説明

電気ケトル

【課題】給湯時のお湯の流れの乱れが少なく、安全にお湯を注ぐことができる電気ケトルを得ること。
【解決手段】内部に液体を貯水することができ、電源台4に着脱可能に載置される本体部1と、前記本体部1の底部に配置された前記本体部1内の液体を加熱するヒータ12と、前記本体部1の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体3と、前記本体部1の外殻11に固着された把手2と、前記本体部1側面から側方に突出するように形成された注口部5とを備え、前記注口部5の内側表面の底面部に、前記注口部5から注がれる液体の流れをガイドするガイド溝51が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源台に着脱自在に載置される本体部でお湯を沸かすことができる電気ケトルに関し、特に、注湯時のお湯の乱れが低減された電気ケトルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、使いたいときに少量のお湯を素早く沸かしたいというユーザのニーズに応えるために、電源台に着脱自在に載置される本体部を備えた電気ケトルの普及が進んでいる。
【0003】
このような電気ケトルは、0.15リットルから1.2リットルぐらいの比較的小容量のものであり、本体部内の貯水部に水を入れて電源台上に載置すると、電源台を通じて本体部内のヒータに通電されて、1〜3分程度の短時間で沸騰したお湯を沸かすことができる。電気ケトルは、電気ポットのような保温機能を有しておらず、また、お湯が沸くと、電源台から本体部だけを持ち上げて、従来のやかんでお湯を注ぐように本体部を傾けて注口部からコーヒーカップなどにお湯を注ぐことができる。
【0004】
このような電気ケトルとして、沸騰したお湯を取り扱うことから安全性が考慮され、お湯を注ぐ際に本体部の内部から注口部への通路を開通させる給湯スイッチを備えて、使用時以外はお湯が出ないようにする機能や、誤って電気ケトルの本体部を転倒させてしまった場合でもお湯がこぼれてしまうことを防止する機構を有する蓋体を備えたものが知られている。
【0005】
このような安全性を高めた構成の蓋体を備えた電気ケトルの一例として、お湯の注ぎ残しが少なく、かつ、本体部の容積率を高くしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−172109号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気ケトルは、上記したように本体部を電源台から持ち上げて傾けることで、注口部からお湯を注ぐこととなる。このため、テーブルの上に載置した状態のままで、蓋体上部のプッシュスイッチを押下することで、下向きの注口部からお湯を出すことができる電気ポットとは異なって、注口部を流れるお湯の量がユーザによって、また、その使用状況によって都度異なることになる。
【0008】
一方で、沸騰させた熱湯を注ぐことから、注口部を流れるお湯の量の多少によらず給湯時のお湯の乱れを抑制して、正確にコーヒーカップなどにお湯を注げるようにすることがユーザへの安全面での配慮として重要である。しかし、給湯スイッチや転倒時にお湯がこぼれることを防止する機能を有している電気ケトルは存在したが、お湯を注ぐ際のお湯の流れの乱れを防止しようとする電気ケトルは提案されていない。
【0009】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するものであり、給湯時のお湯の流れの乱れが少なく、安全にお湯を注ぐことができる電気ケトルを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の電気ケトルは、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手と、前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、前記注口部の内側表面の底面部に、前記注口部から注がれる液体の流れをガイドするガイド溝が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電気ケトルは、本体部側面から側方に突出するように形成された注口部の、内側表面の底部にガイド溝が形成されているため、お湯を注ぐときに注口部でのお湯の流れを規制することができる。このため、給湯時のお湯の乱れを低減することができ、ユーザが安全にお湯を注ぐことができる電気ケトルを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの蓋体の構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの蓋体に設けられた注口部の構成を説明するための図である。図4(a)は、蓋体を上方から見た平面図であり、図4(b)が蓋体を横方向から見た側面図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる電気ケトルの注口部パーツの構造を示す図である。図4(a)が注口部パーツの斜視図、図4(b)が注口部の内側表面の底部近傍の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態にかかる電気ケトルにおける、給湯時のお湯の流れを説明する図である。図6(a)は、お湯の量が比較的多い場合を示し、図6(b)は、お湯の量が少ない場合を示す。
【図7】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの注口部パーツの断面構成を示す断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかる電気ケトルにおいて、注口部の内側表面に形成された段差部によって、お湯が底部の中央に集まる作用を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態にかかる電気ケトルの注口部の先端部分の形状を説明する要部拡大断面図である。
