説明

電気ケーブル、電力供給装置、基板処理装置及びデバイスの製造方法

【課題】発熱を抑制できると共に、発生した磁気ノイズ及び外部から伝わる磁気ノイズを遮蔽できる電気ケーブル、電力供給装置、基板処理装置及びデバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】電力供給装置31は、電気ケーブル33と、電気ケーブル33の長手方向における少なくとも一部を収容し且つ磁気ノイズを遮蔽する液体金属が収容される収容スペース36が内部に形成される第1収容部材34とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に電力を供給するための電気ケーブル、電気ケーブルを備える電力供給装置、該電力供給装置及び駆動装置を備える基板処理装置、及び該基板処理装置を用いるデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどの駆動装置に電力を供給するための電力供給装置として、例えば特許文献1に記載の電力供給装置が提案されている。上記電力供給装置は、導線と、該導線を被覆する絶縁性の小径チューブと、該小径チューブの外周面に対向する内周面を有する絶縁性の大径チューブとを有する電気ケーブルを備えている。こうした電気ケーブルにおいて小径チューブの外周面と大径チューブの内周面との間には、所定間隔の隙間が形成されており、該隙間内には、所定温度に調整された冷却水が充填されている。そのため、駆動装置への給電に伴い導線が発熱したとしても、該導線は、冷却水によって小径チューブを介して冷却されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−11767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気ケーブルの導線からは、駆動装置に電力を供給する際に、該電力に応じた磁気ノイズが発生することがある。こうした磁気ノイズは、各チューブ及び冷却水では遮蔽することが困難である。
【0005】
電気ケーブルから発生する磁気ノイズを遮蔽する方法としては、錫などで形成されるメッシュ状のノイズ遮蔽部材を、電気ケーブルの外周側に巻き付ける方法がある。しかしながら、このメッシュを用いた遮蔽方法では、メッシュには多数の網目があり、該網目を介して磁気ノイズが電気ケーブルから放射されたり、網目を介して外部から電気ケーブルに磁気ノイズが伝わったりする。そのため、磁気ノイズを十分に遮蔽できない問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、発熱を抑制できると共に、発生した磁気ノイズ及び外部から伝わる磁気ノイズを遮蔽できる電気ケーブル、電力供給装置、基板処理装置及びデバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、実施形態に示す図1〜図7に対応付けした以下の構成を採用している。
本発明の電気ケーブルは、電線(60)と、前記電線(60)の外周面(60a)との間に隙間(61)を介在させた状態で該電線(60)を収容する筒状の収容部材(62)と、前記電線(60)の外周面(60a)と前記収容部材(62)の内周面(62a)との間の隙間(61)内に収容され、磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体と、を備えることを要旨とする。
【0008】
上記構成によれば、電線(60)に電流が流れる際に該電線から発生した磁気ノイズは、電線(60)の外周面(60a)と収容部材(62)の内周面(62a)との間の隙間(61)内に収容される遮蔽用液体によって、電気ケーブル外に放射されることが規制される。また、電気ケーブル外からの磁気ノイズによる影響を電線が受けることが、上記隙間(61)内に収容される遮蔽用液体によって規制される。さらに、電流が流れることによって電線が発熱したとしても、該電線で発生した熱エネルギーは、遮蔽用液体によって吸収される。
【0009】
また、本発明の電力供給装置は、駆動装置(16,18,23,28)に電力を供給するための電力供給装置であって、電気ケーブル(33,40,52)と、前記電気ケーブル(33,40,52)の長手方向における少なくとも一部を収容し且つ磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体を収容可能な収容スペース(36,44,51)を有する第1収容部材(34,41)と、を備えることを要旨とする。
【0010】
