説明

電気ケーブルを製造するための連続的プロセス

【解決手段】本発明は、電気ケーブルを製造するための連続的にプロセスに関する。特に、該プロセスは、(a)所定の供給速度で伝導体を供給し、(b)伝導体に関して径方向外側の位置で熱可塑性絶縁層を押し出し成形し、(c)押し出し成形された絶縁層を70℃以下の温度に冷却し、(d)押し出し成形された絶縁層の回りで、周方向に閉じた金属スクリーンを形成する、各工程を備える。本発明に係るプロセスは、連続的に実行される。即ち、冷却工程の終点とスクリーン形成工程との間の時間は、伝導体の供給速度に逆比例する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気ケーブルを製造するための連続的プロセスに係り、特に、中間電圧若しくは高電圧で電力の送電若しくは分配を行うための電気ケーブルに関する。
【0002】
本説明では、中間電圧という用語は、典型的に約1kV乃至約30kVの電圧に言及し、高電圧という用語は、30kVを超える電圧に言及している。極高電圧という用語も、約150kV又は220kVより高い電圧、500KV以上までの電圧を定義するため当該技術分野で知られている。
【0003】
本発明が関係するケーブルは、直流(DC)又は交流(AC)の両方の送電若しくは分配に対して使用することができる。
【背景技術】
【0004】
中間電圧又は高電圧における電力送電又は分配のためのケーブルは、一般に、径方向の最内側層から径方向の最外側層まで取り囲まれている金属伝導体と、第1の内側半導体層と、絶縁層と、外側半導体層とが各々備え付けられている。次の説明において、前記要素のグループは、「ケーブルコア」の用語を指し示す。
【0005】
前記コアに関する径方向外側の位置では、ケーブルは、通常ではアルミニウム、鉛又は銅で作られた金属スクリーン(又は金属シールド)が設けられている。
【0006】
金属スクリーンは、コアの回りに螺旋状に巻かれている多数の金属ワイヤ又はテープ、又は、湿気又はケーブルコア内への水侵入に対するバリアを提供するため、溶接若しくは密封、例えば、その横方向エッジを接着することにより、管状形状に長さ方向に形成された、金属シート等の周囲方向に沿って連続した管から構成することができる。
【0007】
金属スクリーンは、主要には、金属スクリーンとケーブルコアの外側半導体層との間の直接的な接触の結果として、ケーブルの内部に径方向に均一な電場を形成し、これと同時に、ケーブルの外側電場を相殺することにより電気的機能を実行する。更なる機能は、短絡電流に耐える機能である。
【0008】
金属スクリーンは、周辺方向に連続した管状形態で作られたとき、径方向の水の貫通に対抗する密封性を提供する。
【0009】
金属スクリーンの一例が、例えば、USRe36307号に記載されている。
【0010】
単極式の構成では、電気ケーブルは、金属スクリーンに対して径方向外側の位置にポリマー被覆を備えている。
【0011】
その上、電力の送電又は分配のためのケーブルは、一般に、該ケーブルを、その外側表面に起こり得る不意の衝撃から保護するための1つ以上の層が備え付けられている。
【0012】
ケーブルへの不意の衝撃は、例えば、その輸送の間、又は、掘削細溝内のケーブルを土壌中に置く工程の間に生じ得る。前記不意の衝撃は、絶縁層の変形や絶縁層の半導体層からの脱着、前記層の絶縁容量の減少を伴う、絶縁層の電圧ストレスの変動を引き起こし得る損傷を始めとして、ケーブルへの一連の構造的損傷を引き起こしかねない。
【0013】
架橋された絶縁ケーブルが知られており、その製造プロセスが、例えば、EP1288218、EP426073、US2002/0143114及びUS4469539に説明されている。
【0014】
ケーブル絶縁部の架橋結合は、所謂シラン架橋結合又は過酸化物のいずれかを使用することにより、作ることができる。
【0015】
第1の場合には、伝導体を取り囲む押し出し成形絶縁層を備えるケーブルコアは、水が架橋を生じさせるため絶縁層を通して拡散することができるように、水含有環境(周囲の湿度等の液体又は蒸気のいずれか)で比較的長期間(数時間又は数日)に亘って維持される。これは、ケーブルコアが、固定した長さのスプールにコイル巻きされることを要求し、その事実は、連続的なプロセスが実行されることを本質的に防止する。
【0016】
第2の場合には、架橋結合は、比較的高温及び高圧で過酸化水素の化学的分解により引き起こされる。発生する化学反応は、ガス状の副産物を発生させ、該ガス状副産物は、硬化時間の間のみならず硬化の後にも絶縁層を通して拡散することを可能にしなければならない。従って、脱ガス工程が提供されなければならず、該工程の間には、更なる層をケーブルコアを覆って塗布することができる前にそのようなガス状副産物を無くすのに十分な期間に亘ってケーブルコアが保管される(長さ方向に折り畳まれた層が塗布される場合のように、特に、そのような層がガス気密性又は実質的にガス気密性である場合)。
【0017】
本出願人の実際的な経験では、更なる層の塗布前に脱ガス工程が存在しない場合には、特別の環境条件の下(例えば、ケーブルコアの顕著な太陽放射)では、前記副産物が膨張し、かくして、金属スクリーン及び/又は全面被覆ポリマーの望ましくない変形を引き起こしかねない。
【0018】
更には、脱ガス工程が提供されない場合には、ガス状副産物(例えば、メタン、アセトフェノン、クミンアルコール)が、塗布された更なる層の存在に起因してケーブルコア内に捕捉されたままとなっており、その両端部からのみケーブルを実在することができる。これは、前記副産物(例えば、メタン)の中には可燃性のものがあり、かくして、層形成の間又は掘削細溝内の前記ケーブルを土壌へと連結する間に、爆発が発生し得る。
【0019】
更には、更なる層の塗布前に脱ガス工程が存在しない場合には、絶縁物内の多孔性は、絶縁層の電気的特性を劣化し得ることが見出された。
【0020】
熱可塑性絶縁を有するケーブルを製造するためのプロセスは、同じ出願人の名前でWO02/47092号に記載されており、ケーブルは、誘電液体と混合された熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性材料を押し出し成形し、静的ミキサーを通過させることにより製造され、そのような熱可塑性材料は押し出し成形ヘッドを用いて伝導体の回りにあてがわれる。冷却及び乾燥工程の後、ケーブルコアは、リール上に格納され、次に、金属スクリーンがケーブルコア上に薄い銅スプリップ又は銅ワイヤを螺旋状に配置することにより塗布される。外側ポリマー被覆は、ケーブルを完成させる。
【0021】
スクリーン適用ユニットへのケーブルコアの連続的供給は、予期されなかった。実際、スクリーンは、非連続的な応用プロセスにのみ適する型式のものであった。該スクリーンは、本願の次の記載で更に説明されるように、回転装置上に取り付けられたスプールの使用を必要としたからである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本願出願人は、ケーブル製造中、例えば硬化又は脱ガス目的のための休止工程の提供は、望ましくないことに気づいた。それは、各ケーブル部品の長さを制限し(ケーブルリール上の収集工程が要求される)、工場におけるスペース及び計算上の問題を導入し、ケーブル製造時間を延長し、最終的にはケーブル製造のコストを増大させるからである。
【0023】
従って、本出願人は、ケーブルを製造する連続的プロセス、即ち、長さ方向に折り畳まれ、周方向に連続する金属スクリーンと組み合わせた熱可塑性絶縁材料を使用することによる中間休止工程及び収集工程が存在しないプロセスを提供した。
【0024】
ケーブルを製造するための連続的プロセスを設定したとき、本願出願人は、押し出し成形絶縁層の回りに周方向に閉じた金属スクリーンを形成する工程を実行するとき、押し出し成形された絶縁層の温度が所定の閾値を超える場合に、臨界状態が発生することに気づいた。
【0025】
特に、本願出願人は、ケーブルを製造するための連続的プロセスにおいて、押し出し成形絶縁層の最大温度が、周方向に閉じた金属スクリーンを絶縁層に形成するときに、仕上げられたケーブルの正確な働きのための重要なパラメータであり、押し出し成形絶縁層の最大温度が、所定の閾値より低いことを必要としていることに気づいた。
【0026】
事実、そのような条件が満たされていない場合には、本願出願人は、金属スクリーンと仕上げケーブルの絶縁層との間に空洞部が形成され得るということに気づいた。
【0027】
詳細には、連続的プロセスの以前の工程で押し出し成形された絶縁層の最大温度が所定の閾値よりも高いとき、周方向に閉じた金属スクリーンは絶縁層に亘って形成される場合にプラスチック材料の熱膨張/収縮係数が金属材料の当該係数よりも高いので、ケーブルが冷却するとき絶縁層は金属スクリーンよりも大きい量で収縮する。その上、金属シートを長さ方向に折り畳むことにより得られたその管状形状に起因して、金属スクリーンは、絶縁層の熱収縮に従うことはできない。