【図10】注口部の先端部の傾斜角によるお湯の回り込みを説明する図である。
【図11】注口部の後方突出部と蓋体内部の給湯弁との位置関係を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電気ケトルは、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手と、前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、前記注口部の内側表面の底面部に、前記注口部から注がれる液体の流れをガイドするガイド溝が形成されている。
【0014】
本発明の電気ケトルは、上記構成を備えることで、本体部を傾けて本体部内部のお湯などの液体をコーヒーカップなどに注ぐ際、注口部の内側表面の底面部に形成されたガイド溝によって注口部でのお湯の流れが規制される。このため、本体部内部の湯量や、ユーザによって給湯時に本体部の傾けられる角度が異なることによって、注口部を流れるお湯の量が変化した場合でも、お湯の流れの乱れを抑制することができる。
【0015】
上記本発明にかかる電気ケトルにおいて、前記注口部は、断面が略V字状で、かつ、根元側に比べて先端側の幅が狭く形成されていることが好ましい。注口部がこのような先細りの樋状の形状を有することにより、注がれるお湯が注口部の内側表面の底面部近傍に集まるため、給湯がより容易に行える。
【0016】
さらに、前記ガイド溝を2本備え、前記2本のガイド溝の間に、前記注口部の内側表面の底面部の中心線に沿って畝状の凸部が形成されていることが好ましい。このようにすることで、注口部から注がれる湯量が少ない場合には、凸部に沿ったお湯の流れができるため、湯量が少ない場合でも効果的にお湯の流れを制御することができる。
【0017】
また、本発明の電気ケトルとして、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手と、前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、前記注口部の内側表面の底面部に、前記注口部から注がれる液体の流れをガイドする畝状の凸部が形成されている構成とすることができる。
【0018】
上記構成の電気ケトルは、本体部を傾けて本体部内部のお湯などの液体をコーヒーカップなどに注ぐ際、注口部の内側表面の底面部に形成された畝状の凸部によって、注口部でのお湯の流れが規制される。このため、本体部内部の湯量やユーザにより本体部が傾けられる角度が異なることによって注口部を流れる湯量が変化した場合でも、お湯の流れの乱れを抑制することができる。
【0019】
さらに、本発明の電気ケトルにおいて、前記注口部の内側表面の根元側には、前記ガイド溝および前記凸部のいずれも形成されていない平坦部分が存在し、前記平坦部分は、前記ガイド溝および前記凸部が形成されている部分との間に段差部を介してより深い位置に形成されていることが好ましい。このようにすることで、平坦部分とガイド溝および凸部が形成されている部分との間の段差部が、注口部を流れるお湯を注口部の底部に集める働きをするため、注口部から注がれるお湯の乱れを低減することができる。
【0020】
また、前記注口部の底面部は、前記本体部を前記電源台に載置した状態で水平面に対して所定の傾斜角を有するように形成されていて、前記注口部の先端部の傾斜角が根元側部分の傾斜角よりも小さいことが好ましい。このようにすることで、電気ケトルからお湯を注ぐ際に、お湯の流れの方向をコーヒーカップなどがある下側に向けられるため、お湯が勢いよく流れすぎでコーヒーカップなどから飛び出してしまうことを効果的に防止することができる。
【0021】
さらにまた、本発明の電気ケトルとして、内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、前記本体部の外殻に固着された把手と、前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、前記注口部の底面部は、前記本体部を前記電源台に載置した状態で水平面に対して所定の傾斜角を有するように形成されていて、前記注口部の先端部の傾斜角が根元側部分の傾斜角よりも小さい構成とすることができる。
【0022】
上記構成の電気ケトルは、本体部を傾けて本体部内部のお湯などの液体をコーヒーカップなどに注ぐ際、注口部の先端部における底面部の傾斜角が小さくなるように形成されているため、注湯時のお湯の飛び出しを効果的に防止することができる。このため、本体部内部の湯量やユーザにより本体部が傾けられる角度が異なることによって、注口部を流れる湯量が変化した場合でも、お湯の流れの乱れを抑制することができる。
【0023】
なお、本発明の電気ケトルとして、さらに下記の各種の形態を採ることができる。
【0024】
本発明の電気ケトルにおいて、ガイド溝を2本備え、前記2本のガイド溝は、前記注口部の内側表面の底面部の中心線との間に所定の間隔を隔てて、互いに線対称となる位置に配置されていることが好ましい。このようにすることによって、注口部の底面部の中心線に対して、左右方向から均等にお湯の流れを制御することができ、給湯時のお湯の乱れを効果的に低減させることができる。
【0025】
さらに、注口部の先端側における前記2本のガイド溝の間隔が、前記注口部の根元側における前記2本のガイド溝の間隔よりも狭いことが好ましい。このようにすることで、注口部の先端部分でお湯の流れがより集まりやすくすることができる。
【0026】
さらにまた、前記凸部の先端が、前記注口部の先端よりも後退した位置にあることが好ましい。このようにすることで、注口部の最先端部分でのお湯の流れに乱れが生じることを防止することができる。