上記構成によれば、電気ケーブル(33,40,52)に電流が流れる際に該電気ケーブルから発生した磁気ノイズは、収容スペース(36,44,51)内に収容される遮蔽用液体によって、電力供給装置外に放射されることが規制される。また、電力供給装置外からの磁気ノイズによる影響を電気ケーブル(33,40,52)が受けることが、収容スペース(36,44,51)内に収容される遮蔽用液体によって規制され、ひいては駆動装置(16,18,23,28)の誤作動が抑制される。さらに、電流が流れることによって電気ケーブルが発熱したとしても、該電気ケーブルで発生した熱エネルギーは、遮蔽用液体によって吸収される。
【0011】
なお、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明が実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発熱を抑制できると共に、発生した磁気ノイズ及び外部から伝わる磁気ノイズを遮蔽できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態における露光装置を示す概略構成図。
【図2】(a)(b)は第1の実施形態の電力供給装置を模式的に示す断面図。
【図3】(a)(b)は第1の実施形態の電力供給装置を模式的に示す断面図。
【図4】(a)(b)は第2の実施形態の電力供給装置を模式的に示す断面図。
【図5】(a)(b)は別の実施形態の電気ケーブルを模式的に示す断面図。
【図6】デバイスの製造例のフローチャート。
【図7】半導体デバイスの場合の基板処理に関する詳細なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下に、本発明を具体化した第1の実施形態について図1〜図3に基づき説明する。なお、本実施形態では、投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な平面内で走査露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向をY軸方向とし、その走査方向に直交する非走査方向をX軸方向として説明する。また、X軸、Y軸、Z軸の周りの回転方向をθx方向、θy方向、θz方向ともいう。
【0015】
図1に示すように、本実施形態の露光装置11は、光源装置12から射出される、波長が100nm程度以下の軟X線領域である極端紫外光、即ちEUV(Extreme Ultraviolet )光を露光光ELとして用いるEUV露光装置である。こうした露光装置11は、内部が大気よりも低圧の真空雰囲気であって且つ所定温度領域の範囲内に設定される露光チャンバ13(図1では二点鎖線で囲まれた部分)を備え、該露光チャンバ13には、連結部14を介して光源装置12が接続されている。また、露光チャンバ13内には、光源装置12から露光チャンバ13内に供給された露光光ELで所定のパターンが形成された反射型のレチクルRを照明する照明光学系15と、パターンの形成されたパターン形成面Raが−Z方向側(図1では下側)に位置するようにレチクルRを保持するレチクルステージ16とが設けられている。また、露光チャンバ13内には、レチクルRを介した露光光ELでレジストなどの感光性材料が塗布されたウエハWを照射する投影光学系17と、露光面(感光性材料が塗布されたウエハ表面)Waが+Z方向側(図1では上側)に位置するようにウエハWを保持するウエハステージ18とが設けられている。
【0016】
光源装置12は、波長が5〜20nmのEUV光を露光光ELとして出力する装置であって、図示しないレーザ励起プラズマ光源を備えている。このレーザ励起プラズマ光源では、例えば半導体レーザ励起を利用したYAGレーザやエキシマレーザなどの高出力レーザで高密度のEUV光発生物質(ターゲット)を照射することによりプラズマが発生され、該プラズマからEUV光が露光光ELとして放射される。こうした露光光ELは、図示しない集光光学系によって集光されて露光チャンバ13内に出力される。
【0017】
照明光学系15は、露光チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される筐体19(図1では実線で囲まれた部分)を備えている。この筐体19内には、光源装置12から筐体19内に入射された露光光ELを反射可能な複数枚の図示しない反射ミラーが設けられている。そして、各反射ミラーによって順に反射された露光光ELは、後述する鏡筒24内に設置された折り返し用の反射ミラー20に入射し、該反射ミラー20で反射した露光光ELがレチクルステージ16に保持されるレチクルRに導かれる。なお、照明光学系15を構成する各反射ミラー(折り返し用の反射ミラー20も含む。)の反射面には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に積層した多層膜である反射層がそれぞれ形成されている。
