説明

電気ケトル

【課題】取扱いやすい蓋で、動作部材なしにも器体転倒時の内容液流出防止機能を発揮し、内容液をスムーズに注出できるようにする。
【解決手段】内容器2をシールして閉じる蓋体5の前部側に、内容器2内に開口した流出口15から内容液16を器体4の上端前部に向けた注出口17へ注出させる注出路6と、この注出路6を開閉する開閉機構7とを設け、蓋体5のハンドル9に対応する後部側に蒸気を蒸気放出口47から外部に逃がす蒸気通路8を設け、器体4は、蓋体5が上方からプラグ嵌合される凹嵌部4dと、この凹嵌部4dから前部側に延びる注口13とを備え、この注口13の基部に凹陥部4dに向け低くした段差部4d1に、凹嵌部4dにプラグ嵌合させた蓋体5の注出口17を受け入れ注口13に繋がるようにしたことにより、上記の目的を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケトルに関し、詳しくは、ヒータにより湯沸かしを行う金属製の内容器を外装ケースに収容した器体と、この器体の上端にて、内容器を閉じる蓋体とを備え、この蓋体に、内容液を器体の上端前部に向け注出させる注出路と、この注出路を開閉する開閉機構と、蒸気を外部に逃がす転倒時止水機能付きの蒸気通路とを設けたハンディタイプの電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
ケトルは本来コンロに掛けて湯を沸かすだけの、いわゆる「やかん」として古くから用いられているが、電源への接続により手軽に数分で湯沸かしができ、かつハンディタイプの手軽に取り扱える電気ケトルが普及してきている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1などで知られる従来の電気ケトルは、ヒータによる加熱でありながら簡易さを優先する余り、湯沸かし容器が外部に露出したままであったり、転倒時の内容液の流出、蒸気の放出といったことに対する安全が図られていなかった。使用者の安全、電気製品自体の安全に関し、便利に使用されるほど危険率は増大する。
【0005】
そこで、本出願人は、電気ポットのように保温機能や複雑な制御は行わないが、安全性を高めた電気ケトルを先に提案している(特願2007−52328)。このものは、図15(b)に示すように、ヒータaにより湯沸かしを行う金属製の内容器bを外装ケースiに収容した器体cと、この器体cの上端にて、内容器bを閉じる蓋体dとを備え、この蓋体dに、内容液を器体cの上端前部に向け注出させる注出路eと、この注出路eを開閉する開閉機構fと、蒸気を外部に逃がす転倒時止水機能付きの蒸気通路gとを設け、器体cにハンドルhを設けて手軽に取り扱えるハンディタイプの電気ケトルとしている。
【0006】
このものでは、湯沸かし容器である内容器bが外装ケースiに覆われて、使用者が直接触れて熱い思いをしたり火傷を負うようなことがないし、加熱効率も幾分高まる。また、蓋体dによって内容器bを閉じ、蓋体dに設けた注出路eを開閉機構fによって開いたときだけ内容液が注出でき、湯沸かし時を含む非注出時に器体cが転倒しても注出路eを通じた内容液の流出は防げる。さらに、蒸気は蓋体dに設けた所定の蒸気通路gを通じて所定の経路で所定の安全位置、具体的には、開閉機構fの操作部f1や蓋体dの着脱操作部jが設けられる位置から離れた、例えば、器体cの下部に回して放出するようにするので、注口mから無制限に放出される危険を抑えられるし、転倒時止水機能、つまり蒸気通路gに設けた転倒時止水弁kが、器体cの転倒に応動して蒸気通路gを塞ぐ位置に移動する止水機能により、器体cが転倒しても内容液が蒸気通路gを通じて流出するのを防止することができる。
【0007】
一方、蒸気通路gは蓋体dを通じ器体cの内部を通して底部まで迂回させて沸騰を検知する蒸気センサlとの接触を図って後外部に放出するのに、内容器bの外回りでかさ張り、外装ケースiを局部的に外部に膨らせるにしても、取り扱いの手軽さを守るため大型化が制限される結果スペースが足りず、内容器bの胴部途中から口部にかけて細くする絞り形状として、必要スペースを確保している。
【0008】
しかし、蒸気通路が常時開放状態であることに対応して、動作を伴う転倒時止水弁kを採用して器体転倒時の止水を図るのではコストが上昇して低コスト機種に対応しにくいし、蒸気通路を無暗に広くして蒸気を放出しやすくするのは転倒時の止水に不利である上、保温機能を持たないことも手伝って内容液が冷めやすくなる。これに、蒸気通路に狭隘部を設けて対応するのでは蒸気通路を通じた蒸気の放出を制限し過ぎ、沸騰直後に内容液を注出する場合は、特に、注出路が開かれると、スムーズな注出のために広めに設計される注出路を通じ残留蒸気が不用意に吹き出しやすく、その後の注出内容液の流れを邪魔したり乱したりすることも考えられる。さらに、転倒時止水弁kを設ける機種では器体を傾けて内容液を注出する場合に、転倒時止水弁kが閉じて、蒸気通路を通じた吸気を妨げるので、内容液の注出がスムーズに行えない問題もある。
【0009】
本発明の目的は、このような課題を解決するものであり、取扱いやすい蓋で、動作部材なしにも器体転倒時の内容液流出防止機能を発揮し、内容液をスムーズに注出できる電気ケトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気ケトルは、ヒータにより湯沸かしを行う内容器を外装ケースに収容した器体と、この器体の上端にて、内容器をシール部材を介し閉じる蓋体とを備えたハンディタイプの電気ケトルにおいて、蓋体の前部側に、内容器内に開口した流出口から内容液を器体の上端前部に向けた注出口へ注出させる注出路と、この注出路を開閉する開閉機構とを設け、蓋体のハンドルに対応する後部側に、内容器内から外部に通じる蒸気通路を設け、器体は、蓋体が上方からプラグ嵌合される凹嵌部と、この凹嵌部から前部側に延びる注ぎ口とを備え、この注口の基部に凹陥部に向け低くした段差部に、凹嵌部にプラグ嵌合させた蓋体の注出口を受け入れ注口に繋がるようにしたことを特徴とする。
【0011】