【0027】
さらに、本発明の電気ケトルにおいて、前記注口部の根元側の前記平坦部分の上面には、前記注口部の上面を覆うカバー部材が形成されていることが好ましい。このようにすることで、カバー部材が、注口部の内面側に埃が入ることを防止する機能を果たすことができ、また、ユーザがお湯を注ぐ際に、万一電気ケトルを大きく傾け過ぎてしまった場合のお湯の飛び出しを防止する機能を果たすことができる。
【0028】
また、本発明の電気ケトルにおいて、前記注口部の先端部の傾斜角が3度以上であることが好ましい。このように、注口部の先端部の傾斜角が3度以上とすることで、電気ケトルを水平に傾けて注湯する際に、注口部からお湯が後方に回り込んでしまうことを効果的に防止することができる。
【0029】
さらに、前記蓋体が前記本体部内部の液体の注出を制御する機構を備え、前記注口部は、前記蓋体の側面部に配置されていることが好ましい。このようにすることで、お湯を注がないときには、注口部からお湯が出ないようにすることができ、より安全な電気ケトルを実現することができる。
【0030】
さらにまた、前記注口部が樹脂材料で形成されていることが好ましい。このようにすることで、低コストで、かつ、注湯時のお湯の乱れを低減した注口部を備えた電気ケトルを実現することができる。
【0031】
以下、本発明にかかる電気ケトルの実施形態として、本体部内部に貯水部としての金属製の内容器を備え、また、本体部の開口部を封鎖する蓋体が、給湯時に貯水部から注口部への通路を開通させる給湯スイッチと、誤ってケトル本体部を転倒させてしまった場合でもお湯がこぼれてしまうことを防止する機構を備えたものを例示して説明する。
【0032】
図1は、本実施形態の電気ケトルの外観を示す斜視図である。
【0033】
この電気ケトルは、本体部1と、本体部1の外殻に設けられた把手2と、本体部1の上部の開口部を開閉自在に封鎖する蓋体3とを備え、本体部1は電源台4に着脱可能に載置される。
【0034】
本実施形態の電気ケトルは、本体部の側面から側方に突出するように形成された、水やこの水を沸騰させたお湯などの本体部1内に貯水された液体をコーヒーカップなどに注ぐための注口部5を備えている。なお、通常は、電気ケトル内に貯水する液体は水であり、この水を沸かしてお湯とすることから、本明細書では注口部5から注がれる液体の例として、基本的にはお湯を用いるものとして説明を進める。
【0035】
また、本実施形態の電気ケトルは、蓋体3が、本体部1の上方から挿入されることによって、本体部1の開口部を封鎖する構造となっていて、蓋体3には、本体部1に蓋体3を固着しているバネ機構を解除するための着脱レバー6、本体部1の内部に貯水されているお湯などを注ぐ際に、本体部1の内部から注口部5への通路を開通させる給湯スイッチ7、本体部1の内部の蒸気を放出するための蒸気放出口8が形成されている。
【0036】
把手2には、本体部1内部に貯水された水などの液体を加熱して沸騰させることができる、加熱ヒータへの通電を開始させる電源スイッチ9が設けられている。この電源スイッチ9は、本体部1内部のお湯が沸いたことを検出して、自動的にヒータへの通電を停止して空だきを防止する機能を備えている。
【0037】
この電気ケトルの内部構造を図2に示す。
【0038】
電気ケトルの本体部1は、ステンレス鋼などよりなる金属製の内容器10を外殻である鋼板製もしくは樹脂製の外装ケース11に収容して構成されている。本体部1の下部には内容器10に接してヒータ12が配置され、内容器10に貯蔵された水をヒータ12により加熱して湯沸かしを行うことができる。
【0039】
蓋体3には、内容器10内に貯水された液体を、蓋体3の本体部1の前方側、すなわち、把手2が配置される側とは反対の側に配置された、注口部5へと注出させる通路である注出路13と、内容器10と注出路13との接続を開閉する開閉機構14が設けられている。
【0040】
開閉機構14は、その上面が蓋体3の上面に露出している給湯スイッチ7と、給湯スイッチ7の下部に配置された給湯弁15とを、給湯スイッチ7が押し下げられていない状態で給湯弁15を給湯スイッチ7側に押しつけて、内容器10と注出路13との間を遮断するとともに、給湯スイッチ7が押し下げられた状態をロックできるようになっている。
【0041】
図2に示すように、給湯スイッチ7は、断面が略「T」字状になっていて、T字の脚の部分に相当する給湯スイッチ7下部の延出部7aが、同じく略「T」字状であるが上下逆さまに配置された給湯弁15の脚部に相当する突出部15aに、その先端同士が接触するようになっている。このため、給湯スイッチ7が押し込まれた状態でロックされると、給湯弁15も押し下げられ、給湯弁15の円板状の弁部分15bが内容器10側に押し下げられて、内容器10と注水路13とが空間として接続され、注口部5からお湯を注ぐことができるようになる。
【0042】
本実施形態の電気ケトルは、蓋体3が以上説明した開閉機構14を備えていることにより、蓋体3によって内容器10を閉じ、蓋体3に設けた注出路13を開閉機構14によって開いたときに内容器10内のお湯を注出できる。従って、湯沸かし時を含む非注出時に本体部1が転倒しても、注出路13を通じたお湯など、貯水部である内容器2内部の液体の流出を防げることができる。
【0043】
また、図2に示すように、蓋体3には、蒸気を外部に逃がす転倒時止水機能付きの蓋蒸気通路16が設けられている。内容器10内の蒸気は、蓋体3に設けられた蓋蒸気通路16を通じて所定の経路で、蓋体3の後部の蒸気放出口8から放出される。蓋蒸気通路16は本体部1が垂直に載置されている場合には常時開放されており、湯沸かし時はもとより、その後も、発生する蒸気を蓋体3の蒸気放出口8から外部に放出して、本体部1内の圧力が上昇することを防止する。
【0044】
