説明

電気エネルギーの誘導伝送装置

【課題】
【解決手段】
少なくとも2つの同じ種類である一次誘導子を有する静止ユニットから、その近辺に停車している車両に対して電気エネルギーを誘導伝送するための装置において、この静止ユニットの複数の一次誘導子は、互いに対して依存せずに給電されることができ、ここで、この給電は中央制御装置により個別に作動または非作動化されうる。好ましくは、、複数の同じ種類の一次誘導子が規則的に二次元に配列されていて、これらの一次誘導子は、長方形マトリックスの形態に配列されている。各一次誘導子には、中央給電ユニットの各一次誘導子自身用の出力または自身の給電ユニットが割り当てられている。好ましくは、車両は、同じ種類である二次誘導子を複数個有し、これらの複数個の二次誘導子のサイズおよび配列は、車両が少なくとも1つの位置にある際に、複数の二次誘導子と複数の一次誘導子とが同時に対をなして重複するように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に記載された電気エネルギーの誘導伝送装置に関する。この種の装置は、電気車両に設置された再充電可能なバッテリーを誘導充電するために用いられる。今日、この装置は、一次側と二次側とが1:1の割合で作られている。この結果、両側が互いに対して合致するので、エネルギー伝送のために二次側で全く異なる設計を用いることはたやすくはない。少なくとも、二次コイルが一次コイルよりもずっと小さい場合には、効率が非常に低減し、漏れ磁場がずっと大きくなってしまう。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両への電力の誘導伝送を行うシステムを開示しているが、このシステムは、ステーション側の一次側も、車両側の二次側も、それぞれ複数のコイルを有する。一次側のコイル配列と、二次側のコイル配列とは互いに対して対称的になっている。生成される磁場の磁束線を非対称の形状にするために、コイルの共通の給電ユニットは、一次コイルに供給される電流間で位相差を変えることができる。これにより、磁束線の形状は、二次コイルの位置に対して適合されていると考えられる。すなわち、一次コイルに対する二次コイルの可能な横方向のずれは補正されていると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/051611
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、電力を充電可能な異なる車両を、1つの同じ充電ステーションで誘導充電するための解決方法であって、かつ、効率が高く、漏れ損失を最低限に抑えた方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は請求項1の特徴を有する装置により達成される。より有用な変形例は、従属請求項中に開示されている。
【0006】
静止ユニットから、その近辺に停車している車両に対して電気エネルギーを誘導伝送するために、本発明は少なくとも2つの一次誘導子を提供し、この少なくとも2つの誘導子は、同じ種類であり、互いに対して依存することなく電流が供給されうる誘導子であり、ここで、この電流の供給は中央制御装置により個別に作動または非作動化されうる。
【0007】
したがって、本発明の核となる思想は、二次誘導子の対応するモジュール化を必然的に意味する一次誘導子のモジュール化を行うことである。好ましくは、複数の同じ種類である一次コイルを規則的に二次元に配列するように設けられ、この一次コイルは、例えば、長方形のマトリックス(行列)の形態を有する。この古典的なマトリックスの形態に代わるものとして、詰め込み密度を高くするために、連続する行を、それぞれ互いに対して縦長方向で、1行の格子間隔の半分の間隔分だけずらすこともできる。
【0008】
全システムをモジュール化構成とするために、各一次誘導子には、それ自身の給電ユニットが割り当てられることができ、この全ての給電ユニットが、共通の制御装置に接続される。この共通の制御装置が、とりわけ、個々の給電ユニットを作動または非作動化することにより、給電ユニットから個々の一次誘導子に個別に供給される電流を制御する。これに代えて、複数の出力部を有する中央給電ユニットを設けて、各出力部に対して個々の一次誘導子が接続されているように設けることができる。この場合、個々の出力部が制御部により個別に制御される。
【0009】