このような構成では、シール部材を介し内容器を閉じる蓋体は注出路および蒸気通路の機能上、内容器内を器体外に通じさせて、内容液の注出、蒸気の対策を図るが、注出路は注出口からの注出側である蓋体の前部に位置して、内容液を注出するとき以外、開閉機構により確実に閉じられるので、湯沸かし時を含む非注出時に器体が転倒しても内容液が注出路を通じて器体外に流出することはない。また、蒸気通路はハンドル側つまり反注出側に位置して、常時開放されて湯沸かし時はもとよりその後も発生する蒸気を蓋体の蒸気放出口から外部に放出するなどして、器体内が昇圧するのを防止することができる。器体の注口は蓋体が上方からプラグ嵌合する凹陥部に向け低くした段差部に、凹嵌部に嵌合した蓋体の注出口を受け入れ注出口と繋がるようにしたことにより、蓋体の注出路を通じ注出する内容液を注出口から注口にスムーズに注ぎ出させ、注出口から直接注出する場合に比し、注出口が小さくて済み、蓋体の単体での取り扱いが容易になるし、注口との接続によって注出する内容液を器体の胴部外面から必要量離れた位置から注ぎ出せる。併せ、注出口の段差部との嵌り合いにより、蓋体を凹陥部にプラグ嵌合する際、およびプラグ嵌合終了時点で、蓋体を軸線まわりに回り止めする機能も発揮し、蓋体が前記軸線まわりにガタつくようなことを防止することができる。
【0012】
本発明のそれ以上の特徴は、以下の具体的な説明および図面によって明らかになる。また、本発明の各特徴はそれ自体単独で、あるいは複合して種々な組み合わせで採用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電気ケトルによれば、内容器のシール部材を介して閉じる蓋体が注出路、蒸気通路で内容器内から器体外に通じて内容液の注出、蒸気の対策を図るのに、注出路は蓋体の注出側に位置して内容液の注出時以外は注出路を開閉機構にて閉じ、非注出時に器体が転倒しても内容液が器体外に流出させないし、蒸気通路は蓋体の反注出側に位置して常時開放で湯沸かし時やその後発生する蒸気を外部に放出するなどして器体内の昇圧を防止することができる。器体の注口は蓋体が上方からプラグ嵌合する凹陥部に向け低くした段差部に、凹嵌部に嵌合した蓋体の注出口を受け入れ注出口と繋がるようにしたことにより、蓋体の注出路を通じ注出する内容液を注出口から注口にスムーズに注ぎ出させ、注出口から直接注出する場合に比し、注出口が小さくて済み、蓋体の単体での取り扱いが容易になるし、注口との接続によって注出する内容液を器体の胴部外面から必要量離れた位置から注ぎ出せる。併せ、注出口の段差部との嵌り合いにより、蓋体を凹陥部にプラグ嵌合する際、およびプラグ嵌合終了時点で、蓋体を軸線まわりに回り止めする機能も発揮し、蓋体が前記軸線まわりにガタつくようなことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気ケトルの断面図である。
【図2】同電気ケトルの外観斜視図である。
【図3】同電気ケトルの蓋体を取り外した状態の斜視図である。
【図4】同電気ケトルの蓋体を上下反転状態で示す斜視図である。
【図5】同電気ケトルの蓋体の正立状態での斜視図である。
【図6】同電気ケトルの蓋体の上板および補助中間板に着脱機構を組み合わせて見た斜視図である。
【図7】同電気ケトルの蓋体の内蓋を取り除き、上下反転状態で開閉機構の弁を分解して示す斜視図および弁単体の斜視図である。
【図8】同電気ケトルの蓋体の上板を取り外して見た正立状態の斜視図である。
【図9】同電気ケトルの器体のハンドルを含む上端半部を断面して見た斜視図である。
【図10】同電気ケトルの蓋体の上板半部を除去して見た平面図である。
【図11】同電気ケトルの蓋体の上板を取り除いて見た成立状態の斜視図である。
【図12】同電気ケトルの蓋体の内蓋を取り除いて見た上下反転状態での斜視図である。
【図13】同電気ケトルの蓋体の着脱機構部を係合部材が突出する非操作状態で示す断面図である。
【図14】同電気ケトルの蓋体の着脱機構部を係合部材を突出位置から後退させた操作状態で示す断面図である。
【図15】同電気ケトルの水平注出時の残量状態を、先行例の電気ケトルの水平注出時の残量状態と比較して示す説明図である。
【図16】同電気ケトルの蒸気通路における転倒時止水状態を示す断面図である。
【図17】同電気ケトルの蓋体の蒸気通路とハンドルの蒸気導入路との接続部を示す断面図である。
【図18】同電気ケトルの別の例を示す一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図1〜図18を参照しながら説明する。しかし、本発明は、特に限定的な記載がない限りは、本発明の範囲を以下の実施形態に限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0016】
本実施の形態は、図1に示すように、ヒータ1により湯沸かしを行うステンレス鋼などよりなる金属製の内容器2を樹脂製の外装ケース3に収容した器体4と、この器体4の上端にて、内容器2を閉じる蓋体5とを備えている。さらに、この蓋体5に、内容液を器体4の上端前部に向け注出させる注出路6と、この注出路6を開閉する開閉機構7と、蒸気を外部に逃がす転倒時止水機能付きの蒸気通路8とを設け、器体4にハンドル9を設けて手軽に取り扱えるハンディタイプの電気ケトルとしている。これにより、湯沸かし容器である内容器2が外装ケース3に覆われて、使用者が直接触れて熱い思いや火傷を負うようなことがないし、外装ケース3が樹脂製であることによる断熱性と、内容器2および外装ケース3間の空気断熱作用も手伝って、器体4外面の温度を抑えられるので、手を触れた時の熱的安全性が高まる。また、それらの断熱効果によって加熱効率も幾分高まる。
【0017】
また、蓋体5によって内容器2を閉じ、蓋体5に設けた注出路6を開閉機構7によって開いたときだけ内容液が注出でき、湯沸かし時を含む非注出時に器体4が転倒しても注出路6を通じた内容液の流出は防げる。さらに、蒸気は蓋体5に設けた所定の蒸気通路8を通じて所定の経路で所定の安全位置、具体的には、開閉機構7の蓋体5外部からの操作部11や蓋体5の蓋体5外部からの着脱機構12の外部操作部が設けられる位置から離れた、例えば、図1に示す蓋体5の後部にて放出するようにするので、器体4の注口13から無制限に放出される危険を抑えられるし、転倒時止水機能、つまり蒸気通路8に設けた転倒時止水弁14が、器体4の転倒に応動して蒸気通路8を塞ぐ図15(a)、図16に示す位置に移動する止水機能により、器体4が転倒しても内容液が蒸気通路8を通じて流出するのを防止することができる。
【0018】
