説明

電極

本発明は、a)M(n+1)AXを含む電極基材(ここで、Mは、元素周期表のIIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族の金属またはこれらの組合せであり、Aは、元素周期表のIIIA、IVA、VAもしくはVIA族の元素またはこれらの組合せであり、Xは、炭素、窒素またはこれらの組合せであり、nは、1、2、または3である);およびb)該電極基材に析出した電極触媒コーティングを備える電極に関し、該コーティングは、b.1)B(1−y)z1z2を含む金属酸化物および/または金属硫化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり、yは、0.4〜0.9であり、0≦z1、z2≦2、およびz1+z2=2である);b.2)Bを含む金属酸化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり、Dはイリジウムであり、EはMoおよび/またはWであり、fは0〜0.25または0.35〜1であり、gは0〜1であり、hは0〜1であり、iは0〜1であり、f+g+h+i=1である);b.3)少なくとも1種の貴金属;b.4)鉄−モリブデン、鉄−タングステン、鉄−ニッケル、ルテニウム−モリブデン、ルテニウム−タングステンまたはこれらの混合物を含む任意の合金または混合物;b.5)少なくとも1種のナノ結晶材料の少なくとも1つから選択される。本発明はまた、前記電極の製造方法、およびその使用にも関する。本発明はまた、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法、およびその製造のための電解槽にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極、該電極の製造方法、およびその使用に関する。本発明はまた、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法、および該製造のための電解槽(cell)も含む。
【背景技術】
【0002】
電解プロセスにおいて使用される、1種または複数の金属酸化物の層またはコーティング(coating)を有する電極基材を備える電極は、よく知られている。普通の槽には、とりわけ、チタン、タンタル、ニッケル、およびスチールが含まれる。今日、チタンが電極としてしばしば用いられるが、チタンが負極となる場合、水素化チタンが生成して、これが最終的に電極の安定性をひどく損ねる。スチールは、電解槽中で停止の間またはその後、腐食し得る。スチールのカソードはまた、原子状水素を伝え得るので、複極槽(bipolar cell)におけるスチールカソードとチタン系アノードとの間の接続は水素化チタンの生成を防ぐためにバックプレート(back-plate)を必要とする場合がある。米国特許第7001494号は、クロルアルカリ槽で用いられるさらなる電極材料を開示する。
【0003】
アルカリ金属塩素酸塩、特に塩素酸ナトリウムの、電気分解による製造はよく知られている。アルカリ金属塩素酸塩は、漂白のために広く用いられている二酸化塩素の製造のための原材料として、特にパルプおよび製紙産業における重要な化学品である。通常、それは非隔離(non-divided)電解槽におけるアルカリ金属塩化物の電気分解によって製造される。このような槽で起こる全体としての化学反応は、
MCl+3HO → MClO+3H
であり、ここで、Mはアルカリ金属である。塩素酸塩プロセスの例は、とりわけ、米国特許第5419818号およびEP 1 242 654に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、電解槽において向上した性能を有する電極の提供を含む。さらなる1つの目的は、水素発生条件、およびアルカリ環境における還元性条件、および酸化性環境への少なくとも短時間の暴露に耐性のある電極を提供することである。本発明のさらなる目的は、電解槽を提供すること、およびアルカリ金属塩素酸塩の製造方法を提供することである。酸素の生成とそれによる爆発の危険が低減され、同時に運転条件が容易になった、このような槽を提供することが特に望まれる。本発明のさらに別の目的は、複極電極、または複極および単極電極のハイブリッドが装備される槽を提供することである。
【0005】
本発明のさらなる目的は、電極の極性を逆転でき、その結果、電極が所定の時間内に逐次、アノードおよびカソードとして働くことができる槽を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、特に槽の電圧を下げながら電解槽において働いている時のカソード電流効率を向上させる電極を提供することである。本発明のさらなる目的は、結果的に材料が節減され、また同じ槽スペースに配置される電極の数を増やすことを可能にする最大限の活用によって、既存のプラントのスケールアップなしに生産を増加させ得る、厚さが減少した電極を提供することである。本発明のさらなる目的は、工業用電極の性能を実質的に維持しながら、電極基材(substrate)への貴金属の金属担持量を減らし得る電極を提供することである。本発明のさらなる目的は、腐食しない電極を提供することであって、それによりアノード上に堆積し得るスラッジを生成しない電極を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
a)M(n+1)AXを含む電極基材(ここで、Mは、元素周期表のIIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族の金属またはこれらの組合せであり、Aは、元素周期表のIIIA、IVA、VAもしくはVIA族の元素またはこれらの組合せであり、Xは、炭素、窒素またはこれらの組合せであり、nは、1、2、または3である);および
b)前記電極基材に析出された、
b.1)B(1−y)z1z2を含む金属酸化物および/または金属硫化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり;yは、0.4〜0.9であり;0≦z1、z2≦2、およびz1+z2=2である);