蒸気放出口8は、所定の安全な位置、具体的には、開閉機構14を操作する給湯スイッチ7や、図1に示した蓋体3を本体部1に固着する着脱レバー6が設けられる位置から離れた位置にあり、本体部1の注口部5から無制限に蒸気が放出される危険を防止できる。また、転倒時止水機構17の内部に配置された図示しない転倒時止水弁が、本体部1が転倒した場合に蓋蒸気通路16を塞ぐ位置に移動するため、本体部1が転倒しても、内部の液体が蓋蒸気通路16を通じて流出するのを防止することができる。
【0045】
本実施形態の電気ケトルの蓋体3は、給湯スイッチ7と蒸気放出口8との間の部分に、図1に示した着脱レバー6に連動して、蓋体3を本体部1の開口部近傍に固着するための図3に図示する係合片25を押圧する押圧スプリング18を備えている。
【0046】
把手2の上部に設けられた電源スイッチ9の下側には、電源スイッチ9に連動してヒータ12への通電を制御する接点部が配置されている。また、本実施形態の電気ケトルでは、把手2内部の空間19に内容器10からの蒸気を誘導して、その蒸気温度により内容器10内のお湯が沸いたことを検出できるように、例えば温度によりその形状が変化するバイメタルスイッチからなる沸騰検出部20を備えている。
【0047】
本体部1が載置される電源台4は、本体部1底部の下面21に対応した形状の定置面22を有している。そして、この定置面22に本体部1の下面21が載置された際に、本体部1の電源プラグ23が電源台4の電源ソケット24に勘合するようになっている。このように、本体部1が電源台4上に載置されることで、商用電源に差し込まれる図示しない電源ケーブルを介して電源台4に供給される電力が、本体部1の下部に配置されたヒータ12に供給可能となる。
【0048】
このように、本実施形態の電気ケトルは、本体部1が電源台4の定置面22上に載置された状態で内容器10に貯水された水を温めてお湯を沸かし、湯沸かし完了後は、電源台4から本体部1を取り外して把手2により持ち運ぶことができる。そして、把手2を持って本体部1を傾けることで、本体部1内の内容器10で沸かしたお湯をコーヒーカップなどに注ぐことができるとともに、本体部1をテーブル上などの所望の位置に単独で定置することもできる。
【0049】
なお、本実施形態の電気ケトルの上記した全体構成は、従来公知のものであり、また、本発明にかかる電気ケトルの具体的構成の一例を示すものに過ぎない。このため、本発明の電気ケトルとしては、例えば本体部が貯水部としての内容器を有さずに、1層構造の本体部内に直接貯水することができる構成としてもよい。また、給湯スイッチや蒸気放出口の有無およびその具体的な構成、電源スイッチの位置やその構成なども、上記図示した以外のさまざまな構成を適宜採用することができる。
【0050】
図3は、本実施形態の電気ケトルの蓋体3の構成を示す斜視図である。
【0051】
図3に示すように、本実施形態の電気ケトルの蓋体3の上面には、図1および図2で説明した、蓋体3を本体部1に固着するための着脱レバー6、給湯スイッチ7、蒸気放出口8が配置されている。また、蓋体3の側面から、着脱レバー6と連動して動く係合片25が突出している。係合片25は、図2に示した押圧スプリング18によって外側に付勢されていて、係合片25が、本体部1の開口部近傍の内面に形成された勘合溝に勘合することで、本体部1と蓋体3とが固着される。
【0052】
蓋体3の側面は、本体部1の開口部近傍の内面との間を水密に保つことができるように、比較的柔らかいポリプロピレン(PP)で形成されている。また、本体部1の内面に密着することができるように、蓋体3の側面を取り巻くように形成された1本または複数本の環状突起26を備えている。
【0053】
係合片25によって蓋体3が本体部1に固着された状態で、図3では図示しない把手2とは反対側となる位置の蓋体3の側面上部には、注口部5が配置されている。本実施形態の電気ケトルにおける注口部5は、このように蓋体3の側面に配置されていて、蓋体3が本体部1の開口部を封鎖するように固着されることで、本体部1の側面から側方に突出するようになる。また、本実施形態の電気ケトルの注口部5は、成型された樹脂材料からなる一つのパーツ(部品)であり、蓋体3の側面の一部を構成する注口部固定板27に差し込まれて蓋体3の側面に配置される。なお、注口部固定板27と注口部5との間に隙間ができて湯漏れが生じないように、注口部5は、図示しない薄いシート状のパッキンを介して、注口部固定板27に固定されている。
【0054】
本実施形態の電気ケトルの注口部5は、断面の形状が略V字状の樋様の構成を有している。なお、ここで、注口部5の断面形状が「略V字状」であるとは、注口部5の断面が全体として、2つの側面が底部で合わさっていて、両側面の間隔が上面側で広い形状となっていることを示す。このため、2つの側面が形成する断面が直線状であるものに限られず、2つの側面が例えば外側に少し膨らんだ湾曲面となっていてもよく、また、2つの側面が合わさる底部が、R面で接続されていてもよい。
【0055】
本実施形態の電気ケトルの注口部5において、「V」字の屈曲部に相当する内側表面の底面部には、注口部5から注がれる液体をガイドするガイド溝51と、畝状の凸部52が形成されている。さらに、注口部5の根元側の上面には、所定幅のカバー部材53が配置されている。なお、本明細書においては、本体部の側面から側方に突出するように形成された注口部において、本体部の側を根元側、根元側の反対側に位置し、突出した先端部分の側を先端側と称することとする。
【0056】
図4は、注口部5の全体的な形状を説明するための図であり、図4(a)が蓋体3の上方から見た平面図、図4(b)が蓋体3を側方から見た側面図である。なお、図4(b)では、注口部3と本体部1との位置関係がわかるように、本体部1と把手2を点線で図示している。
【0057】