しかし、着脱機構12を必須としないまでも、既述したように転倒時止水弁14のように動作機構を持った蒸気通路8の採用は、製品コスト上昇の原因になり、低コスト機種に採用しにくい。また、蒸気通路8を無暗に広くするのは転倒時の止水に不利である上内容液16が冷めやすく、狭隘構造で対応すると蒸気の放出を制限し過ぎ沸騰直後の注出時は特に、注出路6が開かれるのと同時に注出路6から残留蒸気が不用意に吹き出したり、注出を邪魔したり乱したりすることも考えられる。さらに、図示例のように転倒時止水弁14を設ける機種では、器体4を図16に示すように傾けて内容液16を注出する場合に、転倒時止水弁14が閉じて、蒸気通路8を通じた吸気を妨げるので、内容液16の注出がスムーズに行えない問題もある。
【0019】
これらに対応するのに本実施の形態では、蓋体に、内容器内に開口した流出口から内容液を器体の上端前部に向けた注出口へ注出させる注出路と、この注出路を開閉する開閉機構と、蒸気を蒸気放出口から外部に逃がす蒸気通路とを設けた、転倒時止水弁14を必須としない基本構成において、蒸気通路8は、器体4の転倒時に流入する内容液16を溜めて蒸気放出口47に至るのを阻止または遅らせるように、蒸気通路8が部分的に拡張した液溜め部8aを有し、この液溜め部8aから蒸気通路8に対し分岐し内容器2内に連通口77aにて通じる連通路77を蓋体5に設け、この連通路77が開閉機構7によって注出路6と同時かそれより早く開かれるようにしてある。
【0020】
これにより、内容器2をシール部材21を介して閉じる蓋体5は注出路6および蒸気通路8の機能上、内容器2内を器体4外に通じさせて、内容液16の注出、蒸気の外部への放出を図るが、注出路6は、内容液16を注出するとき以外、開閉機構7により確実に閉じられるので、湯沸かし時を含む非注出時に器体4が転倒しても内容液16が注出路6を通じて器体外に流出することはない。また、蒸気通路8は、常時開放されて湯沸かし時はもとよりその後も発生する蒸気を蓋体5の蒸気放出口47ら外部に放出して、器体4内が昇圧するのを防止しながら、器体4が転倒して蒸気通路8に内容液16が流入してきても、この内容液16を転倒液溜め部8aが溜め置き、蒸気放出口47に至るのを阻止または遅らせることができる。さらに、液溜め部8aから分岐し内容器2に通じる連通路77が、開閉機構7によって内容液16を注出する流出路6と同時か、それよりも早く開かれて、蒸気通路8に平行して、内容器2内を液溜め部8aに連通させるので、蓋体5内外間を通じさせる通路面積が拡大する分だけ残留蒸気の注出口17側への吹き出しを抑えて、蒸気通路8の液溜め8aに流入させ蒸気放出口47から所定通りに排出させやすい。特に、連通路77が注出路6に先行して開かれると、注出路6が開く前に残留蒸気の蒸気放出口47からの放出をより促進できる。また、連通路77は蒸気通路8の液溜め部8aから分岐し内容器2に連通する構造を、蒸気通路8単独では内容器2内に戻らず液溜め部8aに残っていることのある結露水や流入内容液を、そのまま、あるいは器体4の注出時の図16に示すような傾き時に内容器2内に戻すのに利用することもできる。
【0021】
この結果、蓋体5が注出路6、蒸気通路8で内容器2内から器体5外に通じて内容液16の注出、蒸気の外部への放出を図るのに、内容液16の注出時以外は注出路6を開閉機構7にて閉じ、非注出時に器体4が転倒しても内容液16が器体5外に流出させないし、蒸気通路8の常時開放で湯沸かし時やその後発生する蒸気を外部に放出し器体4内の昇圧を防止しながら、器体転倒で蒸気通路8に内容液16が流入しても液溜め部8aでの溜め置きにて蒸気放出47に至るのを阻止または遅らせるので、動作部のない簡単かつ低コストな構造にて内容液16が蒸気通路8を通じ早期に、多量に外部に流出するようなことを回避することができる。さらに、液溜め部8aから分岐した連通路77が、開閉機構12によって流出路6と同時か、それよりも早く開かれて蓋体5内外間を通じさせる通路面積を拡大する分だけ、残留蒸気の注出口17側への不用意な吹き出しや、注出を邪魔したり乱したりするのを防止して使用者の安全が図れる。特に、連通路77が先行して開かれると注出路6が開く前に残留蒸気の蒸気放出口77からの放出をより促進し、注出口17からの放出防止による安全性を高められる。また、連通路77は蒸気通路8単独では内容器2内に戻らず液溜め部8aに残っていることのある結露水や流入内容液を、そのまま、あるいは器体4の注出時の図16に示すような傾き時に内容器2内に戻すのに利用できる分だけそれらに対する措置が不要になるか、措置しやすくなる。
【0022】
また、連通路77は、液溜め部8aから注出口17側に分岐し、流出口15の後部に連通口77が開口するようにしている。これにより、連通路77が液溜め部8aに対し内容液16を注出する際の図16に示す器体4の傾け側に分岐することになり、液溜め部8aに残留している結露水や流入内容液を、注出時の器4の傾きに伴い連通路77を通じ内容器2内に戻すのに好都合であり、戻しやすい。しかも、連通路77の連通口77aが注出路6の流出口15後部にあって、器体4の傾きによって流出口15に図16に示すように向かい注出される内容液16が及びにくいし、及ぶことがあっても連通路77を液溜め部まで逆流してしまうことはなく、連通路77の存在が特段問題とはならない。
【0023】
しかも、連通路77は、Γ型に形成してあるので、連通路77の形態が単純になって蓋体構成部材に一体成形しやすく、コスト上昇の原因にはならない。また、残留蒸気を液溜め部8aに抜けさせやすいし、液溜め部8aに残留する結露水や流入内容液を内容器2内に戻しやすいので、それらの措置が不用、措置するにも容易になる。
【0024】
また、開閉機構7は、1つの弁体84bで流出口15および連通口77aの双方を開閉するようにしてある。これにより、流出口15および連通口77aが1つの弁体84bによって開閉されるので、弁構造が特に複雑化せずコスト上昇の原因にならないし、流出口15および連通口77a双方間の、図示例のように段差が無いか、あるいは段差があるかに関係なく、同時開閉はもとより、連通口77aが先行する開き操作も弁体84bの流出口15、連通口77aに対する閉じ位置への嵌合量を違えるなどによって簡単に実現することができる。
【0025】
また、蒸気に触れて沸騰を検知しヒータ1をオフする蒸気検知部26を備えたものとしてあり、複雑な制御や回路を必要としないで沸騰時の給電停止ができコストの低減につながるが、特に、蒸気検知部26は液溜め部8aの連通路77分岐側とは反対側に位置して、液溜め部8aから蒸気が及ぶようにしてある。このように、蒸気検知部26が液溜め部8aの連通路77分岐側とは反対側に位置して、液溜め部8aから連通路77を通じて内容器2内に戻される結露水や流入内容液の影響を受けることはなく、電気的安全が図れる。