いずれの一次誘導子に電流供給されるべきかの決定は、個々の一次誘導子におけるインピーダンス測定値または電圧測定値に基づいて、制御装置によって行われうるが、これによって、各個々の一次誘導子の領域中に二次誘導子が存在するか否かが決定されうる。このために、給電ユニットは、対応する測定装置を備えていて、二次誘導子の位置を検出するための単純な電圧測定の使用には、二次誘導子が励起されていることが要求される。
【0010】
車両側の二次誘導子の数は、車両の充電電力の要件に応じて、一次誘導子1つと充電ステーションの一次誘導子の全数との間で変動しうる。そして、二次誘導子が複数ある場合には、車両を適切に位置づけることにより、複数の二次誘導子と複数の一次誘導子とが同時に対になって重複するように、複数の二次誘導子が配列されるべきである。二次誘導子の配列が、一次誘導子の配列の少なくとも一部分に一致する際に、これは保証される。
【0011】
本発明により、電力要件が異なる、異なるサイズの電気車両を誘導充電することができ、かつ、大きい車両の電力要件用に設計された充電ステーション中で、最大充電電力を必要としないようなより小さい車両の場合にも顕著な損失がないような、それぞれの場合でこの異なる電力要件に合致した二次側が可能になる。さらに、より小さい車両用には、本発明は、同程度に最適である充電位置を複数個提供する。すなわち、より小さな車両を位置決めするための許容誤差を提供する。本発明では、1つの充電ステーションで、1つの大きな車両の代わりに、複数のより小さな車両を同時に充電できる。
【0012】
これ以外にも、本発明によるモジュール化により、より小さい一次誘導子および二次誘導子をより多数個設けることができ、これにより、大量生産におけるコストの利点をもたらす。したがって、給電ユニットにモジュール化を行う場合には、給電ユニットにも同様の点が適用される。本発明の別の利点は、冗長性を備えることである。これにより、一次誘導子および/または二次誘導子および/または給電ユニットの一部分に欠陥がある場合には、その欠陥部品のスイッチを切り、正常な部品のみを使用することにより、遅い充電速度で充電することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】電気自動車がおおよその充電位置にある本発明の装置の一実施形態を示した概略図である。
【図2】異なる二次コイル配列を備えた複数の異なるサイズの電気車両の概略図である。
【図3】図3の様々なサイズの電気車両が、それぞれ本発明の一次コイル配列での充電位置にあるところを示す図である。
【図4】マトリックス形態での様々な一次コイル配列を複数例示す図である。
【図5】コイルがずらされて、異なる長さのコイルの行を備えた一次コイル配列を示す図である。
【図6】単一の二次コイルを備えた車両が、本発明の一次コイル配列中で様々な充電位置にあるところを示す図である。
【図7】複数の二次コイルを備えた車両が、本発明の別の一次コイル配列中で様々な充電位置にあるところを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態例を、図面を参照して説明する。
【0015】
4つの同じ種類の一次コイル1〜4が正方形状に配された本発明の装置のある実施形態を、図1の平面図に概略図示する。1つの二次コイル6のみを備えた電気車両5が、充電のためにまさに一次コイル1〜4の配列の上に位置している。二次コイル6の円形の基部領域は、一次コイル1〜4の基部と区別するために、図1中では網掛け図示されている。この種の図示は、他の全ての図でも基本的に用いられている。二次コイル6の直径は、一次コイル1〜4の直径と合致している。図からわかるように、二次コイル6は、一次コイル4の大部分を覆っているが、完全には覆っていない。しかし、他の一次コイル1〜3からは離れている。したがって、車両5の位置は全体的にはエネルギーの伝送には理想的とは言えないが、存在する全ての一次コイル1〜4のなかでは、一次コイル4が、このために総じて適切である唯一のコイルである。
【0016】
個々の一次コイル1〜4は、それ自身の給電ユニット7〜10にそれぞれ接続されていて、この各給電ユニットは、電源ケーブル11に接続されていて、各給電ユニットは、この電源ケーブルから電力を引き出し、関連する一次コイル1〜4に送電する。一次コイル1〜4への供給に関する動作パラメータ(電圧、電流、周波数)は、二次コイル6への誘導伝送のために最適化され、電源ケーブル11の動作パラメータとは異なる。
【0017】