【0018】
レチクルステージ16は、投影光学系17の物体面側に配置されており、レチクルRを静電吸着するための第1静電吸着保持装置21を備えている。この第1静電吸着保持装置21は、誘電性材料から構成され且つ吸着面22aを有する基体22と、該基体22内に配置される図示しない複数の電極部とから構成されている。そして、図示しない電圧印加部から電圧が各電極部にそれぞれ印加された場合、基体22から発生されるクーロン力により、吸着面22aにレチクルRが静電吸着される。
【0019】
また、レチクルステージ16は、レチクルステージ駆動部23の駆動によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、レチクルステージ駆動部23は、第1静電吸着保持装置21に保持されるレチクルRをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、レチクルステージ駆動部23は、レチクルRをX軸方向(図1において紙面と直交する方向)、Z軸方向及びθz方向に微動させることが可能である。なお、レチクルRのパターン形成面Raに露光光ELが照明される場合、該パターン形成面Raの一部には、X軸方向に延びる略円弧状の照明領域が形成される。
【0020】
投影光学系17は、露光光ELでレチクルRのパターン形成面Raを照明することにより形成されたパターンの像を所定の縮小倍率(例えば1/4倍)に縮小させる光学系であって、露光チャンバ13の内部と同様に、内部が真空雰囲気に設定される鏡筒24を備えている。この鏡筒24内には、複数枚(一例としては6枚であって、図1では1枚のみ図示)の反射型のミラー25が収容されている。そして、物体面側であるレチクルR側から導かれた露光光ELは、各ミラー25に順に反射され、ウエハステージ18に保持されるウエハWに導かれる。なお、各ミラー25の反射面には、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)を交互に積層した多層膜である反射層がそれぞれ形成されている。
【0021】
ウエハステージ18は、ウエハWを静電吸着するための第2静電吸着保持装置26を備え、該第2静電吸着保持装置26は、誘電性材料から構成され且つ吸着面27aを有する基体27と、該基体27内に配置される図示しない複数の電極部とから構成されている。そして、図示しない電圧印加部から電圧が各電極部にそれぞれ印加された場合、基体27から発生されるクーロン力により、吸着面27aにウエハWが静電吸着される。また、ウエハステージ18には、第2静電吸着保持装置26を保持する図示しないウエハホルダと、該ウエハホルダのZ軸方向における位置及びX軸周り、Y軸周りの傾斜角を調整する図示しないZレベリング機構とが組み込まれている。
【0022】
こうしたウエハステージ18は、ウエハステージ駆動部28によって、Y軸方向に移動可能である。すなわち、ウエハステージ駆動部28は、第2静電吸着保持装置26に保持されるウエハWをY軸方向に所定ストロークで移動させる。また、ウエハステージ駆動部28は、第2静電吸着保持装置26に保持されるウエハWをX軸方向に所定ストローク移動させることが可能であると共に、Z軸方向に微動させることが可能である。
【0023】
そして、ウエハWの一つのショット領域にレチクルRのパターンを形成する場合、照明光学系15によって照明領域をレチクルRに形成した状態で、レチクルステージ駆動部23の駆動によって、レチクルRをY軸方向(例えば、+Y方向側から−Y方向側)に所定ストローク毎に移動させるとともに、ウエハステージ駆動部28の駆動によって、ウエハWをレチクルRのY軸方向に沿った移動に対して投影光学系17の縮小倍率に応じた速度比でY軸方向(例えば、−Y方向側から+Y方向側)に同期して移動させる。そして、一つのショット領域へのパターンの形成が終了した場合、ウエハWの他のショット領域に対するパターンの形成が連続して行われる。
【0024】
なお、本実施形態において、第1静電吸着保持装置21、レチクルステージ駆動部23、第2静電吸着保持装置26及びウエハステージ駆動部28は、露光チャンバ13外に設置される電源30から電力が供給されることによりそれぞれ駆動する。また、照明光学系15及び投影光学系17には、それらの光学系を構成する光学部材(反射ミラー25など)を変位させるべく駆動する図示しない光学部材保持装置が設けられており、こうした光学部材保持装置についても、露光チャンバ13外に設置される電源30から電力がそれぞれ供給される。