【0026】
図示例では、蒸気通路8の液溜め部8aに転倒時止水弁14を併設するのに、蒸気通路8は、液溜め部8aの上流に転倒時止水弁14を備えたものとしている。これにより、器体転倒時、液溜め部8aでの内容液16を溜め置く流出防止に併せ、転倒時止水弁14が働いて蒸気通路8を閉じ止水するので、内容液16の流出防止機能が倍加する。また、液溜め部8aは上流の転倒時止水弁14の閉止にて内容液16が無暗に流入せず、転倒した器体4が落ち着くまで転倒時止水弁14が止水位置に安定しないことに対応した短い時間の間に漏れでる少量の内容液16を受け入れて外部への流出を防止すればよく、流出を阻止しやすく、内容器2内に戻しやすいので、措置が省略できたり、措置するにも容易になる。特に、転倒時止水弁14が閉じる器体4の傾き角を小さく設定して転倒時止水機能を高めても、内容液注出時は液溜め部8aから分岐した連通路77が図15(a)、図16に示すようにバイパスとなって内容器2内を蒸気放出口47に連通させて吸気が確保でき注出の妨げになることはない。
【0027】
一方、以上の構成では、器体4のかさ張らない形態を維持して、注出時の残量を少なくし、容積効率を高めるといったことが解消されないことに対し、本実施の形態では、蓋体5に、内容器2内に開口した流出口15から内容液16を器体4の上端前部に向けた注出口17に向け注出させる、図1、図7、図8、図11、図12に示すような注出路6と、この注出路6を開閉する図1、図6、図7、図8、図11に示すような開閉機構7と、蒸気を外部に逃がす転倒時止水機能付きの図1、図15(a)、図16に示すような蒸気通路8とを設けてある。併せ、内容器2は、図1、図15、図16に示すようなほぼストレートな胴部を有した円筒形状にて、蓋体5のシール部材21が器体4における所定のシール位置2aへの上方からの当接にて閉じられるようにし、流出口15は、蓋体5のシール部材21で囲われる領域において、内容器2の胴部壁前部2bに対し、平面視した近傍に開口縁の前部15aが位置するように設けている。
【0028】
このように、内容器2がほぼストレートな胴部を持った円筒形状をなし、蓋体5のシール部材21が所定のシール位置2aへの上方からの当接にて閉じられるものであると、内容器2の口部は、器体4の肩部4aや蓋体5側との内嵌合や内側への回り込みを必須とせず、蓋体5のシール部材21で囲われる領域において、内容器2の胴部壁前部2bに対し、平面視した近傍位置に注出路6の流出口15の開口縁の前部15aが位置することにより、相互間を先行例よりも小さくしやすく、小さくした分だけ、内容液16を注出する際の器体4を傾け角度に対する残量を先行例よりも少なくすることができる。これを、器体4を水平まで傾けたときの残量は図15(a)に示す通りであり、図15(b)の先行例と比較すると各段に少なくなっている。
【0029】
また、内容器2の上端部2aの径、つまり内径が胴部径と同一または、ほぼ同等となり、蓋体5のシール部材21が所定のシール位置2aへの上方からの当接にて内容器2を閉じる蓋体5と共に、器体4の胴部径内で大きくなり、蓋体5に注出路6、開閉機構7、蒸気通路8をそれらに必要な機能を満足して、集約配置しやすくなる。
【0030】
これらの結果、ほぼストレートな胴部を持った内容器2が、蓋体5のシール部材21の所定のシール位置2aへの上方からの当接にて閉じられ、蓋体5のシール部材21で囲われる領域において、内容器2の胴部壁前部2bおよび注出路6の流出口15の開口縁の前部15a相互間を直近させやすく、器体4の傾け角度に対する残量が図15(a)に例示するように少なくなり、器体4の図15(b)に例示する先行例に比し小さな傾け角度で内容液を効率よく流出させられ使用しやすいものとなる。また、内容器2の胴部径とほぼ同等となって容積効率を高められる大径の上端部2aにシール部材21を当接する蓋体5が器体4のかさ張りなしに大きくなって、上下の重なりなしにも、つまりかさ張りなしにも、蓋体5に注出路6、開閉機構7、蒸気通路8をそれらに必要な機能を満足して集約配置することを満足して、器体4の胴部まわりを先行例よりもスリム化できる。
【0031】
以上のようなシール位置2aは、内容器2の上端に上方から当てがって接続する器体4の肩部4aの開口4b部などの一部であってもよいが、図示する例のように内容器2の上端部とすることにより、蓋体5がそのシール部材21を内容器2の上端の上端部2aに直に上方から当接して内容器2を閉じるようにすれば、シールがより確実で、シール性確保のために、シール部材21を内容器2の胴部が形成するそれとほぼ同径の上端部2a開口への内嵌合部や内当接部を設けるなどして、内側に張り出させたり、回り込ませたりせずに済み、蓋体5に設ける流出口15の開口縁の前部15aを内容器2の胴部壁前部2bにより近づけやすくなる。しかも、シール位置2aをなす内容器2の上端部2aが、図示するような外向きに折曲した外向きフランジ2aとすると、この外向きフランジ2aは上方から当接するシール部材21との広い当接面を提供することになり、シール性をさらに高められるので、シール部材21のシール性確保のために上端部2a内側に張り出してシールするようなシール構造を不要にするのに好適である。また、外向きフランジ2aは図に示すように肩部4aの開口4bの下部の段部4a1にシールパッキン22を介し下方から支持することで、器体4側の内容器2との内嵌合なしに双方を接続するのに好適である。
【0032】
この場合、図1に示すように、器体4の肩部4aと胴部4cとを樹脂で一体成形した本体部41の下端に、樹脂成形した底部42を下方から当てがい、底部42と内容器2の底部とをねじ23により連結することにより、器体4の組み立てが簡単に行えるし、メンテナンスも可能である。もっとも、ヒータ1は内容器2の底部に固定しておくのが密着性など加熱効率の面で有利となり、ヒータ1への内部給電機器部24は底部42の側に固定しておくのが外部給電機器部25との接続が、図示するもののように直接の嵌合により行えるなど便利である。しかし、本体部41と底部42との連結に先立って、ヒータ1側と内部給電機器部24とは予め結線を終えておく必要があり、かつ結線は非連結な本体部41、底部42間での結線作業、本体部41、底部42双方を分離しての結線解除や部品の交換といった作業を可能とする引き回し長さが必要である。