個々の給電ユニット7〜10は、中央制御装置12に接続され、この中央制御装置12が、給電ユニット7〜10による個々の一次コイル1〜4への電流の供給を必要に応じて制御するという課題を有する。図示した例では、これは、一次コイル6のみが給電され、他の3つの一次コイル1〜3は不作動状態であり続けることを意味する。これは、制御配線13〜16により達成されるが、この配線がスイッチ17〜20に作用し、これにより、給電ユニット7〜10が、個々に制御電圧配線21に切り替えられうる。この切り替え動作により、各給電ユニット7〜10が作動され、その結果、関連する一次コイル1〜4へ給電される。図示した例では、制御装置12は、制御配線16上のスイッチ20のみに対して閉鎖信号を送り、これによって、給電ユニット10が作動され、電流を一次コイル4に供給する。残りの制御配線13〜15には閉鎖信号が発せられず、スイッチ17〜19は開いたままであり、給電ユニット7〜9は不作動なままである。
【0018】
個々の給電ユニット7〜10から、信号線22〜25が、制御装置12に向かって伸びている。これらの信号線22〜25を通じて、給電ユニット7〜10中に統合されているインピーダンス測定装置が、それぞれ制御装置12に対して測定信号を発する。この測定信号は、関連する一次コイル1〜4のインピーダンス値を示している。これらのインピーダンス値は、一次コイル1〜4の領域中に二次コイル6が存在することにより影響を受け、とりわけ、一次コイルが短絡する際(これは、一次コイル配列中に車両が到着した段階では、まだエネルギー伝送がまだ行われていないので難なく可能になる)に影響を受ける。図1に示す状態では、一次コイル4のインピーダンス値のみが、二次コイル6の存在により変化する。残りの一次コイル1〜3のインピーダンス値は、車両5の車体により影響を受けうる。システムの設計が適切であれば、これにより生じるインピーダンスの変化は、二次コイル6により生じる一次コイル4のインピーダンスの変化よりもずっと小さい。
【0019】
制御装置12は、個々の一次コイル1〜4のインピーダンス値の分布を観察する評価ユニットを有する。この評価ユニットは、信号線22〜25を通って受信した測定信号に基づいて、かつ、閾値との比較に基づいて、一次コイル1〜4のうちのいずれの上に二次コイル6が位置付けられているかを決める。図1で示した状態では、これは、一次コイル4のみであり、その結果、この一次コイル4が電流を受け取る唯一のコイルとして選択される。電気車両5がさらに右方向に動き、この車両の二次コイル6が主に一次コイル1を覆うと、この一次コイル1が選択され、制御配線13上の信号によりスイッチ17が閉鎖され、この一次コイル1に割り当てられた給電ユニット7が作動するであろう。
【0020】
複数の分散型給電ユニット7〜10を備えたこの上述の実施形態の代わりに、本発明を、単一の中央給電ユニットを用いて作ることも可能で、これが、別々に作動可能な複数の出力を有する(区間コントローラーの概念または変圧器)。
【0021】
上の例では、単一の二次コイル6を備えた電気車両5を想定した。しかし、本発明の目的は、異なる電力要件を有する異なるサイズの車両に、1つの充電ステーションで充電可能にすることである。このためには、異なるサイズの車両が、図2に図示したように、異なる数の二次コイルを備えていなければならない。右にある1つの二次コイル6を備えた小さい車5の横に、この図の中央には、中程度のサイズの車両5Aがあり、これは、正方形に配列された4つの二次コイル6Aを備えている。また、この図の左側には、大きい車両5Bがあり、これは正方形に配列された8つの二次コイル6Bを備えている。小さい車両5は、例えば乗用車でありえ、中程度のサイズの車両5Aはバンまたはミニバスでありえ、大きい車両5Bはトラックまたはバスでありえる。図2および図3中、車両5・5A・5Bの進行方向は上方向である。
【0022】
図3は、図2に示した様々なサイズの車両5・5A・5Bが、8つの一次コイルの長方形の配列(配置)26上にあるところを示す図である。図1の実施形態の例と同様、この配列26の各一次コイルには、それ自身の給電ユニットが割り当てられるが、これは、図3およびこれ以降の全ての図ではもはや図示しない。中央制御装置も設けられているが、これももはや図示しない。一次コイルの幾何学的配列26は、個々のコイルのサイズ、その数および互いに対する配置に関しても、大きな車両5Bの二次コイル配列6Bの幾何学的な配置と全く同じである。
【0023】