【0028】
従って、絶縁層の結果的としての収縮が金属スクリーンの収縮よりも大きいので、空洞部が、絶縁層と金属層との間で発生し得る。ケーブルの内部の空洞部の存在は、特に重要である。これらの空洞部は、ケーブルの作動中に部分的な電気放電の形成を引き起こし、かくして、その絶縁破壊を招くおそれがあるからである。
【0029】
更には、絶縁層と金属スクリーンとの間の空間中の空洞部の存在は、電気的観点からのみならず、機械的観点かのケーブルに負の影響を及ぼす。例えば、収集リール又は格納ユニット上に仕上げケーブルを巻いている間に、ケーブルに発生する顕著な又は連続的な曲げ作用の下で金属スクリーンの屈曲に起因してキンクが発生し得るからである。
【0030】
金属スクリーンにおける永久的なキンクの形成は回避されなければならない。キンクは、スクリーンの機械的耐性に負の影響を及ぼし、例えば、金属スクリーンの疲労破壊は、キンクの存在で顕著に増大するからである。
【0031】
その上、ポリマー層は、一般に金属スクリーンに亘って押し出し成形されるので、金属スクリーンにおけるキンクの形成は、該スクリーンからのポリマー層の局所的な脱落を引き起こし得る。この態様は、ケーブルの寿命に負の影響を及ぼす。水がケーブル内に貫通し、前記局所化された脱落部分に到達し、これにより、金属スクリーンの腐食減少を発生させるからである。
【0032】
その上、本願出願人は、絶縁層の温度が該絶縁層上に折り畳まれた金属スクリーンの温度に更に影響を与えることに気づいた。より詳細には、本願出願人は、絶縁層の最大温度が所定の閾値より高い場合には、金属スクリーンの温度は顕著に増大し、仕上げケーブルが収集リールに巻かれたとき、その屈曲に起因して金属スクリーンにキンクが形成されるおそれがあることに気づいた。
【0033】
プロセスが本発明のように連続的に実行されない従来のケーブル製造プロセスでは、前記欠点は生じないことが指摘されるべきである。ケーブルコアが製造プロセスの第1工程で得られ、収集リールに連続的に格納されるので、金属スクリーンは、絶縁層が低温状態にあるとき該絶縁層を覆って適用されるからである。
【0034】
本願出願人は、押し出し成形層の回りで周方向に閉じた金属スクリーンを形成する工程が実行される前に、押し出し成形された絶縁層が70℃以下の温度まで冷却されなければならないことを見出した。
【0035】
換言すれば、上述した欠点が生じないようにするため、本願出願人は、押し出し成形絶縁層を、環境温度(20〜25℃)、例えばケーブルコアが製造され収集リール上に連続的に格納されるところの不連続プロセスに典型的である温度まで冷却することは必ずしも必要としないことを見出した。押し出し成形絶縁層の70℃以下の温度への冷却は、良好な電気的/機械的特性を備えた仕上げケーブルを得ることができることを確実にするからである。
【0036】
更には、本願出願人は、連続的なケーブル製造プロセスにおいて、押し出し成形絶縁層を70℃以下の温度まで冷却するという事実は、プラントのレイアウトを有利に最適化することを可能にすることに気づいた。事実、上述されたように、押し出し成形層を顕著に冷却する必要性は存在せず、冷却区分を制限された長さを持つように設計することができ、例えば適切な冷却チャンネル内のケーブルコアの通過数を増大させることによって複雑にする必要性は存在しないからである。
【0037】
その上、本願出願人は、押し出し成形絶縁層は、金属スクリーンが形成されるとき低温状態にはないことが特に有利であることに気づいた。実際、金属スクリーンが絶縁層に対して径方向外側の位置に形成され、連続的に例えば保護要素等のポリマー被覆が金属スクリーンに対して径方向外側の位置に形成されるとき、押し出し成形絶縁層が低温状態にある場合、金属スクリーン及びこれにより絶縁層に近接したポリマー被覆の材料は、ポリマー被覆の残りの材料に対して非常に迅速に冷却する。
【0038】
そのような迅速な冷却の結果として、絶縁層に近接したポリマー被覆層は固まり、即ち堅固になり、これに対して、ポリマー被覆の残りの材料は、なおも柔らかい状態のままである。この態様は、前記剛性層の存在が、ポリマー被覆が金属スクリーン上に適切に収縮することを妨げ、かくして、金属スクリーン及びポリマー被覆の絶縁層への良好な締め付けが実行されなくなるという理由のために特に欠点を持っている。
【0039】
これに対して、本発明に従って、押し出し成形層が70℃以下の温度まで冷却される場合には、金属スクリーン上に形成されたポリマー被覆は、迅速に冷却させられず、硬いポリマー被覆の形成が防止される。その結果、ポリマー被覆は、金属スクリーンに適切に収縮し、かくして、金属スクリーン及びポリマー被覆の絶縁層上への良好な締め付けを実行することができる。
【0040】
好ましくは、押し出し成形絶縁層は、約30℃乃至約70℃までの範囲の温度まで冷却されなければならない。
【0041】
好ましくは、押し出し成形絶縁層は、約40℃乃至約60℃までの範囲の温度まで冷却されなければならない。
【0042】
第1の態様では、本発明は、電気ケーブルを製造するための連続的にプロセスに関し、該プロセスは、所定の供給速度で伝導体を供給し、伝導体に関して径方向外側の位置で熱可塑性絶縁層を押し出し成形し、押し出し成形された絶縁層を70℃以下の温度に冷却し、押し出し成形された絶縁層の回りで、周方向に閉じた金属スクリーンを形成する、各工程を備える。
【0043】
特に、押し出し成形された絶縁層の回りの周方向に閉じた金属スクリーンは、金属シートを長さ方向に折り畳み、重なり合ったエッジ及びエッジ間結合エッジのいずれかを有することにより形成される。
【0044】
好ましくは、本発明のプロセスに係る金属スクリーンを形成する工程は、金属シートのエッジを重なり合わせる工程を備える。代替例として、前記形成工程は、例えば金属シートのエッジを溶接することにより、該金属シートのエッジを結合する工程を備える。
【0045】
好ましくは、伝導体を金属ロッドの形態で供給する工程を備える。
【0046】
一般に、本発明のプロセスは、金属スクリーンの回りに全面被覆を適用する工程を更に備える。好ましくは、全面被覆は、押し出し成形により適用される。
【0047】
更には、好ましくは、本発明のプロセスは、衝撃保護要素を金属スクリーンの回りに適用する工程を備える。好ましくは、前記衝撃保護要素は、押し出し成形により適用される。好ましくは、前記衝撃保護要素は、非発泡ポリマー層と、発泡ポリマー層とを備える。好ましくは、発泡ポリマー層は、非発泡ポリマー層に対して径方向外側の位置にある。好ましくは、非発泡ポリマー層及び発泡ポリマー層は、共有押し出し成形により適用される。
【0048】
好ましくは、衝撃保護要素は、閉金属スクリーン及び全面被覆の間に適用される。
【0049】
好ましくは、絶縁層の熱可塑性ポリマー材料は、誘電液体を備える。
【0050】
更には、本願出願人は、本発明の連続的プロセスにより得られたケーブルは、驚くべきことには、ケーブル上に発生し得る不意の衝撃に対する高い機械的耐性を備えられることを見出した。
【0051】
特に、本願出願人は、高い衝撃保護が、周方向に閉じた金属スクリーンを、金属スクリーンに対して径方向外側に配置された少なくとも1つの発泡ポリマー層を含む衝撃保護要素と結合させることによりケーブルに有利な点が与えられることを見出した。
【0052】
更には、本願出願人は、スクリーンの変形がケーブル上の関連する衝撃に起因して発生する場合には、周方向に閉じた金属スクリーンの存在は特に有利なものとなることに気づいた。スクリーンは、連続的且つ滑らかに変形し、これにより、絶縁層の電場の局所的な増大を回避できるからである。
【0053】
その上、本願出願人は、熱可塑性絶縁層と、周方向に閉じた金属スクリーンと、少なくとも1つの発泡ポリマー層を含む衝撃保護要素とが備えられたケーブルは、連続的な製造プロセスを使って、有利に得ることができることを見出した。
【0054】
更に、本願出願人は、不意の衝撃に対する機械的耐性は、金属スクリーンに対して径方向内側の位置に更なる発泡ポリマー層をケーブルに設けることにより、有利に増大することができることを見出した。
【0055】
その上、本願出願人は、前記更なる発泡ポリマー層は、金属スクリーンに対して径方向内側の位置では、(ケーブル製造プロセス並びに使用中のケーブルの温度サイクルにおいて)金属スクリーンの膨張/収縮を許すことに寄与することを見出した。実際、前記発泡層は、弾性的クッションとして作用し、金属スクリーンとケーブルコアとの間の接着を促す。
【0056】
好ましくは、前記更なる発泡ポリマー層は、水遮断層であるのがよい。