b.2)Bを含む金属酸化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり、Dはイリジウムであり、EはMoおよび/またはWであり、fは0〜0.25または0.35〜1であり、gは0〜1であり、hは0〜1であり、iは0〜1であり、f+g+h+i=1である);
b.3)少なくとも1種の貴金属;
b.4)鉄−モリブデン、鉄−タングステン、鉄−ニッケル、ルテニウム−モリブデン、ルテニウム−タングステン、またはこれらの混合物を含む任意の合金または混合物;
b.5)少なくとも1種のナノ結晶材料;
の少なくとも1つから選択される電極触媒コーティングを備える電極に関する。
【0008】
一実施形態によれば、Mは、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタルまたはこれらの組合せであり、例えばチタンもしくはタンタルである。
【0009】
一実施形態によれば、Aは、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、硫黄、またはこれらの組合せであり、例えばケイ素である。
【0010】
一実施形態によれば、電極基材は、TiAlC、NbAlC、TiGeC、ZrSnC、HfSnC、TiSnC、NbSnC、ZrPbC、TiAlN、(Nb,Ti)AlC、CrAlC、TaAlC、VAlC、VPC、NbPC、NbPC、TiPbC、HfPbC、TiAlN0.50.5、ZrSC、TiSC、NbSC、HfSc、TiGaC、VGaC、CrGaC、NbGaC、MoGaC、TaGaC、TiGaN、CrGaN、VGaN、VGeC、VAsC、NbAsC、TiCdC、ScInC、TiInC、ZrInC、NbInC、HfInC、TiInN、ZrInN、HfInN、HfSnN、TiTlC、ZrTlC、HfTlC、ZrTlN、TiAlC、TiGeC、TiSiC、TiAlNまたはこれらの組合せのいずれかから選択される。一実施形態によれば、電極基材は、TiSiC、TiAlC、TiAlN、CrAlC、TiAlCのいずれか1つ、またはこれらの組合せである。列挙され、本発明において電極基材として使用され得る材料の調製方法は、The MaxPhases:Unique New Carbide and Nitride Materials、American Scientist、89巻、334〜343頁、2001年により知られている。
【0011】
一実施形態によれば、電極基材の形は、例えば平坦なシートもしくは板、曲がった表面、巻き状の(convoluted)表面、打抜き加工された板、織られたワイヤスクリーン、広げた(expanded)メッシュシート、棒、または管の形状を取り得る。しかし、一実施形態によれば、電極基材は平坦な形状を有し、例えばシート、メッシュまたは板である。
【0012】
一実施形態によれば、b.1)およびb.2)のバルブ金属は、チタン、タンタル、ニオブ、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、またはこれらの組合せから選択でき、例えばチタンである。しかし、他のバルブ金属もまた使用され得る。
【0013】
バルブ金属は、コーティングされた電極が機能すると予期される電解液中で電極として接続された場合、局所アノード条件(local anodic condition)の下で運転した場合に、電解液による腐食から下にある金属を保護する不動態酸化物膜を迅速に生成するという性質を有する膜生成金属(film-forming metals)として知られている。
【0014】
電極触媒コーティングのモル比は、本明細書に規定される範囲に従って変わり得る。一実施形態によれば、yは、0.5〜0.9であり、例えば0.6〜0.9、または0.7〜0.9である。
【0015】
一実施形態によれば、fは、0〜0.15、または0.45〜1であり、例えば0〜0.1、または0.55〜1である。一実施形態によれば、gは、0〜0.8であり、例えば0〜0.5である。一実施形態によれば、hは、0.1〜1、または0〜0.65であり、例えば0.1〜0.65である。一実施形態によれば、iは、0〜0.5、または0〜0.3であり、例えば0〜0.2である。
【0016】
一実施形態によれば、貴金属は、白金、ルテニウム、イリジウム、レニウム、パラジウム、金、銀、ロジウム、またはこれらの組合せである。一実施形態によれば、貴金属は、白金、ルテニウム、イリジウム、レニウム、パラジウム、またはこれらの組合せである。
【0017】
一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、2m/g以上の比表面積を有する。一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、100nm未満の結晶粒径を有する。一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、K−L−Nからなるコンポジットまたはアロイの状態にある:式中、KはPt、Ru、またはPtもしくはRuの化合物であり;Lは、Ru、Ge、Si、W、Sn、Ga、As、Sb、Mo、Ti、Ta、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Rh、V、Pd、Ag、In、Os、Ir、Au、Pb、C、Cd、N、P、Bi、NbおよびZrからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;また、Nは、Al、Mg、Zn、Li、Na、K、Ca、Ti、Zr、MoおよびUからなる群から選択される少なくとも1種の元素である;あるいは、Nは、H、C、N、O、F、Cl、PおよびSからなる群から選択される少なくとも1種の元素である;あるいは、Nは、ここに上で定義された複数の元素Nの組合せである。
【0018】
