うと、正極集電体及び負極集電体のいずれにおいても、その外枠の外側面に凹部を設けることで鉛質量の削減が可能となる。しかしながら、正極集電体は充電によって腐食が進行して、鉛蓄電池の主たる寿命要因となる部分であるため、正極集電体を軽量化すると寿命性能が低下することが考えられる。そこで、正極集電体に比べて、ほとんど劣化することが無い負極集電体において、その外枠の外側面に凹部を設けることで、鉛蓄電池の寿命を短くすることなく、又は負極集電体の機械的強度を損なうことなく、鉛質量の削減が可能となる。
【0013】
電極集電体の鉛質量を可及的に削減するためには、前記凹部が、前記外枠の外側面の略全体に形成されていることが望ましい。ここで凹部が外側面の略全体に形成されているとは、1つの線条をなす凹部が略全体にわたって形成されている、つまり凹溝が外側面の略全体にわたって形成されていることの他、複数の凹部が例えば等間隔に略全体にわたって離散的に形成されていることを含む概念である。
【0014】
また、本発明に係る鉛蓄電池用電極は、電極活物質が設けられる格子状をなす内枠及びこの内枠の外側に設けられる外枠を有する電極集電体と、この電極集電体の内枠に設けられた電極活物質とを備えており、前記外枠の外側面に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明に係る鉛蓄電池は、正極活物質及び正極集電体からなる正極板と、負極活物質及び負極集電体からなる負極板と、それら正極板及び負極板が浸漬される電解液とを備える鉛蓄電池において、前記正極集電体又は前記負極集電体の少なくとも一方が、電極活物質が設けられる格子状をなす内枠と、当該内枠の外側に設けられる外枠とを備え、前記外枠の外側面に凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、電極集電体の機械的強度や剛性を損なうことなく鉛質量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の負極集電体の構成を概略的に示す全体斜視図。
【図2】同実施形態の負極集電体の平面図及び各断面図を示す図。
【図3】同実施形態の部分拡大断面図。
【図4】負極集電体の変形例を示す部分拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る鉛蓄電池に用いられる負極集電体の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る負極集電体1は、鉛蓄電池に用いられるものであり、例えば重力鋳造法等の鋳造により製造された標準格子タイプの集電体である。なお、鉛蓄電池は、二酸化鉛からなる正極活物質及び鉛又は鉛合金からなる正極集電体から構成される正極板、及び鉛からなる負極活物質及び鉛又は鉛合金からなる負極集電体1から構成される負極板をセパレータを介して積層して構成される電極群を電解液内に浸漬したものである。また、鉛合金としては、例えばPb−0.05質量%Ca−0.5質量%Snの鉛合金である。
【0020】
具体的に負極集電体1は、図1及び図2に示すように、平面視において概略矩形状をなすものであり、電極活物質が設けられる格子状をなす内枠11と、この内枠11の外側に設けられる外枠12とを有する。
【0021】
外枠12は、内枠11の側周縁全体を囲むように設けられた概略矩形枠形状をなすものである。また、外枠12の上端面にはストラップに接続される集電のための耳部13が突出して形成されている。
【0022】
そして本実施形態の外枠12の外側面12aには、図2及び図3に示すように、内枠11とは反対側(外側)から内枠11側に向かって凹んだ凹部121が形成されている。凹部121を形成する方法としては、例えば、フライス加工等の機械加工によって外側面12aを切削する方法や、従来の固定型及び移動型の2分割の鋳型ではなく、外側面12aに対応する面に凸部を設けた、少なくとも固定型、移動型及び側型の3分割、望ましくは従来鋳型の両側部と底部ともに凸部設けた固定型、移動型、左右側型、底型の5分割の鋳型を用いて鋳造する方法がある。なお、ここで外側面とは、外枠における内枠とは反対側の側面である。
【0023】
具体的にこの凹部121は、外側面12aの耳部13が形成された部分を除いた略全ての部分において、外側面12aの長手方向に沿って延在した凹溝である。この凹部121の厚み方向の断面形状は、本実施形態では概略コの字形状をなすように形成されている。また、凹部121の深さ寸法及び幅寸法は、外枠12の幅寸法、厚さ寸法により定まり、負極集電体1の機械的強度及び剛性を損なわない程度に設定されている。なお、凹部121の深さを変え貫通孔とした場合は、負極集電体1の機械的強度が弱くなることがある。
【0024】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る負極集電体1によれば、外枠12の外側面12aに凹部121が形成されているので、外枠12の機械的強度や剛性を損なうことなく、外枠12の鉛質量を削減することができる。これにより、負極集電体1全体の機械的強度や剛性を損なうことなく、また電極活物質の保持量を小さくすることなく、鉛質量を削減することができる。また、正極集電体に比べて、ほとんど劣化することが無い負極集電体1において、その外枠12の外側面12aに凹部121を設けることで、鉛蓄電池の寿命を短くすることなく、鉛質量の削減が可能となる。
【0025】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0026】
例えば、前記実施形態では負極集電体について説明したが、その他、正極集電体に適用することもできる。なお、この場合、正極集電体の腐食との関係で、凹部の大きさを決定する必要がある。
【0027】
また、凹部の形状としては、前記実施形態の他、図4に示すように、断面V字形状((a)参照)、断面半円(半楕円)形状((b)参照)、断面放物線形状((c)参照)、又は断面コの字形状をなす凹部の底部に突起(又は突条)を有するもの((d)参照)等であっても良い。
【0028】
さらに、前記実施形態では、鋳造式の電極集電体であり、外枠が内枠全周を囲むように設けられた電極集電体について説明したが、内枠の上下に外枠が設けられた電極集電体(例えばエキスパンド集電体)に適用することも可能である。この場合、エキスパンド集電体のメッシュ部である内枠の上部に設けられた外枠である上額部又は内枠の下部に設けられた下額部の外側面に凹部を形成することが考えられる。また、打ち抜きにより製造された電極集電体の外枠の外側面に凹部を形成しても良い。
【0029】
その上、前記実施形態では凹部が連続的に形成された凹溝であったが、その他、複数の凹部を例えば等間隔に形成したものであっても良い。また、前記実施形態では耳部には凹部を形成していないが、耳部の外側面にも凹部を形成しても良い。
【0030】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0031】
1 ・・・負極集電体(電極集電体)
11 ・・・内枠
12 ・・・外枠
12a・・・外側面
121・・・凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛又は鉛合金からなる電極集電体であって、電極活物質が設けられる格子状をなす内枠と、この内枠の外側に設けられる外枠とを備え、
前記外枠の外側面に凹部が形成されていることを特徴とする電極集電体。
【請求項2】
前記電極集電体が、負極集電体である請求項1記載の電極集電体。
【請求項3】
前記凹部が、前記外枠の外側面の略全体に形成されている請求項1又は2記載の電極集電体。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の電極集電体と、当該電極集電体の内枠に設けられた電極活物質とを有する鉛蓄電池用電極。
【請求項5】
請求項4に記載の鉛蓄電池用電極を用いた鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−119175(P2012−119175A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268155(P2010−268155)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】