図3中の左にある大きな車両5Bは、この場合、二次コイル配列6Bが一次コイル配列26をほぼ正確に覆っている、すなわち、個々の全ての二次コイルが1つの一次コイルの上にまさに載っていることにより、ほぼ最適な充電位置に位置付けられている。この場合、配列6Bの全ての一次コイルが作動され、車両5Bのバッテリーを充電するのに用いられる。十分に大量の電力が、適切な速度で、大きな車両5Bのバッテリーを充電するために伝送されるように、一次コイル配列26と二次コイル配列6Bとが設計されている。図示した進行方向では、大きな車両5Bに関する最適な充電位置は1つしか存在しないが、これは、二次コイル配列6Bを、一次コイル配列26で完全に覆おうのは、この1つの位置でしか可能でないからである。進行方向が逆の場合も、最適な充電位置は1つしかない。これは問題とはならない。なぜならば、バスやトラックのような大きな車両は、適切な運転技能を持ち特別な訓練を受けた運転手が運転するので、充電ステーションに駐車する際に、十分正確にこれらの車両を位置付けると信頼することができる。
【0024】
図3の中央では、4つの二次コイルを備えた二次コイル配列6Bが、この場合一次コイル配列26の半分をほぼ正確に覆っていることにより、すなわち、全ての二次コイルが上述の半分の一次コイルの上に載っていることにより、中程度のサイズの車両5Aがほぼ最適な充電位置に位置付けられている。この場合、配列26の8つの一次コイルのうちの4つ、すなわち、図3の運転方向で前方の4つのコイルが作動され、車両5Bのバッテリーを充電するのに用いられる。この場合、中程度のサイズの車両5Aのバッテリーに適切な速度で充電するために、十分大量の電力が伝送されうるように、一次コイル配列26と二次コイル配列6Aとが設計されている。
【0025】
図3からわかるように、中程度のサイズの車両5Aの二次コイル配列6Aは、大きい車両5Bの二次コイル配列6Bのまさに半分に相当する。したがって、この中程度のサイズの車両5Aには、最適な充電位置がいくつか存在する。例えば、中程度のサイズの車両の二次コイル配列6Bが、進行方向で一次コイル配列26の、中央の4つまたは後方の4つの一次コイルをまさに覆うように、この中程度のサイズの車両を位置付けることが可能である。同じことが、逆の進行方向に対しても適用される。中程度のサイズの車両5Aは、図示した位置に対して±90°回転させた進行方向に停車することさえもできる。そして、各場合で、一次コイル配列26の4つの一次コイルを、二次コイル配列6Bでまさに覆う最適な充電位置が3つずつ存在する。上述のインピーダンス測定に基づいて、全ての場合で、一次コイル配列26のうちのいずれの一次コイルが、二次コイル6Bのうちの二次コイルにより、エネルギー伝送のために覆われているかを決め、かつ、覆われた一次コイルに対して特定的に電流を供給し、覆われていないコイルを非作動にし続けることが可能である。
【0026】
図3の右では、単一の二次コイル6が、この場合は一次コイル配列のうちの1つの一次コイル26をほぼ正確に覆っていることにより、小さい車両5も、ほぼ最適な充電位置に位置付けられている。この場合では、配列26の8つの一次コイルのうちの1つのみが作動され、すなわち、配列26のうちの進行方向で前方右角に位置するコイルのみが作動され、車両5のバッテリーを充電するのに用いられる。この場合も、小さい車両のバッテリーに適切な速度で充電するために、十分大量の電力が伝送されるように、一次コイル配列26と二次コイル配列6とが設計されている。
【0027】
即座にわかるように、小さい車両には最適な充電位置が多数存在し、図3の進行方向だけでも8つあるが、これは、二次コイル6が、一次コイル配列26の全ての一次コイルに対して随意選択的に並べられることができるからである。同じことが、全く逆の進行方向にも、および±90°回転させた方向も適用される。
【0028】
当然、図1〜図3に示された一次コイル配列は、本発明により達成可能な効果を維持しつつ、大いに変更することができる。これらの変形例のいくつかは、図4および図5から見て取れる。図4の左側に示した一次コイル配列27〜31は、厳密に長方形の配列であり、右側に示した一次コイル配列27A〜31Aは、平行四辺形形状または略長方形形状である。
【0029】
考えられる最も単純な配列27は、2つの一次コイルのみからなり、2段階の車両のサイズに応じて、電力伝送の大まかな段階わけのみが可能である。4つのコイルを備えた正方形の配列28は、図1に関連してすでに説明をした。配列29〜31は、個々の行間と、個々の列間とで同じ間隔をあけた行と列からなるマトリックスの形態に基づいており、上述の拡張版である。
【0030】