一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、K’−L’−N’からなるコンポジットまたはアロイの状態にある:式中、K’は、Mg、Be、またはMgもしくはBeの化合物であり;L’は、Li、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、In、Sn、O、Si、BおよびFからなる群から選択される少なくとも1種の元素であり;また、N’は、Al、Mg、Zn、Li、Na、K、Ca、Ti、ZrおよびMoからなる群から選択される少なくとも1種の元素である;あるいは、N’は、H、C、N、O、F、Cl、P、およびSからなる群から選択される少なくとも1種の元素である;あるいは、N’は、金属元素が、L’の定義において列挙された金属の1種、または、Ru、Rh、Pd、Ir、およびPtからなる群から選択される金属である、有機金属化合物である;あるいは、N’は、ここに上で定義された複数の元素N’の組合せである。ナノ結晶材料は、米国特許第5,872,074号、WO 2006/072169、カナダ特許第2492128号、米国特許第5,662,834号、およびWO 97/04146に記載される、さらなる特性を有し得る。電極基材をナノ結晶材料でコーティングする方法もまた、これらの文書から知られる。
【0019】
一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、MoS、WS、RhS、PdS、RuS、PtSおよびこれらの組合せから、例えばMoS、WS、およびこれらの組合せから選択される。ナノ結晶材料は、米国特許第4,237,204号に記載される、さらなる特性を有し得る。
【0020】
一実施形態によれば、ナノ結晶材料は、MRu1−x、MMo1−x、M1−x、MPd1−x、MRh1−x、MPt1−x、およびこれらの組合せから選択され、ここで、Mは、Ni、Co、Fe、Alから選択され、xは、0〜0.7である。
【0021】
一実施形態によれば、本発明の電極はカソードである。一実施形態によれば、電極は複極電極(bipolar electrode)である。
【0022】
一実施形態によれば、本発明の電極は、担体としての役割を果たす絶縁または非絶縁材料に取り付けられる。
【0023】
一実施形態によれば、電極基材の密度は、約3から約6、例えば約4から約4.7、または約4.2から約4.5g/cmの範囲である。
【0024】
一実施形態によれば、SS−EN ISO 4287:1998に従って(Ra,Rz)として測定される、電極基材の表面粗さは、μmで、(0.05,1)から(20,40)、例えば(1,3)から(5,20)の範囲である。
【0025】
一実施形態によれば、電極の厚さは、約0.05から約5、例えば約0.5から約2.5、または約1から約2mmである。
【0026】
一実施形態によれば、電極基材の少なくとも約10、例えば少なくとも約30、または少なくとも約50(例えば少なくとも約70、または少なくとも約95%)の幾何学的表面積は、本明細書に開示される電極触媒コーティングによりコーティングされる。
【0027】
本発明はまた、電極の製造方法にも関し、この方法では、b.1)からb.5)のいずれか1つとして定義される電極触媒コーティングが、本明細書において上で、セクションa)において定義された電極基材上に生成される。
【0028】
一実施形態によれば、電極基材は、機械加工、サンドブラスト加工、グリットブラスト加工、化学的エッチングなど、またはエッチング可能な粒子によるブラスト加工とそれに続くエッチングのような組合せによって粗面化され得る。化学的エッチング剤の使用はよく知られており、このようなエッチング剤には、最も強い無機酸、例えば塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸が含まれるが、シュウ酸のような有機酸も含まれる。一実施形態によれば、粗面化され、ブラスト加工され、酸洗いされた(pickled)電極基材が、例えば浸漬、塗装、ロール塗りまたはスプレーによって、電極触媒コーティングにより、コーティングされる。
【0029】
一実施形態によれば、エッチングのための基材を準備するために、例えばアニーリングによって、不純物を粒界に拡散させるように、金属を状態調整することが最も有用であり得る。
【0030】
一実施形態によれば、溶けた塩または酸の状態の、コーティングのための前駆体は、酸性の水溶液もしくは有機溶液、またはこれらの混合物として溶解している。一実施形態によれば、有機分散体は、アルコール、例えば1−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、またはこれらの混合物を含む。一実施形態によれば、前駆体には、有機溶媒に溶けた、少なくとも1種の有機の塩および/または酸、例えばチタンアルコキシド、テトラブチルチタナート、および/またはテトラペンチルチタナートが含まれる。一実施形態によれば、前駆体には、実質的に水性の分散媒に溶けた、少なくとも1種の無機の塩または酸が含まれる。一実施形態によれば、BおよびCの前駆体、例えばTiClおよびRuClは、有機溶媒、例えばアルコールに溶かされる。
【0031】
一実施形態によれば、有機および/または水性の前駆体溶液は、約0から約5、例えば約1から約4の範囲の見掛けのpHを有する。一実施形態によれば、前駆体、例えば溶かされるバルブ金属の塩または酸には、塩化物、硝酸塩、ヨウ化物、臭化物、硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩、酢酸塩、およびクエン酸塩、例えば酸性溶液中のTiClまたはTiClが含まれる。
【0032】
一実施形態によれば、前駆体溶液は、電極基材上に溶液を付けることによって、例えば総担持量が、約0.1から約10、例えば約1から約6、または約1.5から約3gの金属(例えば貴金属の)/mの範囲になるまで、基材上に堆積される。
【0033】
一実施形態によれば、より厚い酸化物コーティングを得るために、堆積手順が、例えば少なくとも2回、または少なくとも4回、または少なくとも8回繰り返され得る。一実施形態によれば、電極基材上に付着される電極触媒コーティング、例えば金属酸化物コーティングの厚さは、約0.1から約20、例えば約0.1から約4μmの範囲にある。