【実施例】
【0057】
以下、添付図面を参照して更なる詳細を次に説明する。
【0058】
図1及び図2は、典型的に、本発明に係るプロセスにより作られる中間電圧又は高電圧の範囲で使用するため設計された電気ケーブル1の部分断面斜視図を示している。
【0059】
ケーブル1は、伝導体2と、内側半導体層3と、絶縁層4と、外側半導体層5と、金属スクリーン6と、保護要素20と、を備えている。好ましくは、伝導体2は、金属ロッドである。好ましくは、伝導体は、銅又はアルミニウムから作られている。
【0060】
代替例として、伝導体2は、従来技術に従って一緒に寄り合わせられた好ましくは銅又はアルミニウムからなる少なくとも2つの金属ワイヤを備えている。
【0061】
伝導体2の断面積は、選択された電圧で輸送されるべきパワーの関数として決定される。本発明に係るケーブルのための好ましい断面積は、16mm乃至1600mmの範囲に及んでいる。
【0062】
本説明において、「絶縁材料」という用語は、少なくとも5kV/mm、好ましくは10kV/mmより大きい絶縁破壊強度を有する材料を指し示すため使用される。中高電圧パワー伝達ケーブル(即ち、約1kVよりも大きい電圧)に対して、好ましくは、絶縁材料は、40kV/mmより大きい絶縁破壊強度を有する。
【0063】
典型的には、パワー伝達ケーブルの絶縁層は、2より大きい誘電定数を有する。
【0064】
内側半導体層3及び外側半導体層5は、一般に、押し出し成形によって得られる。
【0065】
半導体層3及び5のベースとなるポリマー材料は、発泡ポリマー層を参照して次の説明で言及されたものから便利に選択され、ポリマー材料に半導体特性を付与するように、例えば、導電性ファーネスブラック又はアセチレンブラックが添加される。一般に、カーボンブラックの表面積は、通常、40及び500m/gの間で、20m/gより大きい。有利には、少なくとも900m/gの表面積を有し、例えば、ケッチェンブラック(R)EC(アクゾケミーNV)という商品名で商業的に知られているファーネスカーボンブラック等の非常に伝導性の高いカーボンブラックを使用することができる。ポリマーマトリックスに添加されるべきカーボンブラックの量は、ポリマーの種類、使用するカーボンブラックの種類、それが得ようと意図している膨張の度合い、即ち膨張剤に依存して変動し得る。かくして、カーボンブラックの量は、膨張した材料に十分な半導体特性を与えるようでなければならず、特に、室温で500Ω・mより少なく、好ましくは、20Ω・mより少ない膨張材料のための体積抵抗値を得るようでなければならない。典型的には、カーボンブラックの量は、ポリマーの重量に関して、1乃至50重量%の範囲、好ましくは、3乃至30重量%の範囲に及び得る。
【0066】
本発明の好ましい実施例では、内側半導体層3及び外側半導体層5は、架橋されていないポリマー材料、より好ましくは、ポリプロピレン材料を含んでいる。
【0067】
好ましくは、絶縁層4は、所定量の誘電液体を含む熱可塑性ポリマー材料を含む熱可塑性材料から作られている。
【0068】
好ましくは、熱可塑性ポリマー材料は、ポリオレフィン、様々なオレフィンの共重合体、エチレン不飽和エステルを持つオレフィンの共重合体、ポリエステル、ポリアセテート、セルロースポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェーノールレジン、尿素樹脂、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミン、並びに、これらの混合物からなる化合物群から選択される。適切なポリマーの例は、ポリエチレン(PE)、特に低密度のPE(LDPE)、中間密度のPE(MDPE)、高密度のPE(HDPE)、鎖状の低密度PE(LLDPE)、超低密度のポリプロピレン(ULDPE)、ポリプロピレン(PP)、例えば、エチレン/ビニールアセテート(EVA)等のエチレン/ビニールエステル共重合体、特に、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)及びエチレン/ブチルアクリレート(EBA)等のエチレン/アクリレート共重合体、エチレン/αアレフィン熱可塑性共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、特に塩化ポリビニール(PVC)等のハロゲン化ポリマー、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル、並びに、それらの共重合体又はその機械的な混合物からなる化合物群から選択される。
【0069】
好ましくは、誘電液体は、例えば、ナフテンオイル、芳香族オイル、パラフィンオイル、ポリアロマティックオイル等、酸素、窒素又は硫黄からなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子を含むミネラルオイル、液体パラフィン、例えば大豆オイル、亜麻仁オイル、ひましオイル等の植物オイル、低重合芳香族ポリオレフィン、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のパラフィン系オイル、例えばシリコンオイル、アルキルベンゼン(例えば、ジベンジルトルエン、ドデシルベンゼン、ジ(オクチルベンジル)トルエン)、脂肪族エステル(例えば、ペンタエリシリトールのテロラエステル、セバシン酸のエステル、フタル酸)、オレフィンオリゴマー(例えば、オプションで、水素化されたポリブテン又はポリイソブテン)等の合成オイル、又は、それらの混合物からなる化合物群から選択することができる。芳香族オイル、パラフィンオイル及びナフテンオイルが特に好ましい。
【0070】
図1及び図2に示される好ましい実施例では、金属スクリーン6は、管として形成された、好ましくはアルミニウム又は銅からなる連続的金属シートから作られる。
【0071】
金属スクリーン6を形成する金属シートは、エッジを重なり合わせて、外側半導体層5の回りに長さ方向に折り畳まれる。
【0072】
便利なことには、金属スクリーンを水に対して密封させるように、密封及び結合材料が重なり合ったエッジの間に介在される。代替例として、金属スクリーンのエッジを溶接してもよい。
【0073】
図1及び図2に示されるように、金属スクリーン6は、好ましくは、塩化ポリビニール(PVC)又はポリエチレン(PE)等の非架橋ポリマー材料から作られた、全面被覆23により取り囲まれている。そのような全面被覆の厚さは、ケーブルの直径及び剛性を過度に増大させること無く、機械的応力及び衝撃に対して一定度合いの耐性をケーブルに提供するように選択することができる。そのような解決法は、制限された衝撃が予期され又は保護が提供されるところの保護領域で使用するように意図されたケーブルにとっては利便性が高い。
【0074】
強化された衝撃保護が望ましいとき特に便利となる図1に示される好ましい実施例によれば、ケーブル1は、前記金属スクリーン6に関して径方向外側の位置に配置された保護要素20が備え付けられている。前記実施例によれば、保護要素20は、非発泡ポリマー層21(径方向内側の位置)と、発泡ポリマー層22(径方向外側の位置)とを備える。図1の実施例によれば、非発泡ポリマー層21は、金属スクリーン6と接触しており、発泡ポリマー層22は、非発泡ポリマー層21と、ポリマー全面被覆23との間にある。
【0075】
非発泡ポリマー層21の厚さは、0.5mm乃至5mmの範囲にある。
【0076】
発泡ポリマー層22の厚さは、0.5mm乃至6mmの範囲にある。
【0077】
好ましくは、発泡ポリマー層22の厚さは、非発泡ポリマー層21の厚さの等倍から2倍である。
【0078】
保護要素20は、衝撃エネルギーを少なくとも部分的に吸収することにより、外部衝撃からケーブルに強化した保護を提供する機能を有する。
【0079】
発泡ポリマー層22で使用するのに適した発泡可能なポリマー材料は、ポリオレフィン、様々なオレフィンの共重合体、エチレン不飽和エステルを持つオレフィンの共重合体、ポリエステル、ポリアセテート、セルロースポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェーノールレジン、尿素樹脂、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミン、並びに、これらの混合物からなる化合物群から選択される。適切なポリマーの例は、ポリエチレン(PE)、特に低密度のPE(LDPE)、中間密度のPE(MDPE)、高密度のPE(HDPE)、鎖状の低密度PE(LLDPE)、超低密度のポリプロピレン(ULDPE)、ポリプロピレン(PP)、例えば、エチレン/ビニールアセテート(EVA)等のエチレン/ビニールエステル共重合体、特に、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)及びエチレン/ブチルアクリレート(EBA)等のエチレン/アクリレート共重合体、エチレン/αアレフィン熱可塑性共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、特に塩化ポリビニール(PVC)等のハロゲン化ポリマー、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)等の芳香族ポリエステル、並びに、それらの共重合体又はその機械的な混合物からなる化合物群から選択される。