図4(a)の上面図に示すように、注口部5は、蓋体3に固着された根元側に比べて先端側の幅が狭くなる先細り形状となっている。なお、平面視した注口部5の側面の形状は、根元側では略直線状であるのに対し、先端部近傍では中央側に湾曲してその幅が急激に狭くなっている。このように注口部5を先細り形状とすることで、その断面が略V字状の樋状に形成されていることも相俟って、注がれるお湯を注口部5の内側表面の底面部中央に集めることができ、ユーザがコーヒーカップなどにお湯を注ぎやすくなる。
【0058】
注口部5の内側表面の底面部には、2本のガイド溝51(51a、51b)、畝状の凸部52が形成されているが、注口部5の内側表面の底面部の詳細構成は、図5を用いて後述する。
【0059】
側面図である図4(b)に示すように、図示しない電源台もしくはテーブルなどの台上に載置された本体部1の開口部に蓋体3が固着された状態で、注口部5の上面501は、水平面Aに沿うように形成されている。なお、注口部5の上面501は、必ずしも水平面Aに沿う必要はなく、水平面Aに対して数度から十数度傾斜していてもよく、また、上面501が例えば上に凸であって、なおかつ先端部にいくにつれてその位置が下側に変化する滑らかな曲面として形成されていてもよい。本実施形態の電気ケトルの注口部5の上面501も、根元側では水平面Aに沿っているが、注口部5の先端側では下面502に近づく方向に大きな傾斜を描いて切れ下がっている。
【0060】
注口部5の下面502は、水平面Aに対して所定の傾斜角αをなす傾斜面Bを形成している。なお、注口部5を形成する部材の厚さは一定であるため、この注口部5の下面502の傾斜角αは、そのまま注口部5の内側表面の底面部での傾斜角となる。本実施形態にかかる電気ケトルでは、この注口部5の下面502の傾斜角αを約20度としているが、これは一例に過ぎず、傾斜角αは、例えば10度〜70度程度の間で適宜定めることができる。
【0061】
以上、本実施形態の電気ケトルの注口部5の形状について説明したが、注口部5の外形形状、すなわち、略V字状として例示した断面の形状や、平面視した際の側面の先細り形状、さらに側面図に現れる上面501と下面502の形状は、ユーザの使用状況を踏まえながら注口部から注がれるお湯の流れを考慮して、適宜定めることができる。
【0062】
図5は、一つのパーツとしての注口部5の形状を示す図面であり、図5(a)が注口部パーツの全体形状を示す斜視図であり、図5(b)が注口部5の内側表面の底面部を正面斜め上方から見た状態の図である。
【0063】
図5(a)に示すように、本実施形態の電気ケトルの注口部5は、断面が略V字状で全体として先細りの樋状の形態となっている。「V」字の屈曲部に相当する注口部5の内側表面の底面部には、先端側に2本のガイド溝51(51a、51b)と、ガイド溝51の間に形成された畝状の凸部52が形成されている。
【0064】
注口部5の内側表面の根元側は、ガイド溝51と凸部52のいずれも形成されていない平坦部分54となっている。そして、この平坦部分54を覆うように、注口部5の根元側の上面にはカバー部材53が形成されていて、注口部5の内側に埃が入ることを防ぐとともに、給湯時に、ユーザが急角度で電気ケトルを傾けてしまった場合であっても、お湯が勢いよく前方側に飛び出すのを防止することができる。
【0065】
図3を用いて説明したように、本実施形態の電気ケトルでは、注口部5はその根元側部分が蓋体3の側面を構成する注口部固定板27に差し込まれて蓋体3に固着されている。このため、注口部5の根元側の部分には、注口部固定板27に差し込むための板状部55が形成されている。この板状部55は、注口部5の上面に対して垂直に形成されているため、蓋体3の側面を構成する注口部固定板27に差し込まれたときに、図4(b)に示したように、注口部5の上面501が水平面Aに沿うようになる。また、パーツとしての注口部5の根元側の端部は、注口部5の内側表面の形状を延長して形成された後方突出部56となっている。これらの板状部55および後方突出部56は、注口部5が蓋体3に取り付けられたときに、蓋体3の内部に位置するものであり、注口部5の板状部55よりも先端側の部分が、蓋体3に取り付けられたときに本体部1の開口部側の端部に形成された切れ込み部を介して、本体部1の側面より側方に突出することになる。
【0066】
図5(b)に示すように、先細りの樋状である注口部5の内側表面の底部には、底部の中心線、すなわちV字状の注口部5の断面の最も底の部分に、畝状の凸部52が形成されている。また、この凸部52を線対称の対称軸としてその両側から挟むように、2本のガイド溝51(51a、51b)が形成されている。
【0067】
ガイド溝51a、および、ガイド溝51bは、それぞれ注口部5の内側表面の底部に形成された幅1mm、深さ0.5mmの溝である。図5(b)に示すように、ガイド溝51a、および、ガイド溝51bは、先細りの注口部5の形状に沿うように、注口部5の先端側にいくにつれてその間隔が狭まるように、注口部5の内側表面の底面部の中心線に対して約8度の角度θで交わるように配置されている。また、ガイド溝51aおよびガイド溝52bは、注口部5の内側表面の内、先端側の約半分の領域にのみ形成されていて、本実施形態の電気ケトルでは、2つのガイド溝同士の間隔Wは、根元側端部での間隔w1が4.5mm、先端側端部での間隔w2が2mmとなっている。
【0068】
注口部5の底部の中心線に沿うように形成されている畝状の凸部52は、高さおよび幅がともに0.5mmであり、2つのガイド溝51aと51bとのちょうど中間部分に形成されている。凸部52も、ガイド溝51と同様に注口部5の先端側の約半分の領域に形成されている。凸部52の根元側の端部位置は、ガイド溝51の根元側端部位置と一致しているが、本実施形態の電気ケトルでは、凸部52の先端側の端部は、ガイド溝51の先端側の端部のように注口部5の先端にまで到達しておらず、先端から約3mm後退した部分まで形成されている。
【0069】
本実施形態の電気ケトルは、注口部5の内側表面の底面部に2本のガイド溝51aおよび51bと凸部52が形成されているため、給湯時にお湯の流れを制御することができる。このことを、図6を用いて説明する。