【0034】
一実施形態によれば、前駆体溶液は、電極基材の細孔に染み込んで、露出した表面をコーティングする。コーティング溶液の浸透深さは、例えば0.1から約500μmであり得る。
【0035】
一実施形態によれば、第1コーティング層は、大きな、例えば該層の全金属量に対して80wt%以上の、バルブ金属含量、例えばチタン含量を有し、この層は電極基材によく接着する。一実施形態によれば、第2またはそれに続く層は、第1コーティング層より大きな、例えば電極基材上に付着される全金属含量に対して、約30を超える、もしくは約50wt%を超える、成分Bの含量を有する。こうして、成分BおよびCの金属酸化物の、それぞれ増加する/減少する含量の勾配が、電極触媒コーティング内に生成され得る。コーティングの良好な接着性は、電極基材により近い内側層に、より少量の活性成分Bを用い、(1つまたは複数の)トップ層に、より多くの量を用いる場合にもたらされ得る。同様に、より多くの量の成分Cが、電極基材に面する(1つまたは複数の)層に用いられ得るのに対して、外側層または(1つまたは複数の)トップ層は、より少量の成分Cを含み得る。
【0036】
一実施形態によれば、金属酸化物の前駆体を含む水性または有機溶液は、電極基材に接触し、次に、それに、前駆体の熱分解によって接着される。
【0037】
一実施形態によれば、前駆体は、例えば約200から約700℃、例えば約350から約550℃の温度で、熱分解され、それによって、生成する金属酸化物は基材に接着する。
【0038】
一実施形態によれば、電着溶液が、モリブデン成分(カソードに電気メッキされることが可能な形のモリブデン、例えばNaMoO)および/または鉄成分(カソードに電気メッキされることが可能な形の鉄、例えばFeClもしくはFeSO)を含み、これらは、in−situに付着され得る。電着溶液は、鉄キレート化剤、例えばNaをさらに含み得る。電着溶液は、緩衝剤、例えば炭酸水素塩(例えばNaHCO)をさらに含み得る。一実施形態によれば、鉄−モリブデンコーティングは、5〜95重量%のモリブデンを含むものを含む。いくつかの実施形態では、鉄−モリブデンコーティングは、5〜50重量%のモリブデンを含む。他の実施形態では、鉄−モリブデンコーティングは、10〜50重量%のモリブデンを含む。別の実施形態では、鉄−モリブデンコーティングは、10〜40重量%のモリブデンを含む。別の実施形態では、鉄−モリブデンコーティングは、25〜35重量%のモリブデンを含む。いくつかの実施形態では、鉄−モリブデンコーティングは、10〜20重量%のモリブデンを含む。電着溶液の濃度はまた、WO2006/039804 A1に記載の通りであり得る。
【0039】
一実施形態によれば、例えばモリブデン成分を含む、電極触媒コーティング(例えば電極触媒酸化物コーティング)は、電着によって、in−situに、すなわち槽内部で、電極基材上に生成される。
【0040】
本発明はまた、本明細書に定められる方法によって得ることができる電極にも関する。本発明はまた、例えばモノクロロ酢酸の電解による製造(例えばジクロロ酢酸の還元または酢酸の塩素化による)のための電解槽における、本明細書に定められる電極の使用にも関する。しかし、本発明の電極は、また、カルボン酸のどのようなアルファ−塩素化にも使用され得る。本発明はまた、電解浮上分離(electro-flotation)法に使用される、本明細書に定められる電極にも関する。本発明の電極は、また、アルカリ金属塩素酸塩の製造、HVDC(高電圧直流)用途、特に、少なくとも1時間または少なくとも1日(例えば少なくとも1週間または少なくとも1カ月)後に、極性が逆転される用途を含めて、いくつかの他の用途にも使用できる。一実施形態によれば、極性は、6カ月後または12カ月後に、逆転される。本発明の電極は、また、消毒用途に、例えば小さなプールにも使用でき、この場合、電極への不純物の蓄積を防ぐために、極性の逆転を用いることができる。本発明の電極の別の用途には、電気透析(electro dialyzing)(ED)槽における使用が含まれ、この場合、本発明の電極は、カソードおよびアノードの両方としての役割を果たすことができる。
【0041】
一実施形態によれば、本発明の電極は、例えば硫酸塩の効率的回収のための、電気透析による水のスプリッティング(splitting)に用いられる。この方法では、様々な由来の硫酸塩を含む水溶液が、少なくとも1つのセパレータを備える電気透析槽に導かれる。直流電流を流すことによって、硫酸塩および水はイオンに分解され、これらは作用を受け、アノライト(anolyte)において硫酸に、またカソライトにおいて水酸化物となる。同様に、本発明の電極はまた、塩素酸ナトリウムのスプリッティング、さらには、酸およびカセイ(caustic)への塩のスプリッティングのための電気透析槽にも使用され得る。このような方法は、例えば米国特許第5,423,959号および米国特許第5,407,547号にさらに開示されている。
【0042】
さらに、本発明は、少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを備える、アルカリ金属塩素酸塩の製造のための電解槽に関し、ここで、該アノードおよびカソードの少なくとも1つは、M(n+1)AXを含む電極基材を含む(ここで、Mは、元素周期表のIIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族の金属またはこれらの組合せであり、Aは、元素周期表のIIIA、IVA、VAもしくはVIA族の元素またはこれらの組合せであり、Xは、炭素、窒素またはこれらの組合せであり、nは、1、2、または3である)。
【0043】
一実施形態によれば、前記槽は、約0.1から約4、例えば約0.2から約1.3m/sの範囲の、槽ギャップ(cell gap)における線速度を有する電解液の流れに耐える丈夫な構造を有する。
【0044】
一実施形態によれば、槽への入口および出口もまた、工業的塩素酸塩槽におけるような、過酷なプロセス条件に対処するように設計される。