【0025】
そこで次に、ウエハステージ駆動部28に電源30Aからの電力を供給するための電力供給装置31、及びウエハステージ18に電源30Bからの電力を供給するための電力供給装置32について説明する。
【0026】
まず、電力供給装置31について、図1及び図2に基づき説明する。
図1及び図2に示すように、電力供給装置31は、露光チャンバ13外に配置される電源30Aと、露光チャンバ13内に設置されるウエハステージ駆動部28とを電気的に接続する装置である。こうした電力供給装置31は、電源30A側からウエハステージ駆動部28に向けて延びる複数本(図2(a)では3本、図2(b)では5本図示)の電気ケーブル33を備えており、該各電気ケーブル33は、導線と、該導線を被覆し且つ絶縁性材料で構成される被覆部材とをそれぞれ有している。
【0027】
また、電力供給装置31には、各電気ケーブル33において露光チャンバ13内に位置する部分を内部に収容する筒状(本実施形態では、円筒状)の第1収容部材34が設けられており、該第1収容部材34は、可撓性を有すると共に磁気ノイズを遮蔽不能な材料(例えば、合成樹脂)で構成されている。また、第1収容部材34内には、該第1収容部材34と同軸配置される筒状(本実施形態では、円筒状)の第2収容部材35が設けられている。この第2収容部材35は、可撓性を有すると共に磁気ノイズを遮蔽不能な材料(即ち、第1収容部材34と同一材料)で構成されており、該第2収容部材35の長手方向における両端は、第1収容部材34の長手方向における両端と略同一位置に位置している。また、第2収容部材35の外径は、第1収容部材34の内径よりも小さくなるように構成されており、第1収容部材34の内周面34aと第2収容部材35の外周面35aとの間には、断面略円環状をなす収容スペース36が形成されている。また、第2収容部材35内に形成されたケーブル用空間37内には、各電気ケーブル33において露光チャンバ13内に位置する部分がそれぞれ配置されている。
【0028】
各収容部材34,35の両端部には、収容スペース36を密閉するための環状(本実施形態では、円環状)の閉塞部材38がそれぞれ設けられている。そして、このように密閉された収容スペース36内には、磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体の一種である液体金属(例えば、インジウムや水銀)が充填されている。
【0029】
電源30Aから各電気ケーブル33を介してウエハステージ駆動部28に電力が供給された場合、各電気ケーブル33からは、それらに流れる電流量に応じた熱エネルギーが発生する。こうした熱エネルギーは、各電気ケーブル33に流れる電流量が多いほど大きくなる。そして、各電気ケーブル33で発生した熱エネルギーは、第2収容部材35、第1収容部材34を介して電力供給装置31外に伝達されようとする。
【0030】
しかし、各収容部材34,35間の収容スペース36内には、液体金属が収容されている。この液体金属は、第1収容部材34を介して、露光チャンバ13の設定温度とほぼ同一温度となるように調整されている。そのため、各電気ケーブル33で発生した熱エネルギーは、第2収容部材35を介して収容スペース36内の液体金属に吸収される。したがって、電気ケーブル33で発生した熱エネルギーが露光チャンバ13内における各種部材(例えば、投影光学系17の鏡筒24やウエハステージ26)に伝達されることが抑制される。
【0031】
しかも、収容スペース36内の液体金属は、各電気ケーブル33から放射される磁気ノイズ、及び外部から伝達されてきた磁気ノイズを遮蔽できる。そのため、外部からの磁気ノイズによって、各電気ケーブル33に流れる電流の大きさが不必要に変化することが規制され、ウエハステージ駆動部28の誤作動が抑制される。また、各電気ケーブル33から放射された磁気ノイズによって、露光チャンバ13内の各駆動源(例えば、レチクルステージ駆動部23)が誤作動することも抑制される。
【0032】
次に、電力供給装置32について、図1及び図3に基づき説明する。
図1及び図3に示すように、電力供給装置32は、露光チャンバ13外に配置される電源30Bと、露光チャンバ13内に設置されるウエハステージ18とを電気的に接続する装置である。こうした電力供給装置32は、電源30B側からウエハステージ18に向けて延びる複数本(図3(a)では4本、図3(b)では3本図示)の電気ケーブル40を備えており、該各電気ケーブル40は、導線と、該導線を被覆し且つ絶縁性材料で構成される被覆部材とをそれぞれ有している。