【0080】
好ましくは、発泡ポリマー層22を形成するポリマー材料は、ポリオレフィンポリマー又はエチレン及び/又はプロピレンに基づく共重合体であり、特に、以下のものから選択される。
(a) 例えば、ビニールアセテート又はブチルアセテート等、エチレン不飽和エステルを持つエチレンの共重合体であり、不飽和エステルの量が、一般的に、5重量%乃至80重量%であり、好ましくは、10重量%乃至50重量%であるものである。
(b) 少なくとも1つのC−C12のαオレフェンを備えるエチレンのエラストマー共重合体であり、オプションで、ジエン、好ましくはエチレン/プロピレン(EPR)又はエチレン/プロピレン/ジエン(EPDM)の共重合体であり、一般に35%〜90%モルのエチレン、10%〜65%モルのαオレフェン、0%〜10%モルのジエン(例えば、1,4−ヘキサデカン又は5−エチリデン−2−ノルボルネン)を有する。
(c) 少なくとも1つのC−C12のαオレフェンを備えるエチレンの共重合体、好ましくは、1−ヘキセン、1−オクテット等であり、オプションでジエンを含み、一般に0.86g/cmから0.90g/cmの密度を有し、次の組成、即ち、75%〜97%モルのエチレン、3%〜25%モルのαオレフェン、0%〜5%モルのジエンを含む。
(d) エチレン/C−C12のαオレフェン共重合体で変化されたポリプロピレンであって、ポリプロピレンとエチレン/C−C12のαオレフェン共重合体との間の重量比率が90/10乃至10/90、好ましくは、80/20乃至20/80の間にある。
【0081】
例えば、市販製品のエルバックス(R)(デュポン)、レバプレン(R)(ベイヤー)及びロトリール(R)(エルフーアトケム)は、クラス(a)に属し、製品デュトラル(R)(エニケム)又はノーデル(R)(ドウデュポン)はクラス(b)に属する。クラス(c)に属する製品は、エンゲージ(R)(ドウデュポン)又はエグザクト(R)(エクスオン)であり、エチレン/α−オレフェン共重合体(d)で変更されたポリプロピレンは、モップレン(R)若しくはハイファックス(R)(ベーセル)、又は、ファイナ−プロ(R)(ファイナ)等のブランド名で市販されている。
【0082】
クラス(d)の範囲で、特に好ましいものは、熱可塑性ポリマー、例えば、ポリプロピレンの連続的なマトリクスと、熱可塑性マトリックス内に分散された、例えば架橋されたEPR又はEPDM等の硬化エラストマーポリマーの細かい粒子(一般に、1μm〜10μmのオーダーの直径を有する)とを含む。
【0083】
エラストマーポリマーは、非硬化状態で熱可塑性マトリックス内に組み込まれ、次に、適切な量の架橋剤の添加によって処理中に動的に架橋されてもよい。
【0084】
代替例として、エラストマーポリマーは、別々に硬化され、次に、細かい粒子の形態で熱可塑性マトリックス内に分散される。
【0085】
この種の熱可塑性エラストマーは、例えば、米国特許4,104,210又はヨーロッパ特許出願EP−A0324430に記載されている。これらの熱可塑性エラストマーは好ましいものである。それらが、作業温度の全範囲でケーブル熱サイクルの間に径方向の力を弾性的に吸収する際に特に有効であることが判明したからである。
【0086】
本説明の目的のために、「発泡」ポリマーは、空洞部(即ち、ポリマーによっては占められていないが、ガス又は空気によって占められた部分)の体積のパーセンテージが典型的に該ポリマーの総体積の10%より大きい構造内のポリマーに言及しているものと理解されている。
【0087】
一般に、発泡ポリマーにおける自由空間のパーセンテージは、膨張の度合い(G)の項で表される。本説明では、「ポリマーの膨張の度合い」という用語は、次の仕方で決定されたポリマーの膨張に言及しているものと理解される。
【0088】
G(膨張度)=(d/d−1)×100
ここで、dは非発泡ポリマー(即ち、空洞の体積が事実上存在しない構造を備えたポリマー)の密度を示し、dは、発泡ポリマーに対して測定された見かけの密度を示している。
【0089】
好ましくは、発泡ポリマー層22の膨張度は、20%乃至200%の範囲、より好ましくは25%乃至130%の範囲で選択される。
【0090】
好ましくは、非発泡ポリマー層21及び全面被覆23は、ポリオレフィン材料、通常、塩化ポリビニール又はポリエチレンから作られる。
【0091】
図1及び図2に示されるように、ケーブル1は、外側半導体層5及び金属スクリーン6の間に配置された水遮断層8が更に設けられている。
【0092】
好ましくは、水遮断層8は、発泡された、水で膨張可能な半導体層である。
【0093】
発泡された、水で膨張可能な半導体層の一例は、本願出願人の名前で国際特許出願WO01/46965に記載されている。
【0094】
好ましくは、水遮断層8の発泡可能なポリマーは、発泡層22で使用するため上述されたポリマー材料から選択される。
【0095】
好ましくは、水遮断層8の厚さは、0.2mmから1.5mmの範囲にある。
【0096】
前記水遮断層8は、ケーブルの内部に向かう長さ方向の水の貫通管に対して有効なバリアを提供することを目的とする。
【0097】
水で膨張可能な材料は、一般に、特に粉末の形態で、小さく分割された形態にある。水で膨張可能な粉末を構成する粒子は、好ましくは、250μm以下の直径を持ち、10μmから100μmの平均直径を持つ。より好ましくは、10μmから50μmの直径を有する粒子の量は、粉末の総重量に対して少なくとも50重量%である。
【0098】
水で膨張可能な材料は、一般に、ポリマーチェーンに沿って親水性グループを有するホモポリマー又は共重合体からなり、例えば、架橋され少なくとも部分的に塩化されたポリアクリル酸(例えば、C.F.ストックハウゼンGmbHからの製品キャボロック(R)又はグレインプロセッシング社からのウォータロック(R))、アクリルアミド及びナトリウムアクリレートの間の共重合体と混合されたその混合物又は派生物(例えば、ヘンケルAGからの製品SGP吸収性ポリマー(R))及びナトリウムカルボキシメチルセルローセ(例えば、ヘルキュール社からの製品ブラノーセ(R))などがある。
【0099】
発泡ポリマー層で含まれるべき水で膨張可能な材料の量は、一般に5phrから120phrであり、好ましくは、15phrから80phrである(phr=ベースとなるポリマーの100部品の重量に対する部品重量)。
【0100】
加えて、水遮断層8の発泡ポリマー材料は、半導体層3、5を参照して上述されたように適切な導電性カーボンブラックを追加することにより半導体になるように変更される。
【0101】
更には、図1のケーブルに、半導体特性を有し、水で膨張可能な材料を備える発泡ポリマー材料(即ち、半導体水遮断層8)を提供することにより、ケーブルと金属スクリーンとの間に必要となる電気的連続性を確保しつつ、ケーブルが使用中に受ける熱サイクルに起因した膨張及び収縮の径方向の力を弾性的且つ均一に吸収することができる層が形成される。
【0102】
その上、発泡層内に分散された、水で膨張可能な材料の存在は、湿気及び/又は水を効果的に遮断することができ、かくして、水で膨張可能なテープや固定されていない水で膨張可能な粉末の使用を回避することができる。
【0103】
更には、図1のケーブルに、半導体水遮断層8を提供することによって、外側半導体層5の厚さを、有利に減少させることができる。外側半導体層5の電気的特性は、前記水遮断半導体層により部分的に実行されるからである。従って、前記態様は、外側半導体層、かくして、ケーブル全体の重量の減少に有利に寄与する。
(製造プロセス及びプラント)
図3に示されるように、本発明に係るケーブルの製造のためのプラントは、伝導体供給ユニット201と、絶縁層4、半導体層3及び5を得るための第1の押し出し成形区分202、冷却区分203と、金属スクリーン適用区分204と、保護層20に適用するための第2の押し出し成形区分214と、全面被覆押し出し成形区分205と、更なる冷却区分206と、巻取り部207と、を備える。
【0104】
便利なことに、伝導体供給ユニット201は、ケーブル伝導体のために所望の直径へと金属ロールを巻くための装置を備える(要求された表面仕上げを提供する)。