【0070】
図6(a)は、注口部5から注がれるお湯の量が比較的多い状態でのお湯の流れ100を示している。図6(a)に示すように、注口部5を流れるお湯の量が比較的多い場合には、お湯は、注口部5の内側表面の両側面に跨るようにして注口部5内を流れる。このとき、お湯の流れ100の両端部分もしくは、両端に近い部分が注口部5の内側表面に形成されたガイド溝51(51a、51b)にかかるため、お湯の流れ100の両端部分をガイド溝51で規制することができる。図5(a)、図5(b)を用いて説明したように、2つのガイド溝51aおよび51bは、注口部5の先端側でその間隔が狭くなるように形成されているため、注口部5内のお湯の流れ100をガイド溝51に沿って注口部5の中心側に集めることができる。したがって、お湯の量が多い場合でも、お湯の流れが乱れて「暴れる」ことを効果的に防止することかできる。
【0071】
また、注口部5を流れるお湯の量が比較的少ない場合には、図6(b)に示すように、お湯の流れ200は、注口部5の内側表面底面部の中心部分近傍のみを流れることになる。この場合には、湯量が少ないために幅の狭いお湯の流れ200が、畝状の凸部52に沿って注口部5の先端側に向かうことになる。このように、注口部5を流れるお湯の量が少ない場合には、溝を用いてお湯の流れの両端部分を規制するよりも、断面が略V字状の注口部5の内側表面の底部に畝を設けてお湯の流れをこの畝に沿わせることで、より良好に規制することができる。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の電気ケトルの注口部5は、その内側表面の底面部に、中心線に沿って形成された凸部52と、先端側にいくにつれて形成間隔が狭くなる2本のガイド溝51を備えている。このため、注口部5を流れるお湯の量の多寡にかかわらず、その流れを注口部5の内側表面の底面部にしっかりと沿わせることができ、注湯時のお湯の流れを良好に規制することができる。
【0073】
なお、本実施形態では、注口部5の内側表面の底面部に、2本のガイド溝51と畝状の凸部52との両方を備えた電気ケトルを例示して説明したが、本発明の電気ケトルにおいてこれは必須の要件ではない。注口部5を流れるお湯の量にかかわらず、より良好にお湯の流れを規制する上では、図6(a)および図6(b)を用いて説明したとおり、注口部5の内側表面の底面部に、2本のガイド溝51と畝状の凸部52との両方を備えることが最も好ましい。しかし、注口部5の内側表面の底面部に、ガイド溝のみ、もしくは、凸部のみを形成することによっても、注口部を流れるお湯の流れを規制することができる。
【0074】
また、ガイド溝は例示した2本に限られず、1本もしくは3本以上設けることができる。また、畝状の凸部も例示した1本に限られず、2本以上形成することができる。なお、液体を流すものであるという基本的な制約から、注口部5は、断面が例示したV字状のものに限らなくとも、U字状、半円状などの全体として下に凸の「樋状」とされることが考えられる。このため、注口部の内側表面の底面部に形成されるガイド溝、もしくは凸部は、注口部の中心線を対称軸とする線対称となるように配置することが好ましいと考えられる。従って、形成されるガイド溝または凸部が、偶数本の場合には、注口部の内側表面底面部の中心線に対して、それぞれ両側に所定の間隔を有して線対称に配置されることが、また、奇数本の場合には、中心線上に1本が配置され、他は中心線に対してそれぞれ両側に所定の間隔を有して線対称に配置されることが、より好ましいと考えられる。
【0075】
また、底面部の中心線に対して所定の間隔を有して配置されるガイド溝または凸部は、本実施形態のガイド溝51aおよび51bのように、注口部の先端側の間隔が根元側の間隔よりも狭く形成されることが基本的には好ましいと考えられる。しかし、このようにガイド溝または凸部を、注口部の先端側の間隔が根元側の間隔よりも狭く形成することも必須の要件ではなく、ガイド溝または凸部の形成間隔については、注口部の内側表面の底面部の形状を踏まえて、お湯の流れが良好に規制されるように適宜選択されるべきものである。
【0076】
図7に、本実施形態の電気ケトルにおけるパーツとしての注口部5の断面形状を示す。
【0077】
図5(a)を用いて説明したように、本実施形態の電気ケトルの注口部5の内側表面の底面部には、その先端側の約半分の領域にガイド溝51と凸部52が形成されていて、残りの根元側の部分は平坦部分54となっている。この平坦部分54は、ガイド溝51および凸部52が形成されている先端側の部分に比較して、段差57を介してより深く、すなわち、お湯の流れる面がより低くなるように形成されている。なお、本実施形態の場合の段差57の高さhは、一例として0.5mmである。
【0078】
ここで、本実施形態の電気ケトルの注口部5での、内側表面の底面部における段差57の作用について説明する。
【0079】
図8に矢印300および310として示すように、注口部5の根元側から流れてきたお湯300は、段差57で先端部側への流れが一旦遮られることになり、段差57に沿って内側表面の底面部の中央部分へと向かう矢印310として示した流れとなる。矢印310で示した注口部5の底面部の中央部分へと向かう流れは、最も高さが低い底面部の中心線部分に集まって段差57を乗り越え、注口部5の先端側に向かうことになる。
【0080】
本実施形態の電気ケトルの注口部5は、注口部5の先端側の内側表面の底面部に、2本のガイド溝51と凸部52が形成されているため、段差57によって底面部の中央部分に集められたお湯は、効果的にガイド溝51と凸部52の影響を受けて、流れが整えられた形で注がれることになる。
【0081】