【0033】
さらに、本体部41と底部42との上下方向の連結構造は、その連結時に、図示するような本体部41の下向きに開放した保持穴41aと底部42の上向きに開放した保持穴42aとの間に、ハンドル9を挟み込んで組み付けることができ、器体4にハンドル9を設けることが容易になるし、取り外しによる単独でのメンテナンスも可能である。
【0034】
これには、ハンドル9の器体4への取り付け基部9aが本体部41、底部42の双方か、それら連結部から一方の側に及ぶ大きさや形態である必要があり、図示例のように連結部が器体4の下部寄りとなるような場合、それを満足するには上下に長い大きさおよび形態が好適となる。図示例では、ハンドル9およびその取り付け基部9aがほぼ矩形のループをなすように、内周のループ体9bと、これの把持部外側に嵌め合わされる把持部外周壁9c、および取り付け基部9a外側に嵌め合わされる基部外周壁9dとで中空に形成してあり、その上部に蒸気と触れて沸騰を検知し、内部給電機器部24からヒータ1への給電路を開成して給電を断つ、前記蒸気検知部26としての蒸気センサ26を内蔵し、これが、給電のオン、オフスイッチを兼用するようにしている。これに関連して、ハンドル9の上部には、器体4の蒸気通路8から蒸気センサ26のバイメタル26a部に蒸気を導入して接触させる蒸気導入路31を、バイメタル26aに触れた蒸気を器体4側にUターンさせ、また、結露水を流し戻す傾斜した底面31aを有して器体4側に向け下方に拡張するように形成し、Uターンした蒸気や流れ戻る結露水は、蒸気導入路31から取り付け基部9a内に形成した復路32にてハンドル9の下部に導き、そこにある出口32aから外部に流出させるようにしている。ここに、復路32は器体4の近くに位置し、特に図示するように器体4のスリム化した胴部4cまわりでの復路32部分が、他の部分よりも内容器2に近くなるようにすることで、復路32内を結露水が流れ落ちることがあっても内容器2側からの熱によって蒸発させやすく、結露水がそのまま外部に出てまわりを濡らすようなことを回避することができる。このために、復路32の部分が多少昇温しても、ハンドル9を把持する手が触れる心配はなく熱的安全は確保される。
【0035】
このような蒸気センサ26部に流入した蒸気の、復路32を通じた万一の場合の結露水と共の排出は、前記液溜まり部8aから蒸気センサ26下に導入されUターンする蒸気を蓋体5側に逆流させないで、外部に抜けさせるように一方に通過させることになる。これにより、液溜まり8aでの蒸気の充満に伴い静圧が高まっていく蒸気を仕切り壁94による制限のもの基に、導入路31へ所定量経時的に分流させて蒸気センサ26に接触させられ、蒸気温度が沸騰相当温度に達したとき蒸気センサ26が即時に応動してヒータ1をオフできるようにすることができるようにしながら、蒸気導入路31および復路33への蒸気進入量を必要最小限に抑えて結露水が生じにくく、生じても前記のように内容器2側からの熱によって発散されやすくすることができる。
【0036】
蒸気センサ26とヒータ1への給電回路との結線は、図に示すようにハンドル9の把持部内に設けた通路33を通じて配線したリード線34にて行うことで、蒸気導入路31や復路32から引き離し、蒸気や結露水が配線に影響しにくくしている。特に、蒸気センサ26付近では、蒸気導入路31と通路33とを蒸気センサ26の取り付け部材35によって仕切り、より安全を図っている。蒸気センサ26はヒータ1のオン、オフスイッチを兼ねるために、板ばね36によってバイメタル26aを、ヒータ1への給電回路を開成状態に保つ位置と、閉成状態とに安定させる受動部材26bを有し、この受動部材26bと軸26cで連結した操作部材37が、軸26cを中心とした揺動と、操作部材37をハンドル9の上端後部側に露出させる操作窓38との間で、図1に実線で示すオフ位置と、仮想線で示すオン位置とに切り替え操作され、その位置に応じてバイメタル26aをオフ位置とオン位置とに切り替え、オン位置では蒸気の温度検出による沸騰検知時には操作部材37を伴い自己オフできるようにしている。このような蒸気センサ26は市販されている既成品である。
【0037】
ここで、開閉機構7は図1、図7、図11に示すように、蓋体5の器体4の上端前部に向け内容液を注出させる注出口17の後側近傍に位置するようにしてある。このように、開閉機構7が蓋体5の注出口17の後側近傍に位置することで、この開閉機構7によって開閉される注出路6の流出口15から注出口17までの全体が、蓋体5の前部側に寄ってスペース少なく設置できるし、開閉機構7の操作部11を注出口17ないしはそれが繋がる注口13の近傍として双方の視覚的な関連性を高められる。つまり、開閉機構7が蓋体5の注出口17の後側近傍に位置することで、開閉機構7によって開閉される注出路6の、流出口15から注出口17までの全体が、蓋体5の前部側に寄ってスペース少なく設置でき、他の必要装備の設置に有利になるし、開閉機構7の操作部11が注出口17ないしはそれが図示例のように繋がった注口13に近くなる双方の高い視覚的関連性にて、誤操作なく使用しやすいものとなる。
【0038】
また、蒸気通路8は、開閉機構7とは反対の蓋体5後部側に設けてあることにより、蓋体5の後部寄りにスペース少なく設置できるし、蒸気を外部に放出するにも操作部11から十分に遠ざけられる。このように、蒸気通路8が人が頻繁に操作部11で外部操作する開閉機構7側とは反対の蓋体5の後部側に位置し、蓋体5を大きくできることも手伝って、蒸気を外部に放出するにも操作部11から十分に遠ざけられ、蒸気に対する使用者の安全が図れる。
【0039】
転倒時止水弁14を設けるのに、図1、図15、図16に示す例では、蓋体5の流出口15が開口した下板71の下側に金属製の内蓋43を図1、図4に示すようにねじ44などにより取り付けて、樹脂製の蓋体5の熱的保護を行っているのを利用して、蓋体5の周壁45まわりに設けるシール部材21を蓋体5の外周と内蓋43の外周との間でシール部材21を挟持しているのに併せ、蓋体5の下板71の後部に内蓋43との間に弁室46を形成して転倒時止水弁14を収容している。弁室46は蒸気通路8の途中に位置する弁口46aを持った弁室上部46bと、この弁室上部46bに下方より接合されて、転倒時止水弁14の着座させる着座部46c、およびそのまわりの蒸気導入口46dを有した弁室下部46eとを有し、着座部46cの着座面46c1をすり鉢状として、その底部に転倒時止水弁14が同じ形状を持つなどして落ち着くようにしてある。