【0105】
用途(又は他の顧客の要求)により要求されたとき最終的なケーブル長さを連続的に生成するため金属ロッド長さの接続が要求される場合には、伝導体供給ユニット201は、伝導体を溶接し熱的に処理するための装置、並びに、伝導体それ自身の連続的な定速分配に影響を及ぼすことなく溶接作業のための十分な時間を提供するのに適した蓄積ユニットを便利に備えている。
【0106】
第1の押し出し成形区分202は、伝導体供給ユニット201により供給された伝導体2上に絶縁層4を押し出し成形するのに適した、第1の押し出し成形装置110を備える。第1の押し出し成形装置110は、伝導体2の外側表面上(及び絶縁層4の下方)に内側半導体層3を押し出し成形するのに適した第2の押し出し成形装置210より、伝導体2の前進方向に沿って先行しており、次に、ケーブルコア2aを得るため、絶縁層4の回りに外側半導体層5を押し出し成形するのに適した第3の押し出し成形装置310が続いている。
【0107】
第1、第2及び第3の押し出し成形装置は、各々がそれ自身の押し出し成形ヘッドを備えた状態で、連続的に配列される。好ましくは、それら装置は、前記3つの層の共有押し出し成形を得るため、共通の3連押し出し成形ヘッド150に全て接続されている。
【0108】
押し出し成形装置110に適した構成例が、本願と同じ出願人の名前でWO02/47092に説明されている。
【0109】
便利には、第2及び第3の押し出し成形装置は、第1の押し出し成形装置110の構成と類似した構成を持っている(塗布される特定の材料により様々に異なる構造が要求されない場合)。
【0110】
ケーブルコア2aが通過されるところの冷却区分203は、細長い開放ダクトからなり、該ダクトに沿って冷却流体が流される。水は、そのような冷却流体の好ましい例である。そのような冷却区分の長さ、並びに、冷却流体の性質、温度及び流量は、当該プロセスの引き続くステップに適した最終的な温度を提供するため決定される。
【0111】
ドライヤー208は、引き続く区分内に入る前に便利なように挿入される。該ドライヤーは、湿度又は水滴等の冷却流体の残余物を除去するのに有効であり、特にそのような残余物が全体的なケーブル性能に有害である場合には有効である。
【0112】
金属スクリーン適用区分204は、金属シート分配装置209を備え、該装置は、応用ユニット210に金属シート60を供給するのに適している。
【0113】
好ましい実施例では、応用ユニット210は、形成道具(図示せず)を備え、該形成道具により、金属シート60は、ケーブルコア2aを取り囲むように管状形態へと長さ方向に折り畳まれ、該コアを通して進み、周方向に閉じた金属スクリーン6を形成する。
【0114】
周方向に閉じた金属スクリーン6を形成するようにシート60のエッジの重なり合った領域で適切な密封結合剤が供給されてもよい。
【0115】
代替例として、周方向に閉じた金属スクリーン6を形成するようにシート60のエッジのところで適切な密封結合剤が供給されてもよい。
【0116】
長さ方向に折り畳まれた金属スクリーンの使用は、該スクリーンが、複雑なスプール回転機械装置の使用を要求すること無く、連続的なプロセスでケーブルを製造することを可能にすることに寄与するという点で特に便利である。複雑なスプール回転機械装置は、他の場合、金属スクリーンに螺旋的に巻かれた多重ワイヤ(又はテープ)の場合には必要となる。
【0117】
特定のケーブル設計に便利な場合には、押し出し成形ヘッド212が備え付けられた更なる押し出し装置211が、金属スクリーン6の下方でケーブルコア2aの回りに発泡半導体層8を塗布するため、冷却器213と一緒に、応用ユニット210の上流側に配置されている。
【0118】
好ましくは、冷却器213は、強制通風空気冷却器である。
【0119】
追加の衝撃保護が要求されない場合には、ケーブルは、全面被覆押し出し成形区分205を通してケーブルを通過させることにより完成される。該区分は、全面被覆押し出し成形装置220と、その押し出し成形ヘッド221とを備える。
【0120】
最終的な冷却区分206の下流側には、プラントが、巻取り区分207を備え、該巻取り区分によって、仕上げされたケーブルがスプール222上にコイル巻きされる。
【0121】
好ましくは、巻取り部207は、蓄積区分223を備え、該区分は、ケーブル製造プロセスの妨害無しに完成したスプールを空のスプールで代用することを可能にする。
【0122】
強化した衝撃保護が望ましい場合には、更なる押し出し成形区分214が、適用ユニット210の下流に配置されている。
【0123】
図3に示された実施例では、押し出し成形区分214は、共通の三重押し出し成形ヘッド218が備え付けられた3つの押し出し成形装置215、216、217を備えている。
【0124】
より詳細には、押し出し成形区分214は、発泡ポリマー層22及び非発泡ポリマー層21を備える保護要素20を塗布するのに適している。非発泡ポリマー層21が、押し出し成形器216により塗布されると共に、発泡ポリマー層22が押し出し成形装置217により塗布される。
【0125】
更には、押し出し成形区分214は、金属スクリーン6及び保護要素20(即ち、非発泡ポリマー層21)の間の結合を改善するのに適した主層を塗布するように設けられた更なる押し出し成形装置215を備える。
【0126】
冷却区分219は、更なる押し出し成形区分214の下流に便利に設けられている。
【0127】
図4は、図3のプラントに類似したプラントを示しており、該プラントに従って、押し出し成形装置215,216、216は、互いに分離され、3つの別々の独立した押し出し成形ヘッド215a、216a、217aが提供される。
【0128】
別個の冷却チャンネル又はダクト219a及び219bは、各々、押し出し成形装置215及び216の下流側に設けられ、冷却チャンネル219は、押し出し成形装置217の下流に配置されている。
【0129】
更なる実施例(図示せず)によれば、主層及び非発泡ポリマー層21は、共有押し出し成形により一緒に塗布され、連続的に、発泡ポリマー層22の押し出し成形が実行される。
【0130】
更なる実施例(図示せず)によれば、主層及び非発泡ポリマー層21は、共有押し出し成形により一緒に塗布され、連続的に、発泡ポリマー層22及び全面被覆23が、共有押し出し成形により一緒に塗布される。代替例として、主層及び非発泡ポリマー層21は、2つの別々の押し出し成形ヘッド215a、216aを使用することにより別個に塗布され、発泡ポリマー層22及び全面被覆23は、共有押し出し成形により一緒に塗布される。
【0131】
図3及び図4では、製造プラントのレイアウトは、工場の長さ方向サイズを減少させるためU字形状に形成される。図面中には、ケーブルの前進移動は、当該技術分野で知られている任意の適切な装置、例えば、ローラーを使って、冷却区分203の端部で逆転される。
【0132】
代替例として、製造プラントのレイアウトは長さ方向に延在し、ケーブル供給方向の逆転は存在しない。
(連続製造プロセス)
上述したプラントによれば、連続的プロセスを使ってケーブルを製造することができる。
【0133】
本説明では、「連続的プロセス」は、伝導体供給工程と仕上げケーブル受け取り工程との間に中間的な休止工程が存在しないように、与えられたケーブル長さを製造するのに要求される時間がケーブルの直線的な前進速度に逆比例するプロセスを意味している。
【0134】
本発明によれば、伝導体は、供給ユニット201から連続的に供給される。
【0135】
供給ユニット201は、伝導体の連続的分配を可能にするように配列されている。
【0136】
伝導体は、単一の金属ロッド(典型的には、アルミニウム又は銅)から便利に作られている。この場合には、伝導体の連続的分配は、利用可能な長さの金属ロッド(典型的にはスプール等に搭載されている)を更なる長さの金属ロッドに接続することにより可能となる。
【0137】
そのような接続は、例えば、ロッド端部を溶接することによりなすことができる。
【0138】
本発明の連続的プロセスによれば、製造されたケーブルの最大長さ、例えば、(2つの中間ステーションの間に)横たえておくべきラインの長さ、(関連する輸送限界に関して)使用されるべき移動スプールの最大サイズ、最大設置可能な長さ等は、利用可能な原材料及び半仕上げ製品長さや機械的容量によってではなく、顧客又は設置者の要求によって決定されている。このようにして、ケーブル長さの間のジョイントの数を最小にした電気ラインを当該ラインの信頼性を向上させるように設置することが可能となる。ケーブルのジョイントは、ラインの使用中に電気的な問題を被りがちな不連続点であることが知られているからである。
【0139】