【0045】
一実施形態によれば、前記槽は、非隔離の、例えば単極の槽である。これにより、様々な槽の構成が可能になる。アノードおよびカソードからなる少なくとも1つの電極対が、該アノードおよびカソードの間に電解液を含むユニットを形成し、このユニットは複数の板または複数の管の形を有し得る。複数の電極対も、また、槽ボックスに浸漬され得る。一実施形態によれば、前記槽は複極槽である。一実施形態によれば、少なくとも1つのカソードおよびアノードは、本明細書に開示されている電極基材を含む。このカソードおよびアノードは、本明細書において上で、b.1)〜b.5)に定義された電極触媒コーティングをさらに含み得る。
【0046】
一実施形態によれば、前記槽はハイブリッド槽、すなわち、組み合わされた単極および複極の槽である。このタイプの槽は、槽ボックス内に、単極および複極の部分を組み合わせることによって、単極技法の向上を可能にする。このような組合せは、例えば複数の単極電極の間に、本明細書に開示されている2つまたは3つの電極を複極部分として配置することによって構成され得る。ハイブリッド槽の単極電極は、例えばそれら自体は知られている通常の電極を含めて、どのようなタイプのものでもよい。
【0047】
一実施形態によれば、別個の単極アノードおよびカソードが、電解槽の端の部分に装着され、他方、複極電極は中間に装着され、そうすることによって、ハイブリッド電解槽が形作られる。
【0048】
一実施形態によれば、本明細書に記載されている少なくとも1つの電極が、前記槽に配置される。一実施形態によれば、少なくとも1つの電極対の極性は、槽内で、逐次、逆転される。
【0049】
本発明は、さらに、アルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ金属塩素酸塩を含む電解質溶液を本明細書に定められる電解槽に導入すること、電解質溶液を電気分解して電気分解された塩素酸塩溶液を生成すること、電気分解された塩素酸塩溶液を塩素酸塩反応器に移して、より濃厚なアルカリ金属塩素酸塩電解液を生成するために、電気分解された塩素酸塩溶液をさらに反応させることを含む、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法に関する。電気分解が起こると、アノードで塩素が生成され、これは直ちに次亜塩素酸塩を生成し、一方、カソードで水素ガスが生成される。
【0050】
一実施形態によれば、前記方法の電流密度は、約0.6から約4.5、例えば約1から約3.5、または約1.3から約2.9kA/mの範囲である。
【0051】
一実施形態によれば、生成する塩素酸塩は、晶析によって分離され、一方、母液は、次亜塩素酸塩を生成するためのさらなる電気分解のために、塩化物電解液を用意するためにリサイクルされる。
【0052】
一実施形態によれば、pHは、個々のユニットの運転のためのプロセス条件を最適化するために、5.5〜12の範囲内に、いくつかの位置で調節される。このように、次亜塩素酸塩から塩素酸塩への反応を促進するために、弱い酸性もしくは中性のpHが、電解槽において、また反応容器において用いられ、一方、ガス状次亜塩素酸塩および塩素が生成され、放出されることを防ぐために、また腐食の恐れを減らすために、晶析装置におけるpHはアルカリ性である。一実施形態によれば、槽に供給される溶液のpHは、約5から約7、例えば約5.5から約6.5(例えば約5.8から約6.5)の範囲である。
【0053】
一実施形態によれば、電解質溶液は、アルカリ金属ハロゲン物、例えば塩化ナトリウムを約80から約180、例えば約100から約140、または約106から約125g/lの濃度で含む。一実施形態によれば、電解質溶液は、アルカリ金属塩素酸塩を約0から約700、例えば約450から約700、例えば約500から約650、または約550から約610gの塩素酸ナトリウム/lの濃度で含む。一実施形態によれば、導入されるアルカリ金属ハロゲン化物溶液は、NaCrとして計算して、クロム酸塩を約0から約10、例えば約1から約7、または約2から約6g/lの濃度で含む。
【0054】
一実施形態によれば、前記方法は、塩素酸ナトリウムまたは塩素酸カリウムを製造するために用いられるが、他のアルカリ塩素酸塩もまた製造できる。塩素酸カリウムの製造は、生成された塩化カリウム溶液を電気分解により製造された塩素酸ナトリウムのアルカリ化された部分流に添加すること、その後の、冷却および/または蒸発による結晶の析出によって実施され得る。塩素酸塩は、連続プロセスによって、適切に製造されるが、バッチ方式のプロセスもまた用いることができる。
【0055】
一実施形態によれば、工業用グレードの塩の状態のアルカリ金属塩化物、および原料水が、塩スラリーを調製するために供給される。このような調製は、例えばEP−A−0 498 484に開示されている。一実施形態によれば、塩酸塩槽への流れは、通常、75から200mの電解液/(生成される1メトリックトンのアルカリ金属塩素酸塩)である。一実施形態によれば、それぞれの塩素酸塩槽は、約50から約100、例えば約60から約80℃の範囲の温度で運転される。一実施形態によれば、塩素酸塩電解液の一部は、反応容器から塩スラリーへとリサイクルされ、いくらかは、塩酸酸塩の晶析装置の前の、アルカリ化および電界質濾過、ならびに最終pH調整に向けられる。こうしてアルカリ化された電解液は、晶析装置で蒸発させられ、塩素酸ナトリウムは晶析され、フィルターで、または遠心により取り出され、一方、除かれた水は濃縮される。一実施形態によれば、母液(これは、塩素酸塩に関して飽和しており、高含量の塩化ナトリウムを含む)は、調製スラリーに直接、槽ガススクラバーおよび反応器ガススクラバーを通して、リサイクルされる。一実施形態によれば、槽内の圧力は、大気圧より約20から約30mbar高い。
【0056】
一実施形態によれば、槽電解液の(電気)伝導度は、約200から約700、例えば約300から約600mS/cmの範囲である。
【0057】
一実施形態によれば、槽の温度は、約50から約110、例えば約70から約100、または約75から95℃の範囲である。
【0058】