【0033】
また、電力供給装置32には、略直方体状をなす収容部材41が設けられており、該収容部材41の重力方向における上面41a側には、露光チャンバ13の側壁側からウエハステージ18側まで延びる溝部42が設けられている。この溝部42の重力方向における上側の開口は、平板状の蓋部材43によって閉塞されている。なお、図3(a)では、溝部42内の収容スペース44の様子を描くことができるように、蓋部材43を二点鎖線で図示している。
【0034】
こうした溝部42内の収容スペース44には、各電気ケーブル40において露光チャンバ13内に位置する部分が収容されている。また、収容スペース44には、磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体の一種である液体金属が貯留されており、収容スペース44において各電気ケーブル40は、液体金属内にそれぞれ没入されている。
【0035】
電源30Bから各電気ケーブル40を介してウエハステージ18に電力が供給された場合、各電気ケーブル40からは、それらに流れる電流量に応じた熱エネルギーが発生する。そして、各電気ケーブル40で発生した熱エネルギーは、収容スペース44内の液体金属によって吸収される。しかも、この液体金属は、収容部材41を介して、露光チャンバ13の設定温度とほぼ同一温度となるように調整されている。そのため、各電気ケーブル40で発生した熱エネルギーが露光チャンバ13内における各種部材(例えば、投影光学系17の鏡筒24やウエハステージ26)に伝達されることが抑制される。しかも、収容スペース44内の液体金属は、各電気ケーブル40から放射される磁気ノイズ、及び外部から伝達されてきた磁気ノイズを遮蔽できる。
【0036】
なお、本実施形態では、ウエハステージ駆動部28及びウエハステージ18用の電力供給装置31,32について説明したが、電力供給が必要な他の装置においても、電力供給装置31又は電力供給装置32のような装置を介して電力が供給される。
【0037】
したがって、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)電気ケーブル33,40から発生した磁気ノイズは、電気ケーブル33,40を包囲するような位置に設けられた収容スペース36,44内の液体金属によって好適に遮断される。また、こうした液体金属は、電力供給装置31,32外から伝達されてきた磁気ノイズを遮断することもできる。そのため、電力供給装置31,32を介して電力が供給されるウエハステージ駆動部28及びウエハステージ18の誤作動を抑制できる。
【0038】
(2)また、電流が流れる電気ケーブル33,40から発生した熱エネルギーは、収容スペース36,44内の液体金属によって吸収される。しかも、こうした液体金属は、第1収容部材34、収容部材41を介して、露光チャンバ13の設定温度と同一温度となるように温度調整されている。そのため、露光チャンバ13内において電力供給装置31,32と対向する部品に、電気ケーブル33,40で発生した熱エネルギーが伝達(輻射)されることを抑制できる。
【0039】
(3)また、電気ケーブル33,40からは、該電気ケーブル33,40を構成する部材(例えば、被覆部材)からアウトガスが発生することがある。しかし、本実施形態では、電気ケーブル33,40から発生したアウトガスを、該電気ケーブル33,40を包囲するような位置に設けられた収容スペース36,44内の液体金属によって封止することができる。したがって、電気ケーブル33,40から発生したアウトガスが、レチクルR、ウエハW及び光学部材などに付着することに起因した露光不良の発生を抑制できる。
【0040】
(4)また、電力供給装置32では、電気ケーブル40に液体金属が接触している。そのため、電気ケーブル40から発生した熱エネルギーを、より効率良く吸収でき、該電気ケーブル40の温度上昇を効率良く抑制できる。
【0041】
(5)また、従来のようにメッシュ状の部材を電気ケーブルに巻き付けることにより、電気ケーブルからの磁気ノイズの放射を抑制する方法では、磁気ノイズの放射を確実に抑制するためには電気ケーブルに対して何重にもメッシュ状の部材を巻き付ける必要がある。この場合、メッシュ状の部材を含む電気ケーブルは、非常に太くなってしまい、曲げることが困難となる可能性がある。しかも、電気ケーブルが接続される駆動装置の駆動によって、電気ケーブルが動く場合には、その動きに対する制約が大きくなる。