【0040】
これにより、器体4が図16に示す程度、つまり、着座面46c1の傾斜が水平に対し反転する程度に、傾いたとき、転倒時止水14が着座面46c1の傾斜に沿って弁口46aの側に移動してそれを閉じ、内容液16が蒸気通路8を通じ外部に流出するのを防止することができ、内容液16が到達してくるとその動圧によってより確実に閉じられる。このような、弁室46は図示例のように蒸気通路8の内容器2内近くに設けると、内容液16が蒸気通路8の余計な部分へ流入するのを抑えられ、好適である。しかし、弁室46は、蒸気通路8の複数個所に設けることで、止水機会を高められる。
【0041】
本実施の形態では、弁室46を複数設ける代わりに、弁口46aから蓋体5上面後部に開口する蒸気放出口47に至る途中に、転倒時止水弁14の閉じ遅れなどで蒸気通路8の弁口46a以降に流入することがあっても、蓋体5が大きくなったことなどによるデッドスペースを利用して、蒸気通路8が部分的に拡張した既述の液溜め部8aを設けているが、これに代えて、迷路形態により流入した内容液16を迂回させて蒸気放出口47に達しないか、達するのを遅らせるようにすることができる。
【0042】
なお、以上のような着座面46c1の傾斜による転倒時止水弁14の止水位置への案内は、軸線まわりのどの方向でも行なわれ、器体4がどちらの向きに転倒しても上記止水は達成される。
【0043】
さらに、内蓋43を設けたことに関連して、内蓋43には図4に示すように、内容液16の注出や蒸気の放出を妨げないように、内蓋43の流出口15に対応する範囲には主として注出内容液16を通す連通穴48を、弁室46のまわりに対応して主として放出蒸気を通す連通穴49を設けてあり、この連通穴49、は内容液16を通しやすくするために多数設けている連通穴48よりも極端に少なく設けて、器体4の転倒時に内溶液16が大挙して弁室46に及ぶのを制限している。
【0044】
また、着脱機構12は、図1、図6、図10、図11に示すように、蓋体5の開閉機構7と蒸気通路8との間に設けてある。これにより、蓋体5の着脱機構12が、蓋体5の前後にある開閉機構7と蒸気通路8との間のデッドスペース52を利用して設置でき、蓋体5の前後方向での中央位置にて、蓋体5を器体4の側に位置および係止力に偏りなく係止しやすく、また安定に係止させられる。また、係止解除を伴い蓋体5を着脱するにも重量に偏りなく蓋体5を容易に取り扱える。
【0045】
具体的には、蓋体5は、器体4の肩部4aの開口4bの下部の段部4a1から上に形成した図1、図3、図9に示すような凹陥部4dに蓋体5をある程度の遊びを持った嵌合を伴い、着脱機構12によって着脱できるようにしている。前記遊びを持った嵌合は、蓋体5および凹陥部4d双方の樹脂成形時の抜き勾配程度の緩い傾斜をなして、軸線方向に嵌合し、嵌合を外す、いわゆるプラグ嵌合形式に着脱するものとしている。
【0046】
このように蓋体5を着脱するのに着脱機構12は、図13、図14に示すように、蓋体5に露出して、親指61と、これに対向する人差し指またはおよび薬指62とを個別に掛けられるようにした外向きの操作片63a、63aを有した左右一対の係合部材63を蓋体5内に設け、これら係合部材63間に働かせたばね64によって各係合部材63の係合片63bが蓋体5の周壁45の直径線上左右2箇所に設けた窓45aから常時突出するようにしてある。これに対向して、器体4の肩部4aが形成する凹陥部4dの周面の直径線上左右2箇所に前記突出した係合片63bが係合する係止凹部65を図3、図9に示すように形成してある。
【0047】
これによって、着脱機構12は、その左右一対の操作片63aに指を掛けると、ばね64による反発力によって、係合部材63をばね64に抗して後退させるようなことなく受け止められるので、それを内蔵している蓋体5を容易かつ安定して把持でき、自由に取り扱える。従って、蓋体5は着脱機構12によって把持し図1、図2に示すように、器体4の凹陥部4dに上方から軸線方向にてプラグ嵌合することができる。このプラグ嵌合の途中着脱機構12は、蓋体5の周壁45から突出している係合片63bが凹陥部4dの開口縁に上方から当接する。しかし、係合片63bはその突出部の下面が斜面63b1となっていることによって、凹陥部4dの開口縁により後退側への押動力を受け、ばね64に抗し図14に示すように後退させられる。このため、蓋体5は特別な操作なしに軽い押し込み力を与えるだけで、凹陥部4dへさらにプラグ嵌合していける。プラグ嵌合の最終段階蓋体5は、そのシール部材21を器体4側の所定のシール位置である内容器2の上端のフランジ2aに所定量圧接させて、内容器2を図1、図2に示すように閉じる。この閉じ状態になるのと同時に、係合部材63の係合片63bは凹陥部4d内面の係止凹部65と図13に仮想線で示すように対向し合って凹陥部4d内面による押動から解放されるので、ばね64によって周壁45から再度突出させられて係止凹部65に係合する。これによって、係合片63bは平坦な上面が係止凹部65の同じく平坦な下面に引っ掛かり、蓋体5が上方に抜き出されるのを阻止するし、シール部材21の反発力によって前記係合部間を上下方向の圧接状態に保てる。つまり、蓋体5を前記の閉じ状態に係止し上下方向に安定させられる。もっとも、蓋体5の凹陥部4dへのプラグ嵌合は、一対の係合部材63の手操作による後退を伴い行うこともできる。
【0048】
ここで、係止凹部65は、係合片63bの受け入れ量をばね64に適度な圧縮状態を与える押し戻し位置に受け止めるように設計しておくことで、凹陥部4dに遊びを持ってプラグ嵌合されている蓋体5を、ばね64のばね力が左右バランスする中立位置に保持する左右の求心機能を発揮するので、蓋体5を左右方向にその中立位置、軸心位置に安定させられる。これに関連して、器体4の肩部4aに形成した注口13は、図1、図3、図9に示すようにその基部に凹陥部4dに向け低くなる段差部4d1を形成して、蓋体5の注出口17を受け入れ繋がるようにしている。これにより、蓋体5の注出路6を通じ注出する内容液は、注出口17から注口13に流れて注ぎ出されることになり、注出口17から直接注出する場合に比し、注出口17が小さくて済み、蓋体5の単体での取り扱いが容易になるし、注口13との接続によって注出する内容液を器体4の胴部外面から必要量離れた位置から注ぎ出せる。併せ、注出口17の段差部2d1との嵌り合いは、蓋体5を凹陥部4dに上方からプラグ嵌合する際の、軸線まわりの位置決め機能を発揮するとともに、プラグ嵌合終了時点では、蓋体5を軸線まわりに回り止めする機能も発揮する。従って、係合片63bと係止凹部65との係合に蓋体5の軸線まわりに係脱を容易にするための適度な遊びを持ったものとして、蓋体5が前記軸線まわりにガタつくようなことを防止することができる。