より合わされた伝導体が望まれている場合には、回転装置は、より合わせることが要求され、伝導体は、要求された長さでオフラインで便利に準備されるが、重ね継ぎ作業は困難となる。そのような場合には、製造ケーブルの長さは、市販されている、より合わせられた伝導体の長さ(顧客の要求に基づいて予め決定することができる)により、及び/又は、積荷スプールの容量により決定され、それ以外では、当該プロセスは、伝導体供給から終わりまで連続性を維持したままである。
【0140】
絶縁層4、半導体層3及び5、全面被覆23、保護要素20(もしあれば)及び水遮断層8(もしあれば)の押し出し成形を、連続的に実行することができる。押し出し成形されるべき様々な材料及び化合物は、中断無しに関連する押し出し成形装置の入口に供給されるからである。
【0141】
架橋工程が要求されないとき、熱可塑性の非架橋材料を使用するため、特に絶縁層に対して、プロセス中断は要求されない。
【0142】
実際問題として、従来の架橋絶縁ケーブルの製造プロセスは、「休止」工程を備える。該休止工程では、(a)シラン架橋工程が使用される場合に架橋反応が発生することを可能にするため、又は、(b)過酸化水素の架橋の場合には、架橋反応の副産物として発生するガスの放出を可能にするため、絶縁伝導体が一定期間(数時間又は数日に及ぶことさえある)に亘ってオフラインで維持される。
【0143】
(a)の場合の休止工程は、架橋反応速度を改善するため、ケーブル(支持リール上に巻かれている)をオーブン内に導入することにより、又は、当該ケーブルを約80℃の温度の水の中に浸漬することにより、実行することができる。
【0144】
(b)の場合の休止工程、即ち脱ガス工程は、脱ガス時間を減少するため、ケーブル(支持リール上に巻かれている)をオーブン内に導入することにより、実行することができる。
【0145】
「休止」工程は、典型的には、関連する層の押し出し成形の終了時に、半仕上げ要素をスプール上にコイル巻きすることにより典型的に実行される。その後、架橋された半仕上げ要素は、ケーブルが完了された別の独立ラインに供給される。
【0146】
本発明のプロセスによれば、金属スクリーン6は、長さ方向に折り畳まれた金属シートにより形成されており、該金属シートは、シートをスプールから巻き解くことができるようにその回転軸の回りに自在に回転する間に静止装置に取り付けられたスプールから便利に巻き解かれる。従って、本発明のプロセスでは、金属シートは、中断無しに供給することができる、使用中のスプールのシートの後方端部は、新しいスプール上に搭載されたシートの前方端部に(例えば、溶接により)容易に接続することができる。
【0147】
一般に、適切なシート蓄積装置が更に提供される。これは、(螺旋巻きされたワイヤ又はテープのいずれかにより形成される)螺旋式スクリーンが使用される場合には実現可能とはならない。そのような場合には、ワイヤ又はテープを載せたスプールが、ケーブルの回りを回転する回転装置に搭載され、空のスプールを新しいスプールで交換することは、ケーブルの前進に中断を要求するからである。
【0148】
しかし、装置を使用することにより、製造プロセスを連続的なものに維持しつつ、ワイヤ又はテープから作られた金属スクリーンをケーブルに提供することは可能である。その装置によれば、当該ワイヤ/テープは、交互に実行されるべきS及びZより合わせ作業に従ってケーブルに適用される。そのような場合には、当該ワイヤ/テープを支持するリールは、ケーブルの回りを回転可能に移動することを束縛されない。
【0149】
しかし、長さ方向に折り畳まれた金属スクリーンの使用は、熱可塑性の絶縁半導体層の使用と関連して特に便利であることが見出された。
【0150】
実際問題として、上述したように、架橋材料が使用される場合には、架橋反応が完了した後、ガス状副産物を放出することを可能にするため一定期間が提供されることが必要となる。便利には、これは、架橋反応が生じた後一定期間に亘って半仕上げ製品(即ちケーブルコア)が休止することを可能にすることにより得られる。周方向に非連続的な金属スクリーンが使用される場合(ケーブルコアの回りに螺旋状に巻かれたワイヤ若しくはテープの場合のように)には、ガス放射は、金属スクリーン(例えば、ワイヤ又はテープの重なり合い領域)を通した拡散、並びに、金属スクリーンに対して径方向外側の位置で配置された押し出し成形層を通した拡散によっても発生し得る。
【0151】
しかし、長さ方向に折り畳まれた金属スクリーンが使用された場合には、後者は、ケーブルコアの全周囲の回りを周方向に延在し、これにより、実質的に不浸透性のエンベロープを形成し、ガス状副産物の更なる排出を事実上防止する。従って、長さ方向に折り畳まれた金属スクリーンが架橋絶縁層と組み合わされて使用されるとき、この材料の脱ガス工程は、金属スクリーンが適用される前に事実上完了されるべきである。
【0152】
これに反して、架橋したガス状副産物を放射しない熱可塑性非架橋材料(従って、脱ガス工程を必要としない)のケーブル絶縁層の使用は、ケーブル金属スクリーンとして長さ方向に折り畳まれた金属シートと組み合わされたとき、ケーブル製造プロセスを連続的なものにすることを可能にする。「休止」工程はオフラインで必要とされないからである。
【0153】
好ましくは、本発明に係るプロセスのライン速度は、不連続的な従来の製造プロセスではライン速度が約10〜15m/分に設定されている一方で、約60m/分であり、より好ましくは約80〜100m/分である。
【0154】
本発明の更なる説明に対して、図示の例が以下のように与えられる。
(例1)
次の例は、図1に示されるような150mm、20kVのケーブルの連続的製造プロセスの主要工程を詳細に説明している。
(a)ケーブルコア押し出し成形
ケーブル絶縁層は、融点165℃、融解エンタルピー30J/g、MFI0.8dg/分及び撓み係数150MPa(バーセルの市販製品アドフレックス(R)Q200F)を有するプロピレン多相共重合体を押し出し成形装置110のホッパー内に直接、供給することによって得られた。
【0155】
次に、抗酸化剤と前工程で混合された誘電オイルジェリレック(R)Exp3(Elfアトケムの市販製品−ジベンジントルエン)は、高圧で押し出し成形装置に噴射された。
【0156】
押し出し成形装置110は、直径80mm、L/D比25を有していた。
【0157】
誘電オイルの噴射は、互いから120°隔てられた同じ断面の3つの噴射点を使って、押し出し成形中に、押し出し成形装置110のねじ込みの開始から約20Dの時点で実行された。誘電オイルは、70℃の温度で、250バールの圧力で噴射された。
【0158】
対応する押し出し成形装置は、内側及び外側の半導体層に対して使用された。
【0159】
ロッド形状のアルミニウム伝導体2は、3重の押し出し成形ヘッド150を介して供給された。
【0160】
押し出し成形ヘッド15から出たケーブルコア2aは、冷却水が流れされるチャンネル形状の冷却区分203を通過することによって冷却された。
【0161】
その結果としてできたケーブルコア2aは、約0.2mm厚の内側半導体層と、約4.5mm厚の絶縁層と、約0.2mm厚の外側半導体層と、を持っていた。
(b) ケーブル水遮断半導体発泡層
約0.5mmの厚さと、20%の膨張率とを有する水遮断半導体発泡層8が、直径60mmと、L/D比20とを持った押し出し成形装置211によりケーブルコア2aに塗布された。
【0162】
前記発泡層8のための材料が以下の表1に与えられている。当該材料は、発泡剤ヒドロセロル(R)CF70(カルボキシル酸+重炭酸ナトリウム)を押し出し成形装置のホッパー内に約2%添加することにより、化学的に発泡された。
【0163】
【表1】

【0164】
表中の化合物は以下の通りである。
【0165】
エルバックス(R)470:エチレン/ビニールアセテート(EVA)共重合体(デュポンの商品)
ケッチェンブラック(R)EC300:伝導率が高いファーネスカーボンブラック(アクゾケミーの商品)
イルガノックス(R)1010:ペンタエリチリル−テトラキシ[3−(3,5−ジ−T−ブチル−4−ヒドロキシフェニール)プロピネート](シバスペシャルティケミカルズの商品)
ウォーターロック(R)J550: 粉末化架橋ポリアクリル酸(部分的に塩化)
(グレインプロセッシングの商品)
ヒドロセロール(R) CF70:カルボキシル酸/重炭酸ナトリウム発泡剤(ボーエーリンガーインゲルヘイムの商品)
押し出し成形装置211の押し出し成形ヘッド212の下流には、強制通風空気冷却器213による冷却が提供された。
(c)ケーブル金属スクリーンの適用
発泡半導体層8が提供されたケーブルコア2aは、長さ方向に折り畳まれた約2mm厚の滑らか仕上げのアルミニウムシートにより、その重なり合ったエッジを結合するため接着剤を使用して、適用ユニット210を使って覆われた。接着剤は、押し出し成形装置215を使って塗布された。