【0042】
この点、本実施形態の電力供給装置31は、液体金属を収容する収容スペース36を大きくしても各収容部材34,35は可撓性を有しているため、従来の場合と比較して曲げやすい。また、当然、電気ケーブル33が接続される駆動装置の駆動によって電気ケーブル33が動く場合であっても、従来の場合と比較して制約が小さくなる。よって、駆動装置の駆動の妨げとなることを抑制できる。
【0043】
同様に、本実施形態の電力供給装置32では、電気ケーブル40は、液体金属が充填された溝部42内に沈められた状態で配置されている。そのため、電気ケーブル40が接続される駆動装置の駆動によって電気ケーブル40が動く場合であっても、該電気ケーブル40を、溝部42内において自由に変位させることができる。よって、駆動装置の駆動の妨げとなることを抑制できる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を説明する。なお、第2の実施形態は、電力供給装置の構成が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0045】
図4(a)(b)に示すように、本実施形態の電力供給装置50は、露光チャンバ13の側壁から駆動装置(例えば、レチクルステージ16)まで延びる筒状(本実施形態では円筒状)の第1収容部材34を備えている。この第1収容部材34の長手方向における両端には、該第1収容部材34内の収容スペース51を閉塞するための略円板状の閉塞部材38がそれぞれ設けられており、該収容スペース51は、密閉されている。
【0046】
こうした第1収容部材34内の収容スペース51には、露光チャンバ13外に配置される電源30から駆動装置に電力を供給するための複数本(図4(a)では3本、図4(b)では5本図示)の電気ケーブル52が収容されている。また、収容スペース51内には、液体金属が充填されている。
【0047】
なお、各電気ケーブル52は、閉塞部材38に貫通形成された挿通孔を介して収容スペース51内外に挿通している。そして、閉塞部材38の各挿通孔周辺には、該挿通孔の側面と電気ケーブル52の外周面との間に形成される僅かな隙間から液体金属が外部に漏れ出ることを抑制するための封止部(図示略)がそれぞれ設けられている。
【0048】
したがって、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1)〜(5)と同等の効果を得ることができる。
なお、上記各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0049】
・各実施形態において、電気ケーブル33,40,52は、図5(a)(b)に示すように、電線60と、該電線60の外周面60aとの間に隙間61を介在させた状態で電線60を収容する筒状の収容部材62とを備えた構成であってもよい。また、電線60の外周面60aと収容部材62の内周面62aとの間の隙間61内には、液体金属を充填さてもよい。
【0050】
第2の実施形態において、電気ケーブルを、図5(a)(b)に示す電気ケーブルとした場合には、収容スペース51内に液体金属を充填させなくてもよい。このように構成しても、上記各実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0051】
また、図5(a)(b)に示す電気ケーブルで電力を駆動装置に供給する場合には、上記各実施形態で述べた各電力供給装置を用いなくてもよい。
・各実施形態において、駆動装置に接続される電気ケーブルが1本のみである場合、該電気ケーブルは、導線を被覆する被覆部材を備えない構成であってもよい。
【0052】
・各実施形態において、電気ケーブルは、同軸ケーブルであってもよい。
・各実施形態において、電力供給装置31,32,50は、第1収容部材34や収容部材41の温度を調整するための温度調整機構を備えた構成であってもよい。
【0053】
・第1の実施形態において、電力供給装置32は、収容スペース44内の液体金属を循環させる機能を設けた構成でもよい。また、こうした液体金属を、ウエハW、レチクルR及び各種光学部材の冷却時に冷媒として用いてもよい。
【0054】
・各実施形態において、遮蔽用液体は、複数種類の液体金属を混合させてなる液体であってもよい。