【0049】
蓋体5はさらに、図1、図13、図14に示すように、下板71、周壁45を持った下板71とこれに上方から嵌合し、その際の図13、図14に示すヒータ1のフック片81と係止部82への弾性係合、またはおよび、ねじ72によるねじ止めした上板70とで中空に形成してある。上板70には、既述の蒸気放出口47に加え、図2、図5、図6に示すように開閉機構7の操作部11を露出させる操作窓73、着脱機構12の操作片63aを突出させて着脱操作を行わせる着脱操作凹部74、および前記注出口17および注口13の上部に延びる注部蓋70aを一体成形している。下板71は、既述の弁室46に加え、図1、図8、図11、図12に示す、下板71、上板70の間に挟み込んだ中間板75との間で、図1、図7、図8、図12に示すように、流出口15および注出口17を持った注出路6、注部蓋70aの下に合わさる注部内蓋75aを形成するのに併せ、中間板75、および中間板75と上板70との間に挟み込んだ図1、図6、図11に示す補助中間板76を含んで、液溜まり8aを持った蒸気通路8を形成すると共に、注出路6の後部に隣接して既述の連通路77を形成している。
【0050】
ここで、着脱機構12は、係合部材63が自身の窓63cが図13、図14に示すように上板70の下板71との図6に示すような連結用のボス70aに嵌り合った状態で、上下板70、71の間に挟み込まれ、補助中間板76が形成する液溜まり8aの上方への突出形状によるガイド部8bと、これに対向するように上板70の下面に突設したガイド凸部70bとによる左右からの案内もあってスムーズに進退されて、蓋体5の係止、係止解除を伴う着脱が円滑に行われるようにしている。もっとも、係合部材63の前部側の案内は、ガイド凸部70bに代わる他の部分、例えば他の構造的な突出を利用したものであってもよく、場合により、液溜まり8aによる上方への突出部であってもよい。
【0051】
また、開閉機構7は、中間板75の流出口15に同心な位置に形成した図1、図7(a)に示すような摺動穴83に、図1、図7(b)に示すような弁軸84aを上下2箇所のOリングタイプのシール部材85を介し上下摺動できるように支持され、弁軸84aの下端弁体84bによって流出口15をその下方からシール部材86を介し離接して開閉する弁84を備え、この弁84の弁軸84aに開閉用の可動カム部材87を回転可能に連結してばね88により上動付勢し、この可動カム部材87の上下摺動を案内するように上板70の下面に形成したガイド筒70cの内周に、その円周方向に弁84の開き保持と、開き保持解除とを切り替えていくように複数組形成した固定カム91を形成し、これに可動カム部材87の外周に放射状に複数突出した可動カム87aを係合させて、可動カム部材87をばね88に抗し押し下げる都度、弁84を図15(a)に示すように開き状態として開き保持位置に係止される回転位置と、開き保持を解除して上動復帰ができ弁84が図1に示すように閉じられるようにする回転位置とに順次切り替えることを繰り返すようになっている。このような構成は、ボールペンの芯を突出した状態と後退した格納状態とに切り替えるいわゆるノック機構などとして古くから知られるし、実開昭61−160831号公報などでも知られ、特別な特徴を必要とするものでもないので、ここでは詳細な図示および説明は省略する。
【0052】
本実施の形態では、特に、操作部11は図1に示すように可動カム部材87に上方から相対回動できるように嵌合したキャップ形状のものとして、外周係合片11aが図1に示すように操作窓73の開口縁73aに内側から係合して抜け止めされるだけのものとしてあり、可動カム部材87の押し下げはするが、その時々での可動カム部材87の弧回転には影響しないし、影響されないようにしている。また、弁84もその弁体84b上に一体に突出するガイドピン84cと図7(a)に示す下板71のガイド穴80との嵌り合いで弁84の回転を防止し、可動カム部材87の回転に影響しないし、影響されないようにしている。なお、弁体84bに設けたシール部材86は、流出口15に隣接する連通路77の連通口77aに対向して離接し、弁84が閉じている間、つまり注出路6を閉じている非注出時の間閉じ、内容器2が所定の蒸気通路8以外のルートで放出されないようにしている。
【0053】
以上のような蓋体5と器体4の凹陥部4dとのプラグ嵌合構造において、蒸気通路8と、蒸気通路8の液溜め部8aから分岐する蒸気をハンドル9に内蔵した蒸気センサ26へ導く蒸気経路としての蒸気導入路31と、の接続は、蓋体5の周壁45と器体4の凹陥部4dとのプラグ嵌合域間でプラグ嵌合と同時に接続され、嵌合の解除によって接続が解除されるようにしている。このような接続は、蒸気が主として蒸気放出口47による所定位置から放出されるようにする立場や、蒸気導入路31を通じ蒸気が蒸気センサ27部に確実に達して沸騰が遅滞なく検出されるようにする必要から、この接続部にて蒸気が漏れ出るのを防止する必要がある。このため、本実施の形態では図1、図18に示すようにシール部材92を介して接続するが、このようなシール部材92を介した接続であっても、既述のシール部材21とフランジ2aとの圧着のように、蓋体5を凹陥部4dにプラグ嵌合する軸線方向の圧着を伴って行うのがより確実である。しかし、プラグ嵌合領域は既述したように、蓋体5の周壁45と器体4の凹陥部4dとが若干の遊びを持ってプラグ嵌合した領域であることにより、軸線方向、つまり上下方向の圧着を伴う接続のための平面スペースを設けにくい。
【0054】
そこで、このプラグ嵌合領域での既述した抜き勾配を利用した斜め面間の軸線方向圧着を利用しようとしたが、蓋体5の凹陥部4dへのスムーズなプラグ嵌合を許容して、しかも、接続部間で十分なシールのためにシール部材92の十分な圧着状態を得るのは甚だ困難である。
【0055】