(d) ケーブル保護要素の適用
次に、約1.0mmの、ポリエチレンから作られた内側ポリマー層21は、直径120mm及びL/D比率25を有する押し出し成形装置216を使ってアルミニウムスクリーンに亘って押し出し成形された。
【0166】
図3のプロセスプラントによれば、約1.5mmの厚さ及び70%の膨張率を有する、発泡ポリマー層22が、非発泡内側ポリマー層21と共に共有押し出し成形された。
【0167】
発泡ポリマー層22は、120mmの直径及び25のL/D比を有する押し出し成形装置217を使って適用された。
【0168】
発泡ポリマー層22のための材料は、以下の表2で与えられる。
【0169】
【表2】

【0170】
表中の化合物は以下の通りである。
【0171】
ハイファックス(R) SD817:エチレン/プロピレン共重合体で
ハイドロセロール(R) BiH40:ボーエリンガーインゲルヘイムにより市販されている、カルボキシル酸+重炭酸ナトリウム発泡剤
ポリマー材料は、発泡剤(ハイドロセロール(R)BiH40)を押し出し成形ホッパー内に追加することにより化学的に発泡された。
【0172】
押し出し成形ヘッド218から約500mmの距離で、低温水が通って流されたパイプ又はチャンネルの形態の冷却区分219は、外側非発泡ポリマー層24を押し出し成形する前に、発泡を停止させ、押し出し成形された材料を冷却させた。
(e)ケーブル全面被覆押し出し成形
次に、約1.0mm厚のポリエチレンから作られた全面被覆23が、120mmの直径及び25L/D比を有する押し出し成形装置220を使用して押し出し成形された。
【0173】
押し出し成形ヘッド221から出たケーブルは、最終的に冷却水が流されるところの冷却区分206で冷却された。
【0174】
仕上げケーブルの冷却は、冷却区分の長さ方向サイズを有利に減少させた多通路冷却チャンネルを使用することによって実行することができる。
(連続プロセスの温度プロフィール)
図5は、本発明に係る連続プロセスにより得られた、150mm、20kVのケーブル(図1に示される)の構成部品の温度プロフィールを示している。ライン速度は、60m/分の値に設定された。
【0175】
詳細には、図5は、横座標でプロセスプラントの長さ(m)、縦座標で温度(℃)をプロットしている。図5の曲線は、ケーブルの各構成要素の温度がプロセスプラントの長さに対して如何に変化するかを示している。
【0176】
より詳細には、参照番号「a」で指し示された曲線が環境温度変化を示し、参照番号「b」で指し示された曲線が伝導体2の温度変化を示し、参照番号「c」で指し示された曲線が、内側半導体層3、絶縁層4及び外側半導体層5を備えるケーブル要素の温度変動を示し、参照番号「d」で指し示された曲線が水遮断層8の温度変化を示し、参照番号「e」で指し示された曲線が金属スクリーン6の温度変化を示し、参照番号「f」で指し示された曲線が、主層及び非発泡ポリマー層21を備えるケーブル要素の温度変動を示し、参照番号「g」で指し示された曲線が、発泡ポリマー層22の温度変化を指し示し、参照番号「h」で指し示された曲線が、外側被覆23の温度変化を示している。
【0177】
図5に示されるように、金属スクリーンは、絶縁層の温度が約40℃であったときケーブルに適用された。
(衝撃及び負荷耐性)
例えば、ケーブルの外側表面に印加された衝撃又はケーブルそれ自身の変形を引き起こすのに適した有意な局所的負荷等、ケーブルに適用された機械的応力の存在において、例えば、衝撃エネルギーが衝撃保護層により支持されることができる許容値を超えるが故に変形が絶縁部を巻き込む場合にさえ、又は、保護層が比較的小さい厚さで選択された場合、金属スクリーンの変形プロフィールは、連続的な滑らかなラインに従い、これにより、電場の局所的な増大を回避することができることが判明した。
【0178】
一般に、絶縁層及びケーブルの全面被覆のために使用される材料は、衝撃後に、それらの元のサイズ及び形状の一部のみ弾性的に回復し、それにより、衝撃後には、たとえケーブルが付勢される前に衝撃が生じたとしても、電気的応力に耐える絶縁層の厚さが減少される。
【0179】
しかし、本願出願人は、金属スクリーンが、ケーブル絶縁層の外側で使用されるとき、そのようなスクリーンの材料は、衝撃により永久的に変形され、変形の弾性的回復を更に制限し、それにより、絶縁層は、その元の形状及びサイズを弾性的に回復することを抑制されることを見出した。
【0180】
その結果、衝撃により引き起こされた変形、又は、その少なくとも有意な一部分は、たとえ衝撃それ自身の原因が取り除かれたとしても、衝撃後に維持される。
【0181】
前記変形は、絶縁層の厚さが、元の値tから損傷を受けた値t(図8参照)へと変化する結果を招いた。
【0182】
従って、ケーブルが付勢されたとき、衝撃領域における電圧応力(Γ)に耐える実際の絶縁層の厚さは、tほど大きくはなく、tとなる。
【0183】
更に加えて、衝撃が、「不連続」式の金属スクリーンを有するケーブル、例えば螺旋状に巻かれたワイヤ又はテープから作られたケーブルに対して加えられたとき、(図8に示されるように)衝撃層が存在しない場合、又は、(密集式又は発泡式の)衝撃保護層が存在している場合でさえも、金属スクリーンのワイヤ構造の不均一な抵抗は、衝撃領域により近いところに配置されたワイヤをかなり変形させ、そのような変形を、隣接する領域への巻き込みが最小な状態で局所的な変形として下層に伝達させる。
【0184】
絶縁層では、これは、「スパイク」効果を生じさせ、図8に示されるように、衝撃領域における電場の円形等電位線の変形を引き起こす。元の円形等電位線は点線で描かれ、変形したラインは連続ラインで描かれている。
【0185】
電場の等電位線の変形は、衝撃領域において等電位線をより接近させ、この領域における電位勾配をかなり大きくさせる。電位勾配のこの局所的な増大は、電気的放電を引き起こす可能性があり、比較的低エネルギーの衝撃の場合でさえも、部分的放電テストでは(衝撃を受けた)ケーブルの故障と判定するものである。
【0186】
しかし、金属スクリーンが長さ方向に折り畳まれた金属シートから作られている場合、特に発泡した保護要素と結合されたとき、本願出願人は、スクリーンの局所的変形及び下層の絶縁層の局所的変形は、かなり減少されることを発見した。
【0187】
実際問題として、下層の金属スクリーンにより連続的に支持された発泡保護層は、図9に示されるように、衝撃位置の回りの比較的大きい領域に衝撃エネルギーを分散させることができる。
【0188】
従って、電場の等電位線の変形は、同じエネルギーの衝撃でも上述された螺旋状ワイヤの場合よりも等電位線を接近させないように減少される(より大きな領域と同様に関連する)。
【0189】
その結果、衝撃により引き起こされた局所的な電位勾配は、最小となり、部分放電テストに耐えるケーブル能力は、顕著に増大する。
(例2)
図1に係る50mm、10kVケーブルを製造するための連続的プロセスは、例1に記載されたように実行された。当該プロセスのライン速度は、70m/分に設定された。
【0190】
ケーブルの連続的要素のため使用される材料は、例1で開示されたものと同じであった。
【0191】
絶縁層の厚さは、約2.5mmのものであり、内側及び外側の半導体層の厚さは、約0.2mmのものであった。
【0192】
金属スクリーンの厚さは約0.2mmのものであった。
【0193】
水遮断半導体発泡層は、約0.5mmの厚さ及び20%の膨張率を持っていた。
【0194】
内側ポリマー層21は、厚さ約1.0mmのものであるが、発泡ポリマー層22は、約1.5mmの厚さ及び70%の膨張率を持っていた。
【0195】
全面被覆23は、約0.5mmの厚さであった。
(連続的プロセスの温度プロフィール)
図6は、上述した、本発明に係る連続的プロセスにより得られるケーブルの構成部品の温度プロフィールを示している。
【0196】
図6に示されるように、金属スクリーンは、絶縁層の温度が約30℃であったときケーブルに適用された。
(例3)
図1に係る240mm、30kVケーブルを製造するための連続的プロセスは、例1に記載されたように実行された。当該プロセスのライン速度は、50m/分に設定された。
【0197】
ケーブルの連続的要素のため使用される材料は、例1で開示されたものと同じであった。
【0198】
絶縁層の厚さは、約5.5mmのものであり、内側及び外側の半導体層の厚さは、約0.2mmのものであった。
【0199】
金属スクリーンの厚さは約0.2mmのものであった。
【0200】
水遮断半導体発泡層は、約0.5mmの厚さ及び20%の膨張率を持っていた。
【0201】
内側ポリマー層21は、厚さ約1.0mmのものであるが、発泡ポリマー層22は、約1.5mmの厚さ及び70%の膨張率を持っていた。