・各実施形態において、露光装置11は、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクルまたはマスクを製造するために、マザーレチクルからガラス基板やシリコンウエハなどへ回路パターンを転写する露光装置であってもよい。また、露光装置11は、液晶表示素子(LCD)などを含むディスプレイの製造に用いられてデバイスパターンをガラスプレート上へ転写する露光装置、薄膜磁気ヘッド等の製造に用いられて、デバイスパターンをセラミックウエハ等へ転写する露光装置、及びCCD等の撮像素子の製造に用いられる露光装置などであってもよい。
【0055】
・各実施形態において、光源装置12で用いられるEUV光発生物質は、気体状の錫(Sn)でもよいし、液体状又は固体状の錫でもよい。また、EUV光発生物質として、キセノン(Xe)を用いてもよい。
【0056】
・各実施形態において、光源装置12は、放電型プラズマ光源を有する装置でもよい。
・各実施形態において、露光装置11を、ステップ・アンド・リピート方式の装置に具体化してもよい。
【0057】
・本発明の基板処理装置を、ウエハWなどの基板に対して露光装置以外の装置、例えば、ウエハに感光性材料を塗布したり、感光性材料に形成されたパターンを現像したりする塗布現像装置や、基板の検査装置などに具体化してもよい。
【0058】
次に、本発明の実施形態の露光装置11によるデバイスの製造方法をリソグラフィ工程で使用したマイクロデバイスの製造方法の実施形態について説明する。図6は、マイクロデバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネル、CCD、薄膜磁気ヘッド、マイクロマシン等)の製造例のフローチャートを示す図である。
【0059】
まず、ステップS101(設計ステップ)において、マイクロデバイスの機能・性能設計(例えば、半導体デバイスの回路設計等)を行い、その機能を実現するためのパターン設計を行う。引き続き、ステップS102(マスク製作ステップ)において、設計した回路パターンを形成したマスク(レチクルRなど)を製作する。一方、ステップS103(基板製造ステップ)において、シリコン、ガラス、セラミックス等の材料を用いて基板(シリコン材料を用いた場合にはウエハWとなる。)を製造する。
【0060】
次に、ステップS104(基板処理ステップ)において、ステップS101〜ステップS104で用意したマスクと基板を使用して、後述するように、リソグラフィ技術等によって基板上に実際の回路等を形成する。次いで、ステップS105(デバイス組立ステップ)において、ステップS104で処理された基板を用いてデバイス組立を行う。このステップS105には、ダイシング工程、ボンティング工程、及びパッケージング工程(チップ封入)等の工程が必要に応じて含まれる。最後に、ステップS106(検査ステップ)において、ステップS105で作製されたマイクロデバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行う。こうした工程を経た後にマイクロデバイスが完成し、これが出荷される。
【0061】
図7は、半導体デバイスの場合におけるステップS104の詳細工程の一例を示す図である。
ステップS111(酸化ステップ)においては、基板の表面を酸化させる。ステップS112(CVDステップ)においては、基板表面に絶縁膜を形成する。ステップS113(電極形成ステップ)においては、基板上に電極を蒸着によって形成する。ステップS114(イオン打込みステップ)においては、基板にイオンを打ち込む。以上のステップS111〜ステップS114のそれぞれは、基板処理の各段階の前処理工程を構成しており、各段階において必要な処理に応じて選択されて実行される。
【0062】
基板プロセスの各段階において、上述の前処理工程が終了すると、以下のようにして後処理工程が実行される。この後処理工程では、まず、ステップS115(レジスト形成ステップ)において、基板に感光性材料を塗布する。引き続き、ステップS116(露光ステップ)において、上で説明したリソグラフィシステム(露光装置11)によってマスクの回路パターンを基板に転写する。次に、ステップS117(現像ステップ)において、ステップS116にて露光された基板を現像して、基板の表面に回路パターンからなるマスク層を形成する。さらに続いて、ステップS118(エッチングステップ)において、レジストが残存している部分以外の部分の露出部材をエッチングにより取り去る。そして、ステップS119(レジスト除去ステップ)において、エッチングが済んで不要となった感光性材料を取り除く。すなわち、ステップS118及びステップS119において、マスク層を介して基板の表面を加工する。これらの前処理工程と後処理工程とを繰り返し行うことによって、基板上に多重に回路パターンが形成される。
【符号の説明】