なお、前述したように本実施形態のパーツとしての注口部5は、樹脂成型による一体ものとして形成されている。ここで、樹脂の一体成型品として注口部5の根元側上面に注口部5の内側表面を覆うカバー部材53を形成するためには、図6に矢印61および62として示した2方向に内型を抜く必要がある。しかし、2つの部分に分かれた内型の境界部分には、金型の分割ライン(PL)が生じ、この部分には完全になくすことは不可能なバリが生じる。このように、パーツとしての注口部5を一体成型する場合に形成されてしまうバリは、お湯の流れを乱す原因となるとともに見栄え上も問題となる。そこで、本実施形態の注口部5のように、この成型金型の分割ラインを積極的に段差57とすることで、不所望のバリの発生を防止することができるとともに、前述したお湯の流れを集める作用を付与することができる。
【0082】
もちろん、段差57の形成位置を成型金型の分割ラインに合わせることは必須の要件ではなく、例えば注口部5を金属材料で構成する場合や、注口部53を樹脂で形成する場合であっても、カバー部材53を一体成型ではなく別部材として作製した後に貼り合わせる構成とする場合には、カバー部材53の形成位置とは全く無関係に、お湯の流れのみを考慮して最も適した位置に段差57を形成することができる。
【0083】
図9は、本実施形態の電気ケトルの注口部5の先端部の形状を示す部分拡大断面図である。
【0084】
図9に示すように、本実施形態の電気ケトルの注口部5の先端部は、お湯が流れる内側表面の水平面Aに対する傾斜角γが、先端部以外の内側表面の底面部を構成する面Bの水平面Aに対する傾斜角αと比べて、より緩やかに、すなわちγ<αという関係を満たすように形成されている。
【0085】
具体的には、図4(b)を用いて前述したように、本実施形態の電気ケトルにおいて、注口部の内側表面の先端部以外の底面部の傾斜角αが約20度であるのに対し、先端部の傾斜角γを約5度としている。このように注口部5の先端部の傾斜角γを、先端部以外の部分の傾斜角αよりも角度β(=α−γ、約15度)だけ小さい値とすることで、注口部5の先端部分から注がれるお湯の向きを下向きに曲げることができる。注口部5内側表面の底面部の傾斜角が、根元側から先端部まで、連続して同じ角度で形成されている場合には、ユーザが電気ケトルを傾けてお湯を注ぐ際に、勢いのついたお湯が想像以上に前方へ飛び出すような流れとなってしまうことがある。これは、特に電気ケトル内に大量のお湯が入っている場合に生じやすく、お湯がユーザの想定以上に前方側に飛び出してしまうと、お湯を注ぐべきコーヒーカップなどからこぼれたり、コーヒーカップなどの内壁に当たったお湯が勢いよく跳ね上がってしまったりして、ユーザがやけどを負うおそれも生じる。このため、本実施形態の注口部のように、注口部内側表面の底面部の傾斜角を、先端部でより緩やかにしてお湯を下側に曲げる働きを生じさせることで、お湯がユーザの想定以上に前方に飛び出してしまうことを効果的に回避することができる。
【0086】
なお、この先端部の傾斜角γは、根元側の注口部の底面部で形成されたお湯の流れを下向きに変える作用を発揮させる上では、根元側の傾斜角αとの差βが5度以上あった方が好ましい。また、一方で、先端部分の傾斜角γをあまりに小さくして、電気ケトルを載置した状態で水平面Aと並行になるように、もしくは、水平面Aよりも先端側が斜め下方に向くように(γが負の値になる)してしまうと、図10に示すように、ユーザが、電気ケトルの本体部1をほぼ水平に近い状態にまで傾けた場合には、注口部5から注がれるお湯400が、鉛直軸Dに対して、電気ケトルの本体部1の底面側である後方側、すなわち図10における右向きの矢印401の方向に回り込んでしまう場合がある。
【0087】
図10に示すようなお湯の回り込みが生じると、ユーザがコーヒーカップなどの所望の位置にお湯を正確に注ぐことが極めて困難となる。図10に示すようなお湯の回り込みを防止する上では、注口部5の内側表面の先端部における傾斜角γは、3度以上を確保することが好ましい。
【0088】
以上を踏まえると、本実施形態の電気ケトルの場合のように、注口部5内側表面の底面部の基本的な傾斜角αが20度の場合には、先端部の傾斜角γは、3度〜15度の範囲とすることが好ましいと考えることができる。
【0089】
以上説明したように、注口部の内側表面の先端部における水平面に対する傾斜角を、先端部以外の部分の水平面に対する傾斜角よりも小さくすることにより、ユーザがより正確にお湯を注ぐことができる電気ケトルを実現することができる。なお、図9では、本実施形態の電気ケトルの注口部の形状として、注口部の内側表面にガイド溝や凸部が形成されているものを例示した。しかし、図9および図10を用いて説明した、注口部先端部の傾斜角を根元側部分と比較して小さくすることの効果は、ガイド溝や凸部の存在とは関係なく奏されるものである。このため、内側表面にガイド溝または凸部が形成されていない注口部の先端部の傾斜角を、根元側に比べて小さく形成することができることは、言うまでもない。
【0090】
ここで、本実施形態で説明した電気ケトルのパーツとしての注口部5が備える、後方突出部56の作用効果について説明する。
【0091】
図11は、本実施形態の電気ケトルの蓋体3の、注口部5が形成されている側の部分拡大断面図である。なお、図11では、具体的な構成がわかりやすくなるように、給湯スイッチ7、およびこれに関連して、給湯時にお湯の通路を形成するための可動部分の各部材には太いハッチングを入れている。
【0092】
本実施形態の電気ケトルでは、給湯スイッチ7を押し下げることで、給湯スイッチ7の延出部7a、給湯弁15の突出部15aを介して、給湯弁15の円板状の弁部分15bが図中白矢印32で示したように内容器10側に押し下げられる。このことにより、内容器10と注水路13とが空間として接続されて、図11中に矢印33として示す給湯ルートが形成されて、注口部5からお湯を注ぐことができる。
【0093】