これに対応するのに、本実施の形態では、図1、図7、図17に示すように、蓋体5の後部の蒸気放出口47の下部で、周壁45の抜き勾配面に対し、それよりも大きく傾斜した接続面45bを有して蒸気通路8の接続口8cを貫通形成し、これに対応する蒸気導入口31bを、シール部材92が器体4の凹陥部4d内側に抜き勾配よりも大きく傾斜したシール面92aを有して突出するように接続口4d2を形成してあり、接続面45b、シール面92a間に、図17に示すようなプラグ嵌合時の、最大となる初期ギャップG>圧接代Sの関係を満足して、接続面45bがシール面92aに対する軸線方向の重なりを増すように、蓋体5が凹陥部4d内にプラグ嵌合されていき、重なり量がL0となる時点から接続面45bがシール面92aに接触し始め、以降重なり量が最大のL1となるまで接続面45bがシール面92aに圧接していき、最終圧接代Sを確保する。この最終の圧接代Sによって接続口8c、4d2どうしが蓋体5の凹陥部4dへのプラグ嵌合の終了と同時に、シール部材92の十分な圧接を確保して接続される。しかも、この圧接代S分の圧接には、プラグ嵌合最終段階の接続面45bとシール面92aとの残り重なり量L3の極限られた範囲の間でのみ摺動し合いながら圧接量を増大していくので、引っ掛かり合いはなく摺動抵抗もさほど働かないので、蓋体5のプラグ嵌合による装着は容易に達成される。蓋体5の抜き出しは圧接を軽減する方向になされるので、さらに軽快に行える。
【0056】
なお、圧接代Sは図17に示すように、接続面45bおよびシール面92a間で一様に設定してあるが、これを、接続面45bの傾斜角よりもシール面92aの傾斜角を大きくして、圧接代Sが接続面45bおよびシール面92a間の最上位側から最下位側に漸増するように設定すると、蓋体5を凹陥部4dにプラグ嵌合する時の、引っ掛かり回避や接続抵抗の軽減に有利としながら、最終段階でしっかりした接続状態は得られるようになる。
【0057】
接続口4d2は、周壁45に外向きに一体形成し、蒸気導入路31の上端に臨むようにした鉤型筒4eに嵌め合わせて蒸気導入路31と接続する弾性鉤型管93の内端部とし、そこにシール部材92を一体成形している。また、シール部材92は接続面45bの側に突出して内径側に向け湾曲したシールリップ92bを有し、このシールリップ92bの接続面45b側に凸となった湾曲面によってシール面92aを形成している。これによって接続口8c、4d2どうしのシール部材92を介した接続がより軽く、より接面の環状連続性と、十分な接面幅とを確保した十分な接面状態にて達成される。
【0058】
ところで、この接続面45bとシール面92aとの圧接代Sによる圧接の反力は、蓋体5の注出口17と器体4の注口13の段差部4d1との径方向での係合止め機能によって受けられ、蓋体5は凹陥部4dとの遊びを持ったプラグ嵌合の影響なく前後方向にも安定に保持されるし、接続口8c、4d2どうしのシール部材92を介した接続が緩んだり、接続不良となることはない。
【0059】
蒸気通路8では蓋体5の後部に上下に分かれて存在することとなった蒸気放出口47と接続口8cとの間に、それらの設置高さ範囲にほぼ対応する液溜まり8aからの蒸気を、蒸気放出口47側と接続口8c側とに分岐させる前記の仕切り壁94を、蒸気放出口47の下方に臨むように形成してあり、沸騰段階で活発に発生する蒸気が通気抵抗の低い蒸気放出口47の側に抜けてしまうのを邪魔し、蒸気導入路31側には下板71との間で所定の制限のもとに確実に回り込み蒸気センサ26によって沸騰が遅滞なく、確実に検知されるようにしている。逆に、下板71の蒸気通路8の弁口46aが上向きに開口する部分での連通路77が開口する側には、沸騰状態で活発に発生する蒸気が連通路77を通って侵入しないように、蓋体5の後部側に案内する図1に仮想線で示すようなΓ型のガイド壁95を設けることもできる。
【0060】
最後に、器体4は図1に示すように、その底部42の下面に定置面101を有し、この定置面101によって給電台102の上に設置して、そこに設けられた外部給電機器部25に内部給電機器部24を接続して、給電台102を接続した家庭用電源などから給電され湯沸かしできるようにしているが、湯沸かし後は給電台102から取り外してハンドル9により持ち運び、必要位置に単独で定置し、その場で繰り返し注出に使用することができる。
【0061】
このような、給電台102には図18に示す例のように、家庭用電源に接続する電源コード103をコード巻き取りリール104と共に装備しておけば、使用に便利となる。なお、図示は省略するが巻き取りはばね力にて行ない、所定の引出位置に停止させるストッパ機構を持ったものとするのが好適であるが、これに限られない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、注出路、この注出路の開閉機構、蒸気通路を蓋体に備えた機種に実用して、簡単な構造で、器体転倒時の内容液流出防止機能に優れ、開かれた注出路を通じた残留蒸気の不用意な吹き出しやそれによる注出の邪魔を防止できる。
【符号の説明】
【0063】
1ヒータ
2内容器
3外装ケース
4器体
5蓋体
6注出路
7開閉機構
8蒸気通路
8a液溜め部
9ハンドル
13注口
14転倒時止水弁
15流出口
16内容液
17注出口
21シール部材
77連通路
77a連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータにより湯沸かしを行う内容器を外装ケースに収容した器体と、この器体の上端にて、内容器をシール部材を介し閉じる蓋体とを備えたハンディタイプの電気ケトルにおいて、
蓋体の前部側に、内容器内に開口した流出口から内容液を器体の上端前部に向けた注出口へ注出させる注出路と、この注出路を開閉する開閉機構とを設け、蓋体のハンドルに対応する後部側に、内容器内から外部に通じる蒸気通路を設け、器体は、蓋体が上方からプラグ嵌合される凹嵌部と、この凹嵌部から前部側に延びる注ぎ口とを備え、この注口の基部に凹陥部に向け低くした段差部に、凹嵌部にプラグ嵌合させた蓋体の注出口を受け入れ注口に繋がるようにしたことを特徴とする電気ケトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−192282(P2012−192282A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−159775(P2012−159775)
【出願日】平成24年7月18日(2012.7.18)
【分割の表示】特願2008−21225(P2008−21225)の分割
【原出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【Fターム(参考)】