車体の基部(底部)領域は通常長方形であるので、充電されるはずの車両の進行予定方向において、より長い側で、少なくともおおむね長方形にコイルを配列するのが好都合であるように思われる。境界的な場合では、充電されるはずの車両の進行予定方向へ、連続して配列されたコイルを1行のみ設けてもよい。原則的に、現在達成可能な複数の伝送電力のレベルを有する一次コイルの複数行での配列は、既存の車両の長さにより、および二次コイル用に利用可能な空間により制限を受ける。
【0031】
図4の右側にある対応する配列27A〜31Aは、左側の場合に対して、それぞれ、連続する行が、行の縦長方向で互いに対して相対的に、1行の半分の格子の間隔だけずれている点が異なる。配列30と配列30A、配列31と配列31Aとの比較からとりわけわかるように、このようにずらすことにより、一次コイルの詰め込み密度を大きくし、すなわち、所定の直径の一次コイルの所定の数を、より小さい領域中に入れることができる。
【0032】
図5の一次コイル配列32は、連続する行同士ずらされているという点では配列27A〜31Aに相当するが、全体として、これは、おおむね長方形でもなく平行四辺形のような形状でもなく、対称軸が全部で6つある六角形の形態を有している。
【0033】
上述で図3に関連して既に述べた、より少ない数の二次コイルを備えた車両に対する本発明の一次コイル配列の位置許容誤差について、図6および図7に示した例でより明確になる。ここで、図6は、図3の右に基づいた状況から出発するが、この場合、1つの二次コイル6のみを備えた電気車両5が、8つの一次コイルからなる長方形の配列26の充電ステーションで充電が行われるべきである。この際、車両5の進行予定方向は上方向である。
【0034】
最も左側に示した車両の位置では、二次コイル6は、進行方向で左側列の最前の一次コイルの上に載っている。その右横に示された車両の位置では、二次コイル6は、左側の列の後ろから2番目の一次コイルの上に乗っている。その右横に示された車両位置では、二次コイル6は、右側の列の前から2番目の二次コイル上に載っている。最後に、最も右側に示した車両の位置では、二次コイル6は、進行方向で右側列の最前の一次コイルの上に載っているが、車両5は、進行進行方向に正確に停車しておらず、これに対して僅かに角度が傾斜している。したがって、図6に基づく状態では、進行方向にも、進行方向に対して横断する方向にも位置許容誤差があり、また、進行予定方向に対して相対的に車両が傾斜している場合にも位置許容誤差がある。
【0035】
本発明の機能性にとっては、一次コイルの基部領域および二次コイルの基部領域が、図1〜6の場合のように整列している必要はない。図7は、より小さな基部領域を有する二次コイルを備えた車両が、より大きな基部領域を有する一次コイルを備えた充電ステーション中で充電されうる状況の例を示している。ここで示された車両5Cは、網掛けで示された二次コイル配列6Cを有し、この配列6Cは、1行が進行方向に対して連続して置かれた3つの2次コイルからなる1行を2つ(2行)有している。一次コイル配列33は、全部で17個の一次コイルからなり、これらは、進行方向に対して7行連続している。さらに、これらの行は、それぞれ、交互に1行の格子の間隔の半分だけ横方向にずれており、または長さが異なる。
【0036】
図7の左側では、車両5Cは、進行予定方向に停車しているが、二次コイル配列6Cの二次コイルは、一次コイルの上に部分的にのみ載っていて、部分的に異なる一次コイルの間の間隔上にまさに載っている。この場合、電流は、二次コイルが少なくともおおむね位置付けられている一次コイルにしか電流は供給されない。これらの一次コイルとは、この場合、一次コイル配列33の中央の列の前方の2つの二次コイルであり、これらの2つのコイル上に、2つの中央の二次コイルの大部分が位置付けられていて、かつ、2つの右側の二次コイルがそれぞれ半分程度位置付けられている。図7では、励起された一次コイルを太線で示す。2つの左側の二次コイルは、複数の一次コイル間の間隔のおおむね中央上に位置付けられている。周辺の一次コイルが同相で給電される場合、その磁場は、これらの間にある二次コイルの領域中で構造上は重複されるが、漏れ損失が非常に高くなると予想され、これらの一次コイルの励起は有意義であるとは思われない。
【0037】
図7の中央でも、車両5Cは進行予定方向で停車しているが、しかし、この場合は、二次コイル配列6Cのうち、車両5Cの縦長側の左側と右側との外側の4つの二次コイルがそれぞれ、一次コイル配列33の一次コイルの上に載っていて、中央の2つの二次コイルは、それぞれ、2つの一次コイル配列のまさに間にある。したがって、この場合にも、二次コイルに覆われた太線で示された4つの一次コイルに対して電流が供給されねばならない。