一実施形態によれば、前記アノードおよび/またはカソードは、本明細書において上で定義された電極であり、これは、電極コーティングb.1)〜b.5)をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の結果を示す図である。酸素および塩素が生成する正の電位で、Maxthal(登録商標)312(2)の活性が低いことを明瞭に知ることができる。しかし、Maxthal(登録商標)312をコーティングするRuO/TiOの薄い層(3)により、PSC120(1)とほとんど同じように高い活性が得られた。図1はまた、活性化Maxthal(登録商標)312電極の電位を逆転すること、および水素発生に対して良好なカソード性能を得ることが可能であることを示す。
【図2】図2は、a)単極、b)複極、ならびにc)単極および複極のハイブリッド槽構造の概略図である。
【図3】図3は、槽ギャップ電位(アノードとカソードの間の電位)をカソード上の触媒として用いられたRu/Ti酸化物のモル比に占めるRuの量の関数として示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
こうして本発明が説明されたので、本発明が多くの仕方で変えられ得ることは、明らかであろう。このような変形形態は、本発明の骨子および範囲からの逸脱と見なされるべきでなく、当業者に明白であると思われる全てのこのような修飾は特許請求の範囲内に含められるものとする。以下の実施例は、説明された発明が、どのように実施され得るかを、その範囲を限定することなく、さらに例示するであろう。
【0061】
全ての部数およびパーセンテージは、特に断らなければ、重量部および重量パーセントを表す。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
電解槽および反応容器(ガスセパレータとしての役割もまた果たす)を備える、小さな塩素酸塩製造パイロットを用いた。電解液はポンプで循環させた。反応容器の最上部で、ガスを取り出し、そこで、少量の含塩素化学種を5Mの水酸化ナトリウムに吸収させ、水を乾燥剤に吸着させることによって完全に除去した。次いで、残りのガス中の酸素含量(体積%)を連続的に測定した。同じガスの流れ(リットル/s)もまた、カソードでのカソード電流効率(CCE)を計算するために測定した。水素の流量を全ガス流量から酸素の部分を引くことによって求めた。次に、CCEを次の式CCE=(1秒当たりの水素のノルマルリットル数/22.4)・(2F/I)を用いて水素流量から計算した(ここで、Fはファラデー定数であり、Iは槽を流れる電流(アンペア)である)。
【0063】
用いた出発電解液は、120g/LのNaClおよび580g/LのNaClOを含む水溶液であった。電解槽のアノードは、Permascandから入手可能なPSC120(DSA(登録商標)、TiO/RuO)であった。異なる3つのタイプのカソードを用いた:鋼板、チタン板(グレード1)、およびKanthalから入手可能な、機械加工した表面を有するMAXTHAL(登録商標)312(TiSiC)(4.1g/cm)。アノードとカソードの間の間隔は約4mmであった。電気分解のために露出した幾何学的表面積は、アノードおよびカソードで、それぞれ30cmであった。各実験で、3kA/mの電流密度を用いた。結果は下の表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
各実験(カソード)は、約4時間に亘って実施した。この短時間では、チタン板には、腐食は全く認めることができなかった。鋼板カソードは、明らかに腐食し、電解液の色は、循環ポンプが運転中であった停止の間に明瞭に変化した。停止直後にカソードに水素ガスは全く生成しなかった。腐食の影響は、MAXTHAL(登録商標)312材料には全く認めることができなかったし、測定できる重量変化は全く見出されなかった。
【0066】
[実施例2]
実施例1と同じパイロット装置を用いた。用いた出発電解液は、120g/LのNaCl、580g/LのNaClO、および4.4g/LのNaCrを含む水溶液であった。
【0067】
電解槽のアノードは、Permascandから入手可能なPSC120(DSA(登録商標)、TiO/RuO)であった。カソード材料は、機械加工した表面を有するMAXTHAL(登録商標)312(4.1g/cm)であった。アノードとカソードの間の間隔は約4mmであった。露出した表面積は30cmであった。実験全体を通して、3kA/mの電流密度を用いた。結果は表2に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
[実施例3]
実施例2と同じパイロット装置および実験開始パラメータを用いた。結果は表3に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
これらの実験は、表面粗さが、どのように槽電圧および酸素の生成に影響を及ぼすかについて、明瞭に示す。これらの実験によれば、それぞれ、1と3μmの間、および5から15μmの表面粗さ値RaおよびRzが、最小の槽電圧を生じた。
【0072】
[実施例4]
標準のTi0.7Ru0.3コーティングと比較して、酸化モリブデンおよび酸化タングステンが、酸化ルテニウムと組み合わせて、カソードコーティングとして使用できることを実証するために、次の実験ステップを実施した。
1.クエン酸水溶液(pH2)を溶媒として用いた。
2.0.5重量%の塩化ルテニウム塩を溶媒に溶かした。
3.等モル量(溶けた塩化ルテニウムの量に対して)の塩化モリブデンまたは塩化タングステンを溶液に溶かした。
4.2つの溶液を小さなブラシを用いて2つのチタン板上に塗りつけた。
5.これらの板を空気中に70℃で10分間置いた。
6.これらの板を空気中に470℃で10分間置いた。
7.各電極に、塩化モリブデンまたは塩化タングステン溶液の別の層を塗りつけた。
8.これらの板を空気中に70℃で10分間置いた。
9.これらの板を空気中に470℃で60分間置いた。
【0073】