【0202】
全面被覆23は、約1.0mmの厚さであった。
(連続的プロセスの温度プロフィール)
図7は、上述した、本発明に係る連続的プロセスにより得られるケーブルの構成部品の温度プロフィールを示している。
【0203】
図7に示されるように、金属スクリーンは、絶縁層の温度が約45℃であったときケーブルに適用された。
(例4、比較)
例1に記載されたような連続的プロセスが実行された。例1のプロセスとの唯一の相違点は、金属スクリーンが、75℃の絶縁層の温度値でケーブルに適用されたという事実であった。
【0204】
ケーブルサンプル(約1mの長さ)は、例えば、該サンプルをリールに収集している間又はそれを細長い溝内に置いている間に、ケーブルが耐えることを必要とする曲げ作用をシミュレートするように曲げテストを受けた。
【0205】
このテストはケーブルサンプルを8回曲げる工程からなった。各曲げ工程毎に、サンプルは30秒間、一方の側に曲げられ、次に、更に30秒間、反対側(最初に曲げた側の180°反対側)に曲げられた。
【0206】
最後に、ケーブルは、2つの半部分及びケーブルコアへと長さ方向に切断され、並びに、
金属スクリーンがその検査のためアクセス可能に作られるように、水遮蔽層が除去された。
【0207】
図10は、ケーブル切断、及び、上述したケーブル要素の除去の後のケーブルの写真(拡大率1:1)を示している。
【0208】
より詳細には、図10は、ケーブルの2つの半部分の平面図を示している。
【0209】
視覚的な分析を実行することにより、ケーブル金属スクリーンでは、複数のキンクが発生し(図10では、そのうち幾つかが示されている)、そのうち幾つかが、上述した曲げ作用により引き起こされたものであることに気づかされた。
【図面の簡単な説明】
【0210】
【図1】図1は、本発明のプロセスにより得ることができる電気ケーブルの斜視図である。
【図2】図2は、本発明のプロセスにより得ることができる更なる電気ケーブルの斜視図である。
【図3】図3は、本発明のプロセスに係るケーブルの製造のためのプラントを概略的に表している。
【図4】図4は、本発明のプロセスに係るケーブルの製造のための代替のプラントを概略的に表している。
【図5】図5は、本発明のプロセスの一例としての温度プロフィールである。
【図6】図6は、本発明のプロセスの一例としての温度プロフィールである。
【図7】図7は、本発明のプロセスの一例としての温度プロフィールである。
【図8】図8は、ワイヤから作られたスクリーンが衝撃により損傷を受けた状態で提供された、従来の電気ケーブルの断面図である。
【図9】図9は、衝撃により損傷を受け、本発明にプロセスに従って作られた電気ケーブルの断面図である。
【図10】図10は、本発明のプロセスにより得られたケーブルの金属スクリーンの写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気ケーブル(1)を製造するための連続的プロセスであって、
所定の供給速度で伝導体(2)を供給し(201)、
前記伝導体(2)に関して径方向外側の位置で熱可塑性絶縁層(4)を押し出し成形し(202)、
押し出し成形された前記絶縁層(4)を70℃以下の温度に冷却し(203)、
前記押し出し成形された絶縁層(4)の回りで、周方向に閉じた金属スクリーン(6)を形成する(210)、各工程を備える、連続的プロセス。
【請求項2】
前記押し出し成形された絶縁層(4)は、約30℃乃至約70℃の範囲の温度にまで冷却される、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項3】
前記押し出し成形された絶縁層(4)は、約40℃乃至約60℃の範囲の温度にまで冷却される、請求項2に記載の連続的プロセス。
【請求項4】
前記形成工程(210)は、前記押し出し成形された絶縁層(4)の回りで、金属シート(60)を長さ方向に折り畳む工程を備える、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項5】
前記形成工程(210)は、前記金属スクリーン(6)を形成するため前記金属シート(60)のエッジを重ね合わせる工程を備える、請求項4に記載の連続的プロセス。
【請求項6】
前記形成工程(210)は、前記金属スクリーン(6)を形成するため前記金属シート(60)のエッジを結合させる工程を備える、請求項4に記載の連続的プロセス。
【請求項7】
前記伝導体(2)を金属ロッドの形態で供給する工程を更に備える、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項8】
主層を前記金属スクリーン(6)の回りに適用する工程を更に備える、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項9】
前記主層を適用する工程は、押し出し成形によって実行される、請求項8に記載の連続的プロセス。
【請求項10】
前記周方向に閉じた金属スクリーン(6)の回りに衝撃保護要素(20)を適用する工程を更に備える、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項11】
衝撃保護層(20)を適用する前記工程は、前記金属スクリーン(6)の回りに非発泡ポリマー層(21)を適用する工程を備える、請求項10に記載の連続的プロセス。
【請求項12】
衝撃保護層(20)を適用する前記工程は、前記金属スクリーン(6)の回りに非発泡ポリマー層(21)を適用する工程を備える、請求項10に記載の連続的プロセス。
【請求項13】
前記発泡ポリマー層(22)は、前記非発泡ポリマー層(21)の回りに塗布される、請求項11又は12に記載の連続的プロセス。
【請求項14】
主層を前記金属スクリーン(6)の回りに適用する工程を更に備える、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項15】
前記全面被覆(23)は、前記発泡ポリマー層(22)の回りに適用される、請求項12又は14に記載の連続的プロセス。
【請求項16】
前記押し出し成形された絶縁層(4)を冷却する工程(203)は、前記熱可塑性絶縁層(4)を細長い冷却装置を通して前記伝導体(2)に長さ方向に供給することにより実行される、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項17】
前記絶縁層(4)の熱可塑性ポリマー材料は、ポリオレフィン、様々なオレフィンの共重合体、エチレン不飽和エステルを持つオレフィンの共重合体、ポリエステル、ポリアセテート、セルロースポリマー、ポリカーボネート、ポリスルホン、フェーノールレジン、尿素樹脂、ポリケトン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアミン、並びに、これらの混合物からなる化合物群から選択される、請求項1に記載の連続的プロセス。
【請求項18】
前記熱可塑性ポリマー材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/ビニールアセテート(EVA)、エチレン/メチルアクリレート(EMA)、エチレン/エチルアクリレート(EEA)、エチレン/ブチルアクリレート(EBA)、エチレン/αアレフィン熱可塑性共重合体、ポリスチレン、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)樹脂、特に塩化ポリビニール(PVC)、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、並びに、それらの共重合体又はその機械的な混合物からなる化合物群から選択される、請求項17に記載の連続的プロセス。
【請求項19】
前記絶縁層(4)の前記熱可塑性ポリマー材料は、所定量の誘電液体を含む、請求項1に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−515743(P2007−515743A)
【公表日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507526(P2005−507526)
【出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014782
【国際公開番号】WO2005/015576
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(506006153)プリスミアン・カビ・エ・システミ・エネルジア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (10)
【Fターム(参考)】