【0038】
図7の右側では、車両5Cが明らかに、進行予定方向に対して傾斜角度をとって停車している。そうであっても、この場合、6つの二次コイルのうちの5つがそれぞれ、一次コイルの上に載っていて、5つの一次コイルが励起可能で、車両5Cのバッテリーは、比較的速い速度で充電可能である。二次コイル配列6Cの前方の左側の角にある二次コイルのみが、2つの一次コイルのまさに間にあり、したがって一次コイル配列33による強い交番磁界にさらされることがない。
【0039】
充電のために、車両が、本発明による充電ステーションの一次コイル配列上を走行すると、充電操作のための車両の位置決めは、上述のインピーダンス測定に加えて、さらにセンサー(例えば、レーダー、超音波、赤外線、光電変換セルに基づくセンサー)により、および、接近する車両と充電ステーションの制御装置との間の無線通信により支援されることができる。とりわけ、この際に、車種が、その二次誘導子の数と配列に関して特定されることができ、これから、充電操作用の1つまたは複数の最適な位置が明らかになり、その位置へ、車両が、インピーダンス測定と可能な追加的なセンサーとの支援により操車されるはずである。
【0040】
ここで、充電ステーションが二次コイルの位置を検出しやすくするために、車両の到着段階で、車両バッテリーから車両自身の磁場を作るために、二次コイルを励起することも考えられる。しかし、車両の操車に関する詳細は、本発明の対象外である。
【0041】
大きい車両のバッテリーを高速の充電速度で充電するのには、相対的に高い電力の提供が要求されると理解される。より小さい車両では、この高い電力により、バッテリーを比較的迅速に充電することができる。このようにして、本発明による充電ステーション中では車両の停車時間を短し、これを高い充電電力により補うことができる。
【0042】
例えば、住宅地では、乗用車のほとんどの車庫が、単一位相の電源接続(230V/10A)のみを有し、これにより、約2kWの充電電力が得られうる。したがって、このような車庫には、単一の一次コイルが取り付けられることができ、この電力用に設計された給電ユニットにより給電される。車両は、一晩かけて、より長い時間をかけてこの電力で充電される。日中は、同じ車両を、例えば、会社の駐車場で充電可能であり、ここでは、約6kWの伝送電力を備えた3位相接続(400V/16A)が、充電ステーションとして容易に設置可能である。この場合、車両が2つ以上の二次コイルを備えていると有用であり、この2つのうちの1つのみが、家庭での車庫で充電する際に用いられ、2つ以上の二次コイルが、会社の駐車場でより短時間で充電する際に用いられる。
【0043】
迅速充電用の電気「給油所」は、このコンセプトに基づいて営業されうる。車両が複数の二次コイルを備えている際には、家庭や日常操作では、1つの二次コイルのみが用いられる。しかし、大量のエネルギーが可能な限り迅速に伝送されねばならない際には、複数の二次コイルが用いられる。
【0044】
ここで一次コイルや二次コイルという場合には、一般的に、結合誘導子を意味し、従来型のコイルであるには及ばない。例えば、その基部領域は、本実施形態の例中の基底として用いられているような円形形状以外のものであってもよく、巻き線は、らせん状である必要はなく、平坦であってもよい。誘導子の形態の正確な設計は、当該分野の専門家の裁量に任せられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止ユニットから、その近辺に停車している車両(5)に対して電気エネルギーを誘導伝送するための装置において、前記静止ユニットは、少なくとも2つの一次誘導子(1〜4)を有し、前記少なくとも2つの誘導子は、同じ種類であり、互いに対して依存せずに電流が供給されうる誘導子であり、ここで、この電流の供給は中央制御装置(12)により個別に作動または非作動化されうることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記静止ユニットは、複数の同じ種類の一次誘導子を規則的に二次元に配列(26〜32;27A〜31A)したものであることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記一次誘導子は、長方形マトリックス(26〜31)の形態に配列されていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記一次誘導子の配列(27A〜31A;32)は、複数の行の形態を有し、前記行は、その行内で同じ格子間隔を有し、かつ、同じ行間隔を有し、連続する行が、それぞれ、その縦長方向で、1行の前記格子間隔の半分の間隔分だけずれていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