次いで、2つの実験において、前記の板をカソードとして用い、PSC120をカソードとして用いた結果と比較した。実施例2と同じパイロット装置および実験パラメータを用いた。
【0074】
【表4】

【0075】
この実験では、酸化モリブデンおよび酸化タングステンによりコーティングされたチタンカソードの電流効率(100%に近い)は、PSC120の電流効率より優れていた。酸化モリブデン−コーティングカソードでは、酸素生成の減少もまた認められた。
【0076】
[実施例5]
小さな電極の試験を実施するために、回転ディスク装置を用いた。回転ディスクは、作用電極(カソード)として用い、大きな白金メッシュを対極(アノード)として用いた。作用電極は、1000rpmの速度で回転させた。
【0077】
用いた出発電解液は、110g/LのNaCl、550g/LのNaClO、および5g/LのNaCrを含む水溶液であった。
作用電極での電流密度は1kA/mであった。Maxthal(登録商標)材料が、Ti0.7Ru0.3のような導電性酸化物によりコーティングできることを実証するために、次の実験ステップを実施した。

無処理表面(R=1.7、R=10)を有するMaxthal(登録商標)312(4.41g/cm)の小さなディスクをコーティング用基材として用いた。

1.コーティングの手順において用いた溶液は、n−ブタノールに溶かした、TiClおよびRuCl・3HO(モル比で、Ru:Ti=3:7)であった。
2.小さなディスクを脱脂し、アセトンで洗った。
3.(1)に記載した溶液にブラシを浸して、そのブラシで、小さなディスクの片側を軽く塗って(dabbed)、それを溶液で覆った。
4.ディスクを空気中に70℃で10分間置いた。
5.ディスクを空気中に470℃で60分間置いた。
6.ディスクをホールダに入れ、カソード(負の極性)として用いた。
【0078】
【表5】

【0079】
Ti0.7Ru0.3をMaxthal(登録商標)312基材に付けた場合、コーティングのないMaxthal(登録商標)312に比べて、約160mVの活性化を認めることができた。
【0080】
成極後、電極を目視で詳しく調べた時に、コーティングは、Maxthal(登録商標)312上で、元のままの状態であり、コーティング材料の痕跡は電解液に全く認められなかった。
【0081】
[実施例6]
実施例5において製造された、活性化された(コーティングされた)Maxthal(登録商標)312がまた、アノードとしても使用できるかどうか、また、極性が容易に逆転できるかどうかを確かめるために、サイクリックボルタンメトリー実験を100mV/sのスキャン速度で実施した。実施例5と同じ装置を用いたが、この実施例では、2000rpmの回転速度を有する基準電極を用いた。
【0082】
実験では、3つの電極を比較した。

1.PSC120
2.Maxthal(登録商標)312
3.Ti0.7Ru0.3活性化Maxthal(登録商標)312
【0083】
電極No.3は、実験後に、白い布でふき取った。布にコーティングの痕跡は全く認めることができなかった。これは、その正および負の極性に関わらず、コーティングの高い安定性を示す。
【0084】
[実施例7]
電解槽および反応容器(ガスセパレータとしての役割もまた果たす)を備える、小さな塩素酸塩製造パイロットを用いた。電解液をポンプで循環させた。反応容器の最上部で、ガスを取り出し、そこで、少量の含塩素化学種を5Mの水酸化ナトリウムに吸収させ、水を乾燥剤に吸着させることによって、完全に除去した。次いで、残りのガス中の酸素含量(体積%)を連続的に測定した。同じガスの流れ(リットル/s)もまた、カソードでのカソード電流効率(CCE)を計算するために測定した。水素の流量を全ガス流量から酸素の部分を引くことによって求めた。次に、CCEを次の式CCE=(1秒当たりの水素のノルマルリットル数/22.4)・(2F/I)を用いて水素流量から計算した(ここで、Fはファラデー定数であり、Iは槽を流れる電流(アンペア)である)。
【0085】
用いた出発電解液は、120g/LのNaClおよび580g/LのNaClO、および4.4g/Lの重クロム酸ナトリウムを含む水溶液であった。電解槽のアノードは、Permascandから入手可能なPSC120(DSA(登録商標)、TiO/RuO)であった。
【0086】
カソードのベース材として、Kanthalから入手可能な3つのMAXTHAL(登録商標)312(TiSiC)(4.1g/cm)プレートを個別に用い、下の表6に示す3つの異なるコーティングによりコーティングした。アノードとカソードの間の間隔は約4mmであった。電気分解のために露出した幾何学的表面積は、アノードおよびカソードで、それぞれ30cmであった。各実験で、3kA/mの電流密度を用いた。
【0087】
【表6】

【0088】
モリブデン含有コーティングは、CCEおよび酸素レベルに有益な効果を有することが明らかである。他のものを混ぜ合わせていないRuOは、最小の槽電位を生じることもまた明瞭に示されている。
【0089】
[実施例8]
この実験では、550g/LのNaClO、120g/LのNaCl、および5g/Lの重クロム酸ナトリウムの水溶液を入れた600mLの強化ビーカーを用いた。ビーカー内の溶液は70℃の温度を有し、これを互いに対向する2つの小さな電極板の電解液として用いた。用いた電極は片側に触媒をコーティングしただけであった。アノードは,常に、PSC120(DSA(登録商標)、TiO/RuO)によりコーティングされたチタン(グレード1)であり、用いたカソードは、下の表に示す様々な比率のTiO/RuOで表面をコーティングされた、MAXTHAL(登録商標)312(TiSiC)(4.1g/cm)であった。アノードとカソードの間の間隔は、約3.0±0.1mmであった。
【0090】
【表7】

【0091】
表7はまた、図3に示すようにプロットでき、図は、カソードに30mol%を超えるルテニウムを有することの利点を明瞭に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)M(n+1)AXを含む電極基材(ここで、Mは、元素周期表のIIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族の金属またはこれらの組合せであり、Aは、元素周期表のIIIA、IVA、VAもしくはVIA族の元素またはこれらの組合せであり、Xは、炭素、窒素またはこれらの組合せであり、nは、1、2、または3である);および