一方、給湯スイッチ7が押し下げられていない状態では、電気ケトルを傾けたり、転倒させてしまったりした場合でも注口部5からお湯が流れ出ないように、給湯弁15の円板状の弁部分15bは、内容器10と注水路13とを遮断しなくてはならない。このため、図11に示すように、注水路13と内容器10との間には、給湯弁15の弁部分15bが押し下げられていない状態で面同士が接する接合面部分31が形成されている。
【0094】
この接合面部分31は、給湯弁15の弁部分15bと面同士で接してお湯の流れを確実に止めることができるように、弁部分15bに被さるように内容器10の中心方向側に突出して形成されている。一方、給湯弁15が押し下げられて、内容器10と注水路13とが空間的に連続された場合には、この接合面部分31が、お湯の流れるルート33にとっての障壁となってしまう。ここで、接合面部分31の上方側が、板状の部材がお湯の流れるルート32に突き出しているような平面状であると、接合面部分31の裏側に回り込むお湯の流れが生じて、内容器10と注水路13との間の滑らかなお湯の流れ33が形成されない。
【0095】
そこで、本実施形態の電気ケトルの注口部5では、蓋体3の内面側に突出する後方突出部56を形成し、後方突出部56の先端を接合面部分31の先端に沿わせることで、接合面部分31を越えて注水路13に流れ込むお湯の流れ33を滑らかにすることができる。
【0096】
以上、説明したように、本発明の電気ケトルでは、注口部内側表面の底面部に形成されたガイド溝や凸部によって、注口部の内表面を流れるお湯の流れを規制することができ、給湯時のお湯の乱れを低減された、ユーザが安全にお湯を注ぐことができる電気ケトルを実現することができる。
【0097】
また、注口部の先端部分の傾斜角を、根元側部分の傾斜角よりも小さい値とすることで、注口部から前方に向かうお湯の流れを飛び出しすぎないようにコントロールすることができる。
【0098】
なお、上記実施の形態では、注口部が蓋体の側面上部に固着され、蓋体が電気ケトルの本体部の開口部封鎖するように固着されたときに、注口部が本体部の側面から側方に突出する構成のものを例示した。しかし、本発明の電気ケトルはこの構成に限られず、本体部の開口部を封鎖する蓋体が一枚の板状であり、注口部が本体部の側面状端部に直接固着されている構成のものとすることができる。
【0099】
また、注口部の素材としても、例示した樹脂製のものに限られず、例えばステンレスなどの金属材料を用いることかできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の電気ケトルは、給湯時に流れ出るお湯の流れの乱れが少なく、安全にお湯を注ぐことができる電気ケトルとして有用である。
【符号の説明】
【0101】
1 本体部
2 把手
3 蓋体
4 電源台
5 注口部
11 外装ケース(外殻)
12 ヒータ
51 ガイド溝
52 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、
前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、
前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、
前記本体部の外殻に固着された把手と、
前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、
前記注口部の内側表面の底面部に、前記注口部から注がれる液体の流れをガイドするガイド溝が形成されていることを特徴とする電気ケトル。
【請求項2】
前記注口部は、断面が略V字状で、かつ、根元側に比べて先端側の幅が狭く形成されている請求項1に記載の電気ケトル。
【請求項3】
前記ガイド溝を2本備え、前記2本のガイド溝の間に、前記注口部の内側表面の底面部の中心線に沿って畝状の凸部が形成されている請求項1または2に記載の電気ケトル。
【請求項4】
内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、
前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、
前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、
前記本体部の外殻に固着された把手と、
前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、
前記注口部の内側表面の底面部に、前記注口部から注がれる液体の流れをガイドする畝状の凸部が形成されていることを特徴とする電気ケトル。
【請求項5】
前記注口部の内側表面の根元側には、前記ガイド溝および前記凸部のいずれも形成されていない平坦部分が存在し、前記平坦部分は、前記ガイド溝および前記凸部が形成されている部分との間に段差部を介してより深い位置に形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の電気ケトル。
【請求項6】
前記注口部の底面部は、前記本体部を前記電源台に載置した状態で水平面に対して所定の傾斜角を有するように形成されていて、前記注口部の先端部の傾斜角が根元側部分の傾斜角よりも小さい請求項1〜5のいずれかに記載の電気ケトル。
【請求項7】
内部に液体を貯水することができ、電源台に着脱可能に載置される本体部と、
前記本体部の底部に配置された前記本体部内の液体を加熱するヒータと、
前記本体部の開口部を開閉可能に封鎖する蓋体と、
前記本体部の外殻に固着された把手と、
前記本体部側面から側方に突出するように形成された注口部とを備え、
前記注口部の底面部は、前記本体部を前記電源台に載置した状態で水平面に対して所定の傾斜角を有するように形成されていて、前記注口部の先端部の傾斜角が根元側部分の傾斜角よりも小さいことを特徴とする電気ケトル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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