各一次誘導子(1〜4)には、中央給電ユニットの前記各誘導子のための出力、または、前記各誘導子のための給電ユニット(7〜10)が割り当てられていて、前記中央給電ユニットまたは前記個々の給電ユニット(7〜10)は、各一次誘導子(1〜4)へ電流の供給を個別に制御する中央制御装置(12)に接続されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記中央給電ユニットの個々の出力または個々の給電ユニット(7〜10)は、前記制御装置(12)により、個々に作動または非作動化されうることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記中央給電ユニットまたは個々の給電ユニット(7〜10)は、それぞれ、インピーダンスまたは誘導される電圧を各一次誘導子(1〜4)において測定できる測定装置を有することを特徴とする請求項5または6に記載の装置。
【請求項8】
前記制御装置(12)は、前記静止ユニット内で、個々の一次誘導子(1〜4)のインピーダンス測定値の分布または電圧測定値の分布を決定する評価ユニットを有し、かつ、前記評価ユニット(12)は、決定されたインピーダンス値または電圧値の分布に応じて、前記一次誘導子(1〜4)への電流の供給を制御することを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記測定装置により測定されたインピーダンス値が参照値とは所定の最小量だけ異なる際、または、前記測定装置により測定された電圧値が所定の閾値を上回る場合のみに、前記制御装置(12)は、一次誘導子(1〜4)への電流の供給を作動させることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記車両(5;5A;5B;5C)は、少なくとも1つの二次誘導子を有し、前記車両(5;5A;5B;5C)が少なくとも1つの位置にある際に、少なくとも前記車両(5A;5B;5C)の少なくとも1つの二次誘導子と、前記静止ユニットの少なくとも1つの一次誘導子とが重複するように、前記二次誘導子の大きさが設けられていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記車両(5A;5B;5C)は、同じ種類で同じ大きさである二次誘導子を複数個有し、前記複数個の二次誘導子は、前記車両(5A;5B;5C)が少なくとも1つの位置にある際に、前記車両(5A;5B;5C)の複数の二次誘導子と、前記静止ユニットの一次誘導子とが同時に対をなして重複するように配列されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記二次誘導子は、前記一次誘導子と少なくともおおよそ同じ基部領域を有することを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項13】
前記二次誘導子は、前記一次誘導子よりも小さい基部領域を有することを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【請求項14】
前記二次誘導子の配列(6A;6B)は、前記一次誘導子の配列(26)の少なくとも一部分の領域と一致することを特徴とする請求項10〜12のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−533280(P2012−533280A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519986(P2012−519986)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059873
【国際公開番号】WO2011/006842
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(508237443)コンダクティクス−バンプフラー ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】