b)前記電極基材に析出された、
b.1)B(1−y)z1z2を含む金属酸化物および/または金属硫化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、イリジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり、yは、0.4〜0.9であり、0≦z1、z2≦2、およびz1+z2=2である);
b.2)Bを含む金属酸化物(式中、Bは、ルテニウム、白金、ロジウム、パラジウム、およびコバルトの少なくとも1種であり、Cは、少なくとも1種のバルブ金属であり、Dはイリジウムであり、EはMoおよび/またはWであり、fは0〜0.25または0.35〜1であり、gは0〜1であり、hは0〜1であり、iは0〜1であり、f+g+h+i=1である);
b.3)少なくとも1種の貴金属;
b.4)鉄−モリブデン、鉄−タングステン、鉄−ニッケル、ルテニウム−モリブデン、ルテニウム−タングステン、またはこれらの混合物を含む任意の合金または混合物;
b.5)少なくとも1種のナノ結晶材料
の少なくとも1つから選択される電極触媒コーティングを備える電極。
【請求項2】
ナノ結晶材料が、MoS、WS、およびこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
貴金属が、白金、ルテニウム、イリジウム、レニウム、パラジウムまたはこれらの組合せである、請求項1または2に記載の電極。
【請求項4】
Mが、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ハフニウム、タンタルまたはこれらの組合せである、請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
Aが、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、硫黄、またはこれらの組合せである、請求項1から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
電極がカソードである、請求項1から5のいずれか一項に記載の電極。
【請求項7】
電極が複極電極である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電極。
【請求項8】
請求項1のセクションb.1)からb.5)のいずれか1つにおいて定義される電極触媒コーティングが、請求項1のセクションa)において定義される電極基材上に形成される、請求項1から7のいずれか一項に記載の電極の製造方法。
【請求項9】
金属酸化物の前駆体を含む水性または有機溶液が、電極基材に接触し、次に、該前駆体の熱分解によって電極基材に接着する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項8または9に記載の方法によって得ることができる電極。
【請求項11】
電解槽における、請求項1から7および10のいずれか一項に記載の電極の使用。
【請求項12】
電解浮上法における、請求項1から7および10のいずれか一項に記載の電極の使用。
【請求項13】
モノクロロ酢酸の電解による製造のための、請求項11に記載の電極の使用。
【請求項14】
電気透析槽における、請求項1から7および10のいずれか一項に記載の電極の使用。
【請求項15】
少なくとも1つのアノードおよび少なくとも1つのカソードを備える、アルカリ金属塩素酸塩の製造のための電解槽であって、該アノードおよびカソードの少なくとも1つが、M(n+1)AXを含む電極基材(ここで、Mは、元素周期表のIIIB、IVB、VB、VIBもしくはVIII族の金属またはこれらの組合せであり、Aは、元素周期表のIIIA、IVA、VAもしくはVIA族の元素またはこれらの組合せであり、Xは、炭素、窒素またはこれらの組合せであり、nは、1、2、または3である)を備える電解槽。
【請求項16】
槽が非分離である、請求項15に記載の電解槽。
【請求項17】
槽が、請求項1から7、または10のいずれか一項に記載の電極を備える、請求項15または16に記載の電解槽。
【請求項18】
請求項1から7および10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのアノードおよびカソードが、前記槽に配置される、請求項15から17のいずれか一項に記載の電解槽。
【請求項19】
アルカリ金属ハロゲン化物およびアルカリ金属塩素酸塩を含む電解質溶液を請求項15から18のいずれか一項に記載の電解槽に導入すること、電解質溶液を電気分解して電気分解された塩素酸塩溶液を生成すること、電気分解された塩素酸塩溶液を塩素酸塩反応器に移して、電気分解された塩素酸塩溶液をさらに反応させてより濃厚なアルカリ金属塩素酸塩を生成させることを含む、アルカリ金属塩素酸塩の製造方法。
【請求項20】
導入される電解質溶液が、クロム酸塩をNaCrとして計算して、約1から約7g/Lの濃度で含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも1つの電極対の極性が、逐次、逆転される、請求項19または20に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−503359(P2011−503359A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533587(P2010−533587)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065515
【国際公開番号】WO2009/063031
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】