【0063】
11…基板処理装置としての露光装置、13…露光チャンバ、16…駆動装置としてのレチクルステージ、18…駆動装置としてのウエハステージ、23,28…駆動装置としてのステージ駆動部、31,32,50…電力供給装置、33,40,52…電気ケーブル、34…第1収容部材(集束部材)、34a…内周面、35…第2収容部材、35a…外周面、36,51…隙間としての収容スペース、42…溝部、60…電線、60a…外周面、61…隙間、62…収容部材、62a…内周面、W…基板としてのウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線と、
前記電線の外周面との間に隙間を介在させた状態で該電線を収容する筒状の収容部材と、
前記電線の外周面と前記収容部材の内周面との間の隙間内に収容され、磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体と、を備えることを特徴とする電気ケーブル。
【請求項2】
駆動装置に電力を供給するための電力供給装置であって、
電気ケーブルと、
前記電気ケーブルの長手方向における少なくとも一部を収容し且つ磁気ノイズを遮蔽する遮蔽用液体を収容可能な収容スペースを有する第1収容部材と、を備えることを特徴とする電力供給装置。
【請求項3】
前記第1収容部材は、内部が前記収容スペースとして機能する筒状であることを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
前記第1収容部材は、可撓性を有する材料で形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電力供給装置。
【請求項5】
前記第1収容部材の内周面に対して隙間を介在させた状態で対向する外周面を有する筒状の第2収容部材をさらに備え、
前記第2収容部材内には、前記電気ケーブルの長手方向における少なくとも一部が収容され、
前記第1収容部材と前記第2収容部材との間の隙間には、前記遮蔽用液体が収容可能であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電力供給装置。
【請求項6】
前記第1収容部材内には、前記電気ケーブルが複数収容されており、
前記第1収容部材の内周面と前記複数の電気ケーブルの外周面との間の隙間には、前記遮蔽用液体が収容可能であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電力供給装置。
【請求項7】
駆動装置に電力を供給するための電力供給装置であって、
請求項1に記載の複数の電気ケーブルと、
前記複数の電気ケーブルの長手方向における少なくとも一部を収容する筒状の集束部材と、を備えることを特徴とする電力供給装置。
【請求項8】
前記第1収容部材は、前記収容スペースとして機能する溝部を有することを特徴とする請求項2に記載の電力供給装置。
【請求項9】
前記遮蔽用液体は、液体金属を含むことを特徴とする請求項2〜請求項8のうち何れか一項に記載の電力供給装置。
【請求項10】
基板に特定の処理を施す基板処理装置であって、
請求項1に記載の電気ケーブルを介して供給された電力に基づき駆動する駆動装置を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項11】
基板に特定の処理を施す基板処理装置であって、
請求項2〜請求項9のうち何れか一項に記載の電力供給装置と、
前記電力供給装置の前記電気ケーブルを介して供給された電力に基づき駆動する駆動装置と、を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項12】
内部の温度が所定温度領域の範囲内で調整されるチャンバをさらに備え、
前記駆動装置は、前記チャンバ内に配置されていることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
リソグラフィ工程を含むデバイスの製造方法において、
前記リソグラフィ工程は、請求項10〜請求項12のうち何れか一項に記載の基板処理装置を用いることを特徴とするデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−119476(P2011−119476A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275707(P2009−275707)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】